説明

異方性導電ペースト、接続構造体及び接続構造体の製造方法

【課題】接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、更に導通信頼性を高めることができる異方性導電ペースト、並びに該異方性導電ペーストを用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電ペーストは、熱硬化性成分と、光硬化性成分と、導電性粒子5とを含む。本発明に係る異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの粘度は、200Pa・sを超え、1000Pa・s以下である。本発明に係る接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、上記異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電ペーストに関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に用いることができる異方性導電ペースト、並びに該異方性導電ペーストを用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、(1)エポキシ樹脂と、(2)ゴム状ポリマー粒子と、(3)熱活性な潜在性エポキシ硬化剤と、(4)高軟化点ポリマー粒子と、(5)導電性粒子とを含む異方性導電材料が開示されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、ラジカル重合性物質(1)と、加熱により遊離ラジカルを発生する重合開始剤(2)と、エポキシ樹脂(3)と、カチオン重合性開始剤(4)とを含む異方性導電材料が開示されている。上記ラジカル重合性物質(1)としては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの内の少なくとも1種の骨格を6個以上有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられている。
【0006】
下記の特許文献3には、高分子(A)と、光硬化性樹脂(B)と、該光硬化性樹脂(B)を硬化させる硬化触媒(C)と、反応性希釈剤(D)と、導電性粒子(E)とを含む異方性導電材料が開示されている。この異方性導電材料の23℃での粘度は5000cps〜300000cpsである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−345010号公報
【特許文献2】特開2006−127776号公報
【特許文献3】特開平11−335641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0009】
特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料では、上記電極間の電気的な接続の際に、ガラス基板上に塗布された異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子が、硬化前に大きく流動することがある。このため、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できないことがある。さらに、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置できなかったり、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されたりすることがある。このため、得られた接続構造体の導通信頼性が低いことがある。特に、従来の異方性導電材料を用いて接続構造体を作製すると、上下の電極間の位置がずれやすく、導通信頼性が低くなりやすいという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、更に導通信頼性を高めることができる異方性導電ペースト、並びに該異方性導電ペーストを用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性成分と、光硬化性成分と、導電性粒子とを含み、25℃及び2.5rpmでの粘度が200Pa・sを超え、1000Pa・s以下である、異方性導電ペーストが提供される。
【0012】
本発明に係る異方性導電ペーストのある特定の局面では、該異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの粘度は300Pa・sを超える。
【0013】
本発明に係る異方性導電ペーストの他の特定の局面では、該異方性導電ペーストは、上記熱硬化性成分及び上記光硬化性成分として、硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化開始剤とを含む。
【0014】
本発明に係る異方性導電ペーストのさらに他の特定の局面では、上記光硬化開始剤は、光カチオン開始剤を含有する。
【0015】
本発明に係る異方性導電ペーストのさらに他の特定の局面では、上記硬化性化合物は、重量平均分子量が500以上、50000以下である硬化性化合物を含有する。
【0016】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、該接続部が、本発明に従って構成された異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。
【0017】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、第1の接続対象部材の上面に、異方性導電ペーストを配置して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、該異方性導電ペースト層に光を照射することにより硬化を進行させて、上記異方性導電ペースト層をBステージ化する工程と、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に、第2の接続対象部材を積層する工程とを備え、上記異方性導電ペーストとして、本発明に従って構成された異方性導電ペーストが用いられる。
【0018】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、上記異方性導電ペースト層をBステージ化する工程において、粘度が3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下となるように、上記異方性導電ペースト層をBステージ化する。
【0019】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上前記第1の接続対象部材が上面に第1の電極を有し、上記第2の接続対象部材が下面に第2の電極を有し、上記第1,第2の電極を、上記導電性粒子を介して電気的に接続する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る異方性導電ペーストは、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子とを含み、25℃及び2.5rpmでの粘度が200Pa・sを超え、1000Pa・s以下であるので、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、更に導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電ペーストを用いた接続構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電ペーストを用いて、接続構造体を得る各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る異方性導電ペーストは、熱硬化性成分と、光硬化性成分と、導電性粒子とを含む。本発明に係る異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの粘度(以下、粘度η1と記載することがある)は、200Pa・sを超え、1000Pa・s以下である。上記粘度η1は、塗布前の異方性導電ペーストの粘度である。
