説明

異物検査装置及び異物検査システム

【課題】異物の見逃しを防止して高精度に異物の有無を検査可能な異物検査装置を提供する。
【解決手段】内容物が充填された透過性を有する容器Bの底面側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の異物の有無を検査する異物検査装置1において、容器Bの側面を保持して直線的に検査位置Pに搬送するコンベア2と、検査位置Pで容器Bの上方から赤外域の照明光を照射する上部照明ユニット3と、検査位置Pで容器Bの底面側へ向けてその外周斜め下方から可視域の照明光を照射する下部発光器4と、赤外光によって形成される画像を撮像する第1カメラ6Aと、可視光によって形成される画像を撮像する第2カメラ6Bと、上部照明ユニット3から照射された光束を第1カメラ6Aに、下部発光器4から照射された光束を第2カメラ6Bにそれぞれ分配するコールドミラー7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の底部に沈殿した異物の有無を検査する異物検査装置及び異物検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
容器の底面側からの画像に基づいて容器内に沈殿した不透明な異物の有無を検査する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この装置は、ロータリ式の搬送機構に適用されて容器を搬送しながら容器に混入する異物の有無を検査している。
【特許文献1】特開2004−219399
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ロータリ式の搬送機構に異物検査装置を設けると、容器に遠心力が付与されるため底面に沈殿していた異物が浮遊する。このため、異物を見逃すおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は異物の見逃しを防止して高精度に異物の有無を検査可能な異物検査装置及び異物検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の異物検査装置は、内容物が充填された透過性を有する容器(B)の底面側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査装置(1)において、前記容器の側面を保持して直線的に検査位置(P)に搬送する搬送手段(2)と、前記検査位置で前記容器の上方から赤外域の照明光を照射する第1の照明手段(3)と、前記検査位置で前記容器の底面側へ向けてその外周斜め下方から可視域の照明光を照射する第2の照明手段(4)と、赤外光によって形成される画像を撮像する第1の撮像手段(6A)と、可視光によって形成される画像を撮像する第2の撮像手段(6B)と、前記第1の照明手段から照射されて前記容器を透過した光束を前記第1の撮像手段に、前記第2の照明手段から照射されて前記容器にて反射した光束を前記第2の撮像手段にそれぞれ分配する分配手段(7)と、を備えたことにより上記課題を解決する。
【0006】
本発明の異物検査装置によれば、搬送手段により搬送される容器は、検査位置にて、その底面を撮像される。容器が回転することなく直線的に搬送されるので、容器内で沈殿する異物が浮遊することがない。従って、異物の見逃しを防止することができる。また、容器の側面を保持しているので、底面を遮るものがなく、底面側からの画像を容易に取得することができる。第1及び第2の撮像手段により撮像される画像は、容器が回転しないので同期させる必要がなく、容易に異物の有無を検査することができる。よって、異物の見逃しを防止して、高精度に異物の有無を検査することができる。
【0007】
本発明の異物検査装置の一形態において、前記搬送手段は、一対のベルト部材(2a、2b)を有し、前記容器の側面を前記一対のベルト部材で挟んで搬送してもよい。この形態によれば、各ベルト部材がそれぞれ等速度で駆動することにより、容器が回転することなく直線的に搬送される。従って、簡易な構成で容器を搬送することができる。
【0008】
