説明

異物検知方法及び異物検知装置

【課題】被検査物に含まれる金属異物をその向きによらないで検知できる異物検知装置を提供する。
【解決手段】センサーユニット11は、直列に接続された複数のセンサセル17から構成される。センサーユニット11に電圧を印加又は電流を供給することによりセンサセルから微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した金属異物からの検知磁界をセンサーユニット11の検知電圧又は検知電流として検知して検知信号を出力する。この検知信号を解析して金属異物を検知する。微少磁界は、センサーユニット11に印加される電圧又は供給される電流が微少で、かつセンサセル17を構成するコアの磁界特性の非線形部分を利用したものである。センサセル17は、被検査物の搬送方向に対して45度傾くように配置され、細長い金属異物の検知感度を平坦化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物に混入した異物を検知する異物検知方法及び異物検知装置に関するものである。アルミニウム、銅等の常磁性体、ガラス、プラスチック、ビニール等の非金属の包装材料で包まれた被検査物中に混入した金属物を検知する異物検知方法及び異物検知装置に関するものである。更に詳しくは、アルミニウム蒸着、又はアルミニウム箔等で作られた包装容器、袋内の金属異物を検知する異物検知方法及び異物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の製造過程において、搬送機、洗浄機、攪拌機、切断機、練機、蒸し器等の各種容器や刃物、篩等が金属疲労を受けてめくれ、破断、剥がれ、削れ、欠け等を原因として、その破断片等が製品に異物として入り込む。これらの異物を検知し、排除することが重要であり、安全で保証された製品の生産には欠かせないものである。被検査物に混入した異物を検知する手段として、磁性体金属には電磁波型のセンサーコイル等が利用されている。
【0003】
金属異物は、上述の各種容器や刃物、篩等を構成するオーステナイト系ステンレスであることが多い。オーステナイト系ステンレスは塑性変形するとマルテンサイト変態を誘発し、弱い磁性を持つ結晶構造に変化する。このため、センサーコイル付近では、マグネットブースターを配置すると、磁力線の反応を強化させて高い感度で検知が可能である。被検査物がマグネットブースターを通過するとき、マグネットブースターが発生する磁気の働きで磁性が一定の方向に向き、オーステナイト系ステンレスがマルテンサイトに変態した弱磁性体の被検査物、即ち被検査物中の金属異物が磁化される。
【0004】
本出願人は、金属物をセンサーコイルで検知するものを提案した(特許文献1)。E型の鉄心に銅線コイルを巻いた構造の2対のセンサーコイルに交流電圧を印加すると交番磁界が発生する。このとき、2対のセンサーコイルを平衡又は非平衡ブリッジ回路になるよう接続しておく。交番磁界が変化しない限りブリッジ回路の出力電流は一定である。
【0005】
交番磁界を発生している2対のセンサーコイルの上下間を、磁性体または磁化された金属異物を含む被検査物が通過するとき、交番磁界の磁力線のフォーム(形成)が乱される。このときセンサーコイルを流れる電流が変化し、平衡又は非平衡ブリッジ回路の出力電圧が変化する。この出力信号電圧の変化をもって金属異物が検知できる。
【0006】
マグネットブースターは、強い磁界を発生し、磁性体の被検査物を磁化するためのもので、永久磁石等を有する構造になっている。マグネットブースターを搬送路の途中でセンサーコイルの手前に配置する。搬送手段は、被検査物をこのマグネットブースターの付近を通過させてからセンサーコイルに搬送する。被検査物に含有される金属異物がマグネットブースターの近辺を通過するとき磁化される。よって、センサーコイルで検知されるときに検知感度が向上する。
【0007】
また、本出願人は、被検査物に含まれる金属異物の位置を2つのセンサーコイルを用いて検知できる異物検知装置を提案した(特許文献2)。この2つのセンサーコイルは、被検査物を搬送している搬送路の搬送方向と直交する方向に対してそれぞれ所定の角度を有するように配置されている。異物検知装置は、金属異物がこの2つのセンサーコイルそれぞれを通過するタイムから、搬送路の搬送方向と直交する方向の位置を特定することが可能である。
【特許文献1】国際公開WO2003/027659号広報
【特許文献2】特願2003−427855号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のセンサーコイルは、搬送方向と直交する方向に配置され、かつ細長い形状をしている。線状の細長い異物がセンサーコイルの付近を通過するとき、異物の向きによってセンサーコイルでの検知感度が大きく変化し、強い方向性(指向性)を持つ。図18のaに示すように、異物の長手方向の軸が、センサーコイルの長手方向の軸と直交するときは、センサーコイルの反応が最大である。図18のbに示すように、異物の長手方向の軸が、センサーコイルの長手方向の軸と一致し、異物とセンサーコイルが平行するときは、センサーコイルの反応感度は低い。
【0009】
