説明

異方性蛍光結晶薄膜ならびにバックライトシステムおよびそれを組み込んだ液晶表示装置

光源のスペクトル特性と合致する光学パラメーターを有する異方性の蛍光結晶薄膜を含むバックライトシステムと、前記バックライトシステムを組み込んだ液晶表示装置を開示する。前記バックライトシステムは、250〜450ナノメートルの波長範囲に少なくとも一つのピークをもつ発光スペクトルを有する少なくとも一つの光源と、前記光源によって発せられる光の光路上に配置されるよう、前記バックライトシステムの少なくとも一つの素子上に配置される異方性の蛍光結晶薄膜(AFTCF)を備える。前記異方性の蛍光結晶薄膜は、共役π系を有する少なくとも一つの多環式有機化合物のディスク状分子からなる棒状超分子によって形成されており、前記波長範囲の光に晒されるとき、偏光された可視光を発するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国仮特許出願第60/490,202号(2003年7月25日出願)に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容は、この引用により本明細書にそっくり記載されたものとする。
【0002】
本発明は、データ表示装置の分野に関し、また、データ表示装置用のバックライトシステムに関する。より具体的に、本発明は、光源と、光学特性が向上した異方性の蛍光結晶薄膜とを備える液晶表示装置用のバックライトシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
バックライトシステムを有する液晶表示装置(LCD)は、生産量およびその性能特性の両方の点において、種々のタイプのデータ表示装置の中で重要な地位を占めている。そのようなLCDは、ラップトップPC、計算機、携帯電話、時計、家庭用TV、ならびに他の多くの用途および装置に広く用いられている。その広い範囲の応用は、新しい有望なシステムや技術の開発を促進している。その研究開発の特に目的とするところは、バックライトシステムの出力および効率を高めること、そのサイズを小さくすること、ならびにLCDを背面から照らす発光のスペクトル特性および偏光特性を最適化することである。
【0004】
これらの課題を達成するため主に二つの方法がある。第一に、LCDを照らす可視光の強度を高めることであり、第二に、部分的に偏光された光を生成するバックライトシステムを用いることである。前者の方法は、発光源出力を増加させること(従って、装置の重量サイズの増加および電力消費の増加)または光源の紫外光(UV)成分を可視光に変換することのいずれかを伴う。後者の解決法は、偏光プリズムの使用、ブルースター角で光を反射する鏡の使用、または種々のタイプの偏光子の使用を伴う。
【0005】
存在するLCDの既知のデザインにおいて、画像のコントラストおよび輝度の向上は、蛍光材料を使用すること、およびそのような材料をベースとする素子を使用することによって達成される。例えば、米国特許第4,211,473号は、装置の一つ以上の部品に多色性材料および蛍光材料を組み込んでコントラストを向上させたLCDを開示する。これらの材料は、バランスのとれた割合で用いられ、相補的な光吸収スペクトルと発光スペクトルを有する。ディスプレイに入射する光束は、強く減衰されるかまたは強く着色される、暗状態の領域からの光に対し、ディスプレイの明状態の領域から目に到達する光がニュートラルグレーとなるように変換される。
【0006】
EP1,004,921に開示される他のデザインは、フロント基板とバック基板との間に配置された液晶層と、各基板上にある一つの電極および一つの偏光子と、染料を含む層とを備える。前記染料の層は、UV照射作用の下で400〜700nmの領域において発光する単一の成分であるか、または、発光染料と吸収染料の混合物に相当する。その発明の目的は、光源の発光スペクトル、特にUV領域にある発光スペクトルをより有効に利用することによって、より高い輝度を達成し、画像の彩度を上げ、LCDの視野角を180°にまで広げることである。
【0007】
蛍光材料は、LCDにおいて、色を補正し、明るくかつ飽和した色の画像を得るために、使用される。特に、米国特許第4,364,640号は、出力窓を介して取り出される光を捕捉し、導き、そして集束させるための装置を記載する。前記装置は、環境光を蛍光に変換することができる蛍光成分を含む合成材料からなる少なくとも一つのフレキシブルホイルを有する。前記装置は、前記出力窓から出射する光を透過させる第二および第三のフレキシブルホイルを含んでもよい。一態様において、一対のホイルが、液晶表示装置の後ろに配置される。各ホイルは、蛍光材料を含み、それらの偏光面は互いに直交である。これら二つのホイルの間に配置された光学活性層は、偏光の方向を回転させる。液晶セルの反対側にあるホイルを介して光が取り出されるため、前記セルによって調節された光を見ることとなる。
