説明

異方導電フィルム

【課題】狭スペースでの絶縁性が高く、微細接続ピッチでの接続信頼性を向上することができる異方導電フィルムを提供すること。
【解決手段】相対峙する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間を電気的に接続する異方導電フィルムであって、重合された光重合性樹脂、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂用硬化剤、及び導電粒子を含有する第1接着フィルム層と、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤を含有する第2接着フィルム層とが積層されてなる、異方導電フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板同士またはICチップ等の電子部品と配線基板の接続に用いられる異方導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板同士またはICチップ等の電子部品と回路基板の接続とを電気的に接続する際には、接着剤に導電粒子を分散させた異方導電フィルムが用いられている。すなわち、異方導電フィルムを相対峙する電極間に配置して、加熱、加圧によって電極同士を接続後、加圧方向に導電性を持たせることによって、電気的接続を行うことができ、実用面では、液晶ディスプレイ(LCD: Liquid Crystal Display)のドライバICを実装するための接続材料として重要な役割を果たしている。
【0003】
現在、LCDはノートPCやモニタ及びテレビ向けの大型パネルから、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム等のモバイル機器向けの中・小型パネルまで多様な用途に適用されているが、これらのLCDにはACFによるドライバICの実装が採用されている。LCDでのドライバIC実装は、ドライバICをTCP(Tape Carrier Package)化し、これをLCDパネルやプリント基板(PWB:Printed Wiring Board)に異方導電フィルムによって電気的に接続することによって行われる。また、携帯電話等の中・小型LCDでは、ベアドライバICを異方導電フィルムによって直接LCDパネルへ実装するCOG(Chip on Glass)方式が採用されている。
【0004】
LCDは、高精細化が進んでおり、LCDパネルとTCPの接続やCOG接続では接続ピッチの微細化が要求されている。特に、COG接続ではICチップのバンプを接続電極としているためTCP接続に比べて接続面積が小さくなることから、微小接続電極上に導通を確保するのに充分な数の導電粒子をいかに捕捉するかが高い接続信頼性を得る上で重要となっている。
【0005】
このため、例えば、特開平8−279371号公報では、導電粒子を分散した接着剤層(導電粒子層)と接着剤のみの層(接着剤層)を積層した二層構成にすることによって、従来の単層構成に比べ微小電極(バンプ)上に効率良く導電粒子を捕捉させることができ、微小バンプへの適用性、微細接続ピッチでの接続性に優れる異方導電フィルムが提供できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−279371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この二層構成ACFは、従来に比べ、微小電極上での捕捉効率が向上しているものの、接続時に導電粒子が接着剤とともに流動するため、接続ピッチが微細化されたICを用いた場合(例えば、15μm以下のスペース、2600μm以下の電極サイズ)、絶縁性を確保しながら、2600μm以下の電極上に十分な導電粒子数(5個以上)を確保できているとは言えず、接続信頼性の点で未だ改良の余地があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、狭スペースでの絶縁性が高く、微細接続ピッチでの接続信頼性を向上することができる異方導電フィルム及びこれを用いた回路板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の異方導電フィルムは、相対峙する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間を電気的に接続する異方導電フィルムであって、前記異方導電フィルムが光重合性樹脂、光開始剤、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂用硬化剤、及び導電粒子を含有し、前記光重合性樹脂が光エネルギーによって重合された第1接着フィルム層と、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤を含有する第2接着フィルム層が積層されてなることを特徴とする。
【0010】
前記第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層のDSCでの発熱開始温度は、60℃以上でかつ硬化反応の80%が終了する温度が260℃以下であることが好ましい。
【0011】
前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0012】
また、前記熱硬化性樹脂用硬化剤としては、潜在性硬化剤が好ましく用いられる。
【0013】
前記第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層としては、フィルム形成性高分子を含有していることが好ましい。また、前記第1接着フィルム層に分散されている導電粒子量としては、0.2〜30体積%が好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異方導電フィルムによれば、導電粒子を含む第1接着フィルム層と導電粒子が含まれている第2接着フィルム層の二層構成からなるACFとし、さらに導電粒子が含まれている接着フィルム層を光で重合させているため、当該層の接続時における流動性を抑制できるため、接続する半導体のバンプ上に導電粒子を効率的に捕捉できる他、狭スペースへの導電粒子の流入も抑制できるため、狭スペースでの絶縁性に優れており、微細接続ピッチでの接続信頼性が向上する。
