説明

異物検出装置

【課題】透明な保護膜で被覆され、回路基板に付着した異物の検出能力を向上することができる異物検出装置を提供すること。
【解決手段】防滴膜23が塗布された回路基板20における異物検出装置100であって、回路基板20における防滴膜23で被覆された部位に対して赤色光を照射する赤色LED12,13a〜13dと、回路基板20における赤色光が照射された領域を撮像するカメラ11a〜11eと、カメラ11a〜11eから出力された画像データに基づいて回路基板20からの反射光輝度を測定し、この反射光輝度が所定の値を超えているか否かによって回路基板20における異物を検出するものであり、反射光輝度が閾値を超えている場合に異物が有ると判定する処理部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に電子部品が実装されてなる回路基板の異物を検出する異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された異物検出装置があった。この異物検出装置は、少なくとも複数個の同一パターンが形成された試料上を斜め上方から白色光で照明し、試料上の隣接又は接近した2つのパターンの原画像を検出する手段と、その差画像の信号を基にして試料上の異物を検出する手段とを備えて成るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−129397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配線基板にICやLSIなどの電子部品が実装されてなる回路基板は、湿度、結露、塵などから保護して、信頼性を向上させ、電子機器としての機能を維持するために、保護膜が塗布(すなわち、保護膜で被覆)されているものがある。また、通常、この保護膜は透明な膜で構成されている。
【0005】
このように保護膜で被覆された回路基板を対象として異物検出を行う場合(すなわち、回路基板に付着して保護膜で覆われた異物(塵、埃、半田屑など)を検出する場合)、従来のように白色光(主成分は青色)で照明すると、保護膜の反射による光沢が明るく(つまり、白く写り)、保護膜による反射と、異物による反射との区別がつきにくく、異物の検出が困難であった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、透明な保護膜で被覆され、回路基板に付着した異物の検出能力を向上することができる異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の異物検出装置は、
複数の端子が設けられた電子部品と、電子部品の各端子に対応した電気的接続部が設けられた配線基板とを有し、電子部品の端子と配線基板の電気的接続部とが電気的に接続した状態で電子部品が配線基板に実装され、かつ、少なくとも電子部品の端子を被覆する透明な保護膜が塗布された回路基板における異物検出装置であって、
回路基板における保護膜で被覆された部位に対して赤色光を照射する照明手段と、
照明手段によって赤色光が照射された回路基板からの反射光輝度を測定する輝度測定手段と、
輝度測定手段によって測定された反射光輝度が所定の値を超えているか否かによって回路基板における異物を検出するものであり、反射光輝度が閾値を超えている場合に異物が有ると判定する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように、透明な保護膜が塗布された回路基板に対して赤色光を照射することで、白色光(主成分は青色)を照射する場合よりも、保護膜での屈折率を小さくすることができるため、保護膜表面での反射を小さくすることができる。換言すると、透明な保護膜が塗布された回路基板に対して赤色光を照射する場合、白色光を照射した場合に比べて、保護膜の表面での乱反射による光沢を低減することができる。つまり、白色光を照射するよりも、赤色光を照射する方が、光が保護膜内に透過しやすくできる。
【0009】
よって、保護膜表面での反射光輝度を小さくしつつ、異物による反射光輝度を大きくできるため、保護膜表面での反射光輝度と異物による反射光輝度との差を大きくすることができ、異物の見逃しを減らすことができる。従って、透明な保護膜で被覆され、回路基板に付着した異物の検出能力を向上することができる。
【0010】
また、具体的には、請求項2に示すように、輝度測定手段は、回路基板における赤色光が照射された領域を撮像する撮像手段を含むものであり、撮像手段にて撮像された回路基板の画像から反射光輝度を測定するようにしてもよい。
【0011】
このようにすることによって、簡単な構成で回路基板からの反射光輝度を測定することができる。
