説明

異方導電性接着フィルム

【課題】微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)が起こりにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても電気的続が可能で、長期信頼性を与える接続が可能な、保存安定性の高い異方導電性接着フィルムの提供すること。
【解決の手段】導電粒子を表面層に単層に配置したバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の少なくとも片面に積層され、バインダー樹脂よりも180℃の溶融粘度が低い絶縁性接着剤よりなり、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.1以上0.4未満である異方導電性接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)が起こりにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても電気的接続が可能で、長期信頼性を与える接続が可能な、保存安定性の高い異方導電性接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性接着フィルムは、絶縁性接着剤中に導電粒子を分散させたフィルムであり、液晶ディスプレイと半導体チップやTCPとの接続又はFPCとTCPとの接続、FPCとプリント配線板との接続を簡便に行うために使用される接続部材で、例えば、ノート型パソコンや携帯電話の液晶ディスプレイと制御ICとの接続用として広範に用いられ、最近では、半導体チップを直接プリント基板やフレキシブル配線板に搭載するフリップチップ実装にも用いられている(特許文献1、2、3)。
【0003】
この分野では近年、接続される配線パターンや電極パターンの寸法が益々微細化されている。微細化された配線や電極の幅は10数μmレベルまで微細化される場合も多くなってきている一方で、これまで用いられてきた導電粒子の平均粒径は、配線や電極の線幅と同レベルの数μmから10μmレベルの粒子であった。そうすると、接続される電極パターンの寸法が小さくなると、導電粒子がランダムに分散配置されている異方導電性接着フィルムでは、導電粒子の分布に偏差が生じているため、接続すべき電極パターンが導電粒子の存在しない位置に配置されてしまい、電気的に接続されない場合が、確率論として避けられない。
【0004】
この問題点を解決するためには、より小さな導電粒子を高密度でフィルム内に分散させることが有効であるが、導電粒子の寸法を小さくすると、表面積が急激に大きくなって2次凝集し易くなり、隣接電極間の絶縁を保持できなくなり、逆に、絶縁を保持するために導電粒子の密度を下げると、今度は、接続されない配線パターンや電極パターンが発生してしまうため、接続信頼性を保ったまま微細化に対応することは困難とされていた(特許文献4)。
さらに、導電粒子を小粒径化すればするほど、用いる絶縁性接着剤によっては、絶縁抵抗が低くなったり、接続抵抗が高くなったり、隣接電極間でショートが発生したりといった長期接続信頼性が低下する場合が多くなることが判り、その対策が併せて求められていた。
【0005】
一方、微細パターンの接続に対応する技術として、粒子を配列する技術が提案されている。例えば、帯電させた導電粒子を絶縁性接着剤の表面に散布して、表面に付着した導電粒子を絶縁接着剤の表層中に埋め込む方法(特許文献5)や、所定配置された吸引孔を有する導電粒子吸着治具を用いて、導電粒子を配列し絶縁性接着剤に埋め込む方法(特許文献6)、延伸を利用して導電粒子を配列し、絶縁性接着剤に埋め込む方法(特許文献7)等が開示されていが、折角配列した導電粒子を、接続時の絶縁樹脂の流動に抗して、その配列状態を大きく崩す事無く接続するためには、使用できる電極や接続条件が限られており、実用上において大きな制約となっている。一方、接続時の導電粒子の流動を抑えることで、微細パターンの接続に対応しようとする試みがなされ、例えば、流動性の高い絶縁層と流動性の低い異方導電層よりなる技術が提案されている(特許文献8,9)が、元の導電粒子の配列具合が低いため、非常に微細な電極パターンの接続には対応できていないのが実情である。一方、配列具合が非常に高い場合は、導電粒子の配列ピッチにあった電極パターンの接続に対しては、高い接続性を示すものの、導電粒子の配列パターンと接続したい電極パターンが合っていない場合は、やはり接続信頼性が劣ることとなる。即ち、電極パターンの異なる複数の半導体チップを接続するためには、異なる種類の異方導電性接着フィルムを使用する必要があり、生産性において課題を有している。
【0006】
【特許文献1】特開平03-107888号公報
【特許文献2】特開平04-366630号公報
【特許文献3】特開昭61-195179号公報
【特許文献4】特開平09-312176号公報
【特許文献5】特開2000-151084号公報
【特許文献6】特開2002-332461号公報
【特許文献7】国際出願PCT/JP2004/017944号公報
【特許文献8】特開昭63-310581号公報
【特許文献9】特開2000-178511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)が起こりにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても電気的接続が可能で、長期信頼性を与える接続が可能な、保存安定性の高い異方導電性接着フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粒子間距離が特定の平均値と特定の変動係数を有する様に、導電粒子を表面層に単層に配置した特定のバインダー樹脂と、それより溶融粘度の低い特定の絶縁性接着剤よりなる異方導電性接着フィルムが上記目的に適合しうることを見出した。
上記課題を解決するために本願出願以前に行われた上記技術開示からは、単に導電粒子の配列性を制御し、高溶融粘度のバインダー樹脂に埋め込むと言う工夫だけで、上記課題を解決できたことは、確率論的な問題を内在させたままであった特許文献5や、膨大でしかも延々と数が増えつづける冶具を用意しなければならず、電気的接続工程の生産性向上にも限界があった特許文献6の技術開示に鑑みて、当業者にとって予想だにできなかった、驚くべき発見であった。
