説明

異径杭継手、異径杭継手構造、及び異径杭

【課題】 施工現場で溶接作業をする必要がなく、ネジ締め作業によって大径の第1杭材と小径の第2杭材とを簡単で確実に結合することができる異径杭継手を提供すること。
【解決手段】 大径の上側杭材8と、小径の下側杭材9とを結合するものであり、上側杭材8と結合される第1継手部12と、下側杭材9と結合される第2継手部13とを備え、第1及び第2継手部12、13の互いに突き合わされる第1及び第2締結端部18、19のそれぞれの内周面には、第1及び第2突条20、21が設けられ、これら第1及び第2突条20、21を締結部材15が挟み込んだ状態で、この締結部材15をボルト14で締め付けることによって、第1継手部12と第2継手部13とを締結できる異径杭継手10であって、第1継手部12の上側杭材8と結合される第1結合端部16が、第2継手部13の下側杭材9と結合される第2結合端部17よりも大径である構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地中に埋設される異径杭において、一方の大径杭材と他方の小径杭材とを結合するための異径杭継手、異径杭継手構造、及びそのような異径杭継手を備える異径杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の異径杭の一例として図8に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。同図に示す異径杭は、拡頭杭1であり、大径の上側杭材2と、小径の下側杭材3と、この上側杭材2と下側杭材3とを結合するテーパ鋼管部4とを備えている。これら上下の各杭材2、3は、鋼管製であり、下側杭材3の下端部には、捩じ込み用羽根5が形成されている。
【0003】
この図8に示す拡頭杭1は、上側杭材2とテーパ鋼管部4とが溶接されており、この溶接は工場でされている。そして、テーパ鋼管部4と下側杭材3とが溶接されており、この溶接は施工現場でされる。
【0004】
この拡頭杭1を地中に埋設するときは、まず、下側杭材3を所定の施工機械(図示せず)を使用して回転させながら地中に押し込む。このとき、下側杭材3の下端部に設けられている捩じ込み用羽根5が土砂中に食い込んでいき、これが推進力となって下側杭材3が地中に捩じ込まれていく。そして、下側杭材3の上端部が地上に残る状態で、テーパ鋼管部4が溶接された上側杭材2をクレーン等で吊り下げてテーパ鋼管部4を下側杭材3上に載置する。そして、テーパ鋼管部4と下側杭材3とを溶接する。しかる後に、この拡頭杭1を、施工機械を使用して回転させながら地中に捩じ込ませる。このようにして、拡頭杭1を埋設することができる。
【特許文献1】特開2000−73365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図8に示す従来の拡頭杭1では、施工現場において、テーパ鋼管部4と下側杭材3とを溶接する必要があるので、この溶接時間が施工時間を長引かせることとなる。そして、溶接作業を行う溶接技術者を、それぞれの施工現場において施工期間中配置することが必要となり、溶接技術者の確保が困難となることがある。また、施工現場では、溶接精度にばらつきが生じ易く、これによって、テーパ鋼管部4と下側杭材3との結合力にばらつきが生じるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、施工現場で溶接作業をする必要がなく、ネジ締め作業によって大径の第1杭材と小径の第2杭材とを簡単で確実に結合することができる異径杭継手、異径杭継手構造、及び異径杭を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載発明に係る異径杭継手は、大径の第1杭材と、それよりも小径の第2杭材とを互いに結合するためのものであり、前記第1杭材の端部を結合することができる第1継手部と、前記第2杭材の端部を結合することができる第2継手部とを備え、前記第1継手部及び前記第2継手部の互いに突き合わされる第1締結端部及び第2締結端部のそれぞれの内面には、第1突起及び第2突起が設けられ、前記第1及び第2締結端部