異方導電フィルムの製造方法
【課題】 微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等であっても、接続信頼性と絶縁性とに優れた端子接続が可能となる異方導電フィルムを安価に製造できる方法を提供する。
【解決手段】導電粒子が特定の領域に規則的に配置されている異方導電フィルムの製造方法であって、予め磁性媒体の特定の領域に磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域に捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法であり、更に 捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する異方導電フィルムの製造方法。
【解決手段】導電粒子が特定の領域に規則的に配置されている異方導電フィルムの製造方法であって、予め磁性媒体の特定の領域に磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域に捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法であり、更に 捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する異方導電フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な回路同士の電気的接続、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)とフレキシブル回路基板の接続や、半導体ICとIC搭載用基板のマイクロ接合等に用いることのできる異方導電フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器の小型化・薄型化に伴い、微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等の必要性が飛躍的に増大してきており、その接続方法として、半田接合技術の進展とともに、新しい材料として、異方性の導電性接着剤やフィルムが使用されている(例えば、特許文献1〜13参照)。特に、最近、半田付けでは対応できないLCDパネルとドライバICを搭載したTCP(テープキャリアパッケージ)との接続に適用され、LCDには必要不可欠の接続材料となっている。
【0003】
この方法は、図1にその一例を示したように、接続したい部材間に異方導電フィルムを挟み加熱加圧することにより、面方向の隣接端子間では電気的絶縁性を保ち、上下の端子間では電気的に導通させるものである。このような用途に異方導電フィルムが多用されてきたのは、被着体の耐熱性がないことや微細な回路では隣接端子間で電気的にショートしてしまうなど半田付けなどの従来の接続方法が適用できないことが理由である。
【0004】
特許文献14等に開示されているとおり、一般に異方導電フィルムは、絶縁性の接着剤中に導電粒子が均一に分散したもので、IC電極と基板電極とで位置合わせを行い、異方導電フィルムを圧着することにより異方導電フィルム中の導電粒子が圧接されて重なり合う電極間だけが電気的に接続される。
【0005】
この異方導電フィルムは、導電粒子としてはニッケル、金等にて表面をめっきしたプラスチック粒子等が用いられており、絶縁性接着剤としては熱可塑タイプのものと熱硬化タイプのものに分類されるが、最近では熱可塑タイプのものより、信頼性の優れたエポキシ樹脂系の熱硬化タイプのものが広く用いられつつある。
【0006】
近年の回路接続ピッチは微細化が進み、従来の異方導電フィルムでは横導通の問題が生じてきた。図1に示したように、絶縁性接着剤3中に導電粒子2を分散させている場合、異方導電フィルムが圧着されると、絶縁性接着剤の中ほどに位置する導電粒子は端子外に流出しやすく、その結果、隣接端子間に高密度に導電粒子が存在することになり、端子間の絶縁性が不充分になったり、リークやショートを発生する等、絶縁性の保持に問題が生じる。
横導通を防止するためには異方導電フィルム中の導電粒子の混入率を低下させることが考えられるが、導電粒子の混入率を低下させると、導電粒子と端子との接続面積が落ちるので、接続抵抗が高くなるという問題があった。
【0007】
また、製品品質上の問題のほか、一般的に導電粒子は1グラム当たり数千円と非常に高価であり、その多くが本来目的とする端子間の接続に使用されないことは、生産コストの増加に繋がっていた。
【0008】
そのため、導電粒子を規則的に配列させる方式が検討されており、例えば、NEDOのベンチャー企業支援型地域コンソーシアム研究開発(中小企業創造基盤型)ファインピッチ対応異方性導電材の研究開発として、圧着温度で溶融しない樹脂フィルムに孔を開けて、そこに導電粒子を埋め込んだ後、上下を溶融する樹脂で挟み込む方式が提案されている。この方式では、導電粒子を規則的に配列するための格子孔はフォトリソグラフィーとレーザの2つの技術が利用されている。しかし、このような方式では、規則的な孔を開けるための特別なメタルマスクの作製やレーザ照射装置が必要であり、微細なものが得られる反面、製造装置が高価であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献15等に開示されているように、帯電している導電粒子に対して静電的な引力または斥力を作用させることにより特定の領域のみに導電粒子を配置する方法も提案されているが、この方式では、気相中に存在する水分により液架橋による粒子同士の凝集が生じるために粒子の制御に問題があった。
【0010】
特許文献16に開示されているように、磁界を利用した方式も提案されているが、この方式は、導電性磁性体膜と絶縁シェルの二重構造を取る円筒状の導電粒子を樹脂バインダに分散させるものであり、特定領域にのみ導電粒子を配置することを提供する本発明とは異なる。
【0011】
【特許文献1】特開昭59−120436号公報
【特許文献2】特開昭60−84718号公報
【特許文献3】特開昭60−191228号公報
【特許文献4】特開昭61−55809号公報
【特許文献5】特開昭61−274394号公報
【特許文献6】特開昭61−287974号公報
