説明

異方導電性シート、回路基板の電気的検査方法および回路基板の電気的検査装置

【課題】除電層を設けなくても帯電が抑制できかつ導電部間にリーク電流が流れるのを確実に抑制すること。
提供すること。
【解決手段】ゴム材料中に、シートの厚み方向に伸びると共に、シートの少なくとも片面に対して突出する複数の導電部40Aを形成するように偏在分散する導電性粒子34を含む異方導電性シート体30Aと、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内で、導電部40Aに対応した開口部22を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材20とを有し、導電部40Aが、開口部22内に配置されるように、異方導電性シート体30Aと基材20とが接合され、基材20の表面26と導電部40Aの端部の表面44とが面一を成す異方導電性シートならびにこれを用いた回路基板の電気的検査方法および電気的検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性シート、回路基板の電気的検査方法および回路基板の電気的検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板などの電気的性能を検査するために、各種の異方導電性シートが提案されている。たとえば、絶縁シート体の表面と、異方導電性シート体の一部を構成し、絶縁シート体の開口部に突出した導電部の端部の表面とが、ほぼ同一レベルになる形状とした異方導電性シートが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、異方導電性シートは、一部分を除いては、基本的に絶縁性材料から構成されるため、静電気により帯電が生じる可能性がある。この場合、(1)異方導電性シートに検査対象となる回路基板が張り付いたり、(2)放電により検査装置、異方導電性シート、もしくは、回路基板に故障が生たり、あるいは、(3)上記(1)および(2)に示す問題を回避すべく、測定に際して除電処理を行う必要があり、測定効率が低下するなどの問題が生じることが知られている(特許文献2等参照)。このような問題を解決するために、異方導電性シートに対して、塗布成膜、メッキ成膜などの各種の液相成膜法やシートの貼り付けなどにより除電層を設けた異方導電性シートや(特許文献2、3参照)、面方向に半導電性を有し、体積抵抗が10−7〜10Ω・m、表面抵抗が10−1〜1010Ω/□である半導電部を備えた異方導電性シートが提案されている(特許文献4参照)。この半導電部を備えた異方導電性シートにおいて、半導電部は、異方導電性シートの表面に設けられるものではなく、シート本体の一部を構成するように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3456235号公報(請求項1等)
【特許文献2】特開2001−93338号公報(請求項1、段落番号0005、0011、0013、図2等)
【特許文献3】特開2002−208447号公報(請求項1、段落番号0011〜0015、図29等)
【特許文献4】特開2001−84842号公報(請求項1、14〜17、段落番号0033、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された異方導電性シートにおいては、隣り合う2つの導電部間にリーク電流が流れることで測定に悪影響が生じるのを防ぐ必要がある。このため、隣り合う2つの導電部間に位置する部材は絶縁性材料から構成されている。すなわち、導電部を除けば、異方導電性シートは絶縁性材料から構成される。それゆえ、異方導電性シートを用いた測定に際しては、静電気に起因して帯電した電荷が、検査対象となる回路基板の静電破壊を引き起こしてしまう可能性があった。これに対応するには、帯電しにくい構造を採用することが必要である。
【0006】
また、特許文献2,3に開示された異方導電性シートにおいては、シート本体に対して新たに除電層を設ける必要がある。このため、異方導電性シートの製造に際しては、除電層を形成する工程を新たに設ける必要があり、生産性の低下を招いていた。さらに、特許文献4に開示された異方導電性シートにおいては、半導電部の体積抵抗が、一般的に絶縁体と半導体との境界とされる1012Ω・mを大幅に下回っているため、導電部間にリーク電流が流れて、測定精度の低下を招く可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、除電層を設けなくても帯電が抑制でき、かつ、導電部間にリーク電流が流れるのを確実に抑制できる異方導電性シート、ならびに、これを用いた回路基板の電気的検査方法および回路基板の電気的検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
第一の本発明の異方導電性シートは、シート状のゴム材料、および、該ゴム材料中に、当該シートの厚み方向に伸びると共に、シートの少なくとも片面に対して突出する複数の導電部を形成するように偏在して分散する導電性粒子、を含む異方導電性シート体と、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、複数の導電部に対応した複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、を少なくとも有し、導電部が、開口部内に配置されるように、異方導電性シート体と基材とが接合され、基材の厚み方向おいて、基材の異方導電性シート体が接合された側の面と反対側の面と、導電部の端部の表面とが、面一を成すことを特徴とする。
【0009】
第二の本発明の異方導電性シートは、シート状のゴム材料、および、該ゴム材料中に、当該シートの厚み方向に伸びると共に、シートの少なくとも片面に対して突出する複数の導電部を形成するように偏在して分散する導電性粒子、を含む異方導電性シート体と、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、導電部に対応した開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、を少なくとも有し、導電部が、開口部内に配置されるように、異方導電性シート体と基材とが接合され、基材の厚み方向おいて、基材の異方導電性シート体が接合された側の面と反対側の面に対して、導電部の端部の表面が0μmを超え100μm以下の範囲で突出していることを特徴とする。
【0010】
第三の本発明の異方導電性シートは、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010の範囲内であり、複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、基材の開口部を塞ぐように充填されると共に、少なくとも基材の複数の開口部近傍の両面を連続的に覆うように設けられたシート状のゴム材料と、開口部内において基材の厚み方向に伸びる導電部を形成するように、開口部を塞ぐように設けられたゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子と、を少なくとも有し、さらに、基材の複数の開口部近傍の少なくとも片面側を連続的に覆うゴム材料から実質的に構成されるゴム層が、基材の端部側の表面まで連続して設けられていることを特徴とする。
