説明

異性化によるm−置換フェニルアルカノールの製造方法

本発明の対象は、一般式(I)[式中、R1はC1〜C5−アルキルであり、R2、R3、R4およびR5は互いに独立して水素またはメチルを表す]のm−置換フェニルアルカノールの製造方法であって、一般式(II)[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は前記式(I)に示した意味を有する]のp−置換フェニルアルカノールを、フリーデルクラフツ触媒の存在下で、前記式(I)のm−置換フェニルアルカノールに異性化することを特徴とする製造方法である。前記式(I)のm−置換フェニルアルカノールから酸化または脱水素によって、芳香物質および香気物質として公知の有用生成物として相応のアルデヒドを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、p−置換フェニルアルカノールの異性化によるm−置換フェニルアルカノールの製造方法である。m−置換フェニルアルカノール、およびこれより製造されたm−置換フェニルアルカナール、例えば臭気物質3−フェニル−1−プロパノールの誘導体は、香料として興味深い。
【0002】
m−置換フェニルアルカノールを製造するために、種々の合成が公知である。WO2008/053148においては、1−tert−ブチル−3−エチルベンゼンから出発して、3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナールを製造するための3段階の合成が記載されている。ここでは、出発化合物をまず臭素化して1−tert−ブチル−3−(1−ブロモエチル)ベンゼンにし、引き続き脱離して相応の置換スチレンにする。ヒドロホルミル化によって、引き続き3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナールが得られる。大規模な工程には、該合成は収率が小さいため、あまり適さないように思われる。
【0003】
2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナールおよび2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパナールの製造に、Ishii他は(J.Org.Chem.2005,70,5471−5474)、メタクロレインを用いてtert−ブチルベンゼンもしくはイソプロピルベンゼンをパラジウム触媒によって酸化カップリングし、引き続きパラジウム触媒によって水素化することによって成功した。該カップリング工程では、Pd(OAc)2およびH4PMo11VO40×26H2Oから成る触媒系が使用される。約7モル%の大量の触媒が必要となる。約65%の収率では、m/p比は56/44(2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナールの場合)もしくは51/40(2−メチル−3−(3−イソ−ブチルフェニル)プロパナールの場合)である。高価な触媒の使用量が多く、m−異性体への選択性が小さいため、該方法も大規模な工程にはあまり適さないように思われる。
【0004】
EP0045571では、2−メチル−3−フェニルプロパノールから2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノールおよび2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノールへのフリーデルクラフツアルキル化が記載されている。アルキル化試薬として、イソブチレン、ジイソブチレンおよび塩化tert−ブチルが使用される。触媒として、塩化鉄およびリン酸、ならびに溶剤として塩化メチレンまたはリン酸が使用される。反応条件および触媒に応じて、1/13〜1/5のm/p比が得られる。合計収率(m−異性体およびp−異性体)は、52%まで達する。
【0005】
DE2952719では、同様に2−メチル−3−フェニルプロパノールの塩化鉄触媒によるフリーデルクラフツアルキル化が記載される。溶剤であるシクロヘキサンまたはジクロロエタンの中では、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノールの収率84〜86%が得られた。m−異性体化合物(2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール)の形成は、立証されなかった。前記記載のフリーデルクラフツアルキル化の欠点は、形成されたm−異性体化合物の量が少ないことである(m:p比は最大1:5)。
【0006】
それに対して、本発明による方法は、非常に興味深い相応に置換されたフェニルアルカナールの前駆体として用いられるm−置換フェニルアルカノールを、安価に、かつ収率良く簡単な方法で製造できるようにする。
【0007】
本発明は、p−位で置換されたフェニルアルカノールの異性化によって得ることができる、m−位で置換されたフェニルアルカノールの製造方法に関する。異性化は、特定のフリーデルクラフツ触媒で行われる。本発明の対象は、したがって一般式(I)
【化1】

