説明

異方性導電膜及びその製造方法

【課題】導電性粒子を1層配列化した場合にも作製が容易であり、圧着時に導電性粒子の配列が乱れることのない異方性導電膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】異方性導電膜5は、接着成分を含有し且つ導電性粒子を含有しない第1の層51と、接着成分及び導電性粒子を含有する第2の層52とから構成される。第2の層52においては、圧延により導電性粒子が概ね一列に配列されるとともに、第2の層52に含有される接着成分が半硬化状態とされている。第2の層52に含有される接着成分は、例えば熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子がほぼ一列に配列された異方性導電膜及びその製造方法に関するものであり、特に、熱圧着時に導電性粒子に配列の乱れが生ずることのない新規な異方性導電膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子部品を基板に実装する技術として、電子部品をいわゆるフェースダウン状態で基板上に実装するフリップチップ実装法が広く行われている。このフリップチップ実装法は、電子部品の端子電極としてバンプと称される電極を形成し、このバンプが基板の電極部と対向するように配置し、一括して電気的に接続する方法である。
【0003】
フリップチップ実装法においては、接続信頼性を高めること等を目的として、異方性導電膜による電気的及び機械的接続が図られている。異方性導電膜は、接着剤として機能する絶縁性の樹脂中に導電性粒子を分散したものである。バンプと電極部との間に異方性導電膜を挟み込み、加熱、加圧することで、導電性粒子が押し潰されて電気的な接続が図られる。バンプが無い部分では、導電性粒子は、絶縁性の樹脂中に分散した状態が維持され、電気的に絶縁された状態が保たれる。このため、バンプのある部分でのみ電気的導通が図られることになる。
【0004】
異方性導電膜を用いたフリップチップ実装法によれば、このように、多数の電極間を一括して電気的に接続することが可能であり、ワイヤボンディングのように電極間を1つずつボンディングワイヤで接続する必要はなく、また高密度実装に伴う端子電極の微細化、狭いピッチ化等への対応も比較的容易である。
【0005】
また、フリップチップ実装法は、基板同士の接続にも利用されており、このフリップチップ実装法を用いた異方性導電膜による電気的接続は、例えばガラス基板とフレキシブルプリント配線板(FPC)との接続や、ガラスエポキシ配線板(通常のプリント配線板)とフレキシブルプリント配線板との接続等において多用されている。
【0006】
異方性導電膜においては、その改良が進められており、例えば異方性導電膜に含有される導電性粒子を1層配列状態にしたもの等が提案されている(例えば特許文献1、2を参照)。
【0007】
特許文献1には、導電性粒子をバインダ樹脂に分散混合してなる樹脂組成物をフィルム状に成形し、その後圧延することにより導電性粒子を面方向に1層に配列させ、フィルムの厚み方向にのみ導電性を付与する異方導電性樹脂フィルム成形物の製造方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、一の噴霧手段により噴出され、静電電位付与手段により静電電位が付与された導電性粒子と、他の噴霧手段により噴出された樹脂粒子とを被処理面上に同時に噴霧することにより、樹脂粒子で形成された樹脂膜中に導電性粒子が1層配列された異方性導電膜を得ることが開示されている。
【0009】
異方性導電膜において、対向する電極同士の間に配置されることになる導電性粒子は、その一部が接続の際の圧着によりバインダ剤とともに周囲に排除されることになる。したがって、通常の異方性導電膜では、排除される導電性粒子の量を見越して、必要量より多めに導電性粒子を含有させている。しかしながら、導電性粒子は、サイズが均一であること等が要求されていることから高価なものとなっており、必要量より多くの導電性粒子を添加することは、製造コストの増加を招く要因となる上、導電性粒子の凝集等が生じるおそれがある。
【0010】
そこで、特許文献1、2に記載されているように、異方性導電膜に含有される導電性粒子を1層配列にすれば、これらの問題を解消することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−108210号公報
【特許文献2】特開2009−134914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えば特許文献1に記載の技術のように、圧延により異方性導電膜の厚さを導電性粒子の粒径レベルにまで薄くしてしまうと、接着成分(バインダ)も僅かな量となることから、接続強度が不足するおそれがあり、接続信頼性の点で課題を残すことになる。これを解消するために、上層に導電性粒子を含有しない層を設けて2層構造とする異方性導電膜も考えられる。しかしながら、単に2層構造にしただけでは、圧着時に下層中の導電性粒子の配列が乱れ、これにより電極間の導電性粒子の捕捉率が低下して電気的な導通が不十分になるおそれがある。