本発明の異物検査装置の一形態において、前記第1の照明手段は、発光器(31)と、前記容器の上部をドーム状に覆い、その内面には前記発光器からの照明光を反射する反射面が設けられている半球体(32)と、を備えてもよい。この形態によれば、半球体の反射面が発光器からの照明光を反射して、その反射光が容器に照射される。半球体は容器の上部をドーム状に囲んでいるので反射光は容器に対して均一に照射される。従って、第1の撮像手段で光ムラの少ない画像を得ることができる。
【0009】
第1の照明手段が発光器と半球体とを備えた形態において、前記発光器は、前記半球体の下端に設けられて、前記反射面に向けて照明光を照射してもよい。この形態によれば、発光器からの照明光は、直接容器に照射されることなく、半球体の反射面に反射してから容器に照射される。従って、容器に均一に照明光を照射することができる。
【0010】
第1の照明手段が発光器と半球体とを備えた形態において、前記第1の照明手段は、前記半球体の下方に設けられて、前記反射面に向けて照明光を照射する補助発光器(33)をさらに備えてもよい。この形態によれば、容器が大型である等して容器の上端から下端まで距離があり、発光器と半球体とによる照明では容器の底面からの撮像のための光量が不足している場合に、補助発光器を使用することにより、光量を増加させることができる。従って、容器に沈殿する異物を見逃すことなく確実に異物を捉えることができる。
【0011】
本発明の異物検査装置の一形態において、前記容器の下部へ向けてその周囲から赤外域の照明光を照射する第3の照明手段(8)をさらに備えてもよい。この形態によれば、容器の内容物が光の透過性が低く、かつ拡散性の高い液種の場合、第1の照明手段による照明光では容器の底面まで照明光が到達しにくく、異物を発見しづらい。このような液種に対しては、容器の下部へ向けてその周囲から照明光を照射することにより、内容物中を照明光が均一に拡散する。これにより、容器に沈殿する異物を捕えることができる。従って、容器の内容物の液種によらない異物の有無の検査ができる。
【0012】
本発明の異物検査システムは、上述の異物検査装置(1)と、前記容器(B)の側面側からの画像を取得してその画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する浮遊異物検査装置(20)と、を備えたことにより上記課題を解決する。
【0013】
本発明の異物検査システムによれば、浮遊異物検査装置を異物検査装置の前工程あるいは後工程として異物検査装置の前後いずれか一方に設置することにより、沈殿する異物及び浮遊する異物の有無を検査することができる。異物の存在する場所にかかわらず異物を捉えることができ、異物の見逃しを防止することができる。異物検査装置は、容器を直線的に搬送する機構なので、浮遊異物検査装置と容易に組み合わせることができる。
【0014】
本発明の異物検査システムの一形態において、前記浮遊異物検査装置は、前記容器の中心軸線(AX)に対して垂直な方向から撮像する第1の撮像手段(23b)と、前記第1の撮像手段の撮像方向に対して所定角度上方向にずれた位置から撮像する第2の撮像手段(23a)と、前記第1の撮像手段の撮像方向に対して所定角度下方向にずれた位置から撮像する第3の撮像手段(23c)と、前記容器を挟んで前記第1、第2及び第3の撮像手段の対向に設けられた照明手段(22)と、を備え、前記第1、第2及び第3の撮像手段のそれぞれには、前記各撮像手段と前記容器との間の光路を変更して、前記容器の正面像(F)と、前記正面像に対して前記容器の中心軸線の回りに所定角度左側にずれた左側面像(L)と、前記正面像に対して前記容器の中心軸線の回りに所定角度右側にずれた右側面像(R)と、を同時に撮像するための光路変更手段(24)が設けられていてもよい。この形態によれば、浮遊異物検査装置が、上下方向に設置角度の異なる第1、第2及び第3の撮像手段にて容器を撮像することにより、上下方向に撮像方向の異なる画像が得られる。容器に横方向のリブが設けられている場合に、一方向からの撮像ではリブ周辺に存在する異物が消失したり、異物が小さく撮像されたりする現象に対応できないが、上下方向に角度が異なるので、いずれかの方向からの画像で異物を捉えることができる。また、各撮像手段は、容器の正面像、左側面像及び右側面像を同時に撮像するので、左右方向に撮像方向の異なる画像が得られる。容器に縦方向のリブが設けられている場合にも、横方向のリブと同様の理由によりいずれかの方向からの画像で異物を捉えることができる。従って、合計9体の撮像方向の異なる容器の画像により、リブによる異物の見逃しを防止することができる。左右方向に撮像方向の異なる画像は光路変更手段により一つの画像で得られるので、撮像手段の設置数を抑えることができ、画像処理を簡略化することもできる。よって、高精度かつ高速に容器内の異物の有無を検査することができる。