【0011】
第四の本発明の異方導電性シートは、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、基材の開口部を塞ぐように充填されると共に、少なくとも基材の複数の開口部近傍の両面を連続的に覆うように設けられたシート状のゴム材料と、開口部内において基材の厚み方向に伸びる導電部を形成するように、開口部を塞ぐように設けられたゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子と、基材の少なくとも片面側の端部に設けられた凸部と、を少なくとも有し、基材の厚み方向において、基材の片面に対する、導電部の端部の表面の突出高さと、凸部の突出高さとが略同一であることを特徴とする。
【0012】
第四の本発明の異方導電性シートの一実施態様は、凸部が、基材と一体を成す部材であることが好ましい。
【0013】
第四の本発明の異方導電性シートの一実施態様は、凸部が、基材とは別体を成す非弾性材料から構成される部材であることが好ましい。
【0014】
本発明の回路基板の電気的検査方法は、複数の被検査電極を備えた回路基板に対して、少なくとも、複数の被検査電極と、第一〜第四の本発明の異方導電性シートから選択されるいずれか1つの異方導電性シートの複数の導電部とを各々対応させて電気的に接続した状態で、回路基板の電気的検査を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の回路基板の電気的検査装置は、異方導電性シートと、検査装置本体とを少なくとも備え、電気的検査に際して、検査装置本体と、複数の被検査電極を備えた回路基板との間に上記異方導電性シートを配置すると共に、検査装置本体と異方導電性シートとの間、および、異方導電性シートと回路基板との間、を電気的に接続した状態で、回路基板の電気的検査を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上に説明したように本発明によれば、除電層を設けなくても帯電が抑制でき、かつ、導電部間にリーク電流が流れるのを確実に抑制できる異方導電性シート、ならびに、これを用いた回路基板の電気的検査方法および回路基板の電気的検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成例を示す模式断面図である。
【図2】第一の本実施形態の異方導電性シートの全体像の一例を示す模式図である。ここで、図中の上段が断面図を示し、下段が斜視図を示したものである。
【図3】第二の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成例を示す模式断面図である。
【図4】第三の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成例を示す模式断面図である。
【図5】第四の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成の一例を示す模式断面図である。
【図6】第四の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成の他の例を示す模式断面図である。
【図7】第一の本実施形態の異方導電性シートの製造方法の一例について説明する説明図である。
【図8】第一の本実施形態の異方導電性シートの製造方法の一例について説明する説明図である。
【図9】第一の本実施形態の異方導電性シートの製造方法の一例について説明する説明図である。
【図10】第一の本実施形態の異方導電性シートの製造方法の一例について説明する説明図である。
【図11】第三および第四の本実施形態の異方導電性シートの製造方法の一例について説明する説明図である。
【図12】第一〜第四の本実施形態の異方導電性シートを用いた回路基板の電気的検査方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一の実施形態の異方導電性シート>
第一の本実施形態の異方導電性シートは、シート状のゴム材料、および、該ゴム材料中に、当該シートの厚み方向に伸びると共に、シートの少なくとも片面に対して突出する複数の導電部を形成するように偏在して分散する導電性粒子、を含む異方導電性シート体と、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、複数の導電部に対応した複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、を少なくとも有し、導電部が、開口部内に配置されるように、異方導電性シート体の片面側に基材が接合され、基材の厚み方向おいて、基材の異方導電性シート体が接合された側の面(以下、「裏面」と称す場合がある)と反対側の面(以下、「表面」と称す場合がある)と、導電部の端部の表面とが、面一を成すことを特徴とする。
【0019】
第一の本実施形態の異方導電性シートでは、基材表面の表面抵抗が10〜10Ωの範囲内であり、通常の樹脂材料のみから構成される基材の表面抵抗(通常、1011Ω以上)と比べると、表面抵抗が低い。このため、基材の表面に除電層を設けなくても帯電が抑制できる。それゆえ、帯電に起因する(1)回路基板の貼りつきや、(2)検査装置、異方導電シートもしくは回路基板の故障を抑制できる。これに加えて、これら(1)および(2)に示す問題を回避するための除電処理も不要となる。さらに、基材の表面に除電層を設ける必要がないため、異方導電性シートの生産性の低下も抑制できる。
【0020】
また、第一の本実施形態の異方導電性シートでは、基材の体積抵抗が1.0×10Ω・mを超えているため、特許文献4に示される異方導電性シートを構成する半導電部よりも高い抵抗値を有し、基材部分の絶縁性が非常に優れている。そして、導電性粒子は異方導電性シート体の導電部に偏在しており、それ以外の部分には実質的に存在しないため、この部分の絶縁性も確保されている。そして、導電部は、異方導電性シート体の導電部以外の部分と、基材とにより囲まれている。このため、第一の本実施形態の異方導電性シートは、特許文献4に記載の異方導電性シートと比べて、導電部間でリーク電流が流れるのを確実に抑制できる。
【0021】
また、第一の本実施形態の異方導電性シートでは、導電部の端部の表面と、基材の表面とが面一を成す。このため、検査対象となる回路基板の電極に対応して開口部が設けられていれば、特許文献1に記載された異方導電性シートと同様に、電気的接続を確実なものとすることができる。すなわち、接続信頼性が高く、所要の位置精度を確保しながら回路基板の電気的検査を行うことができる。
【0022】
