説明

異物検出装置

【課題】パルプまたは粒状物質が含まれた流動体中から検出対象となる異物を効果的に選択して判別し、かつ排除することができる異物検出装置を提供する。
【解決手段】異物検出装置10は、流路板16の検出流路15にCCDラインセンサ40を走査して検出流路15中の異物を検出するものである。すなわち異物検出装置10は、検出流路15に対して直交する方向に走査して検出流路15中の流動体の明度を感知するCCDラインセンサ40と、CCDラインセンサ40からの画素信号を信号処理して異物を検出する信号処理部31とを備えている。このうち信号処理部31は、CCDラインセンサ40からの画素信号を異物の大きさにより予め定められた単位マスク毎に整理し、この単位マスク毎に整理された画素信号の平均値と、所定の閾値(スライスレベル)との関係に基づいて異物の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として繊維質成分を含む果汁類、飲料、薬剤等の液状の流動体中に混在する異物を検出する異物検出装置に係り、とりわけ、検出流路にCCDラインセンサを走査して、検出流路中の検出対象となる異物を正確かつ高速で検出することができる異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような繊維質成分を含む果汁等の流動体中に混在する異物を除去する手段として、フィルタを通して除去を図ることはフィルタに繊維質成分が詰って目詰りを起こし、使用不可である。また、粒状物質を含む流動体においては、粒状物質と大きさが近いあるいは粒状物質より小さい異物はフィルタで取り除くことができない。
【0003】
かかることから流動体中の異物を除去する装置として、検査対象である流動体を重力により複数の細路へ導き、この細路を流れる間に検出部により流動体中の異物を検出し、この異物検出時にその検出信号により該当する細路の弁を開けて異物を排出させるようになされたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、流動体中に含まれる繊維質成分を検出・除去する装置として、流動体が流れる管路中に透光性の検査用窓を設け、この窓を通じて照明手段により照明を与え、流動体に対する光の透過光または反射光を受光して撮像し、この撮像された映像信号に基づく信号レベルと基準レベルとを比較して異物の混入を判断し、これを除去するようになされた異物検査システムが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、流動体中の異物を検出する装置として、扁平な流路に検出窓を設け、この検出窓の一方に光源、この光源と対極する位置にCCDラインカメラまたはCCDラインセンサ等の画像化装置を配置し、これにより異物が通過した際におけるCCDの光量変化を検出する異物検出除去装置が知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3536541号公報
【特許文献2】特許第3048049号公報
【特許文献3】特開2004−156960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装置は、検出流路ごとにスキャン信号を記憶し、一定区間のスキャン信号の積分値を予め設定したしきい値と比較して判定するものである。この装置は、ノイズ成分の影響を受けにくく比較的大きな異物を安定して判別することができるが、小さな異物や色度が白と黒の中間となる異物を適切に判別することは難しい。
【0007】
一方、特許文献2に記載された異物検査システムは、アナログ信号の急激な変化と予め設定されたしきい値とを比較するものであるため、高速で処理することが可能である反面、シーケンシャルスキャンを行なう際、画素単位の特性差やパルプ分、粒状物質自体あるいはそれらの密度差などによりノイズ分の多い信号を生じるため、検出対象とする物質のサイズ、色度などを特定することはできない。
【0008】
また、特許文献3の方法によれば、検出流路を画素およびラインにより分割した面を判定の単位としているため、検出対象物質を面として捉えることができる。したがって、仮に針状物質がスキャン方向に直交する方向を向いて流れている場合であっても、この針状物質を識別することが可能となっている。しかしながら、特定の大きさ、色度を持った検出対象物質を選択的に判別する手段については開示されていない。
