説明

異方導電性コネクターおよびアダプター装置並びに回路装置の電気的検査装置

【課題】 離間距離が小さくて高さレベルにバラツキがある電極でも、電極間に必要な絶縁性が確保された状態で電極の各々に対する電気的接続が確実に達成される異方導電性コネクターおよびアダプター装置並びにこれを具えた回路装置の電気的検査装置の提供。
【解決手段】 本発明の異方導電性コネクターは、複数の開口を有する樹脂製の絶縁性シート、絶縁性シートの各開口を塞ぐよう配置され、絶縁性シートに支持された弾性高分子物質よりなる絶縁膜、および、絶縁膜に固定支持され、絶縁性シートの開口内に位置するよう配置された、絶縁膜の厚み方向に伸びる複数の剛性導体よりなる複合導電性シートと、複合導電性シートの一面および他面に配置された第1の異方導電性エラストマーシートおよび第2の異方導電性エラストマーシートとを具え、剛性導体の各々は、絶縁膜の弾性によって絶縁性シートの厚み方向に変位可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント回路基板などの回路装置の電気的検査に好適に用いることができる異方導電性コネクターおよびこれを具えたアダプター装置、並びにこのアダプター装置を具えた回路装置の電気的検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、BGAやCSP等のパッケージLSI、MCM、その他の集積回路装置などの電子部品を構成するための或いは搭載するための回路基板については、電子部品を組み立てる以前に或いは電子部品を搭載する以前に、当該回路基板の配線パターンが所期の性能を有することを確認するためにその電気的特性を検査することが必要である。
従来、回路基板の電気的検査を実行する方法としては、縦横に並ぶ格子点位置に従って複数の検査電極が配置されてなる検査電極装置と、この検査電極装置の検査電極に検査対象である回路基板の被検査電極を電気的に接続するアダプターとを組み合わせて用いる方法などが知られている。この方法において用いられるアダプターは、ピッチ変換ボードと称されるプリント配線板よりなるものである。
このアダプターとしては、一面に検査対象である回路基板の被検査電極に対応するパターンに従って配置された複数の接続用電極を有し、他面に検査電極装置の検査電極と同一のピッチの格子点位置に配置された複数の端子電極を有するもの、一面に検査対象である回路基板の被検査電極に対応するパターンに従って配置された、電流供給用接続用電極および電圧測定用接続用電極よりなる複数の接続用電極対を有し、他面に検査電極装置の検査電極と同一のピッチの格子点位置に配置された複数の端子電極を有するものなどが知られており、前者のアダプターは、例えば回路基板における各回路のオープン・ショート試験などに用いられ、後者のアダプターは、回路基板における各回路の電気抵抗測定試験に用いられている。
而して、回路基板の電気的検査においては、一般に、検査対象である回路基板とアダプターとの安定な電気的接続を達成するために、検査対象である回路基板とアダプターとの間に、コネクターとして異方導電性エラストマーシートを介在させることが行われている。
【0003】
この異方導電性エラストマーシートは、厚さ方向にのみ導電性を示すもの、あるいは加圧されたときに厚さ方向にのみ導電性を示す多数の加圧導電性導電部を有するものである。
このような異方導電性エラストマーシートとしては、従来、種々の構造のものが知られており、例えば特許文献1には、弾性高分子物質中に磁性を示す導電性粒子が厚み方向に並ぶよう配向して連鎖を形成した状態でかつ当該導電性粒子による連鎖が面方向に分散した状態で含有されてなる異方導電性エラストマーシート(以下、これを「分散型異方導電性シート」という。)が開示され、特許文献2には、弾性高分子物質中に磁性を示す導電性粒子を不均一に分散させることにより、厚み方向に伸びる多数の導電路形成部と、これらを相互に絶縁する絶縁部とが形成されてなる異方導電性エラストマーシート(以下、これを「偏在型異方導電性シート」という。)が開示され、特許文献3には、導電路形成部の表面と絶縁部との間に段差が形成された偏在型異方導電性シートが開示されている。
これらの異方導電性エラストマーシートは、例えば硬化されて弾性高分子物質となる液状の高分子物質形成材料中に磁性を示す導電性粒子が含有されてなる成形材料層に対して、その厚み方向に磁場を作用させながら或いは磁場を作用させた後に硬化処理を行うことにより得られるものである。この異方導電性エラストマーシートにおいては、弾性高分子物質よりなる基材中に導電性粒子が厚み方向に並ぶよう配向して連鎖が形成された状態で含有されており、厚み方向に加圧されることによって導電性粒子の連鎖による導電路が形成される。
【0004】
そして、分散型異方導電性シートおよび偏在型異方導電性シートを比較すると、分散型異方導電性シートは、特殊で高価な金型を用いずに小さいコストで製造することが可能なものである点、接続すべき電極のパターンに関わらず使用することができ、汎用性を有するものである点で、偏在型異方導電性シートに比較して有利である。
一方、偏在型異方導電性シートは、隣接する導電路形成部間にこれらを相互に絶縁する絶縁部が形成されているため、隣接する電極間の離間距離が小さい接続対象体についても、隣接する電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該電極の各々に対する電気的な接続を達成することができる性能、すなわち分解能が高いものである点で、分散型異方導電性シートに比較して有利である。
而して、分散型異方導電性シートにおいて、分解能を向上させるためには、当該分散型異方導電性シートの厚みを小さくすることが肝要である。
然るに、厚みの小さい異方導電性エラストマーシートにおいては、接続すべき電極の各々における高さレベルのバラツキを吸収して当該電極の各々に対する電気的な接続を達成することができる性能、すなわち凹凸吸収能が低い、という問題がある。具体的には、異方導電性エラストマーシートの凹凸吸収能は、当該異方導電性エラストマーシートの厚みの20%程度であり、例えば厚みが100μmの異方導電性エラストマーシートにおいては、電極の高さレベルのバラツキが20μm程度の接続対象体に対しても安定な電気的接続を達成することができるが、厚みが50μmの異方導電性エラストマーシートにおいては、電極の高さレベルのバラツキが10μmを超える接続対象体に対しては、安定な電気的接続を達成することが困難となる。
【0005】
このような問題を解決するため、絶縁性シートに形成されたテーパ状の貫通孔内に、可動導体が絶縁性シートに対して厚み方向に移動可能に支持されてなる複合導電性シートと、この複合導電性シートの一面および他面の各々に配置された2つの異方導電性エラストマーシートとよりなる異方導電性コネクターが提案されている(例えば特許文献4等参照。)。
このような異方導電性コネクターによれば、複合導電性シートにおける可動電極が厚み方向に移動可能とされているため、厚み方向に加圧されたときには、複合導電性シートの一面および他面の各々に配置された2つの異方導電性エラストマーシートが互いに連動して圧縮変形するため、両者の有する凹凸吸収能の合計が異方導電性コネクターの凹凸吸収能として発現され、従って、高い凹凸吸収能を得ることができる。
また、所要の凹凸吸収能を得るために必要な厚みは、2つの異方導電性エラストマーシートの合計の厚みによって確保すればよく、個々の異方導電性エラストマーシートとしては、厚みが小さいものを用いることができるので、高い分解能を得ることができる。
【0006】
しかしながら、上記の異方導電性コネクターにおいては、実用上、以下のような問題がある。
上記の異方導電性コネクターにおいて、複合導電性シートの可動導体は、絶縁性シートに形成されたテーパ状の貫通孔内にメッキ処理によって金属を堆積させて金属体を形成し、この金属体を押圧することにより、貫通孔の内面に接着していた金属体を分離させることによって得られる。然るに、多数の可動導体を有する異方導電性コネクターを製造する場合には、絶縁性シートに形成された全ての金属体を当該絶縁性シートの内面から確実に分離させることが困難であるため、一部の可動導体の機能に不具合が生じ、また、一旦は絶縁性シートの貫通孔内から分離されて可動導体とされても、当該異方導電性コネクターの使用中に、当該可動導体が絶縁性シートの貫通孔に嵌入する結果、可動導体としての機能が失われるため、所要の凹凸吸収能を維持することができない。
【0007】
【特許文献1】特開昭51−93393号公報
【特許文献2】特開昭53−147772号公報
【特許文献3】特開昭61−250906号公報
【特許文献4】特開2001−351702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その第1の目的は、隣接する電極間の離間距離が小さく、電極の高さレベルにバラツキがある接続対象体についても、隣接する電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができる異方導電性コネクターを提供することにある。