【0024】
本発明に係る異方性導電ペーストが上記組成を有し、かつ上記粘度η1の範囲を満足すれば、該異方性導電ペーストを用いて第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、更に導通信頼性を高めることができる。特に、上記粘度η1は、接続構造体における電極間の位置ずれの抑制に大きく寄与する。なお、理由は明らかではないが、Bステージ化前の異方性導電ペーストの上記粘度η1が上記範囲を満足すれば、Bステージ化された異方性導電ペースト層上に接続対象部材を積層する際に上層の接続対象部材が位置ずれしにくくなる。
【0025】
また、本発明に係る異方性導電ペーストにおける上記組成の採用によって、光の照射により、異方性導電ペーストの硬化を進行させることができる。例えば、異方性導電ペーストを光の照射により良好にBステージ化させた後に、加熱することでBステージ化した異方性導電ペーストを本硬化させることができる。このため、適切な時期に異方性導電ペーストに光を照射することにより、異方性導電ペースト及び該異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子の流動を抑制できる。
【0026】
本発明に係る異方性導電ペーストは、上記熱硬化性成分及び上記光硬化性成分として、硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化開始剤とを含むことが好ましい。該光硬化開始剤は、光カチオン開始剤を含有することが好ましい。本発明に係る異方性導電ペーストは、光カチオン開始剤を含むことが好ましい。この場合には、特に、異方性導電ペーストに光を照射したときに、導電性粒子により光が遮られて光が直接照射されなかった異方性導電ペースト層部分の硬化も、光カチオン開始剤(カチオン硬化剤)の作用によるカチオン反応によって充分に進行させることができる。この結果、異方性導電ペースト及び該異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子の流動がかなり抑えられる。従って、光カチオン開始剤の使用により、異方性導電ペーストにより形成された接続部及び導電性粒子を特定の領域に配置でき、接続構造体における導通信頼性をより一層高めることができる。
【0027】
上記異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの上記粘度η1は、好ましくは210Pa・s以上、より好ましくは250Pa・s以上、更に好ましくは300Pa・sを超え、特に好ましくは310Pa・s以上、好ましくは900Pa・s以下、より好ましくは800Pa・s以下である。すなわち、接続構造体を得る際の配置(塗布)前の上記異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの上記粘度η1は、上記下限以上及び上記上限以下であることが好ましい。この場合には、例えば基板等の塗布対象部材(第1の接続対象部材)上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。さらに、電極と導電性粒子との間の樹脂成分を容易に取り除くことができ、電極と導電性粒子との接触面積を大きくすることができる。さらに、塗布対象部材(第1の接続対象部材)の表面が凹凸である場合に、該凹凸の表面に異方性導電ペーストを充分に充填させることができ、硬化後にボイドが生じ難くなる。また、異方性導電ペースト中において導電性粒子が沈降し難くなり、導電性粒子の分散性を高めることができる。なお、上記粘度η1は、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で測定される。
【0028】
本発明に係る異方性導電ペーストについて、光の照射により硬化が進行されて、Bステージ化した後の粘度(以下、η2と略記することがある)は好ましくは2000Pa・s以上、好ましくは15000Pa・s以下である。異方性導電ペースト及び導電性粒子の流動をより一層抑制する観点からは、上記粘度η2はより好ましくは3500Pa・s以上、更に好ましくは3510Pa・s以上、より好ましくは12000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。上記粘度η2の測定温度は好ましくは20℃以上、好ましくは30℃以下である。上記粘度η2の測定温度は25℃であることが特に好ましい。
【0029】
なお、上記粘度η2が2000Pa・s以上、15000Pa・s以下であれば、異方性導電ペーストの流動を充分に抑制でき、導通信頼性を高めることができる。但し、上記粘度η2が2000Pa・s以上、3500Pa・s以下である場合と比べて、上記粘度η2が3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下である場合の方が、電極間の位置ずれをより一層抑制できる。なお、上記粘度η2は、レオメーターを用いて測定される。
【0030】
本発明に係る異方性導電ペーストを硬化させる方法としては、異方性導電ペーストに光を照射した後、異方性導電ペーストを加熱する方法、並びに異方性導電ペーストを加熱した後、異方性導電ペーストに光を照射する方法が挙げられる。また、光硬化の速度及び熱硬化の速度が異なる場合などには、光の照射と加熱とを同時に行ってもよい。なかでも、異方性導電ペーストに光を照射した後、異方性導電ペーストを加熱する方法が好ましい。光硬化と熱硬化との併用により、異方性導電ペーストを短時間で硬化させることができる。
【0031】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電ペーストに好適に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0032】
(硬化性化合物)
上記硬化性化合物は、加熱により硬化する熱硬化性化合物と光の照射により硬化する光硬化性化合物とを含むことが好ましく、加熱及び光の照射により硬化する熱及び光硬化性化合物を含有することも好ましい。上記熱及び光硬化性化合物は、熱硬化性化合物にも相当し、光硬化性化合物にも相当する。上記硬化性化合物が上記熱及び光硬化性化合物を含有する場合に、上記硬化性化合物は、上記熱硬化性化合物を含有していてもよく、上記光硬化性化合物を含有していてもよい。
【0033】
上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物を含有することが好ましい。エポキシ基を有する硬化性化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記硬化性化合物は、チイラン基を有する硬化性化合物を含有することがより好ましい。上記エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0035】
上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0036】
上記異方性導電ペーストの硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物の全体100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記硬化性化合物の全量が上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物であってもよい。上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物と該エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物とは異なる他の硬化性化合物とを併用する場合には、上記硬化性化合物の全体100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物の含有量は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。
【0037】
