説明

異方性導電材料及び接続構造体

【課題】速やかに硬化させることができ、かつ保存安定性に優れている異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、エピスルフィド化合物と、アミン硬化剤と、包接イミダゾール硬化剤と、貯蔵安定剤と、導電性粒子5とを含む。本発明に係る接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、該第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3が、上記異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に用いることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、具体的には、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続、並びにITO電極を有する回路基板とフレキシブルプリント回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と、ゴム状ポリマー粒子と、熱活性な潜在性エポキシ硬化剤と、高軟化点ポリマー粒子と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が開示されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、分子量10000以上の水酸基含有樹脂と、リン酸エステルと、ラジカル重合性物質と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が開示されている。上記水酸基含有樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂などのポリマーが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−345010号公報
【特許文献2】特開2005−314696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0008】
特許文献1〜2に記載のような従来の異方性導電材料では、硬化が速やかに進行しないことがある。
【0009】
近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。従来の異方性導電材料を用いて接続構造体を作製すると、異方性導電材料の硬化が速やかに進行しないため、配線の脱落、剥離及び位置ずれが生じやすくなってきている。
【0010】
さらに、特許文献1〜2に記載のような従来の異方性導電材料では、長期間保存された場合に、硬化が進行することがあり、保存安定性が低いことがある。
【0011】
本発明の目的は、速やかに硬化させることができ、かつ保存安定性に優れている異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、エピスルフィド化合物と、アミン硬化剤と、包接イミダゾール硬化剤と、貯蔵安定剤と、導電性粒子とを含む、異方性導電材料が提供される。
【0013】
本発明に係る異方性導電材料のある特定の局面では、上記貯蔵安定剤が、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含む。
【0014】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る異方性導電材料は、エピスルフィド化合物と、アミン硬化剤と、包接イミダゾール硬化剤と、貯蔵安定剤と、導電性粒子とを含むので、速やかに硬化させることができる。さらに、本発明に係る異方性導電材料の保存安定性を高めることができ、異方性導電材料が長期間保存されても、保存中に硬化が進行するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いて接続構造体を得る各工程を説明するための正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る異方性導電材料は、エピスルフィド化合物と、アミン硬化剤と、包接イミダゾール硬化剤と、貯蔵安定剤と、導電性粒子とを含む。
【0019】
本発明は、導電性粒子を含む異方性導電材料において、エピスルフィド化合物と、アミン硬化剤と、包接イミダゾール硬化剤と、貯蔵安定剤とを組み合わせて用いることに主な特徴を有する。
【0020】
エピスルフィド化合物を含む異方性導電材料に熱を付与すると、比較的速く硬化させることができる。しかしながら、エピスルフィド化合物を含む異方性導電材料であっても、硬化剤の種類によっては、硬化速度が十分に速くならないことがある。一方で、硬化速度が比較的速い従来の異方性導電材料では、使用前の保管時に、異方性導電材料の硬化が進行しやすいという問題がある。すなわち、従来の異方性導電材料では、保存安定性が低いことがある。
【0021】
これに対して、本発明に係る異方性導電材料の上記組成の採用により、速やかに硬化させることが可能な異方性導電材料を得ることができ、更に異方性導電材料の硬化速度が速くても、該異方性導電材料の保存安定性を高めることができる。
【0022】
すなわち、本発明に係る異方性導電材料では、アミン硬化剤と包接イミダゾール化合物とを用いているため、異方性導電材料の硬化速度が高くなる。一方で、アミン硬化剤を用いると、異方性導電材料のpHが高くなり、エピスフィド化合物が反応しやすくなる。本発明に係る異方性導電材料では、貯蔵安定剤を用いているので、エピスルフィド化合物の反応を抑えることができる。なお、エピスルフィド化合物は、酸性では常温(23℃)において反応が進行し難いという性質を有する。従って、上記貯蔵安定剤が酸性の貯蔵安定剤であったり、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含んでいたりする場合には、エピスルフィド化合物の反応をより一層効果的に抑えることができる。
【0023】
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状である異方性導電ペーストであってもよく、フィルム状である異方性導電フィルムであってもよい。
【0024】
従来の異方性導電ペーストを用いた場合には、接続対象部材上に塗布された異方性導電ペースト及び該異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子が、硬化が完了する前に大きく流動し、濡れ拡がりやすい。このため、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できないことがある。さらに、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置できなかったり、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されたりすることがある。このため、得られた接続構造体の導通信頼性が低いことがある。
【0025】
これに対して、本発明に係る異方性導電材料が異方性導電ペーストである場合には、異方性導電ペーストを速やかに硬化させることができるので、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。このため、異方性導電ペーストを用いた接続構造体の導通信頼性を高めることができる。また、本発明に係る異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合にも、熱が付与されたときに硬化が速やかに完了するので、硬化が完了する前に異方性導電フィルムの流動性が高くなり難くかつ異方性導電フィルムが流動性を有する時間が短くなる。このため、異方性導電フィルムを用いた接続構造体の導通信頼性を高めることができる。
【0026】
さらに、保管中に異方性導電材料の硬化が進行し難いので、異方性導電材料の使用時に、導電性粒子の周囲に硬化が進行した硬化成分が存在し難くなる。このことによっても、導電性粒子と電極とをより一層確実に接触させることができ、接続構造体の導通信頼性を高めることができる。
【0027】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0028】
(エピスルフィド化合物)
本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性化合物として、エピスルフィド化合物を含む。該エピスルフィド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。エピスルフィド化合物は、チイラン基を有し、チイラン基含有化合物である。
【0029】
上記エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0030】
上記エピスルフィド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。
【0031】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であるか、又は下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であることが好ましい。上記エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることがより好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが更に好ましく、下記式(1−1)又は(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが特に好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
【0032】
【化1】