本発明の第2の目的は、検査対象である回路装置が、隣接する被検査電極の間の離間距離が小さく、被検査電極の高さレベルにバラツキがあるものであっても、隣接する被検査電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該被検査電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができるアダプター装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、検査対象である回路装置が、隣接する被検査電極の間の離間距離が小さく、被検査電極の高さレベルにバラツキがあるものであっても、当該回路装置について所要の電気的検査を確実に実行することができる回路装置の電気的検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の異方導電性コネクターは、複数の開口を有する樹脂よりなる絶縁性シート、この絶縁性シートの各開口を塞ぐよう配置され、当該絶縁性シートに支持された弾性高分子物質よりなる絶縁膜、および、この絶縁膜に固定支持され、前記絶縁性シートの開口内に位置するよう配置された、当該絶縁膜の厚み方向に伸びる複数の剛性導体により構成された複合導電性シートと、
この複合導電性シートの一面に配置された、第1の異方導電性エラストマーシートと、 前記複合導電性シートの他面に配置された、第2の異方導電性エラストマーシートと
を具えてなり、
前記複合導電性シートにおける剛性導体の各々は、前記絶縁膜の弾性によって、前記絶縁性シートに対してその厚み方向に変位可能とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の異方導電性コネクターにおいては、第1の異方導電性エラストマーシートおよび第2の異方導電性エラストマーシートの各々は、弾性高分子物質中に、磁性を示す導電性粒子が、厚み方向に並ぶよう配向して連鎖が形成された状態で、かつ、当該導電性粒子による連鎖が面方向に分散した状態で含有されてなることが好ましい。
このような異方導電性コネクターにおいては、第1の異方導電性エラストマーシートおよび第2の異方導電性エラストマーシートの各々の厚みが20〜100μmであることが好ましい。
また、導電性粒子の数平均粒子径が3〜20μmであることが好ましい。
【0011】
本発明のアダプター装置は、表面に検査すべき回路装置における被検査電極に対応するパターンに従って複数の接続用電極が形成された接続用電極領域を有するアダプター本体と、
このアダプター本体の接続用電極領域上に配置された、当該アダプター本体における接続用電極に対応するパターンに従って形成された複数の剛性導体を有する、上記の異方導電性コネクターと
を具えてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のアダプター装置は、表面に検査すべき回路装置における被検査電極に対応するパターンに従ってそれぞれ電流供給用および電圧測定用の2つの接続用電極からなる複数の接続用電極対が形成された接続用電極領域を有するアダプター本体と、
このアダプター本体の接続用電極領域上に配置された、当該アダプター本体における接続用電極に対応するパターンに従って形成された複数の剛性導体を有する、上記の異方導電性コネクターと
を具えてなることを特徴とする。
【0013】
本発明の回路装置の電気的検査装置は、上記のアダプター装置を具えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異方導電性コネクターによれば、複合導電性シートにおける剛性導体の各々は、絶縁膜の弾性によって、絶縁性シートに対してその厚み方向に変位可能とされているため、接続すべき電極によって厚み方向に加圧されたときには、複合導電性シートの一面に配置された第1の異方導電性エラストマーシートおよび当該複合導電性シートの他面に配置された第2の異方導電性エラストマーシートは、剛性導体が変位することによって互いに連動して圧縮変形するため、両者の有する凹凸吸収能の合計が異方導電性コネクターの凹凸吸収能として発現され、従って、高い凹凸吸収能を得ることができる。
また、所要の凹凸吸収能を得るために必要な厚みは、第1の異方導電性エラストマーシートおよび第2の異方導電性エラストマーシートの合計の厚みによって確保すればよく、個々の異方導電性エラストマーシートとしては、厚みが小さいものを用いることができるので、高い分解能を得ることができる。
また、剛性導体の各々は、絶縁膜に固定支持されているため、複合導電性シートの製造中或いは異方導電性コネクターの使用中に、剛性導体の変位機能に不具合が生じることがない。
従って、隣接する電極間の離間距離が小さく、電極の高さレベルにバラツキがある接続対象体についても、隣接する電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができる。
【0015】
本発明のアダフター装置によれば、上記の異方導電性コネクターを具えてなるため、検査対象である回路装置が、隣接する被検査電極の間の離間距離が小さく、被検査電極の高さレベルにバラツキがあるものであっても、隣接する被検査電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該被検査電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができる。
【0016】
本発明の回路装置の電気的検査装置によれば、上記のアダプター装置を具えてなるため、検査対象である回路装置が、隣接する被検査電極の間の離間距離が小さく、被検査電極の高さレベルにバラツキがあるものであっても、当該回路装置について所要の電気的検査を確実に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〈異方導電性コネクター〉
図1は、本発明の異方導電性コネクターの一例における構成を示す説明用断面図であり、図2は図1に示す異方導電性コネクターの要部を拡大して示す説明用断面図である。この異方導電性コネクター10は、複合導電性シート11と、この複合導電性シート11の一面(図1において上面)に配置された第1の異方導電性エラストマーシート16と、複合導電性シート11の他面に配置された第2の異方導電性エラストマーシート17とにより構成されている。
【0018】
複合導電性シート11は、複数の開口13が形成された樹脂よりなる絶縁性シート12を有し、この絶縁性シート12には、弾性高分子物質よりなる一体の絶縁膜14が、当該絶縁性シート12の全ての開口13を塞ぐよう配置され、当該絶縁性シート12に一体的に接着されることによって支持されている。この絶縁膜14には、絶縁性シート12の開口13内に位置する個所に、それぞれ絶縁膜14の厚み方向に伸びる複数の剛性導体15が特定のパターンに従って設けられている。図示の例では、剛性導体15における一端部15aおよび他端部15bの各々は、絶縁膜14の一面および他面から突出するよう形成され、当該一端部15aおよび他端部15bの各々の径が、絶縁膜14中に埋設された中央部15cの径より大きいものとされている。剛性導体15における特定のパターンは、接続すべき電極例えば検査対象である回路装置の被検査電極に対応するパターンである。そして、剛性導体15の各々は、絶縁膜14の弾性によって、絶縁性シート12に対してその厚み方向に変位可能とされている。
【0019】
絶縁性シート12を構成する材料としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、ガラス繊維補強型ポリエステル樹脂、ガラス繊維補強型ポリイミド樹脂等の繊維補強型樹脂材料、エポキシ樹脂等にアルミナ、ポロンナイトライド等の無機材料をフィラーとして含有した複合樹脂材料などを用いることができる。
また、異方導電性コネクター10を高温環境下で使用する場合には、絶縁性シート12として、線熱膨張係数が3×10-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは1×10-6〜2×10-5/K、特に好ましくは1×10-6〜6×10-6/Kである。このような絶縁性シート12を用いることにより、絶縁膜14の熱膨張による剛性導体15の位置ずれを抑制することができる。
また、絶縁性シート12の厚みは、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜100μmである。
【0020】
絶縁膜14を構成する材料としては、架橋構造を有する高分子物質が好ましい。このような弾性高分子物質を得るために用いることのできる硬化性の高分子物質形成材料としては、種々のものを用いることができ、その具体例としては、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレン−ブタジエン−ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴムおよびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらの中では、耐久性、成形加工性および電気特性の観点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
