説明

異物検査装置、それを用いた露光装置及びデバイスの製造方法

【課題】1つの装置で異なる被検査物の異物検査を実施した際に、検出した異物がいずれの被検査物に付着しているかを判定することができる異物検査装置を提供する。
【解決手段】被検査物2、3に対して照明光を照射する照明手段7と、照明光の照射を受け、異物から発生する散乱光を受光する受光手段8と、被検査物を面方向、若しくは面に対する法線方向に駆動する第1駆動手段6と、照明手段7、受光手段8、及び第1駆動手段6の動作及び処理を制御する制御手段12とを備え、第1駆動手段6は、複数の被検査物2、3を個別に駆動が可能であり、受光手段8は、第1駆動手段6による駆動前後において散乱光を受光し、制御手段12は、駆動前後に検出された、それぞれの異物の検出結果に基づいて検出結果の変化を導出し、変化に基づいて複数の被検査物2、3のいずれの被検査物に異物が付着しているかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検査装置、それを用いた露光装置及びデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、露光装置では、マスク(原版)の大型化に伴いマスクが自重でたわみ、それにより露光処理時の像性能が低下する恐れがある。そこで、マスクの自重たわみを低減させる装置として、特許文献1は、マスクの上側を平面ガラスで塞ぐことで気密室を構成してマスクの下面のたわみを検出し、検出結果に基づいて気密室の圧力を調整することにより、たわみを補正する投影露光装置を開示している。このような露光装置によれば、マスクの自重により発生したたわみに起因するパターンの横ずれや像面湾曲、又は、マスクの熱的変形に起因するディストーションや像面湾曲等が軽減されて、マスクに形成されたパターン像を良好に投影することができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示すような気密室を構成する平面ガラスの上下面やマスクの上面に異物が付着しても、像性能を低下させる恐れがある。そこで、異物検査装置により、平面ガラスの上下面やマスクの上面等に付着した異物を予め検出し、除去する必要がある。この場合、異物検査装置は、例えば、搬送装置によってマスクが保管場所からマスクステージまで搬送される搬送工程において、マスクと平面ガラスとが分離された状態でマスクと平面ガラスの異物検査を個別に実施する。図15は、従来の異物検査装置の構成を示す概略図である。この異物検査装置40は、光源41と投光レンズ42とを含む投光部と、受光レンズ43と検出器44とを含む受光部とを、それぞれ平面ガラス(又はマスク)45の上下面側の双方に備える。そして、異物検査装置40は、平面ガラス45が搬送装置46に保持された状態で、平面ガラス45の上下各面の異物検査を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−214780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、上記のような異物検査を実施した後、マスクと平面ガラスとを合体させる。このとき、マスク及び平面ガラスを搬送する搬送装置から発生した塵や、マスクと平面ガラスとで構成される気密室内を減圧したとき、マスクと平面ガラスとの接触部分から発生した微細な金属片等が、マスクの上面や平面ガラスの下面に付着する場合がある。しかしながら、従来の異物検査装置は、マスクと平面ガラスとを合体させて、マスクのたわみを補正するたわみ補正機構が構成された後では、マスクや平面ガラス上の異物を検査することが困難である。また、従来の異物検査で可能だとしても、複数の検出器を設置する必要があり、合理的ではない。
【0006】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、1つの装置で異なる被検査物(マスクや平面ガラス等)の異物検査を実施した際に、検出した異物がいずれの被検査物に付着しているかを判定することができる異物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、重畳する複数の被検査物に付着した異物を検査する異物検査装置であって、被検査物に対して照明光を照射する照明手段と、照明光の照射を受け、異物から発生する散乱光を受光する受光手段と、被検査物を面方向、若しくは面に対する法線方向に駆動する第1駆動手段と、照明手段、受光手段、及び第1駆動手段を制御する