説明

異方性導電材料及び接続構造体

【課題】接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続が容易であり、導通信頼性を高めることができ、更に冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する接続構造体の耐熱衝撃特性を高めることができる異方性導電材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、導電性粒子1と、バインダー樹脂とを含む。導電性粒子1は、樹脂粒子2と、該樹脂粒子2の表面2aを被覆している導電層3とを有する。導電層3の少なくとも外側の表面層が、はんだ層5である。導電性粒子1中の樹脂粒子2の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の導電性粒子1を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値は15ppm/℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ層を有する導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、より詳細には、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、液晶駆動用ICチップ間の接続、及びICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に、導電性粒子が用いられている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に導電性粒子を配置した後、加熱及び加圧により導電性粒子を電極に接触させて、上記電極同士を電気的に接続できる。
【0003】
また、上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、異方性導電材料としても用いられている。
【0004】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、ニッケル又はガラスにより形成された基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆しているはんだ層とを有する導電性粒子が開示されている。この導電性粒子は、ポリマーマトリックスと混合され、異方性導電材料として用いられている。
【0005】
下記の特許文献2には、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面を被覆しているニッケルめっき層と、該ニッケルめっき層の表面を被覆しているはんだ層とを有する導電性粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2769491号公報
【特許文献2】特開平9−306231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の導電性粒子では、導電性粒子における基材粒子の材料がガラス又はニッケルであるため、異方性導電材料において、導電性粒子が沈降することがある。このため、導電接続の際に、異方性導電材料を均一に塗工できず、上下の電極間に導電性粒子が配置されないことがある。さらに、凝集した導電性粒子によって、横方向に隣り合う電極間の短絡が生じることがある。
【0008】
なお、特許文献1では、導電性粒子における基材粒子の材料がガラス又はニッケルである構成が記載されているにすぎず、具体的には、基材粒子をニッケルのような強磁性金属により形成することが記載されているにすぎない。
【0009】
特許文献2に記載の導電性粒子は、バインダー樹脂に分散されて用いられていない。これは、導電性粒子の粒子径が大きいので、該導電性粒子は、バインダー樹脂に分散された異方性導電材料として用いるには好ましくないためである。特許文献2の実施例では、粒子径が650μmの樹脂粒子の表面を導電層で被覆しており、粒子径が数百μmの導電性粒子を得ており、この導電性粒子は、バインダー樹脂と混合された異方性導電材料として用いられていない。
【0010】
特許文献2では、導電性粒子を用いて接続対象部材の電極間を接続する際には、1つの電極上に1つの導電性粒子を置き、次に導電性粒子上に電極を置いた後、加熱している。加熱により、はんだ層は、溶融して電極と接合する。しかしながら、このように、電極上に導電性粒子を置く作業は煩雑である。また、接続対象部材間には、樹脂層が存在しないため、接続信頼性が低い。
【0011】
さらに、従来の導電性粒子を含む異方性導電材料では、該異方性導電材料を電極間の接続に用いた接続構造体において、冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられると、電極間の導通信頼性が低下することがある。すなわち、従来の異方性導電材料を用いた接続構造体では、耐熱衝撃特性が低いことがある。
【0012】
本発明の目的は、接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続が容易であり、導通信頼性を高めることができ、更に冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する接続構造体の耐熱衝撃特性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、導電性粒子と、バインダー樹脂とを含み、上記導電性粒子が、樹脂粒子と該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面層が、はんだ層であり、上記導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値が15ppm/℃以下である、異方性導電材料が提供される。
【0014】
本発明に係る異方性導電材料のある特定の局面では、上記バインダー樹脂が硬化性化合物であり、異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の線膨張係数は、異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の線膨張係数である。
【0015】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、上記バインダー樹脂は、エポキシ化合物である。
【0016】
本発明に係る異方性導電材料の別の特定の局面では、上記導電性粒子の平均粒子径は、0.1μm以上、50μm以下である。
【0017】
本発明に係る異方性導電材料のさらに別の特定の局面では、フラックスがさらに含まれている。