図1は、第一の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成例を示す模式断面図である。図1に示す異方導電性シート10A(10)は、基材20と、異方導電性シート体30A(30)とを有する。ここで基板20には、複数の開口部22が設けられている。但し、図1中では、1つの開口部22およびその近傍の構造のみを示している。一方、異方導電性シート体30Aはその片面32が、基材20の裏面24に接合されると共に、一部分が開口部22中に突出している。この異方導電性シート体30Aは、ゴム材料と、当該ゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子34とを含み、ゴム材料中に導電性粒子34が偏在して分散している領域が導電部40A(40)を形成している。なお、導電性粒子34が偏在して存在しない領域は絶縁部42B(42)を形成している。なお、図1中、異方導電性シート体30Aの厚み方向に伸びる2本の点線Lは、ゴム材料からなるマトリックス中において導電性粒子34の存在濃度が急激に変化する境界線を意味し、2本の点線Lで囲まれた領域が導電部40Aであり、この導電部40Aの両側が絶縁部42である。この導電部40Aは、異方導電性シート体30Aの厚み方向に伸びると共に、異方導電性シート体30Aの片面32に対して突出し、かつ、導電部40Aの異方導電性シート体30の片面32に対して突出している部分が 開口部22内に配置されている。そして、基材20の表面26と導電部40Aの端部の表面44とは面一を成す。なお、図1に示す例では、導電部40Aは開口部22内に位置するものの、開口部22の内壁面とは接触していないが、導電部40Aは開口部22の内壁面と接触していてもよい。
【0023】
図2は、第一の本実施形態の異方導電性シートの全体像の一例を示す模式図であり、図2中の上段が断面図を示し、下段が斜視図を示したものである。なお、図2中、図1に示すものと同様のものには同じ符号が付してある。また、スケールを変えて説明する都合上、図2は、図1に対して記載を簡略化してある。
【0024】
図2の上段に示す例では、異方導電性シート体30Aは、基材20の開口部22が設けられた近傍の裏面24側部分のみを連続的に覆うように基材20の裏面24側に配置される。また、異方導電性シート体30Aの基材20が配置された側と反対側の面36は、図2に示すように絶縁部42に対して導電部40Aが凸部を成すように設けられてもよいが、絶縁部43と導電部40Aとが面一となるようにしてもよい。また、基材20の両端部分には、回路基板の電気的検査に際して異方導電性シート10Aの位置決めおよび固定を容易とするための開口部28を設けてもよい。図2の下段は、上段に示す異方導電性シート10Aを基材20の表面側から見た斜視図である。図2の下段に示す例では、3行×6列の格子状に配置された18個の導電部40Aが開口部22内に位置するように設けられており、2行目のラインの両側に、各々1つずつ開口部28が配置されている。ここで、図2の下段中の符号A1−A2間の切断面が図2の上段に示す断面図に対応する。
【0025】
<第二の実施形態の異方導電性シート>
第二の本実施形態の異方導電性シートは、基材の厚み方向おいて、基材の異方導電性シート体が接合された側の面(裏面)と反対側の面(表面)に対して、導電部の端部の表面が0μmを超え100μm以下の範囲で突出している点を除けば、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aと同様の構成を有するものである。
【0026】
そして、第二の本実施形態の異方導電性シートは、第一の本実施形態の異方導電性シートと同様に、基材表面の表面抵抗が10〜10Ωの範囲内である。このため、基材の表面に除電層を設けなくても帯電が抑制できる。また、第二の本実施形態の異方導電性シートでは、基材の体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、絶縁性が極めて高い。そして、導電性粒子は異方導電性シート体の導電部に偏在しており、それ以外の部分には実質的に存在しないため、この部分の絶縁性も確保されている。そして、導電部は、異方導電性シート体の導電部以外の部分と、基材とにより囲まれている。このため導電部間でリーク電流が流れるのを確実に抑制できる。
【0027】
また、第二の本実施形態の異方導電性シートでは、導電部の端部の表面が、基材の表面に対して0μmを超え100μm以下の範囲内で突出している。このため、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aと比べて、第二の本実施形態の異方導電性シートでは、検査ヘッド側の部材に対する導電部の接触をより安定化させることができる。なお、基材の表面に対する導電部の端部の表面の突出高さは、0μmを超え100μm以下であることが必要であるが、10μm以上90μm以下が好ましく、30μm以上70μm以下がより好ましい。突出高さを0μmを超えるものとすることにより、基材の表面に対向配置される部材(パフォーマンスボードまたはアダプターソケット等)に対する導電部の接触安定性をより向上させることができる。また、突出高さを100μm以下とすることにより、導電部の端部部分の屈曲変形による基材の表面に対向配置される部材に対する導電部の位置ズレなどを抑制すると共に、測定時に異方導電性シートに対して圧力が加わった際に、基材の表面に対向配置される部材と基材表面との適度な部分的接触が生じることで、異方導電性シートに帯電した電荷を基材の表面に対向配置される部材へと容易に逃がすことができる。このため、基材の表面に除電層を設けなくても帯電が抑制できる。
【0028】
図3は、第二の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成例を示す模式断面図である。なお、図3中、図1および図2に示すものと同一・類似の機能・構成を有するものについては同じ符号が付してある。図3に示す異方導電性シート体30B(30)では、基材20の厚み方向において、基材20の表面26に対して導電部40B(40)の端部の表面44が、高さHだけ突出している点が、図1に示す異方導電性シート体30Aと異なる。なお、この点を除けば、図1に示す異方導電性シート体30Aと、図3に示す異方導電性シート体30Bとは同様の構成を有する。なお、図3中に示す高さHは、0μmを超え100μm以下の範囲である。
【0029】
<第三の実施形態の異方導電性シート>
第三の本実施形態の異方導電性シートは、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が10〜10Ωの範囲内であり、複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、基材の開口部を塞ぐように充填されると共に、少なくとも基材の複数の開口部近傍の両面を連続的に覆うように設けられたシート状のゴム材料と、開口部内において基材の厚み方向に伸びる導電部を形成するように、開口部を塞ぐように設けられたゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子と、を少なくとも有し、さらに、基材の複数の開口部近傍の少なくとも片面側を連続的に覆うゴム材料から実質的に構成されるゴム層が、基材の端部側の表面まで連続して設けられていることを特徴とする。
