説明

異方性導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法

【課題】速やかに熱硬化させることができ、更に電極間の電気的な接続などに用いられた場合に、導通信頼性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、発熱材料と、導電性粒子5とを含む。本発明に係る接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、該第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3が、上記異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に用いることができる異方性導電材料、並びに異方性導電材料を用いた接続構造体及び該接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、バインダー樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、具体的には、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続、並びにITO電極を有する回路基板とフレキシブルプリント回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と、ゴム状ポリマー粒子と、熱活性な潜在性エポキシ硬化剤と、高軟化点ポリマー粒子と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−345010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0007】
従来の異方性導電材料では、ガラス基板上に配置された異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子が、硬化が完了する前に大きく流動することがある。このため、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できないことがある。さらに、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置できなかったり、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されたりすることがある。このため、得られた接続構造体の導通信頼性が低いことがある。
【0008】
本発明の目的は、速やかに熱硬化させることができ、更に電極間の電気的な接続などに用いられた場合に、導通信頼性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、発熱材料と、導電性粒子とを含む、異方性導電材料が提供される。
【0010】
本発明に係る異方性導電材料のある特定の局面では、水酸基を有する化合物がさらに含まれている。
【0011】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、上記熱硬化剤はイミダゾール化合物を含む。
【0012】
本発明に係る異方性導電材料のさらに他の特定の局面では、脱水触媒がさらに含まれている。
【0013】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、第1の接続対象部材の上面に、本発明に従って構成された異方性導電材料を配置し、異方性導電材料層を形成する工程と、該異方性導電材料層に熱を付与することにより、上記発熱材料を発熱させ、上記異方性導電材料に付与された熱と上記発熱材料から発生した熱とにより、上記異方性導電材料層を硬化させる工程とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性化合物と熱硬化剤と発熱材料と導電性粒子とを含むので、異方性導電材料に熱が付与されると、発熱材料から熱が発生し、異方性導電材料に付与された熱と発熱材料から発生した熱とにより、異方性導電材料の温度が効果的に上昇する。このため、異方性導電材料を速やかに硬化させることができる。従って、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続した場合に、導通信頼性を高めることができる。例えば、接続されるべき上下の電極間を導電性粒子により容易に接続でき、かつ接続されてはならない隣り合う電極間が複数の導電性粒子を介して接続されるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(b)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いて接続構造体を得る各工程を説明するための正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、発熱材料と、導電性粒子とを含む。
【0019】
本発明の主な特徴は、導電性粒子を含む異方性導電材料において、熱硬化可能なように熱硬化性化合物及び熱硬化剤を用いるとともに、発熱材料をさらに用いることである。
【0020】
このような組成を有する異方性導電材料に熱が付与されると、発熱材料から熱が発生する。発熱材料から発生した熱は、熱が付与された異方性導電材料の温度をさらに上昇させる。従って、異方性導電材料に付与された熱と発熱材料から発生した熱とにより、異方性導電材料の温度が効果的に上昇する。このため、異方性導電材料を速やかに硬化させることができる。さらに、発熱材料から熱が発生するので、異方性導電材料に付与する熱量を少なくすることもできる。このため、異方性導電材料を硬化させるために、電子部品又は回路基板などの接続対象部材にも付与される熱量を少なくすることができ、接続対象部材の熱劣化を効果的に抑制できる。
【0021】
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状である異方性導電ペーストであってもよく、フィルム状である異方性導電フィルムであってもよい。
【0022】
従来の異方性導電ペーストを用いた場合には、接続対象部材上に塗布された異方性導電ペースト及び該異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子が、硬化が完了する前に大きく流動し、濡れ拡がりやすい。このため、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できないことがある。さらに、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置できなかったり、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されたりすることがある。このため、得られた接続構造体の導通信頼性が低いことがある。
【0023】
これに対して、本発明に係る異方性導電材料が異方性導電ペーストである場合には、発熱材料から発生した熱などに起因して、硬化を速やかに進行させることができるので、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。このため、異方性導電ペーストを用いた接続構造体の導通信頼性を高めることができる。また、本発明に係る異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合にも、熱が付与されたときに硬化が速やかに完了するので、硬化が完了する前に異方性導電フィルムの流動性が高くなり難くかつ異方性導電フィルムが流動性を有する時間が短くなる。このため、異方性導電フィルムを用いた接続構造体の導通信頼性を高めることができる。
【0024】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0025】
(熱硬化性化合物)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。熱硬化をより一層速やかに進行させる観点からは、上記熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物であることが好ましい。エピスルフィド化合物と発熱材料とを併用することは、異方性導電材料をより一層低温で及びより一層短時間で硬化させることに大きく寄与する。
【0027】
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0028】
上記エポキシ化合物及び上記エピスルフィド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。
【0029】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることがより好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
【0030】
【化1】

