説明

異方導電性フィルム組成物、これから製造された異方導電性フィルム、及び該異方導電性フィルムを含む装置

【課題】
相溶性に問題がなく、接着力が良く且つ信頼性の良い異方導電性フィルム、これに含まれる異方導電性フィルム組成物及びこれを含む装置を提供する。
【解決手段】
ポリウレタンビーズを含む異方導電性フィルムによって上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム組成物、これから製造された異方導電性フィルム、及びこれを含む装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異方導電性フィルムは、ニッケルや金等の金属粒子、又はそのような金属でコーティングされた高分子粒子等の導電性粒子を分散させた接着性のフィルムを言う。異方導電性フィルムを、接続させようとする回路間に配置させた後、一定条件の下で加熱及び加圧すると、回路端子間は導電性粒子によって電気的に接続され、隣接回路との間のピッチ(pitch)には絶縁性接着樹脂が充填されて、導電性粒子が相互独立して存在するようになるため、高い絶縁性が付与されるようになる。
【0003】
このような異方導電性フィルムは接着力を有していなければならない。接着力を高めるために、高分子量のポリウレタン樹脂を添加する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−164874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高分子量のポリウレタン樹脂を添加すると、他のアクリルバインダー樹脂又は低分子量の(メタ)アクリレート単量体との相溶性が劣るようになるため、異方導電性フィルムの製造に困難が生じ得る。
【0006】
また、異方導電性フィルムは信頼性が良くなければならない。しかし、通常の異方導電性フィルムは、硬化部において硬化収縮を防止できる成分が含有されていないため、信頼性を高めるのには限界がある。
【0007】
よって、ポリウレタン樹脂を添加した場合であっても、他の構成成分との相溶性が良いと共に、接着力と信頼性を高めた異方導電性フィルムを開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、ポリウレタンビーズ及び導電性粒子を含む異方導電性フィルムによって上記課題が解決できることを見出した。
【0009】
また、本発明の異方導電性フィルムは、初期接続抵抗が0超1.2Ω以下であり、85℃及び85%湿度で500時間後の接続抵抗変化率が0超50%未満で、ポリウレタンビーズを含むことができる。
【0010】
一実施形態において、ポリウレタンビーズの平均粒径は0.1μm以上5μm未満であり得る。
【0011】
一実施形態において、ポリウレタンビーズは、前記異方導電性フィルム100重量%に対して0.1〜10重量%で含まれ得る。
【0012】
一実施形態において、ポリウレタンビーズのガラス転移温度(Tg)は、−50〜100℃であり得る。
【0013】
一実施形態において、異方導電性フィルムは、熱可塑性樹脂、ポリウレタンビーズ、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体、ラジカル開始剤及び導電性粒子を含み得る。
【0014】
一実施形態において、熱可塑性樹脂は、ポリウレタン系樹脂;ならびにアクリロニトリル系、アクリル系、ブタジエン系、ポリアミド系、オレフィン系及びシリコン系樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含み得る。
【0015】
一実施形態において、ポリウレタン系樹脂は、前記異方導電性フィルム100重量%に対して10〜60重量%で含まれ得る。
【0016】
一実施形態において、ポリウレタンビーズの平均粒径(D50)/導電性粒子の平均粒径(D50)は1未満であり得る。
【0017】
一実施形態において、異方導電性フィルムは、異方導電性フィルム100重量%に対して、熱可塑性樹脂15〜82重量%、ポリウレタンビーズ0.1〜10重量%、ウレタン(メタ)アクリレート15〜40重量%、(メタ)アクリレート単量体1〜20重量%、ラジカル開始剤0.9〜5重量%及び導電性粒子1〜10重量%を含み得る。
【0018】
本発明の異方導電性フィルム組成物は、熱可塑性樹脂、ポリウレタンビーズ、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体、ラジカル開始剤及び導電性粒子を含み得る。
【0019】
本発明の装置は、前記異方導電性フィルム又は前記異方導電性フィルム組成物で製造された異方導電性フィルムを含み得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ポリウレタンビーズを含むため相溶性に問題がなく、接着力が良く且つ信頼性の良い異方導電性組成物、これから製造された異方導電性フィルム及びこれを含む装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の異方導電性フィルムは、初期接続抵抗が0超1.2Ω以下で、85℃及び85%湿度で500時間後の接続抵抗変化率が0超50%未満であり得る。
