説明

異方導電接続用フィルム及びリール体

【課題】接着フィルムを挟んだフィルムのうち一方のフィルムのみを十分確実に選択的に剥離除去できる異方導電接続用フィルムを提供する。
【解決手段】第1のフィルムと、接着フィルムと、第2のフィルムと、がこの順に積層された積層体を備える帯状の異方導電接続用フィルムであって、前記接着フィルムが、前記第2のフィルムの長手方向の端面と前記接着フィルムの主面との交差部を面内に有しかつ前記接着フィルムの前記主面と直交する基準面よりも張り出しており、前記接着フィルムの主面の一部が露出している、異方導電接続用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電接続用フィルム及びリール体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する回路基板や電子部品を加熱、加圧し、選択的に加圧方向の電極や端子間を電気的に接続する接続材料として、異方導電性フィルム(以下、ACFという)や、絶縁性接着フィルム(以下、NCFという)などの回路接続材料が使用されている。ACFは、プリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板や、IC、LSI等の半導体素子やパッケージなどを接続する際、相対向する電極間に配置され、加熱加圧によって、電極や端子同士を選択的に接続する。すなわち、ACF及びNCFは、相対向する電極や端子同士の導電性と、隣接する電極や端子同士の絶縁性とを両立する異方導電接続を発現する。こうして、これらの接着フィルムは、回路基板や電子部品間の電気的接続及び機械的接続(接着)の両方の機能を有する。
【0003】
代表的なACF及びNCFには、エポキシ樹脂系接着剤又はアクリル系接着剤等の接着剤成分が好適に使用されている。例えばACFは、上記接着剤成分中に必要により配合される導電性粒子を分散させてなる。これらの接着フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持フィルムに積層した帯状の態様で製品化されている。また、それらの接着フィルムの表面を外気中の粉塵などから保護するために、接着フィルムの支持フィルムとは反対側の主面上に保護フィルムが更に積層される場合もある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図4に、上述の支持フィルム、接着フィルム及び保護フィルムを積層した三層構造の異方導電接続用フィルムの従来例を示す。図4は、従来の異方導電接続用フィルムの長手方向における端部を示している。異方導電接続用フィルム40は、支持フィルム41、ACF等の接着フィルム42、及び保護フィルム43をこの順に積層した構成を有している。従来の異方導電接続用フィルム40は、上記各フィルム41、42及び43を積層した後、所定の長さになるよう、積層方向に対して垂直に切断して得られる。そのため、この異方導電接続用フィルム40の長さ方向の端面4aは積層方向に直交しており、しかも、それぞれのフィルム41、42及び43の端面は互いに面一になっている。
【0005】
このような三層構造の異方導電接続用フィルム40を用いた回路基板や電子部品における電極等の接続は、通常、下記のようにして行われる。まず、異方導電接続用フィルム40から保護フィルム43を剥離除去する。次いで、露出した接着フィルム42の一方の主面を回路基板等の被着体表面に接触させて仮圧着する。その後、支持フィルム41を剥離除去する。そして、露出した接着フィルム42のもう一方の主面を、別の被着体表面に接触させて、それらの積層方向に加圧しながら加熱することにより(本圧着)、それらの回路基板等が備える電極等の接続が完了する。保護フィルム43の剥離除去は、例えば指などを用いて接着フィルム42及び保護フィルム43間を剥離して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−211017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、各種電子機器の小型化に伴い、その電子機器に備えられる回路基板や電子部品も次第に小型化されている。これにより、ACF等の接着フィルムはその薄膜化と共にフィルム幅を一層狭くすることが求められている。
【0008】
しかしながら、図4に示すような従来の異方導電接続用フィルム40は、薄膜化及びフィルム幅の狭小化に伴い、保護フィルム43を選択的に剥離除去することが次第に困難になっている。すなわち、この異方導電接続用フィルム40は、端面4aが上述のような態様になっているため、膜厚が薄くなったりフィルム幅が狭くなったりすると、指などにより保護フィルム43及び接着フィルム42間のみを剥離するのが困難になる。