【0030】
第三の本実施形態の異方導電性シートでは、基材表面の表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、通常の樹脂材料のみから構成される基材の表面抵抗(通常、1.0×1011Ω以上)と比べると、表面抵抗が低い。このため、回路基板の測定に際して、静電気により異方導電性シートが帯電しても、基材表面を伝って基材の平面方向に帯電した電荷が容易に移動できる。ここで、異方導電性シートを構成する基材20には、通常、図2に示したように、位置決めおよび固定を容易とするための開口部28が設けられ、測定に際しては、開口部28内に位置するピンと基材20とが接触する。このような場合、帯電により生じた電荷は、基材の表面を伝ってピンへと容易に移動できる。なお、このような例に限らず、測定に際して、ゴム材料で覆われていない基材の表面部分は、ガイドソケットなどの測定用治具と接触する。このため、帯電により生じた電荷を、基材の表面を伝って異方導電性シートの外部へと容易に逃がすことができる。このため、基材の表面に除電層を設けなくても帯電が抑制できる。
【0031】
また、第三の本実施形態の異方導電性シートでは、基材の両面がシート状(または層状)を成すゴム材料で覆われている。すなわち、第三の本実施形態の異方導電性シートは、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aや第二の本実施形態の異方導電性シート10Bと比べて、異方導電性シートの厚み方向に対する層構造の対称性がより高くなる。このため、第三の本実施形態の異方導電性シートは、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aや第二の本実施形態の異方導電性シート10Bと比べて、反りが生じにくい。このため、異方導電性シートの平面方向における電気的接続のばらつきが生じにくくなる。
【0032】
さらに、第三の本実施形態の異方導電性シートでは、基材の複数の開口部近傍の少なくとも片面側を連続的に覆うゴム層が、基材の端部側の表面まで連続して設けられている。このため、このゴム層が設けられた面を下面として異方導電性シートを配置した状態で測定を行えば、測定に際して、異方導電性シートの位置ずれ防止や固定を目的として、異方導電性シートの上面外周端に樹脂や金属等からなる重量のあるブロック状の固定部材等が配置されても、異方導電性シートが上面側に凸を成すように反るのを防ぐことができる。
【0033】
図4は第三の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成例を示す模式断面図である。なお、図4中、図1〜図3に示すものと同一・類似の機能・構成を有するものについては同じ符号が付してある。
【0034】
図4に示す異方導電性シート10C(10)は、基材20と、基材20の開口部22を塞ぐように充填されると共に、少なくとも基材20の複数の開口部22近傍の両面24、26を連続的に覆うように設けられたシート状のゴム材料(ゴムマトリックス50)と、開口部22内において厚み方向に伸びる導電部40C(40)を形成するように、開口部22を塞ぐように設けられたゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子34と、を有している。なお、ゴムマトリックス50中において、導電性粒子が偏在して存在していない領域は絶縁部42(42T、42B)を形成している。ここで、この絶縁部42は、基材20の裏面24側に位置する絶縁部42Bと、基材20の表面24側に位置する絶縁部42Tとから構成される。そして、基材20の複数の開口部22近傍の少なくとも片面側(表面26側)を連続的に覆うゴム材料から実質的に構成されるゴム層42T(絶縁部42T)が、基材20の端部20E側の表面26Eまで連続して設けられている。
【0035】
ゴム層42Tの厚さは特に限定されるものではないが、20μm〜100μmの範囲内が好ましく、40μm〜60μmの範囲内が好ましい。ゴム層42Tの厚さを20μm以上とすることにより、異方導電性シート10Cの反りをより一層抑制できる。また、ゴム層42Tの厚みを100μm以下とすることにより、測定に際して、異方導電性シート10Cの基材20の端部20Eの裏面24E上に重量のあるブロック状の固定部材等が配置されても、異方導電性シート10Cの端部に位置するゴム層42Eが、大きく弾性変形して膜厚が薄くなりにくい。すなわち、ゴム層42Eが薄肉化する変形により、基材20の端部20Eが、基材20の表面26側に沈み込むように変形して、異方導電性シート10Cが、基材20の裏面26側に凸を成すように反るのをより確実に防ぐことができる。
【0036】
なお、図4に示す例では、導電部40Cの端部の表面44と、ゴム層42Tの表面46とは面一となるように形成されている。しかしながら、基材20の厚み方向に対して、ゴム層42Tの表面46に対して、導電部40Cの端部の表面44を0μmを超え100μm以下の範囲で突出させてもよい。この場合、第二の本実施形態の異方導電性シート10Bと同様に、ゴム層42Tの表面46に対向配置される部材(パフォーマンスボードまたはアダプターソケット等)に対する導電部40Cの接触をより安定化させることができる。また、この場合は、異方導電性シート10Cの端部に位置するゴム層42Eの表面46も、異方導電性シート10Cの端部以外に位置するゴム層42の表面46に対して、導電部40Cの表面44と略同じ高さだけ突出させることが好ましい。この場合、基材20の厚み方向において、導電部40Cの表面44と、異方導電性シート10Cの端部に位置するゴム層42Eの表面46Eとで、殆ど高低差が生じない。このため、測定に際して、異方導電性シート10Cの基材20の端部20Eの裏面24E上にガイドソケットなどの重量のあるブロック状部材が配置されても、異方導電性シート10Cの端部が、導電部40Cの表面44とゴム層42Eの表面46Eとの高低差がないため、基材20の表面26側に沈み込むように変形し難しい。それゆえ、異方導電性シート10Cが、基材20の裏面26側に凸を成すように反るのをより確実に防ぐことができる。
【0037】
<第四の実施形態の異方導電性シート>
第四の本実施形態の異方導電性シートは、第三の本実施形態の異方導電性シート10Cにおいて、基材20の複数の開口部22近傍の少なくとも片面(表面26)側を連続的に覆うゴム材料から実質的に構成されるゴム層42Tが、基材20の端部20E側の表面26Eまで連続して設けられている代わりに、基材20の片面側の端部(表面26E)に、凸部が設けられている点に特徴を有するものである。ここで、基材20の厚み方向において、基材20の片面(表面26)に対する、導電部40Cの端部の表面44の突出高さと、凸部の突出高さとは略同一とされる。なお、以上の点を除けば、第四の本実施形態の異方導電性シートのその他の基本的な構成は、第三の本実施形態の異方導電性シート10Cと同様である。