【0009】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、パルプまたは粒状物質が含まれた流動体中から検出対象となる異物を効果的に選択して判別し、かつ排除することができる異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、検出流路にCCDラインセンサを走査して検出流路中の異物を検出する異物検出装置において、検出流路に対して直交する方向に走査して検出流路中の流動体の明度を感知するCCDラインセンサと、CCDラインセンサからの画素信号を信号処理して異物を検出する信号処理部とを備え、信号処理部は、CCDラインセンサからの画素信号を異物の大きさにより予め定められた単位マスク毎に整理し、この単位マスク毎に整理された画素信号の平均値と、所定の閾値との関係に基づいて異物の有無を判定することを特徴とする異物検出装置である。
【0011】
本発明は、単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の閾値以下となり、かつ隣接する単位マスクの画素信号の平均値に近接する場合、これらの単位マスクを組合わせて合併マスクを形成し、この組合わされた合併マスクの大きさに基づいて異物の有無を判定することを特徴とする異物検出装置である。
【0012】
本発明は、単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入る場合に、異物有りと判定することを特徴とする異物検出装置である。
【0013】
本発明は、合併マスクを構成する各々の単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入り、かつ組合わされた合併マスクの大きさが所定の面積幅に入る場合に、異物有りと判定することを特徴とする異物検出装置である。
【0014】
本発明は、信号処理部内において、検出流路中における異物がない状態における流動体の明度の平均レベルがCCDの飽和レベル近傍に設定されていることを特徴とする異物検出装置である。
【0015】
本発明は、使用前に予め検出流路中に流動体を自動流過させ、信号処理部は検出した流動体の明度に基づいて、CCDラインセンサの感度を自動補正する機能を有することを特徴とする異物検出装置である。
【0016】
本発明は、使用前に予めCCDラインセンサを複数回走査させ、信号処理部は流動体の明度を感知し、この複数回の明度の平均レベルに基づいてCCDラインセンサの感度を自動補正する機能を有することを特徴とする異物検出装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、信号処理部は、単位マスク毎に整理された画素信号の平均値と、所定の閾値との関係に基づいて異物の有無を判定するので、検出しようとする異物の大きさに基づいて単位マスクの大きさを設定し、この単位マスクの大きさ(マスクサイズ)以上の異物を選択的に検出することができ、後工程の異物排出装置によりこの異物を排出して取り除くことができる。
【0018】
また、本発明によれば、組合わされた合併マスクの大きさに基づいて異物の有無を判定するので、検出しようとする異物の形状を問わず、所定の面積を上回る異物を選択的に判定して、後工程の異物排出装置により取り除くことができる。また、1つの異物が複数の単位マスクに分割され、この結果、いずれの単位マスクにおいても異物を検出できないという問題が生じない。すなわち、このような問題への対策として単位マスクの大きさ(マスクサイズ)を小さくする必要がないので、マスクサイズを小さく設定した結果、ノイズ等を誤って検出してしまうおそれがなく、対象とする大きさ以上の異物を効率良く検出することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入る場合に異物有りと判定するので、所望の明度を有する異物のみを選択的に検出することができる。
【0020】
さらにまた、本発明によれば、各々の単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入り、かつ組合わされた合併マスクの大きさが所定の面積幅に入る場合に、異物有りと判定するので、所望の明度および面積を有する異物のみを選択的に検出することができる。
【0021】
さらにまた、本発明によれば、信号処理部内において、検出流路中における異物がない状態における流動体の明度の平均レベルがCCDの飽和レベル近傍に設定されているので、流動体にパルプ分が多く含まれていても、信号処理部がパルプの影を誤検出することを低減させることができる。
【0022】