上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物とは異なる他の硬化性化合物をさらに含有していてもよい。該他の硬化性化合物としては、不飽和二重結合を有する硬化性化合物、フェノール硬化性化合物、アミノ硬化性化合物、不飽和ポリエステル硬化性化合物、ポリウレタン硬化性化合物、シリコーン硬化性化合物及びポリイミド硬化性化合物等が挙げられる。上記他の硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記異方性導電ペーストの硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含有することが好ましい。上記異方性導電ペーストの硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をさらに一層高めたりする観点からは、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物の使用により、Bステージ化した異方性導電ペースト全体(光が直接照射された部分と光が直接照射されなかった部分とを含む)で硬化率を好適な範囲に制御することが容易になり、得られる接続構造体における導通信頼性がより一層高くなる。
【0039】
Bステージ化した異方性導電ペースト層の硬化率を容易に制御し、更に得られる接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
【0040】
Bステージ化した異方性導電ペースト層の硬化率を容易に制御し、更に得られる接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
【0041】
上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物が挙げられる。
【0042】
上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも使用可能である。
【0044】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られる硬化性化合物であることが好ましい。この硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0045】
上記硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物を含有することが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0046】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
上記硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0048】
また、上記硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0049】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
また、異方性導電ペーストの粘度を好適な範囲に容易に制御し、接続構造体における電極間の位置ずれを抑制し、かつ接続構造体の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性化合物は、重量平均分子量が500以上、50000以下である硬化性化合物(以下、硬化性化合物Xと記載することがある)を含むことが好ましい。
【0052】
異方性導電ペーストの粘度を好適な範囲に容易に制御し、接続構造体における電極間の位置ずれを抑制し、かつ接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性化合物Xは、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にビニル基又はエポキシ基を有し、重量平均分子量が500以上、50000以下である硬化性化合物(以下、硬化性化合物X1と記載することがある)を含むことが好ましい。該硬化性化合物X1は、側鎖にビニル基を1個以上有するか、又は側鎖にエポキシ基を1個以上有することが好ましい。上記硬化性化合物X1は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン又はレゾルシノールと、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル又はレゾルシノールジグリシジルエーテルとの反応物に、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート又は4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテルを反応させることにより得られる硬化性化合物であることが好ましい。上記反応物は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの第1の反応物であるか、レゾルシノールと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとの第2の反応物であるか、又はレゾルシノールとレゾルシノールジグリシジルエーテルとの第3の反応物であることが好ましい。
【0053】
異方性導電ペーストの粘度を好適な範囲に容易に制御し、接続構造体における電極間の位置ずれを抑制し、かつ接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性化合物の全体100重量%中、上記硬化性化合物X,X1の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記硬化性化合物の全量が上記硬化性化合物X,X1であってもよい。上記硬化性化合物X,X1と該硬化性化合物X,X1とは異なる他の硬化性化合物とを併用する場合には、上記硬化性化合物全体100重量%中、上記硬化性化合物X,X1の含有量は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。
【0054】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤が使用可能である。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、熱ラジカル開始剤ではない熱硬化剤であってもよい。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
異方性導電ペーストを低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電ペーストの保存安定性が高くなるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0056】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0057】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0058】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0059】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の加熱により硬化可能な硬化性化合物(上記熱硬化性化合物)100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストが充分に熱硬化する。
【0060】
(光硬化開始剤)
本発明に係る異方性導電ペーストは、光カチオン開始剤を含むことが好ましい。光カチオン開始剤の使用により、光照射後の異方性導電ペーストの硬化を速やかに進行させることができる。さらに、導電性粒子により光が遮られて光が直接照射されなかった異方性導電ペースト層部分も、光カチオン開始剤の作用によるカチオン反応によって、硬化を充分に進行させることができる。
【0061】
