説明

異方導電性接着剤

【解決手段】 接着剤成分と導電性粒子を含み、熱重合性及び放射線重合性を有することを特徴とする異方導電性接着剤。
【効果】 本発明の異方導電性接着剤は、熱と光で硬化させることから未硬化部分が全く存在せず、接着性や導電性を損なうことなく微細な電極の腐食を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な回路同士の接続等に用いることができる上、耐湿信頼性に優れた異方導電性接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、微細な回路同士の接続、液晶配線基板とドライバーICの接続などに異方導電性接着剤あるいはフィルムが広く用いられている。中でも、液晶表示モジュールで液晶表示のためのドライバーICとガラス製の表示パネルの電極部の接続は、異方導電性接着剤あるいはフィルムを挟んで熱圧着することによってなされている。
【0003】
この異方導電性接着剤及びフィルムは接着剤成分中に導電性粒子が分散されたペースト状の液状樹脂あるいはフィルム状の接着剤である。この接着フィルムなどを対向した電極間に配置し、加圧,加熱することで導電性粒子が対向した電極同士を接続する。一方、隣接した電極回路間には絶縁性を付与するものである。
【0004】
最近では、液晶表示装置の表示高性能化に伴い隣接する電極間のピッチが益々微細化する傾向にある。通常では100〜200μmのピッチ間隔が50μm以下となるといわれている。このような微細なピッチ間隔の接続を行う場合、ガラス製の電極部とTCP(Tape Carrier Package)と呼ばれるフレックス回路状のドライバーIC電極部の膨張係数が異なることから接続時の温度により対向する回路の位置ずれが発生し、正確に接続することができなくなってきている。
【0005】
また、従来の異方導電性接着剤やフィルムにおいては、ガラス製の電極部とTCP(Tape Carrier Package)と呼ばれるフレックス回路状のドライバーIC電極部を加熱接続しているが、一部IC下部から側面にはみ出した異方導電性接着剤やフィルムが未硬化のままとなっている。そのため、この接続部をシリコーン樹脂などの電極保護材でコートして保護したとしても、高温高湿下でITO(Indium Tin Oxide)電極が容易にこの未硬化部分から腐食する。
【0006】
このため、今後益々高性能化する液晶表示装置の信頼性を高めるためには従来の異方導電性接着剤やフィルムでは限界となってきている。
【0007】
特開2004−155957号公報(特許文献1)では、接着剤成分としてカチオン重合性組成物を用いる異方導電性接着剤やフィルムが記載されている。カチオン重合触媒は,光線や加熱によりルイス酸等のカチオン活性種を生成し、エポキシ環の開環反応を触媒する化合物である。この種の異方導電性接着剤やフィルムは光線と加熱を併用して硬化させることができるが、この種の触媒はジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが主なものであることから、非常に強い酸のため、ITO電極が容易に腐食するといった不具合を持ったものである。
【0008】
以上のように、従来の異方導電性接着剤やフィルムでは、微細なピッチの回路間の接続が困難な上、未硬化部分が残ることから十分な耐湿信頼性を確保することが困難であった。
【0009】
【特許文献1】特開2004−155957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の上記問題を解決し、十分な接続信頼性と耐湿信頼性を同時に得ることが可能な異方導電性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、異方導電性接着剤として熱重合性及び放射線重合性を有するものを用いること、典型的には、
(A)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られる、部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物含有反応混合物、
(B)必要によりエポキシ樹脂、
(C)潜在性硬化剤、
(D)擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子、
(E)光重合開始剤、
(F)導電性粒子
を必須成分とする異方導電性接着剤を用いることが有効で、かかる異方導電性接着剤やフィルムを用いて微細なピッチの回路間を熱圧着で接続した後、紫外線などを照射することで回路外にはみ出した未硬化の異方導電性接着剤やフィルム部分を硬化させることができ、このような方式の異方導電性接着剤やフィルムを用いて接続した後、シリコーン樹脂などの電極保護材でコートしたものは高温高湿下で電圧を印加した状態でも全く腐食が発生しなくなること、また、熱圧着前に室温付近で紫外線などを照射して仮硬化させた後、熱で硬化させることで接続時の温度により対向する回路の位置ずれを防止することもできることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記異方導電性接着剤を提供する。
