説明

異方性光学デバイス及びその作製方法

【課題】セキュリティ要素として用いることができる新規かつ効率的な光学的要素を提供する。
【解決手段】本発明は、パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)と、視野角度(6)を変化させると及び/又は入射光(2)の角度を変化させると観測可能なカラーシフトをもたらす手段(9、11、14、16、17、20、21、30、32)とを具備する新規な光学要素に関する。本発明は、このような光学要素の作製方法、及び、非常に高いセキュリティレベルを有するセキュリティ要素としてのこのような光学要素の用途にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性光学デバイス及びかかる異方性光学デバイスを作製する方法に関する。提案されるデバイスは、光学セキュリティデバイス等の分野において用いることができる。
【背景技術】
【0002】
製品及び文書の偽物及び模造品が一層増えてきていることに起因して、模造対策が以前にも増して必要とされている。長年の間、ホログラムが好ましいセキュリティ技術となってきており、多くの異なる世代のホログラムをベースとしたセキュリティ機構が製造されてきた。一方、この技術は、30年以上前のものであり、したがって、既知となっているとともに広く知れ渡っている。この状況は、多くの人々がこのホログラム技術にアクセスできるので、セキュリティリスクをもたらしている。ディジタルホログラムプリンタの利用可能性によって、ホログラフィックマスタリングシステム(holographic mastering system)を簡単に利用するための道がさらに増加してきている。これらのプリンタは、多くの異なるタイプのホログラムの製作を可能とし、ホログラフィック設定又はレーザライタについて必要とされる知識は最小限なものとなっている。このような装置によって、後にメタルマスタ(metal master)を製造するためにマスタを準備すること、及び、複製して薄いフィルムを大量に製造することが可能となる。したがって、ホログラフィック構造を作製できる可能性が幅広くなることに起因して、ホログラフィは、セキュリティ要素の分野において重要性を失いつつある。
【0003】
しかしながら、セキュリティデバイスの分野においては、新規の様々なデバイスに対して、セキュリティデバイスのタイプを変化させることによっても再生産のリスクを低減する可能性を有するようにとの永続的な要求がある。
【0004】
このようなアプローチの一例が、光学効果が例えばホログラフィック構造又は格子構造(grating structure)とカラーシフティング多層干渉効果(colorshifting multi-layer interference effect)との組み合わせに起因している国際出願第WO-01/03945号に記載されている。
【0005】
さらには、異方性拡散体及び反射体がパターン化された異方性とともにIbn-Elhajらによる「"Optical Polymer Thin Films With Isotropic And Anisotropic Nano-Corrugated Surface topologies", Nature, 2001, vol.410, p.796-799. technology(MC)」において提案されている。これらの構造を作製するためには、いわゆる単量体畝状化(Monomer Corrugation;MC)技術が用いられ、これは、基板に付与された混合物又はブレンド(blend)のフェイズ分離(phase separation)が紫外線の暴露を用いた交差結合によって誘発されるという事実に依存している。交差結合させていない成分を除去すると、溝(groove)、くぼみ(dip)及び/又は孔(pore)を含んだ特有の表面トポロジを有する構造が残る。適宜削った表面トポロジを用いることにより、指向性を有する光の拡散体を構築することができる。他の基板の中でも特に、基板としてアルミニウムミラーを用いることが提案されており、このアルミニウムミラーの上には、混合物に対する上述した紫外線により誘発されるフェイズ分離及びその後の交差結合させていない材料の除去によって、パターン化されたMC膜が形成される。これにより、上記パターンの指向性のある伝達ではなく、上記パターンが視野角度に依存して輝度及びコントラストを変化させて見えるような、指向性の反射体が作製される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、セキュリティ要素として用いることができる新規かつ効率的な光学的要素を提供することを目的とする。さらには、本発明は、かかる光学的要素を作製する方法、及び、かかる光学的要素の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、請求項1に係る光学要素、請求項23に係る方法、及び、請求項27に係る光学要素の用途を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の主な特徴は、パターン化された異方性を有する異方性拡散体と、視野角度を変化させると及び/又は入射光の角度を変化させると観測可能なカラーシフトをもたらす手段との組み合わせを備えた光学要素が設けられる、という事実である。これにより、好ましくは、異方性は、例えばピクセルに基づいた(pixellated)方法により、イメージに関して局所的に変化するものである。特にセキュリティ目的として、傾斜又は回転させると視野角度に依存したポジティブ/ネガティブイメージ反転を示す光学要素を設けることが有利である。通常は、パターン化された異方性を有する異方性拡散体は、実質的に非周期的に光学的に有効な構造を有する。
【0009】
周知となっているホログラフィック構造とは対照的に、異方性拡散体は、視野角度を変化させると反転する非常に明確かつ明瞭なイメージを示す。しかしながら、カラーシフト効果との組み合わせは、簡単には得られない。異方性拡散体と充分に制御されるカラーシフトをもたらす別個の手段との提案される組み合わせが、明瞭なイメージの反転と、充分に制御された均一なカラーシフトとの重ね合わせの可能性をもたらす。ホログラフィック構造を用いたときには、実現できるイメージ反転は、(レインボウ効果と捉えられることが多い)付随するカラーシフトを常に伴うので、ホログラフィック構造を、カラーシフトをもたらす付加的な手段とともに設けることは、イメージ反転とカラー反転とを別々に充分に制御することには繋がらない。しかしながら、驚くべきことに、本明細書において提案する、パターン化された異方性を有する異方性拡散体とカラーシフトをもたらす手段との組み合わせは、イメージ反転とカラーシフトとの遥かに明確な組み合わせを実現する。2つの効果は、異方性拡散体に代えて周期的なホログラフィック構造を用いる場合よりも、より良く分離されるので、これら2つの効果は、効率的に制御することができ、例えば、互いに整合させることができる。例えば、イメージ反転とカラーシフトとの考えられる特有の協調によって、例えば、第1のイメージは、第1の視野角度では、第1の色で認識され、ほとんど遷移的な効果なく視野角度を変化させると、第1のイメージとは異なる第2のイメージが第2の色により現れる、という点において、デバイスの達成可能なセキュリティレベルを驚異的に増加させることができる。
【0010】
第1の好ましい実施形態に係る光学要素によれば、カラーシフトをもたらす手段は、カラーシフト層構造として設けられる。これにより、異方性拡散体及びカラーシフト層構造は、視野方向から見たときに、一方が他方の背後にあるように配置することができる。異方性拡散体及びカラーシフト層は、個々の層、フィルム又はコーティングとして設けることができるが、部分的に又は完全に一体化した構造としても設けることができる。
【0011】
別の好ましい実施形態に係る光学要素によれば、異方性拡散体が、液晶に、好ましくは、重合体、単量体、低重合体、交差結合可能又は交差結合不可能とすることができるネマティック材料に基づく。
【0012】
異方性拡散体は、位相幾何学的に構造化された畝状表面構造を含むことができる。この位相幾何学的に構造化された畝状表面構造は、保護層、干渉層、スペーサフィルム又は反射金属層によって、覆われることができる。このような位相幾何学的に構造化された畝状表面構造は、エンボシング技術によって、すなわち、所望の3次元構造をマトリックス材料内にエンボス加工するスタンパを用いることにより、得られるが、他の手段、例えば工学的方法によってこのような表面構造を得ることもできる。したがって、位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)は、一方が交差結合可能であり他方が交差結合不可能である少なくとも2つの材料の混合物を生成すること、該混合物を基板に付与すること、前記交差結合可能な材料の少なくとも一部分を交差結合すること、前記交差結合不可能な材料の少なくとも一部分を除去すること、により生成され、前記交差結合可能な材料は、好ましくは、交差結合の間において、例えば、下にある配向層によって又は配向基板表面によって配向状態に維持される。