が突き合わされた状態で、前記第1及び第2突起を締結部材が挟み込み、この締結部材を、前記第1及び第2締結端部の半径方向に貫通して配置されるボルトで前記第1及び第2締結端部側に引き付けることによって、前記第1継手部と前記第2継手部とを互いに締結することができる異径杭継手であって、前記第1継手部の前記第1杭材の端部と結合される第1結合端部は、前記第2継手部の前記第2杭材の端部と結合される第2結合端部よりも大径に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項1記載発明に係る異径杭継手を使用して製作される異径杭を地中に埋設するときは、例えばまず、工場等において第1杭材と第1継手部とを溶接等によって互いに結合すると共に、第2杭材と第2継手部とを溶接等によって互いに結合する。そして、施工現場において、第2継手部が結合された第2杭材を、例えば地中に捩じ込んで埋設する。次に、第1継手部が結合された第1杭材を吊り下げてその第1継手部を第2継手部上に載置する。そして、第1継手部と第2継手部とをボルトによって締結する。このようにして異径杭を製作することができ、この異径杭を地中に捩じ込んで埋設することができる。なお、異径杭継手を2つ以上使用することによって、直径の異なる3種類以上の杭材を備える異径杭を製作しながら埋設することができる。
【0009】
また、第1継手部と第2継手部とを突き合わせた状態で、ボルトを締め付けることで、締結部材が第1突起と第2突起とを、例えば楔作用によって挟み込むようにすることができ、両者を軸方向に対して強力に結合させることができる。
【0010】
請求項2記載発明に係る異径杭継手は、請求項1記載発明の異径杭継手において、前記第1及び第2締結端部のそれぞれの端面には、軸方向に平行する略短円柱形の空間を形成するように第1及び第2凹部が形成され、この第1及び第2凹部内に、それらが合わさって形成される略短円柱形の空間内に、その大きさと対応する大きさの略短円柱形の係合体が配置されることを特徴とするものである。このように、第1及び第2凹部によって形成される空間の形状、並びに係合体の形状をそれぞれ略短円柱形とすることによって、第1及び第2凹部の内周面と、係合体の外周面との接触面積が曲面となり、平面とした場合と比較して、接触面積を大きくすることができ、単位面積当たりの圧縮応力及び剪断応力を小さくすることができる。また、係合体の当接面が略短円筒形であるので、当接面での応力分布の変化を滑らかにすることができ、応力集中を防止することができる。
【0011】
請求項3記載発明に係る異径杭継手は、請求項1又は2記載発明の異径杭継手において、前記第1継手部の外周面は、前記第1杭材を結合することができる第1結合端部から前記第1締結端部に向かうに従って縮径するテーパ状に形成されていることを特徴とするものである。このようにすると、第2杭材を下側にしてこの異径杭を地中に押し込んで埋設するときに、第1継手部の土砂に対する摩擦抵抗を低減することができる。そして、第1継手部の外周面を略短円筒形とするよりも、この第1継手部の重量を軽量化することができるし、材料費を低減することができる。
【0012】
請求項4記載発明に係る異径杭継手構造は、大径の第1杭材と、それよりも小径の第2杭材とを互いに結合するためのものであり、前記第1杭材の端部と結合する第1継手部と、前記第2杭材の端部と結合する第2継手部とを備え、前記第1継手部及び前記第2継手部の互いに突き合わされた第1締結端部及び第2締結端部のそれぞれの内面には、第1突起及び第2突起が設けられ、これら第1及び第2突起を締結部材が挟み込み、この締結部材を、前記第1及び第2締結端部の半径方向に貫通して配置されたボルトで前記第1及び第2締結端部側に引き付けることによって、前記第1継手部と前記第2継手部とを互いに締結する異径杭継手構造であって、前記第1継手部の前記第1杭材の端部と結合される第1結合端部が、前記第2継手部の前記第2杭材の端部と結合される第2結合端部よりも大径に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載発明に係る異径杭継手構造は、請求項1記載の異径継手と同様に、第1継手部と第2継手部とをボルトによって締結して異径杭を製作することができ、この異径杭を地中に捩じ込んで埋設することができる。