【特許文献7】特開昭62−244142号公報
【特許文献8】特開昭63−153534号公報
【特許文献9】特開昭63−305591号公報
【特許文献10】特開昭64−47084号公報
【特許文献11】特開昭64−81878号公報
【特許文献12】特開平1−46549号公報
【特許文献13】特開平1−251787各号公報
【特許文献14】特開昭61─78069号公報
【特許文献15】特開2002─075580号公報
【特許文献16】特許第3048973号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等であっても、接続信頼性と絶縁性とに優れた端子接続が可能となる異方導電フィルムを安価に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、
(1) 導電粒子が特定の領域に規則的に配置されている異方導電フィルムの製造方法であって、予め磁性媒体の特定の領域に磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域に捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法、
(2) 捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する(1)の異方導電フィルムの製造方法、
(3)捕捉後に絶縁性接着剤で導電粒子を被覆し、固定化する工程を有する(1)又は(2)の異方導電フィルムの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、導電粒子が特定の領域のみに規則的に配列している異方導電フィルムを得ることができるので、微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等であっても、接続信頼性と絶縁性とに優れた端子接続が可能となり、高価な導電性粒子を規則的に配列するために、導電粒子同士の接続による横導通を防止でき、少ない導電粒子で効率よく端子間を導通できるため、安価なコストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、予め磁性媒体の特定の領域にのみ磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域にのみに捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法であり、加えて、捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する製造方法も含むものである。
【0016】
本発明の製造方法の一例を、図2〜図4に基づき説明する。例えば、磁気記録装置を用いて磁性媒体の特定領域のみを磁気記録することにより磁気記録領域と無記録領域を作る。この特定領域のみ磁気記録された磁性媒体に、磁性体である導電粒子を散布することにより磁気記録領域にのみ導電粒子が付着し、特定の領域のみに導電粒子を捕捉することが出来る。
【0017】
特定の領域にのみ磁気記録する方法としては、例えば任意波形発生装置により任意の周波数でパルス状の電気信号を発生させ、磁気記録装置にて、この電気信号を磁気信号に変換して磁性媒体へ磁気記録することにより磁気記録領域と無記録領域を作る方法が挙げられる。磁気記録領域と無記録領域の比率は、パルス信号における一波長当たりのパルス幅を調整することにより容易に変更でき、また、それぞれの領域の大きさは、磁気記録装置にて磁気媒体へ磁気記録する際の走行速度に対して任意波形発生装置で設定する周波数を設定することより調整が可能である。磁気記録装置として、カセットテープレコーダーやビデオカセットレコーダーを用いることが出来る。磁気記録装置および磁気媒体を選定することにより、特定の領域は帯状、島状など自由に調整することができる。
【0018】
あるいは、任意の幅と間隔で縦縞の模様を描き、これをビデオ撮影することで得られる電気信号を任意波形発生装置で発生させる電気信号の代わりとして用いることが出来る。磁気記録領域と無記録領域の比率および幅は、縦縞の模様の幅と間隔で調整できる。例えば、上記信号を、ビデオレコーダを用いて映像信号側から入力した場合、一定間隔の規則的な磁気記録域を形成させることができる。
【0019】
また別の方法としては、例えば、フィルム等の基材に酸化チタンのゾルを塗布した後に焼成する。次いで、特定の領域に相当する箇所のみ開口しているマスクを用いてUV照射を行いながら無電解メッキを行った後、磁化することにより特定の領域にのみ磁気記録することが出来る。これらの方式が特定の領域にのみ磁気記録する方法として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
磁性体である導電粒子を散布する方法は、磁性媒体に磁性体である導電粒子を捕捉出来る方法であれば、特に制限は無く、例えば導電粒子を流動させた槽へ磁性媒体を浸漬させる方式、スプレーで導電粒子を噴霧する方式、導電粒子を分散させた分散液を滴下する方式、導電粒子を分散させた分散液中に磁性媒体を浸漬させる方式などの方法が挙げられるがこの限りではなく、湿式、乾式を問わない。また、磁性媒体へ過剰に付着した導電粒子を取り除く工程を加えてもかまわない。
【0021】
磁性媒体の特定の領域のみに捕捉した導電粒子を、別の基材上へ転写させることもできる。別の基材上へ方法としては、特定の領域のみに捕捉した導電粒子をそのままの状態で転写できる方法であれば特に制限は無く、捕捉している導電粒子を、粘着性を有する基材へ接触させることなどにより転写できる。
【0022】
上記基材としては、特に制限は無いが、例えば粘着層を有する基材を使用することができる。上記粘着層を有する基材は、例えば、基材上に粘着性を有する材料を薄く塗布することにより製造することができる。粘着性があると、導電粒子を転写した後、振動や次工程での外力に対して導電粒子が移動することを防止することができる。
【0023】