【0013】
一方、特許文献2に記載の技術のように、噴霧手段を用いて導電性粒子や樹脂粒子を噴霧して導電性粒子を片寄らせて1層配列にする方法では、異方性導電膜の作製が煩雑なものとなる等、生産性の点で問題が残る。また、圧着時の導電性粒子の配列乱れの問題も解消できない。
【0014】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、導電性粒子を1層配列化した場合にも作製が容易であり、圧着時に導電性粒子の配列が乱れることのない異方性導電膜を提供することを目的とし、さらには、この異方性導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するために、本発明の異方性導電膜は、接着成分を含有し且つ導電性粒子を含有しない第1の層と、接着成分及び導電性粒子を含有する第2の層とを備え、前記第2の層は、圧延により前記導電性粒子が概ね一列に配列されているとともに、前記接着成分が半硬化状態であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の異方性導電膜の製造方法は、基材フィルム上に、接着成分と導電性粒子とを含有する第2の層を形成する工程と、前記第2の層の厚さが前記導電性粒子の粒径とほぼ等しくなるように前記第2の層を圧延する工程と、圧延した前記第2の層に含有される接着成分を半硬化状態となるように硬化する工程と、前記第2の層の上に、接着成分を含有し且つ導電性粒子を含有しない第1の層を積層形成する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、異方性導電膜を構成する第2の層において、導電性粒子が1層配列とされているので、導電性粒子の必要量が抑えられる。また、第1の層が積層形成されているので、接着強度も確保される。さらに、第2の層において、接着成分が半硬化状態とされ、導電性粒子がある程度固定された状態とされているので、圧着時に導電性粒子の配列に乱れが生ずることもない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造コストを削減しながら、信頼性の高い接続状態及び導通状態を得ることが可能な異方性導電膜を提供することが可能である。また、本発明によれば、導電性粒子が下層に局在化し1層配列した異方性導電膜を、汎用の工程を利用して簡単に作製することが可能な異方性導電膜の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した異方性導電膜で接続された接続構造体の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明を適用した異方性導電膜の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明を適用した異方性導電膜の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した異方性導電膜及びその製造方法の実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
異方性導電膜を用いた接続構造体は、例えば図1の概略断面図に示すように、ICチップ等のチップ部品1と、フレキシブル配線基板や液晶パネル等の基板3とが、異方性導電膜5を介して電気的及び機械的に接続固定されることにより構成される。
【0022】
ここで、チップ部品1の一方の面には、接続端子としてバンプ(突起電極)2が形成されている。また、基板3の一方の面には、バンプ2と対向する位置に電極4が形成されている。そして、チップ部品1のバンプ2が形成された面と、基板3の電極4が形成された面との間には、異方性導電膜5が介在され、バンプ2と電極4とが対向する部分では、異方性導電膜5に含有される導電性粒子が押し潰されて電気的な導通が図られている。これと同時に、異方性導電膜5を構成する接着剤成分によりチップ部品1と基板3との機械的な接合も図られている。
【0023】
チップ部品1に形成されるバンプ2は、例えばAu、Cu、半田等の導電性金属により形成され、その高さは、例えば数μm〜数十μm程度である。バンプ2は、メッキ等により形成することが可能であり、例えばバンプ2の表面のみを金メッキ等の導電性金属メッキとすることも可能である。
【0024】
一方、基板3上に形成される電極4は、所定の回路に応じて形成される配線の部品実装位置に形成されるものであるため、ソルダーレジスト等によって被覆されず、露呈した状態で形成されている。なお、電極4の表面に、例えば金メッキ等を施すことも可能である。
【0025】