【0013】
別の好ましい実施形態に係る光学要素によれば、カラーシフトをもたらす手段は、干渉フィルム又はコーティングを含む。この干渉フィルム又はコーティングは、誘電性材料に基づいた多層薄膜システムを含むことができ、異なる層における誘電性材料は、異なる屈折率を有する。干渉フィルム又はコーティングは、ファブリ−ペロ共振体の役割をも果たす。後者のケースでは、干渉フィルム又はコーティングは、少なくとも1つの部分的に透明な第1の金属フィルムと、第2の金属フィルムと、これらのフィルムの間にある好ましくは誘電体そうと、を含むことができる。このようなファブリ−ペロ共振体を利用することによって、コンパクトかつ効率的に一体化した構造を可能とする。それは、パターン化された異方性を有する異方性拡散体が基板の上に設けられるからであり、パターン化された異方性を有する異方性拡散体が、反射金属層によって覆われる位相幾何学的に構造化された畝状表面構造を含むからであり、異方性拡散体が、視野方向から見たときにファブリ−ペロ共振体の誘電体層によって直接覆われるからである。
【0014】
さらに好ましい実施形態によれば、カラーシフトをもたらす手段が、コレステリックなフィルム、層又はコーティングを含む。コレステリックなフィルムには色を付すことができ、及び/又は、コレステリックなフィルムは交差結合することができるものである。
【0015】
別の好ましい特にコンパクトかつ一体化された実施形態によれば、パターン化された異方性を有する異方性拡散体が基板の上に設けられ、パターン化された異方性拡散体は、反射金属層によって覆われる位相幾何学的に構造化された畝状表面構造を含み、異方性拡散体は、視野方向から見るとコレステリックな層によって直接覆われる。
【0016】
コレステリックなフィルムの表面、層又はコーティングが位相幾何学的に構造化された畝状構造を有してパターン化された異方性を有する異方性拡散体を形成する、光学要素を提供することもできる。このケースでは、例えば、かかる位相幾何学的に構造化された畝状構造にコレステリックなフィルムをコーティングすることができ、又は、かかる位相幾何学的に構造化された畝状構造を用いて直接的にコレステリックなフィルムを形成することができる。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、カラーシフトをもたらす手段が、基板の上に、コーティング、プリント、ラミネート、ホットスタンプ又はコールドスタンプされる少なくとも1つのフィルムとして設けられ、基板は、好ましくは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(テレフタル酸ポリエチレン)若しくはこれらを混ぜ合わせたものにより形成され、又は、ガラス、金属、紙若しくはこれらを組み合わせたものにより形成される。
【0018】
本発明は、さらに、上述したような光学要素を作製する方法に関する。好ましくは、この方法は、視野角度を変化させると及び/又は入射光の角度を変化させると、観察観察可能なカラーシフトをもたらす手段が、基板の上に、コーティング、プリント、ラミネート、接着、ホットスタンプ若しくはコールドスタンプされ、次に、パターン化された異方性を有する異方性拡散体によって覆われ若しくはコーティングされ、又は、パターン化された異方性を有する異方性拡散体が設けられる、ということを特徴とする。
【0019】
好ましい実施形態に係る本方法によれば、パターン化された異方性を有する異方性拡散体としての、位相幾何学的に構造化された畝状表面構造が、一方が交差結合可能であり他方が交差結合不可能である少なくとも2つの材料の混合物を生成すること、該混合物を基板に付与すること、前記交差結合可能な材料の少なくとも一部分を交差結合すること、前記交差結合不可能な材料の少なくとも一部分を除去すること、により生成され、好ましくは、前記交差結合可能な材料が、交差結合の間において、例えば、下にある配向層によって又は配向基板表面によって配向状態に維持される。
【0020】
或いはまた、パターン化された異方性を有する異方性拡散体としての、位相幾何学的に構造化された畝状表面構造を、紫外線キャスティング、又は、3次元構造のスタンパを用いたホットエンボシングによって作製することができる。
【0021】
カラーシフトをもたらす手段がコレステリックなフィルム、層又はコーティングを含む場合には、かかるコレステリックな要素は、コレステリックなフィルムを例えばラミネーションにより付与すること、又は、コレステリックな材料を液晶状態にコーティングして、このコーティングプロセスの後に、この材料を、好ましくは化学線照射を用いること若しくは加熱を用いることのいずれかによって交差結合すること、のいずれかによって、形成することができる。
【0022】
本発明はまた、上記の通り概略を述べた光学的要素の好ましい用途にも関する。好ましくは、光学的要素は、セキュリティ要素として、すなわち、模造、偽造、複製等を防止しなくてはならない任意の目的として、用いられる。この目的のために、セキュリティ要素が、セキュリティドキュメントに対して付与され又はセキュリティドキュメント内に組み込まれるものとすることができる。かかるセキュリティドキュメントは、例えば、紙幣、パスポート、免許証、株券、公債、小切手、クレジットカード、チケット、又は、複製を防止しなければならない他の任意のドキュメントとすることができる。他のアプリケーションは、例えば、ブランド及び製品保護デバイス等を含む。これにより、セキュリティ要素は、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、ファイバ、糸又はパッチの形態を取ることができるが、セキュリティドキュメントと一体化するように形成することもできる。
【0023】
セキュリティ要素はまた、包装紙、包装箱や封筒等のような包装のための手段に付与又は組み込むことができ、さらには、セキュリティ要素は、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、ファイバ、糸又はパッチ等の形態を取ることができる。
【0024】
本発明に係る光学要素の別の好ましい用途は、装飾アプリケーションである。
【0025】
本発明のさらなる実施形態が、従属請求項に記載されている。
【0026】
本発明の好ましい実施形態が添付図面において示されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、異方性散乱表面を有する光学デバイスのイルミネーション(従来技術)を示す図である。
【図2】図2は、異方性散乱表面を有する光学デバイスのイルミネーション(従来技術)を示す図である。
【図3】図3は、反射性干渉フィルムの上部に異方性散乱を組み合わせた基本的な形態を示す図である。
【図4】図4は、付加的な表面保護コーティングを有する図3に係るデバイスを示す図である。
【図5】図5は、基板の上の散乱フィルム及び反射性層を用いてコーティングした後に干渉層を用いてコーティングした表面を有する、図4に係るデバイスを示す図である。
【図6】図6は、1つの反射体が1つの異方性散乱反射体である、簡単なファブリ−ペロ共振体を表わすカラーシフトデバイスを示す図である。
【図7】図7は、1つの反射体が1つの異方性反射体である、さらなるカラーシフトデバイスを示す図である。
【図8】図8は、反射性コレステリックフィルムの上部に異方性散乱層を組み合わせた形態を示す図である。
【図9】図9は、付加的な表面保護コーティングを有する図8に係るデバイスを示す図である。
【図10】図10は、基板の上に異方性散乱フィルムを有し、反射性金属層によりコーティングされた後に干渉層によりコーティングされる表面を有する、図9にかかるデバイスに類似したデバイスを示す図である。
【図11】図11は、金属化反射層をなくしているが大きな又は小さな屈折率のフィルムとしての干渉層を有する、図10に係るデバイスに類似したデバイスを示す図である。
【図12】図12は、異方性散乱フィルムが金属化され液晶コレステリック材料によってコーティングされるデバイスを示す図である。
【図13】図13は、異方性散乱フィルムが液晶コレステリック材料によってコーティングされ、背面から観測されるデバイスを示す図である。
【図14】図14は、大きな深さの溝/ピットを有する異方性散乱フィルムが誘電性フィルムによってコーティングされるデバイスを示す図である。
【図15】図15は、グラフィカルなパターンを有する異方性散乱層の幾何学的パターン及びその配向を示す図である。
【図16】図16は、配向させていないバックグランドを有する異方性散乱層の幾何学的パターン及びその配向を示す図である。
