説明

異方導電性シートの製造方法

【課題】 弾性体材料の弾性を利用して、電気回路基板の配線による厚み方向の段差や、電気回路部品の電極部分の厚み方向に於ける精度のばらつき等の要因による、厚み方向の段差を吸収しながら、位置精度による平面方向のズレを生じず、安定した電気的接触を得ることができる異方導電性シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、位置決め用の金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路部品、電気回路基板等において、電気特性の検査、並びに計測、または電気的な相互の接続のために用いられる異方導電性シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品の小型化、あるいは高密度配線化に伴い、電気回路部品、電気回路基板等の検査、計測あるいは相互間の電気的な接続は、微細な電極間ピッチを介して行われるようになり、困難になりつつある。
【0003】
このような状況の中において、電気回路部品、電気回路基板等の検査電極に対して、正確な位置に導電シートの電極を接触させ、電気的接触を得ることが難しくなってきている。
【0004】
以上のような背景から、電気回路部品、電気回路基板等の検査電極に対して、正確な位置に導電シートの電極を接触させ、微細な配線ピッチにおける導通性能に優れた導電性シートが必要であった。
【0005】
従来、電気回路部品、電気回路基板の検査、計測において、電気回路部品、電気回路基板等の検査電極に対して、正確な位置に導電シートの電極を接触させ、微細な配線ピッチにおける導通性能に優れた導電性シートを作成するために、樹脂製のフィルムを挟んで成形し、フィルム上の位置決め穴を使用して、被測定物を検査電極との平面方向における位置合わせを行ってきた。
【0006】
しかし、樹脂製フィルムを用いた導電性シートでは、フィルム穴加工を打ち抜き金型で行っているために、1対の金型から多数個成形品を取り出そうとした場合、フィルム上に同時に多数個の穴を打ち抜かなければならず、位置決め穴の位置精度が出しにくい。
【0007】
また、異方性導電シートを作成するために、磁場中で加熱硬化させて成形を行っているが、大量生産用に多面成形を行う場合、樹脂製フィルムのたわみ、寸法変化等の要因により成形品の位置出しにズレを生じ実用的ではなかった。
【0008】
一方、樹脂性フィルムを個片に分けて、金型にセットすることにより、金型上でのフィルムのズレが生じにくくすることも可能であるが、その場合、金型上に個片ごとの位置決め穴に対応した場所に位置決めピンを立てる必要があり、金型コストが上昇する。さらにフィルムを1枚づつ金型にセットしなければならず、工数もかかっていた。
【0009】
さらに、半導体等の初期不良を選別するバーンイン試験、ヒートサイクル試験などのテストソケット用の接点として、樹脂製フィルムを位置決めに用いた異方性導電シートを使用すると、樹脂フィルムの熱膨張により、接点の位置ずれが生じ、正確な測定が難しくなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、電気回路部品、電気回路基板の検査、計測、あるいは相互間の電気的接続において、微細ピッチの領域で、正確な位置に導電シートの電極を接触させ安定な電気導通性を持つ異方導電性シートを大量に提供することにある。
【0011】
また、使用温度範囲が広域にわたる半導体試験に於いても、正確に位置決めができる異方性導電シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の異方導電性シートの製造方法は、
絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、該導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、前記導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、
前記位置決め用の金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、
前記位置決め用の金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する工程が、
印刷マスクを金型上に置いて導電ペーストを印刷する工程と、
スペーサーを挟んで、位置決め用の金属板を金型で挟み込む工程と、
この状態で、ヒーター付着磁機の磁極間に挟んで、シートの厚み方向に磁場をかけながら加熱し、導電ペーストを硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、
絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、該導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、前記導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、
