説明

異方導電性フィルム

【課題】異方導電性フィルムを介して電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性を維持するとともに、絶縁抵抗の低下を防止し、電極のファインピッチ化に対応できる異方導電性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂フィルム30と、樹脂フィルム30に含有される導電性粒子6とを有する異方導電性フィルム2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5と、リジッド基板1の配線電極4が接続されている。導電性粒子6は、アスペクト比が5以上であり、かつ、長径Lの方向が樹脂フィルム30の厚み方向Xに配向されている。そして、絶縁性の樹脂粒子20が樹脂フィルム30に含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための異方導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(例えば、液晶製品における電子部品)内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える種々の電極接続用接着剤として、フィルム状の接着剤である異方導電性フィルムが広く使用されている。例えば、金メッキされた銅電極からなる金属電極が形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)と、ガラス基材、ガラスエポキシ基材等のリジッドな基材上にITO電極からなる配線電極が形成されたリジッド基板(PCB)の接合や、ICチップ等の電子部品とリジッド基板の接合、フレキシブル基板とプリント配線板の接合、およびフレキシブル基板同士の接合に使用されている。
【0003】
この異方導電性フィルムは、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂に導電性粒子を分散させた接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて、接続対象を接着する。即ち、加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動し、例えば、フレキシブルプリント配線板の表面に形成された銅電極と、リジッド基板の表面に形成されたITO電極の隙間を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する銅電極とITO電極の間に噛み込まれて電気的接続が達成される。
【0004】
また、この異方導電性フィルムにおいては、当該異方導電性フィルムの厚み方向に相対峙する、接続された電極間の抵抗(接続抵抗、または導通抵抗)を低くするという導通性能と、異方導電性フィルムの面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。そして、一般に、このような性能を有する異方導電性フィルムとして、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とし、金、銀、亜鉛、錫、半田、インジウム、パラジウム等の導電性粒子とマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−291220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般に、電極接続用接着剤である異方導電性フィルムを用いて電極間を電気的に接続する際には、上述のごとく、加熱、加圧により異方導電性フィルム中の熱硬化性樹脂を加熱溶融により流動させた後、当該熱硬化性樹脂を硬化させることにより、接着剤を固定して接着させるが、上記従来の異方導電性フィルムにおいては、熱硬化性樹脂の流動により、異方導電性フィルム中の導電性粒子の配向が乱れる場合がある。そうすると、電極間の接続に寄与する導電性粒子が減少し、電極間の接続信頼性が低下するという問題があった。
【0006】
また、電極間の接続信頼性の低下を防止するために、異方導電性フィルム中の導電性粒子の配合量を増やすことも考えられるが、この場合、上述の、配向が乱れた導電性粒子が増加するため、異方導電性フィルムの面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)が低下してしまい、絶縁性能が低下するという問題があった。
【0007】
従って、フレキシブルプリント配線板やリジッド基板においてファインピッチで形成された電極(最小ピッチが200μm以下の電極)間を確実に接続することが困難になり、電極のファインピッチ化に対応できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、異方導電性フィルムを介して電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性を維持するとともに、絶縁抵抗の低下を防止し、電極のファインピッチ化に対応できる異方導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有されるとともに、アスペクト比が5以上であり、かつ、長径方向が樹脂フィルムの厚み方向に配向された導電性粒子とを有する異方導電性フィルムであって、絶縁性の樹脂粒子が前記樹脂フィルムに含有されていることを特徴とする。
【0010】
同構成によれば、加熱、加圧により、樹脂フィルム中の熱硬化性樹脂が流動する際に、絶縁性の樹脂粒子により、長径方向が樹脂フィルムの厚み方向に配向された導電性粒子の配向の乱れを抑制することが可能になる。従って、例えば、異方導電性フィルムを介して、加熱加圧処理を行うことにより、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する際に、配線電極と金属電極間の接続信頼性の低下を防止することができるとともに、異方導電性フィルムの面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)の低下を効果的に抑制することが可能になる。その結果、フレキシブルプリント配線板やリジッド基板において、ファインピッチ(最小ピッチが200μm以下)で形成された配線電極と金属電極間を確実に接続することが可能になり、電極のファインピッチ化に対応することが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異方導電性フィルムであって、絶縁性の樹脂粒子がゴム状弾性を有するとともに、絶縁性の樹脂粒子の外周が、示差走査熱量測定(DSC)により測定した硬化物のガラス転移温度が25℃以上である樹脂により形成された樹脂層により被覆されていることを特徴とする。