【0015】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明の異物検査装置においては、搬送手段により搬送される容器は、検査位置にて、その底面を撮像される。容器が回転することなく直線的に搬送されるので、容器内で沈殿する異物が浮遊することがない。従って、異物の見逃しを防止することができる。また、容器の側面を保持しているので、底面を遮るものがなく、底面側からの画像を容易に取得することができる。第1及び第2の撮像手段により撮像される画像は、容器が回転しないので同期させる必要がなく、容易に異物の有無を検査することができる。よって、異物の見逃しを防止して、高精度に異物の有無を検査することができる。また、本発明の異物検査システムにおいては、浮遊異物検査装置を異物検査装置の前工程あるいは後工程として異物検査装置の前後いずれか一方に設置することにより、沈殿する異物及び浮遊する異物の有無を検査することができる。異物の存在する場所にかかわらず異物を捉えることができ、異物の見逃しを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に本発明の一形態に係る異物検査装置の概略図を示す。異物検査装置1は、容器Bの底面Ba側から撮像し、得られた画像に基づいて容器Bの底部に沈殿する異物の有無を検査する装置である。容器Bは、透過性を有し有底筒状に形成された、例えばペットボトルである。飲料が充填された容器Bの口部はキャップCPにて密封されている。異物検査装置1は、容器Bの胴部を保持して搬送する搬送手段としてのコンベア2と、容器Bをその上方から照明する第1の照明手段としての上部照明ユニット3と、容器Bをその下方から照明する第2の照明手段としての下部発光器4と、フレネルレンズ5と、容器Bを撮像する第1及び第2の撮像手段としての第1カメラ6A及び第2カメラ6Bと、第1カメラ6A及び第2カメラ6Bのそれぞれに光束を分配する分配手段としてのコールドミラー7とを備えている。
【0018】
コンベア2は、容器Bの胴部を両側から挟んで搬送するベルト搬送方式である。容器Bの両側に設けられた一対のベルト2a、2bが直立した状態の容器Bの胴部を挟んで保持し、それぞれ等速度に駆動することにより、ベルト2a、2bに挟まれた容器Bは、回転することなく直線的に移動する。コンベア2は、供給される容器Bを順次搬送する。コンベア2は、周知技術を利用して構成してよい。
【0019】
上部照明ユニット3は、コンベア2による容器Bの搬送経路の上方に設けられて、搬送される容器Bを照明する。図2に容器Bの進行方向からみた上部照明ユニット3を示す。上部照明ユニット3は、発光器31と、発光器31からの照明光を反射して容器Bを照明するドーム状の半球体32と、半球体32の下方に設けられて半球体32へ照明光を射出する補助発光器33とを有する。発光器31は、半球体32の下端の四隅にそれぞれ設けられ、半球体32の内面に向けて上方向に照明光を射出する。発光器31は、赤外域の照明光を射出する。発光器31には、周知技術が適用され、一例として、赤外LEDが利用される。なお、発光器31は、搬送される容器Bを避けて設けられるリング状の照明であってもよく、配置や構成は適宜変更してよい。
【0020】