シリコーンゴムとしては、液状シリコーンゴムを架橋または縮合したものが好ましい。液状シリコーンゴムは、その粘度が歪速度10-1secで105 ポアズ以下のものが好ましく、縮合型のもの、付加型のもの、ビニル基やヒドロキシル基を含有するものなどのいずれであってもよい。具体的には、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルビニルシリコーン生ゴムなどを挙げることができる。
また、シリコーンゴムは、その分子量Mw(標準ポリスチレン換算重量平均分子量をいう。以下同じ。)が10,000〜40,000のものであることが好ましい。また、得られる絶縁膜14に良好な耐熱性が得られることから、分子量分布指数(標準ポリスチレン換算重量平均分子量Mwと標準ポリスチレン換算数平均分子量Mnとの比Mw/Mnの値をいう。以下同じ。)が2以下のものが好ましい。
また、絶縁膜14の厚みは、15〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20〜400μmである。
【0021】
剛性導体15を構成する材料としては、剛性を有する金属材料を好適に用いることができ、その具体例としては、ニッケル、コバルト、銅、金、アルミニウムなどの単体金属またはこれらの合金などを挙げることができる。
また、剛性導体15における一端部15aおよび他端部15bの各々の径は、接続すべき電極例えば被検査電極の径の70〜150%であることが好ましい。
また、剛性導体15における中央部15cの径は、一端部15aおよび他端部15bの各々の径より小さいものであればよいが、例えば20〜120μmであることが好ましい。
また、剛性導体15の一端部15aおよび他端部15bにおける絶縁膜14からの突出高さは、5〜100μmであることが好ましい。
【0022】
このような複合導電性シート11は、例えば以下のようにして製造することができる。 先ず、図3に示すように、適宜の支持板36を用意し、この支持板36上に、硬化されて弾性高分子物質となる液状の高分子物質形成材料を塗布して塗布膜14Bを形成する。その後、図4に示すように、塗布膜14Bの表面に、開口13が形成された絶縁性シート12を配置し、更に高分子物質形成材料を絶縁性シート12の開口13を塞ぐよう塗布することにより、図5に示すように、形成すべき絶縁膜14の形状に対応する形状の絶縁膜用材料層14Aが形成される。そして、絶縁膜用材料層14Aを硬化処理することにより、図6に示すように、絶縁性シート12にその開口13の各々を塞ぐよう配置された絶縁膜14が形成される。
以上において、高分子物質形成材料を塗布する方法としては、スクリーン印刷などの印刷法、ロール塗布法、ブレード塗布法などを利用することができる。
絶縁膜用材料層14Aの硬化処理は、通常、加熱処理によって行われる。具体的な加熱温度および加熱時間は、絶縁膜用材料層14Aを構成する高分子物質形成材料の種類などを考慮して適宜設定される。
【0023】
次いで、絶縁性シート12に形成された絶縁膜14に、図7に示すように、形成すべき剛性導体15のパターンに対応するパターンに従って、当該絶縁膜14の厚み方向に貫通する複数の貫通孔15Hを形成する。その後、図8に示すように、絶縁膜14の一面および他面の全面並びに絶縁膜14の貫通孔15Hの各々の内壁面全面に金属薄層18を形成し、更に、図9に示すように、金属薄層18における絶縁膜14の一面に接する部分の表面に、それぞれ絶縁膜14の貫通孔15Hに連通する複数のパターン孔37Hを有するレジスト膜37を形成すると共に、金属薄層18における絶縁膜14の他面に接する部分の表面に、それぞれ絶縁膜14の貫通孔15Hに連通する複数のパターン孔38Hを有するレジスト膜38を形成する。そして、金属薄層18を共通電極として電解メッキ処理を施して当該金属薄層18における露出した部分に金属を堆積させ、絶縁膜14の貫通孔15H内およびレジスト膜37,38のパターン孔37H,38H内に金属を充填することにより、図10に示すように、絶縁膜14の厚み方向に伸びる剛性導体15が形成される。その後、レジスト膜37,38の各々を除去し、更に、エッチング処理を施して金属薄層18を除去することにより、図11に示すような複合導電性シート11が得られる。
以上において、絶縁膜14に貫通孔15Hを形成する方法としては、レーサー加工法を利用することができる。
また、絶縁膜14に金属薄層18を形成する方法としては、無電解メッキ法を利用することができる。
また、金属薄層18の厚みは0.2〜10μmであることが好ましい。
【0024】
この例における第1の異方導電性エラストマーシート16および第2の異方導電性エラストマーシート17は、いずれも絶縁性の弾性高分子物質中に、磁性を示す導電性粒子Pが、厚み方向に並ぶよう配向して連鎖が形成された状態で、かつ、当該導電性粒子Pによる連鎖が面方向に分散した状態で含有されてなるものである。
第1の異方導電性エラストマーシート16および第2の異方導電性エラストマーシート17を形成する弾性高分子物質としては、前述の複合導電性シート11における絶縁膜14を構成する弾性高分子物質として例示したものを用いることができる。
【0025】
第1の異方導電性エラストマーシート16および第2の異方導電性エラストマーシート17に含有される導電性粒子Pとしては、後述する方法により当該粒子を容易に厚み方向に並ぶよう配向させることができることから、磁性を示す導電性粒子が用いられる。このような導電性粒子の具体例としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性を有する金属の粒子若しくはこれらの合金の粒子またはこれらの金属を含有する粒子、またはこれらの粒子を芯粒子とし、当該芯粒子の表面に金、銀、パラジウム、ロジウムなどの導電性の良好な金属のメッキを施したもの、あるいは非磁性金属粒子若しくはガラスビーズなどの無機物質粒子またはポリマー粒子を芯粒子とし、当該芯粒子の表面に、ニッケル、コバルトなどの導電性磁性金属のメッキを施したものなどが挙げられる。
これらの中では、ニッケル粒子を芯粒子とし、その表面に導電性の良好な金のメッキを施したものを用いることが好ましい。
芯粒子の表面に導電性金属を被覆する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば化学メッキまたは電解メッキ法、スパッタリング法、蒸着法などが用いられている。
【0026】
導電性粒子Pとして、芯粒子の表面に導電性金属が被覆されてなるものを用いる場合には、良好な導電性が得られることから、粒子表面における導電性金属の被覆率(芯粒子の表面積に対する導電性金属の被覆面積の割合)が40%以上であることが好ましく、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは47〜95%である。
また、導電性金属の被覆量は、芯粒子の0.5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは4〜20質量%である。被覆される導電性金属が金である場合には、その被覆量は、芯粒子の0.5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。
【0027】
また、導電性粒子Pの数平均粒子径は、3〜20μmであることが好ましく、より好ましくは5〜15μmである。この数平均粒子径が過小である場合には、後述する製造方法において、導電性粒子Pを厚み方向に配向させることが困難となることがある。一方、この数平均粒子径が過大である場合には、分解能の高い異方導電性エラストマーシートを得ることが困難となることがある。
また、導電性粒子Pの粒子径分布(Dw/Dn)は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1.01〜7、さらに好ましくは1.05〜5、特に好ましくは1.1〜4である。
また、導電性粒子Pの形状は、特に限定されるものではないが、高分子物質形成材料中に容易に分散させることができる点で、球状のもの、星形状のものあるいはこれらが凝集した2次粒子であることが好ましい。
また、導電性粒子Pとして、その表面がシランカップリング剤などのカップリング剤や潤滑剤で処理されたものを適宜用いることができる。カップリング剤や潤滑剤で粒子表面を処理することにより、得られる異方導電性エラストマーシートの耐久性が向上する。
【0028】
このような導電性粒子Pは、異方導電性エラストマーシート中に体積分率で10〜40%、特に15〜35%となる割合で含有されていることが好ましい。この割合が過小である場合には、厚み方向に十分に高い導電性を有する異方導電性エラストマーシートが得られないことがある。一方、この割合が過大である場合には、得られる異方導電性エラストーシートは脆弱なものとなりやすく、異方導電性エラストーシートとして必要な弾性が得られないことがある。
【0029】
また、第1の異方導電性エラストマーシート16および第2の異方導電性エラストマーシート17の各々の厚みは、20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは25〜70μmである。この厚みが過小である場合には、十分な凹凸吸収能が得られないことがある。一方、この厚みが過大である場合には、高い分解能が得られないことがある。
【0030】
第1の異方導電性エラストマーシート16は、以下のようにして製造することができる。