[I]接着剤成分と導電性粒子を含み、熱重合性及び放射線重合性を有することを特徴とする異方導電性接着剤。
[II](A)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られる、部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物含有反応混合物、
(B)必要によりエポキシ樹脂、
(C)潜在性硬化剤、
(D)擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子、
(E)光重合開始剤、
(F)導電性粒子
を必須成分とする[I]記載の異方導電性接着剤。
[III](A)成分中のエポキシ樹脂のエポキシ基及び(B)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計エポキシ基量が、(A)成分中の(メタ)アクリレート変性化合物の(メタ)アクリロイル基量に対し、0.7〜1.2(モル比:合計エポキシ基量/合計(メタ)アクリロイル基量)である[II]記載の異方導電性接着剤。
[IV](A)成分が、未反応のエポキシ樹脂0〜80質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が変性された部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物5〜60質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の全てが変性された(メタ)アクリレート変性化合物0〜90質量%からなる[II]又は[III]記載の異方導電性接着剤。
[V](A)成分が、未反応のエポキシ樹脂5〜45質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が変性された部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物35〜55質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の全てが変性された(メタ)アクリレート変性化合物10〜55質量%からなる[IV]記載の異方導電性接着剤。
[VI]前記導電性粒子が、高分子核材の表面に金属膜を被覆してなるものである[I]乃至[V]のいずれかに記載の異方導電性接着剤。
[VII]フィルム状に形成された[I]乃至[VI]のいずれかに記載の異方導電性接着剤。
【0013】
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基又はメタクリロイル基を、(メタ)アクリロキシ基はアクリロキシ基又はメタクリロキシ基を示す。
【0014】
また、「グリシドキシ基」は、
【化1】

を示し、「アクリロキシ基」はCH2=CHCOO−(アクリロイロキシ基)を示し、「メタクリロキシ基」はCH2=C(CH3)COO−(メタクリロイロキシ基)を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の異方導電性接着剤は、熱と光で硬化させることから未硬化部分が全く存在せず、接着性や導電性を損なうことなく微細な電極の腐食を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の異方導電性接着剤は、接着剤成分と導電性粒子を含み、熱重合性及び放射線重合性を有することを特徴とするものである。
この場合、接着剤としては、
(A)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られる、部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物含有反応混合物、
(B)必要によりエポキシ樹脂、
(C)潜在性硬化剤、
(D)擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子、
(E)光重合開始剤、
(F)導電性粒子
を必須成分とするものが好ましい。
以下、この接着剤について詳述する。
【0017】
[(A)部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物含有反応混合物]
本発明の異方導電性接着剤で使用する(A)成分は、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られる反応混合物で、これは、一分子当たり2個以上のエポキシ基を持った液状エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを当量比でエポキシ基/(メタ)アクリロイル基=9/1〜1/9で反応させればよく、更に好ましくはエポキシ基/(メタ)アクリロイル基=6/4〜3/7で反応させたものが好ましい。
【0018】
即ち、例えばエポキシ樹脂を
【0019】
【化2】

と表した場合、これを(メタ)アクリル酸
CH2=CR−COOH(RはH又はCH3
と上記割合で反応させると、未反応のエポキシ樹脂(i)と、
【化3】