【0008】
特開昭60−61725号公報は、輝度が向上したカラーLCDを記載する。その装置は、カラーフィルターを用いる代わりに、短波長の可視光により発光が励起される、蛍光材料を用いている。
【0009】
他のタイプの装置として、LCDを照明するため偏光を用いるものがある。そのような装置において、偏光子は、バックライトシステムの素子の表面に配置されるか、または液晶セルとバックライトシステムとの間に配置される。例えば、偏光機能を有する表面光源装置は、銀箔シートによって囲まれた蛍光ランプを有し、前記シートから、光出射表面および偏光変換部を介して、平行な照明光束が取り出される。前記偏光変換部は、プリズムでの反射を伴う偏光変換作用を介して、表面光源装置の偏光機能を高める。高い輝度の偏光された照明光束が、光出力表面を介して取り出される。そのようなバックライトシステムをLCDにおいて利用する場合、出力光方向調整部がLCDパネルの外に配置される。
【0010】
LCDに偏光を照射するもう一つの手段は、ランプと、導光板と反射フィルムとの間に配置された一連のプリズムとを有し、導光板反射部の片側から光を出させかつ集束させる、バックライトユニットによってもたらされる。前記プリズムの表面に入射する光の方向と前記表面の法線との角度がブルースター角に等しくなるよう、前記プリズムはプリズム角を有する。液晶パネルの下面にある偏光板の偏光軸の方向に平行になるよう、前記プリズムは配置される。
【0011】
非偏光の入射光束のすべてを最小限の損失で偏光に変換することができる最も効果的なシステムは、反射偏光子を用いた、いわゆる光リサイクル機構によってもたらされる。
【0012】
反射偏光子は、通常、交互に重ねられた異方性層と等方性層とからなる多層構造を有し、ある等方性層の屈折率は、複数の異方性層の一つの屈折率に等しくなっている。この構造は、ある偏光状態の光を透過させることができる一方、それに直交な偏光状態の光を反射することができる。そのような構造の一つにおいて、反射された偏光は、1/4波長板を通過し、その偏光方向を変え、鏡で反射され、そして再度、1/4波長板を通過して反射偏光子に再度入り、このときが第一の偏光状態である。
【0013】
他の種類の光リサイクル機構は、反射偏光子から反射された光成分の偏光解消を必要とするものである。これは、例えば、拡散反射板を用いることにより達成することができる。反射に際し、非偏光の光が、反射偏光子に入る。
【0014】
上述した方法およびLCDデザインの解決法は、必要なスペクトル特性および望ましいサイズ(薄膜装置用に意図されるものを含む)を有する明るく高効率の偏光発生源を得るという総合的な問題の解決することよりも、バックライトシステムの個々の特性を向上させることを目的とするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、バックライトシステムおよび光源のスペクトル特性と適合した光学的パラメーターを有する異方性の蛍光結晶薄膜を提供することにある。
【0016】
本発明の一態様により明らかにされるバックライトシステムは、250〜450ナノメートルの波長範囲において少なくとも一つのピークをもつ発光スペクトルを有する少なくとも一つの光源を有する。異方性の蛍光結晶薄膜(anisotropic fluorescent thin crystal film (AF TCF))は、バックライトシステムの少なくとも一つの素子上に配置され、光源によって発せされる光の光路上に存在するようになっている。前記異方性の蛍光結晶薄膜は、共役π系を有する少なくとも一つの多環式有機化合物のディスク状分子からなる棒状超分子によって形成され、前記波長範囲からの光に晒されるとき、偏光された可視光を発する。
【0017】
他の態様により、本開示のバックライトシステムを有する液晶表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の他の目的および効果は、以下に説明する図面を参照して、発明の詳細な説明および請求の範囲を読むことにより、明らかとなる。
【0019】
いくつかの有機染料分子の特徴として、超分子の液晶中間相を形成できる能力がある。周辺の官能基を含む有機染料の中間相は、特定の構造、状態図、光学特性、および溶解能力によって特徴づけられる(J. M. Lehn, Supramolecular Chemistry (New York, 1998))。