先ず、図12に示すように、それぞれシート状の一面側成形部材30および他面側成形部材31と、目的とする第1の異方導電性エラストマーシート16の平面形状に適合する形状の開口32Kを有すると共に当該第1の異方導電性エラストマーシート16の厚みに対応する厚みを有する枠状のスペーサー32とを用意すると共に、硬化されて弾性高分子物質となる液状の高分子物質形成材料中に導電性粒子が含有されてなる導電性エラストマー用材料を調製する。
そして、図13に示すように、他面側成形部材31の成形面(図13において上面)上にスペーサー32を配置し、他面側成形部材31の成形面上におけるスペーサー32の開口32K内に、調製した導電性エラストマー用材料16Bを塗布し、その後、この導電性エラストマー用材料16B上に一面側成形部材30をその成形面(図13において下面)が導電性エラストマー用材料16Bに接するよう配置する。
以上において、一面側成形部材30および他面側成形部材31としては、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などよりなる樹脂シートを用いることができる。
また、一面側成形部材30および他面側成形部材31を構成する樹脂シートの厚みは、50〜500μmであることが好ましく、より好ましくは75〜300μmである。この厚みが50μm未満である場合には、成形部材として必要な強度が得られないことがある。一方、この厚みが500μmを超える場合には、後述する導電性エラストマー用材料層に所要の強度の磁場を作用させることが困難となることがある。
【0031】
次いで、図14に示すように、加圧ロール33および支持ロール34よりなる加圧ロール装置35を用い、一面側成形部材30および他面側成形部材31によって導電性エラストマー用材料16Bを挟圧することにより、当該一面側成形部材30と当該他面側成形部材31との間に、所要の厚みの導電性エラストマー用材料層16Aを形成する。この導電性エラストマー用材料層16Aにおいては、図15に拡大して示すように、導電性粒子Pが均一に分散した状態で含有されている。
その後、一面側成形部材30の裏面および他面側成形部材31の裏面に、例えば一対の電磁石を配置し、当該電磁石を作動させることにより、導電性エラストマー用材料層16Aの厚み方向に平行磁場を作用させる。その結果、導電性エラストマー用材料層16Aにおいては、当該導電性エラストマー用材料層16A中に分散されている導電性粒子Pが、図16に示すように、面方向に分散された状態を維持しながら厚み方向に並ぶよう配向し、これにより、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電性粒子Pによる連鎖が、面方向に分散した状態で形成される。
そして、この状態において、導電性エラストマー用材料層16Aを硬化処理することにより、弾性高分子物質中に、導電性粒子Pが厚み方向に並ぶよう配向した状態で、かつ、当該導電性粒子Pによる連鎖が面方向に分散された状態で含有されてなる第1の異方導電性エラストマーシート16が製造される。
【0032】
以上において、導電性エラストマー用材料層16Aの硬化処理は、平行磁場を作用させたままの状態で行うこともできるが、平行磁場の作用を停止させた後に行うこともできる。
導電性エラストマー用材料層16Aに作用される平行磁場の強度は、平均で0.02〜2.5テスラとなる大きさが好ましい。
導電性エラストマー用材料層16Aの硬化処理は、使用される材料によって適宜選定されるが、通常、加熱処理によって行われる。具体的な加熱温度および加熱時間は、導電性エラストマー用材料層16Aを構成する高分子物質用材料などの種類、導電性粒子Pの移動に要する時間などを考慮して適宜選定される。
【0033】
また、第2の異方導電性エラストマーシート17は、第1の異方導電性エラストマーシート16と同様の方法によって製造することができる。
【0034】
このような異方導電性コネクター10によれば、複合導電性シート11における剛性導体15の各々は、絶縁膜14の弾性によって、絶縁性シート12に対してその厚み方向に変位可能とされているため、接続すべき電極によって厚み方向に加圧されたときには、複合導電性シート12の一面に配置された第1の異方導電性エラストマーシート16および当該複合導電性シート12の他面に配置された第2の異方導電性エラストマーシート17は、剛性導体15が変位することによって互いに連動して圧縮変形するため、両者の有する凹凸吸収能の合計が異方導電性コネクター10の凹凸吸収能として発現され、従って、高い凹凸吸収能を得ることができる。
また、所要の凹凸吸収能を得るために必要な厚みは、第1の異方導電性エラストマーシート16および第2の異方導電性エラストマーシート17の合計の厚みによって確保すればよく、個々の異方導電性エラストマーシートとしては、厚みが小さいものを用いることができるので、高い分解能を得ることができる。
また、剛性導体15の各々は、絶縁膜14に固定支持されているため、複合導電性シート12の製造中或いは異方導電性コネクター10の使用中に、剛性導体15の変位機能に不具合が生じることがない。
従って、隣接する電極間の離間距離が小さく、電極の高さレベルにバラツキがある接続対象体についても、隣接する電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができる。
【0035】
〈アダプター装置〉
図17は、本発明に係るアダプター装置の第1の例における構成を示す説明用断面図であり、図18は、図17に示すアダプター装置におけるアダプター本体を示す説明用断面図である。このアダプター装置は、例えばプリント回路基板などの回路装置について、例えばオープン・ショート試験を行うために用いられる回路装置検査用のものであって、多層配線板よりなるアダプター本体20を有する。
アダプター本体20の表面(図17および図18において上面)には、検査対象である回路装置の被検査電極のパターンに対応する特定のパターンに従って複数の接続用電極21が配置された接続用電極領域25が形成されている。
アダプター本体20の裏面には、例えばピッチが0.8mm、0.75mm、1.5mm、1.8mm、2.54mmの格子点位置に従って複数の端子電極22が配置され、端子電極22の各々は、内部配線部23によって接続用電極21に電気的に接続されている。
このアダプター本体20の表面には、その接続用電極領域25上に、基本的に図1に示す構成の異方導電性コネクター10が、その第2の異方導電性エラストマーシート17がアダプター本体20に接するよう配置され、当該アダプター本体20に適宜の手段(図示省略)によって固定されている。
この異方導電性コネクター10において、複合導電性シート11には、アダプター本体20における接続用電極21に係る特定のパターンと同一のパターンに従って複数の剛性導体15が配置されており、当該異方導電性コネクター10は、複合導電性シート11における剛性導体15の各々がアダプター本体20の接続用電極21の直上位置に位置するよう配置されている。
【0036】
このようなアダプター装置によれば、図1に示す構成の異方導電性コネクター10を有するため、検査対象である回路装置が、隣接する被検査電極の間の離間距離が小さく、被検査電極の高さレベルにバラツキがあるものであっても、隣接する被検査電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該被検査電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができる。
【0037】
図19は、本発明に係るアダプター装置の第2の例における構成を示す説明用断面図であり、図20は、図19に示すアダプター装置におけるアダプター本体を示す説明用断面図である。このアダプター装置は、例えばプリント回路基板などの回路装置について、各配線パターンの電気抵抗測定試験を行うために用いられる回路装置検査用のものであって、多層配線板よりなるアダプター本体20を有する。
アダプター本体20の表面(図19および図20において上面)には、それぞれ同一の被検査電極に電気的に接続される互いに離間して配置された電流供給用の接続用電極(以下、「電流供給用電極」ともいう。)21bおよび電圧測定用の接続用電極(以下、「電圧測定用電極」ともいう。)21cよりなる複数の接続用電極対21aが配置された接続用電極領域25が形成されている。これらの接続用電極対21aは、検査対象である回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って配置されている。
アダプター本体20の裏面には、例えばピッチが0.8mm、0.75mm、1.5mm、1.8mm、2.54mmの格子点位置に従って複数の端子電極22が配置されている。
そして、電流供給用電極21bおよび電圧測定用電極21cの各々は、内部配線部23によって端子電極22に電気的に接続されている。
このアダプター本体20の表面には、その接続用電極領域25上に、基本的に図1に示す構成の異方導電性コネクター10が、その第2の異方導電性エラストマーシート17がアダプター本体20に接するよう配置され、当該アダプター本体20に適宜の手段(図示省略)によって固定されている。
この異方導電性コネクター10において、複合導電性シート11には、アダプター本体20における接続用電極21b,21cに係る特定のパターンと同一のパターンに従って複数の剛性導体15が配置されており、当該異方導電性コネクター10は、複合導電性シート11における剛性導体15の各々がアダプター本体20の接続用電極21b,21cの直上位置に位置するよう配置されている。