このように、異物の向きによってセンサーコイルの感度が変動するとき、このセンサーコイルのみの感度を向上させようとすると装置全体の感度調整に大きく影響を与え、後段の回路設計、信号処理が複雑になるという欠点がある。このように異物とセンサーコイルが平行し、センサーコイルの感度が低下したときは、センサーコイルによって異物を検知できないこともある。
【0010】
従来の異物検知装置は、2つのセンサーコイル両方で検知したデータを計算して、被検査物に異物があるか否かを特定している。しかし、細長い異物が1つのセンサーコイルと平行になった場合は、そのセンサーコイルで検知できない場合があり、この異物を特定できないことがある。そのために、センサーコイルが指向性を有していないものが望まれている。
【0011】
また、2つのセンサーコイルを互いに所定の角度を有するように配置すると、異物の搬送方向に対して装置が大きくなるという欠点がある。また、センサーコイルは、細長い形状をしており、その長さを自由に変更することが難しかった。アルミ包材の製品は、その製造ラインから出荷され、複数個にまとめてパッケージされてから異物の検知をすることが多い。製品をアルミ包材で熱シールした部分が、重なってパッケージ化される。
【0012】
この重なった熱シール部分は、細長い形状になり、センサーコイルと直交すると、誤検知の原因になる。特許文献2において、2つのセンサーコイルは互いに所定の角度を有するように配置され、マグネットブースターはベルトコンベヤ上にその搬送方向と直交するように配置されている。一方のセンサーコイルが異物と平行しても他方は平行しないため異物を効率よく検知することができるという利点がある。
【0013】
しかしながら、2つのセンサーコイルを互いに所定の角度を有するように配置すると、各センサーコイルの一方の端の距離と、他方の端との距離とが違う。このため、マグネットブースターとセンサーコイルとの距離がその部分によって異なる。被検査物中の金属物は、マグネットブースターによって磁化されてから時間経過と共にその磁力が減少する。この金属物は、マグネットブースターを通過してからセンサーコイルに到達するまでには、マグネットブースターとセンサーコイルとの距離が異なるため、その磁力が異なり、誤検知の原因になっている。
【0014】
本発明は、以上のような技術背景で発明されたものであり、次のような目的を達成するものである。
本発明の目的は、異物の向きによるセンサーの指向性を無くした異物検知装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、異物が搬送される方向にコンパクトな構造で、自由に外形を変更できるセンサーを有する異物検知装置を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、被検査物を包装している金属製の包装材の折り目、重なり、熱シール部分を検知しない構造の異物検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の異物検知方法は、搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体異物を検知する異物検知方法において、前記センサーは、磁束を通すコアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルにより前記磁性体異物を検知することを特徴とする。
【0018】
本発明2の異物検知方法は、本発明1において、前記センサセルは、前記被検査物の流れ方向と直交する2列を形成するように配置されていることを特徴とする。
【0019】
本発明3の異物検知方法は、本発明2において、前記センサセルの前記導線は、同一の前記列同士が直列に接続されていることを特徴とする。
【0020】
本発明4の異物検知方法は、本発明1又は2において、前記コアは、前記コアの長手方向が前記搬送路の搬送方向に対して45度を有するように配置されていることを特徴とする。
【0021】
本発明5の異物検知方法は、本発明4において、前記2列の一方の列の前記センサセルと、前記2列の他方の列の前記センサセルとは、それぞれの前記コアの長手方向が互いに90度を成すように配置されることを特徴とする。
【0022】
本発明6の異物検知方法は、搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、前記磁性体物の長手方向と前記センサーの長手方向の配置角度によって前記センサーの検知感度が変動する検知指向性を低減するための異物検知方法であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置されたことを特徴とする。
【0023】
本発明7の異物検知方法は、搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、前記被検査物を包装した金属包装材の熱シール部分又は前記包装材の重なり部分は、細長い形状をし、この長手方向と前記センサーの長手方向とが直交して前記センサーがそれに大きく反応して誤検知するのを低減するための異物検知方法であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置されたことを特徴とする。
【0024】
本発明8の異物検知装置は、搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体異物を検知する異物検知装置において、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなることを特徴とする。