【0020】
リオトロピック液晶(LLC)系を形成することができる二色性染料を用いることにより、高度な光学異方性を有するTCFを得ることができる。そのようなフィルムは、超分子複合体の光学吸収特性に関係している、E型偏光子の性質を示し、そして、吸収がわずかであるスペクトル領域において位相差板(位相シフトフィルム)として作用する。これらの異方性フィルムの位相特性は、その複屈折性(複屈折)、すなわち、LLC溶液を基板に塗布した方向において測定した屈折率とそれに直交な方向において測定した屈折率との差によるものである。強い(耐光性の)染料分子をベースとするLLC系から形成されるフィルムは、高い熱安定性および耐光性を特徴とする。そのようなTCFは、オプティバ(Optiva)テクノロジーとして知られる方法により得ることができる(国際公開WO03/007025、米国特許出願公開公報2003-0154909および2004-067324、ならびにP. Lazarev and M. Paukshto, Proceedings of the 7th International Workshop "Displays, Materials and Components" (Kobe, Japan, November 29-December 1, 2000), pp. 1159-1160参照)。
【0021】
AF TCFを得るため、特定の液晶セルに要求される光学パラメーターに応じて、また特定のバックライトシステムに用いられる光源を考慮して、選択する、本発明に開示の同じ方法が用いられた。そのようなフィルムのための基礎材料の選択は、要求される光学特性(バックライトシステムに使用される光源の発光スペクトルおよびLCDの作動に必要な発光帯に対応する、適当なフォトルミネセンス励起帯の存在)に応じて決定される。他の必要な条件は、分子の共役芳香環にπ共役結合の発達した系が存在すること、および、前記分子の平面内に存在しかつ前記芳香系の結合に加わる基(例えば、アミン、フェノール、ケトンなど)が存在することである。前記分子および/またはそれら分子のフラグメントは、平面構造を有しており、かつ、安定したリオトロピック液晶相を形成することができる。
【0022】
適当な溶媒に溶解されるとき、そのような有機化合物は、分子が集合して系の動力学的単位を構成する超分子となる、コロイド系(リオトロピック液晶溶液)を形成する。この液晶相は実質的に、秩序づけられた状態の系の前駆体であり、前記前駆体から、固体の光学的に異方性の(二色性の)結晶フィルム(薄膜結晶とも呼ばれる)が、その後の超分子の配向および溶媒の除去を経て形成される。
【0023】
超分子複合体を含むコロイド系から異方性の結晶フィルムを合成するために設定される方法は、以下の段階を含む。
基材上(または装置もしくは多層構造の層上)に、上述したコロイド系を塗布する段階。ここで、前記コロイド系は、チキソトロピー性を有する必要があり、それは、予め設定した温度および分散相の所定の濃度を維持することによりもたらされるものである。
(i)前記溶液の粘度を低下させる任意の外部作用(加熱、剪断歪作用など)により、塗布されたコロイド系を高流動性の状態に変換する段階。ここで、この作用は、後の配向段階全体の間または最後の最小限必要な時間の間のいずれかにおいて、付与することができ、それにより、前記系が、配向段階の間、粘度の増加した状態に戻らないようにするものである。
(ii)前記系への外部からの配向作用の段階。ここで、前記作用は、機械的因子を用いるか、またはそれ以外の手段により、発生させることができる。前記外部作用の程度は、前記コロイド系の動力学的単位が必要な配向を獲得し、かつ異方性結晶薄膜の結晶格子の基礎として作用する構造を形成するように、十分なものでなければならない。
(iii)前記粘度が低下した状態から、前記外部作用によって達成された、前記層の配向領域を、初期の状態またはより高い粘度の状態に変換する段階。ここで、この変換は、電気光学異方性結晶薄膜構造が非配向にないように、また、表面欠陥が生じないよう、行われる。
(iv)溶媒除去(乾燥)の最終段階。これによって、最終的な異方性結晶薄膜構造が形成される。
【0024】
得られる異方性TCFにおいて、分子平面は互いに平行であり、その分子は、前記層の少なくとも一部において、三次元的結晶構造を形成する。
【0025】