【0018】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された異方性導電材料により形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る異方性導電材料は、特定の上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含むので、該異方性導電材料を接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、電極間を容易に接続できる。さらに、上記導電性粒子が樹脂粒子と該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有し、かつ該導電層の少なくとも外側の表面層がはんだ層であるので、接続構造体の導通信頼性を高くすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る異方性導電材料では、特定の上記導電性粒子を用い、しかも該導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値が15ppm/℃以下であるので、冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する接続構造体の耐熱衝撃特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料に含まれている導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、導電性粒子の変形例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図4】図4は、図3に示す接続構造体の導電性粒子と電極との接続部分を拡大して示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
本発明に係る異方性導電材料は、導電性粒子とバインダー樹脂とを含む。該導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有する。上記導電性粒子における導電層の少なくとも外側の表面層は、はんだ層である。上記導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値は15ppm/℃以下である。
【0024】
本発明に係る異方性導電材料は上記構成を備えているので、該異方性導電材料を接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続が容易である。例えば、接続対象部材上に設けられた電極上に導電性粒子を1個ずつ配置せずに、接続対象部材上に異方性導電材料を塗工又は積層するだけで、電極上に導電性粒子を配置できる。さらに、接続対象部材上に異方性導電材料層を形成した後、該異方性導電材料層に他の接続対象部材を電極が対向するように積層するだけで、電極間を電気的に接続できる。従って、接続対象部材の電極間が接続された接続構造体の製造効率を高めることができる。さらに、接続対象部材間には、導電性粒子だけでなくバインダー樹脂も存在するので、接続対象部材を強固に接着させることができ、接続信頼性を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明に係る異方性導電材料を電極間の接続に用いた場合に、得られる接続構造体の導通信頼性を高くすることができる。導電性粒子における導電層の外側の表面層がはんだ層であるので、例えば、加熱によりはんだ層を溶融させることにより、はんだ層と電極との接触面積を大きくすることができる。従って、本発明に係る異方性導電材料では、導電層の外側の表面層が金層又はニッケル層等のはんだ層以外の金属である導電性粒子を含む異方性導電材料と比較して、導通信頼性を高めることができる。
【0026】
加えて、導電性粒子の基材粒子が、ニッケルなどの金属又はガラスにより形成された粒子ではなく、樹脂により形成された樹脂粒子であるので、導電性粒子の柔軟性を高めることができる。このため、導電性粒子に接触した電極の損傷を抑制できる。さらに、樹脂粒子を有する導電性粒子を用いることにより、ニッケルなどの金属又はガラスにより形成された粒子を有する導電性粒子を用いた場合と比較して、該導電性粒子を介して接続された接続構造体の冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する耐熱衝撃特性を高めることができる。
【0027】
さらに、特定の上記導電性粒子を用いて、しかも特定の上記導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値が15ppm/℃以下であることにより、冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する接続構造体の耐熱衝撃特性をかなり高めることができる。
【0028】
接続構造体の耐熱衝撃特性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値は、0ppm/℃以上であり、好ましくは10ppm/℃以下、より好ましくは5ppm/℃以下である。上記導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数とは同じであてもよい。
【0029】
上記樹脂粒子及び異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の線膨張係数は、以下のようにして測定できる。
【0030】
上記樹脂粒子と同配合、同重合条件で作製したシート状サンプルを用意する。そして熱・応力・歪測定装置(Seiko Instruments Inc.社製「EXSTAR TMA/SS120」)を用いて、樹脂粒子の30℃〜60℃での線膨張係数を測定する。
【0031】
また、異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料を用意する。バインダー樹脂が硬化性化合物である場合には、異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物を用意する。そして熱・応力・歪測定装置(Seiko Instruments Inc.社製「EXSTAR TMA/SS120」)を用いて、上記材料又は該材料の硬化物の30℃〜60℃での線膨張係数を測定する。
【0032】
なお、バインダー樹脂が硬化性化合物である場合には、異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の線膨張係数は、異方性導電材料中の導電性粒子を除く成分を200℃で10分間硬化させた硬化物を用いて測定されることが好ましい。
【0033】
(導電性粒子)
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料に含まれている導電性粒子を断面図で示す。
【0034】
図1に示すように、導電性粒子1は、樹脂粒子2と、該樹脂粒子2の表面2aを被覆している導電層3とを有する。導電性粒子1は、樹脂粒子2の表面2aが導電層3により被覆された被覆粒子である。従って、導電性粒子1は導電層3を表面1aに有する。
【0035】