【0014】
請求項5記載発明に係る異径杭は、大径の第1杭材と、それよりも小径の第2杭材と、前記第1杭材と前記第2杭材とを結合する異径杭継手とを備える異径杭であって、前記異径杭継手は、前記第1杭材の端部と結合される第1継手部と、前記第2杭材の端部と結合される第2継手部とを備え、前記第1継手部及び前記第2継手部の互いに突き合わされている第1締結端部及び第2締結端部のそれぞれの内面には、第1突起及び第2突起が設けられ、これら第1及び第2突起を締結部材が挟み込み、この締結部材を、前記第1及び第2締結端部の半径方向に貫通して配置されたボルトで前記第1及び第2締結端部側に引き付けることによって、前記第1継手部と前記第2継手部とが互いに締結され、前記第1継手部の前記第1杭材の端部と結合する第1結合端部が、前記第2継手部の前記第2杭材の端部と結合する第2結合端部よりも大径に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5記載発明に係る異径杭を地中に埋設するときは、例えばまず、工場等において第1杭材と第1継手部と、及び第2杭材と第2継手部とをそれぞれ溶接等によって互いに結合させる。そして、施工現場において、第2継手部が結合された第2杭材を、例えば地中に捩じ込んで埋設する。次に、第1継手部が結合された第1杭材を吊り下げてその第1継手部を第2継手部上に載置する。そして、第1継手部と第2継手部とをボルトによって締結する。このようにして異径杭を製作することができ、この異径杭を地中に捩じ込んで埋設することができる。
【0016】
そして、この発明の異径杭は、請求項1記載の異径杭継手と同等の異径杭継手を使用しているので、第1継手部と第2継手部とをボルトで締結することによって、大径の第1杭材と小径の第2杭材とを、簡単で確実に結合することができる。
【0017】
請求項6記載発明に係る異径杭は、請求項5記載発明の異径杭において、大径の前記第1杭材が上側杭材であって、小径の前記第2杭材が下側杭材であり、前記第2杭材の下端部又はその近傍に捩じ込み用羽根が形成されていることを特徴とするものである。この異径杭によると、下側杭材を所定の施工機械を使用して回転させながら地中に押し込むとき、下側杭材の下端部に設けられている捩じ込み用羽根が土砂中に食い込んでいき、これが推進力となって下側杭材が地中に捩じ込まれていく。次に、下側杭材の上端部に、異径杭継手を介して上側杭材を結合して異径杭を製作する。しかる後に、この異径杭(拡頭杭)を、施工機械を使用して回転させながら地中に捩じ込ませる。このようにして、異径杭を埋設することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る異径杭継手、異径杭継手構造、及び異径杭によると、施工現場において、ネジ締め作業によって、大径の第1杭材と小径の第2杭材とを簡単で確実に結合することができる。よって、従来のように、施工現場で溶接作業をする必要がないので、溶接時間によって施工時間が長引くことがなく、比較的短時間で異径杭を埋設することができる。そして、溶接技術者を、それぞれの施工現場に配置する必要もない。また、第1杭材と第2杭材とをボルトを使用して締結できるので、溶接精度のばらつきによる杭材どうしの結合力のばらつきを解消することができ、予め定めた結合力で杭材どうしを結合することができる。
【0019】
また、杭材の太さに応じて複数種類の大きさの異径杭継手を用意(標準化)しておくことによって、大径の第1杭材及び小径の第2杭材のそれぞれの寸法が決定すれば、それらの杭材を結合することができる異径杭継手を簡単に選択して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る異径杭継手、並びにこの異径杭継手を使用する異径杭継手構造、及び異径杭の一実施形態を図1〜図5を参照して説明する。図5に示すように、この異径杭は、捩じ込み式の鋼管杭(拡頭杭7)であり、大径の上側杭材(第1杭材)8が上側に配置され、それよりも小径の下側杭材(第2杭材)9が下側に配置されていて、この上側杭材8及び下側杭材9が異径杭継手10を介して互いに結合されている。これら上下の各杭材8、9は、所定長さの鋼管で形成されており、異径杭継手10は鋼製である。また、下側杭材9の下端部には、捩じ込み用羽根11が形成されている。なお、異径杭継手構造は、図2(a)、(b)に示すように、異径杭継手10を介して上側杭材8と下側杭材9とを互いに連結する構造である。