【0022】
接続抵抗変化率は、下記式1で表すことができる。
【0023】
【数1】

【0024】
(前記式1で、Aは初期接続抵抗であり、Bは85℃及び85%湿度で500時間後の接続抵抗である)
接続抵抗変化率は0超50%未満、好ましくは0超46%以下であり得る。よって、本発明の異方導電性フィルムは接続抵抗に対して高信頼性を提供することができる。
【0025】
初期接続抵抗は0超1.2Ω以下、好ましくは0.1〜1.0Ωであり、85℃及び85%湿度で500時間後の接続抵抗は0超5Ω以下、好ましくは0.1〜3Ωであり得る。
【0026】
接続抵抗は、異方導電性フィルムに対して測定する通常の方法で測定することができる。本願では、4プローブ(probe)方法(四探針法)で測定した値を採用する。
【0027】
本発明の異方導電性フィルムは、ポリウレタンビーズ、熱可塑性樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体、ラジカル開始剤及び導電性粒子を含むことができる。
【0028】
ポリウレタンビーズの平均粒径(D50)は、異方導電性フィルムに含まれる他の成分である導電性粒子の平均粒径(D50)より小さいものが好ましい。言い換えると、導電性粒子の平均粒径に対するポリウレタンビーズの平均粒径の比率(ポリウレタンビーズの平均粒径/導電性粒子の平均粒径)は1未満であるものが良い。前記範囲の場合、薄膜コーティング性、電気的特性(初期接続抵抗および接続抵抗率)及び接着力に優れる。好ましくは、ポリウレタンビーズの平均粒径/導電性粒子の平均粒径は0.005以上1未満であり、より好ましくは0.01〜0.7である。
【0029】
ポリウレタンビーズの粒子径/導電性粒子の粒子径が1以上であれば、熱圧着時に異方導電性フィルム内のポリウレタンビーズによって、導電性粒子が十分に圧着されることを阻害し、被着剤内の金属電極と導電性粒子間の十分な接触面積を確保できない場合がある。ポリウレタンビーズの粒子径/導電性粒子の粒子径が1未満であれば、上記のように導電性粒子の圧着を阻害することなく、ポリウレタンビーズの投入によるモジュラスの増加により、熱圧着以後、安定した硬化構造を確保することができるので、電気的特性及び接着力が向上し得る。
【0030】
なお、ポリウレタンビーズおよび下記導電性粒子の平均粒径はレーザ回折散乱法により50重量%累積平均粒径の測定を行って求めた値を採用する。
【0031】
(ポリウレタンビーズ)
ポリウレタンビーズは、架橋されたウレタン樹脂からなる球状の有機微粒子であり、複層構造ではない単層構造からなっている。ポリウレタンビーズは、単層であるにもかかわらず、異方導電性フィルムに含まれるポリウレタン系樹脂又はウレタンアクリレートと同様な化学構造を有することにより、フィルムを構成する他の成分との相溶性が良く、且つ優れた分散特性を有するため、接続信頼性を高めることができる。また、ポリウレタンビーズと高分子量のポリウレタン系樹脂を配合した場合も、組成物の相溶性が向上し得る。分子量の差による相溶性の差は、一般的な線形高分子又は架橋された高分子間に発生する現象であるが、ビーズタイプで添加された場合は、相溶性の問題がない。特に、ポリウレタン系樹脂又はウレタンアクリレートと水素結合等の2次結合を形成して高い接着力を表すことができる。また、樹脂形態ではないビーズという粒子形態で存在することにより、異方導電性フィルム硬化時に硬化収縮を防ぐことで、異方導電性フィルムの内部応力を低くして接続信頼性を高めることができる。
【0032】
ポリウレタンビーズは、熱可塑性樹脂と共に異方導電性フィルム形成のためのマトリックスの役割をするバインダー部に含まれ得る。
【0033】
ポリウレタンビーズの平均粒径は、0.1μm以上5μm未満であり得る。
【0034】
ポリウレタンビーズの平均粒径が前記範囲の場合、応力緩和がより向上し、高温高湿下での信頼性に優れ、薄膜フィルム形成が好適に行われ、電気的特性及び接続信頼性が良い。好ましくは、ポリウレタンビーズの直径は、0.1μm〜3μm、より好ましくは、0.1μm〜2μm未満、最も好ましくは、0.1μm〜1μmであり得る。
【0035】
ポリウレタンビーズのガラス転移温度(Tg)は、−50〜100℃であり得る。ポリウレタンビーズのガラス転移温度は、異方導電性フィルムにおいて一般的に使用されるアクリル樹脂からなる有機微粒子のガラス転移温度よりも低い。このように、ガラス転移温度が低いビーズを使用すると、弾性体の性質を帯びて応力緩和の機能を確実に発揮することができる。
【0036】
ポリウレタンビーズは、異方導電性フィルム100重量%に対して0.1〜10重量%で含まれ得る。前記範囲内で、異方導電性フィルムに高い接着力と信頼性を提供することができる。好ましくは、1〜6重量%で含まれ得る。
【0037】