【0038】
上記のアダプター装置によれば、図1に示す構成の異方導電性コネクター10を有するため、検査対象である回路装置が、隣接する被検査電極の間の離間距離が小さく、被検査電極の高さレベルにバラツキがあるものであっても、隣接する被検査電極間に必要な絶縁性が確保された状態で当該被検査電極の各々に対する電気的な接続を確実に達成することができる。
【0039】
〈回路装置の電気的検査装置〉
図21は、本発明に係る回路基板の電気的検査装置の第1の例における構成を示す説明図である。この電気的検査装置は、両面に被検査電極6,7が形成されたプリント回路基板などの回路装置5について、例えばオープン・ショート試験を行うものであって、回路装置5を検査実行領域Eに保持するためのホルダー2を有し、このホルダー2には、回路装置5を検査実行領域Eにおける適正な位置に配置するための位置決めピン3が設けられている。検査実行領域Eの上方には、図17に示すような構成の上部側アダプター装置1aおよび上部側検査ヘッド50aが下からこの順で配置され、更に、上部側検査ヘッド50aの上方には、上部側支持板56aが配置されており、上部側検査ヘッド50aは、支柱54aによって上部側支持板56aに固定されている。一方、検査実行領域Eの下方には、図17に示すような構成の下部側アダプター装置1bおよび下部側検査ヘッド50bが上からこの順で配置され、更に、下部側検査ヘッド50bの下方には、下部側支持板56bが配置されており、下部側検査ヘッド50bは、支柱54bによって下部側支持板56bに固定されている。
上部側検査ヘッド50aは、板状の検査電極装置51aと、この検査電極装置51aの下面に固定されて配置された弾性を有する異方導電性シート55aとにより構成されている。検査電極装置51aは、その下面に上部側アダプター装置1aの端子電極22と同一のピッチの格子点位置に配列された複数のピン状の検査電極52aを有し、これらの検査電極52aの各々は、電線53aによって、上部側支持板56aに設けられたコネクター57aに電気的に接続され、更に、このコネクター57aを介してテスターの検査回路(図示省略)に電気的に接続されている。
下部側検査ヘッド50bは、板状の検査電極装置51bと、この検査電極装置51bの上面に固定されて配置された弾性を有する異方導電性シート55bとにより構成されている。検査電極装置51bは、その上面に下部側アダプター装置1bの端子電極22と同一のピッチの格子点位置に配列された複数のピン状の検査電極52bを有し、これらの検査電極52bの各々は、電線53bによって、下部側支持板56bに設けられたコネクター57bに電気的に接続され、更に、このコネクター57bを介してテスターの検査回路(図示省略)に電気的に接続されている。
【0040】
上部側検査ヘッド50aおよび下部側検査ヘッド50bにおける異方導電性シート55a,55bは、いずれもその厚み方向にのみ導電路を形成する導電路形成部が形成されてなるものである。このような異方導電性シート55a,55bとしては、各導電路形成部が少なくとも一面において厚み方向に突出するよう形成されているものが、高い電気的な接触安定性を発揮する点で好ましい。
【0041】
このような回路基板の電気的検査装置においては、検査対象である回路装置5がホルダー2によって検査実行領域Eに保持され、この状態で、上部側支持板56aおよび下部側支持板56bの各々が回路装置5に接近する方向に移動することにより、当該回路装置5が上部側アダプター装置1aおよび下部側アダプター装置1bによって挟圧される。
この状態においては、回路装置5の上面における被検査電極6は、上部側アダプター装置1aにおける接続用電極21に、当該異方導電性コネクター10を介して電気的に接続され、この上部側アダプター装置1aの端子電極22は、異方導電性シート55aを介して検査電極装置51aの検査電極52aに電気的に接続されている。一方、回路装置5の下面における被検査電極7は、下部側アダプター装置1bにおける接続用電極21に、当該異方導電性コネクター10を介して電気的に接続され、この下部側アダプター装置1bの端子電極22は、異方導電性シート55bを介して検査電極装置51bの検査電極52bに電気的に接続されている。
【0042】
このようにして、回路装置5の上面および下面の両方の被検査電極6,7の各々が、上部側検査ヘッド50aにおける検査電極装置51aの検査電極52aおよび下部側検査ヘッド50bにおける検査電極装置51bの検査電極52bの各々に電気的に接続されることにより、テスターの検査回路に電気的に接続された状態が達成され、この状態で所要の電気的検査が行われる。
【0043】
上記の回路基板の電気的検査装置によれば、図17に示すような構成の上部側アダプター装置1aおよび下部側アダプター装置1bを有するため、検査対象である回路装置5が、隣接する被検査電極6,7の間の離間距離が小さく、被検査電極6,7の高さレベルにバラツキがあるものであっても、当該回路装置5について所要の電気的検査を確実に実行することができる。
【0044】
図22は、本発明に係る回路基板の電気的検査装置の第2の例における構成を示す説明図である。この電気的検査装置は、両面に被検査電極6,7が形成されたプリント回路基板などの回路装置5について、各配線パターンの電気抵抗測定試験を行うためのものであって、回路装置5を検査実行領域Eに保持するためのホルダー2を有し、このホルダー2には、回路装置5を検査実行領域Eにおける適正な位置に配置するための位置決めピン3が設けられている。
検査実行領域Eの上方には、図19に示すような構成の上部側アダプター装置1aおよび上部側検査ヘッド50aが下からこの順で配置され、更に、上部側検査ヘッド50aの上方には、上部側支持板56aが配置されており、上部側検査ヘッド50aは、支柱54aによって上部側支持板56aに固定されている。一方、検査実行領域Eの下方には、図19に示すような構成の下部側アダプター装置1bおよび下部側検査ヘッド50bが上からこの順で配置され、更に、下部側検査ヘッド50bの下方には、下部側支持板56bが配置されており、下部側検査ヘッド50bは、支柱54bによって下部側支持板56bに固定されている。
上部側検査ヘッド50aは、板状の検査電極装置51aと、この検査電極装置51aの下面に固定されて配置された弾性を有する異方導電性シート55aとにより構成されている。検査電極装置51aは、その下面に上部側アダプター装置1aの端子電極22と同一のピッチの格子点位置に配列された複数のピン状の検査電極52aを有し、これらの検査電極52aの各々は、電線53aによって、上部側支持板56aに設けられたコネクター57aに電気的に接続され、更に、このコネクター57aを介してテスターの検査回路(図示省略)に電気的に接続されている。
下部側検査ヘッド50bは、板状の検査電極装置51bと、この検査電極装置51bの上面に固定されて配置された弾性を有する異方導電性シート55bとにより構成されている。検査電極装置51bは、その上面に下部側アダプター装置1bの端子電極22と同一のピッチの格子点位置に配列された複数のピン状の検査電極52bを有し、これらの検査電極52bの各々は、電線53bによって、下部側支持板56bに設けられたコネクター57bに電気的に接続され、更に、このコネクター57bを介してテスターの検査回路(図示省略)に電気的に接続されている。
上部側検査ヘッド50aおよび下部側検査ヘッド50bにおける異方導電性シート55a,55bは、第1の例の電気的検査装置と基本的に同様の構成である。
【0045】
このような回路基板の電気的検査装置においては、検査対象である回路装置5がホルダー2によって検査実行領域Eに保持され、この状態で、上部側支持板56aおよび下部側支持板56bの各々が回路装置5に接近する方向に移動することにより、当該回路装置5が上部側アダプター装置1aおよび下部側アダプター装置1bによって挟圧される。
この状態においては、回路装置5の上面における被検査電極6は、上部側アダプター装置1aの接続用電極対21aにおける電流供給用電極21bおよび電圧測定用電極21cの両方に、異方導電性コネクター10を介して電気的に接続され、この上部側アダプター装置1aの端子電極22は、異方導電性シート55aを介して検査電極装置51aの検査電極52aに電気的に接続されている。一方、回路装置5の下面における被検査電極7は、下部側アダプター装置1bの接続用電極対21aにおける電流供給用電極21bおよび電圧測定用電極21cの両方に、異方導電性コネクター10を介して電気的に接続され、この下部側アダプター装置1bの端子電極22は、異方導電性シート55bを介して検査電極装置51bの検査電極52bに電気的に接続されている。
【0046】