【0009】
また、接着テープを保護フィルム43及び支持フィルム41の露出した主面に貼り付けて、それらを互いに引っ張ることで保護フィルム43を剥離除去する方法も考えられる。この方法で剥離する場合、保護フィルム43及び接着フィルム42間の剥離強度よりも、支持フィルム41及び接着フィルム42間の剥離強度がある程度高くなければならない。ところが、これらの剥離強度は接着フィルム42の構成材料にも依存し、その構成材料は接着フィルム42の用途によって決定される。そのため、接着テープを用いた方法により保護フィルム43を選択的に剥離除去するのに必要とされる上記剥離強度が得られない場合もある。
【0010】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、接着フィルムを挟んだフィルムのうち一方のフィルムのみを十分確実に選択的に剥離除去できる異方導電接続用フィルム、並びにその異方導電接続用フィルムを備えたリール体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、第1のフィルムと、接着フィルムと、第2のフィルムとがこの順に積層された積層体を備える帯状の異方導電接続用フィルムであって、接着フィルムが、第2のフィルムの長手方向の端面と接着フィルムの主面との交差部を面内に有しかつ接着フィルムの主面と直交する基準面よりも張り出している異方導電接続用フィルムを提供する。
【0012】
従来の異方導電接続用フィルム40の場合、接着フィルム42及び支持フィルム41に触れることなく、保護フィルム43のみを撮むことは実質的に不可能である。したがって、このような異方導電接続用フィルム40の保護フィルム43を選択的に剥離除去することは非常に困難である。
【0013】
一方、本発明の異方導電接続用フィルムは、接着フィルムが上述の基準面よりも張り出していることにより、第2のフィルムを指などで撮むことなく、少なくとも接着フィルムのみを撮むことが可能となる。そして、撮んだ接着フィルム及び場合によってはそれに加えて第1のフィルムを、積層方向の第1のフィルム側に折り曲げれば、第2のフィルムの曲げ弾性の働きにより、第2のフィルム及び接着フィルムが互いに引っ張られる方向に力が加わる。これによって、第2のフィルムがその長さ方向の端面側から剥離する。その後、更に第2のフィルムの剥離した部分を撮んで、あるいは、第2のフィルム及び第1のフィルムに貼り付けた接着テープを持って、接着フィルム及び第2のフィルムを互いに離間する方向に引っ張れば、十分確実に第2のフィルムのみを選択的に剥離除去することができる。
【0014】
本発明の異方導電接続用フィルムは、第2のフィルムの端面を指示するための指示手段を更に備えると好適である。これにより、異方導電接続用フィルムが小型化されても、第2のフィルムの端面を容易に視認することができるため、第2のフィルムに触れることなく、接着フィルム等のみを更に容易に撮むことができる。その結果、より確実かつ簡便に第2のフィルムを剥離除去することができる。
【0015】
また、本発明は、巻芯と、その巻芯に巻回した上述の異方導電接続用フィルムとを備えるリール体を提供する。このリール体から引き出した異方導電接続用フィルムは、上述の構成を備えているため、十分確実に第2のフィルムのみを選択的に剥離除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接着フィルムを挟んだフィルムのうち一方のフィルムのみを十分確実に選択的に剥離除去できる異方導電接続用フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る異方導電接続用フィルムの一部を示す模式断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る異方導電接続用フィルムの一部を示す模式断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る異方導電接続用フィルムの一部を示す模式断面図である。
【図4】従来の異方導電接続用フィルムの一部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1は、本発明の好適な第1の実施形態に係る帯状の異方導電接続用フィルムの長手方向端部を模式的に示す断面図である。本実施形態の異方導電接続用フィルム10は、第1のフィルムである支持フィルム11と、接着フィルム12と、第2のフィルムである保護フィルム13とがこの順に積層された積層体15を備えている。また、この異方導電接続用フィルム10は、保護フィルム13の接着フィルム12とは反対側の主面上に、保護フィルム13の端面13aを指示するための指示手段18を備えている。