【0031】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0032】
【化2】

【0033】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0034】
【化3】

【0035】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0036】
【化4】

【0037】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0038】
【化5】

【0039】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0040】
【化6】

【0041】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0042】
【化7】

【0043】
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0044】
【化8】

【0045】
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0046】
上記エピスルフィド化合物は、上記式(1−1),(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、下記式(1),(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましい。
【0047】
【化9】

【0048】
上記式(1)中、R1〜R6は、上記式(1−1)中のR1〜R6と同様の基である。
【0049】
【化10】

【0050】
上記式(2)中、R51〜R58は、上記式(2−1)中のR51〜R58と同様の基である。
【0051】
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
【0052】
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0053】
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
【0054】
上記エポキシ化合物は特に限定されない。エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0056】
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
【0057】
さらに、上記エポキシ化合物として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造におけるチイラン基をエポキシ基に置き換えた構造を有するエポキシ化合物を用いてもよい。
【0058】
さらに、上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0059】
【化11】

【0060】
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
【0061】
【化12】

【0062】
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0063】
【化13】

【0064】
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0065】
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料をより一層低温で速やかに硬化させることができる。
【0066】
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物として、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0067】
【化14】

【0068】
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0069】
【化15】

【0070】
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0071】
上記異方性導電ペーストは、エポキシ化合物として、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0072】
【化16】