図1に示す接続構造体においては、接続に使用する異方性導電膜5に含有される導電性粒子の必要量を削減しながら、導電性粒子を1層配列とすることで導通信頼性を確保することが必要である。また、異方性導電膜5による接続においては、十分な接着性の確保も必要である。
【0026】
そこで、本実施の形態においては、図1に示す接続構造体において、チップ部品1と基板3との接続に使用される異方性導電膜5を2層構造とし、これらの要求を満たす異方性導電膜5を実現する。
【0027】
図2は、異方性導電膜5の概略的な構成を示す断面図である。異方性導電膜5は、例えばチップ部品1のバンプ2と接続する第1の層51と、基板3の電極4と接続する第2の層52とから構成される。
【0028】
ここで、第1の層51は、バインダとしての接着成分51Aを含有し且つ導電性粒子を含有しない層である。一方、第2の層52は、バインダとしての接着成分52Aと導電性粒子52Bとを含有する層である。この第2の層52は、後述する圧延工程により、導電性粒子の平均粒子径と同程度の厚さに圧延される。その結果、第2の層52は、図2に示すように、導電性粒子52Bが1列に配列された形状となる。
【0029】
この第2の層52に含有される導電性粒子52Bとしては、この種の一般的な異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の導電性粒子であれば、いずれの導電性粒子も使用することができ、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や、金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、あるいはこれらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等を使用することができる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものを使用する場合、樹脂粒子としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。導電性粒子52Bの平均粒径は、任意であるが、通常は数μm程度(例えば1μm〜4μm程度)である。
【0030】
次に、第1の層51、第2の層52の接着成分としては、従来から異方性導電膜5に使用されてきた熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を使用することができる。もっとも、第2の層52の接着成分52Aは、熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂とからなることが好ましい。熱硬化性樹脂と紫外線硬化性樹脂とを併用して接着成分52Aとすることにより、紫外線硬化性樹脂のみが硬化することで、第2の層52の硬化の程度を容易に調整して適度な半硬化状態とすることができる。また、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂の少なくとも一方に加え、異方性導電膜5を使用した際の流動性、硬化後の接着特性を調整するために、従来から使用されているフェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、ゴム系ポリマー等をさらに添加するようにしてもよい。
【0031】
熱硬化性樹脂は、異方性導電膜5を使用した接続構造体の機械的な結合強度を得るために含有される。熱硬化性樹脂の具体例としては、各種エポキシ樹脂やエポキシ基含有(メタ)アクリレート、ウレタン変性(メタ)アクリレート等のアクリレート系樹脂を使用することができる。ここで、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂、ビスフェノールF(BPF)エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、ビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂やビスフェノールF(BPF)エポキシ樹脂が好適である。
【0032】
熱硬化樹脂を硬化させるためには、硬化剤を添加する必要がある。硬化剤は、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて選択すればよく、例えば熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合には、イミダゾール系の潜在性硬化剤等が使用可能である。入手が比較的容易なものとして、商品名ノバキュアHX3741(旭化成社製)、商品名ノバキュアHX3921HP(旭化成社製)、商品名アミキュアPN−23(味の素社製)、商品名ACRハードナーH−3615(ACR社製)等を挙げることができる。
【0033】