制御手段と、を備え、第1駆動手段は、複数の被検査物を個別に駆動が可能であり、受光手段は、第1駆動手段による駆動前後において散乱光を受光し、制御手段は、駆動前後に検出された、それぞれの異物の検出結果に基づいて検出結果の変化を導出し、変化に基づいて複数の被検査物のいずれの被検査物に異物が付着しているかを判定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、パターンが形成された原版、及び前記原版のたわみを低減するために前記原版に接して密閉空間を構成する平面部材に付着した異物を検査する異物検査装置であって、原版及び平面部材を照明する照明手段と、異物から発生する散乱光を受光する受光手段と、密閉空間を構成した状態を保ちながら、原版及び平面部材のうち少なくとも1つを駆動し、原版と平面部材との相対位置を変更する駆動手段と、を備え、駆動手段による駆動前後で散乱光を受光した結果に基づいて、異物が原版及び平面部材のうちいずれに付着しているかを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つの装置で異なる被検査物の異物検査を実施した際に、検出した異物がいずれの被検査物に付着しているかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1検査工程の様子を示す概念図である。
【図3】第1実施形態に係る第3検査工程の様子を示す概念図である。
【図4】第1実施形態における異物検査の流れを示すフローチャートである。
【図5】各被検査面に対する感度曲線を示すグラフである。
【図6】マスクたわみ補正機構を利用した異物検査装置の構成を示す概略図である。
【図7】図6の異物検査装置による第3検査工程の様子を示す概念図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。
【図9】第2実施形態に係る第3検査工程の様子を示す概念図である。
【図10】受光角度θに関する概念図である。
【図11】被検査物の変化量と受光角度θとの関係を示す概念図である。
【図12】第2実施形態における異物検査の流れを示すフローチャートである。
【図13】第3実施形態における異物検査の流れを示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る露光装置の構成を示す概略図である。
【図15】従来の異物検査装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明の実施形態に係る異物検査装置の構成について説明する。図1は、異物検査装置の構成を示す概略図である。以下、異物検査装置は、液晶表示装置等に使用されるガラス基板に対してパターンを投影露光するために採用される光透過性のマスク(原版)2、及び該マスク2の自重たわみを低減させるための平面ガラス(平面部材)3に付着した異物を検査するものとする。また、被検査物であるマスク2と平面ガラス3とは、従来と同様に予め重畳させて外周部で張り合わされ、マスク2に接して気密室(密閉空間)を構成している。また、異物検査装置1は、投影露光を実施する不図示の露光装置の露光処理部近傍、即ち、露光処理部に構成されるマスクステージ(保持手段)4の駆動範囲内に設置される。この異物検査装置1は、マスクステージ4の上部(露光処理時の投影光照射側)に位置するように配置される検出部5と、マスク2及び平面ガラス3の周囲に位置するように配置される第1駆動機構6とを備える。
【0013】
検出部5は、マスク2及び平面ガラス3の表面上に付着した異物を検出する検出手段である。この検出部5は、マスク2及び平面ガラス3に照明光を照射する照明部(照明手段)7と、照射光によりマスク2及び平面ガラス3の表面上の異物から生じる散乱光の強度を検出する受光部(受光手段)8とを備える。更に、検出部5は、該検出部5本体をマスク2(平面ガラス3)の面方向に移動可能とする第2駆動機構(第2駆動手段)9を備える。照明部7は、不図示であるが、内部に、検査光となるレーザー等の光源と、照明光を必要な検査面(領域)に照明する投光レンズとを含む。一方、受光部8は、散乱光を受光する受光レンズ10と、散乱光の強度を検出する検出器11とを含む。
【0014】