【0038】
このため、第四の本実施形態の異方導電性シートは、基本的に第三の本実施形態の異方導電性シート10Cとほぼ同様の効果を得ることができる。ここで、基材20の端部20E側の少なくとも片面に設けられる凸部は、第三の本実施形態の異方導電性シート10Cにおけるゴム層42Tと、ほぼ同様の作用効果を有するものである。この凸部は、基材20と一体を成す部材、または、基材20とは別体を成す非弾性材料から構成される部材であることが好ましい。
【0039】
図5は、第四の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成の一例を示す模式断面図であり、具体的には、凸部が基材20と一体を成す部材である場合について説明する図である。また、図6は、第四の本実施形態の異方導電性シートの主要部の構成の他の例を示す模式断面図であり、具体的には、凸部が基材20とは別体を成す非弾性材料から構成される部材である場合について説明する図である。なお、図5および図6中、図1〜図4に示すものと同一・類似の機能・構成を有するものについては同じ符号が付してある。図5に示す異方導電性シート10D(10)では、基材20の端部20Eの表面26側に、基材20と一体を成す部材からなる凸部20Pが設けられている。また、図6に示す異方導電性シート10E(10)では、基材20の端部20Eの表面26側に、基材20とは別体を成す非弾性材料から構成される部材からなる凸部60Pが設けられている。なお、基材20の端部20E側の構造が異なる点を除けば、異方導電性シート10Dおよび異方導電性シート10Eの構造は、図4に示す異方導電性シート10Cと同様である。
【0040】
基材20と一体を成す部材からなる凸部20Pは、基材20と同様に、非弾性材料であるガラス布を含むので、基材20を構成する有機材料がゴム材料であれば、ゴム層42Eと比べてより弾性変形しにくく、基材20を構成する有機材料が、硬質プラスチック等の樹脂材料であれば、弾性変形が生じない。また、凸部60Pは非弾性材料から構成される部材であるため、弾性変形が生じない。このため、測定に際して、異方導電性シート10D、10Eの基材20の端部20Eの裏面24E上にガイドソケットなどの重量のあるブロック状部材等が配置されても、異方導電性シート10D、10Eの端部に位置する凸部20P、60Pは、殆ど変形しないか、あるいは、全く変形しない。このため、基材20の端部20Eが、基材20の表面26側に沈み込むように変形して、図4に示す異方導電性シート10Cと比べて、図5および図6に示す異方導電性シート10D、10Eでは、基材20の裏面26側に凸を成すように反るのをより一層確実に防ぐことができる。
【0041】
ここで、凸部60Pを構成する非弾性材料としては、エポキシ樹脂などの公知の硬質プラスチック、セラミックスやガラスなどの絶縁性無機材料、金属などを用いることができる。また、図5および図6に示す例では、基材20の表面26に対する導電部40Cの端部の表面44の突出高さ(以下、「導電部突出高さ」と称す場合がある)と、基材20の表面26に対する凸部20P、60Pの突出高さ(以下、「凸部突出高さ」と称す場合がある)と、ゴム層42Tの厚みとは、同一である。しかしながら、ゴム層42Tの厚みに対して、導電部突出高さ、および、凸部突出高さを、ゴム層42Tの厚みを超え、ゴム層42Tの厚み+100μm以下の範囲内としてもよい。この場合、図3に示した第二の本実施形態の異方導電性シート10Bと同様に、ゴム層42Tの表面46に対向配置される部材に対する導電部40Cの接触をより安定化させることができる。
【0042】
<導電部および絶縁部>
次に、第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10(10A、10B、10C、10D、10E)の各部の構成の詳細について説明する。まず、導電部40(40A、40B、40C)および絶縁部42(絶縁部42T(またはゴム層42T)、絶縁部42B)を構成するマトリックス材料であるゴム材料としては、公知のゴム材料が利用でき、たとえば、シリコーンゴム、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどを挙げることができる。なお、これらの中でもゴム材料としてはシリコーンゴムが好ましい。
【0043】
導電部40に偏在して分散する導電性粒子34としては、少なくともその表面が導電性材料から構成されると共に、粒子全体としては磁性を有するものであれば特に限定されないが、通常は、芯材粒子と、この芯材粒子を被覆する被覆層とを有するものであることが好ましい。ここで、芯材粒子としては、磁性を示す材料を含む磁性粒子、あるいは、非磁性材料のみからなる非磁性粒子を用いることができる。ここで、磁性粒子としては、たとえば、ニッケル、鉄、コバルト等の金属やこれらの合金からなる粒子が利用でき、非磁性粒子としては、非磁性金属粒子、ガラスビーズ、樹脂粒子などが利用できる。一方、被覆層としては、芯材粒子として磁性粒子を用いる場合には、たとえば、金、銀、パラジウム、ロジウムなどの導電性材料が用いられ、芯材粒子として非磁性粒子を用いる場合には、たとえば、ニッケル、コバルトなどの導電性磁性材料を用いられる。ここで、被覆層は、メッキ法などの公知のコーティング方法により芯材粒子表面に形成することができる。なお、コスト、導電性能および耐腐食性をバランス良く両立させることができる観点からは、芯材粒子としてニッケル粒子を用い、被覆層としては銀を用いることが好ましい。
【0044】
導電性粒子34の平均粒径としては、特に限定されないが、導電部40における導電性粒子34間の電気的接触を確保する等の実用上の観点から、10μm〜100μmの範囲内が好ましく、20μm〜80μmの範囲内がより好ましい。
【0045】
また、導電部40中に占める導電性粒子34の体積割合は、導電部40がその厚み方向に対して加圧された際に抵抗値が減少する導電特性(加圧導電性)が発揮できるのであれば特に限定されないが、3体積%以上30体積%以下が好ましく、5体積%以上20体積%以下がより好ましい。体積割合を上記範囲内とすることにより、回路基板の電気的検査に適した加圧力範囲内で加圧導電性が発現できる。なお、導電性粒子34は、絶縁部42中に存在していてもよいが、その体積割合は、互いに隣接する導電部40間にリーク電流が流れるのを抑制するために加圧導電性が発現されない範囲内でのみ許容される。このため、絶縁部42を介して互いに隣接する導電部40間にリーク電流が流れることは無い。なお、絶縁部42には、導電性粒子34は、実質的には存在しないことが特に好ましい。
【0046】
