説明

異物検査方法、及び異物検査装置並びに異物検査用の照明装置

【課題】容器の底面付近の形状や状態に拘わりなく不透明な異物を従来よりも高い精度で検出できる異物検査装置を提供する。
【解決手段】透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器2の底面2a側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査装置において、容器2をその上方から照明する第1の照明手段10と、容器2をその外周側の略全周から照明する第2の照明手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の底部に沈殿した異物の有無を検査する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の底面側からの画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する方法が知られている(特許文献1参照)。また、検査対象のボトルを回転させて混入が予想される異物を底の中央部に集め、異物が存在している筈の領域を集中的に検査する方法、ボトルを特定の方向に傾け、その傾きによって異物が集められる筈の領域を集中的に検査する方法も知られている。
【特許文献1】特開平9−119904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、検査に悪影響を及ぼす要因が幾つか存在している。例えば、ボトルの下端にナーリング部が形成され、あるいは、ペタロイドと呼ばれる凹凸がボトルの底面に付されている場合、それらの部分は検査範囲から除外されて死角となる。ボトルの底面に水滴が付着したり擦過傷が付いていると、それらの影響を受けて検査の精度が落ちることがある。
【0004】
そこで、本発明は、容器の底面付近の形状や状態に拘わりなく不透明な異物を従来よりも高い精度で検出できる異物検査方法、及び異物検査装置並びに異物検査用の照明装置を提供することを目的とする。さらには、内容物の種類に拘わりなく最適な照明条件を実現できる異物検査装置及びその照明装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の手段により上述した課題を解決する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0006】
本発明の異物検査方法は、透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器(2)の底面(2a)側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査方法において、前記容器をその上方及び外周側の周からそれぞれ照明して前記底面側の画像を撮像し、前記容器の前記底面側をその外周斜め下方から照明して該容器の底面側の反射光画像を撮像し、得られた反射光画像に基づいて当該容器の検査領域を決定し、その検査領域に関して前記容器の上方及び外周側からの照明により形成される前記容器の底面側の透過光画像に基づいて異物の有無を検査することにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
この発明によれば、容器に対して様々な方向から照明光を入射させることにより、容器の底面側に凹凸形状、水滴、擦過傷等のように光の屈折や反射に乱れを生じさせる要因としての凹凸部があっても、様々な方向からの照明光の重ね合わせにより各部の照明状態を均一化させて特定方向への反射の偏りを抑え、凹凸部による影を弱め又は消失させることができる。一方、容器の底に不透明な異物が沈殿している場合、その異物の沈殿位置から容器外へは照明光が通過できない。従って、容器を底面側から撮影した場合に、異物以外の領域では全体的に輝度が高まる一方、異物の部分では輝度が低下し、異物とそれ以外の部分との間のコントラストが拡大する。これにより画像処理で異物を容易に検出できるようになり、検査精度が向上する。容器の底面側をその外周斜め下方から照明して撮影される反射光画像においては、容器の底面の凹凸部のエッジで反射光強度が高まるために、周囲とのコントラストを利用して容器の凹凸部を明確に把握できる。これにより、第1及び第2の照明手段による照明を実施しただけでは凹凸部の影を完全に消滅させることができない場合でもその凹凸部の影を異物として誤って認識しないような処置を講じることが可能となり、検査の精度、信頼性を高めることができる。
【0008】
本発明の異物検査方法において、照明の概念は発光手段からの光を直接容器に当てる直接照明と、発光手段からの光を反射面で反射させてから容器に当てる間接照明の両者を含む。容器の外周側からの照明範囲は容器を完全に一周するまで確保される必要はなく、例えば容器の支持のために容器の外周の一部において照明が省略された場合でも、凹凸部による影を検査に支障のない程度まで弱められるように容器の周方向に照明範囲が確保されていれば「周からの照明」の範囲に含まれる。外周側からの照明範囲は容器の全高に亘っている必要はなく、例えば容器の下部において照明範囲が省略されてもよい。
【0009】
なお、容器の照明は適宜に選択してよいが、一例として、前記容器の底面側からの照明を可視光にて実施し、前記容器の上方及び外周側からの照明を赤外光にて実施してもよい(請求項)。可視光と赤外光とを使い分けることにより、反射光画像と透過光画像とを明確に区別して撮像することができる。さらに、前記容器の底側から照射される可視光の波長域を前記容器の色に対して補色関係が成立する波長域に一致させた場合には(請求項)、容器の色と照明光とが重なり合う結果として容器の反射光画像が無彩色(灰色)を基本とした画像となり、反射光強度が高いといった特異点とそれ以外の背景部分とのコントラストが高まる。この結果、凹凸部のエッジをより明確に特定できるようになる。なお、「容器の色」とは、容器の素材そのものの色ではなく、容器の素材と内容物のそれぞれの色が組み合わされて最終的に見る者に観察される色を意味する。例えば容器が透明で内容物が日本茶のような有色透明な液体であれば容器の色はその内容物の色によって代表される。容器及び内容物のいずれもが有色透明であれば両者が加算された色が容器の色に相当する。
【0010】
さらに、本発明の異物検査方法においては、前記容器の反射光画像から前記容器の底面に付された凹凸部のエッジ部分を特定し、該エッジ部分を避けるようにして前記検査領域を決定してもよい(請求項)。このように検査領域を設定すれば、透過光画像に基づく検査において検査領域のみを対象として異物に相当する輝度領域の有無を判別する限り、容器の底面に存在する凹凸部の影響で検査精度が悪化するおそれがなくなる。換言すれば、容器の底面に存在する凹凸部に影響されることなく高精度で検査を行える。