上記粘着性を有する材料としては、後に用いる絶縁性接着剤が粘着性を持つものであれば、その絶縁性接着剤を薄く塗布することにより、粘着性のある材料として用いることができる。また、絶縁性接着剤が、溶剤等により希釈された場合、完全に乾燥する前で粘着性を示すものであるならば、同様に粘着性を有する材料として用いることができる。上記粘着性を有する材料は、絶縁性接着剤と異なってもよく、更には、基材自体が粘着性を持つものであれば、別途粘着性を有する材料を塗布する必要はない。
【0024】
磁性媒体は、磁気記録した領域に磁性粒子を捕捉できるものであれば特に制限は無く、1種類の磁性体単独、2種類以上の磁性体を複合化したもの、非磁性体の基材に磁性体を複合化したもの、いずれも利用できる。また、導電粒子の捕捉性を向上させるために磁性媒体上に粘着材を塗布することもできる。この粘着材としては、後に用いる絶縁性接着剤が粘着性を持つものであれば、その絶縁性接着剤を薄く塗布することにより、粘着性のある材料として用いることができる。また、絶縁性接着剤が、溶剤等により希釈された場合、完全に乾燥する前で粘着性を示すものであるならば、同様に粘着性を有する材料として用いることができる。上記粘着性を有する材料は、絶縁性接着剤と異なってもよい。
【0025】
磁性体である導電粒子は、導電性と磁性を有するものであれば特に制限するものではなく、ニッケル、鉄、コバルト、コバルトフェライト、アルミニウムホイスラー合金、マグネタイト、イットリウム鉄ガーネット等の強磁性体金属や、これらと銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、銀、金など各種金属との金属合金、あるいは、金属合金、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラスやセラミック、高分子等で作られた粒子の表面に強磁性体金属や強磁性体合金をコートしたもの等が適用できるが、接続の信頼性や微細な回路接続への適用を考慮すると高分子核材に強磁性体金属被覆を施したものが望ましい。
【0026】
ここで、高分子核材は特に組成などの制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレンブタジエン共重合体等のポリマー中から1種単独あるいは2種以上組み合わせて使用すれば良い。
【0027】
高分子核材の表面に施す金属被覆には特に制限は無いが、導通の安定性を考慮すると通常適用されるニッケルと金の被覆が望ましい。
【0028】
被膜の厚さには特に制限はないが、厚すぎると凝集が生じやすくなるなどの問題があるため、0.01〜0.2μm程度が望ましい。また、被覆の形成方法では、この被覆と高分子核材との密着力・導電性などを考慮し、均一に形成されている方が良いことは言うまでもなく、従来から用いられているメッキなどが望ましい。
【0029】
導電性粒子の粒子径や配合量は、接続したい回路のピッチやパターン、回路端子の厚みや材質等によって適切なものを選ぶことができる。
【0030】
導電性粒子の粒子径は、特に制限はするものではないが、望ましくは平均2〜15μmである方がよい。2μmより小さい場合では、微細な回路接続で高い接続信頼性を得るために導電性粒子数を多く配合することは可能であるが、凝集することなく高分子核材に均一に金属被覆を施すことは現状の技術では極めて困難であり、実際には微細な回路の接続を安定して行うことは困難である。逆に、15μmより大きい場合には、凝集なく均一に金属被覆を施すことは可能であるが、微細な回路を接続する場合には、端子間の電気的絶縁性が保てなくなるため、粒子数はあまり多く配合できず、接続信頼性の向上にも限界がでてくる。例えば、LCDパネルとTCPやFPCとの接続、特に50μmピッチ程度の極ファインピッチ回路の接続においては、平均粒径3〜5μm程度が望ましい。粒度分布はシャープな方が好ましいことは言うまでもなく、平均粒径の±10%以内であることが好ましい。
【0031】
捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程は、加熱加圧の本圧着時に絶縁性接着剤が導電性粒子以外の端子間に充填することを妨げずに導電粒子が移動しないよう固定化できれば特に制限は無く、例えば、導電粒子を捕捉した磁気媒体に熱硬化性絶縁性接着剤を塗布し、十分硬化が進まない程度に加熱した後、更に絶縁性接着剤を塗布するといった、絶縁性接着剤の硬化度の違いを利用する方法が挙げられる。2回に分けて塗布する絶縁性接着剤は同一でも異なるものでも特に制限はない。
【0032】
導電粒子を固定化する工程は、導電粒子を磁性媒体から基材へ転写する時に行っても構わない。例えば、基材に薄く絶縁性接着剤を塗布し、十分硬化が進まない程度に加熱した上に、磁性媒体上に捕捉した導電粒子を転写する方法が挙げられる。磁性媒体上に捕捉した導電粒子を転写する方法についても特に制限は無く、圧力を加え転写する方法、絶縁性接着剤の粘着性を利用して転写する方法、基材の裏側から磁力を加え転写する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明では、捕捉後さらに絶縁性接着剤で導電粒子を被覆する工程を含むことが望ましく、その方法については、特に制限しないが、絶縁性接着剤をコーティング、スプレー噴霧、キャストするなどの方式を使用することができる。
絶縁性接着剤の厚みは、加熱加圧の本圧着時に導電性粒子以外の端子間を満たすに十分な量に相当していればよく、必然的に導電粒子の直径よりも大きな厚みとなる。例えば、LCDパネルとTCPやFPCとの接続においては、10〜20μm程度の厚みが好ましい。
【0034】
基材上に転写された導電粒子を固定化するための絶縁性接着剤は特に限定されず、例えば、接着性シート等に用いられる熱可塑性材料や、熱や光により硬化性を示す材料等が挙げられる。なかでも、接続後硬化させることにより耐熱性や耐湿性に優れることから、硬化性材料が好ましい。特にエポキシ系接着剤として用いられる材料は短時間で硬化し、接着性に優れる等の点から好適に用いられる。硬化性樹脂を使用する場合には、異方導電性フィルムとして使用する際に、溶融流動する必要があるため、導電粒子を固定化させている状態は半硬化状態が好ましい。
【0035】