さらにまた、本発明によれば、使用前に予め検出流路中に流動体を自動流過させ、信号処理部は検出した流動体の明度に基づいて、CCDラインセンサの感度を自動補正する機能を有するので、流動体の濃度や密度が変動した場合であっても、信号処理部が検出する流動体の明度を一定に保つことができ、安定した検出精度を維持することができる。
【0023】
さらにまた、本発明によれば、使用前に予めCCDラインセンサを複数回走査させ、信号処理部は流動体の明度を感知し、この複数回の明度の平均レベルに基づいてCCDラインセンサの感度を自動補正する機能を有するので、異物の影響によりCCDラインセンサの感度を誤って補正するおそれがなく、異物の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図11を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施の形態による異物検出装置全体を示す斜視図であり、図2は、異物検出装置の流路板近傍における分解斜視図である。また図3は、異物検出装置の部分斜視図であり、図4は、本発明の一実施の形態による異物検出装置の作用を示すフロー図である。また図5は、検出流路を分割した画素信号を示す図であり、図6は、画素信号を整理して構成された単位マスクを示す図である。また図7は、単位マスク毎に整理された画素信号に基づいて異物の有無を判定する作用を示す図であり、図8は、検出流路中における流動体の明度を示す図である。また図9は、単位マスクを組合わせて形成した合併マスクを示す図であり、図10は、単位マスクを組合わせて合併マスクを形成する作用を示す説明図であり、図11は、合併マスクを用いない場合における異物の有無を判定する作用を示す図である。
【0025】
まず、図1乃至図3により、本実施の形態による異物検出装置全体の概略について説明する。
図1に示すように、異物検出装置10は、車輪11aを有するフレーム11上に固定されている。
【0026】
この異物検出装置10は、図示しないタンクから供給される流動体を圧送するポンプ12と、フレーム11上に配置され、ポンプ12により圧送される流動体の流路13に一端が連通された分配器14と、この分配器14により分配された流動体が流入する複数の検出流路15、15…が形成された流路板16と、この流路板16の検出流路15、15…から送出される流動体をラインへ流す流出用パイプ17と、異物を回収する異物排出装置18とを有している。またフレーム11上に、信号処理部31が格納されるとともにタッチパネル19aを有する制御盤19が設置されている。
【0027】
また図2に示すように、流路板16の前面に排出流路板22が設けられ、排出流路板22の前面にリジェクトシリンダー取付板23が設けられている。更に排出流路板22の前面下部に横長の光源25が取付けられている。このうち排出流路板22は、各検出流路15の下流側(図2の上側)と連通するように形成された連通溝24と、連通溝24の下方に設けられ光源25からの光を透過させる光入射窓26と、各光入射窓26の下方に設けられ分配器14からの流動体を各検出流路15に導入するための導入口27とを有している。
【0028】
一方、リジェクトシリンダー取付板23は、各連通溝24に連通するとともに流出用パイプ17側に流動体を流出させる流出口28と、流出口28の下方に設けられ、各連通溝24に連通するとともに異物排出装置18側へ異物を排出するために流路を切換えるリジェクトシリンダー29とを有している。
【0029】
図2に示すように、各検出流路15、15…の上流側(下側)にそれぞれ検出窓20が設けられ、検出窓20の後方にCCDラインセンサ40と画像処理部30とを有する異物検出ユニット21が設置されている(図3)。このうち異物検出ユニット21のCCDラインセンサ40は、検出流路15に対して直交する方向(図2および図3の横方向)に走査して検出流路15中の流動体の明度を感知するものである。また検出窓20は光透過性部材で構成されており、上述した光源25からの光は、排出流路板22の光入射窓26および流路板16の検出窓20を順次透過して異物検出ユニット21のCCDラインセンサ40に受光されるようになっている。なおCCDラインセンサ40は、全ての検出流路15、15…の検出窓20にわたって走査するようになっている。
【0030】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0031】
まず、図示しないタンクに収容されている原果汁等の繊維質成分を含む流動体は、ポンプ12により流路13を通じて分配器14に供給される。