【0021】
異径杭継手10は、図1及び図2に示すように、第1継手部12、第2継手部13、ボルト14、及び締結部材15等を備えている。そして、図1に示すように、この第1継手部12の上側開口縁部を形成する第1結合端部16の外径は、上側杭材8の外径と略同一の寸法(例えば約320mm)に形成されており、第2継手部13の下側開口縁部を形成する第2結合端部17の外径は、下側杭材9の外径と略同一の寸法(例えば約270mm)に形成されている。
【0022】
また、第1継手部12の下側開口縁部を形成する第1締結端部18の外径は、第2継手部13の上側開口縁部を形成する第2締結端部19の外径(第2結合端部17の外径)と略同一の寸法(約270mm)に形成されている。つまり、第1継手部12は、その外周面が下側に向かって細くなるテーパ状に形成され、第2継手部13は、その外周面が略短円筒形に形成されている。
【0023】
この第1継手部12は、図3(a)、(b)に示すように、そして第2継手部13は、図4(a)、(b)に示すように、それぞれが円環状体であり、例えば鍛造加工によって形成されている。これら第1継手部12及び第2継手部13は、それぞれの第1及び第2締結端部18、19の内周面に沿って円環状の第1突条20及び第2突条21が形成されている。これら第1締結端部18及び第1突条20の下端面、並びに第2締結端部19及び第2突条21の上端面には、ボルト挿通用の第1溝部22及び第2溝部23がそれぞれ4つずつ形成されている。これらそれぞれの第1及び第2溝部22、23は、互いに合わさった状態で円孔(ボルト挿通孔)を形成するものであり、それぞれの断面が略半円形であって同一の大きさである。そして、これら第1及び第2溝部22、23は、それぞれと対応する第1及び第2締結端部18、19のそれぞれの周方向に沿って90°おきに配置され、その半径方向に形成されている。
【0024】
また、図3及び図4に示すように、第1及び第2締結端部18、19のそれぞれの端面には、軸方向に平行する略短円柱形の空間を形成するように、それぞれが略同一の大きさの第1凹部24及び第2凹部25が2つずつ形成されている。そして、この第1及び第2凹部24、25が合わさって形成される略短円柱形の空間内に、その大きさと対応する大きさの略短円柱形の係合体26が配置されるようになっている(図1及び図2(b)参照)。ただし、この第1及び第2凹部24、25の直径Dは、第1締結端部18及び第1突条20の下端面、並びに第2締結端部19及び第2突条21の下端面のそれぞれの肉厚よりも大きい寸法である。従って、第1及び第2締結端部18、19のそれぞれの外周面、並びに第1及び第2突条20、21のそれぞれの内周面には、この第1及び第2凹部24、25が形成されている箇所で、矩形の切欠き部27、28が形成されたようになっている。このように切欠き部27、28が形成されているので、図1に示すように、この第1継手部12と第2継手部13とを締結したときに、第1及び第2凹部24、25内に係合体26が装着されていることを確認することができる。また、この第1及び第2凹部24、25が合わさって形成される短円柱形の空間は、第1及び第2締結端部18、19の周方向に沿って、180°おきに合計2つ設けてある。
【0025】
締結部材15は、図2(a)、(b)の各断面図に示すように、略円弧状に屈曲形成された部材であり、合計4つ設けられている。これら4つの各締結部材15は、同一の形状であり、第1及び第2突条20、21に装着することができる長さに形成されている。各締結部材15の外周面には、図2(a)に示すように、挟着凹部29が形成されており、挟着凹部29は、互いに当接する第1及び第2突条20、21の外面形状と対応する形状となっている。
【0026】