上記方式にて製造された異方導電フィルムの使用例を図5に示す。十分硬化が進まない程度に加熱した絶縁性接着剤20で導電粒子13を固定化し、さらに絶縁性接着剤20被覆した後、例えば、LCDパネル4上に加熱加圧により仮圧着し、基材15を剥離しTCP5を載せ、加圧により仮止めを行う。更に、加熱加圧により本圧着を行うが、導電粒子は、固定化されているため、端子外に流出しにくく、効率的に端子間を導通させることができる。
【0036】
以下実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0037】
任意波形発生装置としてマルチファンクションシンセサイザ1946(エヌエフ回路ブロック社製)を用い、周波数1kHz、デューティ(波形全体に対するパルス幅の割合)5%、振幅25mVの方形波を発生させ、テープレコーダーMD-F350(シャープ社製)のマイク端子から電気信号を入力した。本テープレコーダーのテープ走行速度は、48mm/秒であるため、上記の任意波形発生装置で発生させた方形波の1サイクルは48μmとなり、そのうち磁気記録領域は2.4μmとなる。この電気信号をテープレコーダーで磁気信号に変換してオーディオカセットテープMG1−46(日立マクセル社製)に入力した。
【0038】
特定の領域のみ磁気記録したオーディオカセットテープを、導電粒子としてミクロパールAU、5μm(積水化学工業製)を0.1wt%分散させたエタノール溶液に浸漬したところ、オーディオカセットテープの幅方向に対して半分の領域に導電粒子で構成された約700μmの帯が走行方向に対して垂直方向に2列並び、それぞれの列において走行方向と平行方向に48μmの間隔で導電粒子が整列している様子が観察された。約700μmの帯状において、導電粒子は連続しており、帯の幅は、3〜4個の導電粒子で構成されていた。一方、磁気記録していないオーディオカセットテープの領域では、ランダムに付着している導電粒子が観察された。
【0039】
上記のカセットテープ上に配置した導電粒子が移動しないように、カセットテープ上に絶縁性接着剤を乾燥後に5〜10μmになるように塗布し、温度120℃で30秒間硬化を進め、導電粒子を固定化した。更にこの上に絶縁性接着剤を塗布した後、65℃で10分間乾燥を行い、厚み15〜20μmの異方導電フィルムを得た。
【0040】
得られた異方導電フィルムを、シート抵抗値30Ωの酸化インジウム/錫酸化物導電皮膜を全面に形成した厚さ1.1mmのITOガラス上に置き、80℃、0.5MPa、3秒の条件で加熱加圧して仮圧着を行った。その後、カセットテープを剥がし、TCPを上から180℃、3MPa、15秒の条件で加熱加圧して本圧着を行った。TCPは、ポリイミド基材と銅箔からできたものであり、回路加工後表面にSnメッキしたものである。接続したサンプルを使って評価を行った。隣接端子間の接続抵抗値は全端子2Ω以下と良好であった。
【実施例2】
【0041】
実施例1と同様の装置を使用し、周波数2kHz、デューティ(波形全体に対するパルス幅の割合)10%、振幅25mVの方形波を発生させ、テープレコーダーMD-F350(シャープ社製)のマイク端子から電気信号を入力した。本条件における方形波の1サイクルは24μmとなり、そのうち磁気記録領域は2.4μmとなる。この電気信号を同様にオーディオカセットテープに入力した。
【0042】
上記オーディオカセットテープに、同様に導電粒子を分散させたエタノールを滴下したところ、オーディオカセットテープの幅方向に対して半分の領域に導電粒子で構成された約700μmの帯が走行方向に対して垂直方向に2列並び、それぞれの列において走行方向と平行方向に24μmの間隔で導電粒子が整列している様子が観察された。約700μmの帯状において、導電粒子はほぼ連続しており、帯の幅は、1〜3個の導電粒子で構成されていた。一方、磁気記録していないオーディオカセットテープの領域では、ランダムに付着している導電粒子が観察された。
【0043】
以下、実施例1と同様の方法で導電粒子を固定化し、得られた異方導電フィルムの評価を行った結果、隣接端子間の接続抵抗値は全端子2Ω以下と良好であった。
【実施例3】
【0044】
実施例1と同様の装置を使用し、周波数3kHz、デューティ(波形全体に対するパルス幅の割合)15%、振幅25mVの方形波を発生させ、テープレコーダーMD-F350(シャープ社製)のマイク端子から電気信号を入力した。本条件における方形波の1サイクルは16μmとなり、そのうち磁気記録領域は2.4μmとなる。この電気信号を同様にオーディオカセットテープに入力した。
【0045】
上記オーディオカセットテープを、同様に導電粒子を分散させたエタノール溶液に浸漬したところ、オーディオカセットテープの幅方向に対して半分の領域に導電粒子で構成された約700μmの帯が走行方向に対して垂直方向に2列並び、それぞれの列において走行方向と平行方向に16μmの間隔で導電粒子が整列している様子が観察された。約700μmの帯状において、導電粒子はほぼ連続しており、帯の幅は、1〜3個の導電粒子で構成されていた。一方、磁気記録していないオーディオカセットテープの領域では、ランダムに付着している導電粒子が観察された。
【0046】
以下、実施例1と同様の方法で導電粒子を固定化し、得られた異方導電フィルムの評価を行った結果、隣接端子間の接続抵抗値は全端子2Ω以下と良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の異方導電フィルムとその接続方法の一例を示す断面図
【図2】本発明の一実施例である製造方法を示す図
【図3】本発明の特定の領域にのみ磁気記録を行った磁性媒体を示す図
【図4】本発明の磁気記録領域に導電粒子を補足した様子を示す断面図
【図5】本発明の異方導電フィルムとその接続方法の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0048】
1 基材
2 導電粒子
3 絶縁性接着剤
4 LCDパネル
5 TCP
6 端子
11 磁性媒体
11a 磁気記録領域
11b 無記録領域
12 導電粒子
13 粘着層
14 基材