【0009】
即ち、本発明は、下記の通りである。
1) 導電粒子を表面層に単層に配置したバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の少なくとも片面に積層され、バインダー樹脂よりも180℃の溶融粘度が低い絶縁性接着剤よりなり、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.1以上0.4未満である異方導電性接着フィルム。
2)バインダー樹脂の180℃の溶融粘度が50Pa・s以上である上記1)記載の異方導電性接着フィルム。
3)絶縁性接着剤が潜在性硬化剤を用いた熱硬化性エポキシ樹脂系接着剤である上記1)あるいは2)に記載の異方導電性接着フィルム。
4)該導電粒子の平均粒径が0.5μm以上10μm未満である上記1)〜3)のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
5)粘着剤によって導電粒子が単層に固定された延伸可能なシートを延伸した後、導電粒子側に、バインダー樹脂を重ねてラミネートし、バインダー樹脂に導電粒子を埋め込むことを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の異方導電性接着フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異方導電性接着フィルムは、保存安定性が高く、微細面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、微細ピッチの接続性に優れると共に、異なる電極パターンの半導体チップ毎に異方導電性接着フィルムを替える必要がなく生産性に優れ、長期信頼性を与える接続を可能にする効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明は、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムに関する。
本発明の異方導電性接着フィルムは、導電粒子が表面層に単層に配置したバインダー樹脂が構成要素の1つである。
【0012】
ここで表面層に配置するとは、導電粒子の一部または全体がバインダーの表面に埋め込まれている状態を意味する。また、導電粒子の粒径よりもバインダー樹脂を薄くして、バインダー樹脂の上下に導電粒子が露出していても構わない。導電粒子の一部が埋め込まれている場合、導電粒子はその平均粒径に対して1/3以上がバインダー樹脂に埋め込まれていることでバインダー樹脂からの脱離が起こりにくくなり、接続不良を抑制する効果があり好ましい。更に好ましくは1/2以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは2/3以上埋め込まれていることである。一方、導電粒子がバインダー樹脂に完全に埋め込まれている場合、導電粒子とバインダー樹脂の表面との間のバインダー樹脂の厚みは、接続のための加圧の際に導電粒子の移動を抑えるために、導電粒子の平均粒径に対して1.0倍未満が好ましい。更に好ましくは0.8倍未満、更に好ましくは0.5倍未満、更に好ましくは0.3倍未満、更に好ましくは0.1倍未満である。本発明では、厚み方向の導電性と面方向の絶縁性(以下しばしば異方導電性と称す)を高レベルで確保するために、導電粒子はバインダー樹脂に単層で配置される。ここで、単層で配置されるとは、導電粒子の中心高さのバラツキが導電粒子の平均粒径に対して2倍未満であることを意味する。導電粒子の平均粒径に対する中心高さのバラツキは0に近いほど好ましく、好ましくは、1倍未満、更に好ましくは0.8倍未満、更に好ましくは0.6倍未満である。ここで、導電粒子の中心高さのバラツキとは、バインダー樹脂表面から導電粒子の中心までの距離の標準偏差であり、導電粒子の中心がバインダー樹脂に埋め込まれていない場合は、中心高さはその距離にマイナスをつけた値である。
【0013】
本発明では、導電粒子がバインダー樹脂の表面層に単層として存在することにより、特に、半導体チップと液晶パネルの接続の様に、接続する電極高さが高いものとほぼ平らなものとの接続において、配列した導電粒子が接続時に大きく移動してしまう事を抑制することが可能となっている。
【0014】
本発明の異方導電性接着フィルムは、導電粒子が特定の中心間距離で、更にその中心間距離が特定の変動係数を有して配列されることによって、高い異方導電性を有している。即ち、本発明の異方導電性接着フィルムは、その導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下であり、かつ、導電粒子の平均粒径の1.5倍以上5倍以下である。2μm以上の中心間距離でかつ導電粒子の平均粒径の1.5倍以上にすることで、面方向の絶縁性、即ち、隣接する電極間の絶縁性を高レベルで維持できる。一方、中心間距離を20μm以下でかつ導電粒子の平均粒径の5倍以下にすることで、厚さ方向の導電性、即ち接続電極間の電気的接続性を維持できる導電粒子密度を得ることができ、異方導電性接着フィルムとして高い性能を発揮する。導電粒子の中心間距離の平均は、好ましくは2.5μm以上18μm以下、更に好ましくは3μm以上16μm以下、更に好ましくは3.5μm以上15μm以下であり、更に好ましくは4μm以上13μm以下であり、導電粒子の平均粒径に対して、好ましくは1.55倍以上4.6倍以下、更に好ましくは1.6倍以上4.3倍以下、更に好ましくは1.65倍以上4.0以下である。導電粒子の中心間距離の変動係数は、導電粒子の中心間距離の標準偏差をその平均値で割った値であり、本発明においては、0.1以上0.4未満である。好ましくは0.11以上0.36未満、更に好ましくは0.12以上0.34未満、更に好ましくは0.13以上0.32未満、更に好ましくは0.14以上0.3未満である。変動係数を0.1以上にすることで、接続電極間の電気的接続性に悪影響する接続時の導電粒子の流動を起こすことなく、異なる電極パターンの半導体チップを安定に接続することが可能であり、一方、0.4未満とすることで、接続電極間に捕捉される導電粒子数の電極毎のバラツキを小さく抑えることができ、電極毎の接続抵抗のバラツキが小さく、安定した接続が得られる。
【0015】