【0011】
なお、本発明の異物検査方法においては、前記反射光画像に基づいて前記容器内の透明又は半透明の異物の有無を検査してもよい(請求項)。透明又は半透明の異物に関しては透過光画像では明確に捉えられないおそれがある一方、反射光画像においては異物のエッジで反射光強度が高まることにより凹凸部のエッジ部分と同様にその異物の存在を把握できるようになる。
【0012】
本発明の異物検査装置は、透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器(2)の底面(2a)側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査装置において、前記容器をその上方から照明する第1の照明手段(10)と、前記容器をその外周側の周から照明する第2の照明手段(20)とを備え、前記第2の照明手段の下方には、前記容器の底面側をその外周斜め下方から照明するように第3の照明手段(30(図9))が設けられていることにより、上述した課題を解決する(請求項)。
【0013】
この異物検査装置によれば、第1の照明手段及び第2の照明手段により容器をその上方及び外周側の周からそれぞれ照明して底面側の画像を撮像することができる。第3の照明手段により容器の底面側の反射光画像を撮像して、反射光画像に基づく検査領域の選択を行うことが可能となる。従って、上述した異物検査方法に関する説明と同様の理由により、容器の底に沈殿した異物とそれ以外の部分との間のコントラストを拡大させて画像処理で異物を容易に検出することが可能となり、検査精度が向上する。
【0014】
本発明の異物検査装置において、第2の照明手段による照明範囲は容器を完全に一周するまで確保される必要はなく、例えば容器の支持のために容器の外周の一部において照明が省略された場合でも、凹凸部による影を検査に支障のない程度まで弱められるように容器の周方向に照明範囲が確保されていれば「周からの照明」の範囲に含まれる。第2の照明手段による照明範囲は容器の全高に亘っている必要はなく、例えば容器の下部において照明範囲が省略されてもよい。
【0015】
前記第1及び第2の照明手段が赤外域の照明光を照射し、前記第3の照明手段が可視域の照明光を照射してもよい(請求項7)。また、前記第3の照明手段は、前記容器の色に対して補色関係が成立する波長域の照明光を照射してもよい(請求項8)。これらの態様による利点は上述した異物検査方法にて既に説明した通りである。また、赤外域の照明と可視域の照明とを併用する態様においては、赤外光によって形成される画像を撮像する第1の撮像手段(4A)と、可視光によって形成される画像を撮像する第2の撮像手段(4B)とを具備し、前記容器の下方には前記第1及び第2の照明手段から照射されて前記容器を透過した光束を前記第1の撮像手段に、前記第3の照明手段から照射された前記容器にて反射した光束を前記第2の撮像手段にそれぞれ分配する分配手段(53)が設けられてもよい(請求項)。このような分配手段としては、赤外域の光束を前記第1の撮像手段側へ透過させ、可視域の光束を前記第2の撮像手段に向けて反射するコールドミラーが利用できる(請求項1)。このような分配手段を利用すれば、赤外域の照明による透過光画像を第1の撮像手段に、可視域の照明による反射光画像を第2の撮像手段にそれぞれ明確に分けて導いて、各画像をそれぞれの用途に応じて確実に使い分けられるようになる。また、赤外域の照明と可視域の照明とを同時に使用していても両者の画像を明確に分けることができる利点もある。
【0016】
さらに、容器の底面側をその外周斜め下方から照明するように第3の照明手段を設ける場合においては、赤外域と可視域とを使い分けるか否かに拘わりなく、前記第1及び前記第2の照明手段からの照明により形成される前記容器の底面側の透過光画像を撮像する第1の撮像手段(4A)と、前記第3の照明手段からの照明により形成される前記容器の底面側の反射光画像を撮像する第2の撮像手段(4B)とを備えるようにしてもよい(請求項1)。例えば照明光がいずれも可視域であったとしても、波長域を異ならせるとともに、フィルタ等を利用して各撮像手段に導く光束の波長域を制限すれば透過光画像と反射光画像とを異なる波長域で取得して異物検査を行うことができる。
【0017】
本発明の異物検査装置において、第1及び第2の撮像手段を備えている場合には、さらに、前記第2の撮像手段が撮像した反射光画像に基づいて前記容器の検査領域を決定し、その検査領域に関して前記第1の撮像手段が撮像した透過光画像に基づいて異物の有無を判定する判定手段(5)を備えてもよい(請求項1)。このような判定手段を備えることにより、本発明の異物検査方法を効率よく実施することができる。
【0018】
なお、前記判定手段は、前記反射光画像から前記容器の底面に付された凹凸部のエッジ部分を特定し、該エッジ部分を避けるようにして前記検査領域を決定してもよい(請求項13)。また、前記判定手段は、前記反射光画像に基づいて前記容器内の透明又は半透明の異物の有無をさらに判定してもよい(請求項14)。これらの態様の技術的意義は異物検査方法に関して説明した通りである。
【0019】
本発明の異物検査装置において、照明の概念は発光手段からの光を直接容器に当てる直接照明と、発光手段からの光を反射面で反射させてから容器に当てる間接照明の両者を含む。従って、第1又は第2の照明手段のいずれか一方は間接照明のみとしてもよい。例えば、第1の照明手段及び第2の照明手段は次のような態様にて構成することができる。
【0020】
本発明の異物検査装置においては、前記第1の照明手段が発光器(12)を備え、前記第2の照明手段は、前記容器を外周側から覆うように設けられて内面側には前記発光器からの照明光を反射する反射面(21a)が前記容器の全周に亘って設けられた筒状体(21)を備えてもよい(請求項15)。この場合には、容器に対して第1の照明手段が直接照明として、第2の照明手段が間接照明としてそれぞれ機能する。
【0021】
本発明の異物検査装置において、前記第2の照明手段は、前記容器を外周側から覆うように設けられて内面側が前記容器の全周に亘って発光する筒状発光器(23)を備え、前記第1の照明手段は下面側に前記筒状発光器からの照明光を反射する反射面(13a)が設けられた蓋体(13)を備えてもよい(請求項16)。この場合には、容器に対して第2の照明手段が直接照明として、第1の照明手段が間接照明としてそれぞれ機能する。
【0022】
本発明の異物検査装置においては、前記第1の照明手段が発光器(12)を備えるとともに、前記第2の照明手段は前記容器を外周側から覆うように設けられて内面側が前記容器の全周に亘って発光する筒状発光器(22)を備えてもよい(請求項17)。この場合には、第1の照明手段及び第2の照明手段がそれぞれ直接照明として機能する。