このようにして、回路装置5の上面および下面の両方の被検査電極6,7の各々が、上部側検査ヘッド50aにおける検査電極装置51aの検査電極52aおよび下部側検査ヘッド50bにおける検査電極装置51bの検査電極52bの各々に電気的に接続されることにより、テスターの検査回路に電気的に接続された状態が達成され、この状態で所要の電気的検査が行われる。具体的には、上部側アダプター装置1aにおける電流供給用電極21bと下部側アダプター装置1bにおける電流供給用電極21bとの間に一定の値の電流が供給されると共に、上部側のアダプター装置1aにおける複数の電圧測定用電極21cの中から1つを指定し、当該指定された1つの電圧測定用電極21cと、当該電圧測定用電極21cに電気的に接続された上面側の被検査電極5に対応する下面側の被検査電極6に電気的に接続された、下部側アダプター装置1bにおける電圧測定用電極21cとの間の電圧が測定され、得られた電圧値に基づいて、当該指定された1つの電圧測定用電極21cに電気的に接続された上面側の被検査電極5とこれに対応する他面側の被検査電極6との間に形成された配線パターンの電気抵抗値が取得される。そして、指定する電圧測定用電極21cを順次変更することにより、全ての配線パターンの電気抵抗の測定が行われる。
【0047】
上記の回路基板の電気的検査装置によれば、図19に示すような構成の上部側アダプター装置1aおよび下部側アダプター装置1bを有するため、検査対象である回路装置5が、隣接する被検査電極6,7の間の離間距離が小さく、被検査電極6,7の高さレベルにバラツキがあるものであっても、当該回路装置5について所要の電気的検査を確実に実行することができる。
【0048】
本発明においては、上記の実施の形態に限定されず、以下のような種々の変更を加えることが可能である。
異方導電性コネクター10において、複合導電性シート11の剛性導体15を構成する材料としては、剛性を有する導体であれば金属材料に限定されるものではなく、例えば、剛性樹脂中に金属などの導電性粉末が含有されてなるものなどを用いることができる。
また、複合導電性シート11は、図23に示すように、単一の開口13が形成された絶縁性シート12と、当該絶縁性シート12の開口12を塞ぐよう配置された一体の絶縁膜14とを有する構成のものであってもよい。
また、複合導電性シート11は、図24に示すように、複数の開口13が形成された絶縁性シート12と、それぞれ絶縁性シート12の一の開口13を塞ぐよう配置された複数の絶縁膜14とを有する構成のものであってもよい。
また、複合導電性シート11は、複数の開口が形成された絶縁性シートと、当該絶縁性シートの一の開口を塞ぐよう配置された1または2以上の絶縁膜と、絶縁性シートの複数の開口を塞ぐよう配置された1つまたは2以上の絶縁膜とを有する構成のものであってもよい。
また、電気的検査装置において、検査対象である回路装置は、プリント回路基板に限定されず、パッケージIC、MCMなどの半導体集積回路装置であってもよい。
【0049】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
〈評価用回路装置の作製〉
下記の仕様の評価用回路装置を作製した。
すなわち、この評価用回路装置は、寸法が200mm(縦)×140mm(横)×0.8mm(厚み)で、上面側被検査電極および下面側被検査電極はそれぞれ半田バンプにより構成されている。上面側被検査電極は、その総数が2400個で、各々の直径が約200μm、突出高さが約50μm、最小ピッチが400μmである。下面側被検査電極は、その総数が2400個で、上面側被検査電極と同一のパターンで形成されており、各々の直径が約150μm、突出高さが約50μm、最小ピッチは400μmである。また、上面側被検査電極と下面側被検査電極とは、内部配線によって互いに1対1の関係で電気的に接続されている。
【0051】
〈実施例1〉
以下のようにして、上記の評価用回路装置の電気的検査を行うための上部側アダプター装置および下部側アダプター装置を製造し、図22に示す回路装置の検査装置を構成した。
【0052】
〔上部側アダプター装置〕
(1)複合導電性シートの製造:
厚みが50μmの液晶ポリマーよりなる樹脂シートの両面に銅箔が積層されてなる積層シート(新日鐵化学製の「エスパネックス LB18−50−18NEP」)を用意し、この積層シートの一面の銅箔上にドライフィルムレジストをラミネートすることによりレジスト膜を形成した。次いで、形成されたレジスト膜に対して露光処理および現像処理を施すことにより、当該レジスト膜に上記の評価用回路装置における上面側被検査電極に対応するパターンに従って直径が350μmの円形のパターン孔を形成し、更に、エッチング処理を行うことにより、銅箔にレジスト膜のパターン孔と同一のパターンの開口を形成し、その後、レジスト膜を除去した。
そして、積層シートにおける樹脂シートに対して、銅箔に形成された開口を介してレーザー加工を施して開口を形成し、その後、積層シートにおける両面の銅箔を、エッチング処理によって除去することにより、上記の評価用回路装置における上面側被検査電極に対応するパターンに従って開口が形成された絶縁性シートを作製した。
この絶縁性シートは、材質が液晶ポリマーで、寸法が190mm×130mm×50μmであり、開口の各々は、直径が400μmの円形であり、開口の総数は2400である。
【0053】
次いで、支持板の表面に、付加型液状シリコーンゴムを塗布することにより、厚みが10μmの塗布膜を形成し、この塗布膜上に、作製した絶縁性シートを配置し、更に、付加型液状シリコーンゴムを塗布することにより、絶縁性シートの各開口を塞ぐよう配置された、全体の厚みが70μmの一体の絶縁膜用材料層を形成し、この絶縁膜用材料層に対して、120℃、1時間の条件で硬化処理を行うことにより、当該絶縁性シートに厚みが70μmの絶縁膜を形成した。
得られた絶縁膜に対して、レーザー加工を施すことにより、当該絶縁膜にその厚み方向に伸びる直径50μmの貫通孔を、絶縁性シートの各開口内に位置する部分に2個ずつ、合計で4800個形成した。その後、絶縁膜の一面および他面の全面並びに絶縁膜の貫通孔の各々の内壁面全面に無電解メッキを施して銅よりなる金属薄層を形成し、更に、金属薄層における絶縁膜の一面に接する部分の表面に、それぞれ絶縁膜の貫通孔に連通する直径が60μmの4800個のパターン孔を有するレジスト膜を形成すると共に、金属薄層における絶縁膜の他面に接する部分の表面に、それぞれ絶縁膜の貫通孔に連通する直径が60μmの4800個のレジスト膜を形成した。そして、金属薄層を共通電極として電解メッキ処理を施して、絶縁膜の貫通孔内およびレジストのパターン内に金属を充填することにより、絶縁膜の厚み方向に伸びる銅よりなる剛性導体を形成した。この剛性導体の各々の寸法は、一端部および他端部の径がそれぞれ60μmで中央部の径が50μmである。その後、レジストの各々を除去し、更に、エッチング処理を施して金属薄層を除去することにより、複合導電性シートを製造した。得られた複合導電性シートの一面および他面における隣接する剛性導体の最小中心間距離は120μmで、最小離間距離は60μmである。
【0054】
(2)異方導電性エラストマーシートの製造:
付加型液状シリコーンゴム100重量部に数平均粒子径が12μmの導電性粒子400重量部を添加して混合した後、減圧による脱泡処理を行うことにより、導電性エラストマー用材料を調製した。
以上において、導電性粒子としては、ニッケル粒子を芯粒子とし、この芯粒子に無電解金メッキが施されてなるもの(平均被覆量:芯粒子の重量の2重量%となる量)を用いた。
【0055】
他面側成形部材の成形面上に、120mm×120mmの矩形の開口を有する、厚みが50μmの枠状のスペーサーを配置した後、スペーサーの開口内に、調製した導電性エラストマー用材料を塗布し、この導電性エラストマー用材料上に一面側成形部材をその成形面が導電性エラストマー用材料に接するよう配置した。
以上において、一面側成形部材および他面側成形部材としては、厚みが0.1mmのポリエステル樹脂シートを用いた。
その後、加圧ロールおよび支持ロールよりなる加圧ロール装置を用い、一面側成形部材および他面側成形部材によって導電性エラストマー用材料を挟圧することにより、当該一面側成形部材と当該他面側成形部材との間に厚みが50μmの導電性エラストマー用材料層を形成した。
そして、一面側成形部材および他面側成形部材の各々の裏面に電磁石を配置し、導電性エラストマー用材料層に対してその厚み方向に0.3Tの平行磁場を作用させながら、120℃、0.5時間の条件で導電性エラストマー用材料層の硬化処理を行うことにより、厚みが50μmの矩形の異方導電性エラストマーシートを製造した。
以上のようにして、分散型異方導電性シートを2枚製造し、その一方を第1の異方導電性エラストマーシートとして複合導電性シートの一面に配置し、他方を第2の異方導電性エラストマーシートとして複合導電性シートの他面に配置することにより、上部側アダプター装置用の異方導電性コネクターを製造した。
【0056】
(3)アダプター本体の製造:
図19に示す構成に従い、下記の仕様のアダプター本体を製造した。
すなわち、このアダプター本体は、縦横の寸法が200mm×140mmで、基板材質がガラス繊維補強型エポキシ樹脂であり、当該アダプター本体の表面における接続用電極領域には、それぞれ寸法が120μm×60μmの矩形の電流供給用電極および電圧測定用電極が60μmの離間距離(中心間距離が120μm)で配置されてなる2400対の接続用電極対が上記の評価用回路装置の上面側被検査電極のパターンに対応するパターンに従って配置されている。また、アダプター本体の裏面には、それぞれ直径が400μmの円形の4800個の端子電極が、750μmのピッチの格子点位置に従って配置されており、電流供給用電極および電圧測定用電極の各々と端子電極の各々とは、内部配線によって互いに1対1の関係で電気的に接続されている。