導電層3は、樹脂粒子2の表面2aを被覆している第1の導電層4と、該第1の導電層4の表面4aを被覆しているはんだ層5(第2の導電層)とを有する。導電層3の外側の表面層が、はんだ層5である。このように、導電層3は、多層構造を有していてもよく、2層又は3層以上の多層構造を有していてもよい。
【0036】
上記のように、導電層3は2層構造を有する。図2に示す変形例のように、導電性粒子11は、単層の導電層として、はんだ層12を有していてもよい。導電性粒子における導電層の少なくとも外側の表面層が、はんだ層であればよい。ただし、導電性粒子の作製が容易であるので、導電性粒子1と導電性粒子11とのうち、導電性粒子1が好ましい。
【0037】
樹脂粒子2の表面2aに導電層3を形成する方法、並びに樹脂粒子2の表面2a又は導電層の表面にはんだ層を形成する方法は特に限定されない。導電層3及びはんだ層5,12を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的な衝突による方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを樹脂粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、無電解めっき又は電気めっきが好適である。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。また、上記物理的な衝突による方法では、例えば、シータコンポーザ等が用いられる。
【0038】
はんだ層5,12を形成する方法は、物理的な衝突による方法であることが好ましい。はんだ層5,12は、物理的な衝撃により形成されていることが好ましい。
【0039】
従来、導電層の外側の表面層にはんだ層を有する導電性粒子の粒子径は、数百μm程度であった。これは、粒子径が数十μmであり、かつ表面層がはんだ層である導電性粒子を得ようとしても、はんだ層を均一に形成できなかったためである。これに対して、シータコンポーザを用いることによって、導電性粒子の粒子径が数十μm、特に粒子径が0.1μm以上、粒子径が50μm以下である導電性粒子を得る場合であっても、導電層の表面上にはんだ層を均一に形成できる。
【0040】
はんだ層以外の導電層3は、金属により形成されていることが好ましい。はんだ層以外の導電層3を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)も用いることができる。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
第1の導電層4は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層、銅層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層、銅層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。また、これらの好ましい導電層の表面には、はんだ層をより一層容易に形成できる。なお、第1の導電層4は、はんだ層であってもよい。導電性粒子は、複数層のはんだ層を有していてもよい。
【0042】
はんだ層5,12の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。はんだ層5,12の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。はんだ層5,12の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子2とはんだ層5,12との線膨張率の差が小さくなり、はんだ層5,12の剥離が生じ難くなる。
【0043】
導電層が多層構造を有する場合には、導電層の合計厚みは、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0044】
樹脂粒子2を形成するための樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルスルホン等が挙げられる。樹脂粒子2の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、樹脂粒子2を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0045】
導電性粒子1,11の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。導電性粒子1,11の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子1,11と電極との接触面積を充分に大きくすることができ、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子1,11が形成されにくくなる。また、導電性粒子1,11を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が樹脂粒子2の表面2aから剥離し難くなる。
【0046】
異方性導電材料における導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、導電性粒子1,11の平均粒子径は、0.1μm以上、50μm以下であることが特に好ましい。
【0047】
導電性粒子1,11の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子1,11の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0048】
導電性粒子のCV値(粒度分布の変動係数)は、10%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。CV値が10%を超えると、導電性粒子により接続された電極間の間隔にばらつきが生じ難くなる。
【0049】
上記CV値は下記式で表される。
【0050】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:導電性粒子の直径の標準偏差
Dn:平均粒子径
【0051】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。すなわち、本発明に係る異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有し、かつ該導電層の少なくとも外側の表面層が、はんだ層である。本発明に係る異方性導電材料は、液状であることが好ましく、異方性導電ペーストであることが好ましい。
【0052】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、例えば、絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記ビニル樹脂の具体例としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0054】