【0023】
第1の照明手段及び第2の照明手段は、それぞれ発光器に併せて反射面を設けることにより、直接照明と並行して間接照明としても機能させてもよい。
【0024】
本発明の照明装置は、透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器(2)をその底面(2a)側から撮影して異物の有無を検査する異物検査装置に使用される照明装置であって、前記容器をその上方から照明する第1の照明手段(10)と、前記容器をその外周側の周から照明する第2の照明手段(20)とを備え、前記第2の照明手段の下方には、前記容器の底面側をその外周斜め下方から照明するように第3の照明手段(30(図9))が設けられているものである(請求項18)。さらに、本発明の照明装置においては、記第1及び第2の照明手段が赤外域の照明光を照射し、前記第3の照明手段が可視域の照明光を照射してもよい(請求項19)。さらに可視域の照明光を照射する第3の照明手段は、前記容器の色に対して補色関係が成立する波長域の照明光を照射してもよい(請求項2)。これらの照明装置によれば、上述した異物検査装置を実現することができる。
【0025】
本発明の他の異物検査方法は、透過性を有する容器(2)内の不透明な異物の有無を検査する異物検査方法であって、前記容器の検査領域を含む所定範囲についての所定方向からの反射光画像を撮像し、得られた反射光画像に基づいて当該容器の検査領域を決定し、前記容器を前記所定方向に対して反対側から照明して前記検査領域に関する透過光画像を撮像し、得られた透過光画像に基づいて当該検査領域における異物の有無を検査するものである(請求項2)。
【0026】
このような異物検査方法によれば、容器の底面に限らず、側面その他の凹凸部が存在する場所を対象として、上述した異物検査方法と同様の原理により凹凸部の影の影響を排除するように検査領域を決定して、異物の有無を精度よく検査することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の異物検査方法及び装置によれば、容器に対して様々な方向から照明光を入射させることにより、容器の底面側に凹凸、水滴、擦過傷等のように光の屈折や反射に乱れを生じさせる要因があっても、様々な方向からの照明光の重ね合わせにより各部の照明状態を均一化させて特定方向への反射の偏りを抑え、凹凸部による影を弱め又は消失させることができる。一方、容器の底に不透明な異物が沈殿している場合、その異物の沈殿位置から容器外へは照明光が通過できない。従って、容器を底面側から撮影した場合に、異物以外の領域では全体的に輝度が高まる一方、異物の部分では輝度が低下し、異物とそれ以外の部分との間のコントラストが拡大する。これにより画像処理で異物を容易に検出できるようになり、従来よりも検査精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図9に本発明の一形態に係る異物検査装置を示す。この異物検査装置は、図1〜図5に示す異物検査装置の一部を変更したものであり、その説明に先立って、図1〜図5に示す異物検査装置を参考例として説明する。図1は本発明の第1の参考例の実施形態の異物検査装置を示している。異物検査装置1は、検査対象の容器2をその底面2aを下にして支持する支持手段としての透明なアクリル板3と、アクリル板3の下方に配置されて容器2を底面2a側から撮像するカメラ4と、カメラ4から出力される画像に所定の処理を施して異物の有無を検査する画像処理装置5とを備えている。検査対象の容器2は透過性を有しかつ有底筒状に形成された、例えばペットボトルである。容器2の内部には飲料が充填され、容器2の口部はキャップCPにて密封されている。
【0029】
アクリル板3の上方には、容器2をその上方から照明する第1の照明手段10と、容器2をその外周側の略全周から照明する第2の照明手段20とが設けられている。第1の照明手段10は光源11と、光源11からの照明光を容器2に向けて射出する発光器12と、発光器12の上面側に被せられた蓋体13とを有している。発光器12はリング状に形成されて容器2の中心線CLと同軸かつ容器2よりも幾らか上方に配置されている。発光器12はその内側のほぼ全周に亘って設けられた発光面12aから容器2に向かって照明光を照射する。蓋体13の下面はその全面に亘って発光器12の照明光を反射可能な反射面13aとして構成されている。従って、第1の照明手段10は発光器12からの照明光によって容器2を照明する直接照明、及び蓋体13の反射面13aからの反射光により容器2を照明する間接照明として機能する。
【0030】
第2の照明手段20は、容器2の全周を覆うように設けられた筒状体21を備えている。筒状体21は円筒形であり、その上端は発光器12の外周に嵌合し、下端はアクリル板3に接している。筒状体21の内面はその全面に亘って発光器12からの照明光を反射する反射面21aとして構成されている。これにより、第2の照明手段20は発光器12から射出された照明光を利用した間接照明として機能する。
【0031】
カメラ4はズームレンズ4aと信号生成部4bとを備えている。信号生成部4bは例えばCCD、CMOS等の半導体素子を利用したイメージセンサを内蔵し、レンズ4aの視野内に設定される撮影範囲の輝度分布に対応した画像信号を出力する。ズームレンズ4aの倍率は、カメラ4から出力される画像に容器2の底面2aが完全に含まれるように調整されている。さらに、レンズ4aの前面にはフィルタ4cが装着されている。フィルタ4cは発光器12から射出される照明光に含まれる光のうち、検査に使用すべき特定の波長域の光のみを選択的に透過させる。
【0032】
フィルタ4cが透過させる波長域は適宜に選択してよいが、例えば近赤外域や可視域に設定することができる。光源11又は発光器12に関しても、検査に使用する波長域の光のみを発光させるようにしてもよい。この場合、カメラ4の信号生成部4bもフィルタ4cの透過領域に対応した構成とし、反射面13a、21aもフィルタ4cの透過領域に対する反射率が高くなるように構成する必要がある。例えば、近赤外域や可視域の照明光による画像を利用する場合には、反射面13a、21aは白色系とすることが望ましい。
【0033】
次に、異物検査装置1を利用した異物の検査方法を説明する。なお、ここでは発光器12からの照明光を透過させる性質の内容物が容器2に充填されているものとする。但し、照明光が透過する限り、内容物の着色の有無は問わない。このような内容物としては、例えば、飲料水、茶、サイダー、コーラ飲料がある。
【0034】
異物検査装置1を利用して異物の有無を検査するには、まず蓋体13を開けて筒状体21内に容器2を設置し、蓋体13を再び閉じる。そして、発光器12から照明光を照射し、容器2の底面2a側からの画像をカメラ4で撮影し、その画像を画像処理装置5に出力させる。