第1駆動機構6は、マスク2と平面ガラス3の間に気密室を構成した状態を保ちながらマスク2と平面ガラス3のうち少なくとも1つを面方向で個別に駆動(微小駆動)させ、相対位置を変更可能とする第1駆動手段(駆動手段)である。この第1駆動機構6は、マスク2及び平面ガラス3の外周部に位置し、マスク2及び平面ガラス3をそれぞれ個別に微小駆動する駆動部13と、該駆動部13を制御する駆動制御部14とを備える。なお、駆動部13として、各種モーターやエアシリンダー等が採用可能であるが、本実施形態では、異物の位置ズレを認識できる程度に駆動可能であれば、特に限定しない。
【0015】
また、図1に示すように、異物検査装置1による異物検査時には、マスク2(平面ガラス3)は、露光処理用のマスクステージ4に載置されている。このマスクステージ4は、マスク2を保持及び固定するマスクホルダー15と、該マスクステージ4を水平移動可能とするステージ駆動部4aとを備える。
【0016】
更に、異物検査装置1は、該異物検査装置1の各構成要素の動作を制御し、異物の有無や付着位置の判断等の処理を行う制御部(制御手段)12を備える。具体的には、制御部12は、第2駆動機構9又はステージ駆動部4aの駆動制御、第1駆動機構6の微小駆動制御、及び検出器11からの検出結果に基づく異物に関する各種情報の判定及び算出等を実施する。この制御部12は、上記制御を含む後述の異物検査を、プログラム、若しくはシーケンスの形態で実施するものであり、磁気記憶装置やメモリー等で構成される記憶装置を備えたコンピュータ、若しくはシーケンサ等で構成される。なお、制御部12は、図1に示すように異物検査装置1の内部に構成される異物検査専用の制御装置としても良いし、若しくは異物検査装置1が設置される露光装置等の本体と一体で構成しても良い。
【0017】
次に、異物検査装置1による異物検査の概念について説明する。まず、制御部12は、検出部5に構成された第2駆動機構9、又はマスクステージ4に構成されたステージ駆動部4aを駆動させることにより、マスク2及び平面ガラス3の表面に付着した異物を検査する(第1検査工程)。このとき、検査の対象となる面(被検査面)は、平面ガラス3の上面(第1面)P、該上面の反対側である平面ガラス3の下面(第2面)P、及び、マスク2の上面(第3面)Pである。図2は、被検査面に対する第1検査工程の様子を示す概念図である。図2(a)〜図2(c)に示すように、第1〜第3面のいずれかに異物が付着している場合には、検出器11が異物からの散乱光の強度を同時に検出することで、制御部12は、その強度から異物の付着の有無を判断し、かつ、異物の付着位置を記憶する。次に、制御部12は、第1駆動機構6によりマスク2又は平面ガラス3のいずれか一方を面方向に微小移動させ、検査部4に再度、異物検査を実施させる(第2検査工程)。次に、制御部12は、第1検査工程と第2検査工程との検査結果、即ち、微小駆動前後(駆動前後)の検査結果を比較し変化を導出することで、付着位置が変化した異物を微小駆動させた被検査物上に存在する異物と判定する(第3検査工程)。図3は、第3検査工程の様子を示す概念図である。図3において、例えば、第2検査工程において平面ガラス3のみをY方向に微小駆動させた場合を想定する。このとき、微小駆動前後では、平面ガラス3上に存在する3個の異物の検出位置は、第1検査工程による検出位置(A〜C)から、第2検査工程による検出位置(A´〜C´)へずれる。これに対して、マスク2の上面に存在する2個の異物の検出位置(D、E)は、微小駆動前後では、ずれない。
【0018】
次に、上記の異物検査の概念に基づく、本実施形態の異物検査装置1の作用について説明する。図4は、本実施形態の異物検査装置1による異物検査の流れを示すフローチャートである。まず、以後の検査工程にて参照するための、光源の適正光量の決定と、被検査面毎の感度曲線の作成とを実施する(ステップS101)。この場合、異物検査装置1は、例えば、平面ガラス3の上下面、及びマスク2の上面に、大きさが既知の異物を配置し、実際に必要な検査領域を予め検査する。図5は、ステップS101にて作成される感度曲線の一例を示すグラフである。図5に示すように、大きさの異なる異物を被検査面のそれぞれに配置し、異物検査装置1は、その都度異物を測定することで、予め検出器11による画素数等に基づいて異物の散乱光強度や検出像の大きさ等のデータを取得し、制御部12内の記憶装置に記憶する。なお、本実施形態では、平面ガラス3の上下面のいずれの面に異物が付着しているかの付着面判定は、実施しない。したがって、図5に示す感度曲線では、平面ガラス3の上下面の曲線は、共通となる。
【0019】