本発明に用いられる導電粒子としては、金属粒子、炭素からなる粒子や高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子等を用いる事ができる。
金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の単体や、2種以上のこれらの金属が層状あるいは傾斜状に組み合わされている粒子が例示される。
【0016】
高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子としては、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン架橋体、NBR、SBR等のポリマーの中から1種あるいは2種以上組み合わせた高分子核材に、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の中から1種あるいは2種以上組み合わせてメッキ等により金属被覆した粒子が例示される。金属薄膜の厚さは0.005μm以上1μm以下の範囲が、接続安定性と粒子の凝集性の観点から好ましい。金属薄膜は均一に被覆されていることが接続安定性上好ましい。これら導電粒子の表面を更に絶縁被覆した粒子も使用することができる。
【0017】
導電粒子の平均粒径は、0.5μm以上10μm未満の範囲が粒子の凝集性と異方導電性の観点から好ましい。更に好ましくは1.0μm以上7μm未満、更に好ましくは1.5μm以上6μm未満、更に好ましくは2.0μm以上5.5μm未満、更に好ましくは2.5μm以上5.0μm未満である。導電粒子の粒子径の標準偏差は小さいほど好ましく、平均粒径の50%以下が好ましい。更に好ましくは20%以下、一層好ましくは、10以下、更に一層好ましくは5%以下である。
【0018】
本発明に用いられるバインダー樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選ばれた1種類以上の樹脂を含有する。これらの樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、SBR、SBS、NBR、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、スチレンブタジエン樹脂、カルボキシル変性ニトリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等又はそれらの変性樹脂が挙げられる。
【0019】
特に接続後の長期信頼性を必要とする場合には、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環族エポキサイド等があり、これらエポキシ樹脂はハロゲン化や水素添加されていても良く、また、ウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性されたエポキシ樹脂でも良い。
【0020】
バインダー樹脂にエポキシ樹脂が含有される場合、エポキシ樹脂の硬化剤を含有することが好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤は、貯蔵安定性の観点から、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤としては、ホウ素化合物、ヒドラジド、3級アミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、無機酸、カルボン酸無水物、チオール、イソシアネート、ホウ素錯塩及びそれらの誘導体等の硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤の中でも、マイクロカプセル型の硬化剤が好ましい。マイクロカプセル型硬化剤は、前記硬化剤の表面を樹脂皮膜等で安定化したもので、接続作業時の温度や圧力で樹脂皮膜が破壊され、硬化剤がマイクロカプセル外に拡散し、エポキシ樹脂と反応する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の中でも、アミンアダクト、イミダゾールアダクト等のアダクト型硬化剤をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤が安定性と硬化性のバランスに優れ好ましい。これらエポキシ樹脂の硬化剤は一般に、エポキシ樹脂100質量部に対して、0〜100質量部の量で用いられる。
【0021】
本発明に用いられるバインダー樹脂は、接続時に導電粒子が移動して、接続電極間に捕捉される導電粒子数が減少することを抑制するために、接続条件下において、流動性の低い特性を有することが求められ、更に、長期接続信頼性を加味すると、フェノキシ樹脂を含有することが好ましい。
ここで用いられるフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAビスフェノールF混合型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAビスフェノールS混合型フェノキシ樹脂、フルオレン環含有フェノキシ樹脂、カプロラクトン変性ビスフェノールA型フェノキシ樹脂等が例示される。
【0022】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は2万以上10万未満が好ましい。
本発明に用いられるバインダー樹脂としてはフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂とを併用することが好ましく、その場合、フェノキシ樹脂の使用量は、バインダー樹脂全体に対して50質量%以上用いることが好ましい。更に好ましくは、55質量%以上95質量%未満、一層好ましくは60質量%以上90質量%未満である。
バインダー樹脂には、さらに、絶縁粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。絶縁粒子や充填剤を含有する場合、これらの最大径は導電粒子の平均粒径未満である事が好ましい。カップリング剤としてはケチミン基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有シランカップリング剤が、接着性の向上の点から好ましい。
【0023】