半球体32は、その半球面の中心を検査位置Pにある容器Bの中心線CLが貫くように設けられ、その下端は容器Bの口部付近まで覆う程度の位置に設置される。このため、半球体32には、搬送される容器Bの口部を避けるための切欠き32aが容器Bの出入口にそれぞれ設けられている。半球体32の内面は、反射面として構成され、発光器31からの照明光が反射面で反射することにより、その反射光が容器Bの底部へ向けて照射される。このように、半球体32は、間接照明として機能し、半球体32により照明光が容器B内部を均一に透過することができる。補助発光器33は、発光器31及び半球体32による照明の光量が不足する場合に使用される。例えば、容器Bが大型のペットボトル等上端から下端まで距離があり、底面Baからの撮像のための光量が不足する場合等である。その他、必要に応じて使用することができる。補助発光器33は、コンベア2の両側にそれぞれ、搬送方向に沿って設けられ、発光器31と同様赤外域の照射光を射出する。補助発光器33の照明光は、半球体32に向けて射出される。これにより、半球体32による照明光の光量が増加する。
【0021】
下部発光器4は、検査位置Pに位置する容器Bの底面Baに向けて、その外周斜め下方から可視域の照明光を照射する。下部発光器4は、リング状の発光面4aに沿って配列された多数のLEDを有する。下部発光器4の照明光の波長域は、容器Bの色に対して補色関係が成立する波長域に一致させるとよい。例えば、容器Bの素材が透明で内容物がお茶の場合、容器Bの色は茶又は黄系統となるため、下部発光器4を構成するLEDに青色LEDを使用すれば照明光と容器Bとの間に補色関係が成立するようになる。このような補色関係を成立させた場合、下部発光器4の照明光と容器Bの色とが混ざり合って無彩色が形成されるため、容器Bの本来の色が観察されている部分とそれ以外の色との間のコントラストが高まる。例えば、容器Bの底面Baにペタロイドのような凹凸部が付されている場合には、その凹凸部のエッジ部分が外光を反射する等して内容物の色とは異なる色を呈するため、こうしたエッジ部分とその他の部分との間のコントラストが高くなり、エッジ部分を容易に検出できるようになる。
【0022】
フレネルレンズ5は、容器Bの底面Baに対向して設けられている。一例として、底面Baから60[mm]下方に設置される。後述する各カメラ6A、6B側からフレネルレンズ5を通して容器Bを観察した場合、容器Bの底面Baと胴部との境界に位置する立ち上がり部Bbがフレネルレンズ5の屈折作用により底面Baの外周側に展開して写し込まれる。従って、フレネルレンズ5を通して得られる画像のうち、立ち上がり部Bbに相当する領域を検査領域から除外することにより立ち上がり部Bbの影響を受けることなく底面Ba側における異物の沈殿の有無を検査することができる。
【0023】
第1カメラ6Aは容器Bの中心線CLの下方に設けられ、第2カメラ6Bは後述するコールドミラー7を反射する像を撮像するため、中心線CLに対して垂直に設けられている。第1カメラ6Aは、赤外域の照明光を照射する上部照明ユニット3にて照明された容器Bの底面Ba側の透過光画像を撮像する。第2カメラ6Bは、可視域の照明光を照射する下部発光器4にて照明された容器Bの底面側の反射光画像を撮像する。このため、各カメラ6A、6Bと容器Bとの間には、コールドミラー7が設けられている。コールドミラー7は、容器Bの底面Baから導かれる光束のうち、赤外域の光束を第1カメラ6A側に透過させ、可視域の光束を第2カメラ6B側に反射させる。なお、各カメラ6A、6Bには、それぞれ同種のカメラが用いられる。カメラ6A、6Bは、レンズ及びCCD、CMOS等の半導体素子を利用したイメージセンサを備え、レンズの視野内に設定される撮像範囲の輝度分布に対応した画像信号を出力する周知のものである。カメラ6A、6Bとして、例えばCCDカメラが使用される。
【0024】
異物検査装置1には、画像処理装置10が設けられている。画像処理装置10は、一例としてマイクロプロセッサを有するコンピュータユニットとして構成されている。画像処理装置10には各カメラ6A、6Bで撮像された画像が出力され、所定の処理が実行される。
【0025】
異物検査装置1を利用した異物の検査方法を説明する。なお、ここでは上部照明ユニット3からの照明光を透過させる性質の内容物が容器Bに充填されているものとする。容器Bの内容物は、光の透過率が高く、かつ拡散性の低い透過性液種と、光の透過性が低く、かつ拡散性の高い拡散性液種との2種に大別することができる。つまり、本形態は、透過性液種の内容物が容器Bに充填されている場合に適した異物の検査方法である。なお、透過性液種の例としては、低果汁飲料、スポーツドリンク、お茶、コーラ飲料等が挙げられる。拡散性液種の例としては、高果汁飲料、野菜ジュース、乳性飲料等が挙げられる。