つまり、挟着凹部29は、図2(a)に示すように、縦断面形状が略台形であり、上下の各挟着面29a、29aが中心に向かうに従って互いに接近するテーパ面として形成されている。そして、第1及び第2突条20、21も、縦断面形状が略台形であり、上下の各被挟着面20a、20aが中心に向かうに従って互いに接近するテーパ面として形成されている。また、図2(b)に示すように、各締結部材15の中心には、ボルト挿通孔15aが形成されている。
【0027】
ボルト14は、図2(b)に示すように、ボルト挿通孔15a、並びに第1及び第2溝部22、23で形成されたボルト挿通孔に通して、そのボルト14の先端にナット30を螺合させることができる長さに形成されている。そして、このボルト14を締め付けたときに、ボルト14の頭部14aによって、締結部材15を第1及び第2突条20、21側に引き付けて押し付けることができ、この際に、締結部材15の挟着凹部29に形成されているテーパ形状の挟着面29a、29aが、第1及び第2突条20、21に形成されているテーパ形状の被挟着面20a、20aを楔作用によって強力に挟み込むこととなり、その結果、第1継手部12と第2継手部13とを、それぞれの第1及び第2締結端部18、19で強力に圧着させて締結することができる。また、4つの各締結部材15の外面の曲率半径R1は、第1及び第2突条20、21の曲率半径R2よりも大きい寸法となっている。それぞれをこのような曲率半径に形成することによって、各締結部材15をボルト14で締め付けて第1及び第2突条20、21に押し付けたときに、各締結部材15が第1及び第2突条20、21に沿って変形することができ、これによって、挟着凹部29の挟着面29a、29aの略全体を、第1及び第2突条20、21の被挟着面20a、20aに当接させることができる。これによって、強力な楔作用で第1及び第2継手部12、13を互いに締結することができる。
【0028】
また、図1に示すように、この第1及び第2継手部12、13の外周面には、第1及び第2凹部24、25のそれぞれに対応させて合計4つの座ぐり部31が形成されている。この座ぐり部31は、ボルト14を締め付けるための締付装置(図示せず)を配置できるようにするためのものである。
【0029】
更に、図2(a)に示すように、第1継手部12と上側杭材8とが結合する溶接部32、及び第2継手部13と下側杭材9とが結合する溶接部33には、それぞれ裏あて金具34、35を装着してある。そして、裏あて金具35の上端面には、端板36を溶接してある。
【0030】
次に、上記のように構成される捩じ込み式の拡頭杭(異径杭)7を地中に埋設する手順を説明する。例えばまず、工場等において図1に示す上側杭材8と第1継手部12とを溶接等によって互いに結合すると共に、図1に示す下側杭材9と第2継手部13とを溶接等によって互いに結合する。そして、施工現場において、例えば図5に示す施工機械45を使用して、第2継手部13が結合された下側杭材9を回転させながら地中に捩じ込む。このとき、下側杭材9の下端部に設けられている掘削刃及び捩じ込み用羽根11が土砂中に食い込んでいき、これが推進力となって下側杭材9が地中に捩じ込まれていく。そして、第2継手部13が地面近くに露出した状態になるまで下側杭材9を埋設する。
【0031】
次に、第1継手部12が結合された上側杭材8をクレーン等で吊り下げて、その第1継手部12を第2継手部13上に載置する。そして、第1継手部12と第2継手部13とを4本のボルト14によって締結する。ただし、第1継手部12を第2継手部13上に載置する前に、図2(b)に示すように、4本の各ボルト14に対して締結部材15及びナット30を緩く仮装着したものを、第2継手部13に形成されている4つの各第2溝部23に配置しておく。そして、第2継手部13の第2締結端部19に形成されている2つの各第2凹部25にそれぞれ係合体26を装着しておく。
【0032】
このようにして拡頭杭7を製作することができ、この拡頭杭7を、図5に示すように、施工機械45を使用して回転させながら地中に捩じ込んで埋設することができる。
【0033】