次に、制御部12は、ステップS101にて取得した感度曲線に基づいて照明部7の光量を設定し、被検査物の所望の検査領域に対して上記第1検査工程を実施する(ステップS102)。ここで、制御部12は、被検査物であるマスク2又は平面ガラス3のいずれかの表面上に異物が存在するかどうかを判断し、異物が存在していると判断した場合は(YES)、ステップS103に移行する。次に、制御部12は、上記第2検査工程を実施する(ステップS103)。この場合、ステップS103における第2駆動機構9又はステージ駆動部4aの駆動方向は、ステップS102における第2駆動機構9又はステージ駆動部4aの駆動方向に対して逆方向とするのが効率的である。次に、制御部12は、ステップS102の第1検査工程とステップS103の第2検査工程との検査結果に基づいて上記第3検査工程を実施し、異物がマスク2と平面ガラス3とのいずれに付着しているかを判定する(ステップS104)。次に、制御部12は、ステップS102の第1検査工程とステップS103の第2検査工程との結果に基づいて、検査領域内の異物の位置を特定する(第4検査工程:ステップS105)。次に、制御部12は、ステップS101にて取得した感度曲線に基づいて、異物の大きさを算出する(第5検査工程:ステップS106)。そして、制御部12は、ステップS104〜S106での検査結果を、表示画面等に対して出力し(ステップS107)、得られた検査結果に基づいて、異物の付着部分をクリーニングするかどうかを判断する(ステップS108)。なお、ステップS102において、制御部12が、被検査物の表面上に異物が存在していないと判断した場合は(NO)、そのまま本異物検査を終了する。
【0020】
以上のように、本発明によれば、異物検査装置1は、1つの装置で、重畳した複数の光透過性の部材で構成される被検査物の表面上に付着した異物の、有無、付着面判別を含む付着位置、及び大きさをそれぞれ検査することができる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る異物検査装置について説明する。第1実施形態の異物検査装置1は、第2検査工程にて、第1駆動機構6を利用してマスク2又は平面ガラス3のどちらか一方を面方向に微小駆動させる。これに対して、本実施形態の異物検査装置は、第1駆動機構に対応するマスクたわみ補正機構(たわみ補正機構)を利用して、マスク2及び平面ガラス3をそれぞれの面に直交する方向に微小駆動させる。図6は、マスク2と平面ガラス3とによって囲まれた気密室内の気圧を制御し、外気圧差を利用して微小駆動させる従来のたわみ補正機構の構成を示す概略図である。なお、図6において、図1に示す異物検査装置1の構成と同一構成のものには同一の符号を付し、説明を省略する。また、たわみ補正機構20は、気密室21内の気圧を制御することによりマスク2のたわみ量を補正するたわみ補正手段であり、配管22を介して気密室21に連通した気圧制御部23を備える。ここで、気圧制御部23が、図6(a)に示す気密室21内の気圧制御前の状態から気圧制御を実施すると、図6(b)に示すように、マスク2及び平面ガラス3の両方でたわみが発生し、それぞれの面内でも場所により変化量が異なる。図7は、図3に対応し、図6(b)に示す状態で異物検査を実施した場合の異物の検出位置ずれを示す概念図である。このように、従来のたわみ補正機構20をそのまま利用して、上記第2検査工程のような異物検査を実施すると、図7に示すように、検出された異物の全ての検出位置がずれ、制御部12は、異物が付着している被検査物を判別することができない。
【0022】
そこで、本実施形態では、第1実施形態と同様に、1つの異物検査装置でマスク2と平面ガラス3とのいずれに異物が付着しているかを判別可能にするため、平面ガラス3の構造を、マスク2と比較して気圧変化に対する変形敏感度が十分に小さいものとする。図8は、本実施形態に係る異物検査装置30の構成を示す概略図である。ここで、平面ガラス3の変形敏感度を小さくする方法としては、例えば、図8に示すように、マスク2の面厚dに対して平面ガラス3の面厚dを大きくし、剛性を付けることが考えられる。これにより、図8(a)に示すように、気密室21内の気圧が高くなる場合でも、更に、図8(b)に示すように、気密室21内の気圧が低くなる場合でも、平面ガラス3の変形度が無視できる。図9は、図7に対応し、図8に示す状態で異物検査を実施した場合の異物の検出位置ずれを示す概念図である。このように、従来のたわみ補正機構20を利用しつつ、上記第2検査工程のような異物検査を実施すると、図9に示すように、検出された異物の検出位置は、被検査物により異なるので、制御部12は、異物が付着している被検査物を判別することができる。
【0023】