【0026】
コンベア2にて順次搬送される容器Bが検査位置Pに到達すると、上部照明ユニット3及び下部発光器4から照明光が照射され、容器Bの底面Baをカメラ6A、6Bにて撮像する。コンベア2にて搬送される容器Bに回転力は付与されないので、容器Bは、異物が沈殿したまま検査位置Pに到達することになる。上部照明ユニット3は容器Bの上方から赤外域の照明光を照射するため、容器B内部を透過した照明光がフレネルレンズ5及びコールドミラー7を透過してカメラ6Aに入射する。このようにして、容器Bの透過光画像がカメラ6Aで撮像される。一方、下部発光器4は容器Bの下方から可視域の照明光を照射するため、容器Bの底面Baで反射した反射光がフレネルレンズ5を透過し、コールドミラー7を反射してカメラ6Bに入射する。このようにして、容器Bの反射光画像がカメラ6Bで撮像される。なお、上部照明ユニット3及び下部発光器4は、同時に点灯したままでよく、透過光画像と反射光画像のいずれか一方の画像の撮影中に他方の画像用の照明を消灯する必要がない。
【0027】
得られた反射光画像から容器Bの底面Baに付された凹凸部のエッジ部分を識別し、そのエッジ部分が除外されるように検査領域を設定し、その検査領域に関して透過光画像中に暗点が存在するか否かを判定すれば、底面Baの凹凸部に影響されない精度の高い異物検査を行うことができる。このような画像処理には周知技術を利用してよく、画像処理装置10にて実行される。
【0028】
一方、上述した拡散性液種の内容物が充填された容器Bの異物の有無を検査する場合には、図3に示すような第3の照明手段としての胴部照明ユニット8が利用される。拡散性液種の内容物の場合、光の透過性が低いので、上部照明ユニット3による照明光では、内容物を透過せず容器Bの底面Baまで光が到達しない。そこで、容器Bの底面Baより若干上方から照明する胴部照明ユニット8を用いる。胴部照明ユニット8は、上述した検査位置Pに位置する容器Bの下部をその周囲から照明するように、中心線CLの周囲に配置される。図4に胴部照明ユニット8の上面図を示す。胴部照明ユニット8は、4つの発光器8a、8b、8c、8dを有する。各発光器8a〜8dは、容器Bの搬送を妨げないようにして中心線CLの周囲に配置され、4方向から照明光を照射する。一例として、コンベア2にて搬送される容器Bの底面Baから10〜50[mm]上方に設けられる。底面Baより若干上方から照明光を照射することにより、照明光が容器Bの内容物中を均一に拡散して容器Bに沈殿する異物を捉えることができる。各発光器8a〜8dは、それぞれ赤外域の照明光を射出する。一例として、赤外LEDが利用される。なお、各発光器8a〜8dは、搬送される容器Bを避けて設けられるリング状や直線状の照明であってもよく、配置や構成は適宜変更してよい。
【0029】
拡散性液種の内容物の場合、照明光が容器Bの内容物中に拡散するため上述した反射光画像は必要ない。このため、カメラ6Aからの撮像のみでよい。撮像した画像は、画像処理装置10に出力されて所定の画像処理が実行される。なお、胴部照明ユニット8は、上述の検査位置Pに設置してもよいし、検査位置Pとは異なる位置に設けてもよい。別途設けた場合は、胴部照明ユニット8からの赤外域の照明光による底面Baの像を撮像するだけでよいので、コールドミラー7の設置の必要はなく、カメラは中心線CLの同軸かつ容器Bの底面Baと対向するように一台の設置で足りる。
【0030】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、容器Bとしてペットボトルを例として説明したが、ペットボトルでは、充填量が500[ml]〜2.0[l]、丸型、角型、ペタロイド型等の各種ペットボトルを検査することができる。その他、壜等に含まれる異物の有無の検査に利用してもよい。また、搬送手段は、コンベア2に限られない。容器Bに回転力を付与せずに搬送する機構であればよく、例えば、容器Bの胴部を掴んで直線的に搬送するような機構であってもよい。
【0031】