【0012】
同構成によれば、絶縁性の樹脂粒子がゴム状弾性を有するため、絶縁性の樹脂粒子が配線電極と金属電極の間に噛み込まれた場合であっても、ゴム状弾性を有する絶縁性の樹脂粒子が変形し、配線電極と金属電極の電気的接続を確保することができる。また、ゴム状弾性を有する絶縁性の樹脂粒子が、当該絶縁性の樹脂粒子よりも硬い樹脂層により被覆されるため、異方導電性フィルムを用いて配線電極と金属電極を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子同士の凝集を効果的に抑制することができ、異方導電性フィルムにおける絶縁性の樹脂粒子の分散性を向上させることが可能になる。従って、配線電極と金属電極間の接続信頼性の低下を確実に防止することができるとともに、異方導電性フィルムの面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)が低下を確実に防止することが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の異方導電性フィルムであって、絶縁性の樹脂粒子の平均粒径が、導電性粒子の長径よりも小さいことを特徴とする。同構成によれば、異方導電性フィルムを用いて配線電極と金属電極を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子が配線電極と金属電極の間に噛み込まれるのを抑制することができる。従って、配線電極と金属電極の電気的接続が困難になるのを回避できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の異方導電性フィルムであって、絶縁性の樹脂粒子の平均粒径と前記樹脂層の厚みの合計が、前記導電性粒子の長径よりも小さいことを特徴とする。同構成によれば、異方導電性フィルムを用いて配線電極と金属電極を接続する際に、樹脂層により被覆された絶縁性の樹脂粒子が配線電極と金属電極の間に噛み込まれるのを抑制することができる。従って、配線電極と金属電極の電気的接続が困難になるのを回避できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の異方導電性フィルムであって、異方導電性フィルムの全体に対する絶縁性の樹脂粒子の配合量が、0.1重量%以上20重量%未満であることを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、導電性粒子の配向の乱れを抑制する効果、および絶縁抵抗の低下を防止する効果を十分に発揮した状態で、異方導電性フィルムの接着性を十分に発揮することが可能になる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の異方導電性フィルムであって、導電性粒子が、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることを特徴とする。同構成によれば、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子を配向させることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極のファインピッチ化に対応することができる異方導電性フィルムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る異方導電性フィルムにより、フレキシブルプリント配線板を実装したリジッド基板を示す断面図である。本実施形態の異方導電性フィルムを用いたフレキシブルプリント配線板等の配線板の実装方法としては、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有された導電性粒子を有する異方導電性フィルムを介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱可塑性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する。
【0020】
より具体的には、図1に示すように、ガラス基板やガラスエポキシ基板等のリジッド基板1上に、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルム30と、当該樹脂フィルム30に含有される導電性粒子6を有する異方導電性フィルム2を載置し、当該異方導電性フィルム2を所定の温度に加熱した状態で、リジッド基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、異方導電性フィルム2をリジッド基板1上に仮接着する。次いで、フレキシブルプリント配線板3を下向きにした状態で、リジッド基板1の表面に形成された配線電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された金属電極5との位置合わせをしながら、フレキシブルプリント配線板3を異方導電性フィルム2上に載置することにより、リジッド基板1とフレキシブルプリント配線板3との間に異方導電性フィルム2を介在させる。次いで、異方導電性フィルム2が所定の温度になるように、適切な温度に加熱された圧着部材であるプレスヘッド(不図示)を、フレキシブルプリント配線板3の上方に設置し、当該プレスヘッドをリジッド基板1の方向に移動させて、異方導電性フィルム2を所定の温度に加熱した状態で、フレキシブルプリント配線板3を介して、当該異方導電性フィルム2をリジッド基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、異方導電性フィルム2を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、異方導電性フィルム2は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該異方導電性フィルム2は、上述の温度にて加熱をすると、樹脂フィルム30を構成する熱硬化性樹脂が流動して、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した異方導電性フィルム2の硬化時間が経過すると、異方導電性フィルム2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、異方導電性フィルム2を介して、配線電極4と金属電極5を接続し、フレキシブルプリント配線板3をリジッド基板1上に実装する。