で示されるエポキシ樹脂の一部のエポキシ基が開環した部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物(ii)と、
【化4】

で示されるエポキシ樹脂の全部のエポキシ基が開環した(メタ)アクリレート変性化合物(iii)が得られる。
【0020】
この場合、上記反応混合物中に存在する未反応のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が変性された部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物と、エポキシ樹脂のエポキシ基の全てが変性された(メタ)アクリレート変性化合物の混合割合としては、未反応エポキシ樹脂が0〜80質量%、特に5〜45質量%、部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物が5〜60質量%、特に35〜55質量%、(メタ)アクリレート変性化合物が0〜90質量%、特に10〜55質量%で混合されていることが好ましい。
【0021】
一分子当たり2個以上のエポキシ基を持った液状エポキシ樹脂としては、従来から公知のものを全て使用することができる。その具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0022】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂といったものが比較的低粘度であり、耐熱性や耐湿性に優れていることから好ましい。
【0023】
上記反応は、通常、トルエン等の有機溶媒中で行われることが好ましい。また、上記反応はエポキシ基とカルボン酸との反応であるので、触媒として、トリフェニルホスフィン(TPP)、アミン類を共存させて行うことが好ましい。上記反応は、通常、遮光条件下に、80〜100℃で行えばよい。しかし、上記反応は発熱反応であることから、(メタ)アクリロイル基の重合反応を防止するため、重合禁止剤等(メチルハイドロキノン、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等)を使用し、制御する必要がある。
【0024】
上記反応により得られた(A)成分の部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物含有反応混合物は、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を含有するものであり、この場合、特にエポキシ基に対する部分(メタ)アクリレート変性比率を90/10〜10/90、特に60/40〜30/70の当量比とすることで、光、例えば紫外線照射、及び加熱により容易に重合硬化させることができる。
【0025】
[(B)エポキシ樹脂]
本発明の異方導電性接着剤で使用するエポキシ樹脂としては、一分子当たり2個以上のエポキシ基を持ったもので、従来から公知のものを全て使用することができる。その具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0026】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂といったものが比較的低粘度であり、耐熱性や耐湿性に優れていることから好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂には、その合成過程でエピクロルヒドリンを使用することから、このエピクロルヒドリン由来の塩素が少量含まれるが、この加水分解性塩素量は600ppm以下、更に好ましくは300ppm以下であることが好ましい。加水分解性塩素量が600ppmより多くなると、液晶への汚染性が問題になる場合が生じる。なお、加水分解性塩素量は、例えば、約0.5gのエポキシ樹脂を20mlのジオキサンに溶解し、又はエポキシ樹脂に同質量のイオン交換水を加えて、100℃×20時間の条件で抽出処理を行った後の水中塩素濃度が1NのKOH/エタノール溶液5mlで3時間還流した後、0.01N硝酸銀溶液で滴定することにより定量することができる。
【0028】
このエポキシ樹脂の配合量は、(A)成分中の未反応エポキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂を足したものになり、(メタ)アクリル当量に対して、エポキシ基の合計量を、通常、当量比(エポキシ基/(メタ)アクリル基、モル比)で0.7〜1.2、好ましくは0.8〜1.1の範囲とするのがよく、通常(A)成分100質量部に対して(B)成分0〜60質量部、特に5〜40質量部が好ましい。エポキシ樹脂の配合量が多すぎると紫外線照射による硬化を行っても、異方導電性接着剤及びフィルムの硬化が不十分となり、ガラス基板や回路基板に対する接着力が不十分になる場合があり、一方、逆に少なすぎると紫外線照射による硬化性は良好となるが、最終的な熱硬化を行った後での硬化物特性が低下してしまう場合がある。
【0029】
[(C)潜在性硬化剤]
本発明の異方導電性接着剤で使用する潜在性硬化剤は、常温では固体であり、加熱硬化時に液化して上記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものである。