ここで、いずれの被検査物に異物が付着しているかを判別する精度の向上を考慮する。例えば、この場合、被検査物の法線方向の変化に対する異物の検出位置変化の敏感度を上げることが望ましい。図10は、被検査物からの照明光の正反射光(屈折光)と、被検査物の法線に対する受光部8の光軸角度(受光角度θ)との関係を示す概念図である。図10に示すように、異物の検出位置変化の敏感度を上げるためには、受光角度θを、照明光の正反射光を受光せず、かつ、マスク2及び平面ガラス3上の異物からの散乱光のみを受光する範囲内で、大きく設定することが望ましい。更に、この場合、気圧補正量の適正化も重要である。図11は、被検査物であるマスク2の変化量(気圧補正量)と受光角度θとの関係を示す概念図である。図11において、気圧補正によるマスク2の法線方向の変化をΔZ、法線方向に対する受光角度をθ、θ(θ<θ)、及び気圧補正前後の異物の検出位置変化をそれぞれΔP、ΔPと定義する。ここで、検出位置変化ΔPは、ΔP=ΔZ×tanθと表される。このとき、例えば、ΔZ=500μm、θ=15°、θ=30°とすると、ΔP=134μm、ΔP=289μmとなる。即ち、本実施形態では、受光角度θの設定の適正化に加えて、気圧補正量(ΔZ)を大きくすることが望ましい。なお、これらの条件は、受光部8の光軸と各被検査物との交点が、照明部7の照明領域内にあることが前提である。
【0024】
次に、本実施形態の異物検査装置30の作用について説明する。図12は、本実施形態の異物検査装置30による異物検査の流れを示すフローチャートである。なお、図12に示す異物検査において、図4に示す第1実施形態の異物検査と同様のステップには同様の番号を付し、説明を省略する。即ち、本実施形態では、第1実施形態における第2検査工程(ステップS103)に対応したステップが異なる。具体的には、本実施形態の第2検査工程(ステップS203)では、上述の通り、制御部12は、マスクたわみ補正機構20により、気密室21内の気圧を加減してマスク2を法線方向に微小駆動させ、検査部4に再度、異物検査を実施させる。これにより、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0025】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る異物検査装置について説明する。本実施形態の特徴は、第2実施形態の異物検査装置30を利用し、第2実施形態に示す異物検査と同時に、マスク2のたわみ補正を実施する点にある。図13は、本実施形態の異物検査の流れを示すフローチャートである。なお、図13に示す異物検査において、図4に示す第1実施形態の異物検査、及び図12に示す第2実施形態の異物検査と同様のステップには同様の番号を付し、説明を省略する。まず、ステップS101に対応したステップS301の終了後、制御部12は、ステップS102と同様の第1検査工程を実施する(ステップS302A)。同時に、制御部12は、たわみ補正機構20により、マスク2のたわみ量の計測を実施する(ステップS302B)。次に、制御部12は、第2実施形態のステップS203と同様の第2検査工程を実施する(ステップS303)。このとき、制御部12は、たわみ補正機構20によりマスク2のたわみ量の計測を再度実施する。次に、制御部12は、たわみ補正機構20による駆動レンジが終了したかどうかを確認し(ステップS304)、終了したと判断した場合は(YES)、マスク2のたわみ量が規格内となる気圧を決定する(ステップS305)。一方、ステップS304にて、制御部12が駆動レンジは終了していないと判断した場合は(NO)、ステップS303に戻り、同様の処理を繰り返す。ステップS305の終了後のステップS306〜S310は、それぞれ図4に示す第1実施形態のステップS104〜S108と同一である。このように、本実施形態によれば、異物検査装置30による異物検査と、たわみ補正機構20によるマスク2のたわみ補正とを同時に実施するので、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、処理時間を短縮できる。
【0026】
(露光装置)