【0032】
分配器14に流入した流動体は、分配器14から流出して各検出流路15、15…へそれぞれ均等に流入する。この流動体は各検出流路15、15…内を上昇し、この間異物検出ユニット21のCCDラインセンサ40により、流動体中に異物が存在するか否か検査される。
【0033】
この間光源25からの光は、排出流路板22の光入射窓26および流路板16の検出窓20を順次透過してCCDラインセンサ40に受光する。この際CCDラインセンサ40は、検出流路15、15…に対して直交する方向(すなわち図1乃至3における横方向)に走査して検出流路15、15…中の流動体の明度を感知する。
【0034】
次に、CCDラインセンサ40からの画素信号は、後述するように画像処理部30を介して信号処理部31へ送信される。その後、信号処理部31は、CCDラインセンサ40からの画素信号を信号処理して異物を検出し、異物が検出された場合、異物検出信号をリジェクトシリンダー29へ送信する(この点は後述する)。
【0035】
すなわち、信号処理部31が異物を検出した場合、異物検出信号によりリジェクトシリンダー29が切り換わり、リジェクトシリンダー29を介して排出流路板22の各連通溝24と異物排出装置18とが連通する。これにより、各検出流路15、15…からの流動体は、各連通溝24を介して異物排出装置18へと排出され、その後回収される。その後、所定量の流動体が異物排出装置18へ流入したのち、リジェクトシリンダー29は復帰する。
【0036】
他方、信号処理部31により異物が検出されない場合、各検出流路15、15…からの流動体は、排出流路板22の各連通溝24およびリジェクトシリンダー取付板23の流出口28を介して流出用パイプ17へ流出する。
【0037】
次に、図4により、異物検出装置10を用いて流動体中の異物を検出する検出フローの概略について説明する。
【0038】
図4に示すように、光源25からの光Lは、排出流路板22内を通過して流路板16へ達する。次に、この光Lは、流路板16の各検出流路15を流過する流動体内を通過してCCDラインセンサ40へ入射する。CCDラインセンサ40からのアナログ信号は、画像処理部30のアナログデジタル変換器32においてデジタル信号に変換される。このデジタル信号は8bitで0〜255の値となる(0;黒、255;白)。
【0039】
次に、アナログデジタル変換器32からのデジタル信号に基づいて、画像データ合成部33で画像データが作成される。この画像データは、検出流路15を横方向に分割した多数の画素信号(画素P)からなっている。
【0040】
次に、画像データ合成部33で合成された多数の画素信号からなる画像データは、信号処理部31に送信される。なお信号処理部31は、CCDラインセンサ40からの画素信号を信号処理して異物を検出する役割を果たすものである。
【0041】
信号処理部31において、まず画像データがシェーディング補正され(符号34)、これによりCCDラインセンサ40のレンズや光源25により画像データに生じた感度や歪み等の特性が補正される。
【0042】
その後、信号処理部31は、このようにしてシェーディング補正された画像データに基づいて画像処理を行ない(符号35)、検出流路15を横および縦方向に分割した画素信号(画素P×ラインL)からなる画像データを作成する(図5参照)。次に、信号処理部31は、このようにして作成された画像データ(画素P×ラインL)に基づいて異物の有無を判定する(符号36)。この結果、異物有りと判定された場合、信号処理部31からリジェクトシリンダー29へ異物検出信号が送信され、これによりリジェクトシリンダー29は、流路を切換えて異物排出装置18側へ異物を排出する。
【0043】
次に、信号処理部31における画素信号からなる画像データの処理方法について、更に詳細に説明する。
【0044】
(シェーディング補正34)
異物検出装置10は、異物検出を実際に開始する前に、対象となる流動体を用いてシェーディング補正を行なう。これによりCCDラインセンサ40の感度を自動で補正するようになっている。
【0045】
すなわち異物検出装置10は、異物検出装置10の使用前に予め検出流路15中に流動体を低速で自動流過させ、この間信号処理部31は、検出した流動体の明度に基づいて、CCDラインセンサ40の感度を自動補正する機能を有している。このように流動体の色に関わらず、画像明度を異物検出のために最適な明度に設定することができるので、流動体の濃度や密度が前回使用時と異なっても、CCDラインセンサ40からの画素信号を一定に保つことができ、安定した検出精度を維持することができる。