この成分としては、例えば、ジシアンジアミド、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、アミキュアVDH、アミキュアUDH(商品名、味の素(株)製)、クエン酸トリヒドラジド等の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でも、下記式で示されるアミキュアVDH、アミキュアUDHが比較的低融点であり、硬化性のバランスに優れているという点から好ましく用いることができる。
【0030】
アミキュアVDH
(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン)
【化5】

【0031】
アミキュアUDH
(7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド)
【化6】

【0032】
上記潜在性硬化剤は、平均粒子径が0.1〜2μm、より好ましくは0.5〜1.5μmであり、かつ90質量%累積時の粒径が3μm以下、特に2.5μm以下であるものを使用する。
【0033】
なお、平均粒子径は、レーザー回析散乱法を原理とした粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000:日機装(株)製)により測定した累積重量平均値D50(又はメジアン径)である。また、90質量%累積時の粒径もレーザー回析法による粒度分布測定装置による測定値である。
【0034】
ここで、上記潜在性硬化剤は、室温で固形のものであるから、その使用に際しては、前処理としてビーズミル、アトライタ、ボールミル等の装置で湿式粉砕及び分級したものを使用し、更には三本ロール等で分散混練して、上記平均粒子径90質量%累積時の粒径となるようにすること、更に好ましくは最大粒径が3μm以上のものがないようにするのがよい。
【0035】
この潜在性硬化剤の配合量は、(A)成分の部分(メタ)アクリレート変性エポキシ樹脂含有混合物中のエポキシ成分と(B)成分の合計量に対して、通常、10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%の範囲で配合するのが好ましい。前記配合量が多すぎると未反応の硬化剤が残り、耐湿性に影響を与える場合がある。また、逆に少なすぎると未反応・未硬化のエポキシ樹脂が残り、硬化物特性の低下を引き起こす場合がある。
【0036】
本発明においては、上記潜在性硬化剤に加え、必要に応じてエポキシ樹脂と硬化剤の硬化反応を促進させる目的から一般によく知られているような硬化促進剤を使用することができる。
【0037】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の熱硬化触媒用として用いられている、従来から公知のものを全て使用することができる。特に硬化剤として使用されるジシアンジアミド、ヒドラジド化合物の硬化促進剤として使用されているものが特によい。
【0038】
該硬化促進剤成分の具体例としては、例えば、イミダゾール化合物としてアミキュアPN−23(商品名、味の素(株)製)、ハードナーEH−3293S(商品名、エー・シー・アール(株)製)、ノバキュアHX−3721(商品名、旭化成(株)製)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、脂肪族アミン系化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体としてアミキュアPN−H、アミキュアMY−24(商品名、味の素(株)製)、ハードナーH−3615S(商品名、エー・シー・アール(株)製)、ノバキュアHX−3741(商品名、旭化成(株)製)等が挙げられ、尿素型アダクト(ジメチル尿素化合物)として、フジキュアFXE−1000、フジキュアFXE−1030(商品名、富士化成(株)製)等が挙げられるほか、アミン化合物とジイソシアナート化合物との付加体としてUD−34(商品名、保土ヶ谷化学(株)製)、U−CAT3502T、U−CAT3503N(商品名、サンアプロ(株)製)等が挙げられる。これらの中でも、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩類(以下、DBU塩類という)としてU−CAT SA 1、U−CAT SA 102、U−CAT SA 506、U−CAT SA 603、U−CAT SA 810、あるいは1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5塩類(以下、DBN塩類という)としてU−CAT SA 881などが好適に用いられ、それらを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記例示の中でも、特に室温での活性が低く、潜在性に優れている点から、具体的にはジメチル尿素化合物、DBU塩類、DBN塩類を用いるのがよい。
【0040】