製造技術の最適化により、単結晶フィルムの形成が可能となりうる。UVまたは青色光の照射の下、前記フィルムが少なくとも部分的に偏光された蛍光を発生するのを確実にするため、前記構造が少なくともその軸の一つに沿って結晶性の秩序を保持することが必要である。UVまたは青色光によって生じる蛍光の偏光度は、前記フィルムの結晶度と相関関係がある。そのような結晶において、光軸は分子の平面に直交である。そのようなTCFは、高度の異方性を有し、そして、少なくとも一つの方向において、高い屈折率を示す。前記フィルムの厚みは、通常、1μmを超えない。
【0026】
AF TCFの厚みは、塗布する溶液中の固体物質の含有量および塗布する層の厚みにより、調節することができる。望ましい光学特性を有するフィルムを得るため、混合したコロイド系を用いることができる(そのような混合物は、共同の超分子を形成することができる。)
【0027】
染料溶液の混合によって、種々の含有物の混合集合体が形成される。染料混合物溶液についてのX線回折パターンを解析することによって、3.1〜3.7Åの範囲の格子面間隔に対応する特徴的な回折ピークにより、超分子における分子の充填状態を知ることができる。一般的に、この値は、結晶および集合体における芳香族化合物に共通している。ピークの強度および鋭さは、乾燥中に高まるが、ピーク位置は変化が見られなかった。この回折ピークは、集合体の積層物における分子間間隔に対応するものであり、種々の材料のX線回折パターンに見られるものである。
【0028】
分子(またはそのフラグメント)が平面構造を有すること、および、検討する複数の有機化合物において、ある一つの分子サイズが一致することは、前記混合において好ましい。塗布された水性の層において、有機分子は、基板表面における超分子の配向に関連する、一つの方向に長い距離にわたって秩序を有する。溶媒を蒸発させるとき、三次元的結晶構造を形成することは、分子にとってエネルギー的に有利である。
【0029】
本発明によるバックライトシステムは、UV光源(またはUVもしくは青色光の成分が発光スペクトルにある光源)、および、前記光源と前記バックライトシステムの出力部との間において前記バックライトシステムの少なくとも一つの素子の表面に配置される、異方性の蛍光結晶薄膜(AFTCF)を有する。そのようなAF TCFは、上述したように形成される。
【0030】
前記バックライトシステム用の光源は、バンドスペクトルなどを有するもの(Hg,H,Xeランプなど)などの低圧または高圧のガス放電ランプ;高圧および超低圧のアーク放電ランプ;パルスプラズマ放電ランプ;発光光源;および同様のシステムに用いられる任意の他の光源とすることができる。
【0031】
上述した光源は、通常、260〜450nmの波長範囲において、少なくとも一つの強い発光ピークを示す。光源の発光スペクトルの上記ピークに対応するバンドをもつルミネセンス励起スペクトルをフィルム材料が有するよう、AFTCFを選択する。
【0032】
前記AF TCFは、可視スペクトル領域において、無色(透過性)または色つき(吸収性)とすることができる。後者の場合、前記フィルムは、特定の光学特性に応じて、偏光を発する主機能と同時に、可視光を位相させるかまたは偏光させる機能を発揮してもよい。
【0033】
さらに、AF TCFが十分に狭いスペクトル範囲内で偏光を発するよう、フィルム材料を選択することができる。そのようなフィルムは、偏光されたカラー光の光源を作るために、特に、カラーLCDのバックライトシステムに使用するカラーマトリックスに用いることができる。発光光源を用いることにより、より鮮明な色の画像が得られ、また、前記システムの内部素子における吸収損失の減少の代わりに光収率の増加がもたらされる。
【0034】
いくつかの場合、AF TCFの上方またはバックライトシステムの上にさらなる偏光子を配置することによって、可視光の偏光を行うことができる。そのような場合、上述した棒状超分子の軸は、前記偏光子の吸収軸に沿って向けられる。
【0035】
バックライトシステムは、さらに他の光学素子、例えば、光コリメーター、鏡面反射板または拡散反射板、略V形状の溝のネットワークの形態をとる反射板などを含んでもよい。これらの素子は、光源によって発せられた光を集め導く機能を発揮することができる。
【0036】
光源によって発せられる光をより効果的に偏光させるため、反射素子を、光の伝播方向に対してブルースター角の向きに設定することができる。この場合、反射に際して光はさらに偏光される。この反射素子は、通常、独立したステップ、プリズム等の形状を有する。本発明の範囲内において、そのような素子は、AFTCFで覆うこともできる。そのようなフィルムは、発光の偏光面が光源スペクトルの反射された可視光の偏光面と一致するよう、配向させる必要がある。実質的にすべての非偏光の可視光を最小限の損失で偏光に変換できる最も効果的な方式は、反射偏光子を用いた光リサイクル機構である。