【0020】
異方導電接続用フィルム10の幅は0.3〜320mmであると好ましく、0.5〜10mmであるとより好ましい。これにより、本発明による保護フィルムのみを選択的に剥離除去できるという有利な効果を一層有効に奏することができる。
【0021】
この第1の実施形態において、支持フィルム11、接着フィルム12及び保護フィルム13の長手方向Lの端面11a、12a及び13aは、積層体15の積層方向Sに平行な面となっている。これらの端面のうち、支持フィルム11の端面11a及び接着フィルム12の端面12aは、互いに面一となっている。また、支持フィルム11及び接着フィルム12は、保護フィルム13の端面13aよりも張り出しており、その結果、接着フィルム12の主面12bの一部が露出している。
【0022】
保護フィルム13の端面13aは、本発明における基準面16、すなわち保護フィルムの端面13aと接着フィルム12の主面12bとの交差部Xを面内に有しかつ接着フィルム12の主面12bと直交する面と面一となっている。つまり、接着フィルム12は、基準面16よりも張り出している。
【0023】
本実施形態の異方導電接続用フィルム10は、接着フィルム12が基準面16よりも張り出していることにより、保護フィルム13を指などで撮むことなく、支持フィルム11及び接着フィルム12のみを選択的に撮むことが可能となる。そして、撮んだそれらのフィルム11及び12を、積層体15の積層方向S支持フィルム11側に折り曲げれば、保護フィルム13の曲げ弾性の働きにより、フィルム11及び12と保護フィルム13とが互いに引っ張られる方向に力が加わる。これによって、保護フィルム13が端面13a側から剥離する。その後、更に保護フィルム13の剥離した部分を撮む等して、フィルム11及び12と保護フィルム13とを互いに離間する方向に引っ張れば、十分確実に保護フィルム13のみを選択的に剥離除去することができる。
【0024】
接着フィルム12の主面12bは、接着フィルム12及び支持フィルム11を指などで選択的に撮むことが可能な程度に露出していると好ましい。具体的には、保護フィルム13の端面13a及び接着フィルム12の端面12a間の距離Dが好ましくは1〜100mm、より好ましくは5〜80mm、更に好ましくは10〜50mmとなるように露出していると好ましい。この距離Dが1mm未満であると、支持フィルム11及び接着フィルム12を選択的に撮み難くなる傾向にある。一方、距離Dが100mmを超えると、保護フィルム13の剥離除去容易性はほとんど変わらないものの、保護すべき接着フィルム12表面の露出部分が多くなり、接着フィルム12の損失が大きくなる傾向にある。
【0025】
支持フィルム11は単層であってもよく、2層以上を積層した構成のものでもよい。支持フィルム11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、配向ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム及びポリイミドフィルムからなる群より選ばれる1種以上のフィルムを備えることが好ましい。それらの中でも、耐熱性が高くコストを低減できる点からPETフィルム及び/又はOPPフィルムが好ましく、PETフィルムがより好ましい。
【0026】
また、支持フィルム11は、接着フィルム12が設けられる側の主面を必要に応じて離型処理剤で処理したものであってもよく、その主面に粗化処理を施されたものであってもよい。離型処理剤としては、例えば、シリコーン、シリコーンアルキッド、アミノアルキッド、アルキルアルキッド及びメラミンが挙げられる。また、支持フィルム11は、その主面をポリマー等でコーティングしたものでもよい。これらの処理は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0027】
接着フィルム12は、支持基材上に接着剤組成物を塗布し乾燥することにより得られる。この接着フィルム12は、支持フィルム11の主面上に接着剤組成物を塗布し乾燥することにより支持フィルム11上に形成してもよい。あるいは、支持フィルム11とは別の支持基材上に接着剤組成物を塗布し乾燥して得られたフィルムを、その支持基材から剥離した後、支持フィルム11の主面上にラミネートすることにより支持フィルム11上に形成してもよい。
【0028】