前記位置決め用の金属板と導電性シートを嵌合する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、
絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、該導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、前記導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、
前記位置決め用の金属板と導電性シートとを接合する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、前記位置決め用の金属板と導電性シートとを接合が、接着剤で接合することによって行われることを特徴とする。
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、
前記導電性シートが、
絶縁性の弾性高分子物質中に、導電性磁性体粒子を分散させて流動性の混合物よりなるエラストマー材料を調製する工程と、
前記エラストマー材料を金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型において、エラストマー材料の厚さ方向に部分的に強い平行磁場を作用させる工程と、
前記エラストマー材料の硬化処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、前記金型とエラストマー材料の間に間隙を設けて、突出した導電部を形成することを特徴とする。
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、前記位置決め用の金属板の線膨張係数が、1×10-5/K以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、前記位置決め用の金属板に、位置決め用の位置決め穴を形成することを特徴とする。
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、前記金属板が、エッチング可能な金属から構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、前記位置決め用の金属板の位置決め穴の形成が、フォトリソグラフィとエッチングによって形成することを特徴とする。
また、本発明の異方導電性シートの製造方法は、
分割部分にミシン目を入れた位置決め用金属板を使用し、異方導電性シートを複合化して多数個を同一平面内に成形する工程と、
成形終了後、位置決め用金属板付異方性導電シートを、ミシン目の所から切断し、多数個の個片の位置決め用金属板付異方性導電シートとする工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明本発明の異方導電性シートの製造方法によって得られた位置決め用金属板付異方導電性シートは、弾性体材料の弾性を利用して、電気回路基板の配線による厚み方向の段差や、電気回路部品の電極部分の厚み方向に於ける精度のばらつき等の要因による、厚み方向の段差を吸収しながら、位置精度による平面方向のズレを生じないので、安定した電気的接触を得ることができる。
【0021】
また、異方導電性シートを大量に生産する場合にも、一対の金型内で多面付けが可能であり、生産性向上に寄与する。
また、位置決め用金属板を測定系のアースに電気的に接続することにより異方導電性シート中の静電気の除去が容易であり、高周波のノイズのシールド効果もある。
【0022】
さらに、使用温度範囲が広域にわたる試験においては、金属材料としてインバー(アンバー)、スーパーインバー、コバール等の線膨張係数が1×10-5/K以下の金属を用いることで、常温で位置決めした接点部が、温度変化による位置ずれの影響を受けないので、安定な電気的接触が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明において使用される絶縁体としては、弾性を有する絶縁体が好ましい。このような弾性を有する絶縁体としては、ゴム状重合体が好ましい。
ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、SBR,NBRなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレンブタジエンジエンブロック共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体およびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンジエン共重合体などが挙げられる。
【0024】