【0015】
したがって、本発明の異方導電フィルムは、LCDパネルとTAB、LCDパネルとICチップを接続時の加圧方向にのみ電気的に接続するために好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、相対峙する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間を電気的に接続する異方導電フィルムであって、前記異方導電フィルムが光重合性樹脂、光開始剤、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂用硬化剤、及び導電粒子を含有し、前記光重合性樹脂が、光エネルギーによって重合された第1接着フィルム層と熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂用硬化剤を含有する第2接着フィルム層が積層されてなることを特徴とする異方導電フィルムである。
【0017】
前記第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層の反応性は、DSC(昇温速度:10℃/min)で測定することができ、第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層としては、DSCでの発熱開始温度が60℃以上でかつ硬化反応の80%が終了する温度が260℃以下になるものが用いられる。
【0018】
本発明において用いられる光重合性樹脂としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などの官能基を有するラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等が挙げられる。ラジカル重合性物質はモノマー、オリゴマーいずれの状態で用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。アクリレート(メタクリレート)の具体例としては、ウレタンアクリレート、メチルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、等がある。必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。また、ジシクロペンテニル基および/またはトリシクロデカニル基および/またはトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2、4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−P−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−8(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、などを挙げることができる。これらは、単独あるいは併用して用いたり、アリルフェノール、アリルフェニルエーテル、安息香酸アリルなどのアリル化合物と併用して用いてもよい。
【0019】
本発明において用いられる光開始剤としては、光照射によってラジカルを生成する公知のものが用いられる。開烈型の光開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−メチルチオ−2,2−ジメチル−2−モルホリノアセトフェノン、4−モルホリノ−2−エチル−2−ジメチルアミノ−2−ベンジルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、アシルホスフィンオキサイド等が好ましく用いることができる。水素引き抜き型の光開始剤としては、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−クロロチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン、1,7,7−トリメチル−2,3−ジケトシジシクロ(2,2,1ヘプタン)、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンジル−4‘−メチルジフェニルサルファイド等が好ましく用いることができる。
【0020】
これらの光開始剤の光重合性樹脂に対する使用量は、光重合性物質が重合できる量が使用されていれば、特に限定するものではないが、好ましくはラジカル重合性物質100重量部に対して0.3〜5重量部の光開始剤を用いることができる。
【0021】
また、第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層にはフィルム形成性をより容易にするために、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することが好ましい。これらのフィルム形成性高分子は、反応性樹脂の硬化時の応力緩和に効果がある。特に、フィルム形成性高分子が、水酸基等の官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましい。
【0022】
第1接着フィルム層におけるフィルム形成性高分子の使用量は、光重合性樹脂100重量部に対して10〜150重量部とすることが好ましく、特に好ましく20〜100重量部である。
【0023】
本発明において用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましく、エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロマイグレーション防止のために好ましい。
【0024】
本発明において用いられる熱硬化性樹脂用硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤が好ましく、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤が用いられる。
【0025】