【0073】
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
【化17】

【0075】
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0076】
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
【0077】
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。異方性導電ペーストの塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、異方性導電材料の硬化速度を速くし、ペースト状の異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。
【0078】
(熱硬化剤)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている熱硬化剤は特に限定されない。該熱硬化剤は、熱硬化性化合物を硬化させる。該熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。該熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤(イミダゾール化合物)、アミン硬化剤(アミン化合物)、フェノール硬化剤(フェノール化合物)、ポリチオール硬化剤(ポリチオール化合物)及び酸無水物硬化剤等が挙げられる。なかでも、異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0080】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0081】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0082】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0083】
上記熱硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。異方性導電材料の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物がより好ましく用いられる。
【0084】
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度がより一層速くなる。
【0085】
上記熱硬化剤は、イミダゾール化合物(イミダゾール硬化剤)を含むことが好ましい。イミダゾール化合物と発熱材料との併用により、異方性導電材料の硬化前の安定性と異方性導電材料の速硬化性とがより一層良好になる。
【0086】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。熱硬化性化合物100重量部に対して、熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電材料を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0087】
(発熱材料)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている発熱材料は、反応熱により熱を発生する。発熱材料において熱を発生する反応は、化学反応であることが好ましい。該化学反応としては、酸化反応、ハロゲン化反応、中和反応、重合反応、分解反応、触媒反応及び水和反応等が挙げられる。発熱材料から熱が発生し始める温度Tは、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。発熱材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
上記発熱材料は、熱分解性化合物又は水和反応性化合物であることが好ましい。
【0089】
上記熱分解性化合物である発熱材料は、上記温度Tの上記下限以上及び上記上限以下で熱分解する化合物であることが好ましい。熱分解性化合物を用いる場合には、上記温度Tは、発熱材料に熱が付与されたときに、発熱材料が熱分解し始める温度である。
【0090】
上記熱分解性化合物である発熱材料としては、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びアセチルセルロース等が挙げられる。例えば、ニトロセルロースに関しては、135℃程度で反応が開始し、180℃程度で激しい発熱反応が起こる。なかでも、発熱材料から効果的に熱を発生させ、発火せず、異方性導電材料をより一層速やかに硬化させる観点からは、アセチルニトロセルロースが好ましい。
【0091】
上記水和反応性化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミニウム粉末等が挙げられる。これらの発熱材料は、水との反応により発熱を伴って水酸化物へ変化する。なお、水を含まずかつ反応時に水が生成しない異方性導電材料において、上記水和反応性化合物による水和反応により発熱が生じない場合には、該水和反応性化合物は発熱材料ではなく、発熱材料と呼ばない。水を含む又は反応時に水が生成する異方性導電材料では、上記水和反応性化合物は発熱材料に相当する。
【0092】
上記発熱材料の使用量は、発熱量を考慮して適宜調整され、特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、発熱材料の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。発熱材料の含有量が上記下限以上であると、発熱材料から熱をより一層効果的に発生させることができる。発熱材料の含有量が上記上限以下であると、異方性導電材料において急激に温度が上昇しすぎるのを抑制できる。異方性導電材料において急激に温度が上昇しすぎると、硬化むらが生じやすくなる。
【0093】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0094】
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
【0095】
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属層は錫を含むことが好ましい。低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記錫の含有量が上記下限以上であると、低融点金属層と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
【0096】
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度とが高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0097】
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
【0098】
また、上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
【0099】
上記低融点金属層と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属層は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属層と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属層100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0100】
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層(はんだ層など)との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
【0101】
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
【0103】
上記低融点金属層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記低融点金属層の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。上記低融点金属層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子と低融点金属層との熱膨張率の差が小さくなり、低融点金属層の剥離が生じ難くなる。
【0104】
導電層が低融点金属層以外の導電層である場合、又は導電層が多層構造を有する場合には、導電層の全体厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0105】
導電性粒子の粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm未満、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
【0106】
異方性導電材料における導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、導電性粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0107】
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
【0108】
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
【0109】
FOB及びFOF用途向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))との接続、又はフレキシブルプリント基板とフレキシブルプリント基板との接続(FOF(Film on Film))に好適に用いられる。
【0110】
FOB及びFOF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に100〜500μmである。FOB及びFOF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は10〜100μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以上であると、電極間に配置される異方性導電材料及び接続部の厚みが十分に厚くなり、接着力がより一層高くなる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0111】
フリップチップ用途向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、フリップチップ用途に好適に用いられる。
【0112】
フリップチップ用途では、一般にランド径が15〜80μmである。フリップチップ用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜15μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0113】
COF向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))に好適に用いられる。
【0114】
COF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に10〜50μmである。COF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0115】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0116】
導電性粒子の表面は、絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等により絶縁処理されていてもよい。絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等は、接続時の熱により軟化、流動することで接続部から排除されることが好ましい。これにより、電極間での短絡を抑制することができる。
【0117】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0118】
(水酸基を有する化合物)