上記光カチオン開始剤は特に限定されない。上記光カチオン開始剤として、従来公知の光カチオン開始剤が使用可能である。上記光カチオン開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記光カチオン開始剤(光カチオン硬化剤)としては、ヨードニウム系光カチオン硬化剤、オキソニウム系光カチオン硬化剤及びスルホニウム系光カチオン硬化剤等が挙げられる。なかでも、異方性導電材料の硬化性をより一層良好にし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、スルホニウム系光カチオン硬化剤が好ましい。上記ヨードニウム系光カチオン硬化剤としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系光カチオン硬化剤としては、例えば、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート)等が挙げられる。上記スルホニウム系光カチオン硬化剤としては、例えば、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0063】
上記光カチオン開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の光の照射により硬化可能な硬化性化合物(上記光硬化性化合物)100重量部に対して、上記光カチオン開始剤の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光カチオン開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストが適度に光硬化する。異方性導電ペーストに光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電ペーストの流動を抑制できる。
【0064】
光の照射により硬化可能であるように、上記異方性導電ペーストは、光ラジカル開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル開始剤の使用により、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。光の照射により一層効率的に硬化可能であるように、上記異方性導電ペーストは、上記光カチオン開始剤と上記光ラジカル開始剤との双方を含むことが好ましい。上記光ラジカル開始剤は特に限定されない。上記光ラジカル開始剤として、従来公知の光ラジカル開始剤が使用可能である。上記光ラジカル開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記光ラジカル開始剤としては特に限定されず、アセトフェノン光ラジカル開始剤、ベンゾフェノン光ラジカル開始剤、チオキサントン、ケタール光ラジカル開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0066】
上記アセトフェノン光ラジカル開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光ラジカル開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0067】
上記光ラジカル開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の光の照射により硬化可能な硬化性化合物(上記光硬化性化合物)100重量部に対して、上記光ラジカル開始剤の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光ラジカル開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストが適度に光硬化する。異方性導電ペーストに光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電ペーストの流動を抑制できる。
【0068】
また、上記光カチオン開始剤と上記光ラジカル開始剤とを併用する場合には、上記光カチオン開始剤と上記光ラジカル開始剤との配合比は、重量比で0.01:99.99〜99.99〜0.01であることが好ましく、1:99〜99:1であることがより好ましく、5:95〜95:5であることが更に好ましく、20:80〜80:20であることが特に好ましい。
【0069】
(導電性粒子)
上記異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。上記導電性粒子は、少なくとも外表面がはんだなどの低融点金属である導電性粒子であることが好ましい。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0070】
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の導電性の表面が低融点金属である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
【0071】
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属は錫を含むことが好ましい。低融点金属に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記低融点金属における錫の含有量が上記下限以上であると、低融点金属と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
【0072】
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度が高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0073】
上記低融点金属層などを構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
【0074】
また、上記低融点金属は、はんだであることが好ましい。上記はんだを構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだの組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだは、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ、又は錫とビスマスとを含むはんだであることが好ましい。
【0075】
上記低融点金属と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0076】
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層(はんだ層など)であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
【0077】
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
【0079】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。上記異方性導電ペーストが光カチオン開始剤を含む場合に、導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子により光が遮られて光が直接照射されなかった異方性導電ペースト層部分であっても、光カチオン開始剤の作用によるカチオン反応によって、硬化を充分に進行させることができる。また、上記導電性粒子の平均粒子径は、5μmを超えていてもよく、10μm以上であってもよい。熱履歴を受けた場合の接続構造体の接続信頼性をより一層高める観点からは、導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、10μm以下であることが特に好ましく、1μm以上、4μm以下であることが最も好ましい。
【0080】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0081】
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
【0082】
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