上記バインダー樹脂は、熱硬化性化合物であることが好ましい。この場合には、電極間を電気的に接続する際の加熱により、導電性粒子のはんだ層を溶融させるとともに、バインダー樹脂を硬化させることができる。このため、はんだ層による電極間の接続と、バインダー樹脂による接続対象部材の接続とを同時に行うことができる。
【0055】
接続構造体の耐熱衝撃特性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物であることが好ましい。
【0056】
本発明に係る異方性導電材料は、バインダー樹脂を硬化させるために、硬化剤を含むことが好ましい。
【0057】
上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
本発明に係る異方性導電材料は、フラックスをさらに含むことが好ましい。フラックスの使用により、はんだ層の表面に酸化被膜が形成され難くなり、さらに、はんだ層又は電極表面に形成された酸化被膜を効果的に除去できる。
【0059】
上記フラックスは特に限定されない。フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを使用できる。フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸及び松脂等が挙げられる。フラックスは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、グルタミン酸及びヒドラジン等が挙げられる。上記松脂としては、活性化松脂及び非活性化松脂等が挙げられる。上記フラックスは、松脂であることが好ましい。松脂の使用により、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0061】
上記松脂はアビエチン酸を主成分とするロジン類である。フラックスは、ロジン類であることが好ましく、アビエチン酸であることがより好ましい。この好ましいフラックスの使用により、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。
【0062】
上記フラックスは、バインダー樹脂中に分散されていてもよく、導電性粒子の表面上に付着していてもよい。
【0063】
本発明に係る異方性導電材料は、フラックスの活性度を調整するために、塩基性有機化合物を含んでいてもよい。上記塩基性有機化合物としては、塩酸アニリン及び塩酸ヒドラジン等が挙げられる。
【0064】
異方性導電材料による導通性と絶縁性とを両立する観点からは、異方性導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、隣り合う電極間の短絡を一層防止することができ、かつ異方性導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性をより一層高めることができる。
【0065】
硬化剤を用いる場合には、上記バインダー樹脂100重量部に対して、上記硬化剤の含有量は好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。上記硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記バインダー樹脂を十分に硬化させることができ、更に硬化後に硬化剤に由来する残渣が生じ難くなる。
【0066】
異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、隣り合う電極間の短絡を一層防止することができ、かつ電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0067】
異方性導電材料100重量%中、フラックスの含有量は0重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。異方性導電材料は、フラックスを含んでいなくてもよい。フラックスの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ層の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、さらに、はんだ層又は電極表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去できる。
【0068】
本発明に係る異方性導電材料は、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤又は難燃剤等の各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0069】
上記バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、バインダー樹脂中に導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、バインダー樹脂中へ添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びにバインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0070】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用できる。本発明の導電性粒子を含む異方性導電材料が、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該導電性粒子を含むフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。ただし、上述のように、本発明に係る異方性導電材料は、液状であることが好ましく、異方性導電ペーストであることが好ましい。
【0071】
(接続構造体)
本発明に係る異方性導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0072】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が本発明に係る異方性導電材料により形成されていることが好ましい。第1,第2の接続対象部材は、電気的に接続されていることが好ましい。
【0073】
図3に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
【0074】
図3に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23を接続している接続部24とを備える。接続部24は、導電性粒子1を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図3では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。
【0075】