本発明に係る異方性導電材料は、水酸基を有する化合物を含むことが好ましい。該水酸基を有する化合物は、発熱材料の発熱を促進させる化合物であることが好ましい。該水酸基を有する化合物は、熱硬化性化合物が反応して生成してもよい。熱硬化性化合物の反応により水酸基を生成する化合物と発熱材料との使用により、異方性導電材料の硬化前の安定性と異方性導電材料の速硬化性とがより一層良好になる。水酸基を有する化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記水酸基を有する化合物としては、水、アルコール、ジオール化合物、トリオール化合物及びポリオール化合物等が挙げられる。異方性導電材料の速硬化性をより一層高める観点からは、上記水酸基を有する化合物は、水酸基を2個以上有する化合物であることが好ましい。水酸基を2個以上有するので、上記水酸基を有する化合物は、ジオール化合物、トリオール化合物又はポリオール化合物であることが好ましい。
【0120】
上記水酸基を有する化合物の使用量は適宜調整され、特に限定されない。発熱材料100重量部に対して、水酸基を有する化合物の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記水酸基を有する化合物の含有量が上記下限以上であると、発熱材料から熱をより一層効果的に発生させることができる。水酸基を有する化合物の含有量が上記上限以下であると、過剰な水酸基を有する化合物による悪影響を抑制できる。
【0121】
(脱水触媒)
本発明に係る異方性導電材料は、脱水触媒を含むことが好ましい。該脱水触媒は上記水酸基を有する化合物と反応して水を生成する。この水の生成によって、上記水和反応性化合物である発熱材料を反応させることが可能である。
【0122】
脱水触媒としては金属硫酸塩、金属リン酸塩及びスルホン酸塩等が挙げられる。中でも60度程度の低温から反応が開始する観点から、ジメシチルアンモニウム・ペンタフルオロベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0123】
脱水触媒の使用量は脱水触媒の種類及び他の成分を考慮して、適宜調整可能である。
【0124】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0125】
上記フィラーの含有量は特に限定されない。熱硬化性化合物100重量部に対して、上記フィラーの含有量は好ましくは5重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは70重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料におけるフィラーの分散性を高めることができ、かつ異方性導電材料を硬化させた硬化物の潜熱膨張を抑制できる。
【0126】
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0128】
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0129】
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電材料を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
【0130】
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物とともに、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。上記エピスルフィド化合物と熱硬化剤とフェノール性化合物との併用により、異方性導電材料の保管時にチイラン基がより一層開環し難くなる。また、電極間に導電性粒子を含む異方性導電材料を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0131】
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0132】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0133】
上記異方性導電材料は、貯蔵安定剤を含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記エピスルフィド化合物の保存安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート等が挙げられる。上記亜リン酸エステルとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
【0135】
上記異方性導電材料は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、異方性導電材料の保存安定性が高くなる。
【0136】
上記異方性導電材料は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0137】
また、光の照射によっても硬化可能であるように、上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と光重合開始剤とを含んでいてもよい。光の照射によって半硬化した後、熱によって本硬化する2段階反応である場合に、上記異方性導電材料は本硬化時の反応時間を短縮させることができる。
【0138】
(異方性導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電材料中の発熱材料を除く全成分を含む組成物が150℃に加熱されるだけの熱量を本発明に係る異方性導電材料に加えたときに、本発明に係る異方性導電材料は、発熱材料から発生した熱により、150℃から10℃以上温度上昇することが好ましく、20℃以上温度上昇することがより好ましい。
【0139】
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であり、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。なお、ペースト状には液状が含まれる。本発明に係る異方性導電材料は、ペーストの状態で接続対象部材上に配置されることが好ましい。
【0140】
異方性導電ペーストの25℃での粘度は、20Pa・s以上、300Pa・s以下であることが好ましい。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散性がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。
【0141】
本発明に係る異方性導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0142】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0143】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0144】
第1の接続対象部材2は上面2a(表面)に、複数の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4aに、複数の電極4bを有する。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0145】
電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを異方性導電材料を介して電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、異方性導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。
【0146】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。
【0147】
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)〜(b)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
【0148】
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0149】
次に、図2(b)に示すように、異方性導電材料層3Aの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0150】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Aに熱を付与(加熱)する。異方性導電材料層3Aに熱を付与することにより、異方性導電材料層3Aに含まれている発熱材料から熱が発生する。発熱材料から発生した熱により、熱が付与された異方性導電材料層3Aの温度が上昇する。この結果、異方性導電材料層3Aに付与された熱と発熱材料から発生した熱とにより、異方性導電材料層3Aが硬化して、図1に示す接続部3が形成される。
【0151】
なお、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Aに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後に異方性導電材料層3Aに熱を付与してもよい。なお、異方性導電材料層3Aに付与される熱量は、一般に第1の接続対象部材2又は第2の接続対象部材4にも付与される。
【0152】
異方性導電材料層3Aに付与される熱の温度(すなわち加熱温度)は、熱の付与開始から5秒後で好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。この加熱温度が上記下限以上であると、異方性導電材料層3Aを十分にかつ速やかに硬化させることができる。本実施形態では、発熱材料を含む異方性導電材料を用いているので、上記温度の下限以下であっても、異方性導電材料を十分に硬化させることができる。このため、電子部品又は回路基板などの接続対象部材に付与される熱量を低減でき、接続対象部材の熱劣化を抑制できる。接続対象部材の熱劣化を抑制する観点からは、上記加熱温度は、210℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。接続対象部材の熱劣化を効果的に抑制する観点からは、上記加熱温度は、150℃以下であることが特に好ましい。上記加熱温度は、上記発熱材料から熱を発生する温度以上であることが好ましい。
【0153】
異方性導電材料層3Aを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0154】
異方性導電材料層3Aを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電材料を用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。
【0155】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0156】
(実施例1)
(1)エピスルフィド化合物含有混合物の調製
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。次に、20〜25℃に保持された容器内の第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、レゾルシノールジグリシジルエーテル160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有混合液を得た。
【0157】
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ基含有混合液に、得られた第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLとエタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度で容器内にさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
【0158】
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLをさらに加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
【0159】
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去した。このようにして、エピスルフィド化合物含有混合物を得た。
【0160】
クロロホルムを溶媒として、得られたエピスルフィド化合物含有混合物のH−NMRの測定を行った。この結果、エポキシ基の存在を示す6.5〜7.5ppmの領域のシグナルが減少し、エピスルフィド基の存在を示す2.0〜3.0ppmの領域にシグナルが現れた。これにより、レゾルシノールジグリシジルエーテルの一部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換されていることを確認した。また、H−NMRの測定結果の積分値より、エピスルフィド化合物含有混合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量%とを含有することを確認した。
【0161】
【化18】