耐候性の必要な場合は、共役ジエン系ゴム以外のゴム状重合体が好ましく、特に成形加工性および電気特性の点からシリコンゴムが好ましい。
ここでシリコンゴムについて、さらに詳細に説明する。シリコンゴムとしては、液状シリコンゴムを架橋または縮合したものが好ましい。液状シリコンゴムは、その粘度が、歪速度10ー1secで105ポアズ以下のものが好ましく、縮合型、付加型、ビニル基やヒドロキシル基含有型などのいずれであってもよい。
【0025】
具体的には、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルビニルシリコーン生ゴムなどを挙げることができる。
これらのうち、ビニル基含有シリコンゴムとしては、通常、ジメチルジクロロシランまたはジメチルジアルコキシシランを、ジメチルビニルクロロシランまたはジメチルビニルアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば、引き続き溶解−沈澱の繰り返しによる分別を行うことにより得ることができる。
【0026】
また、ビニル基を両末端に含有するものは、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、末端停止剤を用いて重合を停止して重合体を得る際に、末端停止剤として例えばジメチルジビニルシロキサンを使用し、反応条件(例えば、環状シロキサンの量および末端停止剤の量)を適宜選ぶことにより、得ることができる。
【0027】
ここで、触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化n−ブチルホスホニウムなどのアルカリまたはこれらのシラノレート溶液などが挙げられ、反応温度としては、例えば80〜130℃が挙げられる。
【0028】
また、ヒドロキシル基含有シリコンゴムは、通常、ジメチルジクロロシランまたはジメチルジアルコキシシランを、ジメチルヒドロクロロシラン、メチルジヒドロクロロシランまたはジメチルヒドロアルコキシシランなどのヒドロシラン化合物の存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引き続き溶解−沈澱の繰り返しによる分別を行うことにより得ることができる。
【0029】
また、環状シロキサンを触媒の存在下にアニオン重合し、末端停止剤を用いて重合を停止して重合体を得る際に、反応条件(例えば、環状シロキサンの量および末端停止剤の量)を選び、末端停止剤として、ジメチルヒドロクロロシラン、メチルジヒドロクロロシランまたはジメチルヒドロアルコキシシランを使用することによって得ることができる。
【0030】
ここで、触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化n−ブチルホスホニウムなどのアルカリまたはこれらのシラノレート溶液などが挙げられ、反応温度としては例えば80〜130℃が挙げられる。
【0031】
ゴム状重合体の分子量(標準ポリスチレン換算重量平均分子量)は、10,000〜40,000であるものが好ましい。なお、ゴム状重合体成分の分子量分布指数(標準ポリスチレン換算重量平均分子量と標準ポリスチレン換算数平均分子量との比(以下「Mw/Mn」と記す)は、得られる導電性エラストマーの耐熱性の点から2.0以下が好ましい。
【0032】
導電性粒子としては、例えば、鉄、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、銀、コバルト、アルミニウムなどの公知の単体導電性金属粒子、およびこれらの金属元素の2種以上からなる合金導電性金属粒子を挙げることができる。
【0033】
これらのうち、ニッケル、鉄、銅などの単体導電性金属粒子が、経済性と導電特性の面から好ましく、特に好ましくは表面が金により被覆されたニッケル粒子である。
また、絶縁体としてシリコンゴムを用いる場合は、導電性粒子のシランカップリング剤の被覆率が、5%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、7〜100%、より好ましくは、10〜100%、特に好ましくは、20〜100%である。
【0034】
また、導電性粒子の粒子径は、1〜1000μmであることが好ましく、さらに好ましくは、2〜500μm、より好ましくは、5〜300μm、特に好ましくは、10〜200μmである。
【0035】
また、導電性粒子の粒子径分布(Dw/Dn)は、1〜10であることが好ましく、さらに好ましくは、1.01〜7、より好ましくは、1.05〜5、特に好ましくは、1.1〜4である。
【0036】
また、導電性粒子の含水率は、5%以下が好ましく、さらに好ましくは、3%以下、より好ましくは、2%以下、特に好ましくは、1%以下である。
このような範囲の粒径を有する導電性粒子によれば、得られる導電性エラストマーにおいて、使用時導電性粒子間に十分な電気的接触が得られるようになる。この導電性粒子の形状は、特に限定されるものではないが、上記(a)成分および(b)成分またはそれらの混合物に対する分散の容易性から球状あるいは星形状であることが好ましい。