上述した異物検査装置1を、容器Bの側面から撮像することで容器Bに充填された内容物中に浮遊する異物の有無を検査する浮遊異物検査装置と組み合わせて異物検査システムとしてもよい。図5に浮遊異物検査装置20の概略図を示す。浮遊異物検査装置20は、容器Bを搬送するコンベア21の周囲に設置される。コンベア21は、所定の搬送経路に沿って容器Bを搬送し、複数の容器Bを隠すことなく直立した状態で支持でき、これら複数の容器Bを一列に並べて搬送可能であればよい。なお、コンベア21は、容器Bに対して回転力を付与せずに搬送している。
【0032】
浮遊異物検査装置20は、容器Bを側方から照明する照明手段としての光源22と、容器Bを上方、中央、下方の3方向から撮像する第2、第1及び第3の撮像手段としての3台のカメラ23a、23b、23c(特に区別しない場合、参照符号23で代表することがある。)と、容器Bと各カメラ23との間に設けられて各カメラ23で容器Bを正面、左側、右側の3方向から撮像するための光路変更手段としての光学系24と、を備えている。光源22は、各種公知技術を利用してよく、例えば、赤外域の照明光を照射する多数の赤外LEDを並べた面照明のように構成してもよい。
【0033】
上方から撮像する上方カメラ23a、中央から撮像する中央カメラ23b及び下方から撮像する下方カメラ23cには、それぞれ同種のカメラが適用される。カメラ23は、カメラ6A、6Bと同様のものを利用してよい。中央カメラ23bは、容器Bの中心軸線AXに対して垂直、かつコンベア21の搬送方向d(図2参照)に対して垂直となるように撮像方向が決定される。上方カメラ23aは、容器Bの中心軸線AXと中央カメラ23bの撮像方向とが交わる点を中心として、中央カメラ23bの撮像方向から所定角度上方向にずれた方向に撮像方向が決定される。下方カメラ23cも同様、軸線AXと中央カメラ23bの撮像方向とが交わる点を中心として、中央カメラ23bの撮像方向から所定角度下方向にずれた方向に撮像方向が決定される。これらの所定角度は、一例として、±7.8度に設定される。
【0034】
図6に光学系24の配置図を示す。図6には中央カメラ23bの光学系24が示されている。光学系24は各カメラ23に設けられ、上方カメラ23a及び下方カメラ23cもそれぞれ図6と同様の光学系24を有するので説明を省略し、中央カメラ23bの光学系24で代表して説明する。光学系24は、中央カメラ23bから見て正面の正面像Fと、正面像Fに対して容器Bの中心軸線AXの回りに所定角度左側へずれた左側面像Lと、正面像Fに対して容器Bの中心軸線AXの回りに所定角度右側へずれた右側面像Rとを同時に撮像可能なように複数のミラーを有する。なお、これらの所定角度は、一例として±35度に設定される。
【0035】
光学系24には、正面像Fを映す第1正面ミラー25a、第1正面ミラー25aに映った像を映す第2正面ミラー25b及び第2正面ミラー25bに映った像を映す第3正面ミラー25cを有する正面光学系25と、左側面像Lを映す第1左側面ミラー26a、第1左側面ミラー26aに映った像を映す第2左側面ミラー26b及び第2左側面ミラー26bに映った像を映す第3左側面ミラー26cを有する左側面光学系26と、右側面像Rを映す第1右側面ミラー27a、第1右側面ミラー27aに映った像を映す第2右側面ミラー27b及び第2右側面ミラー27bに映った像を映す第3右側面ミラー27cを有する右側面光学系27とが設けられている。
【0036】
中央カメラ23bの視野範囲Aに収まるように第3正面ミラー25c、第3左側面ミラー26c及び第3右側面ミラー27cが配置される。第3正面ミラー25c、第3左側面ミラー26c及び第3右側面ミラー27cは、視野範囲Aをほぼ3等分するように位置を調整されて設置される。正面光学系25、左側面光学系26及び右側面光学系27には、同数のミラーが用いられ、各光路長がほぼ等しくなるように調整されているため、中央カメラ23bにより撮像される容器Bの正面像F、左側面像L及び右側面像Rの大きさは、ほぼ一致する。左側面光学系26及び右側面光学系27で用いられるミラーは、中央カメラ23bの撮像方向に対して左右対称に設けられていてもよい。各光学系25、26、27に用いられるミラーは、位置や角度を調整可能に設けられている。なお、各光学系25、26、27に用いられるミラーの枚数は、3枚に限られず、適宜変更してもよい。
【0037】