20 絶縁性接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な回路同士の電気的接続、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)とフレキシブル回路基板の接続や、半導体ICとIC搭載用基板のマイクロ接合等に用いることのできる異方導電フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器の小型化・薄型化に伴い、微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等の必要性が飛躍的に増大してきており、その接続方法として、半田接合技術の進展とともに、新しい材料として、異方性の導電性接着剤やフィルムが使用されている(例えば、特許文献1〜13参照)。特に、最近、半田付けでは対応できないLCDパネルとドライバICを搭載したTCP(テープキャリアパッケージ)との接続に適用され、LCDには必要不可欠の接続材料となっている。
【0003】
この方法は、図1にその一例を示したように、接続したい部材間に異方導電フィルムを挟み加熱加圧することにより、面方向の隣接端子間では電気的絶縁性を保ち、上下の端子間では電気的に導通させるものである。このような用途に異方導電フィルムが多用されてきたのは、被着体の耐熱性がないことや微細な回路では隣接端子間で電気的にショートしてしまうなど半田付けなどの従来の接続方法が適用できないことが理由である。
【0004】
特許文献14等に開示されているとおり、一般に異方導電フィルムは、絶縁性の接着剤中に導電粒子が均一に分散したもので、IC電極と基板電極とで位置合わせを行い、異方導電フィルムを圧着することにより異方導電フィルム中の導電粒子が圧接されて重なり合う電極間だけが電気的に接続される。
【0005】
この異方導電フィルムは、導電粒子としてはニッケル、金等にて表面をめっきしたプラスチック粒子等が用いられており、絶縁性接着剤としては熱可塑タイプのものと熱硬化タイプのものに分類されるが、最近では熱可塑タイプのものより、信頼性の優れたエポキシ樹脂系の熱硬化タイプのものが広く用いられつつある。
【0006】
近年の回路接続ピッチは微細化が進み、従来の異方導電フィルムでは横導通の問題が生じてきた。図1に示したように、絶縁性接着剤3中に導電粒子2を分散させている場合、異方導電フィルムが圧着されると、絶縁性接着剤の中ほどに位置する導電粒子は端子外に流出しやすく、その結果、隣接端子間に高密度に導電粒子が存在することになり、端子間の絶縁性が不充分になったり、リークやショートを発生する等、絶縁性の保持に問題が生じる。
横導通を防止するためには異方導電フィルム中の導電粒子の混入率を低下させることが考えられるが、導電粒子の混入率を低下させると、導電粒子と端子との接続面積が落ちるので、接続抵抗が高くなるという問題があった。
【0007】
また、製品品質上の問題のほか、一般的に導電粒子は1グラム当たり数千円と非常に高価であり、その多くが本来目的とする端子間の接続に使用されないことは、生産コストの増加に繋がっていた。
【0008】
そのため、導電粒子を規則的に配列させる方式が検討されており、例えば、NEDOのベンチャー企業支援型地域コンソーシアム研究開発(中小企業創造基盤型)ファインピッチ対応異方性導電材の研究開発として、圧着温度で溶融しない樹脂フィルムに孔を開けて、そこに導電粒子を埋め込んだ後、上下を溶融する樹脂で挟み込む方式が提案されている。この方式では、導電粒子を規則的に配列するための格子孔はフォトリソグラフィーとレーザの2つの技術が利用されている。しかし、このような方式では、規則的な孔を開けるための特別なメタルマスクの作製やレーザ照射装置が必要であり、微細なものが得られる反面、製造装置が高価であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献15等に開示されているように、帯電している導電粒子に対して静電的な引力または斥力を作用させることにより特定の領域のみに導電粒子を配置する方法も提案されているが、この方式では、気相中に存在する水分により液架橋による粒子同士の凝集が生じるために粒子の制御に問題があった。
【0010】
特許文献16に開示されているように、磁界を利用した方式も提案されているが、この方式は、導電性磁性体膜と絶縁シェルの二重構造を取る円筒状の導電粒子を樹脂バインダに分散させるものであり、特定領域にのみ導電粒子を配置することを提供する本発明とは異なる。
【0011】
【特許文献1】特開昭59−120436号公報
【特許文献2】特開昭60−84718号公報
【特許文献3】特開昭60−191228号公報
【特許文献4】特開昭61−55809号公報
【特許文献5】特開昭61−274394号公報
【特許文献6】特開昭61−287974号公報
【特許文献7】特開昭62−244142号公報
【特許文献8】特開昭63−153534号公報
【特許文献9】特開昭63−305591号公報
【特許文献10】特開昭64−47084号公報
【特許文献11】特開昭64−81878号公報
【特許文献12】特開平1−46549号公報
【特許文献13】特開平1−251787各号公報
【特許文献14】特開昭61─78069号公報
【特許文献15】特開2002─075580号公報
【特許文献16】特許第3048973号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等であっても、接続信頼性と絶縁性とに優れた端子接続が可能となる異方導電フィルムを安価に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、
(1) 導電粒子が特定の領域に規則的に配置されている異方導電フィルムの製造方法であって、予め磁性媒体の特定の領域に磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域に捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法、
(2) 捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する(1)の異方導電フィルムの製造方法、