【0037】
本発明において導電性粒子として特に好ましく用いられる表面が金により被覆されたニッケル粒子は、例えば、無電解メッキなどにより、ニッケル粒子の表面に金メッキを施したものである。
【0038】
このように、表面が金被覆を有するニッケル粒子は、接触抵抗がきわめて小さいものとなる。メッキにより金を被覆する場合の膜厚は、1000オングストローム以上であることが好ましい。
【0039】
また、メッキ量としては、粒子の1重量%以上が好ましく、さらに好ましくは、2〜10重量%、特に好ましくは、3〜7重量%である。
本発明において、導電性粒子は、ゴム状重合体100重量部に対して30〜1000重量部、好ましくは50〜750重量部の割合で用いられる。
【0040】
この割合が30重量部未満の場合には、得られる導電性エラストマーは、使用時にも電気抵抗値が十分に低くならず、従って良好な接続機能を有しないものとなり、また、1,000重量部を超えると、硬化されたエラストマーが脆弱になって導電性エラストマーとして使用することが困難となる。
【0041】
以上のゴム状重合体および導電性粒子を含有する本発明の導電性エラストマー用組成物には、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナなどの無機充填材を含有させることができる。このような無機充填材を含有させることにより、未硬化時におけるチクソ性が確保され、粘度が高くなり、しかも導電性粒子の分散安定性が向上すると共に、硬化後におけるエラストマーの強度が向上する。
【0042】
この無機充填材の使用量は、特に限定されるものではないが、あまり多量に使用すると、導電性金属粒子の磁場による配向を十分に達成できなくなるので好ましくない。
なお、本発明の導電性エラストマー用組成物の粘度は、温度25℃において、100,000〜1,000,000cpの範囲内であることが好ましい。本発明の導電性エラストマー用組成物は、架橋もしくは縮合反応が行われて弾性の大きいエラストマーが形成され、しかも、特定な導電性粒子成分が含有されていることにより、導電性エラストマーとしての機能を有するものとなる。
【0043】
本発明の導電性エラストマー用組成物は、硬化させるために硬化触媒を用いることができる。このような硬化触媒としては、有機過酸化物、脂肪酸アゾ化合物、ヒドロキシル化触媒、放射線などが挙げられる。
【0044】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ビスジシクロベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジターシャリーブチルなどが挙げられる。また、脂肪酸アゾ化合物としてはアゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0045】
ヒドロシリル化反応の触媒として使用し得るものとしては、具体的には、塩化白金酸およびその塩、白金−不飽和基含有シロキサンコンプレックス、ビニルシロキサンと白金とのコンプレックス、白金と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとのコンプレックス、トリオルガノホスフィンあるいはホスファイトと白金とのコンプレックス、アセチルアセトネート白金キレート、環状ジエンと白金とのコンプレックスなどの公知のものを挙げることができる。
【0046】
硬化触媒の添加方法も、特に限定されるものではないが、保存安定性、成分混合時の触媒の偏在防止などの観点から、主剤である(a)成分に予め混合しておくことが好ましい。
【0047】
硬化触媒の使用量は、実際の硬化速度、可使時間とのバランスなどを考慮して適量使用するのが好ましい。また、硬化速度、可使時間を制御するために通常用いられる、アミノ基含有シロキサン、ヒドロキシ基含有シロキサンなどのヒドロシリル化反応制御剤を併用することもできる。
【0048】
金属板の材料としては、種々のものが使用できるが、電気部品等の温度試験用などに用いる異方導電性シートでは、線膨張係数が被検査基板や検査装置の線膨張係数に近いものが好ましい。
【0049】
このような線膨張係数としては、1.5×10-4/K以下のものが好ましく、さらに好ましくは、1×10-7/K〜1×10-4/Kである。
金属材料の具体例としては、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、マグネシュウム、マンガン、モリブデン、インジウム、鉛、パラジウム、チタン、タングステン、アルミニウム、金、白金、銀など、およびこれらの2種以上の合金や合金鋼などが挙げられる。
【0050】
基板材料として、シリコンを用いた場合は、金属板の材料としては、その線膨張係数が1.5×10-5/K以下のものが好ましく、さらに好ましくは、1×10-7/K〜1×10-5/Kである。