本発明の異方導電性接着剤における硬化促進剤の添加量としては、組成物全体の0.1〜6質量%の範囲で添加することが好ましい。より好ましくは、0.5〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。添加量が少なすぎると熱硬化性が低下する場合があり、逆に多すぎると異方導電性接着剤及びフィルムの保存性が低下する傾向となる場合がある。
【0041】
[(D)擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子]
本発明の異方導電性接着剤で使用する擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子としては、100℃以下の温度範囲で擬似硬化性を示すものである。ここで、擬似硬化性とは、粒子の膨潤に伴って、粒度が上昇し、擬塑性流動を示すことであり、かかる擬似硬化性ゴム状ポリマー微粒子として具体的には、シリコーンゴム微粒子、シリコーン樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、ポリプロピレン微粒子、ポリ塩化ビニル微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子、架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリn−ブチルアクリレート微粒子などのポリアクリレート系微粒子、架橋ポリスチレン微粒子、ナイロン12微粒子、メラミン樹脂微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子、メラミン−グアナミン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、ポリ酢酸ビニル微粒子、ポリスチレン−酢酸ビニル共重合体微粒子、ポリエステル微粒子、尿素樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子、エポキシ樹脂微粒子等のゴム状ポリマー微粒子の表面にエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等と膨潤ゲル化を起こしやすい官能基を導入したものが挙げられる。
【0042】
この場合、上記官能基としては、カルボキシル基等が挙げられ、その官能基の導入方法としては、コア粒子に化学的にカルボキシル基を持った直鎖状のポリマーをグラフト化(結合)させることで得ることができる。
【0043】
上記擬似硬化性ゴム状ポリマー微粒子は、その一次粒子径がレーザー回折散乱法による測定法において0.1〜1μm、特に0.1〜0.6μmが好ましい。また平均凝集(二次)粒子径は1〜10μmが好ましい。二次粒子径が大きすぎると、対向電極を導電性粒子で接続する際接続ができなくなるおそれがある。
【0044】
このような擬似硬化性を持つ硬化性ゴム状ポリマー微粒子の中でも、特に部分架橋型アクリル系微粒子であるゼオンF351(ゼオン化成(株)製)などが望ましいものとして挙げられる。
【0045】
前記のような擬似硬化性ゴム状ポリマー微粒子を使用することでBステージ化することができることから、回路上に印刷した後、Bステージ化させて流動性をなくした上で相対する回路を圧着したり、あらかじめBステージ化させてフィルム状に加工した後、このフィルムを一定の形状に切断し、回路上に圧着して紫外線や熱により、あるいは併用することで硬化させることができる。擬似硬化性ゴム状ポリマー微粒子の添加量としては、フィルム形成能の点などから、(A)成分と(B)成分との合計量に対して3〜30質量%の範囲が好ましい。より好ましくは5〜20質量%の範囲である。3質量%未満であると、Bステージ化状態になりにくく、フィルム化が困難となる。また、30質量%を超えると、粘度が高くなり、作業性が悪くなってしまうなどの問題が出てくるおそれがある。なお、前記擬似硬化性微粒子の混合の際、凝集物による回路接続性の低下を防止するため、予め導電性粒子と混合分散を行うか、使用樹脂と予備混合した後、三本ロール等で凝集物が完全になくなるように混練し、微細化して使用することが望ましい。
【0046】
[(E)光重合開始剤]
光重合開始剤としては、(メタ)アクリロイル基の光重合用に用いられている、従来から公知のものを全て用いることができる。
【0047】
該光重合開始剤成分の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン(商品名:ESACURE KIP−150、LAMBERTI S.p.A社製)、IRGACURE 127(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等のフェニルケトン類、アデカオプトマーN−1414、アデカオプトマーN−1717(商品名、旭電化(株)製)、CGI−124、CGI−242(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、IRGACURE 754(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルフォスフィンオキサイド等のベンゾイルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらは1種単独でも2種類以上組み合わせても使用することができる。