第2接着フィルム層におけるフィルム形成性高分子の使用量は、熱硬化性樹脂と硬化剤の合計の使用量100重量部に対して30〜100重量部とすることが好ましく、特に好ましく30〜60重量部である。
【0026】
本発明において第1接着フィルム層中の光重合性樹脂に対する熱硬化性樹脂と硬化剤を合わせた合計の使用量は、光重合性樹脂100重量部に対して60〜400重量部とすることが好ましく、特に好ましくは100〜250重量部である。光重合性樹脂100重量部に対する熱硬化性樹脂と硬化剤を合わせた合計の使用量が、60重量部より少なくなると接続時の流動性が低下し、接続電極と導電粒子界面から樹脂を排除できず、導通不良が発生する。また、光重合性樹脂100重量部に対する熱硬化性樹脂と硬化剤を合わせた合計の使用量が、400重量部より多くなると接続時の流動性が上がりすぎ、導電粒子が樹脂とともに流動し、電極上への捕捉効率が低下する、あるいは電極スペース部への導電粒子の流入が増え、ショート発生確率が増大する。
【0027】
本発明において用いられる導電粒子は、例えばAu、Ag、Cuやはんだ等の金属の粒子であり、ポリスチレン等の高分子の球状の核材にNi、Cu、Au、はんだ等の導電層を設けたものがより好ましい。さらに導電性の粒子の表面にSu、Au、はんだ等の表面層を形成することもできる。粒径は基板の電極の最小の間隔よりも小さいことが必要で、電極の高さばらつきがある場合、高さばらつきよりも大きいことが好ましく、1〜10μmが好ましい。また、接着剤に分散される導電粒子量は、0.1〜30体積%であり、好ましくは0.2〜15体積%である。
【0028】
異方導電フィルムは、次のようなプロセスで作製できる。光開始剤、光重合性樹脂、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂用硬化剤、フィルム形成性高分子からなる接着剤組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散し、さらに、導電粒子を分散し、第1接着フィルム用フィルム塗工用溶液を作製する。この時用いる有機溶剤は、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が、材料の溶解性を向上させるため好ましい。
【0029】
ついで、この溶液を厚み50μmの片面を表面処理した透明PETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着フィルムの厚みが10μmの接着フィルムを得る。
【0030】
ついで、前記フィルム塗工用溶液の作製の中で、光開始剤及び光重合性樹脂を溶解しない以外は同様な方法で作製したフィルム塗工用溶液を、厚み50μmの片面を表面処理した白色PETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着フィルムの厚みが15μmの第2接着フィルムを作製する。さらに、得られた第1接着フィルムと第2接着フィルムを40℃で加熱しながら、ロールラミネータでラミネートした二層構成異方導電フィルムを作製する。
【0031】
ついで、高圧紫外線ランプを使用して、紫外線量2J/cmの紫外線を第1接着フィルム層上の透明PETを通して第1接着フィルム層に照射し、第1接着フィルム層中の光重合性樹脂を重合し、二層構成異方導電フィルムを作製する。
【0032】
第1接着フィルム層の光重合性樹脂を光で重合する場合、第2接着フィルム層とラミネートする前にあらかじめ、紫外線を照射することによって重合することもできるが、この場合、酸素阻害によって十分な重合が得られなかったり、またラミネートがうまくできない場合が生じる。一方、前述のようにラミネート後、光で照射する方法では、第1接着フィルム層と第2接着フィルム層との接着性が良好になるほか、両側にPETフィルムがカバーされているため酸素阻害がなく光による光重合性樹脂の重合を十分に行うことができ、特に好ましく用いられる。
【0033】
得られた二層構成異方導電フィルムは、次のようなプロセスで回路板を作製することができる。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材表面に、この二層構成異方導電フィルムの第1接着フィルム層側の透明PETフィルムを剥離して第1接着フィルム層面を転写し、第2接着フィルム層上の白色PETフィルムを剥離し、第一の接続端子を有する第一の回路部材と第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子が対向するように配置し、異方導電フィルムを加熱加圧して、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板を作製する。
【0034】
本発明の第一の接続端子を有する第一の回路部材としては、バンプ電極付の半導体が好ましく用いられ、第二の接続端子を有する第二の回路部材としては、ITOや金属回路が形成されたガラス基板やNi/AuめっきCu回路が形成されたフレキシブル配線板やプリント配線板が好ましく用いられ、特に、ITOや金属回路が形成されたガラス基板が好ましく用いられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
フェノキシアクリレート30g、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.3g、重量平均分子量40,000のフェノキシ樹脂20gを酢酸エチル50gに溶解した接着剤組成溶液を作製した。
【0037】
ついで、この溶液にビスA型エポキシ(エポキシ当量180)10g及びマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185、旭化成製、ノバキュアHX−3941)50gを配合し、ポリスチレン系核体(直径:4μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を10体積%(厚み10μmでの投影粒子数30,000個/mm)分散してフィルム塗工溶液を得た。ついで、この溶液を厚み50μmの片面を表面処理した透明PETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが10μmの第1接着フィルムを得た。この第1接着フィルムのDSC測定での反応開始温度は80℃、硬化反応の80%が終了する反応終了温度は200℃であった。