【0021】
本発明の金属電極5としては、例えば、フレキシブルプリント配線板3の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を、常法により、露光、エッチング、メッキ処理することにより形成された、金メッキが施された銅電極が使用される。また、配線電極4としては、例えば、上述の金メッキが施された銅電極や、リジッド基板1上に形成されたITO電極が使用される。なお、本実施形態においては、図1に示す、配線電極4のピッチP、および金属電極5のPの各々が、ファインピッチ(最小のピッチが200μm以下)となるように構成されている。
【0022】
また、本実施形態においては、異方導電性フィルム2として、図1、図2に示すように、導電性粒子6を含むものを使用する構成としており、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルム30中に導電性粒子6が分散されたものが使用できる。
【0023】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0024】
また、エポキシ樹脂の分子量は、異方導電性フィルム2に要求される性能を考慮して、適宜選択することができる。高分子量のエポキシ樹脂(即ち、上述のフェノキシ樹脂)を使用すると、フィルム形成性が高く、また、接続温度における樹脂の溶解粘度を高くでき、後述の導電性粒子の配向を乱すことなく接続できる効果がある。一方、低分子量のエポキシ樹脂を使用すると、架橋密度が高まって耐熱性が向上するという効果が得られる。また、加熱時に、上述の硬化剤と速やかに反応し、接着性能を高めるという効果が得られる。従って、平均分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と平均分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂とを組み合わせて使用することにより、性能のバランスが取れるため、好ましい。なお、高分子量エポキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂の配合量は、適宜、選択することができる。また、ここでいう「平均分子量」とは、THF展開のゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)から求められたポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
【0025】
そして、本実施形態においては、異方導電性フィルム2として、例えば、上述のエポキシ樹脂を主成分とする樹脂フィルム30中に、微細な金属粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する金属粉末により形成された導電性粒子6が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、図2に示す、導電性粒子6の短径(導電性粒子6の断面の長さ)Rと長径(導電性粒子6の長さ)Lの比のことを言う。
【0026】
また、この異方導電性フィルム2において、導電性粒子6の長径Lの方向を、異方導電性フィルム2を形成する時点で、樹脂フィルム30の厚み方向(または、異方導電性フィルム2の厚み方向)Xにかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向Xに配向させて用いる構成としている。このような配向にすることにより、樹脂フィルム30の面方向(厚み方向Xに直交する方向であって、図1の矢印Yの方向。異方導電性フィルム2の面方向)においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、厚み方向Xにおいては、多数の配線電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【0027】
また、本実施形態においては、導電性粒子6のアスペクト比を5以上とする構成としている。このような導電性粒子6を使用することにより、異方導電性フィルム2を使用する場合に、導電性粒子6間の接触確率が高くなる。従って、導電性粒子6の配合量を増やすことなく、配線電極4と金属電極5を電気的に接続することが可能になる。
【0028】
また、本発明に使用される金属粉末は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらを含む2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0029】
なお、導電性粒子6のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性粒子6の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子6は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性粒子6の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0030】
ここで、本実施形態における異方導電性フィルム2においては、図1、図3に示すように、樹脂フィルム30中に絶縁性の樹脂粒子20が含有されている点に特徴がある。このような構成により、加熱、加圧により樹脂フィルム30中の熱硬化性樹脂を加熱溶融により流動させた後、当該熱硬化性樹脂を硬化させることにより、異方導電性フィルム2を用いて配線電極4と金属電極5を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子20により、熱硬化性樹脂の流動による、長径Lの方向が樹脂フィルム30の厚み方向Xに配向された導電性粒子6の配向の乱れを抑制することが可能になる。従って、配線電極4と金属電極5間の接続に寄与する導電性粒子6が減少するのを効果的に抑制することが可能になり、多数の配線電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【0031】