導電部40の総厚み(たとえば、図2上段に示される符号Dに相当する長さ)としては、回路基板の電気的検査に適した加圧力範囲内において、電気的検査に適した導電性が得られるようにする観点から、0.1mm〜5mmの範囲内が好ましく、0.3mm〜3mmの範囲内がより好ましい。
【0047】
<基材>
第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10に用いられる基材20は、体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10Ω〜1.0×1010Ωの範囲内であり、複数の導電部40に対応した複数の開口部22を有するシート状の部材である。ここで、表面抵抗は、JIS K 6911に準拠して測定された値を意味する。また、体積抵抗は、JIS K 6911に準拠して測定された値(二重リング法により測定された値)を意味する。基材20の表面抵抗は1.0×10Ω〜1.0×1010Ωの範囲内であることが必要であるが、1.0×10Ω〜1.0×10Ωの範囲内が好ましく、1.0×10Ω〜1.0×10Ωの範囲内がより好ましい。表面抵抗を上記範囲内とすることにより、回路基板の電気低測定に悪影響を与えるリーク電流が流れるのを抑制すると共に、回路基板の電気的測定に際して、静電気が生じても、異方導電性シートの帯電が抑制できる。また、基材20の体積抵抗は1.0×10Ω・mを超えることが必要であるが、材料の入手容易性等の観点から、実用上は2.0×10Ω・m〜1010Ω・mの範囲内が好ましい。体積抵抗を上記範囲内とすることにより、基材20を介して導電部40間にリーク電流が流れるのを確実に抑制することができる。
【0048】
また、基材20を構成する主材料としては、有機材料およびガラス布が用いられる。有機材料としては、具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および、ゴム材料、から選択される少なくとも1種が利用できる。これら有機材料としては公知のものが利用できる。ここで、熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂などが利用でき、熱硬化性樹脂としては、たとえば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが利用でき、ゴム材料としては、たとえば、導電部40および絶縁部42を構成するマトリックス材料として例示したものと同様のゴム材料が利用できる。なお、本願明細書において、「ガラス布」とは、正確には、ガラス布(glass fabric)、ガラス不織布(Unwoven glass fabric)、または、これらの混合物、を意味する。
【0049】
ここで、上述したような体積抵抗および表面抵抗を有し、有機材料およびガラス布から構成される基材としては、たとえば、ニッカン工業株式会社製のL−6706が挙げられる。ここで、L−6706のJIS K 6911に準拠して測定された表面抵抗は10Ω〜10Ωの範囲内である(ニッカン工業株式会社が提供するL−6706の製品カタログ値)。また、ハイレスタ UP MCP−HT450(三菱化学株式会社製、プローブとしてURSプローブを使用)を用いてJIS K 6911に準拠して測定されたL−6706の体積抵抗は2.17×10〜4.87×10Ω・mである。
【0050】
なお、参考までに述べれば、本発明者らは、本発明を検討するにあたって、様々な種類のシートの体積抵抗および表面抵抗について調査・検討をおこなった。その結果、典型的な有機絶縁性材料である、エポキシ樹脂のみまたはシリコーン樹脂のみからなる樹脂シートの表面抵抗は、1.0×1011Ω以上であり、体積抵抗は1.0×1014Ω・mであった。また、L−6706やこれに関連するシリーズ以外の有機材料とガラス布とを含むその他の市販のシートの体積抵抗および表面抵抗についても、上記樹脂シートとほぼ同様と推測される。一方、特許文献4に示される半導電部は高分子物質よりなる基材中に半導電性付与物質が含有されたものや、半導電性を示す高分子物質により構成されている。そして、その体積抵抗は10−7Ω・m〜10Ωmであり、表面抵抗は10−1〜1010Ωである。しかしながら、第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10に用いられる基材20は、表面抵抗と体積抵抗との組み合わせにおいて、上述した樹脂シートや、市販の有機材料とガラス布とを含むシート、あるいは、特許文献4に示す半導電部とは異なる組み合わせのものが用いられる。
【0051】
基材20の厚みとしては特に限定されるものではないが、0.01mm〜0.8mmの範囲内が好ましく、0.02〜0.2mmの範囲内がより好ましい。基材20の厚みを0.01mm以上とすることにより、第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10の製造時における成形の際に生じる成形歪に基づく導電部40の位置ずれを、回路基板の電気的検査に十分に耐える範囲内に収めることができる。また、基材20の厚みを0.8mm以下とすることにより、小さな圧力でも有効な導電性が得られる。なお、図5に示す例における基材20の厚みとは、凸部20Pが設けられた部分以外の厚みを意味する。
【0052】
<異方導電性シートの製造方法>
次に、図1〜図6に示す第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10の製造方法について説明する。第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10の製造は、たとえば、特許文献1に開示された製造技術をそのまま利用、または、適宜変形して利用することができる。
【0053】
以下に、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aの製造方法の一例について説明する。なお、図7〜図10は、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aの製造方法の一例について説明する説明図であり、図7〜図10中、図1〜図6と同様のものについては同じ符号が付してある。
【0054】
まず、市販の有機材料とガラス布とを含むシートを用いて、レーザ加工などにより複数の開口部22を形成する。また、必要に応じて開口部28を形成してもよい。これにより、基材20を得る。次に、図7に示すように、基材20の開口部22近傍の表面26を、表面が平滑で厚みが均一な粘着シート100Aで覆う。さらに、図8に示すようにこのような粘着シート100A付きの基材20を2枚用いて、基材20の粘着シートで覆われていない面同士を、各々の基材20の開口部22同士が向き合うように位置合わせを行う。そして、これら2枚の基材20の間に、ゴム原料および導電性粒子34(図8中、不図示)を含む原料混合物102を層状に配置する。これにより、次工程で実施する加圧処理および磁界印加処理用の仕掛品110を得ることができる。
【0055】