【0033】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0034】
【化2】

【0035】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0036】
【化3】

【0037】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0038】
【化4】

【0039】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0040】
【化5】

【0041】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0042】
【化6】

【0043】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0044】
【化7】

【0045】
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0046】
【化8】

【0047】
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0048】
上記異方性導電材料は、上記エピスルフィド化合物として、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0049】
【化9】

【0050】
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0051】
【化10】

【0052】
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0053】
上記エピスルフィド化合物は、上記式(1−1),(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、下記式(1),(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましい。
【0054】
【化11】

【0055】
上記式(1)中、R1〜R6は、上記式(1−1)中のR1〜R6と同様の基である。
【0056】
【化12】

【0057】
上記式(2)中、R51〜R58は、上記式(2−1)中のR51〜R58と同様の基である。
【0058】
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
【0059】
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0060】
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
【0061】
(硬化剤)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている硬化剤は、アミン硬化剤及び包接イミダゾール硬化剤である。これらの2種の硬化剤の併用により、異方性導電材料の速硬化性と保存安定性とを高いレベルで両立できる。これらの硬化剤は、エピスルフィド化合物を硬化させる。上記アミン硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記包接イミダゾール硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記エピスルフィド化合物と硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、硬化剤は、潜在性の硬化剤であることが好ましい。上記アミン硬化剤は、潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。
【0063】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0064】
上記包接イミダゾール硬化剤は、イミダゾール化合物を用いた包接化合物である。包接化合物は、例えば、ホスト分子の空洞にゲスト分子が入り込んだ構造を有する。
【0065】
上記ホスト分子を構成するホスト化合物として、従来公知の化合物を用いることができる。ホスト化合物としては、イソフタル酸化合物、テトラキスフェノール化合物、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これら以外のホスト化合物を用いてもよい。
【0066】
上記ホスト分子とは、1種又は2種以上の他の分子(ゲストや溶媒等)と共有結合以外の結合により結合して化合物を形成し、かつ該化合物において包接格子を形成しうる化合物をいう。上記ホスト分子とは、より好ましくは、1種又は2種以上の他の分子(ゲストや溶媒等)と共有結合以外の結合により結合して結晶性化合物を形成し、かつ該結晶性化合物において包接格子を形成しうる化合物をいう。
【0067】
上記包接格子とは、ホスト化合物同士が共有結合以外の結合により結合し、結合したホスト化合物の2分子又は3分子以上の隙間に、他の分子(ゲストや溶媒等)、又は、他の分子及びホスト化合物を共有結合以外の結合により包接しているもの、又はホスト化合物と他の分子(ゲストや溶媒等)とが共有結合以外の結合により結合し、他の分子と結合したホスト化合物の2分子又は3分子以上の隙間に、ホスト化合物や他の分子(ゲストや溶媒等)を共有結合以外の結合により包接しているものをいう。
【0068】
上記包接格子の形状としては、特に限定されず、トンネル形、層状及び網状等が挙げられる。上記ホスト化合物は、包接化合物の少なくとも一部で包接格子を形成していればよく、包接格子を形成しないホスト化合物が包接化合物内に含まれていてもよい。包接化合物の全体で包接格子を形成することが好ましい。
【0069】
上記包接イミダゾール硬化剤を構成するイミダゾール化合物としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。これら以外のイミダゾール化合物を用いてもよい。
【0070】
上記硬化剤の含有量は特に限定されない。エピスルフィド化合物100重量部に対して、上記アミン硬化剤と上記包接イミダゾール硬化剤との合計の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。アミン硬化剤と包接イミダゾール硬化剤との合計の含有量が上記下限以上であると、異方性導電材料を充分に硬化させることが容易である。アミン硬化剤と包接イミダゾール硬化剤との合計の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0071】
本発明に係る異方性導電材料は、上記アミン硬化剤と包接イミダゾール硬化剤とを重量比で、1:99〜99:1で含むことが好ましく、2:98〜50:50で含むことがより好ましく、5:95〜25:75で含むことが特に好ましい。上記アミン硬化剤の含有量が相対的に多くなると、異方性導電材料の速硬化性が良好になる傾向がある。上記包接イミダゾール硬化剤の含有量が相対的に多くなると、異方性導電材料の保存安定性が良好になる傾向がある。
【0072】
(貯蔵安定剤)
本発明に係る異方性導電材料は、貯蔵安定剤を含む。該貯蔵安定剤は、酸性の貯蔵安定剤であることが好ましい。該貯蔵安定剤は、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの好ましい貯蔵安定剤の使用により、上記エピスルフィド化合物を含む異方性導電材料の保存安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn−ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、(RO)P=O[R=ラウリル基、セチル基、ステアリル基又はオレイル基]、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチルピロホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、アンモニウムエチルアシッドホスフェート、及び2−エチルヘキシルアシッドホスフェート塩等が挙げられる。中でもジエチルベンジルホスフェートが好ましく用いられる。
【0074】