ポリウレタンビーズは1種単独で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0038】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、異方導電性フィルムの形成に必要なマトリックスの役割をするバインダー部として通常の熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。例えば、熱可塑性樹脂は、ポリウレタン系、アクリロニトリル系、アクリル系、ブタジエン系、ポリアミド系、オレフィン系及びシリコン系樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。熱可塑性樹脂は、より好ましくは、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂及びブタジエン系樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0039】
特に、本発明の異方導電性フィルムは、ポリウレタンビーズとの相溶性のために熱可塑性樹脂としてポリウレタン系樹脂を含むことができる。このとき、ポリウレタン系樹脂は、異方導電性フィルム100重量%に対して10〜60重量%で含まれ得る。前記範囲内でポリウレタン樹脂を使用する場合、ポリウレタンビーズとの水素結合増加による接着力の向上及び信頼性物性の向上を表す。好ましくは、ポリウレタン系樹脂は、異方導電性フィルム中に30〜40重量%で含まれ得る。
【0040】
熱可塑性樹脂は、異方導電性フィルム中に15〜82重量%、好ましくは、30〜70重量%で含まれ得る。前記範囲内で、フィルムの形成が好適に行われ得る。
【0041】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、1,000〜1,000,000g/molであり得る。前記範囲内で、フィルムの形成が好適に行われ得、他の硬化反応に関与する(メタ)アクリレートとの相溶性が良いため相分離しない。
【0042】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、30〜120℃であり得る。前記範囲内で信頼性が良く、初期圧痕が良いため十分な電気的特性を発現できる。
【0043】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合と両末端に不飽和二重結合を含み、硬化部を構成する。ウレタン(メタ)アクリレートは、硬化部に含まれていながらフィルムのバインダー部に含まれる熱可塑性樹脂、特にポリウレタン系樹脂及びポリウレタンビーズと水素結合を形成することにより、フィルムの相溶性を良くできる。
【0044】
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールとジイソシアネートとの重合反応によりイソシアネート過量の中間体を作った後、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートと重合して製造できる。重合反応の種類、温度及び時間は特に制限されない。
【0045】
前記ポリオールとしては、エステルタイプポリオール、エーテルタイプポリオール、又はカーボネートタイプポリオールの中から使用でき、特に限定されない。
【0046】
前記ジイソシアネートとしては、C6〜C20の芳香族ジイソシアネート、C1〜C10の脂肪族ジイソシアネート、C3〜C20の脂環式ジイソシアネートが使用でき、特に限定されない。
【0047】
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシ基を有するC1〜C20の(メタ)アクリレートが使用でき、特に限定されない。
【0048】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が5,000〜50,000g/molであり得る。前記範囲内で、フィルムの形成が好適に行われ、相溶性が良くなり得る。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレートは、異方導電性フィルム100重量%に対して15〜40重量%で含まれ得る。前記範囲内で異方導電性フィルムの相溶性が良くなり得る。好ましくは、15〜30重量%で含まれ得る。
【0050】
ウレタン(メタ)アクリレートは1種単独で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0051】
((メタ)アクリレート単量体)
(メタ)アクリレート単量体は、ウレタン(メタ)アクリレートと共に硬化部を構成することができる。(メタ)アクリレート単量体は、異方導電性フィルム組成物において、反応性希釈剤及び反応性モノマーの役割をする。(メタ)アクリレート単量体は、特に制限されないが、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシ付加型ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ付加型ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、フェノキシ−t−グリコール(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシメチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートアクリレート及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これらに制限されない。