次に、図9に示すように、仕掛品110を、上型120と下型122との間に配置して、基材20の厚み方向に対して加圧することで、原料混合物102を基材20の平面方向に引き伸ばす。また、加圧と略同時に、磁力線の向きが基材20の厚み方向と略平行な磁場(図9中、不図示)を印加する。なお、上型120および下型122の押圧面側には、加圧に際して、開口部22に対応する部分が強磁性体部分M、それ以外の部分が非磁性体部分Nとから構成され、表面が平坦面である磁極板120Aおよび磁極板122Aがそれぞれ設けられる。
【0056】
そして、磁場の印加により、導電性粒子34(図9中、不図示)を基材20の厚み方向に配向させつつ原料混合物102を硬化させる。これにより、図10に示すような2枚の粘着シート100A付き基材20と、この粘着シート100A付き基材20の間に原料混合物102が硬化することで形成された硬化層102Hとからなる積層体130が得られる。その後、この積層体130を構成する一方の基材20と、他方の基材20に接着された粘着シート100Aとを除去することにより、異方導電性シート10Aを得ることができる。
【0057】
なお、第二の本実施形態の異方導電性シート10Bを製造する場合には、粘着シート100Aとして、開口部22に対応する部分に凹部が予め形成されたものを利用できる。また、この他にも、図7に示す粘着シート100A付き基材20を準備した後に、開口部22に露出している粘着シート100Aの表面を、ピンなどで押圧したり、あるいは、エッチング処理するなどして、凹部を形成してもよい。そして、この点以外は、第一の本実施形態の異方導電性シート10Aと同様にして製造することで、第二の本実施形態の異方導電性シート10Bを得ることができる。
【0058】
また、図4〜図6に示す第三および第四の本実施形態の異方導電性シート10C、10D、10Eを製造する場合、図9に示す加圧処理および磁場印加処理を行うためには、たとえば、以下に説明する仕掛品を利用できる。まず、図8に示す仕掛品110を準備し、2枚の基材20は、原料混合物102を接着剤として接合させておく。次に、片側の粘着シート100Aを剥離した後、基材20の粘着シート100Aが剥離された側の面に原料混合物102を薄く塗布する。その後、この薄く塗布された原料混合物102を覆うように離型性のシートを接合することで、厚み方向に対して、離型性のシート100B、原料混合物102からなる第一の層102A、基材20、原料混合物102からなる第二の層102B、基材20、および、粘着シート100Aの順に積層された仕掛品110Bを得る(図11)。なお、基材20として、凸部20P、60Pを有するものを用いる場合には、凸部20P、60P上に離型性のシート100Bを配置することで、凸部20P、60Pを第一の層102Aを形成する際のスペーサーとして機能させることもできる。そして、この仕掛品110Bを、上型120と下型122との間に配置して加圧処理および磁場印加処理を行う。
【0059】
ここで、離型性のシート110Bとしては、表面張力の低いテフロン(登録商標)等からなる樹脂シートや、表面をシランカップリング剤などでコーティング処理したシートなど、原料混合物102が硬化した硬化物108に対して離型性に優れるものが利用できる。なお、仕掛品110Bを構成する第一の層102Aは、ゴム層42T(絶縁部42T)となりえる部分であり、第二の層102Bは絶縁部42Bとなりえる部分である。
【0060】
そして、図9に示す仕掛品110Aの代わりに、図11に示す仕掛品110Bを用いて加圧処理および磁場印加処理を行うと共に、原料混合物102を硬化させる。なお、上型120または下型122の押圧面に離型性を付与した場合には、離型性のシート100Bを省いた仕掛品110Bを用いてもよい。その後、原料混合物102が硬化して得られた積層体から、離型性のシート100B、粘着シート100A、および、この粘着シート100Aと接触する基材20を取り除くことで、図4〜図6に示す第三または第四の本実施形態の異方導電性シート10C、10D、10Eを得ることができる。なお、異方導電性シート10C、異方導電性シート10D、または、異方導電性シート10Eのいずれの異方導電性シートを製造するかに応じて、端部20Eに凸部20P、60Pを有さない基材20、端部20Eに凸部20Pを有する基材20、および、端部20Eに凸部60Pを有する基材20から選択されるいずれかを適宜選択して利用する。
【0061】
<回路基板の電気的検査方法および電気的検査装置>
第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10を用いた回路基板の電気的検査は、複数の被検査電極を備えた回路基板に対して、少なくとも、複数の被検査電極と異方導電性シート10の複数の導電部40とを各々対応させて電気的に接続した状態で、実施される。ここで、回路基板の電気的検査装置は、第一〜第四の本実施形態の異方導電性シート10と、検査装置本体とを少なくとも備え、電気的検査に際して、検査装置本体と、複数の被検査電極を備えた回路基板との間に異方導電性シート10を配置すると共に、検査装置本体と異方導電性シート10との間、および、異方導電性シート10と回路基板との間、を電気的に接続した状態で、回路基板の電気的検査を行う
【0062】
図12は、第一〜第四の本実施形態の異方導電性シートを用いた回路基板の電気的検査方法の一例を示す模式図である。ここで、図12中、異方導電性シート10については、構造を簡略化して記載してある。図12に示すように、測定対象となるICパッケージ等の回路基板200の電気的検査に際しては、不図示のテスターに電気的に接続されたテストヘッド210と、このテストヘッド210上に配置されると共に、テストヘッド210と電気的にも接続されたパフォーマンスボード(測定基板)220と、パフォーマンスボード220上に配置されると共に、パフォーマンスボード220と電気的にも接続されたアダプターソケット230とを用いる。そして、測定に際しては、異方導電性シート10が、基材20の表面26側またはゴム層42Tの表面46側が下面となるようにして、アダプターソケット230上に配置される。なお、図12に示す例では、不図示のテスターと、テストヘッド210と、パフォーマンスボード220と、アダプターソケット230とが、検査装置本体を構成する。
【0063】
なお、アダプターソケット230の上面側には、異方導電性シート10の複数の導電部40に対応する位置に複数の上面側電極(図中、不図示)が設けられている。そして、これらの上面側電極と1対を成すように電気的に接続され、かつ、上面側電極とは平面方向における配置ピッチが異なる下面側電極(図中、不図示)が、アダプターソケット230の下面側にも配置されている。また、パフォーマンスボード220の上面側には、アダプターソケット230の下面側電極に対応する位置に複数の電極(図中、不図示)が設けられている。なお、パフォーマンスボード220の上面側に設けられた電極と、異方導電性シート10の導電部40との平面方向における配置ピッチが同じであれば、アダプターソケット230を用いずに、パフォーマンスボード220上に異方導電性シート10を配置してもよい。