【0025】
本発明9の異物検知装置は、本発明8において、前記センサセルは、前記被検査物の流れ方向と直交する2列を形成するように配置されていることを特徴とする。
【0026】
本発明10の異物検知装置は、本発明9において、前記センサセルの前記導線は、同一の前記列同士が直列に接続されていることを特徴とする。
【0027】
本発明11の異物検知装置は、本発明7ないし9において、前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向に対して45度を有するように配置されることを特徴とする。
【0028】
本発明12の異物検知装置は、本発明9又は10において、前記2列の一方の列の前記センサセルと、前記2列の他方の列の前記センサセルとは、それぞれの前記コアの長手方向は互いに90度を成すように配置されることを特徴とする。
【0029】
本発明13の異物検知装置は、搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、前記磁性体物の長手方向軸と前記センサーの長手方向軸の配置によって前記センサーの検知感度が大きく変動する検知指向性を低減するための異物検知装置であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置されたことを特徴とする。
【0030】
本発明14の異物検知装置は、搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、
前記被検査物を包装した金属包装材の熱シール部分又は前記包装材の重なり部分は、細長い形状をし、その長手方向と前記センサーの長手方向と直交して前記センサーがそれに大きく反応して誤検知するのを低減するための異物検知装置であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明の異物検知装置は、2列の複数のセンサセルを有するセンサーユニットを用い、センサセルを搬送路の搬送方向に対して、例えば45度を有するように配置することで、異物の向きによる検知感度の指向性を無くし、被検査物に含有される異物の向きと関係なく検知できるようになった。
【0032】
本発明の異物検知装置は、複数のセンサセルを有する一組のセンサーユニットを用いているため被検査物が搬送される方向にコンパクトな構造になった。
【0033】
本発明の異物検知装置のセンサーユニットは、小型の複数のセンサセルを用いているため、従来のセンサーコイルのように細長い鉄心を用いることがなくなり、鉄心が軽量になった。
【0034】
本発明の異物検知装置は、センサセルを搬送路の搬送方向に対して、例えば45度を有するように配置することで、被検査物を包装している金属製の包装材の折り目、重なり、熱シール部分を検知しないようになった。
【0035】
本発明の異物検知装置は、複数のセンサセルを直列し、2列にして配置したことで、一つのセンサセルに発生した磁力線が隣り合うように配置されたセンサセルと直交し、その検知信号が強め合う相乗効果で高感度検知できるようになった。
【0036】
本発明の異物検知装置のセンサーユニットは、複数のセンサセルを用いているため、センサセルを用途に合わせて増減でき、センサーユニットの長さを自由に変更することができるようになった。
【0037】
本発明の異物検知装置は、複数のセンサセルを有するセンサーユニットを用いているため、従来のセンサーコイルより安価で提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明の実施の形態の異物検知装置1の概要を図示している。異物検知装置1は、被検査物中の金属物、特に食品を包む容器であるアルミニウム包装袋内の食品に混入した金属異物を検知、又は探知して通知するためのものである。異物検知装置1の構成の概略を説明する前に、本発明の金属異物の検知の原理の概略を説明する。
【0039】
(検知原理)
本発明の金属異物を検知するための検知回路を図14の(a)に図示している。可変周波数電源から電気エネルギーが整合トランスTsrを介して検知回路に給されている。検知回路は、センサーコイルを有するブリッジ回路を含む構成になっている。ここでは、センサーコイルとは、コアに導線を巻いた構造のコイルを意味する。例えば、断面構造がE形の鉄心の溝部に沿って導線を巻いた構造のものである。センサーコイルは、平衡または非平衡のブリッジ回路の一辺を担っている。センサーコイルは鉄心にコイルを巻いた構造である。
【0040】
この検知回路の一番重要な働きを担うものは、センサーコイルである。センサーコイルは可変周波数電源から供給された交流電流によって、交番磁界をコイル検知面の近傍に直接放射する役割と、微小金属片を有する被検査物がその交番磁界の磁場配位を乱した時の動揺磁場を検知し、異物検知信号としての出力を作り出す役目が共に備わっている。最後は、ブリッジ回路からの出力を増幅器で増幅して次段の回路へ出力している。
【0041】
可変周波数電源より周波数ωの電気エネルギーが、整合トランスTsrを介してブリッジ回路の可変ボリウムVR0の両端に供給される。ブリッジ回路は可変周波数電源から整合トランスTsrにより絶縁されている。可変ボリウムVR0の片方端にセンサーコイルの一端が接続され、センサーコイルの他端は接地されている。