上記亜リン酸エステルとしては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジメチルハイドロジエンホスファイト、ジブチルハイドロジエンホスファイト、ジ(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルハイドロジエンホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。中でも、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトがより好ましく、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトがさらに好ましい。
【0075】
上記ホウ酸エステルとしては、例えばトリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ−n−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ−o−トリルボレート、トリ−m−トリルボレート、トリエタノールアミンボレート、トリス(2−エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7−トリオキサウンデシル)ボラン、2−(β−ジメチルアミノイソプロポキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(β−ジエチルアミノエトキシ)−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(β−ジメチルアミノエトキシ)−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(β−ジイソプロピルアミノエトキシ)−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(β−ジイソプロピルアミノエトキシ)−4−メチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(γ−ジメチルアミノプロポキシ)−1,3,6,9−テトラプキサ−2−ボラシクロウンデカン、および2−(β−ジメチルアミノエトキシ)−4,4−(4−ヒドロキシブチル)−1,3,2−ジオキサボリナン、2,2−オキシビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボナリン、及びエポキシ−フェノール−ホウ酸エステル配合物等が挙げられる。
【0076】
本発明に係る異方性導電材料100重量%中、上記貯蔵安定剤の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、更に好ましくは0.005重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。上記貯蔵安定剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料の保存安定性をより一層高めることができる。
【0077】
また、本発明に係る異方性導電材料100重量%中、上記リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種の成分の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、更に好ましくは0.005重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。貯蔵安定剤である特定の上記成分の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料の保存安定性をより一層高めることができる。
【0078】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
上記フィラーの含有量は特に限定されない。エピスルフィド化合物100重量部に対して、上記フィラーの含有量は好ましくは5重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは70重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料におけるフィラーの分散性を高めることができ、かつ異方性導電材料を硬化させた硬化物の潜熱膨張を抑制できる。
【0080】
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物とともに、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。上記エピスルフィド化合物と上記硬化剤とフェノール性化合物との併用により、異方性導電材料の保管時にチイラン基がより一層開環し難くなる。また、電極間に導電性粒子を含む異方性導電材料を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0082】
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0084】
上記異方性導電材料は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0085】
また、上記異方性導電材料は、エポキシ化合物を含んでいてもよい。また、光の照射によっても硬化可能であるように、上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と光重合開始剤とを含んでいてもよい。
【0086】
〔導電性粒子〕
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0087】
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
【0088】
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属層は錫を含むことが好ましい。低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記低融点金属層の含有量が上記下限以上であると、低融点金属層と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
【0089】
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度が高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0090】
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
【0091】
また、上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
【0092】
上記低融点金属層と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属層は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属層と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属層100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0093】
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層(はんだ層など)との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
【0094】
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
【0096】
上記低融点金属層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記低融点金属層の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。上記低融点金属層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子と低融点金属層との熱膨張率の差が小さくなり、低融点金属層の剥離が生じ難くなる。
【0097】
導電層が低融点金属層以外の導電層である場合、又は導電層が多層構造を有する場合には、導電層の全体厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0098】