接着フィルム12は単層であってもよく、2層以上を積層した構成を有するものであってもよい。この場合、接着フィルム12は、上述のようにして形成した接着フィルムを下地層として、その上に接着フィルムを更に形成することで得られる。あるいは、支持フィルム11上に上述のようにして形成された接着フィルムと、保護フィルム13上に同様に形成された接着フィルムとを互いに対向させて圧着することで得られるものであってもよい。
【0029】
接着フィルム12の原料となる接着剤組成物は、異方導電接続を可能にするものであると好ましい。よって、この接着剤組成物は、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含むものであってもよい。あるいは、この接着剤組成物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び潜在性硬化剤を含むものであってもよい。上述の接着剤組成物に含まれる各成分は、従来のいわゆる異方導電性接着剤に含まれるものであればよい。
【0030】
上述の接着剤組成物は、従来の異方導電性接着剤に含まれるものと同様の導電性粒子を含んでもよく、含まなくてもよい。導電性粒子を含む接着剤組成物から形成される接着フィルム12は、導電性粒子を介して対向する電極及び/又は端子間を選択的に接続すると共に、それらを備える基板や装置を接着する。導電性粒子を含まない接着剤組成物から形成される接着フィルム12は、対向する電極及び又は端子間を直接接触させて、それらを備える基板や装置を接着することにより、それらの電極及び/又は端子間を選択的に接続する。
【0031】
さらにこの接着剤組成物は、上述した各成分以外にも従来の異方導電性接着剤に含まれる成分を含んでもよい。
【0032】
接着フィルム12が2層以上を積層した構成を有する場合、各層は互いに同一の組成であっても異なる組成であってもよい。すなわち、各層の原料である接着剤組成物の組成が互いに同一であっても異なっていてもよく、導電性粒子を含む層及び導電性粒子を含まない層の両方が備えられていてもよい。例えば、接着フィルム12が2層を積層した構成を備える場合、支持フィルム11側の層が導電性粒子を含まない層であって、保護フィルム13側の層が導電性粒子を含む層であってもよい。
【0033】
保護フィルム13は単層であってもよく、2層以上を積層した構成を有するものであってもよい。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、配向ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム及ぶポリイミドフィルムからなる群より選ばれる1種以上のフィルムを備えることが好ましい。これらの中では、曲げ弾性が高くコストを低減する観点からOPP又はPETフィルムが好適であり、PETフィルムがより好ましい。
【0034】
保護フィルム13を接着フィルム12上に配置する方法としては、接着フィルム12表面にさらに保護フィルム13をラミネーター等で積層する方法が挙げられる。あるいは、支持フィルム11上に上述のようにして形成された接着フィルムと、保護フィルム13上に同様に形成された接着フィルムとを互いに対向させて圧着することで得られるものであってもよい。
【0035】
保護フィルム13は、必要に応じて離型処理剤で表面処理してもよく、その表面を粗化処理してもよい。離型処理剤としてはシリコーン、シリコーンアルキッド、アミノアルキッド、アルキルアルキッド、メラミン等が挙げられる。また、保護フィルム13の表面をポリマー等でコーティングしてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0036】
支持フィルム11及び接着フィルム12を基準面16よりも張り出させる方法としては、支持フィルム11、接着フィルム12及び保護フィルム13の積層体を得た後に、保護フィルム13の端部のみを選択的に切断する方法が挙げられる。あるいは、支持フィルム11及び接着フィルム12の積層体を形成した後に、予め接着フィルム12の主面12bの一部が露出するように保護フィルム13を配置してラミネートする方法が挙げられる。
【0037】
また、支持フィルム11及び接着フィルム12間の剥離強度と保護フィルム13及び接着フィルム12間の剥離強度との差は、0.001〜10N/mであると好ましい。異方導電接続用フィルム10は、保護フィルム13を選択的に剥離除去するために、支持フィルム11及び接着フィルム12間の方が保護フィルム13及び接着フィルム間よりも剥離強度が強い方がよい。一方、回路基板等の被着体に接着フィルム12を圧着した後に支持フィルム11を剥離除去することを考慮すると、被着体及び接着フィルム12間の方が支持フィルム11及び接着フィルム12間よりも剥離強度が強い方がよい。これらを総合的に考慮すると、上記数値範囲内にある剥離強度の差が好ましい。
【0038】