【図17】図17は、白色及び黒色のピクチャ及び異方性バックグランドから生ずる異方性散乱層における幾何学的パターン及びその配向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本件特許出願において開示されている新規な光学的デバイスは、セキュリティのレベルを相乗的に向上させることに繋がる将来現れる2つの異なるセキュリティ技術(A)と(B)とを組み合わせて合体させることによる発明性に基づいている。技術(A)は、異方性散乱構造により作製されるピクセルを用いて表面レリーフイメージの生成を可能とんする技術に関連する。技術(B)は、カラーシフト効果の生成を可能とする技術を含む。本ケースでは、カラーシフト効果は、コレステリック材料に基づく層、又は、薄いフィルム干渉効果を呈する層に起因する。これらの技術の概略は以下の通りである。
(A)異方性拡散体
散乱は、多くの異なる材料表面での透過又は散乱において発生しうる。セキュリティアプリケーションにとっては、反射デバイスが、より重要なものであり、本件出願ではこの反射デバイスを主に考慮する。異方性散乱表面からの散乱した光は、図1に示すような小さな入射角についての軸対称散乱プロファイルにより特徴付けられる。散乱表面が等方性でなく図2に示すように異方性のものである場合には、出射する光の分布もまた異方性である。異方性表面は、例えば異方性方向によって特徴付けられうる。したがって、出力光の分布は、対応する方位角に依存する。このことは、散乱した光が或る方位角に集中させられることを意味する。
【0029】
図1は、散乱表面1を示す光学デバイスのイルミネーションを表現している。コリメートされた入射光2が、特有の軸対称出力光分布及び特有の発散角度4を有する新たな出射方向3に、向けられる。
【0030】
一方、図2は、異方性散乱表面5を有する光学デバイスのイルミネーションを表現している。コリメートされた入射光2が、対応する方位角7、7’に依存する特有の出力光分布6を有する新たな出射方向に向けられている。
【0031】
ここでは、異方性散乱表面を、付加的にパターン化されるほぼ非周期的に光学的に有効な構造として理解しなければならない。このことが、異方性のパターン化された散乱表面を、ほぼ周期的に光学的に有効な構造であるホログラフィック構造と相違させている。このほぼ周期的に光学的に有効な構造においては、この構造内に蓄えられる(グラフィカルな)情報の視野角依存性は、周期的な構造における干渉効果に起因している。これらのほぼ周期的なホログラフィック構造の場合には、このことが、本来的に、グラフィカルな情報の視野角依存性に重ね合わされるカラーシフト効果に繋がる。対照的に、パターン化された異方性散乱表面は、このような所謂レインボウ効果には繋がらない、すなわち、視野角依存性は、一方では、遥かに明白かつ明瞭なものであり、すなわち、異なるグラフィカル要素の間において遥かに分離した遷移を有しており、他方では、カラーシフト又は空間的な「レインボウ」効果によって重ね合わせられず、これが強力な角度依存性となり、したがって、人間の目によって明確でなく不明瞭に認識される。
【0032】
適切な製造技術によれば、各ピクセルが独自の異方性方向を持った異方性散乱領域を示すようなマイクロ構造の表面を形成することが可能である。ここで説明するデバイスの第1の光学的な効果は、このようなピクセルに基づく。このようなデバイスの光学的な特徴は、以下の通りである。
【0033】
a)高い空間的周波数を示す散乱構造について、高解像度のイメージ、ロゴ、マイクロテキスト及び類似物が可能である。
b)画像の観察された強度の分布は、視野角度に依存するものであり、例えば、本デバイスが傾斜又は回転したときに、ポジティブネガティブイメージの反転
c)散乱角度が充分に大きい場合には、イメージは、大きな視野角度から見ることできる。
d)ここで考えているマイクロ構造は、非周期的なものであるので、特有の空間カラーは観察されない。このことは、周期的である、又は、2、3の周期的な構造の組み合わせた構造を有するホログラムとは対照的である。
e)a)乃至d)の性質に基づくデバイスは、そのデバイスをこれまでのホログラムと異なるように見えさせる。
【0034】
このようなデバイスをコストの面で効果的に大量に製造するためには、散乱効果がバルク効果ではなく表面効果に起因するものであることが、望ましい。この場合、散乱表面構造は、通常の複製技術によって複製することができる。これは、硬い金属のマスターシム、このマスターの派生を製造すること、薄いフィルムのレプリカを紫外線キャスティング又はホットエンボシングによって生成する際に用いられる適切なワークツール(work-tool)の再結合及び製造を、含む。
【0035】
一般的な光学的散乱要素の開発及び製造は、長い伝統を有するが、長い間、等方性散乱デバイスに限定されている。ここ数年の間において、高効率の均一な異方性散乱デバイスが、様々な光学的アプリケーションについて開発されてきている。このような散乱デバイスは、様々な光源のためのホモジナイザ(homogenizer)及び光成形(light shaping)デバイスとして、又は、液晶デバイスにおける輝度向上フィルムとして、用いることができ、これらのデバイスは、米国特許第5,534,386号及び米国特許第6,522,374号において開示されている。このような拡散体の異方性は、光学デバイス全体において均一である。
【0036】
しかしながら、ピクセルと予め定められた方向に光を散乱させる領域とを保持する、光学的な散乱デバイスはほとんど存在しない。ここ数年の間において、本出願人は、かかる技術を開発した。第1のステップでは、薄いフォトポリマー、アライメント層が、好適な基板の上にコーティングされる。パターン化され線形的に偏光された紫外線光の助けによって、例えば、1又はそれ以上のフォトマスク及び繰り返された露出を用いて(或いは、フォトマスクを用いた1回の露光、1つのステップにおいてパターン化された照射に繋がるマスクの偏光、又は、レーザスキャニング方法等を用いて)、潜在性のピクチャーがこの薄いフォトアライメントフィルムに書き込まれる。このフォトアライメント擬似的zy通のさらに詳細な記載は、例えば、米国特許第5,389,698号において見ることができる。露光されたフォトポリマーは、液晶混合物及び交差結合可能な液晶プレポリマーをアラインする能力を有する。第2のステップでは、上述したパターン化されたアライメント層が、交差結合可能な液晶材料と交差結合不可能な液晶材料とを混合したものによってコーティングされる。次に、この液晶の混合物が、好ましくは、化学線の照射(紫外線光)に露光されることにより、交差結合される。このプロセスは、フェイズ分離と、液晶ポリマーの交差結合とを含み、結果として、異方性の散乱性質を有する畝状の薄いフィルムを生ずる。基本的な製造原理及び光学的な振る舞いは、WO−A−01/29148において開示されている。このような異方性の散乱層を作製することについては、文献WO−A−01/29148の開示が本明細書に含められる。光学的なセキュリティデバイスは、上述した技術に従って製造されてきた。このようなデバイスは、非常に魅力的なかつ固有の光学的性質を有する。
【0037】
既に上述した光学的な性質とは別に、この新しいデバイスは、以下のような特徴を有する。
f)上述した位相幾何学的な散乱構造の光学的な性質は、基本的には、表面レリーフ(又はエンボシング可能な)構造であるので、一旦マスターが例えば上述したようなプロセスを用いて利用可能となれば、標準的な複製技術を適用して、このようなデバイスを適切なコストで大量に製造することができる。今日では、コストの面で効果的な普及した2つの複製技術は、UVエンボシング及びホットエンボシングである(例えば、M.T.Galeによる"Replication techniques for diffractive optical elements" in Micorelectronic Engineering, Vol. 34, page 321 (1997)を参照されたい)。これら両方の技術が上述した異方性散乱表面レリーフに適合するものであることが、判明している。
g)製造プロセスは、本件出願人によって開発された特許性のある技術に基づいており、これらのアプリケーションについての分子レベルに対する新規な材料デザインに依存する。この特許性のある技術は、さらに、セキュリティレベルを増大させる。
【0038】
上述した方法だけでなく、他の光学的製造技術を用いて、パターン化された異方性表面レリーフ散乱フィルムを生成することができる。このような技術は、多お手媒体アクセス制御、適切なビームライタ(例えば電子又はレーザ)を用いてパターン化される薄いレジストフィルムに基づくことができる。別の手法は、異方性の楕円状のスペックルを有するフォトレジストを露光することに基づくものである。異なる方位角的な配向(orientation)を有する異方性散乱領域を得るために、少なくとも1つのマスクを用いた多数回の露光が有用である。
【0039】
(B)カラーシフト効果
カラーシフトは、例えば、1又はそれ以上の適当な層によって生成されうる。このことは、光がカラーシフト層に反射したとき(カラーシフト層から伝達されたとき)に、観察者が或る色を見ること、及び、本デバイスを傾斜させることにより、色が明確に変化することが認識されること、を意味する。以下に概略を説明するような2つの異なるカラーシフト技術が考えられる。
【0040】
・干渉効果によるカラーシフト