【0046】
また、対象となる流動体を実際に用いてシェーディング補正を行なうことにより、CCDラインセンサ40の階調表現能力を流動体の持つ階調幅に合わせることができる。これによりCCDラインセンサ40から階調の広い画像を取り込むことができ、スライスレベル(閾値)をより細かく設定することができる。これに対して、従来より行なわれてきたように、標準となる白色板を読み取り、白色を最大明度とするとともに黒色(信号なし)を最小明度としてシェーディング補正を行なったり、基準となる所定の固定値に基づいてシェーディング補正を行なう場合には、スライスレベル(閾値)をこのように細かく設定することは難しい。
【0047】
また、使用前に予めCCDラインセンサ40を複数回走査させ、信号処理部31は流動体の明度を感知し、この複数回の明度の平均レベルに基づいてCCDラインセンサ40の感度を自動補正しても良い。これにより、異物が混入している流動体であっても、異物の影響によりCCDラインセンサ40の感度を誤って補正するおそれがなく、異物の検出精度を更に向上させることができる。
【0048】
ところで図8(a)に示すように、検出流路15中における異物がない状態における流動体の明度の平均レベルAaは、CCDの飽和レベルS近傍に設定されている。これにより、信号処理部31が異物をより明確に捉えることができるようになっている。
【0049】
すなわち比較例として図8(b)に示すように、流動体の明度の平均レベルAbがCCDの飽和レベルSを大きく下回るように設定されていると、パルプ分の明度がスライスレベル(閾値)Tbを下回る場合があるため(例えばピークPk)、これを検出して異物有りと誤って判定するおそれがある。
【0050】
これに対して、図8(a)に示すように本実施の形態によれば、流動体の明度の平均レベルAaがCCDの飽和レベルSの近傍となるようにCCDラインセンサ40の感度が調整されている。これにより流動体にパルプ分が多く含まれる場合であっても、このパルプ分の明度がスライスレベル(閾値)Taを下回り、パルプ分を誤って異物と判定するおそれがない。
【0051】
なお、異物検出装置10は、上述したように異物検出装置10の使用前にCCDラインセンサ40の感度を自動補正しているが、使用開始後においてもCCDラインセンサ40の感度を自動補正することができる。すなわち検査対象となる流動体の密度が変動すること等により、信号処理部31が感知する流動体の明度が時間とともに変化し、これにより、信号処理部31による異物の検出精度に影響が及ぼされるおそれがある。これを防ぐため、検査中に数ライン分の画素信号の平均値(移動平均値)を常時算出しておき、この移動平均値が所定の目標値(例えば上述した流動体の明度の平均レベルAa)から外れた場合、CCDラインセンサ40の感度を自動補正することができるようになっている。
【0052】
この場合、移動平均値を計算するライン数を少なく設定すると、流動体の短期間の明度変化に対応することができる。他方ライン数を多く設定すると、流動体の一時的な明度変化に対する過敏な追従を防ぐことができる。
【0053】
(画像処理35)
信号処理部31は、シェーディング補正34がなされた後、まずCCDラインセンサ40からの画素信号を異物の大きさにより予め定められた単位マスク毎に整理する。例えば図6に示すように、信号処理部31は、64個の画素信号(8画素×8ライン)をそれぞれ16個の画素信号(4画素×4ライン)からなる4つの単位マスクM1〜M4に整理する。なお図6において、単位マスク中の各数字はCCDラインセンサ40からの画素信号の値(0〜255)を示しており、この画素信号の値は検出流路15中の流動体の明度に対応している。また符号E1は検出流路15中の検出対象となる異物である。
【0054】
次に、信号処理部31は、各単位マスク毎に画素信号の平均値を算出する。例えば図6において、単位マスクM1〜M4の画素信号の平均値は、それぞれ227(単位マスクM1)、147(単位マスクM2)、146(単位マスクM3)、60(単位マスクM4)となっている。
【0055】
次に、信号処理部31は、この単位マスクM1〜M4毎に整理された画素信号の平均値と、所定の閾値(スライスレベル)との関係に基づいて異物の有無を判定する。
【0056】