【0038】
ついで、前記フィルム塗工用溶液の作製の中で、フェノキシアクリレート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを溶解しない以外は同様な方法で作製したフィルム塗工用溶液を、厚み50μmの片面を表面処理した白色PETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、第2接着フィルムの厚みが15μmの第2接着フィルムを作製する。この第2接着フィルムのDSC測定での反応開始温度は80℃、硬化反応の80%が終了する反応終了温度は210℃であった。
【0039】
さらに、得られた第1接着フィルムと第2接着フィルムを、基材であるPETフィルムとともに40℃で加熱しながら、ロールラミネータでラミネートし、二層構成異方導電フィルムを作製した。
【0040】
ついで、高圧紫外線ランプを使用して、紫外線量2J/cmの紫外線を第1接着フィルム層上の透明PETを通して第1接着フィルム層に照射し、第1接着フィルム層中の光重合性樹脂を重合し、二層構成異方導電フィルムを作製した。
【0041】
次に、作製した二層構成異方導電フィルムを用いて、金バンプ(面積:45×45μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンプ数362)付きチップ(1×10mm、厚み:500μm)とITO回路付きガラス基板(厚み:1.1mm)の接続を、以下に示すように行った。すなわち、二層構成異方導電フィルム(1.5×12mm)の第1接着フィルム層表面の透明PETフィルムを剥離し、第1接着フィルム層面をITO回路付きガラス基板に80℃、10kgf/cmで貼り付けた後、第2接着フィルム層表面の白色PETフィルムを剥離し、チップのバンプとITO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。
【0042】
次いで、210℃、40g/バンプ、10秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のバンプ(500個)上の導電粒子数は、平均で24個、最小で11個であった。また、接続抵抗は、1バンプあたり最高で120mΩ、平均で58mΩ、絶縁抵抗は10Ω以上であり、これらの値は−40〜100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、高温・高湿(85℃/85%RH、1000h)試験後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0043】
(比較例1)
フェノキシアクリレート30g、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.3g、重量平均分子量40,000のフェノキシ樹脂20gを酢酸エチル50gに溶解した接着剤組成溶液を作製した。
【0044】
ついで、この溶液にビスA型エポキシ(エポキシ当量180)10g及びマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185、旭化成製、ノバキュアHX−3941)50gを配合し、ポリスチレン系核体(直径:4μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を4体積%(厚み25μmでの投影粒子数30,000個/mm)分散してフィルム塗工溶液を得た。ついで、この溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが25μmの接着フィルムを得た。
【0045】
ついで、高圧紫外線ランプを使用して、紫外線量2J/cmの紫外線をこの接着フィルムに照射してフィルム中の光重合性樹脂を重合した異方導電接着フィルムを作製した。この異方導電接着フィルムのDSC測定での反応開始温度は80℃、硬化反応の80%が終了する反応終了温度は200℃であった。
【0046】
次に、作製した単層構成異方導電フィルムを用いて、金バンプ(面積:45×45μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンプ数362)付きチップ(1×10mm、厚み:500μm)とITO回路付きガラス基板(厚み:1.1mm)の接続を、以下に示すように行った。二層構成異方導電フィルム(1.5×12mm)の異方導電接着フィルムをITO回路付きガラス基板に80℃、10kgf/cmで貼り付けた後、PETフィルムを剥離し、チップのバンプとITO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。
【0047】
次いで、210℃、40g/バンプ、10秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のバンプ(500個)上の導電粒子数は、平均で14個、最小で1個であった。また、接続抵抗は、1バンプあたり最高で5300mΩ、平均で3200mΩであり、これらの値は−40〜100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、高温・高湿(85℃/85%RH、1000h)試験後において増大し、一部の接続部では導通不良を発生した。また、絶縁抵抗は10Ωを示し、実用上必要とされる10Ω以上の絶縁性を確保できなかった。
【0048】
(比較例2)
フェノキシアクリレート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを溶解せず、分子量40,000のフェノキシ樹脂を50gにする以外は実施例1と同様な方法で作製した第1接着フィルム用フィルム塗工溶液を、厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着フィルムの厚みが10μmの接着フィルムAを作製した。この接着フィルムのDSC測定での反応開始温度は80℃、硬化反応の80%が終了する反応終了温度は200℃であった。