【0037】
前記光リサイクル機構は、通常、反射偏光子と反射板を含み、さらに、ある場合は、前記反射偏光子と前記反射板との間に配置された1/4波長板を含む。本発明による光リサイクル機構は、光源と反射偏光子との間にさらなるAFTCFを含み、それは、光源によって発せられるUV光の少なくとも一部を部分的に偏光された可視光に変換する。
【0038】
反射偏光子は、一つの偏光状態の可視光を透過させることができる一方、それに直交な偏光状態の光をすべて反射することができる。1/4波長板を通過し、反射された偏光は、その偏光方向を変え、鏡で反射され、再度、1/4波長板を通過し、そして反射偏光子に再度入射し、このときが、第一の偏光状態である。AFTCFおよび反射偏光子は、反射偏光子の透過軸がAF TCFによって出射される発光の偏光面と一致するように(すなわち、その軸が上述した棒状超分子の軸に直交となるように)、配置される。
【0039】
上述したバックライトシステムすべてを、LCD用の有効なバックライトシステムに用いることができる。
【0040】
図1〜6は、本発明によるいくつかのバックライトシステムの模式的断面図を示す。図1に示すバックライトシステムにおいて、光源1は、例えば、発光ランプまたはLEDマトリックスである光源の組立て品である。AFTCF2は、前記光源組立て品上に直接付与されている。バックライトシステムの後ろに配置された反射板3は、光源の発光のより有効な利用をもたらす。前記反射板は、任意のタイプ(鏡面反射または拡散反射)とすることができる。
【0041】
図2は、本発明の他の態様を示し、片側に配置された光源5を有するバックライトシステムを示す。そのような構成は、通常、バックライトシステムを有する装置(例えばLCD)の全体の厚みを減らすため用いられる。光源によって発せられた光は、導光板6に導入され、拡散反射板7で反射されて、AFTCF2に当たる。可視光のさらなる二色性偏光子4を、バックライトシステムの上に配置することができる。このシステムは、可視スペクトル領域における偏光を出射し、単一のフロント偏光子を有する透過型LCD用のバックライトシステムとして用いることができる。
【0042】
本発明の他の態様として、バックライトシステムは、その上に配置される位相差板、カラーフィルター、あるいは、他の何らかのさらなる光学素子を含むことができる。
【0043】
図3は、反射素子を用いたデザインを示すものであり、反射部材の表面は、光源によって発せられる光の方向に対して、ブルースター角の向きに設定されている。この構成をもたらすために、反射板8は、独立したステップの形状を有することができ、各ステップは、所定の傾斜面を有する。
【0044】
他の態様において、反射板のすべての独立したステップは、別々の素子によって形成される。この場合、反射素子の表面は、略V形状である溝のネットワークによって覆われる。
【0045】
AF TCFを製造するカスケード結晶化技術(Cascade Crystallization technology)を用いることにより、要求される角度の反射板のステップ(図6)上に、直接、フィルム2を適用することができる。フィルム2は、発光の偏光面が、光源5のスペクトルの可視部における反射光の偏光面と一致するように、向きが設定される。
【0046】
図4は、高光度(高輝度)バックライトシステムの構成を示し、それは、例えば、投影型のLCDに用いることができる。このシステムは、光源5、反射板9、AFTCF2、収束レンズ10、反射偏光子11、および1/4波長板12を備える。前記反射偏光子は、隣接する複数対の材料層の多層積層物である。これらの対のそれぞれは、反射偏光子の面の一方向において隣接する層間で屈折率差を示し、第一の方向に直交である、反射偏光子の面のもう一つの方向において隣接する層間で屈折率差を実質的に示さない。1/4波長板12は、反射偏光子11に固定されている。AFTCFは、光源の発光スペクトルのUV部分を、少なくとも部分的に偏光されている可視光に変換する。光源5からの光線は、反射偏光子を通過してLCD(図示せず)に至るか、または、その偏光状態に応じて光源の方向に反射されて戻される。反射偏光子によって反射された光は、反射板によって反射され、再度LCDの方向に戻される。1/4波長板および反射板の使用は、一般に無駄とされる光をリサイクルするのに役立ち、同時に、LCD内での熱の蓄積を減少させる。
【0047】