第1のグループのカラーシフト効果は、薄い光学的フィルムにおける光の干渉によって得られる(例えば、J.A.Dobrowolski,"Optical thin-film security devices", in "Optical Document Security" ed. R. L. Van Renesse, Artechouse Boston 1998を参照されたい)。層状の薄膜の多くの異なる組成物のシステムが実現可能である。特有の反射スペクトルが、例えば垂直光入射(normal light incidence)によって得られる。反射又は伝達スペクトルは、入射角度が増加するにつれて短波長側に向かってシフトさせられる。誘電体層及び金属層の組み合わせであることが多い、多層の薄膜(フィルム)システムもまた、誘電体材料のみを用いて実現可能である。この場合には、異なる屈折率を有する複数の薄いフィルムが必要とされる。
【0041】
少なくとも1つが部分的に透明である金属フィルムであるような2つの金属フィルムの間に、1つの誘電性フィルムを組み合わせることにより、強力なカラーシフトを得るために3つの層しか必要とされない。このような薄膜干渉多層システムは、ファブリ−ペロ共振体(resonator)を提供する。クロム及びアルミニウムは、このようなアプリケーションに好適な2つの金属であり、例えばスパッタリング又は蒸着によってポリマー膜の上に堆積させることができる。セキュリティデバイスが、薄い干渉フィルム又はこのようなフィルム片のいずれかの上に製造されてきた。これらの例は、米国特許第5,084,351号及び米国特許第6,686,042号において見ることができる。
【0042】
・コレステリックカラーシフトフィルム
ここで説明するデバイスに利用できる第2のグループのカラーシフト層は、コレステリックフィルムである。コレステリックポリマー液晶材料の光学的効果は、現在、例えば米国特許第4,780,383号及び米国特許第6,414,092号において記載されているように、インクをカラーシフトさせる際の薄いフィルム又は片として用いられている。
【0043】
平面の配向されたコレステリック材料は、波長がほぼλ0=P0<n>辺りの垂直入射光に対する反射体として振舞う。ここで、P0は、コレステリック材料のピッチを意味し、<n>は、1種の円形状に偏光した光についてのコレステリック材料の平均屈折率である("L.M. Blinov, Springer 1994 Electro-optic effects in liquid crystal materials"を参照されたい)。反射バンドの幅は、Δλ=P0Δnにより、コレステリック材料の異方性に比例する。反射バンドは、次の式に示すように、入射角θが増加するにつれて、短波長側に向かって移動する。
【数1】

【0044】
典型的な材料としては、垂直入射においてオレンジ色の反射は、緑色及び青色に向かって45°辺りの角度でありかつすれすれ入射以下で進行する。
【0045】
カラーシフトをベースにしたコレステリックフィルムの光学的な特徴として、コレステリック液晶材料の配向が重要である。基板に対して垂直な光学(螺旋)軸を有する、完全に平面に配向されたコレステリック材料は、正反射した光(specularly reflected light)のみしか見えないので、ほとんど魅力的なフィルムとはならない。コレステリックフィルムを視野角度に敏感とならないようにするためには、コーティングされたコレステリック材料の螺旋軸が或る角度内で垂直である基板の周りにランダムに分布されるように、基板の表面を扱うことが有用である。
【0046】
典型的には、単一層のコレステリックフィルムは、全体が偏光されていない可視光スペクトルのうちの比較的に小さな部分のみしか反射しない。反射して色が付けられる光の量を増加させるためには、付加的なコレステリック層を合わせて、スペクトルのバンド幅を広げるか、又は、他の偏光状態(右及び左において円形状に偏光した光)を含めることができる。経済的な観点から、この手法は、付加的なコレステリック層によって発生する付加的なコストのために、ほとんど満足のいくものではない。彩度(color saturation)を増加させる別の手段は、適切なバックグランドを選択することによるものであり、これはまた、全反射した光にも寄与する。黒色の又は反射しないバックグランドが、最も素晴らしい結果を与える。
【0047】
他方、より明るいバックグランド及び/又は色が付けられたバックグランドはまた、黒色のバックグランドにおける従来のコレステリックなフィルムのカラーシフト効果とは異なって見える、非常に魅力的なカラー効果に繋がる。この手法をさらに拡張したのが、染料を有するコレステリック材料をドーピングして、この染めたコレステリック材料の単一層が2つの色の寄与(color contribution)、すなわち、コレステリック成分による反射と染料による吸収とを示すようにすることである。このようなカラーシフトフィルムに関する議論は、例えば、「F. Moia, "New colour shifting security devices", Optical Security and Counterfeit Deterrence Techniques V, San Jose, USA, 2004, Proceedings of SPIE, Volume 5310 (SPIE paper #5310-32)」において示される。染めたコレステリックフィルムはまた、本明細書で開示されるデバイスと組み合わせることにも適している。
【0048】
上述したように、新しい魅力的なセキュリティアプリケーションが、さらにピクセルに基づいた(pixelated)又はパターン化されたマイクロ構造の生成を可能にする異方性散乱デバイスを用いて、実現可能である。各ピクセル又は各パターンは、独自の方位角的な配向を保持する。本発明は、コレステリック材料を含むカラーシフト膜を持ったこのような複数の異方性散乱構造を相乗的に合体させる若しくは組み合わせることに、又は、薄いフィルム効果に起因する干渉効果に基づくものである。
【0049】
異方性散乱膜とカラーシフト膜とを組み合わせる1つの手法は、一方のタイプの層を別の層の上に付加することによる。以下に説明する例は、反射タイプのみのデバイスを含む。このようなデバイスの伝達対応部もまた、実現可能である。観測者が図3乃至図14における上方から見るものとし、デバイスが、接着、ラミネート、コーティング若しくは他の手法によって、保護しなければならない物体の上に付与されるか、又は、この物体と一体化される、ということを理解されたい。
【0050】
図3は、反射干渉フィルム11の上部に異方性散乱層10を組み合わせる基本的なものを示す。このようなフィルムは、散乱フィルムのすべての性質と、カラーシフト干渉フィルムのすべての性質とを保持する。カラー干渉フィルム11は、ガラス、金属若しくは特別に準備された紙の基板12の上にだけでなく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等といったような典型的なプラスチック基板12の上にも同様に、コーティング、プリント、ラミネート、又は、ホットスタンプ(hot-stamp)若しくはコールドスタンプ(cold-stamp)される。イメージ、ロゴ又は他の任意の上方を有する異方性フィルム10が、層状のフィルム11の上部に位置している。
【0051】
図3に係るカラーシフトデバイスでは、エンコードされたイメージを有する表面レリーフ10は、保護されておらず、好適な複製技術を用いて複製することができる。この散乱表面レリーフを保護するために、付加的な層13が、本デバイスの上部にコーティングされうる。これが図4に例示されている。したがって、図4は、図3のデバイスに類似しているものの、調整された(小さい又は大きい)屈折率を有する付加的な表面保護コーティング13を有するデバイスを示している。このような保護コーティング13は、散乱フィルム10とは異なる屈折率を有していなければならない。散乱の効率は、表面レリーフの調整深さ(modulation depth)dと、散乱n(10)と保護フィルムn(13)との間の屈折率の相違δnすなわちδn=n(13)−n(10)とに依存する。したがって、δnについてできるだけ大きな値を有して、表面レリーフ調整深さが大きくなり過ぎないようにすることが、適当である。現在では、高い屈折率の反射フィルムを製造者がウェットコーティングすることを可能にする多くの材料が開発されてきている。これらの材料は、高い屈折率を有するナノ粒子に基づいており、散乱が発生しないように粒子のサイズを保持する。このような材料の一例は、TiO2ナノ粒子に基づいている。
【0052】
図5は、図4のデバイスに類似したデバイスを示しているが、ここでは、散乱フィルム10は、基板12の上にコーティング/付与され、表面は、インタフェイス層15により覆われた反射金属層14によってコーティングされている。最終的に、カラーシフト層11が、本デバイスの上部にコーティング/付与されている。
【0053】