【0012】
また、請求項3に示すように、回路基板を囲う暗箱を備え、照明手段は、暗箱内の回路基板に対して赤色光を照射し、輝度測定手段は、暗箱内にて照明手段によって赤色光が照射された回路基板からの反射光輝度を測定するようにしてもよい。
【0013】
このようにすることによって、赤色光以外の色の光が回路基板に照射されることを抑制できるので好ましい。
【0014】
また、請求項4に示すように、輝度測定手段は、撮像手段にて撮像された各画素の反射光輝度を測定するものであり、検出手段は、電子部品の複数の端子における隣り合う端子間に、撮像手段にて撮像された複数の画素からなる判定枠を複数設定し、各判定枠において、閾値以上の反射光輝度である画素数が所定の値を超えている場合に、反射光輝度が閾値を超えているとみなして異物が有ると判定するようにしてもよい。
【0015】
このようにすることによって、電子部品における端子の短絡を検出することができる。また、このように、隣り合う端子間に複数設定された各判定枠において、閾値以上の反射光輝度である画素数が所定の値を超えているか否かによって、異物の有無を判定することによって、広い範囲で異物を検出する場合よりも容易に異物を検出しやすくできる。
【0016】
また、請求項5に示すように、複数の判定枠は、隣り合う検査枠と一部が重なるように設定されるようにしてもよい。
【0017】
このようにすることによって、輝度の測定漏れを抑制できるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における異物検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における赤色LED及びカメラが設けられた暗箱の概略構成を示す図面である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施形態における電子部品部分の概略構成を示す拡大平面図である。
【図5】(a)は図4のV−V線に沿う断面図であり、(b)は端子部分の概略構成を示す拡大平面図である。
【図6】比較例における回路基板に実装された電子部品の端子部分を撮像した画像である。
【図7】本発明の実施形態における回路基板に実装された電子部品の端子部分を撮像した画像である。
【図8】(a)は比較例における回路基板の輝度分布を示すグラフであり、(b)は本実施形態における回路基板の輝度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0020】
本実施形態における異物検出装置100は、配線基板22に電子部品21が実装され、かつ、防滴膜23が塗布された回路基板20における異物検出を行うものである。異物検出装置100は、図1,2に示すように、処理部(検出手段,輝度測定手段)10、カメラ(撮像手段,輝度測定手段)11a〜11e、赤色LED(照明手段)12,13a〜13d、表示部14、暗箱15などを備える。
【0021】
処理部10は、パーソナルコンピュータやマイコンなどからなるものである。この処理部10は、カメラ11a〜11eから出力された画像データに基づいて、例えば、後ほど説明する赤色LED12,13a〜13dによって赤色光が照射された回路基板20からの反射光輝度を測定(輝度測定手段)する。本実施形態においては、処理部10は、暗箱15内にて赤色LED12,13a〜13dによって赤色光が照射された回路基板20からの反射光輝度を測定する。また、処理部10は、測定した反射光輝度が所定の値を超えているか否かによって回路基板20における異物を検出するものであり、反射光輝度が閾値を超えている場合に異物が有ると判定する(検出手段)。
【0022】
カメラ11a〜11eは、本発明の撮像手段に相当するものであり、回路基板20を撮像する。そして、その撮像した画像データを処理部10に出力する。具体的には、カメラ11a〜11eは、少なくとも回路基板20における赤色LED12,13a〜13dによって赤色光が照射された領域を撮像する。例えば、CCDカメラやCMOSカメラなどを採用することができる。
【0023】
赤色LED12,13a〜13dは、本発明の照明手段に相当するものであり、処理部10からの指示に基づいて、回路基板20に対して(少なくとも回路基板20における防滴膜23(後ほど説明する)で被覆された部位に対して)赤色光[625−740nm]を照射する。具体的には、赤色LED12,13a〜13dが発光する赤色光は、暗箱15の内壁15cに照射されて、この内壁15cにて反射して回路基板20に照射される。つまり、赤色LED12,13a〜13dは、間接的に回路基板20に対して赤色光を照射する。なお、本実施形態においては、赤色光を照射する照明手段として、赤色LED12,13a〜13dを採用しているが、赤色光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。