そして、このアダプター本体の表面における接続用電極領域上に、上記の異方導電性コネクターを位置合わせして配置して固定することにより、上部側アダプター装置を製造した。
【0057】
〔下部側アダプター装置〕
上記の上部側アダプター装置と同様にして下部側アダプター装置を製造した。
【0058】
〔検査装置の作製〕
上記の上部側アダプター装置および下部側アダプター装置を用い、図22に示す構成に従って、レール搬送型回路基板自動検査機(日本電産リード社製,品名:STARREC V5)の検査部に適合する検査装置を作製した。
この検査装置の上部側検査ヘッドおよび下部側検査ヘッドにおいて、それぞれの検査電極板装置には4800本のピン状の検査電極が750μmのピッチの格子点位置に従って配列されている。
また、上部側検査ヘッドおよび下部側検査ヘッドにおける異方導電性シートの各々は、それぞれ厚み方向に伸びる4800個の導電路形成部が絶縁部によって相互に絶縁されてなる偏在型異方導電性シートである。具体的に説明すると、導電路形成部の各々は、シリコーンゴム中に、金メッキ処理を施したニッケル粒子(平均粒子径が35μm)が体積分率で25%となる割合で含有されてなり、0.75mmのピッチの格子点位置に従って配置されている。また、導電路形成部の各々は、絶縁部の両面の各々から突出するよう形成されており、その直径が0.4mm、厚みが0.6mmであり、絶縁部の両面からの突出高さはそれぞれ0.05mmである。一方、絶縁部は、シリコーンゴムにより形成されており、その厚みは0.5mmである。
【0059】
〔評価〕
(1)接続安定性試験:
上記の検査装置をレール搬送型回路基板自動検査機「STARREC V5」の検査部に装着し、当該検査装置の検査領域に評価用回路装置を位置合わせして配置した。次いで、所定のプレス荷重で、評価用回路装置に対して加圧操作を行い、この状態で、当該評価用回路装置について、上部側アダプター装置における電流供給用電極と下部側アダプター装置における電流供給用電極との間において1mAの電流を印加しながら、上部側アダプター装置における電圧測定用電極と下部側アダプター装置における電圧測定用電極との間の電圧を測定して電気抵抗値を測定した。そして、測定された電気抵抗値が10Ω以上となった検査点(以下、「NG検査点」という。)の数を測定した。このNG検査点数を測定する操作を合計で10回行った後、延べ検査点数(2400×10=24000)におけるNG検査点の割合(以下、「NG検査点割合」という。)を算出した。そして、このようなNG検査点割合を求める工程を、プレス荷重を100〜210kgfの範囲で段階的に変更して行うことにより、NG検査点が0.01%以下となる最小のプレス荷重(以下、「接続可能荷重」という。)を求めた。実際の回路基板の検査においては、NG検査点割合が0.01%以下であることが必要とされており、NG検査点割合が0.01%を超える場合には、良品の被検査回路基板を不良品と判定するおそれがあるため、回路基板について信頼性の高い電気的検査を行うことが困難である。
上記のNG検査点割合を求める工程においては、NG検査点数を測定する操作が1回終了する毎に、評価用回路装置に対する加圧を解除して無加圧状態とし、その後、次のNG検査点数を測定する操作を行った。その結果を下記表1に示す。
以上において、接続可能荷重が小さい値であることは、異方導電性コネクターにおける凹凸吸収能が高いことを意味する。そして、凹凸吸収能の高い異方導電性コネクターを用いることにより、回路装置に対する安定な電気的接続が小さい荷重で達成されるので、当該異方導電性コネクターおよびその他の検査装置における構成部材並びに被検査回路基板の各々に、加圧による劣化が生じることが抑制される。その結果、検査装置における各構成部材の使用寿命が長くなり、また、検査装置の構成部材として、比較的に耐久性の低いものを使用することが可能となることから、検査装置全体の製造コストの低減化を図ることができるので、好ましい。
【0060】
(2)耐久性試験:
上記の検査装置をレール搬送型回路基板自動検査機「STARREC V5」の検査部に装着し、当該検査装置の検査領域に評価用回路装置を位置合わせして配置した。次いで、130kgfおよび150kgfのプレス荷重で、評価用回路装置に対して加圧操作を行い、この状態で、当該評価用回路装置について、上部側アダプター装置における電流供給用電極と下部側アダプター装置における電流供給用電極との間において1mAの電流を印加しながら、上部側アダプター装置における電圧測定用電極と下部側アダプター装置における電圧測定用電極との間の電圧を測定して電気抵抗値を測定することにより、NG検査点の数を測定し、NG検査点割合を算出した。そして、このNG検査点割合を求める工程を1サイクルとして、合計で30000サイクル行った。この試験においては、NG検査点割合を求める工程が1回終了する毎に、評価用回路装置に対する加圧を解除して無加圧状態とし、その後、NG検査点割合を求める工程を行った。結果を下記表2に示す。
【0061】
〔絶縁性試験〕
上記の検査装置をレール搬送型回路基板自動検査機「STARREC V5」の検査部に装着し、当該検査装置の検査領域に、縦横の寸法がそれぞれ100mmで厚みが0.8mmの表面に絶縁性コーティング処理を施したガラス繊維補強型エポキシ樹脂よりなる基板を配置した。次いで、所定のプレス荷重で基板に対して加圧操作を行い、上部側アダプター装置の接続用電極対の各々における電流供給用電極と電圧測定用電極との間の電気抵抗値を測定した。そして、測定された電気抵抗値が10kΩ以上となった接続用電極対(以下、「絶縁良好電極対」という。)の数を測定した。この絶縁良好電極対の数を測定する操作を合計で10回行った後、延べ電極対数(2400×10=24000)における絶縁良好電極対の割合(以下、「絶縁良好電極対割合」という。)を算出した。実際の回路基板の検査においては、絶縁良好電極対割合が99%以上であることが必要とされており、絶縁良好電極対割合が99%未満である場合には、電流供給用電極に供給される電流が電圧測定用電極にリークして不良品の被検査回路基板を良品と判定するおそれがあるため、回路基板について信頼性の高い電気的検査を行うことが困難である。そして、このような絶縁良好電極対割合を求める工程を、プレス荷重を100〜210kgfの範囲で段階的に変更して行った。結果を表3に示す。
【0062】
〈比較例1〉
付加型液状シリコーンゴム100重量部に数平均粒子径が12μmの導電性粒子400重量部を添加して混合した後、減圧による脱泡処理を行うことにより、導電性エラストマー用材料を調製した。
以上において、導電性粒子としては、ニッケル粒子を芯粒子とし、この芯粒子に無電解金メッキが施されてなるもの(平均被覆量:芯粒子の重量の2重量%となる量)を用いた。
次いで、他面側成形部材の成形面上に、120mm×120mmの矩形の開口を有する、厚みが100μmの枠状のスペーサーを配置した後、スペーサーの開口内に、調製した導電性エラストマー用材料を塗布し、この導電性エラストマー用材料上に一面側成形部材をその成形面が導電性エラストマー用材料に接するよう配置した。
以上において、一面側成形部材および他面側成形部材としては、厚みが0.1mmのポリエステル樹脂シートを用いた。
その後、加圧ロールおよび支持ロールよりなる加圧ロール装置を用い、一面側成形部材および他面側成形部材によって導電性エラストマー用材料を挟圧することにより、当該一面側成形部材と当該他面側成形部材との間に厚みが100μmの導電性エラストマー用材料層を形成した。
次いで、一面側成形部材および他面側成形部材の各々の裏面に電磁石を配置し、導電性エラストマー用材料層に対してその厚み方向に0.3Tの平行磁場を作用させながら、120℃、0.5時間の条件で導電性エラストマー用材料層の硬化処理を行うことにより、厚みが100μmの矩形の異方導電性エラストマーシートを製造した。
そして、異方導電性コネクターの代わりに上記の異方導電性エラストマーシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして上部側アダプター装置および下部側アダプター装置を製造して検査装置を作製し、この検査装置について、接続安定性試験、耐久性試験および絶縁性試験を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0063】
〈比較例2〉
付加型液状シリコーンゴム100重量部に数平均粒子径が12μmの導電性粒子400重量部を添加して混合した後、減圧による脱泡処理を行うことにより、導電性エラストマー用材料を調製した。
以上において、導電性粒子としては、ニッケル粒子を芯粒子とし、この芯粒子に無電解金メッキが施されてなるもの(平均被覆量:芯粒子の重量の2重量%となる量)を用いた。
他面側成形部材の成形面上に、120mm×120mmの矩形の開口を有する、厚みが50μmの枠状のスペーサーを配置した後、スペーサーの開口内に、調製した導電性エラストマー用材料を塗布し、この導電性エラストマー用材料上に一面側成形部材をその成形面が導電性エラストマー用材料に接するよう配置した。
以上において、一面側成形部材および他面側成形部材としては、厚みが0.1mmのポリエステル樹脂シートを用いた。
その後、加圧ロールおよび支持ロールよりなる加圧ロール装置を用い、一面側成形部材および他面側成形部材によって導電性エラストマー用材料を挟圧することにより、当該一面側成形部材と当該他面側成形部材との間に厚みが50μmの導電性エラストマー用材料層を形成した。