一態様において、バックライトシステムは、光コリメーターとして働くさらなる光学素子を有する。図5に示すバックライトシステムは、光源5、導光板6、AFTCF2(これは、偏光される発光の光源であり、同時に、光源により発せられる可視光の拡散反射板であるように配置される)、およびプリズム13の組立て品である追加の光学素子を有する。この素子は、バックライトシステムの面に垂直な光線を透過させると同時に前記透過光の偏光度を高めることにより光コリメーターの機能を発揮する。また、このバックライトシステムには、前記システムの出力部に配置されるさらなる二色性偏光子4が設けられる。
【0048】
また、バックライトシステムは、図7のように、特にカラーLCDに用いるため、スペクトル的に純粋な偏光の光源となることができる。このバックライトシステムは、360〜420nmの範囲にる優勢な発光ピークを有する光源18と、種々のスペクトル範囲において偏光を発する個々の要素のマトリックスとなっているAFTCF19とを含む。マトリックスの隣接する要素は、RGB(赤-緑-青)三原色を生成させる。
【0049】
上記バックライトシステムは、液晶表示装置において用いることができる。図8のLCDは、対応する機能層および二色性偏光子を有するフロントパネル14およびリヤパネル16と、液晶材料層15と、バックライトシステムとを有する。後者は、光源5、導光板6、拡散反射板13、およびAFTCF2を有し、これは、偏光される発光の光源である。このLCDデザインは、輝度を高め、そしてある場合、上述したように演色を向上させる。
【実施例】
【0050】
図9〜12は、異なる材料から製造されたAF TCFの光学的性能についてのデータを示す。IsおよびIpは、250〜450ナノメートルの波長範囲に発光スペクトルを有する光源からの光に応答した異なる二つの偏光方向についての蛍光の強度である。
【0051】
図9は、ビスベンゾイミダゾ[2,1-b:1´,2´-j]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-6,9-ジオンのスルホン化物から調製されたAF TCFの蛍光性能についてデータを示す。
【0052】
図10は、7H-ベンゾイミダゾ[2,1-a]ベンゾ[de]イソキノリン-7-オンのスルホン化物から調製されたAFTCFの蛍光性能についてデータを示す。
【0053】
図11は、インダントロン(6,15-ジヒドロ-5,9,14,18-アントラジンテトラオン)のスルホン化物から調製されたAF TCFの蛍光性能についてデータを示す。
【0054】
図12は、ビスベンゾイミダゾ[2,1-a:1´,2´-b´]アントラ[2,1,9-def:6,5,10-d´e´f´]ジイソキノリン-6,11-ジオンのスルホン化物(トランス−異性体を有する混合物)のスルホン化物から調製されたAFTCFの蛍光性能についてデータを示す。
【0055】
本発明の特定の態様および具体例について示してきたものは、例示と説明を目的とするものである。本発明は、以上のいくつかの具体例によって明らかにされてきたが、それによって本発明を限定的に解釈すべきものではない。それらは、本発明を完全に網羅するものでもなく、また、本発明を開示したそのものずばりの形態に限定しようとするものでもない。上述した開示に照らして多くの変更・修飾、具体例および変形例が可能であることは明らかである。本発明の技術的範囲は、ここに開示した包括的な領域を包含し、添付した請求の範囲およびその均等の範囲によって包含すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】光源上に直に配置されたAF TCFを有する本発明によるバックライトシステムの模式的断面図である。
【図2】片側に配置された光源を有するバックライトシステムの模式的断面図である。
【図3】光源によって発せられる光の方向に対してブルースター角に配置された反射素子を有するバックライトシステムの模式的断面図である。
【図4】光リサイクルの構成を有する高光度バックライトシステムの模式的断面図である。
【図5】光コリメーターとしてプリズムの組立品を有するバックライトシステムの模式的断面図である。
【図6】反射板のステップ上に直接適用されたAF TCFを有するバックライトシステムの模式的断面図である。
【図7】本発明によるカラーバックライトシステムの動作を示す図である。
【図8】本発明による液晶表示装置の模式的断面図を示す。
【図9】異なる有機化合物からなるAF TCFの光学性能に関するデータを示すグラフである。
【図10】異なる有機化合物からなるAF TCFの光学性能に関するデータを示すグラフである。
【図11】異なる有機化合物からなるAF TCFの光学性能に関するデータを示すグラフである。
【図12】異なる有機化合物からなるAF TCFの光学性能に関するデータを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