また、熱硬化性樹脂がアクリレート系樹脂である場合には、過酸化系の硬化剤が使用可能である。この過酸化系の硬化剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、シリルパーオキサイド類等を挙げることができる。なお、第2の層52は、異方性導電膜5の完成時において半硬化しているため、第1の層51よりもその添加量は少なく処方される。
【0034】
紫外線硬化性樹脂は、異方性導電膜の第2の層52を容易に適度な半硬化状態とするために、第2の層52の接着成分52Aとして単独で又は熱硬化性樹脂と共に使用されるものである。紫外線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用すると、接続構造体を作製する際に第1の層51と熱混合されるので、接続構造体全体としてさらに機械的な強度を高めることができる。この紫外線硬化性樹脂の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の各種アクリレート系樹脂や、前述の熱硬化性樹脂としても使用可能なエポキシ基含有(メタ)アクリレート、ウレタン変性(メタ)アクリレート等のアクリレート系樹脂が挙げられる。また、これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、このようなアクリレートの代わりにメタクリレートを使用してもよい。
【0035】
紫外線硬化性樹脂を使用する場合には、光重合開始剤を添加する必要がある。例えば、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル;ベンジルヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール;ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類及びその誘導体;チオキサントン類;ビスイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これら光重合開始剤に、必要に応じてアミン類、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の比で添加してもよい。
【0036】
次に、異方性導電膜5の第2の層52においては、接着成分52Aに導電性粒子52Bを含有させて層形成を行えばよいが、1層配列した導電性粒子が、第1の層51との積層時に圧着時に配列乱れが生じないような工夫をする必要がある。そこで、本実施の形態においては、予め第2の層52に含有される接着成分を半硬化状態とし、導電性粒子を固定した状態にして配列乱れが生じないようにしてから、第1の層51を積層する。
【0037】
例えば、第2の層52に含有される接着成分が紫外線硬化性樹脂のみの場合には、紫外線照射量を制御することにより、半硬化状態とする。もっとも、第2の層52に含有される接着成分として紫外線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用した場合には、通常の紫外線照射により、紫外線硬化性樹脂のみを硬化することで、半硬化状態とすることが可能となる。
【0038】
いずれの場合にも、第2の層52に含有される接着成分を半硬化状態とすることで、導電性粒子の配列乱れが抑制され、導通不良等を確実に回避することが可能となる。また、第2の層52に含有される接着成分を半硬化状態とするため、後の圧着工程にて本硬化させるようにすれば、接着剤としての機能も十分に発揮することができる。
【0039】
本実施の形態の異方性導電膜5においては、第2の層52上に第1の層51が積層形成されるが、第1の層51においては、接着成分は未硬化状態とする。
【0040】
以上、本実施の形態における異方性導電膜の構成について説明したが、この異方性導電膜は、例えば以下の製造方法によって製造することが可能である。
【0041】
前述の2層構成の異方性導電膜5を作製する場合、先ず、第2の層52を形成する。第2の層52の形成は、例えば図3に示すように、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材フィルム11上に、接着成分52Aと導電性粒子52Bとを含有する異方性導電材料を塗布し、コーティング層12を形成する。
【0042】
第2の層は、前述の通り、このコーティング層12において、接着成分中52A中に導電性粒子52Bが1層配列されるものである。通常のコータを用いて導電性粒子が1層配列された薄膜を形成しようとしても、ギャップ間に導電性粒子が凝集する等して塗布形成することが難しい。そこで、導電性粒子52Bと接着成分52Aとからなる異方性導電材料を、予め導電性粒子52Bの粒径の2〜3倍程度の厚みとなるように基材フィルム11上にコーティングする。
【0043】
次に、コーティング層12上に2の基材フィルム13を積層する。そして、コーティング層12が基材フィルム11,13で挟み込まれてなる積層体をラミネータロール14で圧延する。このローラ14による圧延作業により、導電性粒子52Bが1層配列されたフィルムとなる。