【0024】
このように、赤色LED12,13a〜13dを用いて、暗箱15内に配置された回路基板20に対して赤色光を照射することによって、赤色光以外の色の光が回路基板20に照射されることを抑制できるので好ましい。なお、本実施形態においては、このように間接的に回路基板20に対して赤色光を照射する例を採用するが、本発明はこれに限定されるものではない。暗箱15を用いずに、赤色LED12,13a〜13dから直接回路基板20に赤色光を照射するようにしてもよい。
【0025】
また、これらのカメラ11a〜11e、赤色LED12,13a〜13dは、図2,3に示すように、暗箱15に設けられる。つまり、本実施形態における暗箱15は、カメラ11a〜11e、赤色LED12,13a〜13dが設けられたものである。暗箱15は、回路基板20を囲う中空のドーム形状を有するものであり、少なくとも内壁15cが半球形状のドーム部15aと、このドーム部15aの開口端に赤色LED12を搭載するための平板状の台座部15bを有する。つまり、カメラ11a〜11eは、暗箱15によって囲まれた回路基板20を撮像する。一方、赤色LED12,13a〜13dは、暗箱15によって囲まれた回路基板20に対して赤色光を照射する。なお、図2は、暗箱15を頂点側(ドーム形状の底面の裏面側)からみた図面(上視図)である。
【0026】
カメラ11a〜11eは、全て暗箱15のドーム部15aに設けられる。カメラ11a〜11dは、ドーム部15aの中心に対して鉛直方向の仮想直線と暗箱15の開口端を結ぶ仮想平面(暗箱15が載置される平坦面)との交点を頂点として、この仮想平面とのなす角度が45度の位置であり、かつ、ドーム部15aの中心に対して均等な位置(90度間隔)に設けられる。つまり、カメラ11a〜11dは、ドーム部15aの中心に対して鉛直方向の仮想直線と暗箱15の開口端を結ぶ仮想平面(暗箱15が載置される平坦面)との交点を頂点として、この仮想平面とのなす角度が45度となる仮想直線方向が撮像方向となるように設けられる。また、このカメラ11a〜dは、45度カメラとも称する。
【0027】
一方、カメラ11eは、暗箱15の頂点(ドーム部15aの中心)に設けられる。つまり、カメラ11aは、ドーム部15aの中心に対する鉛直方向が撮像方向となるように設けられる。この暗箱15の頂点に設けられたカメラ11eは、上面カメラとも称する。
【0028】
また、赤色LED12は、暗箱15の台座部15bに複数個設けられ(ここでは、台座部15bの全周に亘って設けられる例を採用している)、暗箱15の開口端を結ぶ仮想平面(暗箱15が載置される平坦面)に対して垂直方向に赤色光を照射する。一方、赤色LED13a〜13dは、暗箱15のドーム部15aにおいて、各カメラ11a〜11dを囲うように(各カメラ11a〜11dの周囲に)設けられ、ドーム部15aの中心に対して鉛直方向の仮想直線と暗箱15の開口端を結ぶ仮想平面(暗箱15が載置される平坦面)との交点に対して斜め方向に赤色光を照射する。このように、赤色LED12,13a〜13dが設けられた暗箱15は、ドーム型照明と換言するとことができる。
【0029】
表示部14は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどからなるものであり、処理部10から出力された画像信号によって検出結果を表示するものである。
【0030】
ここで、図3〜5に基づいて、回路基板20に関して説明する。この回路基板20は、電子部品21、配線基板22、防滴膜23などを備えるものである。
【0031】
電子部品21は、図3,4などに示すように、複数の端子211a〜211dと、半導体チップなどを含む素子部21aとを備えるものである(すなわちICチップ)。また、この電子部品21としては、抵抗素子やコンデンサなども採用することができる。
【0032】
複数の端子211a〜211dは、素子部21aの各辺(4辺)にそれぞれから突出して設けられるものである。つまり、素子部21aの各辺には、複数の端子211a、複数の端子211b、複数の端子211c、複数の端子211dがそれぞれ設けられている。なお、各端子は、図3,4に示すように、素子部21aの側壁から突出した突出部21b、突出部21bに対して屈曲された屈曲部21c、さらに、配線基板22の一面(平坦な実装面)と平行な部品側接続部21dからなるものである。この突出部21b、屈曲部21c、部品側接続部21dは、一枚の金属部材を曲げ加工することによって形成される。
【0033】