浮遊異物検査装置20には、画像処理装置30が設けられている。画像処理装置30は、一例としてマイクロプロセッサを有するコンピュータユニットとして構成されている。画像処理装置30には各カメラ23で撮像された画像が出力され、所定の処理が実行される。なお、異物検査装置1の画像処理装置10を兼用して利用してもよい。この場合、各カメラ23で撮像された画像は画像処理装置10に出力される。
【0038】
浮遊異物検査装置20を利用した異物の検査方法を説明する。容器Bには、光源22からの照明光を透過させる性質の内容物が充填されているものとする。ただし、照明光が透過する限り、内容物の着色の有無は問わない。このような内容物としては、一例として、飲料水、茶、果汁、炭酸飲料等が挙げられる。コンベア21にて、順次搬送される容器Bが検査位置P1に到達すると、容器Bの正面像F、左側面像L、右側面像Rが各カメラ23によって同時に撮像される。光源22からの照明光が容器Bに入射し、各カメラ23で容器Bの透過光画像が撮像される。撮像された画像は、画像処理装置30に出力される。光源22で赤外域の照明光を照射すれば、可視光を透過しにくい内容物が容器Bに充填されている場合にも容器B中を照明光が透過して、異物を捉えることができる。
【0039】
上下方向に設置角度が異なるカメラ23a、23b、23cで容器Bを撮像することにより、横方向リブによる光の屈折の影響で異物が消失したり、異物が小さく撮像されたりする現象にも対応でき、異物の見逃しを防止することができる。また、左右方向に撮像方向の角度を変えて容器Bを撮像することにより、縦方向リブによる光の屈折の影響で異物が消失したり、異物が小さく撮像されたりする現象にも横方向リブと同様に対応することができ、異物の見逃しを防止することができる。なお、縦方向リブによる影響は撮像方向が上下方向に異なっていても差が生じないので、中央カメラ23bで撮像された画像を利用して縦方向リブによる異物の消失等に対応することができる。つまり、各カメラ23で容器Bの正面像F、左側面像L、右側面像Rが撮像された合計3枚の容器Bの画像を用いて、横方向リブ及び縦方向リブの影響による異物の見逃しを防止して、異物の検査をすることができる。合計3枚の画像に含まれた合計9体の容器Bの画像のうち、いずれか1体に異物が発見されたときは、異物ありとして評価する。全ての画像に異物が発見されない場合には、異物なしとして評価する。
【0040】
異物の検出には、各種公知の技術を利用してよい。例えば、異物の輝度とそれ以外の部分の輝度との間に閾値を設定して画像を二値化し、二値化画像内における黒点の有無を検査すれば異物の有無を判別することができる。このような異物検出処理を画像処理装置30で実行することにより検査を自動化することができる。
【0041】
浮遊異物検査装置20では、コンベア21の搬送方向の一方の側面側、容器Bの半周分の検査領域をカバーしているが、同様の装置を他方の側面側にも設置してもよい。コンベア21に対して対称に2台の浮遊異物検査装置20を設けることで、容器Bの全周囲で異物の有無を検査することができる。また、コンベア21に限られず、各カメラ23に対して容器Bの検査領域が隠れていなければ、例えばスターホイール装置のような搬送手段に対しても適用してもよい。本形態では、正面光学系25を設けた例で説明したが、これに限られず、正面像Fについては、第3左側面ミラー26c及び第3右側面ミラー27cの間から直接撮像されるように調整することで、正面光学系25を設けることなく実施してもよい。
【0042】
このような浮遊異物検査装置20を異物検査装置1の前工程あるいは後工程として前後いずれか一方に設置して異物検査システムを構成することで、浮遊する異物及び沈殿する異物の有無を検査することができる。これにより、異物の見逃しを防止して、確実に異物の検出ができる。また、いずれの検査装置も搬送機構が容器Bに回転力を付与しないストレート式なので、容易に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一形態に係る異物検査装置の概略図。
【図2】容器の進行方向からみた上部照明ユニットを示す図。
【図3】胴部照明ユニットの側面図。
【図4】胴部照明ユニットの上面図。
【図5】浮遊異物検査装置の概略図。
【図6】浮遊異物検査装置の光学系の配置図。
【符号の説明】
【0044】
1 異物検査装置
2 コンベア(搬送手段)
3 上部照明ユニット(第1の照明手段)