【0044】
圧延作業後、コーティング層12中に予め配合された接着成分52Aを硬化反応させると、その後の第1の層51を積層した際の第1の層51及び第2の層52同士の混合や、第2の層52の流動を抑制し、導電性粒子52Bの配列乱れを抑制することができる。硬化反応は、接着成分52Aが紫外線硬化性樹脂のみからなる場合に加え、紫外線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる場合も、紫外線を照射することにより行う。ただし、この硬化反応は、接着成分52Aが半硬化状態となるように行う。例えば、接着成分52Aが紫外線硬化性樹脂のみからなる場合には、硬化に必要とされる紫外線量の半分以下程度の量の紫外線を照射すればよく、また接着成分52Aが紫外線硬化性樹脂と紫外線硬化樹脂とからなる場合には、紫外線照射により紫外線硬化性樹脂のみを硬化すればよい。
【0045】
この段階でコーティング層12の接着成分52Aを完全に硬化してしまうと、圧着時の接着性を確保することが難しくなるので、半硬化状態とすることが重要である。
【0046】
次に、圧延作業により製造された第2の層52上に、導電性粒子を含有せず接着成分51Aのみを含有する第1の層51を積層する。これにより、導電性粒子が1層配列された層(第2の層52)を最下層とする2層構成の異方性導電膜が形成される。
【0047】
作製された異方性導電膜5は、第2の層52が半硬化状態とされ、流動性が抑制されて導電性粒子52Bが固定されているので、導電性粒子52Bの使用量を大幅に削減しながら、十分な導通接続を図ることが可能である。
【0048】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明が前述の実施の形態に限定されないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、異方性導電膜5は、前述の実施の形態では2層構成としたが、3層以上の構成とすることも可能である。この場合にも、最下層において導電性粒子が1層配列されるように各層を積層すればよい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
(1)第2の層の形成
下記に示す材料をそれぞれ下記に示す配合量(質量部)で配合し、接着成分及び導電性粒子を含有する第2の層の形成に用いる溶液を調整した。
アクリレート樹脂(2官能アクリルモノマ、CN112C60、サートマ社製) 70質量部
フェノキシ樹脂(PKHH、ユニオンカーバイド社製) 30質量部
光重合開始剤(イルガキュア369、チバスペシャリティーケミカルズ社製) 1質量部
熱硬化性開始剤(有機過酸化物、パーヘキサ3M、日本油脂社製) 4質量部
導電性粒子(4μmφ、ブライトGNR−EHLCD、日本化学工業社製) 15質量部
トルエン 100質量部
【0051】
得られた溶液を、バーコータを用いて剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ10μm)上に形成した後、溶剤であるトルエンを乾燥炉により揮発させて厚さ12μmからなる異方性導電膜(コーティング層)を形成した。続いて、このコーティング層上に他のポリエステルフィルム(厚さ10μm)を積層した。その後、この積層体に市販のラミネータにおけるラミネータロールを通過させた。その結果、ポリエステルフィルムに積層挟持された厚さ4μmの第2の層を得た。
【0052】
次に、ポリエステルフィルムの一方の面から、紫外線照射機(キュアマックス、大宮化成製)を用いて、紫外線を6mW/cmの照射量で1分間照射し、第2の層を半硬化状態させた。
【0053】
(2)第1の層の形成
下記に示す材料をそれぞれ下記に示す配合量(質量部)で配合し、接着成分のみを含有し且つ導電性粒子を含有しない第1の層の形成に用いる溶液を調整した。
エポキシ樹脂(EP828、油化シェルエポキシ社製) 40質量部
フェノキシ樹脂(PKHH、ユニオンカーバイド社製) 30質量部
潜在性硬化剤(HX3941、旭化成社製) 30質量部
トルエン 100質量部
【0054】
剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ10μm)上に、調整された溶液をバーコータにより塗布した。その後、溶剤であるトルエンを乾燥炉により揮発させて厚さ16μmの第1の層を形成した。
【0055】
(3)第2の層と第1の層の積層
第2の層の片面のポリエステルフィルムを剥離して第2の層のコーティング層を露出させ、第1の層の接着成分が露出している面と第2の層のコーティング層とを対向させて、第1の層上に第2の層を積層させて積層体を作製した。次に、この積層体に前述の市販のラミネータにおけるラミネータロールを通過させた。これにより、ポリエステルフィルムに挟持された、第1の層(厚さ16μm)と第2の層(厚さ4μm)とからなる異方性導電膜を得た。