バインダー樹脂の各成分を混合する場合、必要に応じ、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
バインダー樹脂の製造は、例えば、各成分を溶剤中で混合、塗工液を作成し、基材上にアプリケーター塗装等により塗工、オーブン中で溶剤を揮散させる事で製造できる。
バインダー樹脂は接続時に導電粒子の流動を抑制する働きがあるため、接続条件下において、流動性が低い必要があり、180℃での溶融粘度は50Pa・s以上が好ましい。更に好ましくは、65Pa・s以上2万Pa・s未満、一層好ましくは80Pa・s以上1万Pa・s未満である。溶融粘度が高くなり過ぎると、バインダー層に導電粒子を埋め込む際に、高い温度が必要となり、製造の難易度が高くなる。
【0024】
尚、ここで、バインダー樹脂が熱硬化性樹脂の場合、その溶融粘度はバインダー樹脂から硬化剤を除去した、あるいは、硬化剤が未配合の状態での溶融粘度を指す。
バインダー樹脂の膜厚は導電粒子の平均粒径と同等あるいはそれ未満であることが好ましい。好ましくは、導電粒子の平均粒径の10%以上200%未満、更に好ましくは20%以上170%未満、一層好ましくは25%以上140%未満である。
バインダー樹脂の膜厚は、低い接続抵抗を得易いため、導電粒子の平均粒径未満であることが好ましく、その場合、膜の上下に導電粒子が露出していることが低い接続抵抗を得る上で更に好ましい。
【0025】
本発明の異方導電性接着フィルムは、導電粒子が配置されたバインダー樹脂の少なくとも片面に絶縁性接着剤が積層されている。
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選ばれた1種類以上の樹脂を含有する。これらの樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、SBR、SBS、NBR、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、スチレンブタジエン樹脂、カルボキシル変性ニトリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等又はそれらの変性樹脂が挙げられる。
【0026】
特に接続後の長期信頼性を必要とする場合には、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環族エポキサイド等があり、これらエポキシ樹脂はハロゲン化や水素添加されていても良く、また、ウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性されたエポキシ樹脂でも良い。
【0027】
絶縁性接着剤にエポキシ樹脂が含有される場合、エポキシ樹脂の硬化剤を含有することが好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、貯蔵安定性の観点から、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤としては、ホウ素化合物、ヒドラジド、3級アミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、無機酸、カルボン酸無水物、チオール、イソシアネート、ホウ素錯塩及びそれらの誘導体等の硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤の中でも、マイクロカプセル型の硬化剤が好ましい。マイクロカプセル型硬化剤は、前記硬化剤の表面を樹脂皮膜等で安定化したもので、接続作業時の温度や圧力で樹脂皮膜が破壊され、硬化剤がマイクロカプセル外に拡散し、エポキシ樹脂と反応する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の中でも、アミンアダクト、イミダゾールアダクト等のアダクト型硬化剤をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤が安定性と硬化性のバランスに優れ好ましい。これらエポキシ樹脂の硬化剤は一般に、エポキシ樹脂100質量部に対して、2〜100質量部の量で用いられる。
【0028】
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和製等を付与する目的で、フェノキ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルゴム、SBR、NBR、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、尿素樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、カルボキシル基、ヒドロシキシル基、ビニル基、アミノ基などの官能基を含有するゴム、エラストマー類等の高分子成分を含有することが好ましい。これら高分子成分は分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。高分子成分の含有量は、絶縁性接着剤全体に対して2〜80質量%が好ましい。
【0029】
これら高分子成分としては、長期接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。
ここで用いられるフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAビスフェノールF混合型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAビスフェノールS混合型フェノキシ樹脂、フルオレン環含有フェノキシ樹脂、カプロラクトン変性ビスフェノールA型フェノキシ樹脂等が例示される。
ここで用いられるフェノキシ樹脂の重量平均分子量は2万以上10万未満が好ましい。
本発明に用いられる絶縁性接着剤としては、貯蔵安定性が高く、接続信頼性の高い、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤を含有する熱硬化性のエポキシ樹脂系接着剤が好ましい。フェノキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂系接着剤が更に好ましい。その場合、フェノキシ樹脂の使用量は、絶縁性接着剤全体に対して50質量%未満が好ましい。更に好ましくは、20質量%以上46質量%未満、一層好ましくは30質量%以上44質量%未満である。