[式中、R1はC1〜C5−アルキルであり、R2、R3、R4およびR5は互いに独立して水素またはメチルを表す]のm−置換フェニルアルカノールの製造方法において、一般式(II)
【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のp−置換フェニルアルカノールを、フリーデルクラフツ触媒の存在下で、前記式(I)のm−置換フェニルアルカノールに異性化することを特徴とする。
【0008】
驚くべきことに、p−置換フェニルアルカノールからm−置換フェニルアルカノールへの異性化反応では、一定の条件のもとで1/1超のm/p異性体比が得られることが判明した。
【0009】
アルキル基として、R1は例えば:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルが考慮に値する。好ましいアルキル基R1は:エチル、イソプロピル、イソブチルおよびtert−ブチルである。
【0010】
好ましくは、一般式(III)
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のm−置換フェニルプロパノールの製造方法において、一般式(IV)
【化4】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のp−置換フェニルプロパノールを、フリーデルクラフツ触媒の存在下で、前記式(III)のm−置換フェニルアルカノールに異性化することを特徴とする。好ましくは、R1はエチル、イソプロピル、イソブチルまたはtert−ブチルである。
【0011】
特に好ましいのは、一般式(V)
【化5】

[式中、R1およびR2は、前記式(I)に示した意味を有する]のp−置換フェニルプロパノールから出発することを特徴とする方法である。好ましくは、R1はエチル、イソプロピル、イソブチルまたはtert−ブチルである。
【0012】
殊に好ましい方法は、出発化合物として2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノールを、フリーデルクラフツ触媒の存在下で、特に塩化アルミニウム(AlCl3)の存在下で、2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノールに異性化することを特徴とする。
【0013】
同じく特に好ましい方法は、出発化合物として2−メチル−3−(4−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノールまたは3−(4−イソプロピルフェニル)ブタノールを使用し、フリーデルクラフツ触媒の存在下で、化合物2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノールまたは3−(3−イソプロピルフェニル)ブタノールへの異性化を実施することを特徴とする。
【0014】
触媒として、一般的なフリーデルクラフツ触媒が使用されてよい。例として、AlCl3、AlBr3、TiCl4、ZrCl4、VCl3、ZnCl2、FeBr3およびFeCl3が挙げられる。好ましくは、フリーデルクラフツ触媒のAlCl3またはAlBr3が使用される。使用されるp−置換フェニルアルカノール化合物のモル量に対して、一般に1〜200モル%の触媒量が使用される。好ましくは、使用されるp−置換フェニルアルカノール化合物のモル量に対して、33〜110モル%の触媒量である。
【0015】
前記異性化は、0℃〜100℃の温度で行われる。特に好ましくは、10℃〜50℃の温度である。反応時間は、30分〜24時間である。特に好ましくは、反応時間は1時間〜6時間である。
【0016】
前記反応は、溶剤なしで、または溶剤中で実施できる。好適な溶剤は:シクロヘキサン、トルエン、p−tert−ブチルトルエン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。特に好ましくは、ジクロロメタンおよびクロロベンゼンである。
【0017】
前記異性化のための好ましい出発物質は、以下の基質である:2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(4−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノール、3−(4−イソプロピルフェニル)ブタノール。そこから前記反応の主要生成物(収率25%超において、異性比m/pは1/1超で)として以下のm−異性体が生じる:2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパノールおよび3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノール、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタノール。特に好ましくは、基質2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノールである。
【0018】
前記反応は、溶剤に溶けたフェニルアルカノールに触媒を入れることで一般に行われる。後処理は、水を用いる後処理によって、好ましくはアルカリ性のpH値が調整されるためアルカリの存在下で、殊に好ましくはアルカリ液、例えば苛性ソーダ溶液および/または苛性カリ溶液の存在下で、ならびに溶剤の蒸留によって行われる。粗生成物の精製およびm−置換フェニルアルカノールの単離は、一般に蒸留によって行われる。
【0019】
反応時に発生した、芳香族化合物がモノ置換およびトリ置換された、一般式
【化6】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のフェニルアルカノールは、異性化反応に再び戻すことができる副生成物である。m−置換生成物が、戻す前に(後処理および蒸留により)反応材料から取り除かれるため、これら生成物を反応材料に戻すことによって、p−置換およびm−置換成分との平衡、ならびにモノ−置換およびトリ−置換フェニルアルカノールとの平衡が常に新たに調整され、それによって所望のm−置換生成物の高められた割合が得られる。
【0020】
前記式(I)の本発明によって製造されたアルカノールは、それ自体公知の脱水素法または酸化法に基づいて、相応のアルデヒドに変換されうる(例えば:Houben−Weyl"Methoden der organischen Chemie"(有機化学の方法),Band 7/1、S.160ff,S.171f参照)。これら物質部類の特に興味深い化合物は、2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパナール、3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパナール、3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナールおよび3−(3−イソプロピルフェニル)ブタナールである。
【0021】
EP−A−0045571に記載の通り、フェニルプロパノールは酸化または脱水素によって相応のフェニルプロパナールに変換されうる。該変換は、例えば亜クロム酸銅触媒による液相脱水素によって成功する。
【0022】
アルデヒドへの前記変換に好ましい出発材料は、2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノール、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタノールである。ここから以下のアルデヒドが生じる:2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパナール、3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパナール、3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナール、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタナール。
【0023】
本発明の更なる対象は、したがって前記式(I)のm−置換フェニルアルカノールから酸化または脱水素によって得られる一般式(VI)
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]の有用生成物の製造であって、これは芳香物質および香料として公知である。前記式(VI)
【化8】