【0083】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。上記異方性導電ペースト100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0084】
(他の成分)
上記異方性導電ペーストは、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電ペーストの硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記異方性導電ペーストは、硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0087】
上記異方性導電ペーストは、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電ペーストの粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0088】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る異方性導電ペーストを用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0089】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備えており、該接続部が上記異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されていることが好ましい。上記接続部は、上記異方性導電ペーストが硬化した硬化物層である。
【0090】
次に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る異方性導電ペーストを用いた接続構造体、及び該接続構造体の製造方法をより詳細に説明する。
【0091】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電ペーストを用いた接続構造体の一例を模式的に正面断面図で示す。
【0092】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層である。接続部3は、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。該異方性導電ペーストは、複数の導電性粒子5を含む。
【0093】
第1の接続対象部材2は上面2a(表面)に、複数の第1の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4a(表面)に、複数の第2の電極4bを有する。第1の電極2bと第2の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0094】
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及びガラスエポキシ基板等の回路基板である電子部品等が挙げられる。上記異方性導電ペーストは、電子部品の接続に用いられる異方性導電ペーストであることが好ましい。上記異方性導電ペーストはペーストの状態で接続対象部材上に塗布されることが好ましい。
【0095】
図1に示す接続構造体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。
【0096】
図2(a)に示すように、第1の電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、熱硬化性成分と光硬化性成分と導電性粒子5を含む異方性導電ペーストを用いて、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電ペースト層3Aを配置する。このとき、第1の電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。異方性導電ペーストの配置は、異方性導電ペーストの塗布により行われる。
【0097】
次に、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することにより、異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させる。異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3AをBステージ化する。図2(b)に示すように、異方性導電ペースト層3AのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bを形成する。
【0098】
異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3AをBステージ化する際には、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bの粘度(以下、η2’と略記することがある)が2000Pa・s以上、15000Pa・s以下であるように、異方性導電ペースト層3AをBステージ化することが好ましい。上記粘度η2’を上記下限以上及び上記上限以下にすることにより、異方性導電ペースト層の流動を充分に抑制できる。このため、第1,第2の電極2b,4b間に、導電性粒子5が配置されやすくなる。さらに、第1の接続対象部材2又は第2の接続対象部材4の外周面よりも側方の領域に、異方性導電ペースト層が意図せずに流動するのを抑制できる。
【0099】
Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bの上記粘度η2’は、3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下であることがより好ましい。上記粘度η2’が3500Pa・sを超えると、第1,第2の電極2b,4b間の位置ずれを抑制できる。
【0100】
異方性導電ペースト層及び導電性粒子5の流動をより一層抑制する観点からは、上記粘度η2’は3510Pa・s以上であってもよく、より好ましくは12000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。上記粘度η2’の測定温度は好ましくは20℃以上、好ましくは30℃以下である。上記粘度η2’の測定温度は25℃であることが特に好ましい。
【0101】
なお、上記粘度η2’が2000Pa・s以上、15000Pa・s以下であれば、異方性導電ペースト層の流動を充分に抑制でき、導通信頼性を高めることができる。但し、上記粘度η2’が2000Pa・s以上、3500Pa・s以下である場合と比べて、上記粘度η2’が3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下である場合の方が、電極間の位置ずれをより一層抑制できる。電極間の位置ずれをより一層抑制する観点からは、上記粘度η2’はより好ましくは3510Pa・s以上、より好ましくは12000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。
【0102】
異方性導電ペースト層3A及びBステージ化された異方性導電ペースト層3Bの厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上、好ましくは100μm以下である。COG用途においては、異方性導電ペースト層3A及びBステージ化された異方性導電ペースト層3Bの厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。FOG用途においては、異方性導電ペースト層3A及びBステージ化された異方性導電ペースト層3Bの厚み(平均厚み)は、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0103】
上記異方性導電ペーストが上記光カチオン開始剤を含む場合には、異方性導電ペースト層3AをBステージ化する工程において、導電性粒子5により光が遮られて光が直接照射されなかった異方性導電ペースト層部分の硬化を、上記光カチオン開始剤の作用によるカチオン反応により進行させることが好ましい。これによって、異方性導電ペースト層及び該異方性導電ペースト層に含まれている導電性粒子の流動がかなり抑えられる。この結果、電極間の導通信頼性がかなり高くなる。