また、図2(a)ではボルト14を省略しているが、第1継手部12と第2継手部13とを突き合わせた状態で、ボルト14を締め付けることで、締結部材15が第1突条20と第2突条21とを楔作用によって挟み込むこととなり、両者を軸方向に対して強力に圧着結合させることができる。
【0034】
更に、図1及び図2に示す異径杭継手10、異径杭継手構造、及び拡頭杭7によると、施工現場において、ボルト14及びナット30のネジ締め作業によって、大径の上側杭材8と小径の下側杭材9とを簡単で確実に結合することができる。よって、従来のように、施工現場で溶接作業をする必要がないので、溶接時間によって施工時間が長引くことがなく、比較的短時間で拡頭杭7を埋設することができる。そして、溶接技術者を、それぞれの施工現場に配置する必要もない。また、上側杭材8と下側杭材9とをボルト14、ナット30、及び締結部材15を使用して締結できるので、溶接精度のばらつきによる杭材8、9どうしの結合力のばらつきを解消することができ、予め定めた結合力で杭材8、9どうしを結合することができる。
【0035】
また、例えば杭材の直径の大きさに応じて複数種類の大きさの異径杭継手10を用意(標準化)しておくことによって、大径の上側杭材8及び小径の下側杭材9のそれぞれの寸法が決定すれば、それらの杭材を結合することができる異径杭継手10を簡単に選択して使用することができる。
【0036】
更に、図2(b)に示すように、各係合体26が装着される第1及び第2凹部24、25によって形成される各空間の形状、並びに各係合体26の形状をそれぞれ略短円柱形とすることによって、第1及び第2凹部24、25の内周面と、係合体26の外周面との接触面積が曲面となり、平面とした場合と比較して、接触面積を大きくすることができ、単位面積当たりの圧縮応力及び剪断応力を小さくすることができる。また、係合体26の当接面が略短円筒形であるので、当接面での応力分布の変化を滑らかにすることができ、応力集中を防止することができる。
【0037】
そして、第1及び第2凹部24、25によって形成される各空間の形状、及び係合体26の形状を略短円柱形とし、これら第1及び第2凹部24、25の中心を異径杭継手10の軸方向と平行して配置したので、第1及び第2凹部24、25の内周面に作用する応力分布は、第1及び第2締結端部18、19の肉厚の中央部で最も大きくなり、締結端部18、19の内周面側及び外周面側ではそれよりも小さくなる。これによって、この第1及び第2凹部24、25の内周面に作用する大きな押圧力(回転トルクに基づく力)によって、第1及び第2継手部12、13が破損することを効果的に防止することができる。
【0038】
また、図1に示すように、第1継手部12は、外周面が第1結合端部(上側開口縁部)16から第1締結端部(下側開口縁部)18の下方に向かうに従って縮径するテーパ状に形成されているので、この拡頭杭7を地中に捩じ込みながら埋設するときに、第1継手部12の土砂に対する摩擦抵抗を低減することができる。そして、第1継手部12の外周面を略短円筒形とするよりも、この第1継手部12の重量を軽量化することができるし、材料費を低減することができる。
【0039】
ところで、図5に示すようにして拡頭杭7を、例えば軟弱地盤に埋設してこれを基礎杭として使用するときは、捩じ込み用羽根11が形成されている下端部(小径の下側杭材9)を、地中の支持層に到達させることによって大きな支持力を得ることができる。そして、大径の上側杭材8は、軟弱層に配置されるが、大きな曲げモーメントに抗することができるので、例えば地震時における水平変位量を抑制することができる。そして、下側杭材9を上側杭材8よりも小径とすることによって、その分だけ下側杭材9の材料費を低減することができるし、この拡頭杭7を経済的な作業量によって捩じ込んで埋設できるようにすることができる。
【0040】
ただし、上記実施形態では、図5に示すように、異径杭継手10、異径杭継手構造、及び拡頭杭7を捩じ込み式の鋼管杭に適用したが、これに代えて、打ち込み装置による打設式の鋼管杭や、予め穿設した穴内に拡頭杭7を挿入して設置する方式の拡頭杭に適用することができる。
【0041】