【0030】
絶縁性接着剤には、さらに、絶縁粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。絶縁粒子や充填剤を含有する場合、これらの最大径は導電粒子の平均粒径未満である事が好ましい。更に、絶縁性接着剤に絶縁性を阻害しない範囲で、例えば、帯電防止を目的に導電粒子が含有していても構わない。
カップリング剤としてはケチミン基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有シランカップリング剤が、接着性の向上の点から好ましい。
絶縁性接着剤の各成分を混合する場合、必要に応じ、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0031】
絶縁性接着剤の製造は、例えば、各成分を溶剤中で混合、塗工液を作成し、基材上にアプリケーター塗装等により塗工、オーブン中で溶剤を揮散させる事で製造できる。
絶縁性接着剤は接続時に流動して接続領域を封止する働きがあるため、接続条件下において、流動性が高い必要がある。流動性の高さは、バインダー樹脂の流動性との相対値が重要であり、180℃での溶融粘度がバインダー樹脂よりも低い必要がある。好ましくは、バインダー樹脂粘度の50%未満であり、更に好ましくは25%未満であり、一層好ましくは15%未満であり、更に一層好ましくは10%未満である。
絶縁性接着剤の180℃での溶融粘度の好ましい範囲は、1Pa・s以上100Pa・s未満である。更に好ましくは2Pa・s以上50Pa・s未満、一層好ましくは4Pa・s以上30Pa・s未満である。溶融粘度が高すぎると接続時に高い圧力が必要となり、一方、溶融粘度が低い場合は、使用前の変形を抑えるために低温で貯蔵する必要が発生する。
【0032】
尚、ここで、絶縁性接着剤が熱硬化性樹脂の場合、その溶融粘度は絶縁性接着剤から硬化剤を除去した、あるいは、硬化剤が未配合の状態での溶融粘度を指す。
絶縁性接着剤はバインダー樹脂の片面のみに形成しても構わないし、両面に形成しても構わない。異方導電性接着フィルムの仮貼り付け性を向上させるために、両面に形成した方が好ましい。
絶縁性接着剤をバインダー樹脂の両面に積層する場合、それぞれの面の絶縁性接着剤は同じでも良いし、異なっていても良い。異なっている方が、被接続部材にあった配合にできる一方で、2種類の配合を用意する必要が発生する。
【0033】
絶縁性接着剤をバインダー樹脂の両面に形成する場合、接続時の加圧による導電粒子の移動を抑えるため、導電粒子は異方導電性接着フィルムの片側の表面からあまり内部に入らないことが好ましく、導電粒子の中心位置が異方導電性接着フィルムの片側の表面から導電粒子の平均粒径の2.0倍未満に位置することが好ましい。更に好ましくは1.5倍未満、更に好ましくは1.0倍未満、更に好ましくは0.8倍未満である。一方、0.5倍未満では導電粒子は異方導電性接着フィルムから露出している事になり、露出する良が多くなると、異方導電性接着フィルムの仮貼り付け性が低下したり、導電粒子の欠落の原因となったりするため、0.1倍以上が好ましい。更に好ましくは0.2倍以上であり、一層好ましくは0.3倍以上である。
【0034】
絶縁性接着剤の膜厚は合計で4μm以上50μm未満が好ましい。更に好ましくは5μm以上30μm未満、更に好ましくは6μm以上25μm未満、更に好ましくは7μm以上22μm未満である。
絶縁性接着剤の膜厚の合計は、バインダー樹脂の膜厚の2倍以上100倍以下が好ましく、更に好ましくは3倍以上〜75倍以下、更に好ましくは4倍以上50倍以下、更に一層好ましくは5倍以上30倍以下である。
本発明の異方導電性接着フィルムの厚みは、5μm以上50μm以下が好ましく、更に好ましくは6μm以上35μm以下、更に好ましくは7μm以上25μm以下、更に好ましくは8μm以上22μm以下である。
【0035】
本発明の異方導電性接着フィルムは、剥離シート上に形成されていてもよい。該剥離シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のフィルムが例示される。好ましい剥離シート用の樹脂としては、ポリプロピレン、PETが挙げられる。該剥離シートはフッ素処理、シリコーン処理、アルキド処理等の表面処理を行っていることが好ましい。
【0036】
本発明の異方導電性接着フィルムは例えば下記の様な方法で製造される。
即ち、まず、単層で配列した導電粒子を粘着剤でシート上に固定した導電粒子の配列シートを製造する。配列シートを製造するには、例えば、延伸可能なシート上に粘着剤を好ましくは、導電粒子の平均粒径以下の膜厚になる様に塗布し、その上に導電粒子を充填する。その後粘着剤層に到達していない導電粒子をエアーブロー等により排除することで導電粒子が密に充填された単層の導電粒子層が形成される。必要に応じ、単層に配置した導電粒子は粘着剤に埋め込まれる。このときの全面積に対する導電粒子の投影面積の割合で定義される充填率は、好ましくは60%以上90%以下である。より好ましくは65%以上88%以下、更に好ましくは68%以上85%以下である。充填率は本発明において重要な因子である導電粒子の中心間距離の変動係数に大きく影響する。
【0037】
次に、ここで得られた導電粒子が固定されたシートを、所望の延伸倍率で延伸することで、個々の導電粒子が、本発明に必要な変動係数をもって、所望の中心間距離となる様に配置された導電粒子の配列シートが得られる。
延伸可能なシートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のシートが例示される。粘着剤としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、クロロプレン等が例示される。
【0038】