導電性粒子の粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm未満、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
【0099】
異方性導電材料における導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、導電性粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0100】
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
【0101】
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第1の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
【0102】
FOB及びFOF用途向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))との接続、又はフレキシブルプリント基板とフレキシブルプリント基板との接続(FOF(Film on Film))に好適に用いられる。
【0103】
FOB及びFOF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に100〜500μmである。FOB及びFOF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は10〜100μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以上であると、電極間に配置される異方性導電材料及び接続部の厚みが十分に厚くなり、接着力がより一層高くなる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0104】
フリップチップ用途向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、フリップチップ用途に好適に用いられる。
【0105】
フリップチップ用途では、一般にランド径が15〜80μmである。フリップチップ用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜15μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0106】
COF向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))に好適に用いられる。
【0107】
COF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に10〜50μmである。COF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0108】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0109】
導電性粒子の表面は、絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等により絶縁処理されていてもよい。絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等は、接続時の熱により軟化、流動することで接続部から排除されることが好ましい。これにより、電極間での短絡を抑制することができる。
【0110】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0111】
(異方性導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であり、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0112】
本発明に係る異方性導電材料がペースト状である場合、異方性導電ペーストの25℃での粘度は、20Pa・s以上、300Pa・s以下であることが好ましい。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。なお、ペースト状には液状も含まれる。
【0113】
本発明に係る異方性導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0114】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0115】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0116】
第1の接続対象部材2は上面2a(表面)に、複数の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4a(表面)に、複数の電極4bを有する。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0117】
電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを異方性導電材料を介して電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、異方性導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。
【0118】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。
【0119】
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)及び(b)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
【0120】
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0121】
次に、図2(b)に示すように、異方性導電材料層3Aの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0122】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Aに熱を付与(加熱)する。この結果、異方性導電材料層3Aが硬化して、図1に示す接続部3が形成される。
【0123】
なお、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Aに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後に異方性導電材料層3Aに熱を付与してもよい。なお、異方性導電材料層3Aに付与される熱量は、一般に第1の接続対象部材2又は第2の接続対象部材4にも付与される。
【0124】
異方性導電材料層3Aに付与される熱の温度(すなわち加熱温度)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下である。この加熱温度が上記下限以上であると、異方性導電材料層3Aを十分にかつ速やかに硬化させることができる。本実施形態では、特定の上記組成を有する異方性導電材料を用いているので、温度が上記上限以下であっても、異方性導電材料を十分に硬化させることができる。このため、電子部品又は回路基板などの接続対象部材に付与される熱量を低減でき、接続対象部材の熱劣化を抑制できる。接続対象部材の熱劣化を効果的に抑制する観点からは、上記加熱温度は、180℃以下であることが特に好ましい。
【0125】
異方性導電材料層3Aを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0126】
異方性導電材料層3Aを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電材料を用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。
【0127】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0128】
(実施例1)
下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を用意した。
【0129】
【化13】