【0049】
ついで、実施例1の第2接着フィルム層と同様な方法で別の接着フィルムBを作製した。この接着フィルムのDSC測定での反応開始温度は80℃、硬化反応の80%が終了する反応終了温度は210℃であった。
【0050】
さらに、得られた接着フィルムAと接着フィルムBを40℃で加熱しながら、ロールラミネータでラミネートし、ニ層構成異方導電フィルムを作製した。
【0051】
次に、作製した二層構成異方導電フィルムを用いて、金バンプ(面積:45×45μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンプ数362)付きチップ(1×10mm、厚み:500μm)とITO回路付きガラス基板(厚み:1.1mm)の接続を、以下に示すように行った。二層構成異方導電フィルム(1.5×12mm)の接着フィルムAのフィルム面をITO回路付きガラス基板に80℃、10kgf/cmで貼り付けた後、PETフィルムを剥離し、チップのバンプとITO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。
【0052】
次いで、210℃、40g/バンプ、10秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のバンプ(500個)上の導電粒子数は、平均で18個、最小で2個であった。また、接続抵抗は、1バンプあたり最高で2500mΩ、平均で1200mΩであり、これらの値は−40〜100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、高温・高湿(85℃/85%RH、1000h)試験後において増大し、一部の接続部では導通不良を発生した。また、絶縁抵抗は10Ωを示し、実用上必要とされる10Ω以上の絶縁性を確保できなかった。
【0053】
以上の実施例1及び比較例1,2の結果より、本発明の異方導電フィルムによれば、狭スペースでの絶縁性に優れ、微細接続ピッチでの接続信頼性を向上できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対峙する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間を電気的に接続する異方導電フィルムであって、
重合された光重合性樹脂、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂用硬化剤、及び導電粒子を含有する第1接着フィルム層と、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤を含有する第2接着フィルム層とが積層されてなる、異方導電フィルム。
【請求項2】
前記光重合性樹脂が、アクリレート、メタクリレート及びマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の異方導電フィルム。
【請求項3】
前記第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層のDSCでの発熱開始温度が60℃以上でかつ硬化反応の80%が終了する温度が260℃以下である、請求項1又は2に記載の異方導電フィルム。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂用硬化剤が潜在性硬化剤からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の異方導電フィルム。
【請求項5】
前記第1接着フィルム層中に分散されている前記導電粒子の充填量が、0.2〜30体積%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の異方導電フィルム。
【請求項6】
前記第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層中にフィルム形成性高分子が含有されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の異方導電フィルム。
【請求項7】
前記第1接着フィルム層における前記光重合性樹脂に対する前記熱硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂用硬化剤を合わせた合計の使用量が、前記光重合性樹脂100重量部に対して60〜400重量部である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の異方導電フィルム。
【請求項8】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
前記第一の接続端子と前記第二の接続端子を対向して配置し、
対向配置した前記第一の接続端子と前記第二の接続端子の間に異方導電フィルムを介在させ、加熱加圧して、対向配置した前記第一の接続端子と前記第二の接続端子を電気的に接続させてなる回路板であって、
前記異方導電フィルムが請求項1〜7のいずれか一項に記載の異方導電フィルムである、回路板。
【請求項9】
前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子がそれぞれ複数の電極であり、当該複数の電極同士の間のスペースが15μm以下である、請求項8に記載の回路板。
【請求項10】
前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子が2600μm以下のサイズの電極を有する、請求項8又は9に記載の回路板。

【公開番号】特開2013−12498(P2013−12498A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219453(P2012−219453)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2010−140573(P2010−140573)の分割
【原出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】