第1の接続対象部材22の上面22aには、複数の電極22bが設けられている。第2の接続対象部材23の下面23aには、複数の電極23bが設けられている。電極22bと電極23bとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材22,23が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0076】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。加熱及び加圧により、導電性粒子1のはんだ層5が溶融して、該導電性粒子1により電極間が電気的に接続される。さらに、バインダー樹脂が熱硬化性化合物である場合には、バインダー樹脂が硬化して、硬化したバインダー樹脂により第1,第2の接続対象部材22,23が接続される。
【0077】
上記加圧の圧力は9.8〜10〜4.9×10Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
【0078】
図4に、図3に示す接続構造体21における導電性粒子1と電極22b,23bとの接続部分を拡大して正面断面図で示す。図4に示すように、接続構造体21では、上記積層体を加熱及び加圧することにより、導電性粒子1のはんだ層5が溶融した後、溶融したはんだ層部分5aが電極22b,23bと十分に接触する。すなわち、表面層がはんだ層5である導電性粒子1を用いることにより、導電層の表面層がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、導電性粒子1と電極22b,23bとの接触面積を大きくすることができる。このため、接続構造体21の導通信頼性を高めることができる。なお、加熱により、一般にフラックスは次第に失活する。
【0079】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0080】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0082】
(導電性粒子の作製例1)
平均粒子径20μmの樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP」、30〜60℃の線膨張係数:68ppm/℃)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面に厚さ0.3μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。その後、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)を用いて、得られた粒子の銅層の表面上で、はんだ微粉末(錫42重量%とビスマス58重量%とを含む、平均粒子径3μm)を溶融させて、銅層の表面上に厚み1μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面上に厚み1μmのはんだ層(錫:ビスマス=42重量%:58重量%)が形成されている導電性粒子Aを作製した。
【0083】
尚、導電性粒子の作製例1で用いた樹脂粒子の30〜60℃における線膨張係数は、上記樹脂粒子と同配合、同重合条件で別途作製したシート状サンプルを用意し、熱・応力・歪測定装置(Seiko Instruments Inc.社製「EXSTAR TMA/SS120」)を用いて測定した。後述の導電性粒子の作製例2で用いた樹脂粒子の30〜60℃における線膨張係数も同様にして測定した。
【0084】
(導電性粒子の作製例2)
平均粒子径20μmの樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールLP」、30〜60℃の線膨張係数:85ppm/℃)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面に厚さ0.3μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。その後、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)を用いて、得られた粒子の銅層の表面上で、はんだ微粉末(錫42重量%とビスマス58重量%とを含む、平均粒子径3μm)を溶融させて、銅層の表面上に厚み1μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面上に厚み1μmのはんだ層(錫:ビスマス=42重量%:58重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
【0085】
(実施例1)
G−0250S(日油社製)50重量部、HP−7200HH(DIC社製)50重量部、2MAOK(四国化成工業社製)10重量部、及び作製例1で得られた導電性粒子A10重量部をメチルエチルケトン中で分散し、PETフィルム上に塗膜を形成して異方性導電材料を得た。尚、導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の30〜60℃における線膨張係数は66ppm/℃であった。導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の30〜60℃における線膨張係数は、上記異方性導電材料から導電性粒子を除いたサンプルを200℃で10分間加熱した硬化物を別途用意し、熱・応力・歪測定装置(Seiko Instruments Inc.社製「EXSTAR TMA/SS120」)を用いて測定した。後述の導電性粒子を除く全成分を含む硬化物の30〜60℃における線膨張係数も同様にして測定した。
【0086】
(実施例2)
G−2050M(日油社製)50重量部、EOCN−1020−55(日本化薬社製)50重量部、YH−306(三菱化学社製)40重量部、2MAOK(四国化成工業社製)5重量部、及び作製例1で得られた導電性粒子A15重量部をメチルエチルケトン中で分散し、PETフィルム上へ塗膜して異方性導電材料を得た。尚、導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の30〜60℃における線膨張係数は75ppm/℃であった。
【0087】
(実施例3)
G−2050M(日油社製)50重量部、HP−7200HH(DIC社製)50重量部、HNA−100(新日本理化社製)50重量部、2MAOK(四国化成工業社製)5重量部、及び作製例1で得られた導電性粒子A15重量部をメチルエチルケトン中で分散し、PETフィルム上へ塗膜して異方性導電材料を得た。尚、導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の30〜60℃における線膨張係数は82ppm/℃であった。
【0088】
(実施例4)
作製例1で得られた導電性粒子Aを、作製例2で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例2と同様にして、異方性導電材料を得た。
【0089】
(実施例5)
作製例1で得られた導電性粒子Aを、作製例2で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電材料を得た。
【0090】