延伸は縦方向延伸と横方向延伸の両方が行われる、所謂、2軸延伸であり、公知の方法で実施することができる。例えば、クリップ等でフィルムの2辺または4辺を挟んで引っ張る方法や、2本以上のロールで挟んでロールの回転速度を変えることで延伸する方法等が挙げられる。延伸は縦方向と横方向を同時に延伸する同時二軸延伸でも良いし、一方向を延伸した後、他方を延伸する逐次ニ軸延伸でも良い。延伸時の導電粒子の配列乱れを起こし難いので同時ニ軸延伸が好ましい。延伸を精度良く行うために、延伸可能なフィルムを軟化させて行うのが好ましく、使用する延伸可能なシートによるが、例えば、70℃以上250℃未満で延伸を行うのが好ましい。更に好ましくは75℃以上200℃未満であり、一層好ましくは、80℃以上160℃未満であり、更に一層好ましくは85℃以上145℃未満である。延伸温度が高すぎると粘着剤の粘着力が低下して、導電粒子の配列が乱れてしまい、導電粒子の中心間距離の変動係数が大きくなってしまう。
【0039】
次に、配列シートの導電粒子側に、バインダー樹脂を重ね、バインダー樹脂に導電粒子を埋め込む。埋め込む方法としては、例えば、フィルム状のバインダー樹脂を、配列シートの導電粒子側に重ねてラミネートし、熱ロ−ル等を用いて導電粒子を埋め込む方法が挙げられる。
バインダー樹脂は、導電粒子を埋め込む面と反対の面に先に絶縁性接着剤を貼り合わせておいても良いし、導電粒子を埋め込んだ後に、導電粒子を埋め込んだ面と反対のバインダー樹脂面に絶縁性接着剤をラミネート等で貼り合わせても良い。
配列シートの延伸可能なシートと粘着剤はバインダーに埋め込まれた導電粒子から剥離される。必要に応じ、導電粒子が埋め込まれたバインダー樹脂面に別の絶縁性接着剤をラミネートされる。
【0040】
本発明において、導電粒子の埋め込みは、極力低温で実施することが好ましい。特にバインダー樹脂あるいは絶縁性接着剤が潜在性硬化剤を含む熱硬化性樹脂の場合、高い温度で埋め込むと、硬化反応の進行を抑制するために低温貯蔵が必要となる。しかし温度が低ければ、バインダー樹脂の粘度が高いために埋めこみは困難となる。
導電粒子の埋め込み温度は、35℃以上120℃以下が好ましい。更に好ましくは、40℃以上100℃以下、一層好ましくは45℃以上80℃以下である。
【0041】
バインダー樹脂に導電粒子を埋め込む場合、延伸可能なシートと粘着剤を導電粒子が埋め込まれたバインダー樹脂から剥離した後に、弾性率の高いフィルムを導電粒子側に重ねて、熱ロール等を用いて更に導電粒子をバインダー樹脂内に埋め込むことが好ましい。弾性率が高いフィルムとしては、例えば、アラミドフィルム等が例示される。
導電粒子のバインダー樹脂への埋め込みが不十分の場合、導電粒子が使用前にバインダー樹脂から欠落し、接続不良の原因となる。
【0042】
上記方法等によって、本発明の異方導電性接着フィルムが得られる。一般に異方導電性接着フィルムは、所望の幅にスリットされ、リール状に巻き取られる。
このようにして製造された本発明の異方導電性接着フィルムは、線幅が10数μmクラスのファインピッチ接続用に好適に用いることができ、液晶ディスプレイとTCP、TCPとFPC、FPCとプリント配線基板との接続、あるいは、半導体シリコンチップを直接基板に実装するフリップチップ実装に好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
a.溶融粘度測定
HAAKE社製、RHeoStress600 Thermoを用い、20mm径のコーン(PP20H)を用いて180℃で測定した。
【0044】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(InChem社製、商品名:PKHC,重量平均分子量43000)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)50質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュア)15質量部(液状エポキシ樹脂は10質量部含有)、シランカップリング剤(日本ユニカー社製、商品名A−187)0.25質量部、酢酸エチル300質量部を混合し、バインダーワニスを得た。このバインダーワニスを離型処理した50μmのPETフィルム製剥離シート上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、膜厚4μmのフィルム状のバインダー樹脂Aを得た。別途マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物15質量部に替えて、液状エポキシ樹脂10質量部を配合して同様に作成したバインダー樹脂の溶融粘度を測定、バインダー樹脂Aの180℃溶融粘度は、78.4Pa・sであった。
【0045】
フェノキシ樹脂(InChem社製、商品名:PKHC,重量平均分子量43000)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)90質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュア)60質量部(液状エポキシ樹脂は40質量部含有)、シランカップリング剤(日本ユニカー社製、商品名A−187)0.25質量部、酢酸エチル200質量部を混合し、接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを離型処理した50μmのPETフィルム製剥離シート上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、膜厚15μmのフィルム状の絶縁性接着剤Aを得た。別途マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物60質量部に替えて、液状エポキシ樹脂40質量部を配合して同様に作成した絶縁性接着剤の溶融粘度を測定、絶縁性接着剤Aの180℃溶融粘度は、11.6Pa・sであった。
【0046】
100μm無延伸共重合ポリプロピレンフィルム上にブレードコーターを用いて酢酸エチルで樹脂分5質量%に希釈したアクリルポリマーを塗布、80℃で10分間乾燥し、厚さ2μmの粘着剤層を形成した。ここで用いたアクリルポリマーは、アクリル酸メチル62質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル30.6質量部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル7質量部を酢酸エチル233質量部中で、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を開始剤とし、窒素ガス気流中65℃で8時間重合して得られた重量平均分子量が95万のものである。尚、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)により測定した。