【0104】
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電ペーストを配置しながら、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電ペーストの配置と同時に、又は配置の直後に、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することも好ましい。配置と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電ペースト層3Aの流動をより一層抑制できる。このため、得られた接続構造体1における導通信頼性がより一層高くなる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電ペーストを配置してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。
【0105】
光の照射により異方性導電ペースト層3AをBステージ化させるために、異方性導電ペースト層3Aの硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、好ましくは0.1〜100mW/cm程度である。また、異方性導電ペースト層3Aの硬化を適度に進行させるための光の照射エネルギーは、例えば、好ましくは100〜10000mJ/cm程度である。
【0106】
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ及びLEDランプ等が挙げられる。
【0107】
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの第1の電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの第2の電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0108】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電ペースト層3Bに熱を付与することにより、異方性導電ペースト層3Bをさらに硬化させ、接続部3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電ペースト層3Bに熱を付与してもよい。第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電ペースト層3Bに熱を付与し完全に硬化させることが好ましい。
【0109】
熱の付与により異方性導電ペースト層3Bを硬化させる場合には、異方性導電ペースト層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0110】
異方性導電ペースト層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極2bと第1の電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積が大きくなる。このため、導通信頼性が高くなる。
【0111】
異方性導電ペースト層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、第1の電極2bと第2の電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電ペーストを短時間で硬化させることができる。
【0112】
上記異方性導電ペーストはペースト状である。異方性導電ペーストを用いる場合には、異方性導電フィルムを用いる場合と比較して、導電性粒子が流動しやすく、導通信頼性が低くなる傾向がある。本発明に係る異方性導電ペーストにおける組成の採用により、異方性導電ペーストを用いたとしても、導通信頼性を十分に高めることができる。
【0113】
本発明に係る異方性導電ペースト及び本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、本発明に係る異方性導電ペースト及び本発明に係る接続構造体の製造方法は、COG又はFOG用途に好適である。本発明に係る異方性導電ペースト及び本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材として、半導体チップとガラス基板とを用いるか、又はフレキシブルプリント基板とガラス基板とを用いることが好ましい。
【0114】
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電ペーストの導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る異方性導電ペースト及び本発明に係る接続構造体の製造方法により、導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
【0115】
FOG用途では、特に、フレキシブルプリント基板とガラス基板との電極間を、異方性導電ペーストの導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、FOG用途の場合には、フレキシブルプリント基板の隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が20〜50μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る異方性導電ペースト及び本発明に係る接続構造体の製造方法により、導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、フレキシブルプリント基板とガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
【0116】
接続対象部材における隣り合う電極間の間隔(電極が形成されていない部分の寸法)は30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。また、電極幅は、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。本発明に係る異方性導電ペーストの使用により、隣り合う電極間の間隔又は電極幅が狭くても、接続対象部材の電極間の位置ずれを抑制でき、導通信頼性を良好にすることができる。
【0117】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0118】
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの調製
下記式(1B)で表されるエポキシ化合物(1B)を用意した。
【0119】
【化1】

【0120】
上記式(1B)中、Rは水素原子を表す。
【0121】
上記エポキシ化合物(1B)は下記の反応を行うことで得た。
【0122】
具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを付加重合反応させることにより、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンに由来する骨格と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来する骨格とが結合した構造単位を主鎖に有し、かつ両末端に1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基を有する反応物を得た。その後、アクリル酸を反応させることにより、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にビニル基を有するエポキシ化合物を得た。
【0123】
また、得られたエポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量は8000であった。
【0124】