図3乃至図5に示すデバイスでは、一般的な干渉フィルム11が用いられる。このフィルムは、様々な誘電性のサブフィルムにより構成されるものであり、及び/又は、吸収金属フィルムを含むことができる。簡単な干渉フィルムは、3つの層により構成される、すなわち、2つの反射金属フィルムと、中間にある少なくとも1つの誘電性フィルムと、により構成される。このようなファブリ−ペロ共振体タイプの組成物はまた、本明細書においてカラーシフトフィルムとしても用いることができる。
【0054】
このようなファブリ−ペロ共振体に基づいた他の想定される構造が、図6及び図7に示されている。両方のケースにおいて、スペーサフィルム16が、2つの反射体(それぞれ、14、9、及び、14、17)の間における距離であって、本デバイスから観測されることになる色を決定付ける距離を決定する。
【0055】
図6は、1つの反射体が異方性散乱反射体14であるようなファブリ−ペロ共振体を表現している。金属層14は半透明である。このケースでは、基板の上の反射体がフラットなミラー9であり、外側に結合している(out-coupling)反射体は、部分的に反射する散乱ミラー14である。外側に結合している反射体14は、保護フィルム13を用いてコーティングすることができる。
【0056】
図7は、1つの反射体が異方性散乱反射体14であるようなファブリ−ペロ共振体を表現するカラーシフトデバイスを示す。このケースでは、基板の上の反射体14は、異方性散乱ミラーであり、外側に結合している反射体は、フラットな半透明の部分的に反射するミラー17である。外側に結合している反射体は、保護フィルム18を用いてコーティングすることができる。
【0057】
図6及び図7が、2つのフィルムの機械的な組み合わせだけでなく、結果として1つの構造内に2つの光学的な効果を一体化して組み合わせた一体化構造を示している、ということに留意されたい。
【0058】
以下に示す図面は、異方性散乱フィルムとコレステリックカラーシフトデバイスとの組み合わせに基づいているカラーシフトデバイスを示す。
【0059】
図8は、反射コレステリックフィルム20の上部に異方性散乱層10を組み合わせた基本的な形態を示す。このような一体化したフィルムは、散乱フィルムのすべての性質と、カラーシフト干渉フィルムのすべての性質とを、保持して組み合わせる。コレステリックフィルム20は、ガラス、金属若しくは特別に準備された紙の基板12の上にだけでなく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等といったような典型的なプラスチック基板12の上にも同様に、或いは、これらを組み合わせたものの上に、又は、これらの多層構造の上に、コーティング、プリント、ラミネート、又は、ホットスタンプ(hot-stamp)若しくはコールドスタンプ(cold-stamp)される。イメージ又はロゴを有する異方性散乱フィルム10が、層状のフィルム20の上部に位置している。コレステリックフィルム20の下のフィルム21は、基板、又は、基板とコレステリックフィルム20との間のフィルムとすることができるものであり、バックグラウンドフィルムとして機能し、本デバイスの光学的特徴を顕著に決定付ける。黒色のバックグランドフィルム21が、基本的には、特有のコレステリック反射を発生せしめる。色が付けられたバックグランドフィルム21は、異なる色を生じる。特有のコレステリック反射と、色のバックグランド吸収体又は反射体との多くの様々な組み合わせが、実現可能であり、結果として魅力的なデバイスを生じさせる。
【0060】
図8に示すデバイスにおいても、異方性散乱フィルムの表面レリーフを潜在的に複製することが可能であり、したがって、敏感なアプリケーションには、保護フィルムが好適である。図9は、図8のデバイスに類似したデバイスであって、調整した(小さな又は大きな)屈折率を有する付加的な表面保護コーティング22を有するデバイスを示す。
【0061】
適当な染料を用いてコレステリック材料を色付けることによりバックグランドフィルムの効果を直接的にコレステリック層に組み込むことも可能である。このように色付けたコレステリック層は、本デバイスを傾けた際における様々な驚くべきカラーシフトに繋がる。例えば、緑色及び紫色の染料をドーピングした特有の反射を有するコレステリック材料については、0°における緑色からこれより大きな角度(60°)における紫色にまで、非常に顕著なカラーシフトを観測することができる。この手法は、視覚方向から見た場合に異方性散乱フィルム10の下にコレステリックフィルム20を有するデバイスについて、有用である。
【0062】
図10は、図9のデバイスに類似するデバイスであるが、このケースでは、散乱フィルム10が、基板の上にコーティングされ、表面が、反射金属層14によりコーティングされた後、干渉層23によりコーティングされている。干渉層23は、本質的には付与しなければならない訳ではないが、コレステリックフィルムは、空気を有する層23を残して、散乱層に直接的に付与することもできる、ということに留意されたい。最終的には、コレステリックカラーシフト層20が、本デバイスの上部にコーティングされる。
【0063】
図11は、図10のデバイスに類似したデバイスであるが、このケースでは、金属反射層14は存在しておらず、干渉層は、散乱フィルム10及び屈折率フィルム31において良好な反射が生ずるように、大きな又は小さな屈折率のフィルム31である。さらに、バックグランドフィルム30は、繰り返しになるが上述したように重要なものである。
【0064】
上述したように、コレステリックフィルム20は、本デバイスの上のフィルムをラミネートすることにより、交差結合したフィルムとしてコーティングすることができる。別の可能性としては、液晶状態のコレステリック材料をコーティングし、化学線の照射(UV)によるコーティングプロセスの後、又は、熱を付与することすなわち熱的なコーティングプロセスの後に、その材料を交差結合させることである。この手法は、散乱フィルムの孔をコレステリック液晶材料を用いて満たすことができ、この孔をさらなるステップにおいて保護する必要がない、という利点を有する。このような手法が図12に示されている。
【0065】
図12は、異方性散乱フィルム10が金属化され又は部分的に金属化された後、液晶コレステリック材料20を用いてコーティングされるようなデバイスを示す。このコーティングの後、コレステリックフィルム20が紫外線光によって交差結合される。この手法は、図11に示した干渉層をなくし、本デバイスを大幅に簡略化する。図12に係るデバイスは、2つの光学的効果が相互に密接に結合して1つの簡単な構造内に実現された、一体化したデバイスを示している。さらに、金属化ではなく、カラー又は黒色のバックグランドもまた考えられる。
【0066】
図13は、異方性散乱フィルム10が液晶コレステリック材料20によりコーティングされ背面から観測することができるデバイスを示す。この簡単な構成は明らかに保護カバーフィルムを必要としない。また、図13に係る構造は、一体化したデバイスを示す。
【0067】
図14は、さらに、本発明に係る非常に簡単かつ完全に一体化した構造を示す。このケースでは、異方性散乱フィルム10が基板12の上に付与され、この異方性散乱フィルムの表面は、ミラーとして機能する金属層14により金属化されており、この金属層14の上部には、誘電体層32が設けられている。異方性フィルムにおける明白な溝の平均的な深さに加えて、金属層14が、誘電体層32とともに、組み合わされたカラーシフト/イメージ反転効果を生じさせる。図14に係る構造のケースでは、異方性散乱層における溝の平均的な深さは、典型的には、100〜300ナノメートルの範囲にあり、一方、上述してきた図面の構造では、溝の平均的な深さは、50〜150ナノメートルの範囲にある。
【0068】
たとえ干渉カラーシフトを有する異方性散乱が、通常、第1の(部分的な)反射体と、スペーサ層と、異方性散乱層と、第2の(部分的な)反射体と、考えられる保護(passivation)フィルムと、により構成されるとしても、上記複数の(部分的な)反射体のうちの1つが存在しなくとも、このようなデバイスからカラー反射を観測することができ、さらには、散乱層を充分に厚くすることにより、スペーサ層を省略することができる、ということに留意されたい。
【0069】
さらには、ここまでは均一かつ透明な誘電体フィルムであると仮定してきたスペーサ層は、散乱材料により形成することもできる。
【0070】
様々な光学的効果のチューンナップである図15乃至図17が異方性散乱層において考えられる配向パターン(oriantation-patterns)を示すように、異方性層をパターン付けするための多くの可能性がある。パラメータは、関与するゾーンのジオメトリ、それらの方位角配向、及び、角度依存性の散乱特性と共同した異方性の度合である。さらなる詳細については、例えば、WO−A−01/29148を参照されたい。図15乃至図17において与えられた例だけでなく、より多くの構成が考えられる。
【0071】