【0051】
このような材料としては、インバーなどのインバー型合金、エリンバーなどのエリンバー型合金、スーパーインバー、コバールなどが挙げられる。
このような線膨張係数が小さい金属を用いることで、常温で位置決めした接点部が、温度変化の影響を受けないので、安定な電気的接触が得られる。
【0052】
使用する位置決め用金属板は、エッチング可能な金属であればよく、材質については特に指定しない。
金属板上の穴加工は、フォトリソグラフィとエッチングを用いることができるため、穴加工の精度ならびに、加工穴のデザインの自由度は高い。また、エッチング行程後、金属板表面が樹脂等の絶縁材料で覆われていればなお良い。
【0053】
金属板の厚さとしては、導電性シートの厚さの0.01〜10倍が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜2倍であり、特に好ましくは、0.03〜0.8倍である。
本発明において、金属板は導電性シートの周辺部に備えられており、このような金属板と導電性シートの複合化の方法としては、種々の方法が用いられる。
【0054】
例えば、金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する方法、金属板と導電性シートを嵌合する方法、金属板と導電性シートとを接合する方法などが挙げられる。
金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する方法としては、印刷マスクを金
型上に置いて導電ペーストを印刷し、スペーサーを挟んで位置決め用金属板を金型で挟み込む。
【0055】
この状態で、図8に示すように、ヒーター付着磁機の磁極間に挟んで、シートの厚み方向に磁場をかけながら加熱し、導電ペーストを硬化させる。これにより、磁性体の金属粒子がシートの厚み方向に連鎖した状態で樹脂が硬化するために、電気的な導通が得られる。
【0056】
金属板と導電性シートとを接合する方法としては、金属板と導電性シートとを接着剤で接合する方法が挙げられる。
金属板と導電性シートとの接合(複合)部分は、金属板が導電性シートの上面もしくは下面に位置するようにしても良いが、好ましいのは、図2に示されるように、金属板の一部が導電性シートの中に埋め込まれ(挟み込まれ)たものである。
【0057】
また、導電性シートは伸張された状態で金属板と複合化(接合)されていると、温度変化による膨張などの変化を受けにくい。
一対の金型を用いて、一度に多数個の位置決め用金属板付異方導電性シートを得るには、分割部分にミシン目を入れた位置決め用金属板を使用し、異方導電性シートを複合化して多数個を同一平面内に成形する。
【0058】
成形終了後、位置決め用金属板付異方性導電シートを、ミシン目の所から切断し、多数個の個片の位置決め用金属板付異方性導電シートとする。
位置決め用金属板の加工には、フォトリソグラフィとエッチングなどを用いることにより、ミシン目などの加工や位置決め用穴加工や異方性導電シートが設置される部分(穴開け)の加工などを、工数を増やすことなく一括で加工できる。
【0059】
上記の異方導電性シートは、例えば、次のようにして製造される。
先ず、絶縁性の弾性高分子物質、例えば、シリコンゴム中に、ニッケルなどの導電性磁性体粒子を分散させて流動性の混合物よりなるエラストマー材料(50)が調製され、図11に示すように、これが金型のキャビティ内に配置される。
【0060】
この金型は、各々電磁石を構成する上型(51)と下型(52)とよりなり、上型(51)には、計測基板や電気回路基板の接続用電極に対応するパターンの強磁性体部分(斜線を付して示す)(M)と、それ以外の非磁性体部分(N)とよりなる、下面が平坦面である磁極板(53)が設けられており、当該磁極板(53)の平坦な下面がエラストマー材料層(50)の表面に接触または離間されて間隙(G)が形成された状態とされる。
【0061】
この状態で上型(51)と下型(52)の電磁石を動作させ、エラストマー材料の厚さ方向の平行磁場を作用させる。
その結果、エラストマー材料層(50)においては強磁性体部分(M)において、それ以外の部分(非磁性体部分(N))より強い平行磁場が厚さ方向に作用されることとなり、この分布を有する平行磁場により、エラストマー材料層(50)内の導電性磁性体粒子が、強磁性体部分(M)による磁力部分に集合して更に厚さ方向に配向する。
【0062】
このとき、エラストマー材料層(50)の表面側には間隙(G)が存在する場合は、導電性磁性体粒子の移動集合によって高分子物質用材料も同様に移動する結果、強磁性体部分(M)に位置する部分の高分子物質用材料表面が隆起し、突出した導電部を形成することができる。
【0063】
そして、平行磁場を作用させたまま、あるいは平行磁場を除いた後、加熱などにより硬
化処理を行うことにより、導電部と絶縁部とよりなる異方導電性シートが製造される。
次に、本発明の異方導電性シートの使用法について述べる。