[式中、R1はC1〜C5−アルキルであり、R2、R3、R4およびR5は互いに独立して水素またはメチルを表す]の芳香物質の本発明による製造方法は、前記式(II)
【化9】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のp−置換フェニルアルカノールを、フリーデルクラフツ触媒の存在下で、前記式(I)
【化10】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のm−置換フェニルプロパノールに異性化し、引き続き前記式(I)の得られたm−置換フェニルアルカノールを酸化または脱水素によって前記式(VI)のm−置換フェニルアルカナールに変換することを特徴とする。
【0024】
前記式(VI)の本方法によって得られたアルデヒドは、一部は公知であり、また一部は新たな芳香物質および香気物質である。新たな芳香物質および香気物質は一般式(VII)
【化11】

に相当し、本発明の更なる対象を表す。
【0025】
さらに驚くべきことに、前記式(VI)の本発明による方法によって得られたアルデヒドの1種または複数種のアルデヒドと別の香料との組み合わせによって、毒性学的に有利な配合物が製造され得ることが判明した。本発明の更なる対象は、したがって前記式(VI)の少なくとも1種のアルデヒド、特に一般式(VIII)
【化12】

[式中、R1はtert−ブチルである]のアルデヒドを有する配合物である。有利には、該配合物が一般式(IX)
【化13】

[式中、R1はtert−ブチルである]のアルデヒドを0〜1000ppm有する場合の配合物である。
特に有利には、前記式(IX)のアルデヒドを0ppm有する配合物である。
前記式(VI)のm−置換アルデヒド以外に、特に前記式(VIII)のm−置換アルデヒド以外に、該配合物は以下の香料の1種または複数種を有してよい:
【化14】

【化15】

【化16】

【0026】
前記式(VI)の本発明によって製造されたアルデヒド、特に前記式(VIII)のアルデヒドおよび前記式(X)ないし(XXIII)の少なくとも1種の香料を有する本発明による配合物は、有利な毒性学的特性において際立つ有益な配合物を表す。
【0027】
本発明を、以下の例によってさらに詳しく具体的に説明する。実施例において、%表示はすべてモル%を表す。
【0028】
実施例
例1
327g(1.50モル)の2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノールを、500gのジクロロメタンに入れた。4時間の間に、220g(1.65モル)のAlCl3を少量ずつ室温で添加した。さらに60分間室温で撹拌した。前記反応混合物をゆっくりと1050gの氷水に加え、後処理した。室温まで温めて、670gの50%の苛性ソーダ液を添加した。相を分離し、有機相を水(2×200ml)で洗浄した。前記溶剤を留去し、粗生成物を1mbarで蒸留した。104gの2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(33%)、81gの2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(26%)が得られた。副生成物として、2−メチル−3−フェニルプロパノールおよび3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノールが得られた(合計約35%)。
【0029】
例2
2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(30%)、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(48%)および3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノール(18%)から成る2.1gの混合物に、2.1gの2−メチル−3−フェニルプロパノールおよび6.3gのジクロロメタンを混ぜた。2.9gのAlCl3を少量ずつ室温で添加した。7時間室温で撹拌した後、水および苛性ソーダ液で後処理し、溶剤を除去した。以下の組成を有する混合物が得られた:2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(34%);2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(21%);3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノール(5%);2−メチル−3−フェニルプロパノール(37%)。
【0030】
例3
2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(30%)、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(48%)および3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチル−プロパノール(18%)から成る2.1gの混合物に、2.1gの2−メチル−3−フェニルプロパノールおよび6.5gの4−tert−ブチルトルエンを混ぜた。2.9gのAlCl3を少量ずつ室温で添加した。7時間室温で撹拌した後、水および苛性ソーダ液で後処理し、前記溶剤を除去した。以下の組成を有する混合物が得られた:2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(38%);2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(23%);3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノール(17%);2−メチル−3−フェニルプロパノール(12%)。
【0031】
例4
2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(30%)、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(48%)および3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノール(18%)から成る2.1gの混合物に、2.1gの2−メチル−3−フェニルプロパノールを混ぜた。2.9gのAlCl3を少量ずつ室温で添加した。7時間室温で撹拌した後、水および苛性ソーダ液で後処理した。以下の組成を有する混合物が得られた:2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノール(31%);2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール(17%);3−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノール(5%);2−メチル−3−フェニルプロパノール(32%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、R1はC1〜C5−アルキルであり、R2、R3、R4およびR5は互いに独立して水素またはメチルを表す]のm−置換フェニルアルカノールの製造方法において、一般式(II)
【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(I)に示した意味を有する]のp−置換フェニルアルカノールをフリーデルクラフツ触媒の存在下で、前記式(I)のm−置換フェニルアルカノールに異性化することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
一般式(III)
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、請求項1に示した意味を有する]のm−置換フェニルプロパノールの請求項1に記載の製造方法において、一般式(IV)
【化4】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、請求項1に示した意味を有する]のp−置換フェニルプロパノールをフリーデルクラフツ触媒の存在下で、前記式(III)のm−置換フェニルアルカノールに異性化することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1および2に記載の方法において、一般式(V)
【化5】