そして、一面側成形部材および他面側成形部材の各々の裏面に電磁石を配置し、導電性エラストマー用材料層に対してその厚み方向に0.3Tの平行磁場を作用させながら、120℃、0.5時間の条件で導電性エラストマー用材料層の硬化処理を行うことにより、厚みが50μmの矩形の異方導電性エラストマーシートを製造した。
そして、異方導電性コネクターの代わりに上記の異方導電性エラストマーシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして上部側アダプター装置および下部側アダプター装置を製造して検査装置を作製し、この検査装置について、接続安定性試験、耐久性試験および絶縁性試験を行った。但し、耐久性試験については、150kgfおよび180kgfのプレス荷重で行った。結果を表1〜表3に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】

【表3】

【0067】
表1〜表3の結果から明らかなように、実施例1に係る異方導電性コネクターによれば、厚みが100μmの異方導電性エラストマーシート(比較例1)と同等の高い凹凸吸収能が得られると共に、厚みが50μmの異方導電性エラストマーシート(比較例2)と同等の高い分解能が得られ、更に、小さい荷重で安定な電気的接続が得られることから、検査装置に使用したときに、長い使用寿命が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の異方導電性コネクターの一例における構成を示す説明用断面図である。
【図2】図1に示す異方導電性コネクターの要部を拡大して示す説明用断面図である。
【図3】支持体上に高分子物質形成材料の塗布膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図4】高分子物質形成材料の塗布膜上に絶縁性シートが配置された状態を示す説明用断面図である。
【図5】支持体上に絶縁膜用材料層が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図6】絶縁性シートに絶縁膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図7】絶縁膜に貫通孔が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図8】絶縁膜の両面および貫通孔の内面に金属薄層が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図9】金属薄層の表面にパターン孔を有するレジスト膜が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図10】絶縁膜の貫通孔およびレジスト膜のパターン孔に剛性導体が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図11】複合導電性シートの要部を拡大して示す説明用断面図である。
【図12】第1の異方導電性エラストマーシートを製造するための一面側成形部材、他面側成形部材およびスペーサーを示す説明用断面図である。
【図13】他面側成形部材の表面に導電性エラストマー用材料が塗布された状態を示す説明用断面図である。
【図14】一面側成形部材と他面側成形部材との間に導電性エラストマー用材料層が形成された状態を示す説明用断面図である。
【図15】図14に示す導電性エラストマー用材料層を拡大して示す説明用断面図である。
【図16】図14に示す導電性エラストマー用材料層に対して厚み方向に磁場を作用させた状態を示す説明用断面図である。
【図17】本発明に係るアダプター装置の第1の例における構成を示す説明用断面図である。
【図18】図17に示すアダプター装置におけるアダプター本体の構成を示す説明用断面図である。
【図19】本発明に係るアダプター装置の第2の例における構成を示す説明用断面図である。
【図20】図19に示すアダプター装置におけるアダプター本体の構成を示す説明用断面図である。
【図21】本発明に係る回路装置の電気的検査装置の第1の例における構成を示す説明図である。
【図22】本発明に係る回路装置の電気的検査装置の第2の例における構成を示す説明図である。
【図23】本発明に係る異方導電性コネクターにおける複合導電性シートの他の例を示す平面図である。
【図24】本発明に係る異方導電性コネクターにおける複合導電性シートの更に他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1a 上部側アダプター装置
1b 下部側アダプター装置
2 ホルダー
3 位置決めピン
5 回路装置
6,7 被検査電極
10 異方導電性コネクター
11 複合導電性シート
12 絶縁性シート
13 開口
14 絶縁膜
14A 絶縁膜用材料層
14B 塗布膜
15 剛性導体
15a 一端部
15b 他端部
15c 中央部
15H 貫通孔
16 第1の異方導電性エラストマーシート
16A 導電性エラストマー用材料層
16B 導電性エラストマー用材料
17 第2の異方導電性エラストマーシート
18 金属薄層
20 アダプター本体
21,21b,21c 接続用電極
21a 接続用電極対
22 端子電極
23 内部配線部
25 接続用電極領域
30 一面側成形部材
31 他面側成形部材
32 スペーサー
32K 開口
33 加圧ロール
34 支持ロール
35 加圧ロール装置
36 支持板
37,38 レジスト膜
37H,38H パターン孔
50a 上部側検査ヘッド
50b 下部側検査ヘッド
51a,51b 検査電極装置
52a,52b 検査電極
53a,53b 電線
54a,54b 支柱
55a,55b 異方導電性シート
56a 上部側支持板
56b 下部側支持板
57a,57b コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口を有する樹脂よりなる絶縁性シート、この絶縁性シートの各開口を塞ぐよう配置され、当該絶縁性シートに支持された弾性高分子物質よりなる絶縁膜、および、この絶縁膜に固定支持され、前記絶縁性シートの開口内に位置するよう配置された、当該絶縁膜の厚み方向に伸びる複数の剛性導体により構成された複合導電性シートと、
この複合導電性シートの一面に配置された、第1の異方導電性エラストマーシートと、 前記複合導電性シートの他面に配置された、第2の異方導電性エラストマーシートと
を具えてなり、
前記複合導電性シートにおける剛性導体の各々は、前記絶縁膜の弾性によって、前記絶縁性シートに対してその厚み方向に変位可能とされていることを特徴とする異方導電性コネクター。
【請求項2】
第1の異方導電性エラストマーシートおよび第2の異方導電性エラストマーシートの各々は、弾性高分子物質中に、磁性を示す導電性粒子が、厚み方向に並ぶよう配向して連鎖が形成された状態で、かつ、当該導電性粒子による連鎖が面方向に分散した状態で含有されてなることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性コネクター。
【請求項3】
第1の異方導電性エラストマーシートおよび第2の異方導電性エラストマーシートの各々の厚みが20〜100μmであることを特徴とする請求項2に記載の異方導電性コネクター。
【請求項4】
導電性粒子の数平均粒子径が3〜20μmであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の異方導電性コネクター。
【請求項5】
表面に検査すべき回路装置における被検査電極に対応するパターンに従って複数の接続用電極が形成された接続用電極領域を有するアダプター本体と、
このアダプター本体の接続用電極領域上に配置された、当該アダプター本体における接続用電極に対応するパターンに従って配置された複数の剛性導体を有する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の異方導電性コネクターと
を具えてなることを特徴とするアダプター装置。
【請求項6】
表面に検査すべき回路装置における被検査電極に対応するパターンに従ってそれぞれ電流供給用および電圧測定用の2つの接続用電極からなる複数の接続用電極対が形成された接続用電極領域を有するアダプター本体と、
このアダプター本体の接続用電極領域上に配置された、当該アダプター本体における接続用電極に対応するパターンに従って配置された複数の剛性導体を有する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の異方導電性コネクターと
を具えてなることを特徴とするアダプター装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のアダプター装置を具えてなることを特徴とする回路装置の電気的検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−66082(P2006−66082A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243800(P2004−243800)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】