【0042】
この検知回路は、図14(b)に示す等価回路として示すことが出来る。図14(b)に示されたコンデンサCは、センサーコイルが持つ浮遊容量であり、図14(a)では図示されていない。回路の調整等の都合上、センサーコイルに並列にコンデンサを外付けすることができる。図14(b)のインダクタンスLtsは、整合トランスTsrの自己インダクタンスと相互インダクタンスを2次側換算したインダクタンスである。
【0043】
図14(b)の等価回路は、可変周波数電源の機能構成により、図15(a)の定電流駆動回路、又は図15(b)の定電圧駆動回路と等価に考えることが出来る。図15(a)の定電流駆動回路は、トランジスタのコレクタ出力等から電気エネルギーを供給する可変周波数電源の場合(定電流源)、図15(b)の定電圧駆動回路は、OPアンプ等の低出力インピーダンス回路で本回路を駆動した場合(定電圧源)を想定している。
【0044】
インダクタンスLとコンデンサCの値は、センサーコイルの構造及び材質等で決まる一定値であり、可変抵抗VRの値を任意の値で固定して、可変周波数電源の周波数ωを変化させると、この回路はある周波数ω0で共振する。回路の共振特性の目安として良く使われる性能指数Q値(Quality factor value)を用いて説明することができる。
【0045】
(特性の計算)
共振周波数は式1で、LとCの比率で決まるインピーダンスZは式2で表される。例えば、VRが1kΩでZ=1kΩのとき、性能指数Q値はQ=1である。Q値が比較的小さな値のとき、必要とするQからVRの値を式3で算出できる。
【0046】

【0047】
図16の(a)のグラフ1は、VR1からVR6の順に抵抗値を大きくするようにVRを段階的に変化させ、各周波数に対してプロットした一例であり、縦軸はインピーダンスZを対数目盛で図示している。このグラフ1ではノーマライズ周波数4を共振周波数と想定している。グラフ1からは、抵抗VRの値を大きくしていくと共振特性が鋭くなっている。
【0048】
図16の(b)のグラフ2には、同様の位相特性を図示している。Q値が大きくなると、つまり、VRの値が大きくなると、周波数に対する位相変化が大きくなっている。本発明では、このグラフ1とグラフ2から分かるように、検知回路のQ値を大きく設定すると大きな位相偏移が生じる特性を利用している。インダクタンスLと浮遊容量Cはセンサーコイルの材質と特性から決まる一定値である。インダクタンスLは、整合トランスTsrの2次側換算インダクタンス、相互インダクタンスを含むものである。
【0049】
よって、供給電源の周波数と可変抵抗値VRを変化させることによって大きなQ値の値に設定することが可能である。実際は、被検査物中の金属異物のサイズ、供給電源の周波数、回路の他の素子、後段回路の特性や増幅器の特性等によりQ値を設定する。検知回路のブリッジ回路が非平衡の場合、検知回路は被検査金物中に金属異物がないときでも常に出力している状態になっている。この出力を、後段の回路で電源周波数の位相を反転して、取り除く。これは、差動アンプ等を用いて行われる。
【0050】
また、本発明では、センサーコイルに流れる電流を微少に設定している。つまり、図17に図示したように、センサーコイルを構成する鉄心のB−H特性のP1の領域である。この領域は、非線形であり、磁界H、磁束密度Bがともに微少である。この領域を使うことによって、被検査物中の金属異物が小さいときでも、良好な感度の検知が可能である。
【0051】
(微少磁界について)
一定の温度で、被検査物がコイル近辺を一定の通過速度で通過する場合を考える。このとき、センサーコイルの電流が変化する要因としては、被検査物の渦電流、透磁率、誘電率、そして、センサーコイルの近辺を通過する速度の大きさ等が代表的であり、その中で金属異物の透磁率が一番の影響を与えていると推定される。被検査物中の金属異物が高い透磁率を有する材料でできている場合、上記のような微少電流をセンサーコイルに供給しているときは、金属異物の透磁率がセンサーコイルの磁界変化に大きな影響を与えるためである。
【0052】
表1の金属物の比透磁率に示すように、金属でもその種類によって、比透磁率が大きく異なる。鉄、ステンレス、ニッケル、コバルト等の金属の比透磁率は、数百から数万になっている。また、アルミニウム等の比透磁率の小さい金属に渦電流が発生しない程度の微弱な磁界を与えると、アルミニウム等に包まれている比透磁率の大きい金属の反応が大きく、センサーコイル発生磁界に影響を与える程度になる。
【0053】
【表1】

【0054】
本発明では、センサーコイルに流れる電流の位相偏移を用いて金属異物を検知しているが、その代わりにセンサーコイルに印加されている電圧またはインピーダンスを測定して金属異物を検知することが可能である。以下は、センサーコイルに流れる電流を検知信号とする発明を説明する。
【0055】
また、本発明では、可変周波数電源から検知回路に供給される周波数を数百Hzから数十kHzまでのオーディオ領域を利用している。更に詳しくは、4.5kHz或いは7kHz付近の周波数の電源供給を行っている。このような低周波数を利用すると、センサーコイルから発生する交番磁界によって被検査物に含まれる金属物中に発生する渦電流が微少になり、この渦電流を起因として元の交番磁界への影響が殆ど無視できる程度に少なくなる。