従来の異方導電接続用フィルムにおいて、剥離強度の差がこの数値範囲内にあると、保護フィルムのみを選択的に剥離除去するのが困難な傾向にある。ところが、本発明によれば、このような異方導電接続用フィルム10においても、十分確実に保護フィルム13のみを選択的に剥離除去することができる。
【0039】
なお、本発明における剥離強度は、レオメータによって測定されるものである。
【0040】
上述の剥離強度の差は、支持フィルム11及び接着フィルム12間の剥離強度、及び/又は、保護フィルム13及び接着フィルム12間の剥離強度を下記のようにして調整することにより、上記数値範囲内に収めることができる。具体的には、剥離強度を高めるには、接着フィルム12の原料である接着剤組成物中の樹脂(熱可塑性樹脂)の含有量を少なくしたり、その樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くしたり、ラジカル重合性化合物や熱硬化性樹脂の含有量を多くしたり、支持フィルム11及び保護フィルム13の表面を粗化処理したりすればよい。あるいは、剥離強度を高めるには、接着フィルム12が導電性粒子や絶縁性の固体粒子を含む場合、それらの含有量を少なくすればよい。あるいは、剥離強度を低くするには、支持フィルム11や保護フィルム13を離型処理剤で表面処理したり、それらのフィルムの厚みを薄くしたりすればよい。
【0041】
支持フィルム11、接着フィルム12及び保護フィルム13の厚みは、その用途等によって調整されればよく、特に制限されるものではない。ただし、上述のとおり、支持フィルム11及び保護フィルム13の厚みは、単位幅あたりの引張伸び率の差異が小さくなるように調整されると好ましく、剥離強度の差が上記数値範囲内に収まるように調整されると好適である。
【0042】
指示手段18は、保護フィルム13の端面13aを指示するためのものである。特に保護フィルム13が透明又は半透明である場合、その端面13aを目視にて確認することは困難である。そこで、指示手段18によって、端面13aの位置を確認できるようにすれば、保護フィルム13の剥離除去処理を更に容易に行うことができる。この指示手段18は、目視にて確認できるものであればよく、例えば黒色の帯状部材であって、その長手方向軸が保護フィルム13の端面13aと平行になるようにして、図示するような位置に設けられるものであると好ましい。
【0043】
本実施形態の異方導電接続用フィルム10は、巻芯(図示せず)に巻回されてリール体を形成する。このようにリール体を構成することにより、異方導電接続用フィルム10の取り扱い性が向上する。
【0044】
図2は、本発明の好適な第2の実施形態に係る帯状の異方導電接続用フィルムの長手方向端部を模式的に示す断面図である。本実施形態の異方導電接続用フィルム20は、支持フィルム21と、接着フィルム22と、保護フィルム23とがこの順に積層された積層体25を備えている。
【0045】
この第2の実施形態において、支持フィルム21、接着フィルム22及び保護フィルム23の長手方向Lの端面21a、22a及び23aは、積層体25の積層方向Sに平行な面となっている。支持フィルム11は接着フィルム22の端面22aよりも張り出しており、接着フィルム22は保護フィルム23の端面23aよりも張り出している。その結果、支持フィルム21の主面21b及び接着フィルム22の主面22bの一部が露出している。
【0046】
保護フィルム23の端面23aは、本発明における基準面26、すなわち保護フィルム23の端面23aと接着フィルム22の主面22bとの交差部Xを面内に有しかつ接着フィルム22の主面22aと直交する面と面一となっている。つまり、接着フィルム22は、基準面26よりも張り出している。
【0047】
また、接着フィルム22の端面22aは、基準面27、すなわち接着フィルム22の端面22aと支持フィルム21の主面21bとの交差部Yを面内に有しかつ支持フィルム21の主面21bと直交する面と面一となっている。つまり、支持フィルム21は、基準面27よりも張り出している。
【0048】
本実施形態の異方導電接続用フィルム20は、接着フィルム22が基準面26よりも張り出していることにより、保護フィルム23を指などで撮むことなく、支持フィルム21及び接着フィルム22のみを選択的に撮むことが可能となる。そして、撮んだそれらのフィルム21及び22を、積層体25の積層方向S支持フィルム21側に折り曲げれば、保護フィルム23の曲げ弾性の働きにより、フィルム21及び22と保護フィルム23とが互いに引っ張られる方向に力が加わる。これによって、保護フィルム23が端面23a側から剥離する。その後、更に保護フィルム23の剥離した部分を撮む等して、フィルム21及び22と保護フィルム23とを互いに離間する方向に引っ張れば、十分確実に保護フィルム23のみを選択的に剥離除去することができる。