そして、上記実施形態では、図2(b)に示すように、第1及び第2凹部24、25で形成される短円柱形の空間は、第1及び第2締結端部18、19の周方向に沿って、180°おきに合計2つ設けて、各空間に係合体26を装着したが、これに代えて、第1及び第2凹部24、25で形成される空間を3つ以上設けて、各空間内に係合体26を装着してもよい。この際、3つ以上の各空間を、第1及び第2締結端部18、19の周方向に沿って等間隔に設けるとよい。このようにすると、3つ以上の各係合体26は、この拡頭杭7に掛かる回転トルクを略均等に受けるようにすることができる。
【0042】
また、上記実施形態の異径杭継手10を鋼製としたが、これ以外の例えばステンレス鋼や他の合金で形成してもよい。
【0043】
更に、上記実施形態では、図5に示すように、異径杭継手10を1つ使用した拡頭杭7を例に挙げて説明したが、異径杭継手10を2つ以上使用することによって、上記と同様にして、直径の異なる3種類以上の杭材を備える拡頭杭を製作しながら埋設することができる。
【0044】
例えば図6に示す拡頭杭42は、大径の上側杭材37と、それよりも小径である中径の中間筒体38とを上記実施形態と同等の第1異径杭継手39を介して結合し、そして、この中径の中間筒体38と、それよりも小径の下側杭材40とを上記実施形態と同等の第2異径杭継手41を介して結合したものである。なお、図には示さないが、下側杭材9の下端部には、捩じ込み用羽根11が設けられている。また、第1異径杭継手39の外径は、第2異径杭継手41の外径よりも大きい寸法に設定されている。図6に示す43は溶接部である。
【0045】
また、図7に示す拡頭杭44は、大径の上側杭材37と、それよりも小径の下側杭材40とを上記実施形態と同等の第1異径杭継手39及び第2異径杭継手41を介して結合したものである。なお、図には示さないは、下側杭材40の下端部には、捩じ込み用羽根11が設けられている。また、第1異径杭継手39を構成する第2継手部13の第2結合端部17と、第2異径杭継手41を構成する第1継手部12の第1結合端部16とが溶接(溶接部43)されて互いに結合している。このようにすると、図6に示す中間筒体38を省略することができる。
【0046】
更に、上記実施形態では、図1に示すように、上側杭材8を大径のものとし、下側杭材9を小径のものとしたが、これに代えて、上側杭材8を小径のものとし、下側杭材9を大径のものとしてもよい。このような異径杭は、例えば軟弱地盤用の摩擦杭として使用されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係る異径杭継手、異径杭継手構造、及び異径杭は、施工現場で溶接作業をする必要がなく、ネジ締め作業によって大径の第1杭材と小径の第2杭材とを簡単で確実に結合することができる優れた効果を有し、このような異径杭継手、異径杭継手構造、及び異径杭等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施形態に係る拡頭杭に設けられている異径杭継手を示す正面図である。
【図2】(a)は同実施形態に係る異径杭継手を示すB−B断面図、(b)は同実施形態に係る異径杭継手を示すA−A断面図である。
【図3】(a)は同実施形態に係る異径杭継手を構成する第1継手部を示す半断面図、(b)はこの第1継手部を示す底面図である。
【図4】(a)は同実施形態に係る異径杭継手を構成する第2継手部を示す半断面図、(b)はこの第2継手部を示す平面図である。
【図5】同実施形態に係る拡頭杭を、施工機械を使用して地中に捩じ込む状態を示す断面図である。
【図6】同発明の他の実施形態に係る拡頭杭を示す正面図である。
【図7】同発明の更に他の実施形態に係る拡頭杭を示す正面図である。
【図8】従来の拡頭杭を地中に捩じ込む状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
7、42、44 拡頭杭
8、37 上側杭材(第1杭材)
9、40 下側杭材(第2杭材)
10 異径杭継手
11 捩じ込み用羽根
12 第1継手部
13 第2継手部
14 ボルト
14a ボルトの頭部
15 締結部材
15a ボルト挿通孔
16 第1結合端部
17 第2結合端部
18 第1締結端部
19 第2締結端部
20 第1突条
20a 被挟着面
21 第2突条
22 第1溝部