【0035】
以上の検査方法によれば、発光器12からの照明光は容器2に直接入射するとともに反射面13a、21aで反射して容器2に入射する。従って、容器2には様々な方向から照明光が入射する。従って、容器2の下端側にナーリング又はペタロイドのような凹凸が形成され、又は容器2の底面2aに水滴が付着し、あるいは容器2の底面2aに擦過傷が形成されていたとしても、様々な角度からの入射光によりそれらの凹凸部による影は弱められる。容器2の胴部2bや肩部2cの影響についても同様に抑えられる。従って、画像内における容器2の部分の輝度は全体的に高められる。
【0036】
その一方、容器2内に不透明な異物が沈殿している場合、その沈殿位置では異物の色に拘わりなく照明光が異物に遮られて容器2の底面2aからカメラ4へ光が通過できない。従って、画像内において異物の沈殿部分の輝度は相対的に低下する。このように、本発明の参考例によれば、異物とそれ以外の背景部分との間でコントラストを拡大できる。従って、画像処理装置5においてはコントラストを利用して異物を容易かつ確実に検出できるようになる。例えば、異物の輝度とそれ以外の部分の輝度との間に閾値を設定して画像を二値化し、二値化画像内における黒点の有無を検査すれば異物の有無を判別することができる。さらに、カメラ4にて容器2を撮影する際に、画像内において異物以外の領域の輝度が飽和するように露出条件を設定すれば二値化処理も不要であり、画像処理装置5においてさらに容易に異物を判別できる。また、図1の異物検査装置1によれば、容器2の底面2aの全体を撮影するので検査の死角をなくし、検査の信頼性、確実性を高めることができる。なお、露出の調整はカメラ4側で行ってもよいし、発光器12からの照明光の強度を変化させて露出を調整してもよい。
【0037】
本発明の参考例は以上の実施形態に限定されず各種の形態にて実施してよい。以下、他の幾つかの実施形態について図2〜図5を参照して説明する。
【0038】
図2に示した第2の参考例の実施形態の異物検査装置1においては、第1の照明手段10の光源11及び発光器12が省略されている。その一方、第2の照明手段20においては、図1の筒状体21(図1)に代えて光源22と、その光源22からの照明光を容器2に向けて射出する筒状発光器23とが設けられている。筒状発光器23の上端はキャップCPよりも高く、下端はアクリル板3に接している。筒状発光器23の内面側には、容器2の全周に亘って延びる円筒状の発光面23aが設けられている。筒状発光器23は光源22からの照明光をその発光面23aから容器2に向かって照射する。第1の照明手段10の蓋体13は筒状発光器23の上端に被せられている。そして、蓋体13の下面は筒状発光器23からの照明光を反射可能な反射面13aとして構成されている。
【0039】
この実施形態では、第1の照明手段10が筒状発光器23からの照明光を蓋体13で反射して容器2を照明する間接照明として機能し、第2の照明手段20が筒状発光器23からの照明光で容器2を照明する直接照明として機能する。この実施形態においても、図1の例と同様に容器2に対して様々な方向から照明光を入射させることができるので、容器2の形状や異物の色に拘わりなく異物を確実に検出することができる。
【0040】
図3に示した第3の参考例の実施形態の異物検査装置1においては、図1に示した第1の照明手段10と、図2に示した第2の照明手段20とが組み合わされている。この例では、容器2がその上方及び側方から発光器12又は22により直接照明され、かつ蓋体13により容器2が間接照明される。このような照明方法によっても、図1及び図2の例と同様に容器2に対して様々な方向から照明光を入射させることができるので、容器2の形状や異物の色に拘わりなく異物を確実に検出することができる。なお、発光器12、22からは必要に応じて様々な波長域の照明光を照射してよいが、好適にはフィルタ4cが通過させる波長域の照明光を発光器12、22から射出させるとよい。
【0041】
図4に示した第4の参考例の実施形態の異物検査装置1においては、図1に示した第2の照明手段20の筒状体21が上下方向に関して短縮されて筒状体21の下端とアクリル板3との間に隙間が形成され、そこに第3の照明手段30が設けられている。第3の照明手段30は、光源31と、光源31からの照明光を容器2に向けて射出する発光器32とを備えている。発光器32はリング状に形成されて容器2の中心線CLと同軸かつ容器2の下端部と対向するように配置されている。発光器32はその内側のほぼ全周に亘って設けられた発光面32aから容器2に向かって照明光を照射する。
【0042】
図4の異物検査装置1によれば、第1の照明手段10及び第2の照明手段20を利用することにより、図1の異物検査装置1と同様に容器2内における異物の沈殿の有無を検査することができる。一方、容器2の内容物が濁っている場合(例えば内容物が果汁飲料や乳飲料の場合)、発光器12からの照明光が容器2の外周で拡散し、カメラ4から出力される画像において底面2aの輝度が容器2の周囲の輝度よりも低下して異物検出が困難となる。このような場合には第1の照明手段10及び第2の照明手段20による照明を中止し、第3の照明手段30の発光器32により容器2の下端部をその外周から全周に亘って照明しつつ容器2をその底面2a側から撮影するとよい。発光器32からの照明により容器2の底面2aの近傍に限定して照明光を拡散させて底面2a付近の輝度を上げる一方で、容器2の上部に関しては発光器12、蓋体13、筒状体21により外光を遮ってその輝度を相対的に低下させることができる。これにより、容器2の底面2aの画像内において、異物の輝度を低く異物以外の領域の輝度を高めてコントラストを拡大し、異物の検出精度を高めることができる。
【0043】
図5に示す第5の参考例の実施形態では、容器2のほぼ上半分のみが第2の照明手段20の筒状体21で覆われ、容器2の下半分の外周は第3の照明手段30が設けられていないにも拘わらず、筒状体21で覆われることなく開放されている。このように容器2の外周を比較的大きく空けることにより、チャック装置等で容器2の胴部2bを保持しつつ検査を行うことができる。容器2の胴部2bを掴んで支持すれば容器2の底面2a側を支持する必要がないのでアクリル板3は省略できる。図5の例では、アクリル板3に代えてフレネルレンズ6を底面2aと対向して設けている。但し、フレネルレンズ6により容器2を支持する必要はない。カメラ4側からフレネルレンズ6を通して容器2を観察した場合、容器2の底面2aと胴部2bとの境界に位置する立ち上がり部2dがフレネルレンズ6の屈折作用により底面2aの外周側に展開して写し込まれる。従って、そのフレネルレンズ6を通して得られる画像のうち立ち上がり部2dに相当する領域を検査領域から除外することにより立ち上がり部2dの影響を受けることなく底面2a側における異物の沈殿の有無を検査することができる。なお、図5の例では筒状体21の直径を発光面12aの内径にほぼ合わせてある。第2の照明手段20で容器2の上半分を覆う構成は図2又は図3の実施形態においても適用可能である。図1〜図4の実施形態においても、アクリル板3に代え、又は追加してフレネルレンズ6を使用してもよい。