【0049】
また、本実施形態の異方導電接続用フィルム20は、支持フィルム21が基準面27よりも張り出していることにより、保護フィルム23及び接着フィルム22を指などで撮むことなく、支持フィルム21のみを選択的に撮むことも可能となる。そして、撮んだ支持フィルム21を、積層体25の積層方向S支持フィルム21側に折り曲げれば、保護フィルム23の曲げ弾性の働きにより、フィルム21及び22と保護フィルム23とが互いに引っ張られる方向に力が加わる。これによって、保護フィルム23が端面23a側から剥離する。その後、更に保護フィルム23の剥離した部分を撮む等して、フィルム21及び22と保護フィルム23とを互いに離間する方向に引っ張れば、十分確実に保護フィルム23のみを選択的に剥離除去することができる。特に支持フィルム21及び接着フィルム22間の剥離強度が、保護フィルム23及び接着フィルム22間の剥離強度よりも大きい場合、この剥離除去はより確実に行うことができる。
【0050】
支持フィルム21の主面21b及び接着フィルム22の主面22bは、支持フィルム21及び接着フィルム22を指などで選択的に撮むことが可能な程度に露出していると好ましい。具体的には、接着フィルム22の端面22a及び支持フィルム21の端面21a間の距離D1が好ましくは1〜100mm、より好ましくは5〜80mm、更に好ましくは10〜50mmとなるように露出していると好ましい。また、保護フィルム23の端面23a及び接着フィルム22の端面22a間の距離D2が好ましくは10〜200cm、より好ましくは50〜150cmとなるように露出していると好ましい。
【0051】
本実施形態のそれ以外の点については、第1の実施形態と同様である。
【0052】
図3は、本発明の好適な第3の実施形態に係る帯状の異方導電接続用フィルムの長手方向端部を模式的に示す断面図である。本実施形態の異方導電接続用フィルム30は、支持フィルム31と、接着フィルム32と、保護フィルム33とがこの順に積層された積層体35を備えている。
【0053】
この第3の実施形態において、支持フィルム31、接着フィルム32及び保護フィルム33の長手方向Lの端面31a、32a及び33aは、積層体35の積層方向Sに対して傾斜した面となっている。この傾斜は、支持フィルム31が接着フィルム32の端面32aよりも張り出しており、接着フィルム32が保護フィルム33の端面33aよりも張り出すように形成されている。
【0054】
保護フィルム33の端面33aは、本発明における基準面36、すなわち保護フィルム33の端面33aと接着フィルム32の主面32bとの交差部Xを面内に有しかつ接着フィルム32の主面32bと直交する面と面一となっている。つまり、接着フィルム32は、基準面36よりも張り出している。
【0055】
接着フィルム32の端面32aは、基準面37、すなわち接着フィルム32の端面33aと支持フィルム31の主面31bとの交差部Yを面内に有しかつ支持フィルム31の主面31bと直交する面と面一となっている。つまり、支持フィルム31は、基準面37よりも張り出している。
【0056】
本実施形態の異方導電接続用フィルム30は、接着フィルム32が基準面36よりも張り出していることにより、保護フィルム33を指などで撮むことなく、支持フィルム31及び接着フィルム32のみを選択的に撮むことが可能となる。そして、撮んだそれらのフィルム31及び32を、積層体35の積層方向S支持フィルム31側に折り曲げれば、保護フィルム33の曲げ弾性の働きにより、フィルム31及び32と保護フィルム33とが互いに引っ張られる方向に力が加わる。これによって、保護フィルム33が端面33a側から剥離する。その後、更に保護フィルム33の剥離した部分を撮む等して、フィルム31及び32と保護フィルム33とを互いに離間する方向に引っ張れば、十分確実に保護フィルム33のみを選択的に剥離除去することができる。
【0057】
また、本実施形態の異方導電接続用フィルム30は、支持フィルム31が基準面37よりも張り出していることにより、保護フィルム33及び接着フィルム32を指などで撮むことなく、支持フィルム31のみを選択的に撮むことも可能となる。そして、撮んだ支持フィルム31を、積層体35の積層方向S支持フィルム31側に折り曲げれば、保護フィルム33の曲げ弾性の働きにより、フィルム31及び32と保護フィルム33とが互いに引っ張られる方向に力が加わる。これによって、保護フィルム33が端面33a側から剥離する。その後、更に保護フィルム33の剥離した部分を撮む等して、フィルム31及び32と保護フィルム33とを互いに離間する方向に引っ張れば、十分確実に保護フィルム33のみを選択的に剥離除去することができる。特に支持フィルム31及び接着フィルム32間の剥離強度が、保護フィルム33及び接着フィルム32間の剥離強度よりも大きい場合、この剥離除去はより確実に行うことができる。