【0056】
(位相偏移の考察)
ここで、位相偏移について説明をする。パッシブなアナログ回路の入出力にアクティブ回路が接続されている場合、信号伝送及びノイズ発生の観点から、定在波を定常的な現象として捉える必要がある。ドライバ側の低出力インピーダンスが、レシーバ側の高入力インピーダンス回路に接続されている場合を想定する。これは、ハイゲインのOPアンプ同士が、長い配線で接続をされている場合や、本実施の形態のブリッジ回路のように整合トランスTsrを介して絶縁された大きなインダクタンスを持つパッシブ回路が接続されているような場合に当る。
【0057】
レシーバ側に終端抵抗を入れて反射を無くせば信号は一定の速度で進み、測定点によって逐次位相がずれる。しかし、通常は回路素子同士の接続なので、終端とはならず、かつマッチング(完全整合)を取ることは必ずしも容易でないことから反射が起こる。反射によって信号が何回も往復することになるので共鳴が起って定在波が発生し信号がこの定在波の振幅で全体が大きく振動する。これは、振幅変調としてとらえる。
【0058】
このとき各部の信号は一斉に動き、各部の信号の位相は等しく波動としての進行は起こらない。これが定在波である。この共鳴が発生する条件は回路を引き回す信号に関わる信号線の長さが、信号の1/4波長のとき、或いは、その奇数倍の周波数である。その共鳴している本発明の検知部で言えば、磁界を作るための数kHzのセンサーコイル電圧(又は電流)がこの定在波(0.2Hz〜2Hz程度)で振幅変調されている。
【0059】
(異物検知装置1の構造)
次の、本発明の実施の形態の説明をする。図1は、本発明の実施の形態の異物検知装置1の概要を図示している。異物検知装置1は、被検査物中の金属物、特に食品を包む容器であるアルミニウム包装袋内の食品に混入した金属異物を検知、又は探知して通知するためのものである。異物検知装置1は、ベルトコンベヤ2、駆動用モータ4、センサー格納部6、信号処理ユニット13等から構成される。ベルトコンベヤ2は、脚つきのフレームに搭載されたベルトコンベアであり、被検査物14を一定速度で搬送するためのものである。
【0060】
ベルトコンベヤ2は、その一方に設けられた駆動用モータ4によってエンドレスのベルト3を回転駆動し、このベルト3の上に被検査物14を載せて搬送する。被検査物14が搬送される搬送路中、ベルト3の長さ方向中央付近にセンサー格納部6が配置されている。センサー格納部6には、被検査物14の金属異物を検知するための第1センサー8、第2センサー9、光センサー10等が内蔵されている。
【0061】
センサー格納部6は、被検査物14に含まれる金属異物を検知し検知信号を出力するためのものである。センサー格納部6から出力される検知信号は、信号処理ユニット13に送られる。信号処理ユニット13は、センサー格納部6からの信号を解析して、被検査物14中に金属異物があるか否かの判定を行い、その旨を通知(警告音、表示等)するものである。
【0062】
第1センサー8と第2センサー9は同一構造のものである(詳細な説明は後述する)。図1に示すように、信号処理ユニット13がベルトコンベヤ2に設けられた台の上に設置されている。信号処理ユニット13は、センサー格納部6からの信号を受け取り、処理できる環境であればどこに設置しても良い。
【0063】
光センサー10は、被検査物14の搬送方向で第1センサー8の上流側(被検査物14の投入側)に設置されており、被検査物14が搬送されて第1センサー8に入るタイミングを検知し、この検知を信号処理ユニット13へ送信するためのものである。光センサー10は被検査物14が第1センサー8に入るときのタイミングを検知できるものであれば、公知の如何なる形状・方式のものも使用可能である。
【0064】
駆動用モータ4は駆動されてベルト3を回転駆動させる。そのとき、被検査物14は、ベルト3の一方である搭載側に載せられ、他方の方へ搬送される。そして、光センサー10が被検査物14を検知し、第1センサー8へ被検査物14が入るタイミングを信号処理ユニット13に通知する。信号処理ユニット13は、光センサー10からの通知を受けて、被検査物14が第1センサー8と第2センサー9を通過する際の各センサーの信号を解析し、被検査物14に金属異物が含まれているか否かを特定する。
【0065】
被検査物14に金属異物が含まれている場合は、信号処理ユニット13はその旨の出力信号を出力する。この出力信号は、異物検知装置1に設けられている又は接続されている電動アーム等の他の装置(図示せず)へ送られ、金属異物を含む被検査物14を取り除く等の必要な処理が行われる。また、駆動されているベルト3の速度を把握するためには、駆動用モータ4の回転数等の信号を信号処理ユニット13が受信できる必要がある。
【0066】
センサー格納部6で金属異物を検知するとき、センサー格納部6の上流側にマグネットブースター5を配置して、金属異物を磁化する。マグネットブースター5は、被検査物14中の金属異物を磁化させるための補助磁化装置である。被検査物14がマグネットブースター5を通過すると、被検査物14中の磁性物の磁化が強くなるため、センサー格納部6での検知感度が向上する。
【0067】