[式中、R1およびR2は請求項1に示した意味を有する]のp−置換フェニルプロパノールから出発することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、R1はエチル、イソプロピル、イソブチルおよびtert−ブチルであるp−置換フェニルプロパノールから出発することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、フリーデルクラフツ触媒としてAlCl3、AlBr3、TiCl4、ZrCl4、VCl3、ZnCl2、FeBr3、FeCl3を使用することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、フリーデルクラフツ触媒としてAlCl3またはAlBr3を使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法において、フリーデルクラフツ触媒を、使用されるp−置換フェニルプロパノールのモル量に対して1から200モル%まで、特に33から110モル%までの量で使用することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、異性化を0から100℃までの温度で実施することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノールを2−メチル−3−(3−tert−ブチルフェニル)プロパノールに異性化することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、2−メチル−3−(4−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノールまたは3−(4−イソプロピルフェニル)ブタノールから出発して、異性化を実施することを特徴とする方法。
【請求項11】
一般式(VI)
【化6】

[式中、R1はC1〜C5−アルキルであり、R2、R3、R4およびR5は互いに独立して水素またはメチルを表す]の芳香物質の製造方法において、前記式(II)
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は前記式(VI)に示した意味を有する]のp−置換フェニルアルカノールを、フリーデルクラフツ触媒の存在下で前記式(I)
【化8】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記式(II)に示した意味を有する]のm−置換フェニルプロパノールに異性化し、引き続き前記式(I)の得られたm−置換フェニルプロパノールを酸化または脱水素によって前記式(VI)のm−置換フェニルアルカナールに変換することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
一般式
【化9】

の芳香物質および香気物質。
【請求項13】
前記式(VI)
【化10】

[式中、R1はC1〜C5−アルキルであり、R2、R3、R4およびR5は互いに独立して水素またはメチルを表す]の少なくとも1種の芳香物質および香気物質を、メントール、トナライド、イソEスーパー、ガラクソライド、アンブロキシド、シトラール、リナロール、ゲラニオール、メチルイオン、フェニルエチルアルコール、ヘディオン、ジヒドロメルセノールからなる1種または複数種の芳香物質および香気物質と合わせて有する配合物。
【請求項14】
請求項13に記載の配合物において、一般式(VIII)
【化11】

[式中、R1はtert−ブチルである]の芳香物質および香気物質を、メントール、トナライド、イソEスーパー、ガラクソライド、アンブロキシド、シトラール、リナロール、ゲラニオール、メチルイオン、フェニルエチルアルコール、ヘディオン、ジヒドロミルセノールからなる少なくとも1種または複数種の芳香物質および香気物質と合わせて有する配合物。
【請求項15】
請求項13および14のいずれか1項に記載の配合物において、一般式(IX)
【化12】

[式中、R1はtert−ブチルである]の芳香物質および香気物質が、該式(IX)のアルデヒドを0〜1000ppmの含有量で配合物に含まれている配合物。
【請求項16】
請求項15に記載の配合物において、前記式(IX)のアルデヒドの含有量が0ppmである配合物。

【公表番号】特表2013−508331(P2013−508331A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534659(P2012−534659)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065673
【国際公開番号】WO2011/048068
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】