上記エポキシ化合物(1B)30重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部と、エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部と、光ラジカル開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.2重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)10重量部とを配合し、さらに導電性粒子A(平均粒子径10μm、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する)を異方性導電ペースト100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。
【0125】
(2)接続構造体1の作製
L/Sが20μm/20μmのAl−4%Ti電極パターンを上面に有する透明ガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが20μm/20μm、長さ2mmの銅電極パターンを下面に有するフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
【0126】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ50μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、紫外線照射ランプを用いて、照射エネルギーが6000mJ/cmとなるように、異方性導電ペースト層に該異方性導電ペースト層の主面に対して紫外線が垂直に入射するように上方から紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、異方性導電ペースト層上に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、1.5MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体1を得た。
【0127】
(3)接続構造体2の作製
L/Sが15μm/15μmのAl−4%Ti電極パターンを上面に有する透明ガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが15μm/15μm、1電極あたりの電極面積が1500μmの銅電極パターンを下面に有する半導体チップ(第2の接続対象部材)を用意した。
【0128】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、紫外線照射ランプを用いて、照射エネルギーが6000mJ/cmとなるように、異方性導電ペースト層に該異方性導電ペースト層の主面に対して紫外線が垂直に入射するように上方から紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体2を得た。
【0129】
(実施例2)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0130】
(実施例3)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、カチオン硬化剤(三新化学社製「サンエイドSI−60」)0.5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0131】
(実施例4)
エポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部を、ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)8重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体1,2を得た。
【0132】
(実施例5)
光カチオン硬化剤であるトリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート(東京化成工業社製)0.5重量部をさらに加えたこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体1,2を得た。
【0133】
(実施例6)
下記式(2B)で表されるエポキシ化合物(2B)を用意した。
【0134】
【化2】

【0135】
上記エポキシ化合物(2B)は下記の反応を行うことで得た。
【0136】
具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを付加重合反応させることにより、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンに由来する骨格と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来する骨格とが結合した構造単位を主鎖に有し、かつ両末端に1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基を有する反応物を得た。その後、4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテルを反応させることにより、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にエポキシ基を有するエポキシ化合物を得た。
【0137】
また、得られたエポキシ化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量は12000であった。
【0138】
異方性導電ペーストの調製の際に、上記エポキシ化合物(1B)を、上記エポキシ化合物(2B)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体1,2を得た。
【0139】
(実施例7)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0140】
(実施例8)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、カチオン硬化剤(三新化学社製「サンエイドSI−60」)0.5重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0141】
(実施例9)
異方性導電ペーストの調製の際に、式(1B)で表されるエポキシ化合物(1B)の配合量を30重量部から20重量部に変更したこと、並びにレゾルシノールジグリシジルエーテル10重量部をさらに加えたこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0142】
(実施例10)
異方性導電ペーストの調製の際に、式(1B)で表されるエポキシ化合物(1B)の配合量を30重量部から25重量部に変更したこと、並びにレゾルシノールジグリシジルエーテル5重量部をさらに加えたこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0143】
(実施例11)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部に変更したこと、並びにフィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)の配合量を10重量部から12重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0144】
(実施例12)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部に変更したこと、並びにフィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)の配合量を10重量部から15重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0145】
(実施例13)
熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部に変更したこと、並びにフィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)の配合量を10重量部から20重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0146】