配線基板22は、絶縁基材に導電性の導体パターン、パッド(基板側接続部22a)などが設けられた基板である。例えば、樹脂製のプリント配線基板やセラミック配線基板等を採用できる。この基板側接続部22aは、配線基板22に実装される電子部品21の端子211a〜211dに対応して設けられる。
【0034】
そして、回路基板20は、電子部品21の端子211a〜211dと配線基板22の基板側接続部22aとが半田などによって電気的に接続した状態で、電子部品21が配線基板22の一面に実装されてなるものである。さらに、図5(a)に示すように、少なくとも電子部品21の端子211a〜211dを被覆する防滴膜23が塗布される。つまり、防滴膜23は、電子部品21の端子211a〜211dにおける、配線基板22の基板側接続部22aと電気的に接続した部位を除いて、端子211a〜211dを被覆する。なお、回路基板20の全体を防滴膜23で被覆するように、防滴膜23を塗布するようにしてもよい。
【0035】
この防滴膜23は、本発明における透明な保護膜に相当するものであり、回路基板20を湿度、結露、水滴、塵(例えば、はんだ屑など)などから保護して、信頼性を向上させ、電子機器としての機能を維持するためのものである。例えば、揮発性溶剤に溶解したアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ系合成樹脂等のコーティング材を採用することができる。これらは、溶剤により溶融して任意の粘度に調整できるため、比較的簡単に、回路基板20へ塗布することができるものである。また、防滴膜23は、スプレー、刷毛、浸漬塗布といった各種塗布方法で設けることができる。なお、回路基板20に塗布された防滴膜23は、図5(a)に示すように形状が安定しにくい。すなわち、防滴膜23は、均一な厚さにはなりにくい。
【0036】
このような回路基板20においては、図4、図5(a),(b)に示すように、電子部品21や配線基板22に異物が付着した状態で防滴膜23が塗布されることがある。つまり、異物が防滴膜23中に残ってしまうことがある。特に、図4、図5(b)に示すように、電子部品21の端子間211a〜211dに異物が付着した状態で防滴膜23が塗布されると、この異物によって端子同士が短絡する可能性がある。この場合は、回路基板20は不良品となる。
【0037】
ここで、本実施形態の異物検出装置100による異物検出処理に関して説明する。
【0038】
まず、図3に示すように、平坦な検査台に回路基板20と暗箱15とを載置する。つまり、平坦な検査台に回路基板20を載置して、この回路基板20を囲うように暗箱15を検査台に載置する。すなわち、回路基板20に暗箱15を被せる。このとき、図2に示すように、回路基板20に実装された電子部品21の端子211b〜211dと、暗箱15に設けられたカメラ11a〜11dとを位置決めして、回路基板20に暗箱15を被せる。つまり、端子211aがカメラ11a側、端子211bがカメラ11b側、端子211cがカメラ11c側、端子211dがカメラ11d側となるように位置決めする。
【0039】
そして、処理部10は、赤色LED12,13a〜13dに対して発光を指示する。赤色LED12,13a〜13dは、この指示に基づいて発光して、回路基板20に対して(少なくとも回路基板20における防滴膜23(後ほど説明する)で被覆された部位に対して)赤色光を照射する(照明手段)。また、処理部10は、カメラ11a〜11eから出力された画像データに基づいて、赤色成分のみを抽出して画像処理及び判定を行う。
【0040】
具体的には、処理部10は、カメラ11a〜11eから出力された画像データに基づいて、赤色LED12,13a〜13dによって赤色光が照射された回路基板20からの反射光輝度を測定する(輝度測定手段)。このとき、処理部10は、図5(b)に示すように、電子部品21の端子211a〜211dにおける隣り合う端子間に、異物の有無を判定する領域であり、カメラ11a〜11eにて撮像された複数の画素からなる判定枠を複数設定する(ここでは7つの判定枠J1〜J7)。つまり、処理部10は、カメラ11a〜11eから出力された画像データに基づいて、判定枠J1〜J7毎に各画素の反射光輝度を測定する(輝度測定手段)。例えば、処理部10は、各画素の反射光輝度を256階調(0〜255)の輝度データに変換する(数値化する)。
【0041】
そして、処理部10は、各判定枠J1〜J7における各画素の反射光輝度を測定して、判定枠J1〜J7毎に異物の有無を判定する。例えば、処理部10は、各判定枠J1〜J7において、閾値以上の反射光輝度(輝度データ)である画素数が所定の値を超えている場合に(すなわち、閾値以上の反射光輝度である画素数がN画素以上の場合)、反射光輝度が閾値を超えているとみなして異物が有ると判定する(検出手段)。