【0130】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量部に、アミン硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、包接イミダゾール硬化剤(日本曹達社製「TEP−2E4MZ」)5重量部と、亜リン酸エステルであるジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト0.3重量部と、フィラーであるシリカ(平均粒子径0.25μm)10重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子Aを配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0131】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子であり、比重が3.0である導電性粒子である。
【0132】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
【0133】
(実施例2)
下記式(2B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を用意した。
【0134】
【化14】

【0135】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、上記式(2B)で表されるエピスルフィド化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0136】
(実施例3)
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、エピスルフィド化合物(三菱化学社製「YL7007」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0137】
(実施例4)
上記ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトを、リン酸エステルであるジエチルハイドロゲンフォスファイトに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0138】
(実施例5)
上記ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトを、ホウ酸エステルであるトリメチルボレートに変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0139】
(実施例6)
上記アミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)を、アミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「MY−24」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0140】
(実施例7)
上記包接イミダゾール硬化剤(日本曹達社製「TEP−2E4MZ」)を、包接イミダゾール硬化剤(四国化成社製「P−0505」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0141】
(実施例8)
上記アミン硬化剤(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)の配合量を0.5重量部に、上記包接イミダゾール硬化剤(日本曹達社製「TEP−2E4MZ」)の配合量を9.5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0142】
(実施例9)
上記アミン硬化剤(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)の配合量を2.5重量部に、上記包接イミダゾール硬化剤(日本曹達社製「TEP−2E4MZ」)の配合量を7.5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0143】
(実施例10)
平均粒子径20μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−220」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ3μmμmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmμmのはんだ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
【0144】
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0145】
(実施例11)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0146】
(実施例12)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0147】
(実施例13)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例4と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0148】
(実施例14)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0149】
(実施例15)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0150】
(実施例16)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例7と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0151】
(実施例17)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例8と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0152】
(実施例18)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、並びにろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと以外は実施例9と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0153】
(比較例1)
式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、エポキシ化合物であるナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP−4032」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0154】
(比較例2)
上記包接イミダゾール硬化剤(日本曹達社製「TEP−2E4MZ」)を配合せずに、上記アミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)の配合量を、5重量部から10重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0155】
(比較例3)
亜リン酸エステルである上記ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0156】
(実施例及び比較例の評価)
(1)硬化時間
L/Sが20μm/20μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0157】
上記透明ガラス基板上に、得られた硬化性組成物を厚さ20μmとなるように塗工し、硬化性組成物層を形成した。次に、硬化性組成物層上に上記半導体チップを、電極同士が互いに対向し、接続するように積層した。その後、硬化性組成物層の温度が185℃となるように加熱ヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて硬化させ、接続構造体を得た。この接続構造体を得る際に、加熱により硬化性組成物層が硬化するまでの時間を測定した。
【0158】
(2)リークの有無
得られた接続構造体を用いて、隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。リークが生じていない場合を「○」、リークが生じている場合を「×」と判定した。
【0159】
(3)対向する電極間の導通の有無
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗の平均値が2.0Ω以下である場合を「○」、接続抵抗の平均値が2.0Ωを超える場合を「×」と判定した。
【0160】
(4)保存安定性
E型粘度計を用いて、作製された直後の硬化性組成物の25℃及び2.5rpmでの粘度η1を測定した。また、硬化性組成物を25℃で100時間保管した。保存後の硬化性組成物の25℃及び2.5rpmでの粘度η2を測定した。保存後の粘度η2の変化率を下記式(I)により求めた。
【0161】
変化率(%)=(η2−η1)/η1×100 ・・・式(I)
【0162】
硬化性組成物の保存安定性を下記の判定基準で判定した。
【0163】
[保存安定性の判定基準]
○○:変化率が130%未満
○ :変化率が130%以上200%未満
△ :変化率が200%以上300%未満
× :変化率が300%以上
【0164】
結果を下記の表1に示す。
【0165】
【表1】

【符号の説明】
【0166】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電材料層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピスルフィド化合物と、アミン硬化剤と、包接イミダゾール硬化剤と、貯蔵安定剤と、導電性粒子とを含む、異方性導電材料。
【請求項2】
前記貯蔵安定剤が、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含む、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、前記第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1又は2に記載の異方性導電材料を硬化させることにより形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−142271(P2012−142271A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273494(P2011−273494)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】