図15は、均一なバックグランド40とグラフィカルな組成41により構成されるグラフィカルなパターンを有する異方性散乱層の幾何学的パターン及びそのパターンの配向を示す。均一なバックグランド40の散乱構造の配向は、水平な線によって示されたような水平方向に沿っている。実際のグラフィカルなパターン41は、単一の垂直なアライメントを保持している。このようなデバイスは、視野角度及びイルミネーション条件に依存する明確なポジティブネガティブ反転を示す。
【0072】
図16は、グラフィカルパターンを有する異方性散乱層の幾何学的パターン及びそのパターンの配向を、配向されていないバックグランド42とともに示している。ドットがふされた領域が配向されていない領域を表わしている。ハッシュされた異なる領域43によって表わされた様々な異なるグラフィカルゾーンが、独自の配向を有している。これは、このようなデバイスを回転又は傾斜させることにより、異なるグラフィカルゾーンが、本デバイスの配向に依存して照射をする一方、バックグランドは常に同一に見える、ということを意味する。
【0073】
図17は、黒色及び白色のピクチャから生ずる異方性散乱層における幾何学的パターン及びその配向44、45と、等方性バックグランド42とを示す。このようなデバイスについては、黒色及び白色のピクチャがラスタされ、これは、ピクチャ領域が小さなサイズの黒色及び白色のピクチャ要素に細分化されることを意味する。黒色及び白色のゾーンは、本デバイス内において、2つの異方性散乱方向により、好ましくは、90°の配向角度差により、符号化される。このような方法により、グレースケールを有するピクチャが簡単に再現され、このような構成は、視野角度を変更するとポジティブネガティブ反転効果をも示すことになる。
【0074】
<具体的例>
列挙したすべての例(さらなる詳細について後に説明する)について、図15に係る異方性散乱パターン(2つの異なる異方性配向)を用いてきた。1つのパターン化されたクロムマスクを用いて、グラフィカルな説明、ラスタされたグレースケース、及び、高解像度イメージ(ピクチャ)を有するセキュリティデバイスが得られる。ピクセルサイズは、約20マイクロメートル辺りであるが、さらに大きくすることも、さらに小さく(10マイクロメートル未満)することも可能である。
【0075】
(実施例1)
第1の例は、図3に従って製造されている。干渉層11としては、特別に作製された3層ファブリ−ペロ反射体、又は、Edmund Industrial Opticsによって市場において入手可能となっている赤い反射部を有する干渉フィルタが、用いられる。この干渉層11の上には、異方性散乱フィルム10が、WO−A−01/29148に開示されたフィルム準備に従ってコーティングされる。フォトアライメント材料としては、Rolic Technologyからの材料ROP103が、用いられ、スピンコーティングにより又はキロバールコーティング(kbar)により30〜60ナノメートルのフィルム厚さによりコーティングされる。このフィルムは、約3mW/cm2、305nmの線形に偏光された紫外線光を放出するKarl Suess housingの100ワットの水銀ランプによる紫外線光に露光される。この紫外線光は、Moxtek(US)の線形偏光機を用いて偏光される。第1の露光は、また、パターン化されたクロムマスクを用いたフォトアライメント層のマスキングをも含む。線形に偏光された紫外線光を用いた第1の露光は、方位角配向α1により実行される。次に、クロムマスクが除去され、新たな配向を用いた第2の紫外線光の露光が、方位角α2により実行される。第1及び第2の紫外線光の露光について、典型的な露光エネルギは、100及び20mJ/cm2である。パターン化されたクロムマスクは、ピクチャ、グラフィカルな組成物及び/又はマイクロテキストを保持する。よって、上述したデバイスは、暗いゾーン及び明るいゾーンについて2つの異なる配向方向を保持する。2配向角(two-orientation-angle)デバイスにおける最適なコントラストについては、相違α2−α1は90°に調整される。
【0076】
次のステップでは、アライメント層のパターンに従ってパターン化された異方性を有する散乱フィルムが生成される。液晶/交差結合可能な液晶ポリマー溶液の準備、フィルムコーティング(繰り返すが、スピンコーティング及びキロバールコーティングを用いることが可能である)、及び、フォト誘導フェイズ分離(photo-induced phase-separation)が、国際出願第WO−A−01/29148に開示されており、この文献の対応する開示は、本明細書に組み込まれる。最後に、異方性散乱性質を有する畝状の交差結合されたジアクリレートフィルム10が結果として生ずる。原子間力顕微鏡を用いて測定される約50〜150ナノメートルの散乱フィルム厚さを保持する反射フィルムについての良好な光学的性質が得られる。平均的な時間の1〜2ナノメートルの表面畝状化が、好適な視野角度依存性を生じさせる。
【0077】
干渉フィルムと異方性フィルムとの間の距離は、この例で説明するデバイスにおいては重要ではない。したがって、異方性散乱構造を収容する薄い複製されたフィルム10をカラー干渉フィルム11の上にラミネートすることも可能である。
【0078】
小さな視野角度(デバイスの表面から鉛直方向に測定される)において、本デバイスは赤く見え、大きな視野角度では、本デバイスの色は、オレンジ色から最終的には緑色に変化する。同時に、本デバイスを傾斜又は回転させたときには、パターン化された異方性の特有のポジティブ−ネガティブイメージ反転が観測される。
【0079】
(実施例2)
第2の例は、図6に従って製造される。このケースでは、異方性散乱フィルム10は、干渉フィルムの部分であり、したがって、金属層14である。第1のステップでは、層9に繋がるDCスパッタリングにより、基板12がアルミニウムを用いて金属化される。このスパッタリングは、約80ml/minのアルゴン流速、及び、300Wの直流電力により行われる。この例は、アルミニウムスパッタターゲットから90mmの距離を有する。露光時間は120秒である。この結果、可視波長領域について高反射アルミニウムフィルム9が得られる。
【0080】
次に、交差結合可能な材料の薄いフィルムが、金属反射体の上にコーティングされる。このケースでは、シクロペンタノンにおいてブタンジオール−ジアクリレート(BDDA)のうちの15%のジアクリレート溶液が用いられる。この溶液は、1%の「2,6-ジ-(ブチル)-4-ヒドロキシトルエン」とも称されるBHT(ブチルヒドロキシトルエン)、及び、1%のCiba(CH)のフォトイニシエータを用いてドープされる。繰り返すが、このフィルムは、スピンコーティング又はキロバールコーティングにより堆積させることができる。このスペーサフィルム16の厚さは、ファブリ−ペロ共振体の共振器(cavity)を決定するので、最終的なデバイスの色を決定付ける。魅力的な効果(色相及び彩度)を得るために、スペーサフィルムの全体の厚さとしては100〜400ナノメートルが好適である。
【0081】
このスペーサフィルムの上部には、アライメント層及び異方性散乱フィルムが堆積させられる。この手順は、実施例1において説明した通りである。
【0082】
異方性散乱表面の上には、アルミニウムといったような金属14の薄い層が、スパッタリングによって堆積させられる。スパッタリング時間は、30〜60%の伝達を有する半透明なアルミニウムフィルムが生ずるように、今回は大幅に短くされる。これにより、ビビッドな色を発生させるデバイスが生成される。本デバイスの上に付加的なポリマーフィルム13をコーティングすることにより、色が変化しうる。最適な輝度のためには、スペーサフィルムの厚さ及び上部の反射体の透明性に対する最適化を実行しなければならない。
【0083】
繰り返しになるが、異方性散乱フィルム10の既成のレプリカを処理することにより、本デバイスを製造することができる。このケースでは、異方性散乱フィルムのレプリカは、半透明のアルミニウムフィルム14を用いてコーティングされた後、スペーサフィルム16を用いてコーティングされる。最後に、高反射金属フィルム9が、本デバイスの上にコーティングされ、キャリアフィルム12の上にラミネートされる。このデザインはまた、図6に対して逆の順序で対応する。このような製造手順は、ロールツーロールプロセスにより自動化することができる。
【0084】
小さな視野角度では、本デバイスは緑色に見え、大きな視野角度では、本デバイスの色はマジェンタに変化する。同時に、本デバイスを傾斜又は回転させたときに、特有のポジティブ−ネガティブイメージ反転が観測される。
【0085】
(実施例3)
この例については、製造プロセスは、干渉フィルムがここではコレステリックフィルム20によって置き換えられるということを除いて、実施例1に類似する。このようなデバイスの断面が図8に示されている。125マイクロメートルのTAC(三酢酸セルロース)フィルム基板が、キロバールコーティングによりコレステリックフィルム20を用いてコーティングされる。良好なウェッティング状態を得るために、基板12が、プラズマクリーナ、Plasma 400 Cleanerを用いて洗浄される。典型的な洗浄パラメータは、300Wにおいて300mL/minの酸素(O2)及び300mL/minのアルゴン(Ar)である。アライメント層は用いられない。
【0086】