マグネットブースター5は2対の磁石7から構成され、被検査物14がその間を通過できるようにベルト3の上下に配置されている。センサー格納部6は、第1センサー8と第2センサー9から構成されている。第1センサー8は、ベルト3を挟んで上下に配置されたペアのセンサーユニット11から構成され、同様に、第2センサー9は、ペアのセンサーユニット12から構成される。各センサーユニット11、12は、図2に示すように細長い箱形形状の形をし、基本的に同一のものであり、ベルト3の搬送方向と直交するようにベルト3の面と平行に配置固定されている。
【0068】
図2は、センサーユニット11、12の配置方法の概要を図示している。第1センサー8と第2センサー9は、ベルト3に沿って距離L離れて設置されている。第1センサー8と第2センサー9はベルト3の搬送方向に平行するように設けられている。第1センサー8のセンサーユニット11、第2センサー9のセンサーユニット12は、ベルト3上を流れている被検査物14が通過するためにベルト3の上に一定の隙間をあけて、またベルト3の上下に設置されている。
【0069】
第1センサー8の手前に設置されている光センサー10は、被検査物14が第1センサー8に入力されるタイミングを特定するのに必要である。第2センサー9に被検査物14が入力されるタイミングは、第1センサー8に入力されたタイム、距離L、そして、ベルト3の搬送速度をもって計算できる。ベルト3の搬送速度は、駆動用モータ4の回転速度から計算できる。なお、この計算の方法は、本発明の要旨でもなく、かつ周知の技術のためこの説明は省略する。
【0070】
各センサーユニット11、12は、複数のセンサセル17から構成される。各センサーユニット11、12を構成するセンサセル17は基本的に同一の構造のものである。図3には、センサセル17の構造を図示している。センサーユニット11、12は、実質的に同一構造である。センサセル17は、断面構造がE形である導電性材料の鉄心16の溝部に沿ってコイル15を巻き付けた構成である。鉄心16は珪素鋼板やアモルファス金属材等の板材を積層して構成される。
【0071】
センサーユニット11、12はこのように複数のセンサセル17から構成されると、センサセル17の数を変更してセンサーユニット11、12の形状、その大きさを自由に変更することができる。また、鉄心16、コイル15の材料と大きさの変更、コイル15の巻き数、巻き方を変更することで、好みの周波数特性のセンサーユニット11、12を得ることが可能である。
【0072】
センサーユニット11、12を構成するセンサセル17は、その大きさはほぼ正方形(図2の平面視のとき。)の場合は、ベルトコンベヤ3の搬送方向に対して、正方形の各辺の配置を45°に傾けて配置することが好ましい。これらのセンサセル17をすべて同じ向きにするのではなく、互いに隣接するセンサセル17との間の角度が90°の角度を形成するように配置するとよい。図2に示すように、結果として被検査物14の流れ方向と直交する方向に2列で、かつ等間隔(ベルト3上の搬送路の幅方向において。)のセンサセル17が形成される。このように配置すると、被検査物14の熱シール部分や、線材異物等の長手方向の軸がセンサセル17のコアの長手方向の軸に直交しないようになり、誤検知を防ぐことができる。
【0073】
センサセル17の形状が変われば、その配置の角度は異なることがあり、配置角度の最適値を実験結果を見ながら決めると良い。センサーユニット11、12はこのように複数のセンサセル17から構成されると、従来のセンサーコイルのように細長い鉄心が必要なくなり、センサーユニット11、12が軽量になる。
【0074】
図4には、センサセル17の接続を示す回路図である。一つのセンサーユニット11又はセンサーユニット12は、2列のセンサセル17から構成されている。これらのセンサセル17は、電気的に直列に接続されている。詳しくは、1つの列を構成するセンサセル17は、1つのセンサセル17のコイル15の巻き終わりを他のセンサセル17のコイル15の巻き始めに接続するように直列に接続している。最初のセンサセル17のコイル15の巻き初めと、最後のセンサセル17のコイル15の巻き終わりをリード線に接続している。リード線は、ブリッジ回路22(図5を参照)に接続され、複数のセンサセル17からなるセンサーユニット11、12はブリッジ回路22を構成する。
【0075】
センサーユニット11、12に数kHzの交流電源をかけると、各センサセル17に交番磁界が発生する。センサーユニット11、12の近傍にステンレスの微小破片が接近したとき、例えばオーステナイト系のステンレス(SUS304等)が、破断、潰れ、曲がり、欠け等の塑性変形により、マルテンサイト誘起変態を起こして弱い磁性をもった部分が静磁界の働きにより磁化し磁極を生じさせる。この磁極の変化が交番磁界へ影響を与え、これを検知回路で検知する。
【0076】
特に、センサーユニット11、12の極近傍でこの効果が大きく現れるので、センサーユニット11、12で微小破片を確実に検知することが可能である。強磁性体、例えば鉄、ニッケル、コバルトの混入物、及びこれらの合金、マルテンサイト系ステンレスについても同様で、検知感度が従来よりも著しく向上する。ペアのセンサーユニット11をブリッジ回路22の2辺にすると、一定の交流電圧を印加されているときはブリッジ回路22を流れる電流が変化なく、ブリッジ回路22の出力電流が一定である。磁性材料がセンサーユニット11、12の付近を通過するとき、交番磁界のフォームが乱れ、ブリッジ回路22の出力電流が変化する。