23 第2溝部
24 第1凹部
25 第2凹部
26 係合体
27、28 切欠き部
29 挟着凹部
29a 挟着面
30 ナット
31 座ぐり部
32、33、43 溶接部
34、35 裏あて金具
36 端板
38 中間筒体
39 第1異径杭継手
41 第2異径杭継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径の第1杭材と、それよりも小径の第2杭材とを互いに結合するためのものであり、前記第1杭材の端部を結合することができる第1継手部と、前記第2杭材の端部を結合することができる第2継手部とを備え、前記第1継手部及び前記第2継手部の互いに突き合わされる第1締結端部及び第2締結端部のそれぞれの内面には、第1突起及び第2突起が設けられ、前記第1及び第2締結端部が突き合わされた状態で、前記第1及び第2突起を締結部材が挟み込み、この締結部材を、前記第1及び第2締結端部の半径方向に貫通して配置されるボルトで前記第1及び第2締結端部側に引き付けることによって、前記第1継手部と前記第2継手部とを互いに締結することができる異径杭継手であって、
前記第1継手部の前記第1杭材の端部と結合される第1結合端部は、前記第2継手部の前記第2杭材の端部と結合される第2結合端部よりも大径に形成されていることを特徴とする異径杭継手。
【請求項2】
前記第1及び第2締結端部のそれぞれの端面には、軸方向に平行する略短円柱形の空間を形成するように第1及び第2凹部が形成され、この第1及び第2凹部内に、それらが合わさって形成される略短円柱形の空間内に、その大きさと対応する大きさの略短円柱形の係合体が配置されることを特徴とする請求項1記載の異径杭継手。
【請求項3】
前記第1継手部の外周面は、前記第1杭材を結合することができる第1結合端部から前記第1締結端部に向かうに従って縮径するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の異径杭継手。
【請求項4】
大径の第1杭材と、それよりも小径の第2杭材とを互いに結合するためのものであり、前記第1杭材の端部と結合する第1継手部と、前記第2杭材の端部と結合する第2継手部とを備え、前記第1継手部及び前記第2継手部の互いに突き合わされた第1締結端部及び第2締結端部のそれぞれの内面には、第1突起及び第2突起が設けられ、これら第1及び第2突起を締結部材が挟み込み、この締結部材を、前記第1及び第2締結端部の半径方向に貫通して配置されたボルトで前記第1及び第2締結端部側に引き付けることによって、前記第1継手部と前記第2継手部とを互いに締結する異径杭継手構造であって、
前記第1継手部の前記第1杭材の端部と結合される第1結合端部が、前記第2継手部の前記第2杭材の端部と結合される第2結合端部よりも大径に形成されていることを特徴とする異径杭継手構造。
【請求項5】
大径の第1杭材と、それよりも小径の第2杭材と、前記第1杭材と前記第2杭材とを結合する異径杭継手とを備える異径杭であって、
前記異径杭継手は、前記第1杭材の端部と結合される第1継手部と、前記第2杭材の端部と結合される第2継手部とを備え、前記第1継手部及び前記第2継手部の互いに突き合わされている第1締結端部及び第2締結端部のそれぞれの内面には、第1突起及び第2突起が設けられ、これら第1及び第2突起を締結部材が挟み込み、この締結部材を、前記第1及び第2締結端部の半径方向に貫通して配置されたボルトで前記第1及び第2締結端部側に引き付けることによって、前記第1継手部と前記第2継手部とが互いに締結され、
前記第1継手部の前記第1杭材の端部と結合する第1結合端部が、前記第2継手部の前記第2杭材の端部と結合する第2結合端部よりも大径に形成されていることを特徴とする異径杭。
【請求項6】
大径の前記第1杭材が上側杭材であって、小径の前記第2杭材が下側杭材であり、前記第2杭材の下端部又はその近傍に捩じ込み用羽根が形成されていることを特徴とする請求項5記載の異径杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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