【0042】
なお、端子211aにおける判定枠J1〜J7において異物の検出を行う場合、処理部10は、カメラ11aとカメラ11eのそれぞれから出力された画像データに基づいて、反射光輝度の測定、異物があるか否かの判定を行う。つまり、処理部10は、カメラ11aから出力された画像データに基づいて異物があるか否かの判定を行うとともに、カメラ11eから出力された画像データに基づいて異物があるか否かの判定を行う。そして、いずれか一方でも異物ありと判定した場合は異物ありとみなす。
【0043】
同様に、端子211bにおける判定枠J1〜J7において異物の検出を行う場合、処理部10は、カメラ11bとカメラ11eのそれぞれから出力された画像データに基づいて、反射光輝度の測定、異物があるか否かの判定を行う。同様に、端子211cにおける判定枠J1〜J7において異物の検出を行う場合、処理部10は、カメラ11cとカメラ11eのそれぞれから出力された画像データに基づいて、反射光輝度の測定、異物があるか否かの判定を行う。同様に、端子211dにおける判定枠J1〜J7において異物の検出を行う場合、処理部10は、カメラ11dとカメラ11eのそれぞれから出力された画像データに基づいて、反射光輝度の測定、異物があるか否かの判定を行う。
【0044】
また、上述のカメラ11a〜11eで撮像する範囲は、少なくとも防滴膜23で覆われた範囲である。つまり、少なくとも防滴膜23で被覆された電子部品21の端子211a〜211dを撮像する。また、上述の複数の判定枠J1〜J7は、隣り合う検査枠と一部が重なるように設定するとよい。つまり、隣り合う判定枠J1〜J7間の重複部d1が設けられている。このようにすることによって、反射光輝度の測定漏れを抑制できる。
【0045】
また、判定枠は、本実施形態においては7つ設ける例を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各判定枠の大きさは、端子間の間隔などによって適宜設定されるものである。さらに、図5(b)に示すように、複数の判定枠の合計長さは、端子の長さよりも長くすると好ましい。本実施形態では、複数の判定枠のうち、素子部21aから最も離れた位置にある判定枠(ここでは判定枠J7)の長さを、その他の判定枠(ここでは判定枠J1〜J6)よりも長くすることによって、複数の判定枠の合計長さを、端子の長さよりも長くしている。これによって、判定枠が長さ方向に位置ズレした場合であっても、反射光輝度の測定漏れを抑制できる。なお、この長さは、素子部21aの側壁に直行する方向の長さである。
【0046】
ここで、本実施形態における異物検出装置の効果を、比較例にける異物検出装置と比較しながら説明する。
【0047】
図6は、比較例における異物検出装置を採用した場合の回路基板に実装された電子部品の端子部分を撮像した画像である。また、図8(a)は、比較例における異物検出装置を採用した場合の回路基板の輝度分布を示すグラフである。この比較例は、回路基板に対して白色光(主成分は青)を照射した場合である。よって、図6は、白色光が照射された電子部品の端子部分を撮像した画像である。図8(a)は、白色光が照射された回路基板からの反射光輝度を測定したものである。
【0048】
これに対して、図7は、本発明の実施形態における異物検出装置を採用した場合の回路基板に実装された電子部品の端子部分を撮像した画像である。また、図8(b)は、本実施形態における異物検出装置を採用した場合の回路基板の輝度分布を示すグラフである。
【0049】
なお、図8(a),(b)のグラフにおける横軸は反射光輝度(0〜255)を示し、縦軸は度数を示すものである。また、比較例における異物検出装置と本実施形態における異物検出装置は、照明照度及びカメラゲインは同一としている。
【0050】
例えば、図6の画像における防滴膜23の輝度データは70であり、異物(ここでは、はんだ屑)30の輝度データは210であった。これに対して、図7の画像における防滴膜23の輝度データは67であり、異物(ここでは、はんだ屑)30の輝度データは215であった。
【0051】
また、図8(a),(b)のグラフに示すように、本実施形態における防滴膜23での反射光輝度は、比較例における防滴膜23での反射光輝度に対して、輝度が小さい方へシフトしている。さらに、図8(a),(b)のグラフに示すように、本実施形態における異物30での反射光輝度は、比較例における異物30での反射光輝度に対して、輝度が大きい方へシフトしている。
【0052】