【0077】
この出力電流は、後段の信号処理用の回路23〜27(図5を参照)で信号処理され被検査物14中の異物として検知される。被検査物14は、ベルト3で搬送されてマグネットブースター5を通過する。そして、センサーユニット11、12を通過する。ベルト3の搬送速度は、所定の範囲で調整可能である。被検査物14はマグネットブースター5が発生する磁界を通過するとき、被検査物14中の金属異物が磁化される。
【0078】
図6には、センサセル17から発生した磁力線の概要を図示している。一つのセンサセル17から発生した磁力線は、それと隣り合うように配置された両センサセル17と直交する。即ち、あるセンサセル17から発生した磁力線は、一方のセンサセル17に流れる磁力線を含む第1面と、これと直交する他方のセンサセル17に流れる磁力線を含む第2面とは略直角を成す。各センサセル17は、電気的に直列に接続されているので、各センサセル17には同位相で励磁電流が流れ、各センサセル17の磁力線も同相で発生する。各センサセル17に発生している磁力線は、隣り合うセンサセル17の磁力線と直交する。このため、一つのセンサセル17に発生した異物信号による磁力線は、次々に互いに隣り合うセンサセル17と直交し信号を強め合う相乗効果で高感度検知ができる。
【0079】
図2に図示するように、複数のセンサセル17を2列にし、ベルト3の搬送方向に対して45度を有するように配置することで、被検査物14に含有される異物の向きと関係なく検知できる。包装材で被検査物14を密封するときには、高熱によって包装材を融着することが多く、これによって熱シール部分ができる。この熱シール部分は、細長い形状をすることがほとんどで、かつ、搬送方向に対して直角又は平行して搬送されることが多い。
【0080】
そのため、センサセル17を搬送方向に対して45度を有するように配置することで、この熱シール部分を検知しなくなる。また、被検査物14の包装材ごとに折って重なることによる、折り目、重なり部分も熱シール部分と同様に、搬送方向に対して直角又は平行して搬送されることが多く、その部分を検知しなくなる。
【0081】
〔信号処理ユニット13の構成〕
図5は、信号処理ユニット13の概要を示す機能ブロック図である。信号処理ユニット13は、発振回路21、ブリッジ回路22、アルミ信号消去回路23、増幅/位相変換回路24、増幅/位相反転回路25、波形処理部26、デジタルコンピュータ処理部27、信号出力部28等から構成されている。
【0082】
発振回路21は、信号処理ユニット13、センサーユニット11、12への交流電力を供給するための回路である。発振回路21は、トランスを介して交流電力の供給を行う。トランスを用いることによって、電源回路と、センサーユニット11、12、ブリッジ回路22を含む測定部分が独立の回路と見なせる利点がある。ブリッジ回路22は、センサーユニット11,12からの信号を受信する回路である。
【0083】
ブリッジ回路22からの信号はアルミ信号消去回路23に送られ、このアルミ信号消去回路23により、これに含まれる導電材料であるアルミ包装体からの信号を消却する。このときの信号処理は、増幅/位相反転回路25の信号を用いて次のように行われる。増幅/位相反転回路25は、発振回路21の電流から取り出して増幅し、位相反転させる。
【0084】
アルミ信号消去回路23は、ブリッジ回路22からの信号(検知電流)と、増幅/位相反転回路25からの位相反転電流との和をとり、交流電源の信号(元の電流)を消去する。そして、一定のしきい値以上の信号だけを取り出して、雑音信号を消却する。
【0085】
次に、アルミ信号消去回路23から出力される信号を増幅/位相変換回路24で増幅して、位相変換調整処理を行って波形処理部26へ出力する。波形処理部26では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、かつ受信感度の調整を行って、デジタルコンピュータ処理部27へ出力する。なお、アルミ信号消去回路23で設けているしきい値処理は、波形処理部26の中で行っても良い。このときは、ディジタル信号に変換された信号のしきい値処理となる。
【0086】
デジタルコンピュータ処理部27は、メモリ回路、演算回路、振幅比較/信号抽出回路、ベルト速度タイミング回路等から構成されている。デジタルコンピュータ処理部27は、駆動用モータ4からモータの回転速度の情報を受取り、ベルト3の流れる速度を計算する。また、デジタルコンピュータ処理部27は、光センサー10から被検査物14の信号を受け取り、被検査物14がセンサーユニット11、12を通過する情報を得る。
【0087】
よって、デジタルコンピュータ処理部27は、波形処理部26からのディジタル信号を受信し、上記のベルト速度、被検査物14の通過信号等と合わせて、被検査物14中に含まれる金属異物を検知する。デジタルコンピュータ処理部27では、金属異物が検知されたと判断された場合は、信号出力部28に金属異物の信号を出力する。
【0088】