また、本実施形態における異方導電性フィルム2においては、絶縁性の樹脂粒子20を含有しており、長径Lの方向が樹脂フィルム30の厚み方向Xに配向された導電性粒子6の配向の乱れを抑制することができるため、導電性粒子6により、樹脂フィルム30の面方向Yにおいて、隣り合う電極間(即ち、配線電極4間、および金属電極5間)が電気的に接続されるのを効果的に抑制することができる。従って、樹脂フィルム30の面方向Yに隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)の低下を防止することが可能になる。
【0032】
即ち、本実施形態における異方導電性フィルム2を使用することにより、配線電極4と金属電極5間の接続信頼性を維持するとともに、絶縁抵抗の低下を防止することができるため、フレキシブルプリント配線板3やリジッド基板1においてファインピッチで形成された配線電極4と金属電極5間を確実に接続することが可能になり、電極のファインピッチ化に対応することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態においては、絶縁性の樹脂粒子20として、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂粒子であって、25℃以上においてゴム状弾性を有するものを使用する構成としている。このような構成により、異方導電性フィルム2中の熱硬化性樹脂を加熱溶融により流動させ、硬化させることにより、配線電極4と金属電極5を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子20が配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれた場合であっても、ゴム状の弾性を有する絶縁性の樹脂粒子20が変形するため、配線電極4と金属電極5の電気的接続を確保することができる。
【0034】
なお、図3に示すように、絶縁性の樹脂粒子20の平均粒径Sを、導電性粒子6の長径(即ち、導電性粒子6の長さ)Lよりも小さく(即ち、S<L)することが好ましい。これは、加熱、加圧により異方導電性フィルム2中の熱硬化性樹脂を加熱溶融により流動させ、硬化させることにより、配線電極4と金属電極5を接続する際に、導電性粒子6が、配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれて電気的接続が達成されるが、絶縁性の樹脂粒子20の平均粒径Sが、導電性粒子6の長径L以上(即ち、S≧L)の場合は、絶縁性の樹脂粒子20が配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれ易くなり、配線電極4と金属電極5の電気的接続が困難になる場合があるため、これを回避するためである。
【0035】
また、図4に示すように、絶縁性の樹脂粒子20の外周を、示差走査熱量測定(DSC)により測定した硬化物のガラス転移温度が25℃以上である樹脂により形成された樹脂層21により被覆する構成としても良い。このような構成により、25℃以上においてゴム状弾性を有する絶縁性の樹脂粒子20が、当該絶縁性の樹脂粒子20よりも硬い樹脂層21により被覆されるため、加熱、加圧により異方導電性フィルム2中の熱硬化性樹脂を加熱溶融により流動させ、硬化させることにより、配線電極4と金属電極5を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子20同士の凝集を効果的に抑制することができる。従って、異方導電性フィルム2における絶縁性の樹脂粒子20の分散性を向上させることが可能になり、結果として、配線電極4と金属電極5間の接続信頼性の低下を確実に防止することができるとともに、絶縁抵抗の低下を確実に防止することが可能になる。
【0036】
なお、樹脂層21を形成する樹脂としては、絶縁性の樹脂粒子20との密着性が高いとともに、絶縁性が高い樹脂であれば特に限定されず、上述の絶縁性の樹脂粒子20を形成する樹脂と同様のものを使用することができる。より具体的には、例えば、絶縁性の樹脂粒子20としてアクリル樹脂を使用する場合は、アクリル樹脂により形成された樹脂層21を使用する構成とすれば良く、また、例えば、絶縁性の樹脂粒子20としてシリコーン樹脂を使用する場合は、シリコーン樹脂により形成された樹脂層21を使用する構成とすれば良い。
【0037】
また、この場合も、図4に示す絶縁性の樹脂粒子20の平均粒径Sと樹脂層21の厚みTの合計を、導電性粒子6の長径(即ち、導電性粒子6の長さ)Lよりも小さく(即ち、S+T<L)することが好ましい。このような構成により、異方導電性フィルム2を用いて配線電極4と金属電極5を接続する際に、樹脂層21により被覆された絶縁性の樹脂粒子20が配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれるのを抑制することができ、配線電極4と金属電極5の電気的接続が困難になるのを回避できる。
【0038】
また、異方導電性フィルム2の全体に対する絶縁性の樹脂粒子20の配合量を、0.1重量%以上20重量%未満とすることが好ましい。これは、絶縁性の樹脂粒子20の配合量が0.1重量%未満の場合は、上述の、長径Lの方向が樹脂フィルム30の厚み方向Xに配向された導電性粒子6の配向の乱れを抑制する効果、および絶縁抵抗の低下を防止する効果が十分に発揮されない場合があるためである。また、絶縁性の樹脂粒子20の配合量が20重量%以上の場合は、異方導電性フィルム2を加熱する際に、異方導電性フィルム2中の熱硬化性樹脂の流動性が低下し、異方導電性フィルム2の接着性が十分に発揮されない場合があるためである。
【0039】
また、本発明に使用される異方導電性フィルム2として、潜在性硬化剤を含有する接着剤を使用する構成としても良い。この潜在性硬化剤は、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤である。この潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第三級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0040】