このように、透明な保護膜である防滴膜23が塗布された回路基板20に対して赤色光を照射することで、白色光(主成分は青色)を照射する場合よりも、防滴膜23での屈折率を小さくすることができるため、防滴膜23表面での反射を小さくすることができる。換言すると、防滴膜23が塗布された回路基板20に対して赤色光を照射する場合、白色光を照射した場合に比べて、防滴膜23の表面での乱反射による光沢を低減することができる。つまり、白色光を照射するよりも、赤色光を照射する方が、光が防滴膜23内に透過しやすくできる。
【0053】
よって、防滴膜23表面での反射光輝度を小さくしつつ、異物30による反射光輝度を大きくできるため、防滴膜23表面での反射光輝度と異物30による反射光輝度との差を大きくすることができ、異物30の見逃しを減らすことができる。従って、防滴膜23で被覆され、回路基板20に付着した異物30の検出能力を向上することができる。
【0054】
また、本実施形態のように、隣り合う端子間に判定枠(J1〜J7)を設けて、判定枠毎に閾値以上の反射光輝度である画素数が所定の値を超えているか否かによって異物を検出することにより、電子部品21における端子の短絡を検出することができる。また、このようにすることによって、広い範囲で異物を検出する場合よりも容易に異物を検出しやすくできる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 処理部(検出手段、輝度測定手段)、11a〜11e カメラ(撮像手段、輝度測定手段)、12,13a〜13d 赤色LED(照明手段)、14 表示部、15 暗箱、15a ドーム部、15b 台座部、15c 内壁、20 回路基板、21 電子部品、211a〜211d 端子、21a 素子部、21b 突出部、21c 屈曲部、21d 部品側接続部、22 配線基板、22a 基板側接続部、23 防滴膜(保護膜)、30 異物、d1 重複部、J1〜J7 判定枠、100 異物検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子が設けられた電子部品と、前記電子部品の各端子に対応した電気的接続部が設けられた配線基板とを有し、前記電子部品の端子と前記配線基板の電気的接続部とが電気的に接続した状態で前記電子部品が前記配線基板に実装され、かつ、少なくとも前記電子部品の端子を被覆する透明な保護膜が塗布された回路基板における異物検出装置であって、
前記回路基板における前記保護膜で被覆された部位に対して赤色光を照射する照明手段と、
前記照明手段によって赤色光が照射された前記回路基板からの反射光輝度を測定する輝度測定手段と、
前記輝度測定手段によって測定された反射光輝度が所定の値を超えているか否かによって前記回路基板における異物を検出するものであり、反射光輝度が閾値を超えている場合に異物が有ると判定する検出手段と、
を備えることを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記輝度測定手段は、前記回路基板における前記赤色光が照射された領域を撮像する撮像手段を含むものであり、当該撮像手段にて撮像された前記回路基板の画像から反射光輝度を測定することを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記回路基板を囲う暗箱を備え、
前記照明手段は、前記暗箱内の前記回路基板に対して赤色光を照射し、
前記輝度測定手段は、前記暗箱内にて前記照明手段によって赤色光が照射された前記回路基板からの反射光輝度を測定することを特徴とする請求項2に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記輝度測定手段は、前記撮像手段にて撮像された各画素の反射光輝度を測定するものであり、
前記検出手段は、前記電子部品の複数の端子における隣り合う端子間に、前記撮像手段にて撮像された複数の画素からなる判定枠を複数設定し、各判定枠において、閾値以上の反射光輝度である画素数が所定の値を超えている場合に、反射光輝度が閾値を超えているとみなして異物が有ると判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の異物検出装置。
【請求項5】
複数の前記判定枠は、隣り合う検査枠と一部が重なるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の異物検出装置。

【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−98261(P2012−98261A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248754(P2010−248754)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】