【0047】
この粘着剤剤上に、平均粒径3μmの導電粒子を一面に充填し、エアーブローにより粘着剤に到達していない導電粒子を排除した。その結果、充填率が70%の単層導電粒子層が形成された。ここで導電粒子はジビニルベンゼン系樹脂をコアとし、その表層に無電解メッキで0.07μmのニッケル層を形成し、更に電気メッキで0.04μmの金層を形成した、長軸に対する短軸の比が0.95、粒径の標準偏差が0.2μmのものを用いた。
次に、この導電粒子が粘着剤によって固定されたポリプロピレンフィルムを、試験用二軸延伸装置を用いて、135℃で、縦横共に10%/秒の比率で3.8倍まで延伸し、徐々に室温まで冷却し、配列シートAを得た。
【0048】
配列シートAの導電粒子側にバインダー樹脂Aを重ね、55℃、0.3MPaの条件でラミネートを行った。更に、バインダー樹脂に積層されていた剥離シートを剥離した後、導電粒子を埋め込んだ面と反対のバインダー樹脂面に絶縁性接着剤Aを重ねて、同じ条件でラミネートを行った。次に、配列シートAのポリプロピレンフィルムと粘着剤を、導電粒子を埋め込んだバインダー樹脂面から剥離した。その一部をサンプリングして、レーザー顕微鏡(キーエンス社製,商品名VK−9500、以下同じ)を用いて導電粒子の埋め込み深さを観察した所、導電粒子が2.25μmバインダー樹脂から露出しており、ハンドリング途中に粒子の欠落が観察された。
【0049】
次に、導電粒子が埋め込まれたバインダー樹脂面に、16μmのアラミドフィルム(帝人社製、商品名アラミカ、弾性率15Gpa)を離型剤で処理したフィルムを重ねて、60℃、1.0Mpaの条件で熱ロールによる導電粒子の埋め込みを実施後、アラミドフィルムを剥離して、異方導電性接着フィルムAを得た。
【0050】
得られた異方導電性接着フィルムAの導電粒子の埋め込み深さを測定した所、バインダー樹脂からの露出は平均0.1μmであり、その埋め込み深さは導電粒子の平均粒径の97%に相当した。また、露出量より算出される、導電粒子の中心高さのバラツキは0.5μm未満であった。更に、異方導電性接着剤Aをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX-100、以下同じ)で観察した結果、バインダー樹脂Aの表面層に導電粒子が単層で配置され、またマイクロスコープで得られた画像から、画像処理ソフト(旭化成株式会社製、商品名:A像くん、以下同じ)を用いて、導電粒子の中心間距離の平均値およびその変動係数を求めた結果、平均値が11.9μm、変動係数が0.34であった。尚、導電粒子の中心間距離は、各粒子の中心点を用いたデローニ三角分割でできる三角形の辺の長さを使用し、導電粒子の観察は0.06mm内の粒子について行った。
【0051】
次に、20μm×100μmの金バンプがピッチ30μmで並んだベアチップ1、15μm×100μmの金バンプがピッチ30μmで並んだベアチップ2、13μm×150μmの金バンプがピッチ25μmで並んだベアチップ3とそれぞれのベアチップに対応した接続ピッチを有するITOガラス基板を準備し、異方導電性接着フィルムAを、3種類のITOガラス基板に70℃、5Kg/cm、2秒間の条件で熱圧着し、剥離シートを剥がした後、それぞれのITOガラス基板に対応するベアチップをフリップチップボンダー(東レエンジニアリング株式会社製FC2000、以下同じ)を用いて位置合わせをし、コンスタントヒートで2秒後に180℃に到達し、その後一定温度となる条件で30Kg/cm、20秒間加熱加圧し、ベアチップをITOガラス基板に接続した。
【0052】
それぞれのベアチップとITOガラス基板からは、64箇所の接合部を有するデイジーチェーン回路と、20対の櫛を有する櫛形電極が形成され、接続抵抗測定と絶縁抵抗測定を行った。3種類のベアチップとITOガラス電極よりなる回路のすべてにおいて、デイジーチェーン回路は導通がとれすべての接続が行われていることを示した。一方、櫛形電極の絶縁抵抗は10Ω以上であり、隣接電極間でショートの発生はなかった。更に、5℃で6か月保存した異方導電性接着フィルムAを用いて、上記と同様にベアチップ1とITOガラス基板の接続を行った結果、問題なく接続が行えた。
【0053】
[実施例2]
フェノキシ樹脂(InChem社製、商品名:PKHC,重量平均分子量43000)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)35質量部、酢酸エチル300質量部を混合し、バインダーワニスを得た。このバインダーワニスを離型処理した50μmのPETフィルム製剥離シート上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、膜厚1.5μmのフィルム状のバインダー樹脂Bを得た。バインダー樹脂Bの180℃溶融粘度を測定した結果、280Pa・sであった。
【0054】
実施例1で用いた絶縁性接着剤の膜厚のみ変えたフィルムを50μmのPETフィルム製剥離シート上に形成し、膜厚1μmの絶縁性接着剤Bを得た。
導電粒子の充填率を82%とし、延伸倍率を2.5倍とした以外は実施例1と同様にして配列シートを作成し、配列シートBを得た。
【0055】
バインダー樹脂Bと絶縁性接着剤Aを50℃、0.1MPaでラミネートし、バインダー樹脂B側の剥離シートを剥離した。次に、配列シートBの導電粒子側をバインダー樹脂Bに重ね、55℃、0.3Mpaの条件でラミネートを行った。次に、導電粒子が埋め込まれたバインダー樹脂面に、16μmのアラミドフィルム(帝人社製、商品名アラミカ、弾性率15Gpa)を離型剤で処理したフィルムを重ねて、60℃、1.0Mpaの条件で熱ロールによる導電粒子の埋め込みを実施後、アラミドフィルムを剥離して、実施例1と同様に導電粒子の埋め込み深さを測定した結果、バインダー樹脂からの露出は0.8μmであり、導電粒子はバインダー樹脂を通り越えて、一部が絶縁性接着剤層に達していることが判った。また、露出量より算出される、導電粒子の中心高さのバラツキは0.5μm未満であった。更に、導電粒子が露出した側に絶縁性接着剤Bを重ねて55℃、0.3Mpaの条件でラミネートを行い、異方導電性接着フィルムBを得た。
【0056】