【0052】
(メタ)アクリレート単量体は、異方導電性フィルム100重量%に対して1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%で含まれ得る。前記範囲内で、異方導電性フィルムの接続信頼性が高くなり得る。
【0053】
(メタ)アクリレート単量体は1種単独で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0054】
(ラジカル開始剤)
本発明の異方導電性フィルムの硬化部のまた別の成分であるラジカル開始剤としては、光重合型開始剤又は熱硬化型開始剤中の1種以上を組合わせて使用できる。
【0055】
光重合型開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニル硫化物、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4−ジエチル安息香酸エチル、ベンゾインエーテル、ベンゾイルプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン等があるが、これらに制限されない。
【0056】
熱硬化型開始剤は、特に制限はなく、パーオキシド系又はアゾ系を使用できる。パーオキシド系開始剤としては、例えば、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等を使用できるが、これらに制限されない。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)等を使用できるが、これらに制限されない。
【0057】
ラジカル開始剤は、異方導電性フィルム100重量%に対して0.9〜5重量%、好ましくは1〜5重量%で含まれ得る。
【0058】
(導電性粒子)
導電性粒子は、本発明の異方導電性フィルムの組成で導電性能を付与するためのフィラーとして使用される。導電性粒子としては、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、鉛、スズ等の金属粒子、及びハンダ等のこれらの合金の金属粒子;炭素;金属コートされた樹脂粒子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール等の樹脂及びこれらの変性樹脂を粒子にして、他の導電性材料、例えば、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、鉛、スズ、ハンダ等の金属をコーティングしたもの);絶縁粒子で被覆された導電性粒子等が挙げられる。
【0059】
導電性粒子の大きさは特に制限はされないが、ポリウレタンビーズの平均粒径より大きい平均粒子径を有するものが良い。そうすることで、安定的な電気的特性の発現及び接続信頼性が良くなり得る。さらに、接着性能も向上する。例えば、導電性粒子の平均粒径は1μm〜20μmにであり得る。好ましくは、1μm〜5μmになり得る。
【0060】
導電性粒子は、異方導電性フィルム100重量%に対して1〜10重量%で含まれ得る。前記範囲内でショート等の電気的特性を勘案すると、安定的な電気的特性の発現が可能になる。好ましくは1〜5重量%で含まれ得る。
【0061】
また、本発明の異方導電性フィルムは、基本物性を阻害しない範囲で、付加的な物性を提供するために、重合防止剤、酸化防止剤、熱安定剤等の添加剤をさらに含むことができる。添加剤は特に制限されないが、異方導電性フィルム100重量%に対して0.01〜10重量%で含まれ得る。
【0062】
重合防止剤は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、フェノチアジン及びこれらの混合物からなる群から選ばれ得る。酸化防止剤は、フェノリック系又はヒドロキシシンナメート系物質等を使用できる。例えば、テトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート)メタン、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、チオールジ−2,1−エタンジイルエステル等を使用できる。
【0063】
異方導電性フィルムを形成する際は、特別な装置や設備を必要としない。例えば、下記の異方導電性フィルム組成物をトルエンのような有機溶媒に溶解させて溶液とした後、導電性粒子が粉砕されない速度の範囲内で一定時間攪拌し、これを離型フィルム上に一定の厚さ、例えば10〜50μmの厚さで塗布した後、一定時間乾燥させてトルエン等を揮発させることにより異方導電性フィルムを得ることができる。
【0064】
本発明の他の形態は、ポリウレタンビーズ、熱可塑性樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体、ラジカル開始剤及び導電性粒子を含む異方導電性フィルム組成物を提供する。
【0065】