(比較例1)
はんだ粒子(錫:ビスマス=43重量%:57重量%、平均粒子径20μm)を用意した。作製例1で得られた導電性粒子Aを、上記はんだ粒子に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電材料を得た。
【0091】
(比較例2)
はんだ粒子(錫:ビスマス=42重量%:58重量%、平均粒子径20μm)を用意した。作製例1で得られた導電性粒子Aを、上記はんだ粒子に変更したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電材料を得た。
【0092】
(比較例3)
エピコート828(三菱化学社製)100重量部、MH−700(新日本理化社製)40重量部、及び作製例1で得られた導電性粒子A15重量部を攪拌することにより、異方性導電材料を得た。尚、導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の30〜60℃における線膨張係数は104ppm/℃であった。
【0093】
(比較例4)
作製例1で得られた導電性粒子Aを、作製例2で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電材料を得た。
【0094】
(比較例5)
作製例1で得られた導電性粒子Aを、作製例2で得られた導電性粒子Bに変更したこと以外は比較例3と同様にして、異方性導電材料を得た。
【0095】
(評価)
(1)接続構造体の作製
L/Sが300μm/300μmの金電極パターンが上面に形成されたFR−4基板を用意した。また、L/Sが300μm/300μmの金電極パターンが下面に形成されたポリイミド基板(フレキシブル基板)を用意した。
【0096】
上記FR−4基板の上面に、得られた異方性導電材料を用いて、厚さ40μmとなるように異方性導電材料層を形成した。
【0097】
次に、異方性導電材料層の上面にポリイミド基板(フレキシブル基板)を、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電材料層の温度が200℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、はんだを溶融させながら異方性導電材料層を硬化させ、接続構造体を得た。
【0098】
(2)横方向に隣接する電極間の絶縁性試験
得られた接続構造体において、隣接する電極間のリークの有無を、テスターで抵抗を測定することにより評価した。抵抗が500MΩを越える場合にリーク無として結果を「○」、抵抗が500MΩ以下である場合にリーク有として結果を「×」と判定した。
【0099】
(3)上下の電極間の導通試験
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗の平均値が2.0Ω以下である場合を「○」、接続抵抗の平均値が2Ωを超える場合を「×」と判定した。
【0100】
(4)耐熱衝撃特性
得られた接続構造体をそれぞれ20個用意し、−30℃で30分間保持し、次に80℃まで昇温させて30分間保持した後、−30℃まで降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。500サイクル及び1000サイクル後に、それぞれ10個の接続構造体を取り出した。
【0101】
500サイクルの冷熱サイクル試験後の10個の接続構造体、並びに1000サイクルの冷熱サイクル試験後の10個の接続構造体について、上下の電極間の導通不良が生じているか否かを評価した。10個の接続構造体のうち、導通不良が生じている個数が1個以下である場合を「○」、2個以上である場合を「×」と判定した。
【0102】
また、さらに過酷な条件として−40℃で30分間保持し、次に125℃まで昇温させて30分間保持した後、−30℃まで降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を500サイクル及び1000サイクル同様に実施した。
【0103】
結果を下記の表1に示す。なお、下記の表1において、「−」は評価していないことを示す。また、下記の表1では、−30℃〜80℃の冷熱サイクル試験結果を耐熱衝撃特性(1)、−40℃〜125℃の冷熱サイクル試験結果を耐熱衝撃特性(2)として示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表1に示すように、実施例1〜5の導電性粒子を分散させた異方性導電材料を用いた接続構造体では、横方向に隣接する電極間のリークが無く、上下の電極間が十分に接続されていることがわかる。さらに、実施例1〜5の異方性導電材料を用いた接続構造体では、耐熱衝撃特性に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0106】
1…導電性粒子
1a…表面
2…樹脂粒子
2a…表面
3…導電層
4…第1の導電層
4a…表面
5…はんだ層
5a…溶融したはんだ層部分
11…導電性粒子
12…はんだ層
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と、バインダー樹脂とを含み、
前記導電性粒子が、樹脂粒子と該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面層が、はんだ層であり、
前記導電性粒子中の上記樹脂粒子の30〜60℃においての線膨張係数と異方性導電材料中の上記導電性粒子を除く全成分を含む材料の30〜60℃においての線膨張係数との差の絶対値が15ppm/℃以下である、異方性導電材料。
【請求項2】
前記バインダー樹脂が硬化性化合物であり、
異方性導電材料中の前記導電性粒子を除く全成分を含む材料の線膨張係数が、異方性導電材料中の前記導電性粒子を除く全成分を含む材料の硬化物の線膨張係数である、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記バインダー樹脂がエポキシ化合物である、請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
前記導電性粒子の平均粒子径が、0.1μm以上、50μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項5】
フラックスをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項6】
第1の接続対象部材と、
第2の接続対象部材と、
前記第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方性導電材料により形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−142247(P2012−142247A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1244(P2011−1244)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】