【0162】
(2)異方性導電ペーストの調製
熱硬化性化合物である得られたエピスルフィド化合物含有混合物30重量部に、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、熱分解性化合物である発熱材料に相当するアセチルニトロセルロース3重量部と、水和反応性化合物である発熱材料に相当する酸化カルシウム15重量部と、水酸基を有する化合物であるエチレングリコール(和光純薬社製)10重量部と、脱水触媒であるジメシチルアンモニウム・ペンタフルオロベンゼンスルホン酸(東京化成社製)7重量部と、フィラーであるシリカ(平均粒子径0.25μm)20重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子Aを配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0163】
なお、用いた上記アセチルニトロセルロースはニトロセルロースに無水酢酸を反応させることによって作製できる。今回使用したアセチルニトロセルロースはセルロースのグルコース単位の3つのヒドロキシル基の内、2個をアセチル化、1個をニトロ化したもの、もしくは2個をニトロ化、1個をアセチル化したものである。
【0164】
また、用いた上記導電性粒子Aは、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子であり、比重が3.0である導電性粒子である。
【0165】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子Aの含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
【0166】
(実施例2)
熱分解性化合物である発熱材料に相当するアセチルニトロセルロース3重量部を、発熱材料であるトリニトロセルロース1.5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0167】
(実施例3)
水和反応性化合物である発熱材料に相当する酸化カルシウム15重量部を、発熱材料であるアルミニウム粉末10重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0168】
(実施例4)
熱硬化性化合物であるエピスルフィド化合物含有混合物30重量部を、熱硬化性化合物であるレゾルシノールグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX−201」)30重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0169】
(実施例5)
発熱材料であるアセチルニトロセルロースの添加量を5重量部に変更したこと、並びに発熱材料に相当する酸化カルシウム、水酸基を有する化合物であるエチレングリコール及び脱水触媒であるジメシチルアンモニウム・ペンタフルオロベンゼンスルホン酸を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0170】
(実施例6)
平均粒子径20μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−220」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ3μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmのはんだ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
【0171】
導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0172】
(実施例7)
導電性粒子Aを実施例6で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例2と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0173】
(実施例8)
導電性粒子Aを実施例6で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0174】
(実施例9)
導電性粒子Aを実施例6で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例4と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0175】
(実施例10)
導電性粒子Aを実施例6で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0176】
(比較例1)
熱分解性化合物である発熱材料に相当するアセチルニトロセルロースと、水和反応性化合物である発熱材料に相当する酸化カルシウムとを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0177】
(実施例及び比較例の評価)
(1)粘度
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で、得られた異方性導電ペースト(塗布前の異方性導電ペーストの粘度)の粘度を測定した。
【0178】
(2)温度上昇
実施例で得られた異方性導電ペーストに、熱の付与開始から5秒後で、発熱材料が含有していない場合に150℃に加熱されるだけの熱量を付与した。このとき、発熱材料から発生した熱に伴って、150℃から上昇した温度(最大上昇温度)を評価した。
【0179】
(3)硬化率
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0180】
得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、熱の付与開始から5秒後で、異方性導電ペースト中の発熱材料を除く全成分を含む組成物が下記の表1に示す加熱温度に加熱されるだけの熱量を、異方性導電ペースト層に付与するようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて、異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。この接続構造体を得る際に、加熱により異方性導電ペースト層が硬化したときの硬化率を測定した。
【0181】
また、異方性導電ペースト層が硬化したときの硬化率に基づいて、下記の判定基準で判定した。
【0182】
[硬化率の判定基準]
○○:硬化率90%以上
○:硬化率80%以上、90%未満
△:硬化率70%以上、80%未満
×:硬化率70%未満
【0183】
(4)対向する電極間の導通の有無
上記(3)硬化率の評価で下記の表1に示す加熱温度で加熱して得られた接続構造体を用意した。接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗の平均値が2.0Ω以下である場合を「○」、接続抵抗の平均値が2.0Ωを超える場合を「×」と判定した。
【0184】
結果を下記の表1に示す。
【0185】
【表1】

【符号の説明】
【0186】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電材料層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、発熱材料と、導電性粒子とを含む、異方性導電材料。
【請求項2】
水酸基を有する化合物をさらに含む、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記熱硬化剤がイミダゾール化合物を含む、請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
脱水触媒をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項5】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料を硬化させることにより形成されている、接続構造体。
【請求項6】
第1の接続対象部材の上面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料を配置し、異方性導電材料層を形成する工程と、
前記異方性導電材料層に熱を付与することにより、前記発熱材料を発熱させ、前記異方性導電材料に付与された熱と前記発熱材料から発生した熱とにより、前記異方性導電材料層を硬化させる工程とを備える、接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−136697(P2012−136697A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268904(P2011−268904)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】