【0058】
上記端面の傾斜は、支持フィルム31及び接着フィルム32を指などで選択的に撮むことが可能な程度に露出していると好ましい。具体的には、保護フィルム33の端面33aと接着フィルム32の主面32bとの交差部Xと、接着フィルム32の端面32aと支持フィルム31の主面31bとの交差部Yとの間の距離D1が好ましくは1〜100mm、より好ましくは5〜80mm、更に好ましくは10〜50mmとなるように傾斜していると好ましい。また、接着フィルム32の端面32aと支持フィルム31の主面31bとの交差部Yと、支持フィルム31の端面31aの下端部Zとの間の距離D2が好ましくは1mm〜200cm、より好ましくは5mm〜150cmとなるように傾斜していると好ましい。
【0059】
本実施形態のそれ以外の点については、第1の実施形態と同様である。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0061】
例えば、本発明の第2及び第3の実施形態において、第1の実施形態と同様に、保護フィルムの接着フィルム側とは反対側の主面上に指示手段を備えていてもよい。なお、第3の実施形態においては保護フィルム33の端面33aの下端(X)を指示するために、端面33a上に指示手段が備えられていてもよい。また、指示手段は、保護フィルムに直接油性インク等で書かれたものであってもよい。
【0062】
また、指示手段に代えて保護フィルムの一部又は全部を着色することにより、その端面を目視にて確認できるようしてもよい。あるいは、保護フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである場合、その保護フィルムに紫外線を照射した状態であれば、その端面を目視にて確認することができる。
【符号の説明】
【0063】
10,20,30…異方導電接続用フィルム、11,21,31…支持フィルム、12,22,32…接着フィルム、13,23,33…保護フィルム、15,25,35…積層体、18…指示手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルムと、接着フィルムと、第2のフィルムと、がこの順に積層された積層体を備える帯状の異方導電接続用フィルムであって、
前記接着フィルムが、前記第2のフィルムの長手方向の端面と前記接着フィルムの主面との交差部を面内に有しかつ前記接着フィルムの前記主面と直交する基準面よりも張り出しており、
前記接着フィルムの主面の一部が露出している、異方導電接続用フィルム。
【請求項2】
前記第2のフィルムの前記端面を指示するための指示手段を更に備える、請求項1に記載の異方導電接続用フィルム。
【請求項3】
前記異方導電接続用フィルムの幅が0.5〜10mmである、請求項1又は2に記載の異方導電接続用フィルム。
【請求項4】
第1のフィルム及び接着フィルム間の剥離強度と、第2のフィルム及び接着フィルム間の剥離強度との差が、0.001〜10N/mである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の異方導電接続用フィルム。
【請求項5】
前記第2のフィルムの端面及び前記接着フィルムの端面間の距離D1が1〜100mmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の異方導電接続用フィルム。
【請求項6】
前記第1のフィルムの端面及び前記接着フィルムの端面間の距離D2が10〜200cmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の異方導電接続用フィルム。
【請求項7】
巻芯と、その巻芯に巻回した請求項1〜6のいずれか一項に記載の異方導電接続用フィルムと、を備えるリール体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77305(P2012−77305A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243925(P2011−243925)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2007−136982(P2007−136982)の分割
【原出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】