(3)捕捉後に絶縁性接着剤で導電粒子を被覆し、固定化する工程を有する(1)又は(2)の異方導電フィルムの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、導電粒子が特定の領域のみに規則的に配列している異方導電フィルムを得ることができるので、微細な回路同士の接続、微小部分と微細な回路の接続等であっても、接続信頼性と絶縁性とに優れた端子接続が可能となり、高価な導電性粒子を規則的に配列するために、導電粒子同士の接続による横導通を防止でき、少ない導電粒子で効率よく端子間を導通できるため、安価なコストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、予め磁性媒体の特定の領域にのみ磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域にのみに捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法であり、加えて、捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する製造方法も含むものである。
【0016】
本発明の製造方法の一例を、図2〜図4に基づき説明する。例えば、磁気記録装置を用いて磁性媒体の特定領域のみを磁気記録することにより磁気記録領域と無記録領域を作る。この特定領域のみ磁気記録された磁性媒体に、磁性体である導電粒子を散布することにより磁気記録領域にのみ導電粒子が付着し、特定の領域のみに導電粒子を捕捉することが出来る。
【0017】
特定の領域にのみ磁気記録する方法としては、例えば任意波形発生装置により任意の周波数でパルス状の電気信号を発生させ、磁気記録装置にて、この電気信号を磁気信号に変換して磁性媒体へ磁気記録することにより磁気記録領域と無記録領域を作る方法が挙げられる。磁気記録領域と無記録領域の比率は、パルス信号における一波長当たりのパルス幅を調整することにより容易に変更でき、また、それぞれの領域の大きさは、磁気記録装置にて磁気媒体へ磁気記録する際の走行速度に対して任意波形発生装置で設定する周波数を設定することより調整が可能である。磁気記録装置として、カセットテープレコーダーやビデオカセットレコーダーを用いることが出来る。磁気記録装置および磁気媒体を選定することにより、特定の領域は帯状、島状など自由に調整することができる。
【0018】
あるいは、任意の幅と間隔で縦縞の模様を描き、これをビデオ撮影することで得られる電気信号を任意波形発生装置で発生させる電気信号の代わりとして用いることが出来る。磁気記録領域と無記録領域の比率および幅は、縦縞の模様の幅と間隔で調整できる。例えば、上記信号を、ビデオレコーダを用いて映像信号側から入力した場合、一定間隔の規則的な磁気記録域を形成させることができる。
【0019】
また別の方法としては、例えば、フィルム等の基材に酸化チタンのゾルを塗布した後に焼成する。次いで、特定の領域に相当する箇所のみ開口しているマスクを用いてUV照射を行いながら無電解メッキを行った後、磁化することにより特定の領域にのみ磁気記録することが出来る。これらの方式が特定の領域にのみ磁気記録する方法として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
磁性体である導電粒子を散布する方法は、磁性媒体に磁性体である導電粒子を捕捉出来る方法であれば、特に制限は無く、例えば導電粒子を流動させた槽へ磁性媒体を浸漬させる方式、スプレーで導電粒子を噴霧する方式、導電粒子を分散させた分散液を滴下する方式、導電粒子を分散させた分散液中に磁性媒体を浸漬させる方式などの方法が挙げられるがこの限りではなく、湿式、乾式を問わない。また、磁性媒体へ過剰に付着した導電粒子を取り除く工程を加えてもかまわない。
【0021】
磁性媒体の特定の領域のみに捕捉した導電粒子を、別の基材上へ転写させることもできる。別の基材上へ方法としては、特定の領域のみに捕捉した導電粒子をそのままの状態で転写できる方法であれば特に制限は無く、捕捉している導電粒子を、粘着性を有する基材へ接触させることなどにより転写できる。
【0022】
上記基材としては、特に制限は無いが、例えば粘着層を有する基材を使用することができる。上記粘着層を有する基材は、例えば、基材上に粘着性を有する材料を薄く塗布することにより製造することができる。粘着性があると、導電粒子を転写した後、振動や次工程での外力に対して導電粒子が移動することを防止することができる。
【0023】
上記粘着性を有する材料としては、後に用いる絶縁性接着剤が粘着性を持つものであれば、その絶縁性接着剤を薄く塗布することにより、粘着性のある材料として用いることができる。また、絶縁性接着剤が、溶剤等により希釈された場合、完全に乾燥する前で粘着性を示すものであるならば、同様に粘着性を有する材料として用いることができる。上記粘着性を有する材料は、絶縁性接着剤と異なってもよく、更には、基材自体が粘着性を持つものであれば、別途粘着性を有する材料を塗布する必要はない。
【0024】
磁性媒体は、磁気記録した領域に磁性粒子を捕捉できるものであれば特に制限は無く、1種類の磁性体単独、2種類以上の磁性体を複合化したもの、非磁性体の基材に磁性体を複合化したもの、いずれも利用できる。また、導電粒子の捕捉性を向上させるために磁性媒体上に粘着材を塗布することもできる。この粘着材としては、後に用いる絶縁性接着剤が粘着性を持つものであれば、その絶縁性接着剤を薄く塗布することにより、粘着性のある材料として用いることができる。また、絶縁性接着剤が、溶剤等により希釈された場合、完全に乾燥する前で粘着性を示すものであるならば、同様に粘着性を有する材料として用いることができる。上記粘着性を有する材料は、絶縁性接着剤と異なってもよい。
【0025】
磁性体である導電粒子は、導電性と磁性を有するものであれば特に制限するものではなく、ニッケル、鉄、コバルト、コバルトフェライト、アルミニウムホイスラー合金、マグネタイト、イットリウム鉄ガーネット等の強磁性体金属や、これらと銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、銀、金など各種金属との金属合金、あるいは、金属合金、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラスやセラミック、高分子等で作られた粒子の表面に強磁性体金属や強磁性体合金をコートしたもの等が適用できるが、接続の信頼性や微細な回路接続への適用を考慮すると高分子核材に強磁性体金属被覆を施したものが望ましい。