交差結合可能な液晶層の生成は、この例では、次に示すような交差結合可能な液晶ジアクリレート成分が、特に低い融点(Tm35°C)を有する超冷却可能(supercoolable)ネマティック混合物(Mon1:80%、Mon2:15%、Mon3:5%)において用いられ、これにより、室温において交差結合可能な液晶相を用意することができる。
【化1】

【0087】
ネマティック混合物は、付加的には、ピッチ(pitch)を含むコレステリックを用いてドープされる。好適なキラルドーパントは、例えば、次に示すような左向き螺旋方向(left-handed helical sense)を示すST31Lである。
【化2】

【0088】
キラルドーパントの濃度は、4%〜9%であり、さらに好ましくは5%〜6%である。これにより、可視領域において望ましい反射波長バンドが得られるが、濃度を変化させることにより、紫外線領域及び赤外線領域において反射波長バンドを実現することもできる。MEKといったような溶剤における濃度を変化させることによって、幅広い範囲にわたってコレステリックな交差結合可能な液晶層の厚さを調整することが可能であり、これが異なる反射性質に繋がる。コレステリック層の厚さは、意図する波長領域に依存して、1〜10マイクロメートルである。
【0089】
一般的に、このようなコレステリック材料に用いることができる幾つかのタイプのキラルドーパントが知られている。重合可能な族(group)を付加的に備えたキラルドーパントが、例えば、WO−A−98/55473、WO−A−99/64383、WO−A−00/02856及びWO−A−01/47862に開示されている。
【0090】
必要な場合には、周知な添加物、例えば、Irgacure(登録商標)のような安定化又はフォトイニシエータのためのフェノール派生物(derivative)を用いることもできる。濃度を変化させることにより、幅広い範囲にわたって層の厚さを調整することができる。液晶モノマーを交差結合するために、層が不活性環境においてキセノンランプからの等方性の光に露光される。
【0091】
キラルドーパントの濃度は、反射バンドが緑の波長領域内にあるように調整される。本デバイスを傾けることにより、観測者に見える色は青色に変化する。同時に、本デバイスを傾斜又は回転させたときに、特有のポジティブ−ネガティブイメージ反転が観測される。
【0092】
この例では、異方性散乱フィルムが大気に接するが、このことは、散乱マイクロ構造が保護されないので、あまり望ましいことではない。しかしながら、散乱表面は、散乱フィルム材料とは異なる屈折率を有する薄いフィルム22(図9)によって保護される。好適な高屈折率材料は、蒸着により又はナノ粒子状にコーティングすることができるTiO2である。このようなデバイスが図9に示されている。
【0093】
光学的特徴に対する重要な要因は、デバイスのバックグランドである。明るい色については、強力に吸収するバックグランド(黒色)が良好に作用する。しかしながら、調整した反射スペクトルを有する、色が付けられたバックグランドもまた、魅力的であり、魅力的な反射効果を生ずる。
【0094】
色が付けられたバックグランドに代えて、既に説明したように、染料を有する交差結合可能なコレステリック材料をドープすることもできる。小さな視野角度のための特有の緑色反射部と黒色のバックグランド層とを有するコレステリックフィルム20に基づいた例が、図8に従って用意される。これよりも大きな視野角度では、緑色が青色に向かってシフトする。さらには、本デバイスを回転又は傾斜させた場合には、ポジティブ−ネガティブイメージ反転を観測することができる。
【0095】
同一のコレステリックフィルム20が、認識されるデバイスの色にバックグランドが寄与しないように、紫色の染料を用いてドープされている。小さな視野角度では、特有の緑色が依然として観測される。これより大きな視野角度では、緑色は紫色に向かってシフトする。さらには、本デバイスを回転又は傾斜させた場合には、ポジティブ−ネガティブイメージ反転を観測することができる。
【0096】
(実施例4)
この例に関するデバイスの断面が図12に示されている。この例では、異方性散乱フィルムが最初に準備される。表面は、反射性を有するようにするために金属化14されている。コレステリック液晶プリポリマー(実施例3を参照されたい)が、反射性の散乱表面14の上にコーティングされ、紫外線光によって交差結合されている。この構成は、コレステリックフィルムが本デバイスの上部における保護フィルムとしても作用し、完全に一体化した光学デバイスをもたらす、という利点を有する。
【0097】
特有の緑色の反射部を有する例が準備される。対応する異方性散乱フィルムのピクチャは、2つの色として明確に見ることができる。次に示す表は、本デバイスの認識される色を示している。
【表1】

【0098】
本デバイスを傾斜させたときには、大きな視野角度では、緑色のゾーンは仄かな青色に見える。
【0099】
(実施例5)
この例は、図14に示したタイプの単一層のカラーシフトフィルムを用いるさらなる可能性を示している。最初に、パターン化された異方性を有する異方性散乱フィルム10が、実施例1において説明したように、ガラス又はプラスチックといったような透明な基板12の上に準備される。しかしながら、このケースでは、WO−A−01/29148に記載されているような、さらに深い畝状溝が生ずるような方法により、交差結合可能な材料及び交差結合不可能な材料を含んだ溶液を紫外線光に露光することが、選択される。これまでに説明してきた例と同様に、この散乱フィルムはまた、ホットエンボシング又は好適なマスターシムを用いた紫外線キャスティングのような複製方法により生成することもできる。
【0100】
次に、例えばアルミニウムのようなものから作製される反射フィルム14が、実施例2において説明したようなスパッタリング又は蒸着によって異方性散乱フィルム10の上に堆積させられる。最後に、好ましくは、畝状表面が薄いフィルム32によって保護される。
【0101】
本デバイスは、透明な基板を通して観測される。この種類の幾つかの異なるデバイスは、黄色、オレンジ色、赤色、青色及び緑色の反射を示すように、製造される。カラー効果を見ることができる視野角度は、幾分限定され、色が消える角度では、明白な色のない暗い/明るいイメージが見える。このように、上述しかつ他の実施例において用いた標準的な反射性異方性散乱フィルム(これは、白色及び黒色のシェードを示し、かつ、色をかすかに示すことができるのみであるが、)とは対照的に、さらに深い調整深さを有するフィルムは、明確に視認可能なカラー反射イメージを生ずることができる。
【符号の説明】
【0102】
1、5 異方性散乱表面
2 入射光
3 異方性散乱についての散乱光
4 3の発散角度
6 異方性散乱についての出力光分布
7、7’ 6の方位角
9 フラットなミラー
10 異方性散乱層
11 反射性干渉フィルム
12 基板
13 保護層
14 反射性金属層
15、23 干渉層
16 スペーサフィルム
17 部分的に反射性のフラットなミラー
18 保護フィルム
20 反射性コレステリックフィルム
21、30 バックグランドフィルム
22 表面保護コーティング
31 屈折率フィルム
32 誘電性フィルム
40 均一なバックグランド(配向させた)
41 グラフィカルな表現
42 均一なバックグランド(配向させていない)
43 異なる配向領域を有するグラフィカルな表現
44 第1の配向における幾何学的パターン
45 第2の配向における幾何学的パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)と、
視野角度(6)を変化させると及び/又は入射光(2)の角度を変化させると、観測可能なカラーシフトをもたらす手段(9、11、14、16、17、20、21、30、32)と、
を具備することを特徴とする光学要素。
【請求項2】
前記異方性が、好ましくはピクセルに基づいた方式により、イメージに関して局所的に変化するものである、請求項1に記載の光学要素。
【請求項3】
前記異方性が、当該光学要素を傾斜又は回転させると、視野角度(6)に依存したポジティブ/ネガティブイメージ反転を示す、請求項2に記載の光学要素。
【請求項4】
前記異方性拡散体(5、10)が実質的に非周期的に光学的に有効な構造を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学要素。
【請求項5】
前記カラーシフトをもたらす手段がカラーシフト層構造として設けられる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学要素。
【請求項6】
前記異方性拡散体(5、10)及び前記カラーシフト層構造は、視野方向から見られるように一方が他方の下にあるように、配置されている、請求項5に記載の光学要素。
【請求項7】
前記異方性拡散体(5、10)及び前記カラーシフト層構造が少なくとも部分的に一体化されている、請求項5又は請求項6に記載の光学要素。
【請求項8】