【0048】
(E)成分の光重合開始剤の配合量としては、(A),(B),(C)及び(D)成分の合計量100質量部に対し、0.5〜5質量部が好ましく、0.5質量部より少ないと十分な光硬化性が得られない場合があり、5質量部を超えると光重合開始剤コストが高くなる場合がある。
【0049】
[(F)導電性粒子]
本発明の導電性粒子としては、銀、銅、ニッケル、金、スズ、亜鉛、白金、パラジウム、鉄、タングステン、モリブデン、半田などの金属粒子、これら金属の合金粒子又はカーボン粒子のような導電性粒子、これら粒子を組み合わせたもの、又は、これらの粒子の表面に更に金属などの導電性被覆が施された粒子を使用することができる。
【0050】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂、あるいはシリカ、セラミックス粒子などの表面に金属などの導電性被膜を施すことにより導電性粒子として使用することができる。
【0051】
この種の粒子の表面に被覆する金属としては、例えば、銀、銅、ニッケル、金、スズ、亜鉛、白金、パラジウム、鉄、タングステン、モリブデン等から選択することができる。
これら金属の被覆方法としてはスパッタリング法、蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法などを利用して形成される。
【0052】
この導電性粒子の形状は特に限定されないが、一般的に球状であることが望ましい。使用される導電性粒子の平均粒子径は接続する電極幅に合わせて決める必要がある。例えば、電極ピッチが100μm以上では平均粒子径が1〜20μm程度のものが望ましい。また、100μm未満の電極ピッチの場合は平均粒子径が約1〜10μmのものが望ましいものである。導電性粒子の添加量は電極面積の大きさと平均粒子の粒子径によって決まるが、通常電極一個当り導電性粒子としては2〜250個になるように樹脂中に配合すればよい。導電性粒子の量としては0.5〜30体積%となるように配合する。より好ましくは1〜20体積%である。0.5体積%未満では接続信頼性が低下するおそれがある。30体積%を超える量では隣接する電極間でショートする可能性がある。
【0053】
本発明の異方導電性接着剤には、上記成分以外に熱可塑性エラストマー、例えばスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・(エチレン・ブチレン)・スチレン共重合体(SEBS)などを配合することができる。
【0054】
また、本発明では接着性を向上させるため、下記一般式(1)で示されるシランカップリング剤を使用することができる。
136SiR2n(OR33-n (1)
(式中、R1はグリシドキシ基、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基である。R2、R3はアルキル基、nは0,1又は2である。)
【0055】
ここで、R2のアルキル基としては炭素数1又は2のものが好ましく、R3のアルキル基としては炭素数1又は2のものが好ましい。
【0056】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が接着性を向上させる点から好適に使用することができる。
【0057】
上記シランカップリング剤を用いる場合、その使用量は、接着剤全体に対して、通常、0.1〜6質量%程度であり、特に1〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。添加量が少なすぎると十分に接着性が得られず、逆に多すぎるとフィルムになりにくくなる場合がある。
【0058】
本発明の異方導電性接着剤は、好ましくはフィルムの形態で使用される。フィルムの製造は接着剤成分、フィルム形成を容易にするコアシェル構造を有する熱可塑性樹脂、導電性粒子をよく混合撹拌し、接着剤組成物を得る。この組成物をナイフコーターなどの塗布装置を用い、シリコーン処理したポリエステルフィルム上に塗布し、この塗布した塗膜を熱処理することによりB−ステージ化させることでフィルムを製造することができる。このフィルムの厚さは熱圧着して電極同士を接続するため使用する導電性粒子の粒子径にもよるが、5〜100μmが好ましい。
【0059】
この接着フィルムを基材上に仮圧着した後、接続する電極を有するもう一方の基材を圧着ヘッドで熱を加えながら圧着させることで接着させる。その後、基材からはみ出した未硬化の異方導電性接着フィルムを硬化させるため紫外光を照射する。このようなプロセスを経ることで、未硬化部分のない異方導電性接着剤で接着接続された基材を得ることができる。
【0060】
なお、この場合、加熱圧着条件は適宜選定されるが、25〜100℃で0.5〜5MPaの圧力を1〜10秒間加えることが好ましく、紫外線照射ははみ出した未硬化物を硬化させる条件でよく、通常1〜4J/cm2の光量を50〜200mW/cm2照射することができる。
【実施例】
【0061】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0062】
[合成例]部分アクリレート変性エポキシ樹脂含有反応混合物の製造