【0044】
図6〜図8は、ペットボトル内に不透明な異物を投入して図4の異物検査装置1によりペットボトルを底面側から撮影したときの画像をそれらの比較例とともに示している。なお、これらの図においては異物を丸で囲んで示している。
【0045】
図6は内容物が水の場合、図7は内容物がお茶の場合の画像を示し、各図とも(a)は筒状体21を取り外して容器2を撮影した場合を、(b)は蓋体13及び筒状体21を装着して発光器12を点灯させた場合をそれぞれ示している。但し、発光器32による照明は使用していない。これらの図から明らかなように、筒状体21を被せて容器2をその上方及び外周側の全周から照明した場合には容器2の底面2aの凹凸部(この例ではペタロイド)の影の影響を排除し、異物のみを黒点として捉えることができる。このように第1の照明手段10及び第2の照明手段20による照明は、水やお茶のように内容物が透過性を有している場合の沈殿異物の検出に好適である。
【0046】
また、図8は内容物が天然果汁100%のオレンジジュースの場合の画像を示し、(a)は蓋体13及び筒状体21を被せ、発光器12及び32はいずれも消灯した場合の画像を、(b)は蓋体13及び筒状体21を被せ、発光器12を消灯し、発光器32を点灯した場合の画像をそれぞれ示している。オレンジジュースの場合には容器2への入射光が内容物で拡散するため、容器2の上部から照明しても容器2の底面の輝度が上がらず暗視野として底面2aが撮影されるが、第3の照明手段30により容器2の下端部の外周側から照明すれば底面2aを明るくして撮影して沈殿異物を検出することができる。
【0047】
本発明の参考例は以上の実施形態に限定されず、種々の形態にて実施してよい。例えば図5の実施形態から明らかなように、第3の照明手段を設けるか否かに拘わりなく、第2の照明手段の下端は容器の下端よりも上方にずれていてもよい。容器の支持はアクリル板3によるものに限定されない。例えば筒状体に隙間を設け、その隙間から容器2の胴部2bを支えるアームを筒状体内に延ばしてもよい。第3の照明手段は図2又は図3の実施形態と組み合わせてもよい。
【0048】
図9は第1〜第3の照明手段10、20、30を利用した本発明の一形態に係る異物検査装置を示す。この実施形態では、図5の実施形態とほぼ同様の第1の照明手段10及び第2の照明手段20が設けられるとともに、第2の照明手段20の下方に第3の照明手段30が設けられている。なお、図9の実施形態では、図5に示した光源11と発光器12との組み合わせに代えて、光源としての多数のLED(不図示)をリング状の発光面50aに沿って配列した発光器50が第1の照明手段10に設けられている。また、第3の照明手段30においても、図4に示した光源31と発光器32との組み合わせに代えて、光源としての多数のLED(不図示)をリング状の発光面51aに沿って配列した発光器51が設けられている。このようなLEDを利用した発光器は上述した第1〜第5の参考例の実施形態においても勿論使用可能である。なお、各発光器50、51は共通の電源回路52からの電源供給によって発光するが、発光器毎に独立した電源回路を設けてもよい。
【0049】
図9に矢印で示したように、第1の照明手段10の発光器50は容器2の上端側をその外周斜め上方から照明し、第3の照明手段30の発光器51は容器2の底面2a側をその外周斜め下方から照明する。発光器50は近赤外域の照明光を照射し、発光器51は可視域の照明光を照射する。例えば、発光器50のLEDには赤外LEDが使用され、発光器51のLEDには可視光を発するLEDが使用される。
【0050】
発光器51の照明光の波長域は、容器2の色に対して補色関係が成立する波長域に一致させるとよい。例えば容器2の素材が透明で内容物がお茶の場合、容器2の色は茶又は黄系統となるため、発光器51を構成するLEDに青色LEDを使用すれば照明光と容器2の色との間に補色関係が成立するようになる。このような補色関係を成立させた場合、発光器51の照明光と容器2の色とが混ざり合って無彩色が形成されるため、底面2aの反射光画像において容器2の本来の色が観察されている部分とそれ以外の色との間のコントラストが高まる。例えば、底面2aにペタロイドのような凹凸部が付されている場合には、その凹凸部のエッジ部分が外光を反射する等して内容物の色とは異なる色を呈するため、こうしたエッジ部分とその他の部分との間のコントラストが高くなり、エッジ部分を容易に検出できるようになる。
【0051】
容器2の中心線CLの下方には第1カメラ(第1の撮像手段)4A、及び第2カメラ(第2の撮像手段)4Bが設けられている。第1カメラ4Aは図5の例と同様に第1の照明手段10及び第2の照明手段20にて照明された容器2の底面2a側の透過光画像を撮像し、第2カメラ4Bは第3の照明手段30にて照明された容器2の底面2a側の反射光画像を撮像する。撮影画像をこのように選別するため、カメラ4A、4Bと容器2との間には分配手段としてのコールドミラー53が設けられている。コールドミラー53は容器2の底面2aから導かれる光束のうち赤外域の光束を第1カメラ4A側に透過させ、可視域の光束を第2カメラ4B側に反射させる。さらに、第1カメラ4Aのフィルタ4cは近赤外域の波長のみを透過させ、第2カメラ4Bのフィルタ4cは可視域の波長のみを透過させる。このような構成により、第1カメラ4Aは第1及び第2の照明手段10、20にて照射される照明光による底面2aの透過光画像を撮像し、第2カメラ4Bは第3の照明手段30にて照射される照明光による底面2aの反射光画像を撮像することができる。しかも、発光器50及び51は同時に点灯したままでよく、透過光画像と反射光画像のいずれか一方の画像の撮影中に他方の画像用の照明を消灯する必要はない。
【0052】
各カメラ4A、4Bにおいてはズームレンズ4aが捉えた画像が上述した参考例の各実施形態と同様に信号生成部4bにて輝度分布に対応した画像信号に変換され、その画像信号は画像処理装置5に出力される。画像処理装置5はマイクロプロセッサを利用したコンピュータとして構成され、第1カメラ4Aから出力された画像信号を利用して容器2の底面2aの検査領域を決定し、その検査領域に関して第2カメラ4Bから出力される画像信号を利用して異物の有無を判定する。
【0053】