【0064】
ここで、異方導電性シート10は、各々の導電部40(図12中では、黒色の縦線で示される部分)とアダプターソケット230の上面側電極とが電気的に接続されるように、アダプターソケット230上に設置される。そして、この異方導電性シート10の外周部の上面に、ガイドソケット240を配置する。このガイドソケット240は、中空部242を有している。そして、測定に際しては、ガイドソケット240の中空部内に、回路基板200を嵌め込むようにして、異方導電性シート10の上面に回路基板200を配置する。この際、異方導電性シート10の上面側に露出する個々の導電部40に対応するように、回路基板200の下面側の個々の電極(図中、不図示)が接触する。そして、この状態で、回路基板200を上方から押圧部材(図中、不図示)により押圧する。この際、導電部40も加圧され、導電部40にて加圧導電性が発現するため、回路基板200の電気的検査が行える。
【符号の説明】
【0065】
10、10A、10B、10C、10D、10E 異方導電性シート
20 基材
20P 凸部
20E 基材の端部
22 開口部
24、24E 裏面
26、26E 表面
28 開口部
30、30A、30B 異方導電性シート体
32 (異方導電性シート体の)片面
34 導電性粒子
36 異方導電性シート体の基材が配置された側と反対側の面
40、40A、40B、40C 導電部
42、42B 絶縁部
42T、42E 絶縁部(ゴム層)
44 (導電部の)表面
46、46E (ゴム層の)表面
50 ゴムマトリックス
60P 凸部
100A 粘着シート
100B 離型性のシート
102 原料混合物
102A 第一の層
102B 第二の層
102H 硬化層
110A、110B 仕掛品
120 上型
120A 磁極板
122 下型
122A 磁極板
200 回路基板
210 テストヘッド
220 パフォーマンスボード(測定基板)
230 アダプターソケット
240 ガイドソケット
242 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のゴム材料、および、該ゴム材料中に、当該シートの厚み方向に伸びると共に、上記シートの少なくとも片面に対して突出する複数の導電部を形成するように偏在して分散する導電性粒子、を含む異方導電性シート体と、
体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、上記複数の導電部に対応した複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、を少なくとも有し、
上記導電部が、上記開口部内に配置されるように、上記異方導電性シート体と上記基材とが接合され、
上記基材の厚み方向おいて、上記基材の上記異方導電性シート体が接合された側の面と反対側の面と、上記導電部の端部の表面とが、面一を成すことを特徴とする異方導電性シート。
【請求項2】
シート状のゴム材料、および、該ゴム材料中に、当該シートの厚み方向に伸びると共に、上記シートの少なくとも片面に対して突出する複数の導電部を形成するように偏在して分散する導電性粒子、を含む異方導電性シート体と、
体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、上記導電部に対応した開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、を少なくとも有し、
上記導電部が、上記開口部内に配置されるように、上記異方導電性シート体と上記基材とが接合され、
上記基材の厚み方向おいて、上記基材の上記異方導電性シート体が接合された側の面と反対側の面に対して、上記導電部の端部の表面が0μmを超え100μm以下の範囲で突出していることを特徴とする異方導電性シート。
【請求項3】
体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、
上記基材の上記開口部を塞ぐように充填されると共に、少なくとも上記基材の複数の開口部近傍の両面を連続的に覆うように設けられたシート状のゴム材料と、
上記開口部内において上記基材の厚み方向に伸びる導電部を形成するように、上記開口部を塞ぐように設けられた上記ゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子と、を少なくとも有し、
さらに、上記基材の複数の開口部近傍の少なくとも片面側を連続的に覆う上記ゴム材料から実質的に構成されるゴム層が、上記基材の端部側の表面まで連続して設けられていることを特徴とする異方導電性シート。
【請求項4】
体積抵抗が1.0×10Ω・mを超え、表面抵抗が1.0×10〜1.0×1010Ωの範囲内であり、複数の開口部を有し、有機材料およびガラス布を含むシート状の基材と、
上記基材の上記開口部を塞ぐように充填されると共に、少なくとも上記基材の複数の開口部近傍の両面を連続的に覆うように設けられたシート状のゴム材料と、
上記開口部内において上記基材の厚み方向に伸びる導電部を形成するように、上記開口部を塞ぐように設けられた上記ゴム材料中に偏在して分散する導電性粒子と、
上記基材の少なくとも片面側の端部に設けられた凸部と、を少なくとも有し、
上記基材の厚み方向において、上記基材の上記片面に対する、上記導電部の端部の表面の突出高さと、上記凸部の突出高さとが略同一であることを特徴とする異方導電性シート。
【請求項5】
請求項4に記載の異方導電性シートにおいて、
上記凸部が、上記基材と一体を成す部材であることを特徴とする異方導電性シート。
【請求項6】
請求項4に記載の異方導電性シートにおいて、
上記凸部が、上記基材とは別体を成す非弾性材料から構成される部材であることを特徴とする異方導電性シート。
【請求項7】
複数の被検査電極を備えた回路基板に対して、少なくとも、上記複数の被検査電極と請求項1〜6のいずれか1つに記載の異方導電性シートの前記複数の導電部とを各々対応させて電気的に接続した状態で、上記回路基板の電気的検査を行うことを特徴とする回路基板の電気的検査方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の異方導電性シートと、検査装置本体とを少なくとも備え、
電気的検査に際して、上記検査装置本体と、複数の被検査電極を備えた回路基板との間に上記異方導電性シートを配置すると共に、
上記検査装置本体と上記異方導電性シートとの間、および、上記異方導電性シートと上記回路基板との間、を電気的に接続した状態で、上記回路基板の電気的検査を行うことを特徴とする回路基板の電気的検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−228024(P2011−228024A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94383(P2010−94383)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】