【0064】
該異方導電性シートを電気回路部品、或いは電気回路基板の検査、計測に用いる場合は、例えば、図9に示されるように、計測基板(20)側の電極配置を被検査物(21)(電気回路部品或いは、電気回路基板)の電極配置にあわせて製造し、該計測基板と該被検査物の間に、図6に示されるような本発明の異方性導電シートを位置決め穴を用いて位置決めし、挟んで加圧する。
【0065】
このようにすることにより、該計測基板と該被検査物との間で電気的な導通が得られ、該被検査物の検査、計測が可能になる。
また、位置決め穴を使用しない方法としては、図7に示されるように位置決め用金属板の端部を用いて位置決めし、検査、計測に用いても良い。
【0066】
本発明による異方導電性シートを、図10に示されるように電気回路部品(22)と電気回路基板(24)の間の電気的な相互の接続に用いる場合には、電気回路部品と電気回路基板の間に、図6に示されるような本発明の異方性導電シート(11)を、位置決め用金属板(16)を用いて位置決めし、筐体(23)で挟みこむことで、半永久的に加圧固定できる構造で接続が可能となり、電気回路基板(24)上で電気回路部品(22)を動作させることが可能になる。
【実施例1】
【0067】
本発明に於ける実施例を以下に示す。
実施例としては、メタルマスク材料として一般によく用いられるステンレス板(図4)を使用した例を示す。
【0068】
使用する位置決め用金属板は、フォトリソグラフィとエッチングを用いることにより、位置決め穴や異方導電性シートを設置する穴などの穴加工が精度よくできた。
位置決め用金属板は、図5に示されるように1枚に多数個の導電シートが製造できるように配置し、分割部分にミシン目を入れた位置決め用金属板を使用し、多数個を同一平面内に成形するようにした。
【0069】
導電ペースト(11)は、ニッケルの磁性体粒子の表面に、金をコーティングしたものを用い、ペーストの樹脂材料としてはシリコーンゴムを用い、これらを混合して導電ペーストとした。
【0070】
印刷マスクを金型上に置いて導電ペーストを印刷し、スペーサーを挟んで位置決め用金属板を金型で挟み込む。
この状態で、図8に示すようなヒーター付着磁機の磁極間に挟んで、シートの厚み方向に磁場をかけながら加熱し、導電ペーストを硬化させた。この結果、磁性体の金属粒子がシートの厚み方向に配向し、金属粒子が連鎖した状態で樹脂が硬化し、金属粒子が配向した部分の電気的な導通が得られ、図6に示されるような複合化された位置決め用金属板付異方導電性シートが得られた。
【0071】
次に、上記で得られた本発明の異方導電性シートの使用法について述べる。
該異方導電性シートを、図9に示されるように電気回路部品、或いは電気回路基板の検査、計測に用いた。計測基板(20)側の電極配置を被検査物(21)(電気回路部品或いは、電気回路基板)の電極配置にあわせて製造し、該計測基板と該被検査物の間に、本発明の異方性導電シート(図6)を位置決め穴を用いて位置決めし、挟んで加圧することにより、該計測基板と該被検査物との間で電気的な導通が得られ、該被検査物の検査、計
測が可能となった。
【0072】
温度を室温から120℃まで変化させて、繰り返し試験を行ったが、位置ずれや導通不良は発生せず、長期間に渡って安定に検査、計測ができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】異方導電性シートの模式的斜視図である。
【図2】異方導電性シートの模式的断面図である。
【図3】個別金属板を用いた多数個成形時の状態の斜視図である。
【図4】多数個成形時の位置決め用金属板付異方導電性シートの斜視図である。
【図5】多数個成形時の位置決め用金属板付異方導電性シートの平面図である。
【図6】ガイド穴による位置決め用金属板付異方導電性シートの斜視図である。
【図7】端面による位置決め用金属板付異方導電性シートの斜視図である。
【図8】磁場成形機の概念図である。
【図9】電気検査用ソケットの概念図である。
【図10】電気的接続用コネクターの概念図である。
【図11】異方導電性シートの製造例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0074】
10 ・・・ ガイド穴(位置決め用穴)
11 ・・・ 異方導電性シート
12 ・・・ 異方性導電部
13 ・・・ 上金型
14 ・・・ 下金型
15 ・・・ 導電ペースト
16 ・・・ 位置決め用金属板
17 ・・・ ヒーター
18 ・・・ ヨーク
19 ・・・ 着磁コイル
20 ・・・ 計測基板
21 ・・・ 被測定物
22 ・・・ 電気回路部品
23 ・・・ 加圧固定治具
24 ・・・ 電気回路基板
50 ・・・ エラストマー材料層
51 ・・・ 上型
52 ・・・ 下型
53 ・・・ 磁極板
G ・・・ 間隙
M ・・・ 強磁性体部分