【0026】
ここで、高分子核材は特に組成などの制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレンブタジエン共重合体等のポリマー中から1種単独あるいは2種以上組み合わせて使用すれば良い。
【0027】
高分子核材の表面に施す金属被覆には特に制限は無いが、導通の安定性を考慮すると通常適用されるニッケルと金の被覆が望ましい。
【0028】
被膜の厚さには特に制限はないが、厚すぎると凝集が生じやすくなるなどの問題があるため、0.01〜0.2μm程度が望ましい。また、被覆の形成方法では、この被覆と高分子核材との密着力・導電性などを考慮し、均一に形成されている方が良いことは言うまでもなく、従来から用いられているメッキなどが望ましい。
【0029】
導電性粒子の粒子径や配合量は、接続したい回路のピッチやパターン、回路端子の厚みや材質等によって適切なものを選ぶことができる。
【0030】
導電性粒子の粒子径は、特に制限はするものではないが、望ましくは平均2〜15μmである方がよい。2μmより小さい場合では、微細な回路接続で高い接続信頼性を得るために導電性粒子数を多く配合することは可能であるが、凝集することなく高分子核材に均一に金属被覆を施すことは現状の技術では極めて困難であり、実際には微細な回路の接続を安定して行うことは困難である。逆に、15μmより大きい場合には、凝集なく均一に金属被覆を施すことは可能であるが、微細な回路を接続する場合には、端子間の電気的絶縁性が保てなくなるため、粒子数はあまり多く配合できず、接続信頼性の向上にも限界がでてくる。例えば、LCDパネルとTCPやFPCとの接続、特に50μmピッチ程度の極ファインピッチ回路の接続においては、平均粒径3〜5μm程度が望ましい。粒度分布はシャープな方が好ましいことは言うまでもなく、平均粒径の±10%以内であることが好ましい。
【0031】
捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程は、加熱加圧の本圧着時に絶縁性接着剤が導電性粒子以外の端子間に充填することを妨げずに導電粒子が移動しないよう固定化できれば特に制限は無く、例えば、導電粒子を捕捉した磁気媒体に熱硬化性絶縁性接着剤を塗布し、十分硬化が進まない程度に加熱した後、更に絶縁性接着剤を塗布するといった、絶縁性接着剤の硬化度の違いを利用する方法が挙げられる。2回に分けて塗布する絶縁性接着剤は同一でも異なるものでも特に制限はない。
【0032】
導電粒子を固定化する工程は、導電粒子を磁性媒体から基材へ転写する時に行っても構わない。例えば、基材に薄く絶縁性接着剤を塗布し、十分硬化が進まない程度に加熱した上に、磁性媒体上に捕捉した導電粒子を転写する方法が挙げられる。磁性媒体上に捕捉した導電粒子を転写する方法についても特に制限は無く、圧力を加え転写する方法、絶縁性接着剤の粘着性を利用して転写する方法、基材の裏側から磁力を加え転写する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明では、捕捉後さらに絶縁性接着剤で導電粒子を被覆する工程を含むことが望ましく、その方法については、特に制限しないが、絶縁性接着剤をコーティング、スプレー噴霧、キャストするなどの方式を使用することができる。
絶縁性接着剤の厚みは、加熱加圧の本圧着時に導電性粒子以外の端子間を満たすに十分な量に相当していればよく、必然的に導電粒子の直径よりも大きな厚みとなる。例えば、LCDパネルとTCPやFPCとの接続においては、10〜20μm程度の厚みが好ましい。
【0034】
基材上に転写された導電粒子を固定化するための絶縁性接着剤は特に限定されず、例えば、接着性シート等に用いられる熱可塑性材料や、熱や光により硬化性を示す材料等が挙げられる。なかでも、接続後硬化させることにより耐熱性や耐湿性に優れることから、硬化性材料が好ましい。特にエポキシ系接着剤として用いられる材料は短時間で硬化し、接着性に優れる等の点から好適に用いられる。硬化性樹脂を使用する場合には、異方導電性フィルムとして使用する際に、溶融流動する必要があるため、導電粒子を固定化させている状態は半硬化状態が好ましい。
【0035】
上記方式にて製造された異方導電フィルムの使用例を図5に示す。十分硬化が進まない程度に加熱した絶縁性接着剤20で導電粒子13を固定化し、さらに絶縁性接着剤20被覆した後、例えば、LCDパネル4上に加熱加圧により仮圧着し、基材15を剥離しTCP5を載せ、加圧により仮止めを行う。更に、加熱加圧により本圧着を行うが、導電粒子は、固定化されているため、端子外に流出しにくく、効率的に端子間を導通させることができる。
【0036】
以下実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0037】
任意波形発生装置としてマルチファンクションシンセサイザ1946(エヌエフ回路ブロック社製)を用い、周波数1kHz、デューティ(波形全体に対するパルス幅の割合)5%、振幅25mVの方形波を発生させ、テープレコーダーMD-F350(シャープ社製)のマイク端子から電気信号を入力した。本テープレコーダーのテープ走行速度は、48mm/秒であるため、上記の任意波形発生装置で発生させた方形波の1サイクルは48μmとなり、そのうち磁気記録領域は2.4μmとなる。この電気信号をテープレコーダーで磁気信号に変換してオーディオカセットテープMG1−46(日立マクセル社製)に入力した。
【0038】
特定の領域のみ磁気記録したオーディオカセットテープを、導電粒子としてミクロパールAU、5μm(積水化学工業製)を0.1wt%分散させたエタノール溶液に浸漬したところ、オーディオカセットテープの幅方向に対して半分の領域に導電粒子で構成された約700μmの帯が走行方向に対して垂直方向に2列並び、それぞれの列において走行方向と平行方向に48μmの間隔で導電粒子が整列している様子が観察された。約700μmの帯状において、導電粒子は連続しており、帯の幅は、3〜4個の導電粒子で構成されていた。一方、磁気記録していないオーディオカセットテープの領域では、ランダムに付着している導電粒子が観察された。