ポリウレタンビーズ、熱可塑性樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体、ラジカル開始剤及び導電性粒子に対する内容は上述の通りである。
【0066】
本発明のまた他の形態は、前記異方導電性フィルム又は前記異方導電性フィルム組成物で形成された異方導電性フィルムを含む装置を提供する。前記装置としては、異方導電性フィルムをモジュール間の接続材料として使用する液晶表示装置を始めとする各種ディスプレイ装置及び半導体装置を含むことができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の好ましい実施例により本発明の構成及び作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例として提示したものであり、如何なる意味としてもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0068】
ここに記載されていない内容は、本技術分野の当業者であれば十分に技術的に類推できるもののため、その説明は省略する。
【0069】
実施例1:異方導電性フィルム組成物の製造
フィルム形成のためのマトリックスの役割をするバインダー樹脂部として、ポリウレタンビーズ(根上工業株式会社製,平均粒径:0.1μm、ガラス転移温度15℃)3重量%;ポリウレタン系樹脂(UN5500,根上工業株式会社製、重量平均分子量50,000)32重量%;30体積%でトルエン/メチルエチルケトンに溶解されたNBR(acrylonitrile−butadiene rubber)系樹脂(N−34,日本ゼオン株式会社製)5重量%;及びアクリル系樹脂(アルキルメタアクリレート樹脂,重量平均分子量90,000g/mol,酸価2KOHmg/mg,MMA(メチルメタクリレート),BA(ブチルアクリレート),シクロヘキシルメタアクリレートの共重合体)24重量%を含ませる。硬化反応が行われる硬化部として、ウレタンアクリレート(UN5507,根上工業株式会社製)25重量%、反応性モノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート1重量%、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート2重量%、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート2.5重量%で含ませた。熱硬化型開始剤としてラウリルパーオキシド2.5重量%;導電性フィラーとして導電性粒子(グレード:NIEYB2−003−S、平均粒径:3μm,積水化学工業株式会社)を絶縁処理せずに3重量%含ませてフィルム組成物を製造した。
【0070】
実施例2:異方導電性フィルム組成物の製造
前記実施例1でアクリル系樹脂21重量%及びポリウレタンビーズ6重量%を使用したことを除いては、同様な方法を実施してフィルム組成物を製造した。
【0071】
実施例3〜4:異方導電性フィルム組成物の製造
前記実施例1でポリウレタンビーズの大きさを下記表1のように変更したことを除いては、同様な方法を実施してフィルム組成物を製造した。
【0072】
平均粒径0.8μmであるポリウレタンビーズのガラス転移温度は40℃であり、平均粒径1.0μmであるポリウレタンビーズのガラス転移温度は40℃である。
比較例1:異方導電性フィルム組成物の製造
前記実施例1でポリウレタンビーズを使用しないことを除いては、前記実施例1と同様な方法を実施してフィルム組成物を製造した。
【0073】
【表1】

【0074】
実験例:異方導電性フィルムの物性測定
前記実施例と比較例で製造された異方導電性フィルム組成物20gにトルエン1.5gを使用して希釈させた後、30分間攪拌し、これを離型フィルム上に16μmの厚さで塗布し、5分間乾燥させてトルエンを揮発させることにより異方導電性フィルムを得た。製造された異方導電性フィルムの接着力、接続抵抗及び85℃及び相対湿度85%で500時間後の接着力と接続抵抗の信頼性を評価し、その結果を表2に示した。
【0075】
<物性の測定方法>
1.接着力:実施例と比較例で製造された異方導電性フィルムを、25℃で1時間放置した後、ITOガラス(インジウムチンオキシドガラス)と、COF、TCP(Tape Carrier Package)を利用して70℃、1秒の仮圧搾条件と、180℃、5秒、4.5MPaの本圧搾条件で接続した。それぞれの試片を5個ずつ準備し、製造された試片に対して90°接着力を測定した。
【0076】
2.接続抵抗:前記試片に対して4プローブ(probe)方法で接続抵抗を測定した。
【0077】
3.信頼性:前記の製造した試片を85℃、相対湿度85%で500時間維持し、前記と同様な方法で接着力と接続抵抗を測定した。
【0078】
【表2】

【0079】
前記表2の通り、ポリウレタンビーズを含む本発明の異方導電性フィルムは、接着力が良く、初期接続抵抗も低く、接着力と接続抵抗において信頼性も良いことが分かる。それに対して、ポリウレタンビーズを含まない比較例1の異方導電性フィルムは、接続抵抗と接着力で信頼性が良くないことが分かる。また、実施例の異方導電性フィルム組成物の相溶性も良好であった。
【0080】