また、これらの潜在性硬化剤中でも、低温での貯蔵安定性、および速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。なお、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂として、上述の平均分子量を有するエポキシ樹脂が含有されるものを使用する構成としても良い。
【0041】
また、特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立を図ることができるため、好ましい。従って、本実施形態においては、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を使用する構成としている。
【0042】
異方導電性フィルム2の作製方法としては、例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、絶縁性の樹脂粒子20、およびマイクロカプセル型潜在性硬化剤を所定の重量比の割合で配合した後、溶媒(例えば、2−エトキシエチルアセタート)に溶解して、分散させ、次いで、三本ロールによる混練を行い、所定の割合で導電性粒子6を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することにより導電性粒子6、および絶縁性の樹脂粒子20を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製する。そして、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、所定の磁束密度の磁場中、所定の乾燥温度(例えば、60℃)で乾燥、固化させることにより作製される。
【0043】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルム30を有する異方導電性フィルム2において、樹脂フィルム30に絶縁性の樹脂粒子20を含有する構成としている。従って、熱硬化性樹脂が流動する際に、絶縁性の樹脂粒子20により、長径Lの方向が樹脂フィルム30の厚み方向Xに配向された導電性粒子6の配向の乱れを抑制することが可能になるため、配線電極4と金属電極5間の接続信頼性の低下を防止することができるとともに、絶縁抵抗の低下を効果的に抑制することが可能になる。その結果、フレキシブルプリント配線板3やリジッド基板1において、ファインピッチで形成された配線電極4と金属電極5間を確実に接続することが可能になり、電極のファインピッチ化に対応することが可能になる。
【0044】
(2)本実施形態においては、絶縁性の樹脂粒子20がゴム状弾性を有するとともに、絶縁性の樹脂粒子20の外周を、示差走査熱量測定(DSC)により測定した硬化物のガラス転移温度が25℃以上である樹脂により形成された樹脂層21により被覆する構成としている。従って、絶縁性の樹脂粒子20が配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれた場合であっても、ゴム状の弾性を有する絶縁性の樹脂粒子20が変形するため、配線電極4と金属電極5の電気的接続を確保することができる。また、ゴム状弾性を有する絶縁性の樹脂粒子20が、当該絶縁性の樹脂粒子20よりも硬い樹脂層21により被覆されるため、異方導電性フィルム2を用いて配線電極4と金属電極5を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子20同士の凝集を効果的に抑制することができ、異方導電性フィルム2における絶縁性の樹脂粒子20の分散性を向上させることが可能になる。従って、配線電極4と金属電極5間の接続信頼性の低下を確実に防止することができるとともに、絶縁抵抗の低下を確実に防止することが可能になる。
【0045】
(3)本実施形態においては、絶縁性の樹脂粒子20の平均粒径Sが、導電性粒子6の長径Lよりも小さくなるように構成している。従って、異方導電性フィルム2を用いて配線電極4と金属電極5を接続する際に、絶縁性の樹脂粒子20が配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれるのを抑制することができ、配線電極4と金属電極5の電気的接続が困難になるのを回避できる。
【0046】
(4)本実施形態においては、絶縁性の樹脂粒子20の外周を樹脂層21により被覆する場合に、絶縁性の樹脂粒子20の平均粒径Sと樹脂層21の厚みTの合計が、導電性粒子6の長径Lよりも小さくなるように構成している。従って、異方導電性フィルム2を用いて配線電極4と金属電極5を接続する際に、樹脂層21により被覆された絶縁性の樹脂粒子20が配線電極4と金属電極5の間に噛み込まれるのを抑制することができ、配線電極4と金属電極5の電気的接続が困難になるのを回避できる。
【0047】
(5)本実施形態においては、異方導電性フィルム2の全体に対する絶縁性の樹脂粒子20の配合量を0.1重量%以上20重量%未満とする構成としている。従って、導電性粒子6の配向の乱れを抑制する効果、および絶縁抵抗の低下を防止する効果を十分に発揮した状態で、異方導電性フィルム2の接着性を十分に発揮することが可能になる。
【0048】
(6)本実施形態においては、導電性粒子6を、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかにより形成する構成としている。従って、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態においては、異方導電性フィルム2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5をリジッド基板1の配線電極4に接続する構成としたが、本発明の異方導電性フィルム2を、例えば、ICチップ等の電子部品の突起電極(または、バンプ)とリジッド基板1の配線電極4との接続に使用する構成としても良い。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0051】
(実施例1)
(接着剤の作製)