250〜450ナノメートルの波長範囲に少なくとも一つのピークをもつ発光スペクトルを有する光を発する少なくとも一つの光源、および前記光源によって発せられる光の光路上に配置される異方性の蛍光結晶薄膜(AFTCF)を有するバックライトシステムであって、
前記AF TCFが、共役π系を有する少なくとも一つの多環式有機化合物のディスク状分子からなる棒状超分子によって形成されており、
前記棒状超分子は、好ましい配向方向を有しており、かつ、前記波長範囲内の光に晒されるとき、偏光された可視光を発するものである、バックライトシステム。
【請求項2】
前記発光スペクトルは、260〜380nmの波長範囲に少なくとも一つのピークを有する、請求項1に記載のバックライトシステム。
【請求項3】
前記光源は、光学的放射のプラズマ光源、光学的放射の発光光源およびレーザーを含む群より選ばれるものである、請求項2に記載のバックライトシステム。
【請求項4】
前記システムから出力された光を平行にするために配置された光コリメーターをさらに含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項5】
前記光源によって発せられる光の光路においてAF TCFの後に配置される可視光の偏光子をさらに含む、請求項1乃至4のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項6】
前記好ましい配向方向は、前記可視光の偏光子の吸収軸に平行である、請求項5に記載のバックライトシステム。
【請求項7】
前記光源によって発せられる光およびAF TCFによって発せられる蛍光を反射するための反射板をさらに含む、請求項1乃至6のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項8】
前記反射板が鏡面性である、請求項7に記載のバックライトシステム。
【請求項9】
前記反射板が拡散性である、請求項7に記載のバックライトシステム。
【請求項10】
前記反射板がブルースター角に配向されている、請求項7または8に記載のバックライトシステム。
【請求項11】
前記反射板が、略V形状である溝のネットワークで覆われた表面を有する、請求項7または8に記載のバックライトシステム。
【請求項12】
前記AF TCFが、前記反射板の上に配置されている、請求項7〜11のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項13】
発せられる偏光を受けるために配置される反射偏光子をさらに含む、請求項1乃至12のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項14】
前記反射偏光子と前記反射板との間に配置される1/4波長板をさらに含む、請求項13に記載のバックライトシステム。
【請求項15】
前記反射偏光子の透過軸は前記配向方向に直交である、請求項13または14に記載のバックライトシステム。
【請求項16】
前記AF TCFは、前記好ましい方向に沿って3.4±0.3Åの格子面間隔を有する、請求項1乃至15のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項17】
ディスク状分子となる少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、複素環を含む、請求項1乃至16のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項18】
前記AF TCFは、リオトロピック液晶から形成されている、請求項1乃至17のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項19】
位相差板をさらに有する、請求項1乃至18のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項20】
カラーフィルターをさらに有する、請求項1乃至19のいずれかに記載のバックライトシステム。
【請求項21】
共役π系を有する少なくとも一つの多環式有機化合物のディスク状分子からなる棒状超分子によって形成される少なくとも一つの層を有するバックライトシステム用の異方性蛍光結晶薄膜(AFTCF)であって、
前記棒状超分子が、好ましい配向方向を有しており、かつ、250〜450nmの波長範囲の光に晒されるとき偏光された可視光を発するものである、バックライトシステム用の異方性蛍光結晶薄膜(AFTCF)。
【請求項22】