【0056】
<比較例1(従来の異方性導電膜)>
下記に示す材料をそれぞれ下記に示す配合量(質量部)で配合し、接着成分と導電性粒子とからなる1層構造の異方性導電膜の形成に用いる溶液を調整した。
エポキシ樹脂(EP828、油化シェルエポキシ社製) 40質量部
フェノキシ樹脂(PKHH、ユニオンカーバイド社製) 30質量部
潜在性硬化剤(HX3941、旭化成社製) 30質量部
導電性粒子(4μmφ、ブライトGNR−EHLCD、日本化学工業社製) 10質量部
トルエン 100質量部
【0057】
剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ10μm)上に、調整された溶液をバーコータにより塗布した。その後、溶剤であるトルエンを乾燥炉により揮発させて、厚さ20μmの異方性導電膜を形成した。
【0058】
<評価>
実施例1、比較例1でそれぞれ作製した異方性導電膜を用いて、以下に示すITOガラス基板とICチップとの接続構造体を作製した。
・ITOガラス基板:厚み0.7mmのガラス基板の片面にITO(インジウム錫酸化物)電極が形成されたもの
・ICチップ:サイズ2mm×20mm×0.55(厚み)、バンプ面積2500μmであるバンプを有するもの
【0059】
具体的には、実施例1、比較例1でそれぞれ作製した異方性導電膜に形成されたポリエステルフィルムを剥離し、第2の層をITOガラス基板側に配置し、第1の層をICチップ側に配置した状態で、実施例1、比較例1でそれぞれ作製した異方性導電膜を介してICチップとITOガラスを接触させ、190℃、60MPa、10秒間の条件で熱圧着を行い、接続構造体を得た。得られた接続構造体における初期の導通抵抗、信頼性試験後(温度85℃、湿度85%及び250時間後)における導通抵抗の結果を[表1]に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
ここで、厚さ4μmの第2の層中に15質量部の導電性粒子を含有する実施例1(導電性粒子15質量部/全体120質量部×100=12.5%)と、厚さ20μmの異方性導電膜中に10質量部の導電性粒子を含有する比較例1(導電性粒子10質量部/質量全体110部×100=9.1%)との間で導電性粒子の全使用量を比較すると、12.5×4:9.1×20=50:182となる。
【0062】
このように、実施例1の異方性導電膜では、導電性粒子が含有される第2の層の厚みを薄くすることができる結果、導電性粒子の全使用量が比較例1の1/3以下であるにもかかわらず、[表1]に示すように比較例1の異方性導電膜(従来の異方性導電膜)と同等の性能(抵抗値)が得られた。これにより、実施例1の異方性導電膜は、含有する導電性粒子の配列が乱れていないことがわかる。
【符号の説明】
【0063】
1 チップ部品、2 バンプ、3 基板、4 電極、5 異方性導電膜、51 第1の層、52 第2の層、11,13 基材フィルム、12 コーティング層、14 ラミネートロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着成分を含有し且つ導電性粒子を含有しない第1の層と、
接着成分及び導電性粒子を含有する第2の層とを備え、
前記第2の層は、圧延により前記導電性粒子が概ね一列に配列されているとともに、前記接着成分が半硬化状態であることを特徴とする異方性導電膜。
【請求項2】
前記第2の層は、前記接着成分として紫外線硬化樹脂と熱硬化樹脂とを含有しており、該紫外線硬化樹脂のみが硬化されて前記半硬化状態とされていることを特徴とする請求項1記載の異方性導電膜。
【請求項3】
基材フィルム上に、接着成分と導電性粒子とを含有する第2の層を形成する工程と、
前記第2の層の厚さが前記導電性粒子の粒径とほぼ等しくなるように前記第2の層を圧延する工程と、
圧延した前記第2の層に含有される接着成分を半硬化状態となるように硬化する工程と、
前記第2の層の上に、接着成分を含有し且つ導電性粒子を含有しない第1の層を積層形成する工程とを有することを特徴とする異方性導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記第2の層に含有される接着成分が、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂であり、前記硬化する工程において、紫外線照射により該紫外線硬化性樹脂のみを硬化することを特徴とする請求項3記載の異方性導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−232184(P2010−232184A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−124177(P2010−124177)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】