【0039】
上記のカセットテープ上に配置した導電粒子が移動しないように、カセットテープ上に絶縁性接着剤を乾燥後に5〜10μmになるように塗布し、温度120℃で30秒間硬化を進め、導電粒子を固定化した。更にこの上に絶縁性接着剤を塗布した後、65℃で10分間乾燥を行い、厚み15〜20μmの異方導電フィルムを得た。
【0040】
得られた異方導電フィルムを、シート抵抗値30Ωの酸化インジウム/錫酸化物導電皮膜を全面に形成した厚さ1.1mmのITOガラス上に置き、80℃、0.5MPa、3秒の条件で加熱加圧して仮圧着を行った。その後、カセットテープを剥がし、TCPを上から180℃、3MPa、15秒の条件で加熱加圧して本圧着を行った。TCPは、ポリイミド基材と銅箔からできたものであり、回路加工後表面にSnメッキしたものである。接続したサンプルを使って評価を行った。隣接端子間の接続抵抗値は全端子2Ω以下と良好であった。
【実施例2】
【0041】
実施例1と同様の装置を使用し、周波数2kHz、デューティ(波形全体に対するパルス幅の割合)10%、振幅25mVの方形波を発生させ、テープレコーダーMD-F350(シャープ社製)のマイク端子から電気信号を入力した。本条件における方形波の1サイクルは24μmとなり、そのうち磁気記録領域は2.4μmとなる。この電気信号を同様にオーディオカセットテープに入力した。
【0042】
上記オーディオカセットテープに、同様に導電粒子を分散させたエタノールを滴下したところ、オーディオカセットテープの幅方向に対して半分の領域に導電粒子で構成された約700μmの帯が走行方向に対して垂直方向に2列並び、それぞれの列において走行方向と平行方向に24μmの間隔で導電粒子が整列している様子が観察された。約700μmの帯状において、導電粒子はほぼ連続しており、帯の幅は、1〜3個の導電粒子で構成されていた。一方、磁気記録していないオーディオカセットテープの領域では、ランダムに付着している導電粒子が観察された。
【0043】
以下、実施例1と同様の方法で導電粒子を固定化し、得られた異方導電フィルムの評価を行った結果、隣接端子間の接続抵抗値は全端子2Ω以下と良好であった。
【実施例3】
【0044】
実施例1と同様の装置を使用し、周波数3kHz、デューティ(波形全体に対するパルス幅の割合)15%、振幅25mVの方形波を発生させ、テープレコーダーMD-F350(シャープ社製)のマイク端子から電気信号を入力した。本条件における方形波の1サイクルは16μmとなり、そのうち磁気記録領域は2.4μmとなる。この電気信号を同様にオーディオカセットテープに入力した。
【0045】
上記オーディオカセットテープを、同様に導電粒子を分散させたエタノール溶液に浸漬したところ、オーディオカセットテープの幅方向に対して半分の領域に導電粒子で構成された約700μmの帯が走行方向に対して垂直方向に2列並び、それぞれの列において走行方向と平行方向に16μmの間隔で導電粒子が整列している様子が観察された。約700μmの帯状において、導電粒子はほぼ連続しており、帯の幅は、1〜3個の導電粒子で構成されていた。一方、磁気記録していないオーディオカセットテープの領域では、ランダムに付着している導電粒子が観察された。
【0046】
以下、実施例1と同様の方法で導電粒子を固定化し、得られた異方導電フィルムの評価を行った結果、隣接端子間の接続抵抗値は全端子2Ω以下と良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の異方導電フィルムとその接続方法の一例を示す断面図
【図2】本発明の一実施例である製造方法を示す図
【図3】本発明の特定の領域にのみ磁気記録を行った磁性媒体を示す図
【図4】本発明の磁気記録領域に導電粒子を補足した様子を示す断面図
【図5】本発明の異方導電フィルムとその接続方法の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0048】
1 基材
2 導電粒子
3 絶縁性接着剤
4 LCDパネル
5 TCP
6 端子
11 磁性媒体
11a 磁気記録領域
11b 無記録領域
12 導電粒子
13 粘着層
14 基材
20 絶縁性接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子が特定の領域に規則的に配置されている異方導電フィルムの製造方法であって、予め磁性媒体の特定の領域に磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域に捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法。
【請求項2】
捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する請求項1記載の異方導電フィルムの製造方法。
【請求項3】
捕捉後に絶縁性接着剤で導電粒子を被覆し、固定化する工程を有する請求項1又は2記載の異方導電フィルムの製造方法。
【請求項1】
導電粒子が特定の領域に規則的に配置されている異方導電フィルムの製造方法であって、予め磁性媒体の特定の領域に磁気記録を行い、次いで磁性体である導電粒子をこの特定領域に捕捉させる工程を有することを特徴とする異方導電フィルムの製造方法。
【請求項2】
捕捉後に特定の領域に規則的に配置した導電粒子が移動しないよう固定化する工程を有する請求項1記載の異方導電フィルムの製造方法。
【請求項3】
捕捉後に絶縁性接着剤で導電粒子を被覆し、固定化する工程を有する請求項1又は2記載の異方導電フィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−24551(P2006−24551A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85103(P2005−85103)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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