前記異方性拡散体(5、10)が、液晶に基づいており、好ましくは、重合体、単量体、低重合体、交差結合可能又は交差結合不可能とすることができるネマティック材料に基づいている、請求項1から請求項7のいずれかに記載の光学要素。
【請求項9】
前記異方性拡散体(5、10)が、位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)
を含む、請求項1から請求項8のいずれかに記載の光学要素。
【請求項10】
前記位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)が、保護層(13)、干渉層(15、23、31)、スペーサフィルム(16)、又は、反射金属層(14)により覆われている、請求項9に記載の光学要素。
【請求項11】
一方が交差結合可能であり他方が交差結合不可能である少なくとも2つの材料の混合物を生成すること、該混合物を基板に付与すること、前記交差結合可能な材料の少なくとも一部分を交差結合すること、前記交差結合不可能な材料の少なくとも一部分を除去すること、により得られるような、位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)を具備し、
好ましくは、前記交差結合可能な材料が、交差結合の間において、例えば、下にある配向層によって又は配向基板表面によって配向状態に維持される、請求項9又は請求項10に記載の光学要素
請求項9又は請求項10に記載の光学要素。
【請求項12】
前記カラーシフトをもたらす手段が、干渉フィルム又はコーティングを含む、請求項1から請求項11のいずれかに記載の光学要素。
【請求項13】
前記干渉フィルム又はコーティングが、誘電性材料に基づく多層薄膜システムを含み、
異なる層における該誘電性材料が異なる屈折率を有する、請求項12に記載の光学要素。
【請求項14】
前記干渉フィルム又はコーティングがファブリ−ペロ共振体(9、14、16、17)の役割を果たす、請求項12又は請求項13に記載の光学要素。
【請求項15】
前記干渉フィルム又はコーティングが、少なくとも1つの部分的に透明な第1の金属フィルム(14、17)と、第2の金属フィルム(9、14)と、これらの金属フィルムの間にある誘電体層(16)とを含む、請求項14に記載の光学要素。
【請求項16】
パターン化された異方性を有する前記異方性拡散体(5、10)が基板(12)の上に設けられ、
パターン化された異方性を有する前記異方性拡散体(5、10)が、反射金属層(14)によって覆われた位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)を含み、
前記異方性拡散体(5、10)は、前記視野方向から見たときに、前記ファブリ−ペロ共振体の前記誘電体層(16)によって直接覆われている、請求項15に記載の光学要素。
【請求項17】
前記カラーシフトをもたらす手段が、コレステリックなフィルム、層又はコーティングを含む、請求項1から請求項16のいずれかに記載の光学要素。
【請求項18】
前記コレステリックなフィルム又はコーティングには色が付けられている、請求項17に記載の光学要素。
【請求項19】
前記コレステリックなフィルムが交差結合されている請求項17又は請求項18に記載の光学要素。
【請求項20】
パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)が基板(12)の上に設けられ、
パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)が反射金属層(14)によって覆われた位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)を含み、
前記異方性拡散体(5、10)は、前記視野方向から見たときに、前記コレステリックな層(20)によって直接覆われている、請求項17から請求項19のいずれかに記載の光学要素。
【請求項21】
前記コレステリックなフィルムの表面、層又はコーティングが、位相幾何学的に構造化された畝状構造(10)を有し、パターン化された異方性を有する前記異方性拡散体(5、10)を形成する、請求項17から請求項19のいずれかに記載の光学要素。
【請求項22】
前記カラーシフトをもたらす手段が、基板(12)の上に、コーティング、プリント、ラミネート、ホットスタンプ又はコールドスタンプされた少なくとも1つのフィルムとして設けられ、
好ましくは、前記基板は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET若しくはこれらの混合物といったようなプラスチック材料により形成され、又は、ガラス、金属、紙若しくはこれらの組み合わせにより形成されている、請求項1から請求項21のいずれかに記載の光学要素。
【請求項23】
請求項1から請求項22のいずれかに記載の光学要素を作製する方法であって、
視野角度(6)を変化させると及び/又は入射光(2)の角度を変化させると、観察観察可能なカラーシフトをもたらす手段(9、11、14、16、17、20、21、30、32)が、基板(12)の上に、コーティング、プリント、ラミネート、接着、ホットスタンプ若しくはコールドスタンプされ、又は、パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)の上に、コーティング、プリント、ラミネート、接着、ホットスタンプ若しくはコールドスタンプされる、ことを特徴とする方法。
【請求項24】
パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)としての位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)が、一方が交差結合可能であり他方が交差結合不可能である少なくとも2つの材料の混合物を生成すること、該混合物を基板に付与すること、前記交差結合可能な材料の少なくとも一部分を交差結合すること、前記交差結合不可能な材料の少なくとも一部分を除去すること、により生成され、
好ましくは、前記交差結合可能な材料が、交差結合の間において、例えば、下にある配向層によって又は配向基板表面によって配向状態に維持される、請求項23に記載の光学要素を作製する方法。
【請求項25】
パターン化された異方性を有する異方性拡散体(5、10)としての位相幾何学的に構造化された畝状表面構造(10)が、紫外線キャスティング又は3次元構造のスタンパを用いたエンボシングにより生成される、請求項23に記載の光学要素を作製する方法。
【請求項26】
前記カラーシフトをもたらす手段が、
コレステリックなフィルムを例えばラミネーションにより付与すること、又は、
液晶状態でコレステリックな材料をコーティングして、このコーティングプロセスの後に、前記材料を好ましくは化学線照射又は加熱のいずれかによって交差結合すること、
のいずれかにより生成された、コレステリックなフィルム、層若しくはコーティングである、請求項23から請求項25のいずれかに記載の光学要素を作製する方法。
【請求項27】
セキュリティ要素として用いることを特徴とする、請求項1から請求項22のいずれかに記載の光学要素の用途。
【請求項28】
前記セキュリティ要素が、紙幣、スポート、免許証、株券、公債、小切手、クレジットカード、チケット等のようなセキュリティドキュメントに、付与される又は組み込まれ、
前記セキュリティ要素が、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、ファイバ、糸又はパッチ等の形態を取ることができる、請求項27に記載の用途。
【請求項29】
前記セキュリティ要素が、ブランド若しくは製品保護デバイスとして、付与され、又は、ブランド若しくは製品保護デバイス内に組み込まれ、
前記セキュリティ要素が、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、ファイバ、糸又はパッチ等の形態を取ることができる、請求項27に記載の用途。
【請求項30】
前記セキュリティ要素が、包装紙、包装箱や封筒等のような包装のための手段に付与又は組み込まれ、
前記セキュリティ要素が、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、ファイバ、糸又はパッチ等の形態を取ることができる、請求項27に記載の用途。
【請求項31】
装飾アプリケーションとして用いることを特徴とする、請求項1から請求項22のいずれかに記載の光学要素の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−159851(P2012−159851A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66624(P2012−66624)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2007−521765(P2007−521765)の分割
【原出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】