導電性粒子として、長径Lの平均が3μm、短径Rの平均が0.3μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。また、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂としては、2種類のビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔(1)ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、および(2)エピコート1007〕、および(3)ナフタレン型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロンHP4032D〕を使用した。また、マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、(4)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕を使用し、絶縁性の樹脂粒子としては、(5)アクリル樹脂により形成された樹脂層により被覆されたアクリル樹脂〔ガンツ化成(株)製、商品名スタフィロイドAC−3355〕を使用し、これら(1)〜(5)を重量比で(1)40/(2)40/(3)20/(4)35/(5)5の割合で配合した。なお、絶縁性の樹脂粒子として、樹脂粒子の長径と樹脂層の厚みの合計が0.5μmのものを使用した。
【0052】
これらのエポキシ樹脂、マイクロカプセル型潜在性硬化剤、および絶縁性の樹脂粒子を、2−エトキシエチルアセタートに溶解して、分散させた後、三本ロールによる混練を行い、固形分が50重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.1体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、Ni粉末の長径の方向がエポキシ樹脂を主成分とする樹脂フィルムの厚み方向に配向されるように、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させて、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ35μmの異方導電性フィルムを作成した。
【0053】
(接続信頼性評価)
まず、幅75μm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が75μm間隔で100個配列された(即ち、銅電極が150μmのピッチで配列された)フレキシブルプリント配線板と、幅75μm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が75μm間隔で100個配列された(即ち、銅電極が150μmのピッチで配列された)リジッド基板(ガラスクロスエポキシ基板)とを用意した。そして、このフレキシブルプリント配線板とリジッド基板の間に作製した異方導電性フィルムを挟み、200℃に加熱しながら、4MPaの圧力で15秒間加圧して接着させて実装し、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を得た。次いで、この接合体において、銅電極、および異方導電性接着剤を介して接続された連続する10個の電極の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を10で除することにより、1電極あたりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0054】
(絶縁性評価)
また、絶縁性評価として、まず、上述のフレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を用意し、2箇所の隣り合う電極間に15Vの直流電圧を60秒間、印加した後の抵抗を測定し、これを絶縁抵抗(以下、「初期絶縁抵抗」という。)とした。そして、絶縁抵抗が0.1TΩ以上の場合を、絶縁性が良好なものとして判断した。以上の結果を表1に示す。
【0055】
(耐熱・耐湿評価)
また、耐熱・耐湿試験として、上述のフレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に500時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接続抵抗(以下、「500時間後の接続抵抗」という。)の平均値を求めた。また、絶縁性評価として、まず、上述のフレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を用意し、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に500時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、絶縁抵抗(以下、「500時間後の絶縁抵抗」という。)を求めた。そして、500時間後の絶縁抵抗が1GΩ以上の場合を、絶縁性が良好なものとして判断した。以上の結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
絶縁性の樹脂粒子として、シリコーン樹脂により形成された樹脂層により被覆されたシリコーン樹脂〔信越化学工業(株)製、商品名KMP605〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性フィルムを作製し、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、絶縁性評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。なお、絶縁性の樹脂粒子として、樹脂粒子の長径と樹脂層の厚みの合計が2μmのものを使用した。
【0057】
(比較例1)
絶縁性の樹脂粒子を使用しなかったこと、および固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.5体積%となるように上記Ni粉末を添加したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性フィルムを作製し、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、絶縁性評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0058】