(実施例14)
異方性導電ペーストの調製の際に、式(2B)で表されるエポキシ化合物(2B)の配合量を30重量部から20重量部に変更したこと、レゾルシノールジグリシジルエーテル10重量部をさらに加えたこと、並びに熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、カチオン硬化剤(三新化学社製「サンエイドSI−60」)0.5重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0147】
(実施例15)
異方性導電ペーストの調製の際に、式(2B)で表されるエポキシ化合物(2B)の配合量を30重量部から15重量部に変更したこと、レゾルシノールジグリシジルエーテル15重量部をさらに加えたこと、並びに熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)20重量部を、カチオン硬化剤(三新化学社製「サンエイドSI−60」)0.5重量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例6と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0148】
(比較例1)
異方性導電ペーストの調製の際に、式(1B)で表されるエポキシ化合物(1B)30重量部を、レゾルシノールジグリシジルエーテル30重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0149】
(比較例2)
異方性導電ペーストの調製の際に、式(1B)で表されるエポキシ化合物(1B)30重量部を、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル30重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0150】
(比較例3)
異方性導電ペーストの調製の際に、エポキシアクリレートと、光ラジカル開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)とを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体1,2を得た。
【0151】
(評価)
(実施例1〜15及び比較例1〜3の評価)
(1)粘度
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で、得られた異方性導電ペースト(塗布前の異方性導電ペーストの粘度)の粘度を測定した。
【0152】
(2)Bステージ化された異方性導電ペースト層の粘度
上記接続構造体を得る際に、光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化させた後であって、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に半導体チップを積層する直前のBステージ化された異方性導電ペースト層の粘度を、レオメーター(Anton Paar社製)を用いて、25℃及び周波数1Hzの条件で測定した。
【0153】
(3)リークの有無
得られた接続構造体1,2を用いて、隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。リークが生じていない場合を「○」、リークが生じている場合を「×」と判定した。
【0154】
(4)ボイドの有無
得られた接続構造体1,2において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドが生じていない場合を「○」、ボイドが生じている場合を「×」と判定した。ボイドがあると、接続構造体における導通信頼性が低くなる。
【0155】
(5)位置ずれの有無
実施例及び比較例における接続構造体1,2をそれぞれ100個用意した。得られた接続構造体において、透明ガラス基板の電極と半導体チップの電極との間、もしくは透明ガラス基板の電極とフレキシブルプリント基板の電極との間に位置ずれが生じているか否かを評価した。位置ずれを下記の基準で判定した。
【0156】
[位置ずれの判定基準]
○:100個の接続構造体中全てで、ずれ幅5μm以下の電極間の位置ずれなし
×:100個の接続構造体中、ずれ幅5μmを超える電極間の位置ずれがある接続構造体が存在する
【0157】
(6)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。100箇所の接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗の平均値が2Ω以下である場合を「○」、接続抵抗の平均値が2Ωを超える場合を「×」と判定した。
【0158】
結果を下記の表1に示す。
【0159】
【表1】

【符号の説明】
【0160】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…第1の電極
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電ペースト層
3B…Bステージ化された異方性導電ペースト層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…第2の電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分と、光硬化性成分と、導電性粒子とを含み、
25℃及び2.5rpmでの粘度が200Pa・sを超え、1000Pa・s以下である、異方性導電ペースト。
【請求項2】
25℃及び2.5rpmでの粘度が300Pa・sを超える、請求項1に記載の異方性導電ペースト。
【請求項3】
前記熱硬化性成分及び前記光硬化性成分として、硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化開始剤とを含む、請求項1又は2に記載の異方性導電ペースト。
【請求項4】
前記光硬化開始剤が、光カチオン開始剤を含有する、請求項3に記載の異方性導電ペースト。
【請求項5】
前記硬化性化合物が、重量平均分子量が500以上、50000以下である硬化性化合物を含有する、請求項3又は4に記載の異方性導電ペースト。
【請求項6】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている、接続構造体。
【請求項7】
第1の接続対象部材の上面に、異方性導電ペーストを配置して、異方性導電ペースト層を形成する工程と、
前記異方性導電ペースト層に光を照射することにより硬化を進行させて、前記異方性導電ペースト層をBステージ化する工程と、
Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に、第2の接続対象部材を積層する工程とを備え、
前記異方性導電ペーストとして、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方性導電ペーストを用いる、接続構造体の製造方法。
【請求項8】
前記異方性導電ペースト層をBステージ化する工程において、粘度が3500Pa・sを超え、15000Pa・s以下となるように、前記異方性導電ペースト層をBステージ化する、請求項7に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の接続対象部材が上面に第1の電極を有し、前記第2の接続対象部材が下面に第2の電極を有し、前記第1,第2の電極を、前記導電性粒子を介して電気的に接続する、請求項7又は8に記載の接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−33734(P2013−33734A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152589(P2012−152589)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】