次に、本発明の異物検査装置を採用した露光装置について説明する。図14は、本実施形態に係る露光装置の構成を示す概略図である。なお、本実施形態では、ガラス基板に対する反射型投影光学系を用いたプロジェクション方式の露光装置を採用するものとして説明する。露光装置90は、マスクに形成されたパターン(例えば、TFT回路)を、感光剤が塗布された基板P上へ投影転写するものである。この露光装置90は、光源91からの光を導入する照明光学系92と、該照明光学系92からの光をマスク上に導く結像光学系93と、マスクを載置するマスクステージ94と、投影光学系95と、基板を載置する基板ステージ96とを備える。この場合、マスクは、上記実施形態で示す平面ガラス3を含むマスク2に相当する。この露光装置90において、マスクステージ94は、マスクを載置し保持しつつ、XY方向に移動可能なステージ装置であり、上記実施形態に示すマスクステージ4に相当する。投影光学系95は、該投影光学系95の内部に設置された反射鏡97で偏光特性を変化させつつ、マスクの照射領域に描画されたパターン像を基板上に結像させるものである。基板ステージ96は、基板を載置し保持しつつ、XYZの3次元方向に移動可能なステージ装置である。更に、露光装置90の近傍には、上記実施形態に係る異物検査装置1(30)が配置される。本実施形態の露光装置90によれば、マスク(マスク2及び平面ガラス3)に付着した異物を効率良く検出することができるので、良好な精度のデバイスを製造できると共に、処理時間を短縮できる。
【0027】
(デバイスの製造方法)
次に、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、第2検査工程において異物の検出位置のずれのみに着目したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部12は、異物からの散乱光強度、又は異物検出像の形や大きさ等の見えの変化により、微小駆動させた被検査物上の異物を判定しても良い。これにより、異物の判別精度を更に上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 異物検査装置
2 マスク
3 平面ガラス
6 第1駆動機構
7 照明部
8 受光部
12 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重畳する複数の被検査物に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
前記被検査物に対して照明光を照射する照明手段と、
前記照明光の照射を受け、前記異物から発生する散乱光を受光する受光手段と、
前記被検査物を面方向、若しくは面に対する法線方向に駆動する第1駆動手段と、
前記照明手段、前記受光手段、及び前記第1駆動手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記第1駆動手段は、前記複数の被検査物を個別に駆動が可能であり、
前記受光手段は、前記第1駆動手段による駆動前後において前記散乱光を受光し、
前記制御手段は、前記駆動前後に検出された、それぞれの前記異物の検出結果に基づいて前記検出結果の変化を導出し、前記変化に基づいて前記複数の被検査物のいずれの被検査物に前記異物が付着しているかを判定することを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
前記検出結果の変化は、前記駆動前後の、前記異物の位置変化、前記異物の散乱光強度の変化、又は前記異物の検出像の変化のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記第1駆動手段は、前記複数の被検査物を前記面方向に駆動する駆動部を備え、前記複数の被検査物の前記面方向の相対位置を変更可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記複数の被検査物は、表面にパターンが形成された原版と、平面部材とであり、
前記第1駆動手段は、前記原版と前記平面部材とで構成された気密室内の気圧を制御して前記原版のたわみを補正するたわみ補正機構であり、前記気圧を制御することにより、前記法線方向に前記被検査物を駆動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記平面部材は、前記原版と比較し、気圧変化に対する変形敏感度が小さくなるような剛性を有することを特徴とする請求項4に記載の異物検査装置。
【請求項6】
前記平面部材の面の法線に対する前記受光手段の光軸角度は、前記受光手段が、前記照明光の正反射光を受光せず、また、前記原版及び前記平面部材に付着した前記異物からの散乱光のみを受光する角度を有し、かつ、前記制御手段が、前記異物の判定を可能とする程度に大きいことを特徴とする請求項4又は5に記載の異物検査装置。