すなわち信号処理部31は、画素信号の平均値が所定の閾値(スライスレベル)以下となる単位マスクが1つ以上存在した場合、検出流路15中に異物E1が存在すると判定する。例えばスライスレベルを100に設定した場合、信号処理部31は、単位マスクM4(画素信号の平均値が60)に基づいて、検出流路15中に異物E1が存在すると判定する。あるいは、スライスレベルを150に設定した場合、信号処理部31は、単位マスクM2〜M4(画素信号の平均値がそれぞれ147、146、60)に基づいて、検出流路15中に異物E1が存在すると判定する。
【0057】
次に、信号処理部31は、リジェクトシリンダー29へ異物検出信号を送信する。これによりリジェクトシリンダー29は、流路を切換えて異物排出装置18側へ異物を排出する。
【0058】
すなわち図7に示すように、信号処理部31は、ある検出流路15中に異物E1が存在すると判定した場合、この検出流路15に対応するリジェクトシリンダー29へ異物検出信号を送信する。この場合、リジェクトシリンダー29は、信号処理部31からの異物検出信号に基づき、検出流路15のうちリジェクトサイズR(図7)に相当する部分の流動体全てを異物とともに異物排出装置18側へ排出する。
【0059】
このようにして、検出流路15中に単位マスクの大きさ(4画素×4ライン)より大きい異物E1が存在することを判定することができる。なお、単位マスクの大きさ(以下マスクサイズともいう)は、検出しようとする異物の大きさや明度に応じて自在に設定することができる(例えば、2画素×2ライン、4画素×4ライン、8画素×8ライン・・・)。
【0060】
すなわち信号処理部31は、マスクサイズより大きい異物が流動体中に存在すれば、その単位マスク毎の画素信号の平均値が低下するため、異物と判定することができる。また信号処理部31は、仮に面積が小さくてもその明度が低い異物であれば、単位マスクの画素信号の平均値が低下するため、これを異物と判定することができる。
【0061】
このように信号処理部31は、単位マスク毎に整理された画素信号の平均値と、所定の閾値(スライスレベル)との関係に基づいて異物の有無を判定するので、検出しようとする異物の大きさに基づいて単位マスクの大きさを設定し、この単位マスクの大きさ(マスクサイズ)以上の異物を選択的に検出して取り除くことができる。すなわち、信号処理部31にノイズが入った場合や、流動体中に繊維質成分等が含まれている場合であっても、信号処理部31がこれを検出して誤って異物有りと判定するおそれがない。
【0062】
また、信号処理部31は、検出流路15中における特定の明度からなる異物を選択的に検出するため、単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入る場合に、異物有りと判定しても良い。すなわち閾値(スライスレベル)の上限および下限を予め設定しておき、単位マスク毎の画素信号の平均値がその範囲内となる単位マスクが1つ以上存在する場合に異物有りと判定しても良い。
【0063】
変形例
次に、本実施の形態における異物検出装置の変形例を図9乃至図11により説明する。
図9乃至図11に示す変形例は、信号処理部31における異物検出方法が異なっているものであり、他は図1乃至図8に示す異物検出装置と同一である。
【0064】
すなわち図9に示すように、検出流路15内に異物E2が存在し、これにより複数の単位マスクM1〜M30の画素信号の平均値が所定の閾値(スライスレベル)以下となっている。また、隣接するこれら単位マスクM1〜M30の画素信号の平均値が互いに近接している。この場合、信号処理部31は、これらの単位マスクM1〜M30を組合わせて合併マスクMJを形成し、この組合わされた合併マスクMJの大きさに基づいて異物の有無を判定するようになっている。
【0065】
すなわち、信号処理部31は、各単位マスクM1、M2、・・・について、それぞれ隣接する単位マスクM1、M2、・・・の画素およびラインの連続性を検出する。この結果、連続性ありと判定した単位マスクM1、M2、・・・を連結して合併マスクMJを形成する。更に信号処理部31は、合併マスクMJの大きさが所定の大きさを上回る場合に、異物E2が存在すると判断し、異物有りと判定する。
【0066】
次に、信号処理部31がこのようにして異物を判定する方法について、図10(a)(b)により具体的に説明する。
【0067】
図10(a)(b)において、検出流路15内に6つの単位マスクMa〜Mfが配置されている。この場合、信号処理部31は、単位マスクMa〜Mfそれぞれについて画素信号の平均値を算出する(なお画素信号の平均値がスライスレベル下回る単位マスクを黒色で示す)。
【0068】