4 下部発光器(第2の照明手段)
5 フレネルレンズ
6A 第1カメラ(第1の撮像手段)
6B 第2カメラ(第2の撮像手段)
7 コールドミラー(分配手段)
8 胴部照明ユニット(第3の照明手段)
10 画像処理装置
20 浮遊異物検査装置
B 容器
P 検査位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された透過性を有する容器の底面側からの画像を取得し、その画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する異物検査装置において、
前記容器の側面を保持して直線的に検査位置に搬送する搬送手段と、
前記検査位置で前記容器の上方から赤外域の照明光を照射する第1の照明手段と、
前記検査位置で前記容器の底面側へ向けてその外周斜め下方から可視域の照明光を照射する第2の照明手段と、
赤外光によって形成される画像を撮像する第1の撮像手段と、
可視光によって形成される画像を撮像する第2の撮像手段と、
前記第1の照明手段から照射されて前記容器を透過した光束を前記第1の撮像手段に、前記第2の照明手段から照射されて前記容器にて反射した光束を前記第2の撮像手段にそれぞれ分配する分配手段と、
を備えたことを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、一対のベルト部材を有し、前記容器の側面を前記一対のベルト部材で挟んで搬送することを特徴とする請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記第1の照明手段は、発光器と、前記容器の上部をドーム状に覆い、その内面には前記発光器からの照明光を反射する反射面が設けられている半球体と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記発光器は、前記半球体の下端に設けられて、前記反射面に向けて照明光を照射することを特徴とする請求項3に記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記第1の照明手段は、前記半球体の下方に設けられて、前記反射面に向けて照明光を照射する補助発光器をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の異物検査装置。
【請求項6】
前記容器の下部へ向けてその周囲から赤外域の照明光を照射する第3の照明手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の異物検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の異物検査装置と、前記容器の側面側からの画像を取得してその画像に基づいて容器内の不透明な異物の有無を検査する浮遊異物検査装置と、を備えたことを特徴とする異物検査システム。
【請求項8】
前記浮遊異物検査装置は、前記容器の中心軸線に対して垂直な方向から撮像する第1の撮像手段と、前記第1の撮像手段の撮像方向に対して所定角度上方向にずれた位置から撮像する第2の撮像手段と、前記第1の撮像手段の撮像方向に対して所定角度下方向にずれた位置から撮像する第3の撮像手段と、前記容器を挟んで前記第1、第2及び第3の撮像手段の対向に設けられた照明手段と、を備え、
前記第1、第2及び第3の撮像手段のそれぞれには、前記各撮像手段と前記容器との間の光路を変更して、前記容器の正面像と、前記正面像に対して前記容器の中心軸線の回りに所定角度左側にずれた左側面像と、前記正面像に対して前記容器の中心軸線の回りに所定角度右側にずれた右側面像と、を同時に撮像するための光路変更手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の異物検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−60312(P2010−60312A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223497(P2008−223497)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】