図10〜図12は第1カメラ4A及び第2カメラ4Bから出力される画像信号を印刷出力した例を示し、各図の(a)が透過光画像に、(b)が反射光画像にそれぞれ対応する。図12は炭酸飲料の例を、図13及び図14はお茶の例をそれぞれ示している。これらの図から明らかなように、第1の照明手段10及び第2の照明手段20を利用しても、照明条件によっては容器2の底面2aに付された凹凸部のエッジ部分の画像に暗部が残ることがあり、こうした暗部の影響でエッジ部分が誤って異物と判定されるおそれがある。これに対して底面2a側からの第3の照明手段30を利用した反射光画像においては、エッジ部分の輝度がそれ以外の部分の輝度と比較して明確に高くなる。従って、反射光画像からエッジ部分を識別し、そのエッジ部分が除外されるよう検査領域を設定し、その検査領域に関して透過光画像中に暗点が存在するか否かを判定すれば、底面2aの凹凸部に影響されない精度の高い異物検査を行うことができる。
【0054】
図13及び図14はこのような原理を利用して画像処理装置5が異物の有無を検査する手順を示している。以下、これらについて説明する。
【0055】
図13は第2カメラ4Bが撮影した反射光画像から底面2aの検査領域を決定するために画像処理装置5が実行する検査領域決定ルーチンを示している。検査領域決定ルーチンでは、まずステップS11にて第2カメラ4Bが出力する反射光画像に対応した画像信号を適当な閾値で二値化して、底面2aからの反射光の輝度が高い領域(底反射領域)を抽出する。この処理は、例えば図10(b)、図11(b)及び図12(b)の反射光画像において輝度の高い部分を識別する処理に相当する。
【0056】
次のステップS12では底面2aの中心付近に対応する画像信号を不要信号として除去する。容器2によっては底面2aの中心付近に成形時の名残で円形状の凸部が存在することがあり、その凸部の像の内側のみが誤って検出領域として認識されるおそれを排除するためである。続くステップS13ではステップS11で抽出された底反射領域の内側に相当する領域を検査領域の候補として一定の輝度値でペイント、すなわち塗り潰す。なお、ここでいう底反射領域は、ステップS11の二値化によって輝度が高い側に区分された領域のうち容器2の閉曲線を描く部分よりも内側の領域である。ここでペイントされた領域が検査領域の候補となる。図11(b)又は12(b)に示すように複数の閉曲線が存在する場合には、例えば最も外側の円形を描く部分を底反射領域としてその内側をペイントする。さらにステップS14では、塗り潰された領域(検査領域の候補)からその領域の特徴を表現するマッチング用の情報(例えば重心位置や中心位置の情報)を取得する。次のステップS15では検査領域に関して所定の変形処理を施してその形状を整える。例えば、底反射領域のごく近傍では照明光が複雑に反射し、異物以外にも孤立点が生じることがあるため、ステップS13でペイントされた領域を容器2の中心側に幾らか狭めるように変形する。そして、ステップS16で変形後の領域を検査領域として決定し、その検査領域の形状や大きさを識別するために必要なデータを画像処理装置5に設けられたメモリに記録する。以上により検査領域決定ルーチンを終了する。なお、図13のルーチンは第2カメラ4Bに対して形状が異なる反射光画像が入力される毎に実行すればよい。但し、検査対象の容器2が入れ替わる毎に図13のルーチンが実行されてもよい。
【0057】
次に、図14の異物判別ルーチンを説明する。このルーチンは画像処理装置5が検査領域に関する異物の有無を判定するために実行するものである。最初のステップS21において画像処理装置5は第1カメラ4Aから出力された画像信号に対して所定のスムージング処理(平滑化処理)を実行する。透過光画像に含まれている異物以外の孤立点の輝度を平均化して、それらの孤立点が検出される確率を低下させるためである。続くステップS22〜S24において、第1カメラ4Aが撮影した透過光画像における孤立点(暗点)を小、中、大の三段階に分けて検索する。孤立点検索は、透過光画像上の注目点の輝度と、その注目点に対して所定の距離に位置している画素の輝度とを比較して注目点が孤立点か否かを判断する処理である。三段階に分けているのは、要するに注目点と比較されるべき画素までの距離を小、中、大の三段階に切り替えて孤立点を判断するものであり、このような処理により注目点が孤立点でかつその注目点に対して比較されるべき距離上に別の孤立点が存在している場合でも距離が変更されることによって漏れなく検出される利点がある。なお、孤立点検索は透過光画像の全域に亘って行われる。その後、ステップS25において図13のルーチンで決定された検査領域と第1カメラ4Aが撮影した画像とのマッチングを実施する。この処理は、図13のステップS14で取得した重心位置や中心位置の情報を利用して、第1カメラ4Aが撮影した透過光画像における検査領域を特定するものである。続くステップS26ではマッチングによって特定された検査領域よりも外側の領域を検査対象から除外する。
【0058】
次のステップS27では予め定められている判定基準と比較して、検査領域内に検出されている孤立点のうち判定基準外のものをマスク処理する。例えばXmm以上の異物を検出することが要求されている場合にXmmよりも小さい寸法に相当する画素数の孤立点はマスク処理して異物の有無の判定対象から除外する。さらにステップS28でマスク後も異物が存在しているか否かを判断する。異物が存在していると判別した場合にはステップS29へ進んで検査対象の容器2を不良品として処理し、異物が存在していないと判別した場合にはステップS29をスキップする。以上により異物判別処理ルーチンを終える。なお、予め異物が存在しないことが確認されている基準ボトルを用意し、その基準ボトルに対して図13のルーチンを実施して得られた検査領域の画像を基準画像(テンプレート)として保存し、実際の検査対象の容器については図14のステップS21〜S24の処理を行って、先の基準画像との比較により異物の有無を判定してもよい。図12(b)のように検査領域内に複雑な模様が形成される場合にはその模様も含めてテンプレートを取得し、実際の検査対象の画像内にテンプレート上の明点以外の孤立点が存在するか否かにより異物の有無を検査することもできる。
【0059】
なお、図13及び図14の手順はあくまで一例であり、検査領域の決定やその検査領域における異物の有無の判定は様々な手法で行ってよい。本発明の一形態においては近赤外域の照明光を利用して容器2の底面2a側の透過光画像を取得し、可視域の照明光を利用して容器2の底面2a側の反射光画像を取得したが、照明光の波長域は検査すべき容器やその内容物に応じて適宜に使い分けてよい。可視域であっても互いに異なる波長域を利用して透過光画像と反射光画像とを区別することができる。近赤外域と遠赤外域とを使い分けることも可能である。さらに、本発明の一形態の検査方法は容器2の底面2aに限らず、検査領域の付近に異物検出精度を劣化させるような凹凸部が残っている様々なケースに適用できる。すなわち、容器2の底面2a以外の凹凸部を含んだ所定範囲を検査する場合であっても、その所定範囲を所定方向から照明して反射光画像を取得し、その反射光画像から凹凸部のエッジ部分を除外するように検査領域を決定し、その検査領域を反対側から照明して透過光画像を撮像し、得られた透過光画像から暗点を抽出する等して異物の有無を判定すればよい。