撹拌装置、冷却管及び温度計を備えた1L丸底フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:RE−310S、日本化薬(株)製)185g、メタクリル酸43.1g、トリフェニルホスフィン1g、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)0.13g、トルエン100gを仕込み、撹拌しながら原料を溶解させた後、100℃の温度で6時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で未反応のメタクリル酸を中和、除去し、次いでイオン交換水で洗浄を行い、精製を行った。洗浄後の水溶液のイオン伝導度(CM−30V、電気伝導率計、東亜ディーケーケー(株)製)を測定し、0.28mS/mであることを確認した。精製後の反応溶液を乾燥した空気でバブリングしながら、共沸脱水及び減圧下、70℃で濃縮して、トルエンを完全除去精製することで部分メタクリル変性エポキシ樹脂を得た。ここで得られた反応生成物をテトラヒドロフランを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて本樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、20質量%が未反応のビスフェノールA型エポキシ樹脂、43質量%が部分メタクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、37質量%が完全にメタクリル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物であった。
【0063】
【化7】

【0064】
[実施例1]
(A)成分として、合成例で得られた部分メタクリル変性エポキシ樹脂含有反応混合物85質量部、(B)成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂:(商品名:RE−310S、日本化薬(株)製)15質量部、(C)成分の潜在性硬化剤として、ヒドラジド化合物:アミキュアVDH(商品名、味の素(株)製)18質量部、硬化促進剤として、U−CAT3502T(ジメチル尿素化合物、商品名、サンアプロ(株)製)2質量部、(D)成分として、擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子(商品名:ゼオンF351、ゼオン化成(株)製)25質量部、(E)光重合開始剤としてESACURE KIP−150(LAMBERTI S.p.A社製)2質量部、シランカップリング剤KBM403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)1.5質量部を用い、導電性粒子として表面にニッケル層を介して金の層をメッキしたアクリル樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)を2,000個/mm2となる量で配合し、均一になるまで撹拌混合した。このようにして異方導電性接着剤を得た。
【0065】
また、フィルムの作製は、このようにして得られた異方導電性接着剤を、シリコーンで剥離処理されたポリエステルフィルム上に、ナイフコータを用いて塗布し、80℃で10分間加熱処理することでBステージ化させ、厚さ25μmの異方導電性接着フィルムを製造した。
【0066】
清浄なガラス基板上に形成されたくし型ITO(Indium Tin Oxide)膜電極(電極配線数:250本、配線幅:15μm、配線間隔:15μm)上に、幅2mm、長さ2cmに切断した異方導電性接着フィルムを貼り付け、60℃で4秒間、1.0MPaの圧力で熱圧着し、ポリエステルフィルムを剥離した。次に幅2mm、長さ2cmに切断したシリコンチップを仮圧着された異方導電性フィルムの上に位置合わせを行い、180℃で5秒間、1.0MPaの圧力で熱圧着した。その後、更にIC周辺にはみ出した異方導電性接着フィルムを紫外線照射による光重合硬化(UV照射光量:2.5J/cm2、UV照度:100mW/cm2)により硬化させた。
【0067】
その後、このシリコンチップを搭載した試験用電極基板上を電極保護材であるシリコーン樹脂(KJR118、信越化学工業(株)製)で保護した。
ここで得られたくし型電極を有する試験用基板に20ボルトの電圧を印加した状態で85℃/85%RHに300時間放置し、ITO電極の腐食を調べた。その結果、腐食したITO電極数はゼロであった。
【0068】
[比較例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:(商品名:RE−310S、日本化薬(株)製)100質量部、潜在性硬化剤として、ヒドラジド化合物:アミキュアVDH(商品名、味の素(株)製)18質量部、硬化促進剤として、U−CAT3502T(ジメチル尿素化合物、商品名、サンアプロ(株)製)2質量部、擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子(商品名:ゼオンF351、ゼオン化成(株)製)25質量部、シランカップリング剤KBM403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)1.5質量部を用い、導電性粒子として表面にニッケル層を介して金の層をメッキしたアクリル樹脂粒子(平均粒子径5.0μm)を2,000個/mm2となる量で配合し、均一になるまで撹拌混合した。このようにして異方導電性接着剤を得た。