(比較例2)
絶縁性の樹脂粒子を使用しなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性フィルムを作製し、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、絶縁性評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、実施例1においては、初期接続抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、また、実施例2においては、初期接触抵抗と500時間後の接続抵抗が変化しておらず、接続信頼性が極めて良好であることが判る。また、実施例1,2においては、500時間後の絶縁抵抗が、初期絶縁抵抗に対して殆ど低下しておらず、絶縁抵抗の低下が効果的に抑制されていることが判る。これは、実施例1,2においては、絶縁性の樹脂粒子が熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする樹脂フィルムに含有されているため、エポキシ樹脂が流動する際に、絶縁性の樹脂粒子により、長径の方向が樹脂フィルムの厚み方向に配向された導電性粒子の配向の乱れが抑制されたためであると考えられる。
【0061】
一方、比較例1においては、表1に示すように、初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗は殆ど変化していないものの、500時間後の絶縁抵抗が、初期絶縁抵抗に対して著しく低下しており、絶縁性能が低下していることが判る。これは、比較例1においては、実施例1,2に比し、異方導電性フィルム中の導電性粒子の配合量を増やしたため、実施例1,2と同様に、接続信頼性が良好であったが、絶縁性の樹脂粒子が熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする樹脂フィルムに含有されていないため、エポキシ樹脂が流動する際に、導電性粒子の配向の乱れが生じ、導電性粒子の配合量が増えた分、絶縁抵抗が低下したためであると考えられる。
【0062】
また、比較例2においては、表1に示すように、500時間後の絶縁抵抗が、初期絶縁抵抗に対して殆ど低下していないものの、初期接触抵抗に比し、500時間後の接続抵抗が大きくなっており、接続信頼性が低下していることが判る。これは、比較例2においては、比較例1に比し、異方導電性フィルム中の導電性粒子の配合量が少なく、実施例1,2と同じ配合量であるため、実施例1,2と同様に、絶縁抵抗が良好であったが、絶縁性の樹脂粒子が熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする樹脂フィルムに含有されていないため、エポキシ樹脂が流動する際に、導電性粒子の配向の乱れが生じたためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例としては、電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための異方導電性フィルムが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る異方導電性フィルムにより、フレキシブルプリント配線板を実装したリジッド基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る異方導電性フィルムにおいて使用される導電性粒子を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係る異方導電性フィルムにおいて使用される絶縁性の樹脂粒子を説明するための図である。
【図4】図3に示す絶縁性の樹脂粒子の外周を樹脂層により被覆した状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0065】
1…リジッド基板、2…異方導電性フィルム、3…フレキシブルプリント配線板、4…配線電極、5…金属電極、6…導電性粒子、20…樹脂粒子、21…樹脂層、30…樹脂フィルム、L…導電性粒子の長径、S…樹脂粒子の平均粒径、T…樹脂層の厚み、X…樹脂フィルムの厚み方向、Y…樹脂フィルムの面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムに含有されるとともに、アスペクト比が5以上であり、かつ、長径方向が前記樹脂フィルムの厚み方向に配向された導電性粒子とを有する異方導電性フィルムであって、
絶縁性の樹脂粒子が前記樹脂フィルムに含有されていることを特徴とする異方導電性フィルム。
【請求項2】
前記絶縁性の樹脂粒子がゴム状弾性を有するとともに、前記絶縁性の樹脂粒子の外周が、示差走査熱量測定(DSC)により測定した硬化物のガラス転移温度が25℃以上である樹脂により形成された樹脂層により被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性フィルム。
【請求項3】
前記絶縁性の樹脂粒子の平均粒径が、前記導電性粒子の長径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の異方導電性フィルム。
【請求項4】
前記絶縁性の樹脂粒子の平均粒径と前記樹脂層の厚みの合計が、前記導電性粒子の長径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の異方導電性フィルム。
【請求項5】
前記異方導電性フィルムの全体に対する前記絶縁性の樹脂粒子の配合量が、0.1重量%以上20重量%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。
【請求項6】
前記導電性粒子が、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の異方導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−108158(P2009−108158A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280484(P2007−280484)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】