図10(a)において、1つの単位マスクMbの画素信号の平均値のみがスライスレベルを下回っているが、これと隣接する単位マスクMa、Mc〜Mfの画素信号の平均値はスライスレベル以下となっていない。したがって、信号処理部31は異物有りと判定しない。
【0069】
これに対して、図10(b)に示すように、ある単位マスクMbがスライスレベルを下回り、かつこの単位マスクMbに隣り合う5箇所(下流方向(図10(b)の上方向)3箇所は除く)の単位マスクMa、Mc〜Mfのうち、単位マスクMdの画素信号の平均値がスライスレベルを下回っている。この場合、信号処理部31は、これらの単位マスクMbおよびMdを組合わせて合併マスクMJを形成する。次に信号処理部31は、この合併マスクMJの大きさ(連結したマスク数)を算出し、この合併マスクMJの大きさと任意に設定した面積値(単位マスクの数)とを比較し、合併マスクMJの大きさが任意に設定した面積値(単位マスクの数)を上回る場合に異物有りと判定する。このようにして、検出流路15中の異物を検出することができる。
【0070】
なお上述したように、信号処理部31は、複数の単位マスクの画素信号の平均値が所定の閾値(スライスレベル)以下となり、かつ隣接するこれら単位マスクの画素信号の平均値が互いに近接している場合に、これらの単位マスクを組合わせて合併マスクを形成する。しかしながら、これに限られず、信号処理部31は、単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅(上限のスライスレベルと下限のスライスレベルとの間)に入り、かつ隣接するこれら単位マスクの画素信号の平均値が互いに近接している場合に合併マスクを形成しても良い。
【0071】
または、信号処理部31は、互いに隣接する複数の単位マスクの画素信号の平均値が所定の閾値(スライスレベル)以下であれば、これら単位マスクの画素信号の平均値が互いに近接していなくても、これらの単位マスクを組合わせて合併マスクを形成しても良い。
【0072】
あるいは、信号処理部31は、合併マスクを構成する各々の単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅(上限のスライスレベルと下限のスライスレベルとの間)に入り、かつ組合わされた合併マスクの大きさが所定の面積幅(上限の単位マスク数と下限の単位マスク数との間)に入る場合に、異物有りと判定しても良い。
【0073】
このように、図9および図10に示す本実施の形態によれば、組合わされた合併マスクMJの大きさに基づいて異物の有無を判定するので、検出しようとする異物の形状を問わず、異物の下限面積を上回る異物を選択的に判定して取り除くことができる。また、1つの異物が複数の単位マスクに分割され、この結果、いずれの単位マスクにおいても異物を検出できないという問題が生じない。
【0074】
すなわち図11(a)に示すように、検出流路15内に異物E3が存在し、この異物E3は、異物E3全体が単位マスクMk内にちょうど収まっている(図11(b))。この場合、単位マスクMkの画素信号の平均値は134となり、スライスレベル(例えば160)以下となる。したがって、信号処理部31は異物有りと判定することができる。
【0075】
これに対して、図11(c)(d)に示すように、異物E3の位置が若干ずれて、異物E3が4つの単位マスクMs、Mt、Mu、Mvに分割されて収まることも考えられる。この場合、単位マスクMs、Mt、Mu、Mvの画素信号の平均値は、それぞれ213、224、218、230となり、スライスレベル(例えば160)を上回る。このため、信号処理部31は異物有りと判定することができない。
【0076】
このような問題への対策として単位マスクの大きさ(マスクサイズ)を小さくすることも考えられるが、マスクサイズを小さく設定した結果、ノイズ等を誤って検出してしまうことも考えられる。
【0077】
これに対して図9および図10に示す本実施の形態において、信号処理部31は、単位マスクを組合わせて合併マスクを形成し、この組合わされた合併マスクの大きさに基づいて異物の有無を判定するので、対象とする大きさ以上の異物を効果的に検出することができる。なお、図9および図10に示す単位マスクの大きさ(マスクサイズ)は、図11に示す単位マスクの大きさ(マスクサイズ)より小さめに設定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態による異物検出装置全体を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態による異物検出装置の流路板近傍における分解斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態による異物検出装置の部分斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態による異物検出装置の作用を示すフロー図。