【0069】
また、フィルムの作製はこのようにして得られた異方導電性接着剤を、シリコーンで剥離処理されたポリエステルフィルム上に、ナイフコータを用いて塗布し、80℃で10分間加熱処理することでBステージ化させ、厚さ25μmの熱硬化型異方導電性接着フィルムを製造した。
【0070】
清浄なガラス基板上に形成されたくし型ITO(Indium Tin Oxide)膜電極(電極配線数:250本、配線幅:15μm、配線間隔:15μm)上に、幅2mm、長さ2cmに切断した異方導電性接着フィルムを貼り付け、60℃で4秒間、1.0MPaの圧力で熱圧着し、ポリエステルフィルムを剥離した。次に幅2mm、長さ2cmに切断したシリコンチップを仮圧着された異方導電性フィルムの上に位置合わせを行い、180℃で5秒間、1.0MPaの圧力で熱圧着した。
【0071】
その後、このシリコンチップを搭載した試験用電極基板上を電極保護材であるシリコーン樹脂(KJR118、信越化学工業(株)製)で保護した。
ここで得られたくし型電極を有する試験用基板に20ボルトの電圧を印加した状態で85℃/85%RHに300時間放置しITO電極の腐食を調べた。その結果、ほとんどのITO電極において異方導電性接着フィルムがICからはみ出した部分から腐食が進行していた。
【0072】
[接続抵抗の測定]
電極間ピッチ150μmピッチでITO(Indium Tin Oxide)膜が配線された清浄なガラス基板上に異方導電性接着フィルムを幅2mm、長さ2cmに切断して貼り付け、60℃で4秒間、1.0MPaの圧力で熱圧着し、ポリエステルフィルムを剥離した。次に厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、電極間ピッチ150μm、電極幅25μm、厚み10μmの金メッキ銅線が配置されたフレキシブル回路を位置合わせし、固定した。これを180℃で5秒間、1.0MPaの圧力で熱圧着させることで回路を接続した。接続抵抗はデジタルアルチメータを用いて測定した結果、実施例1の異方導電性接着フィルムの場合は1.7Ω、比較例1の場合は1.8Ωであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤成分と導電性粒子を含み、熱重合性及び放射線重合性を有することを特徴とする異方導電性接着剤。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られる、部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物含有反応混合物、
(B)必要によりエポキシ樹脂、
(C)潜在性硬化剤、
(D)擬似硬化性を有するゴム状ポリマー微粒子、
(E)光重合開始剤、
(F)導電性粒子
を必須成分とする請求項1記載の異方導電性接着剤。
【請求項3】
(A)成分中のエポキシ樹脂のエポキシ基及び(B)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基の合計エポキシ基量が、(A)成分中の(メタ)アクリレート変性化合物の(メタ)アクリロイル基量に対し、0.7〜1.2(モル比:合計エポキシ基量/合計(メタ)アクリロイル基量)である請求項2記載の異方導電性接着剤。
【請求項4】
(A)成分が、未反応のエポキシ樹脂0〜80質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が変性された部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物5〜60質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の全てが変性された(メタ)アクリレート変性化合物0〜90質量%からなる請求項2又は3記載の異方導電性接着剤。
【請求項5】
(A)成分が、未反応のエポキシ樹脂5〜45質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が変性された部分(メタ)アクリレート変性エポキシ化合物35〜55質量%、エポキシ樹脂のエポキシ基の全てが変性された(メタ)アクリレート変性化合物10〜55質量%からなる請求項4記載の異方導電性接着剤。
【請求項6】
前記導電性粒子が、高分子核材の表面に金属膜を被覆してなるものである請求項1乃至5のいずれか1項記載の異方導電性接着剤。
【請求項7】
フィルム状に形成された請求項1乃至6のいずれか1項記載の異方導電性接着剤。

【公開番号】特開2006−124531(P2006−124531A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315425(P2004−315425)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】