ディスク状分子となる少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、複素環を含むものである、請求項21に記載のAFTCF。
【請求項23】
前記方向に沿った格子面間隔が3.4±0.3Åである、請求項21または22に記載のAFTCF。
【請求項24】
前記層は、可視光の偏光子および/または位相差板として機能する、請求項21〜23のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項25】
前記膜は、偏光子をさらに有する、請求項21〜24のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項26】
前記膜は、位相差板をさらに有する、請求項21〜25のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項27】
前記膜は、カラーフィルターをさらに有する、請求項21〜26のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項28】
少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、ビスベンゾイミダゾ[2,1-b:1´,2´-j]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-6,9-ジオンのスルホン化物である、請求項21〜27のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項29】
少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、7H-ベンゾイミダゾ[2,1-a]ベンゾ[de]イソキノリン-7-オンのスルホン化物である、請求項21〜27のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項30】
少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、15-ジヒドロ-5,9,14,18-アントラジンテトラオンのスルホン化物である、請求項21〜27のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項31】
少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、ビスベンゾイミダゾ[2,1-a:1´,2´-b´]アントラ[2,1,9-def:6,5,10-d´e´f´]ジイソキノリン-6,11-ジオンのスルホン化物である、請求項21〜27のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項32】
少なくとも一つの前記多環式有機化合物は、トランス異性体を有する混合物でのビスベンゾイミダゾ[2,1-1:1´,2´-b´]アントラックス[2,1,9-def:6,5,10-d´e´f´]ジイソキノリン-6,11-ジオンのスルホン化物である、請求項21〜27のいずれかに記載のAFTCF。
【請求項33】
液晶セル、およびバックライトシステムを備える液晶表示装置であって、
前記バックライトシステムは、
250〜450nmの波長範囲に少なくとも一つのピークをもつ発光スペクトルを有する光を発する光源、および
前記光源によって発せられる光の光路上に配置される異方性の蛍光結晶薄膜(AFTCF)を有し、
前記AF TCFは、共役π系を有する少なくとも一つの多環式有機化合物のディスク状分子からなる棒状超分子によって形成されており、
前記棒状超分子は、好ましい配向方向を有しており、かつ、前記波長範囲内の光に晒されるとき、偏光された可視光を発するものである、液晶表示装置。
【請求項34】
液晶セル、および請求項4に記載のバックライトシステムを有する、液晶表示装置。
【請求項35】
液晶セル、および請求項7〜17のいずれかに記載のバックライトシステムを有する、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−508661(P2007−508661A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521304(P2006−521304)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/023990
【国際公開番号】WO2005/012788
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】