得られた異方導電性接着フィルムBの外観を実施例1と同様に観察した所、導電粒子は、バインダー樹脂からの露出はなく、導電粒子は単層で配置され、導電粒子の中心間距離の平均値は8.3μm、その変動係数が0.17であった。
次に実施例1と同様にして、3種類のベアチップとITOガラス接続を、異方導電性接着フィルムBを用いて実施し、実施例1と同様にして接続抵抗測定と絶縁抵抗測定を行った結果、何れのベアチップとITOガラスの接続も、デイジーチェーン回路は導通がとれすべての接続が行われていることを示した。しかもその導通抵抗(配線抵抗を含む)は実施例1よりも低い抵抗を示していた。一方、櫛形電極の絶縁抵抗は10Ω以上であり、隣接電極間でショートの発生はなかった。
【0057】
[比較例1]
粘着剤を塗布した無延伸共重合ポリプロピレンフィルム上への、導電粒子の充填密度を下げた以外は実施例1と同様にして異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、外観観察と、導電粒子の中心間距離の測定を行った結果、導電粒子は、バインダー樹脂から0.1μm露出して、単層で配置され、導電粒子の中心間距離の平均値は12.6μm、その変動係数は0.48であった。更に、実施例1と同様にして、接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した結果、何れのデイジーチェーン回路も電流が流れず接続不良が観察された。また、ベアチップ3とITOガラスからなる櫛型電極間の絶縁抵抗が10Ω未満となり、ショートの発生が観察され、ファインピッチ用途には適さなかった。
【0058】
[比較例2]
粘着剤を塗布した無延伸共重合ポリプロピレンフィルム上への導電粒子の充填率を上げた以外は実施例1と同様にして異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、外観観察と、導電粒子の中心間距離の測定を行った結果、導電粒子は、バインダー樹脂から0.1μm露出して、単層で配置され、導電粒子の中心間距離の平均値は11.7μm、その変動係数は0.06であった。更に、実施例1と同様にして、接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した結果、絶縁抵抗測定値には問題がなかったが、ベアチップ3とITOガラスからなるデイジーチェーン回路は、電流が流れず接続不良が観察された。比較例2で使用した異方導電性接着フィルムは、導電粒子の中心間距離の変動係数が小さ過ぎるために、導電粒子の中心間距離の平均値に近い電極幅を用いた回路において、導電粒子の介在しない接続部ができ、接続不良による不具合が発生した。
【0059】
[比較例3]
実施例1で作成した配列シートAの導電粒子側に、絶縁性接着剤Aを重ねて、55℃、0.3MPaの条件でラミネートを行った。その後、実施例1でバインダー樹脂に導電粒子を埋め込んだのと同様の方法で導電粒子を絶縁性接着剤に埋め込み、異方導電性接着フィルムを得、実施例1と同様にして、外観観察と、導電粒子の中心間距離の測定を行った結果、導電粒子は、絶縁性接着剤からの露出はなく、単層で表面層に配置され、導電粒子の中心間距離の平均値は11.9μm、その変動係数は0.36であった。更に、実施例1と同様にして、接続抵抗測定および絶縁抵抗測定を実施した結果、ベアチップ2とITOガラスからなるデイジーチェーン回路は、電流が流れず接続不良が観察され、ベアチップ3とITOガラスからなる櫛型電極間の絶縁抵抗が10Ω未満となり、ショートの発生が観察された。
【0060】
比較例3で使用した異方導電性接着フィルムは、バインダー樹脂が含まれていないため、接続時に導電粒子が移動してしまい、導電粒子の介在しない接続部ができ、接続不良が発生し、また一方で、電極間の導電粒子の滞留が発生し絶縁破壊が起こる場合もあった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の異方導電性接着フィルムは、保存安定性が高く、微細面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、微細ピッチの接続性に優れると共に、異なる電極パターンの半導体チップ毎に異方導電性接着フィルムを替える必要がなく生産性に優れ、長期に渡り接続安定性を保持でき、微細パターンの電気的接続用途において好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子を表面層に単層に配置したバインダー樹脂と、該バインダー樹脂の少なくとも片面に積層され、バインダー樹脂よりも180℃の溶融粘度が低い絶縁性接着剤よりなり、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方導電性接着フィルムにおいて、導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.1以上0.4未満である異方導電性接着フィルム。
【請求項2】
バインダー樹脂の180℃の溶融粘度が50Pa・s以上である請求項1記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項3】
絶縁性接着剤が潜在性硬化剤を用いた熱硬化性エポキシ樹脂系接着剤である請求項1あるいは2に記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項4】
該導電粒子の平均粒径が0.5μm以上10μm未満である請求項1〜3のいずれかに記載の異方導電性接着フィルム。
【請求項5】
粘着剤によって導電粒子が単層に固定された延伸可能なシートを延伸した後、導電粒子側に、バインダー樹脂を重ねてラミネートし、バインダー樹脂に導電粒子を埋め込むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の異方導電性接着フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−217503(P2007−217503A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38041(P2006−38041)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】