【図5】検出流路を分割した画素信号を示す図。
【図6】画素信号を整理して構成された単位マスクを示す図。
【図7】単位マスク毎に整理された画素信号に基づいて異物の有無を判定する作用を示す図。
【図8】検出流路中における流動体の明度を示す図。
【図9】単位マスクを組合わせて形成した合併マスクを示す図。
【図10】単位マスクを組合わせて合併マスクを形成する作用を示す説明図。
【図11】合併マスクを用いない場合における異物の有無を判定する作用を示す図。
【符号の説明】
【0079】
10 異物検出装置
11 フレーム
12 ポンプ
13 流路
14 分配器
15 検出流路
16 流路板
17 流出用パイプ
18 異物排出装置
19 制御盤
20 検出窓
21 異物検出ユニット
22 排出流路板
23 リジェクトシリンダー取付板
24 連通溝
25 光源
26 光入射窓
27 導入口
28 流出口
29 リジェクトシリンダー
30 画像処理部
31 信号処理部
32 アナログデジタル変換器
33 画像データ合成部
40 CCDラインセンサ
a、Ab 流動体の明度の平均レベル
1、E2、E3 異物
1、M2、・・・ 単位マスク
a、Mb、・・・ 単位マスク
J 合併マスク
S CCDの飽和レベル
a、Tb スライスレベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出流路にCCDラインセンサを走査して検出流路中の異物を検出する異物検出装置において、
検出流路に対して直交する方向に走査して検出流路中の流動体の明度を感知するCCDラインセンサと、
CCDラインセンサからの画素信号を信号処理して異物を検出する信号処理部とを備え、
信号処理部は、CCDラインセンサからの画素信号を異物の大きさにより予め定められた単位マスク毎に整理し、この単位マスク毎に整理された画素信号の平均値と、所定の閾値との関係に基づいて異物の有無を判定することを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の閾値以下となり、かつ隣接する単位マスクの画素信号の平均値に近接する場合、これらの単位マスクを組合わせて合併マスクを形成し、この組合わされた合併マスクの大きさに基づいて異物の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入る場合に、異物有りと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
合併マスクを構成する各々の単位マスクにおける画素信号の平均値が所定の明度幅に入り、かつ組合わされた合併マスクの大きさが所定の面積幅に入る場合に、異物有りと判定することを特徴とする請求項2または3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
信号処理部内において、検出流路中における異物がない状態における流動体の明度の平均レベルがCCDの飽和レベル近傍に設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の異物検出装置。
【請求項6】
使用前に予め検出流路中に流動体を自動流過させ、信号処理部は検出した流動体の明度に基づいて、CCDラインセンサの感度を自動補正する機能を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の異物検出装置。
【請求項7】
使用前に予めCCDラインセンサを複数回走査させ、信号処理部は流動体の明度を感知し、この複数回の明度の平均レベルに基づいてCCDラインセンサの感度を自動補正する機能を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−298737(P2008−298737A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148197(P2007−148197)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(000111247)ニューリー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】