【0060】
図14のルーチンでは異物の有無を第1カメラ4Aが撮影した透過光画像に基づいて行っているが、第2カメラ4Bが撮影した反射光画像を図14のルーチンで使用して異物検査を行ってもよい。例えば、セロファンテープやボトルのかけらといった透明又は不透明な異物については近赤外線が透過するために第1カメラ4Aが撮影した透過光画像では検出できないことがある。しかしながら、これらの異物が容器2の底に付着している場合、凹凸部のエッジと同様にこれらの異物のエッジも反射光強度が高くなるため、第2カメラ4Bの反射光画像において検査領域内に明点として捉えられるようになる。そこで、検査領域の決定後、第2カメラ4Bが撮像する反射光画像を利用して検査領域内に孤立した明点が存在するか否かを判断すれば、こうした透明又は半透明の異物も確実に検出できるようになる。
【0061】
上述した実施形態では第2の照明手段20の筒状体21を円筒形状に構成しているが、本発明の筒状体は周方向に複数の部品を組み合わせて円筒形に構成されたものでもよい。その一例を図15及び図16に示す。
【0062】
図15及び図16の実施形態では一対の半円筒状のカバー62、63が組み合わされて筒状体21が構成される。すなわち、図15に示したように、一対の回転体60、61(一方は半分のみ示す。)の外周には複数の半円筒状のカバー62、63がそれぞれ一定のピッチで取り付けられている。回転体60、61はそれぞれの回転軸60a、61aの廻りに互いに逆方向に互いに等しい回転速度で回転駆動される。容器2はいずれか一方の回転体60(61でもよい。)に保持機構64を介して保持されて回転体60と同期して搬送される。回転体60、61が最も接近する検査位置P1において、回転体60、61のカバー62、63はそれぞれの先端が幾らか重複するようにして組み合わされ、それにより容器2の回りに筒状体21が構成される。この筒状体21の上方に第1の照明手段10が被せられることにより、図5又は図9に示したものと同様の筒状体21を実現することができる。この実施形態によれば、容器2を一定方向に搬送するだけで容器2を筒状体21に対して出し入れできて便利である。なお、検査位置P1の容器2よりも下方には第3の照明手段30、カメラ4A、4B、フレネルレンズ6、コールドミラー53等が配置される。
【0063】
上述した図5の実施形態では第3の照明手段30を利用して混濁液が充填されている容器の異物の有無を判断するものとしたが、混濁液のみを対象とした異物検査に用途を限定する場合には図17に示すように第3の照明手段30のみを設けてもよい。なお、図17の例では、容器2の底面2aのさらに下方にリング状の発光器70を配置し、その発光器70から容器2の上方に向かって中心線CLとほぼ平行に射出される照明光を半円弧状の一対の反射板71、71の反射面71aによって容器2の中心線CL側に反射させ、その反射光で照明された底面2aの透過光画像をフレネルレンズ6を介してカメラ4で撮像している。発光器70の光源は例えば近赤外LEDを使用することができる。図15及び図16のカバー62、63に代え、又は追加して回転体60、61に反射板71を取り付けるとともに、検査位置P1の下方にフレネルレンズ6や発光器70及びカメラ4を設置することにより図17の構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の参考例の実施形態に係る異物検査装置の断面図。
【図2】本発明の第2の参考例の実施形態に係る異物検査装置の断面図。
【図3】本発明の第3の参考例の実施形態に係る異物検査装置の断面図。
【図4】本発明の第4の参考例の実施形態に係る異物検査装置の断面図。
【図5】本発明の第5の参考例の実施形態に係る異物検査装置の断面図。
【図6】第4の実施形態の異物検査装置において第1及び第2の照明手段を利用して容器を照明しつつ撮影した画像の一例をその比較例とともに示した図。
【図7】第4の実施形態の異物検査装置において第1及び第2の照明手段を利用して容器を照明しつつ撮影した画像の他の例をその比較例とともに示した図。
【図8】第4の実施形態の異物検査装置において第3の照明手段を利用して容器を照明しつつ撮影した画像の一例をその比較例とともに示した図。
【図9】本発明の形態に係る異物検査装置の断面図。
【図10】図9の異物検査装置にて撮影される画像の一例を示す図。
【図11】図9の異物検査装置にて撮影される画像の他の例を示す図。
【図12】図9の異物検査装置にて撮影される画像のさらに他の例を示す図。
【図13】本発明の一形態に係る画像処理装置にて行われる検査領域決定ルーチンを示すフローチャート。
【図14】本発明の一形態に係る画像処理装置にて行われる異物判別ルーチンを示すフローチャート。
【図15】一対の半円筒状のカバーを組み合わせて筒状体を構成する異物検査装置の部分平面図。
【図16】図15の異物検査装置を同図の矢印XVI方向から見た状態を示す図。
【図17】容器に混濁した内容物が充填されている場合に適した異物検査装置を示す図。
【符号の説明】
【0065】
1 異物検査装置
2 容器
2a 底面
3 アクリル板
4 カメラ
4A 第1カメラ(第1の撮像手段)
4B 第2カメラ(第2の撮像手段)
5 画像処理装置(判定手段)
10 第1の照明手段
11 光源
12 発光器
13 蓋体
13a 反射面
20 第2の照明手段
21 筒状体
21a 反射面
22 光源
23 筒状発光器
23a 発光面
30 第3の照明手段
31 光源
32 発光器
32a 発光面
50 発光器(第1の照明手段)
51 発光器(第3の照明手段)
53 コールドミラー(分配手段)
62、63 カバー(筒状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器の底面側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査方法において、前記容器をその上方及び外周側の周からそれぞれ照明して前記底面側の画像を撮像し、
前記容器の前記底面側をその外周斜め下方から照明して該容器の底面側の反射光画像を撮像し、得られた反射光画像に基づいて当該容器の検査領域を決定し、その検査領域に関して前記容器の上方及び外周側からの照明により形成される前記容器の底面側の透過光画像に基づいて異物の有無を検査することを特徴とする異物検査方法。