【請求項7】
更に、前記照明手段及び前記受光手段を、前記被検査物の表面に対して面方向に移動可能とする第2駆動手段と、
前記被検査物を保持し、該被検査物を面方向に移動可能とする保持手段と、を備え、
前記制御手段は、前記照明手段の光源の適正光量の決定、及び前記被検査物の面毎の感度曲線の作成を実施し、
次に、前記感度曲線に基づいて前記照明手段の光量を設定して、前記第1駆動手段による駆動の前に、前記被検査物の検査領域において前記異物を検出する第1検査工程を実施し、
次に、前記第1検査工程において前記異物が存在していると判断した場合、前記被検査物のいずれか、若しくは両方に対して前記第1駆動手段による駆動を行い、その後、再度、前記被検査物の検査領域において前記異物を検出する第2検査工程を実施し、
次に、前記第1検査工程と前記第2検査工程との検出結果の変化に基づいて、前記異物が、駆動させた被検査物の面に存在すると判定する第3検査工程を実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の異物検査装置。
【請求項8】
前記感度曲線は、予め前記被検査物の面に大きさが既知の異物を配置して検出することで取得される、前記異物の大きさに対する、前記異物の散乱光強度、若しくは前記異物の検出像の大きさを示す情報であることを特徴とする請求項7に記載の異物検査装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1検査工程と、前記たわみ補正機構による前記原版のたわみ補正とを同時に実施することを特徴とする請求項7又は8に記載の異物検査装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1〜3検査工程に加えて、
前記第1及び第2検査工程による検査結果に基づいて、前記検査領域の前記異物の位置を特定する第4検査工程を実施し、
次に、前記感度曲線に基づいて、前記異物の大きさを算出する第5検査工程を実施することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の異物検査装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第3〜第5検査工程によるいずれかの検査結果を出力することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の異物検査装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第3〜第5検査工程によるいずれかの検査結果に基づいて、前記異物の付着部分をクリーニングするかどうかを判断することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の異物検査装置。
【請求項13】
パターンが形成された原版、及び前記原版のたわみを低減するために前記原版に接して密閉空間を構成する平面部材に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
前記原版及び前記平面部材を照明する照明手段と、
前記異物から発生する散乱光を受光する受光手段と、
前記密閉空間を構成した状態を保ちながら、前記原版及び前記平面部材のうち少なくとも1つを駆動し、前記原版と前記平面部材との相対位置を変更する駆動手段と、を備え、
前記駆動手段による駆動前後で前記散乱光を受光した結果に基づいて、前記異物が前記原版及び前記平面部材のうちいずれに付着しているかを判定することを特徴とする異物検査装置。
【請求項14】
原版に形成されたパターンを基板に露光する露光装置であって、
露光処理に際し、請求項1〜13のいずれか1項に記載の異物検査装置により、前記原版、若しくは前記原版に重畳された平面部材に付着した異物の検査を実施することを特徴とする露光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
露光された基板を現像する工程と、
を備えることを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−258880(P2011−258880A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134142(P2010−134142)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】