N ・・・ 非磁性体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、該導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、前記導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、
前記位置決め用の金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する工程を含むことを特徴とする異方導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記位置決め用の金属板の存在下に導電性シートを成形あるいは硬化する工程が、
印刷マスクを金型上に置いて導電ペーストを印刷する工程と、
スペーサーを挟んで、位置決め用の金属板を金型で挟み込む工程と、
この状態で、ヒーター付着磁機の磁極間に挟んで、シートの厚み方向に磁場をかけながら加熱し、導電ペーストを硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項3】
絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、該導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、前記導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、
前記位置決め用の金属板と導電性シートを嵌合する工程を含むことを特徴とする異方導電性シートの製造方法。
【請求項4】
絶縁体中に導電性粒子を厚み方向に連鎖させて導電部を形成し、該導電部分以外の場所は、弾性を有する絶縁体で構成されるとともに、前記導電性シートの周辺部に、位置決め用の金属板を備えた異方導電性シートの製造方法であって、
前記位置決め用の金属板と導電性シートとを接合する工程を含むことを特徴とする異方導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記位置決め用の金属板と導電性シートとを接合が、接着剤で接合することによって行われることを特徴とする請求項4に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項6】
前記導電性シートが、
絶縁性の弾性高分子物質中に、導電性磁性体粒子を分散させて流動性の混合物よりなるエラストマー材料を調製する工程と、
前記エラストマー材料を金型のキャビティ内に配置する工程と、
前記金型において、エラストマー材料の厚さ方向に部分的に強い平行磁場を作用させる工程と、
前記エラストマー材料の硬化処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項7】
前記金型とエラストマー材料の間に間隙を設けて、突出した導電部を形成することを特徴とする請求項6に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項8】
前記位置決め用の金属板の線膨張係数が、1×10-5/K以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項9】
前記位置決め用の金属板に、位置決め用の位置決め穴を形成することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項10】
前記金属板が、エッチング可能な金属から構成されていることを特徴とする請求項9に
記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項11】
前記位置決め用の金属板の位置決め穴の形成が、フォトリソグラフィとエッチングによって形成することを特徴とする請求項10に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項12】
分割部分にミシン目を入れた位置決め用金属板を使用し、異方導電性シートを複合化して多数個を同一平面内に成形する工程と、
成形終了後、位置決め用金属板付異方性導電シートを、ミシン目の所から切断し、多数個の個片の位置決め用金属板付異方性導電シートとする工程と、
を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の異方導電性シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−24580(P2006−24580A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273534(P2005−273534)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【分割の表示】特願平9−202165の分割
【原出願日】平成9年7月11日(1997.7.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】