【請求項2】
前記容器の底面側からの照明を可視光にて実施し、前記容器の上方及び外周側からの照明を赤外光にて実施することを特徴とする請求項に記載の異物検査方法。
【請求項3】
前記容器の底側から照射される可視光の波長域を前記容器の色に対して補色関係が成立する波長域に一致させることを特徴とする請求項に記載の異物検査方法。
【請求項4】
前記容器の反射光画像から前記容器の底面における凹凸部のエッジ部分を特定し、該エッジ部分を避けるようにして前記検査領域を決定することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の異物検査方法。
【請求項5】
前記反射光画像に基づいて前記容器内の透明又は半透明の異物の有無を検査することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の異物検査方法。
【請求項6】
透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器の底面側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査装置において、
前記容器をその上方から照明する第1の照明手段と、
前記容器をその外周側の周から照明する第2の照明手段と、
を備え
前記第2の照明手段の下方には、前記容器の底面側をその外周斜め下方から照明するように第3の照明手段が設けられていることを特徴とする異物検査装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の照明手段が赤外域の照明光を照射し、前記第3の照明手段が可視域の照明光を照射することを特徴とする請求項に記載の異物検査装置。
【請求項8】
前記第3の照明手段は、前記容器の色に対して補色関係が成立する波長域の照明光を照射することを特徴とする請求項に記載の異物検査装置。
【請求項9】
赤外光によって形成される画像を撮像する第1の撮像手段と、可視光によって形成される画像を撮像する第2の撮像手段とを具備し、前記容器の下方には前記第1及び第2の照明手段から照射されて前記容器を透過した光束を前記第1の撮像手段に、前記第3の照明手段から照射された前記容器にて反射した光束を前記第2の撮像手段にそれぞれ分配する分配手段が設けられていることを特徴とする請求項に記載の異物検査装置。
【請求項10】
前記分配手段として赤外域の光束を前記第1の撮像手段側へ透過させ、可視域の光束を前記第2の撮像手段に向けて反射するコールドミラーが設けられていることを特徴とする請求項に記載の異物検査装置。
【請求項11】
前記第1及び前記第2の照明手段からの照明により形成される前記容器の底面側の透過光画像を撮像する第1の撮像手段と、前記第3の照明手段からの照明により形成される前記容器の底面側の反射光画像を撮像する第2の撮像手段とを備えたことを特徴とする請求項に記載の異物検査装置。
【請求項12】
前記第2の撮像手段が撮像した反射光画像に基づいて前記容器の検査領域を決定し、その検査領域に関して前記第1の撮像手段が撮像した透過光画像に基づいて異物の有無を判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項〜1のいずれか一項に記載の異物検査装置。
【請求項13】
前記判定手段は、前記反射光画像から前記容器の底面に付された凹凸部のエッジ部分を特定し、該エッジ部分を避けるようにして前記検査領域を決定することを特徴とする請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項14】
前記判定手段は、前記反射光画像に基づいて前記容器内の透明又は半透明の異物の有無をさらに判定することを特徴とする請求項13に記載の異物検査装置。
【請求項15】
前記第1の照明手段が発光器を備え、前記第2の照明手段は、前記容器を外周側から覆うように設けられて内面側には前記発光器からの照明光を反射する反射面が前記容器の周に亘って設けられた筒状体を備えていることを特徴とする請求項6〜14のいずれか一項に記載の異物検査装置。
【請求項16】
前記第2の照明手段は、前記容器を外周側から覆うように設けられて内面側が前記容器の周に亘って発光する筒状発光器を備え、前記第1の照明手段は下面側に前記筒状発光器からの照明光を反射する反射面が設けられた覆いを備えていることを特徴とする請求項6〜14のいずれか一項に記載の異物検査装置。
【請求項17】
前記第1の照明手段が発光器を備えるとともに、前記第2の照明手段は前記容器を外周側から覆うように設けられて内面側が前記容器の周に亘って発光する筒状発光器を備えていることを特徴とする請求項6〜14のいずれか一項に記載の異物検査装置。
【請求項18】
透過性を有しかつ有底筒状に形成された容器をその底面側から撮影して異物の有無を検査する異物検査装置に使用される照明装置であって、前記容器をその上方から照明する第1の照明手段と、前記容器をその外周側の周から照明する第2の照明手段と、を備え
前記第2の照明手段の下方には、前記容器の底面側をその外周斜め下方から照明するように第3の照明手段が設けられていることを特徴とする異物検査用の照明装置。
【請求項19】
前記第1及び第2の照明手段が赤外域の照明光を照射し、前記第3の照明手段が可視域の照明光を照射することを特徴とする請求項18に記載の異物検査用の照明装置。
【請求項20】
前記第3の照明手段は、前記容器の色に対して補色関係が成立する波長域の照明光を照射することを特徴とする請求項18又は19に記載の異物検査装置。
【請求項21】
透過性を有する容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査方法において、
前記容器の検査領域を含む所定範囲についての所定方向からの反射光画像を撮像し、得られた反射光画像に基づいて当該容器の検査領域を決定し、前記容器を前記所定方向に対して反対側から照明して前記検査領域に関する透過光画像を撮像し、得られた透過光画像に基づいて当該検査領域における異物の有無を検査することを特徴とする異物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−268236(P2008−268236A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207824(P2008−207824)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【分割の表示】特願2003−293889(P2003−293889)の分割
【原出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】