以上、添付の図面及び表を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるのではなく、相異する多様な形態に製造でき、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態で実施できるということを理解できると考える。そのため、上記の実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的ではないことを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンビーズ及び導電性粒子を含む、異方導電性フィルム。
【請求項2】
初期接続抵抗が0超1.2Ω以下で、85℃及び85%湿度で500時間後の下記式1で表される接続抵抗変化率が0超50%未満であり、ポリウレタンビーズ及び導電性粒子を含む、異方導電性フィルム;
【数1】

(前記式1で、Aは前記異方導電性フィルムの初期接続抵抗であり、Bは前記異方導電性フィルムを85℃及び85%湿度で500時間後に測定した接続抵抗である)。
【請求項3】
ポリウレタンビーズ及び導電性粒子を含み、前記導電性粒子の平均粒径に対する前記ポリウレタンビーズの平均粒径の比率が1未満である異方導電性フィルム。
【請求項4】
前記ポリウレタンビーズの平均粒径は0.1μm以上5μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項5】
前記ポリウレタンビーズの平均粒径は0.1μm以上2μm未満であり、前記導電性粒子の平均粒径は1μm〜20μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項6】
前記ポリウレタンビーズは、前記異方導電性フィルム100重量%に対して0.1〜10重量%で含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項7】
前記ポリウレタンビーズのガラス転移温度(Tg)は、−50〜100℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項8】
熱可塑性樹脂、及びウレタン(メタ)アクリレートをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリウレタン系樹脂;ならびにアクリロニトリル系、アクリル系、ブタジエン系、ポリアミド系、オレフィン系及びシリコン系樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項8に記載の異方導電性フィルム。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂がポリウレタン系樹脂であり、前記ポリウレタン系樹脂は、前記異方導電性フィルム100重量%に対して10〜60重量%で含まれることを特徴とする請求項9に記載の異方導電性フィルム。
【請求項11】
1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシ付加型ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ付加型ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、フェノキシ−t−グリコール(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシメチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートアクリレート及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上の(メタ)アクリル系単量体をさらに含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項12】
さらにラジカル開始剤を含み、異方導電性フィルム100重量%に対して、前記熱可塑性樹脂15〜82重量%、前記ポリウレタンビーズ0.1〜10重量%、前記ウレタン(メタ)アクリレート15〜40重量%、前記(メタ)アクリレート単量体1〜20重量%、ラジカル開始剤0.9〜5重量%及び前記導電性粒子1〜10重量%を含むことを特徴とする請求項11に記載の異方導電性フィルム。
【請求項13】
ポリウレタンビーズ、熱可塑性樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート単量体、ラジカル開始剤及び導電性粒子を含む異方導電性フィルム組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の異方導電性フィルム又は請求項13に記載の異方導電性フィルム組成物で製造された異方導電性フィルムを含む装置。

【公開番号】特開2012−140594(P2012−140594A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251728(P2011−251728)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】