図7は、デジタルコンピュータ処理部27が金属異物を検知するときのフローチャートである。デジタルコンピュータ処理部27では、常に金属異物の判定が光センサー10のセンシング信号により、判定が行われる。デジタルコンピュータ処理部27は、一定時間の間待機し経過したら(ステップ1)、光センサー10からの信号があるか否かを確認する(ステップ2)。被検査物14が、光センサー10を通過する際に(図2を参照)、被検査物14が通過中の信号を信号処理ユニット13へ出力する。この信号をデジタルコンピュータ処理部27が受信する。
【0089】
被検査物14が通過中の判定が出ると(ステップ2、はい)、駆動用モータ4の回転速度を受信する(ステップ3)。この回転速度を用いて、ベルト3の搬送速度を計算する(ステップ4)。その後、波形処理部26からの第1センサ8のディジタル信号を受信し(ステップ5)、メモリ領域に格納する(ステップ6)。そして、同様に、第2センサー9のディジタル信号を受信し(ステップ7)、メモリ領域に格納する(ステップ8)。
【0090】
メモリ領域に格納されている、第1センサ8と第2センサー9のディジタル信号を比較計算し(ステップ9)、被検査物14中に異物あるか否かを判定する(ステップ10)。判定の結果、異物が無いと判断された場合は(ステップ10、いいえ)、所定時間の間待機する(ステップ1)。判定の結果、異物ありと判断された場合は(ステップ10、はい)は、その旨の信号を出力する(ステップ11)。よって、一連の金属異物の判定がなされる。
【0091】
(検知回路の説明)
図8は、検知回路100を図示している。上述の発振回路21、ブリッジ回路22、センサーユニット11、12を合わせて検知回路100として説明をする。図8の検知回路100は、1対のセンサーユニット11は、ブリッジ回路101とブリッジ回路102である。センサーユニット11を構成するセンサセル17を等価的にL1とL2で示している。センサーユニット12についても、同様の検知回路100がある。以後は、センサーユニット11だけを例にとって説明する。
【0092】
センサーユニット11はブリッジ回路101、102の一辺を担っている。センサーユニット11は供給された交流電流によって、交番磁界をコイル検知面の近傍に直接放射し、微小金属片を有する被検査物14がその交番磁場の配位を乱した時の動揺磁場を検知して、異物検知信号としての出力を作り出す。
【0093】
検知回路100はブリッジ回路101、102を有しており、センサーユニット11は、非平衡ブリッジ回路101、102の1辺(アーム)を担っている。このブリッジ回路101、102に、可変周波数電源103より周波数ωの電気エネルギーを、整合トランス108を介して供給している。センサーユニット11を含むブリッジ回路101、102が可変周波数電源103から整合トランス108により絶縁されている。
【0094】
検知回路100は、図示するように、直列又は並列に接続されている複数の抵抗R1〜R6からなっている。抵抗の片方端にセンサーユニット11からのリード線の一本を接続し、センサーユニット11からのリード線の他方の一本は接地している。通常のとき非検知時は、センサーユニット11はバランスが取れており(図9参照)、出力104から信号が出力されない。被検査物14中に含まれる金属異物が2つのセンサーユニット11の間を通過する際に、この状態が変更されて、出力104から出力信号を出力する。
【0095】
または、検知回路100を設定するときに、非検知時でも出力104から出力されるように設定しても良い。この場合は、ブリッジ回路101、102が非平衡になる。図9には、センサーユニット11を含むブリッジ回路101、102の周波数の特性を図示している。横軸は、周波数を示す周波数軸で、縦軸は、波の強度を示す軸である。センサーユニット11は、同一のインダクタから構成されているが、製造上の精度誤差等を受けて、まったく同一の周波数で動作することは少ない。
【0096】
そして検知回路100の設定は前述の原理で説明した通り、7kHz付近の低周波数の電源を供給し、供給電源の周波数と抵抗値(R1〜R6)の値を変更させることで高いQ値を得るように設定する。センサーユニット11の中心周波数をそれぞれω01、ω02とすると、Δω(=|ω01−ω02|)だけ離れていることになる。図9は、センサーユニット11の特性をグラフ105、106で示しており、その和はグラフ107になっている。グラフ107の中心周波数はω0となっている。
【0097】
センサーユニット11の周辺を金属異物が通過していないときは、検知回路100はω0の状態にある。そして、センサーユニット11の周辺を金属異物が通過すると、金属異物はセンサーユニット11の磁界に影響を与え、センサーユニット11の周波数ω01、ω02が変わり、検知回路100全体の中心周波数ω0も変化する。よって、検知信号が検知回路100の出力104から出力される。
【0098】
このように、2つの回路を利用すると、センサーユニット11の磁界の微少な変化に対応して中心周波数ω0の中心周波数が変動し、高感度で金属異物を検知できる。なお、検知回路100は、1つのセンサーユニット11だけを有し金属異物を検知しても良い。
【0099】
図5に示したデジタルコンピュータ処理部27では、フーリエ変換等の手法を利用してディジタル信号を構成する周波数・波形の解析を行って、これらの周波数・波形が起因するものを特定して金属異物を検知しても良い。このためには、予め準備されたその周波数・波形についての解析データが必要である。
【0100】
また、デジタルコンピュータ処理部27では、アルミ信号消去回路23で行われている交流電源(交流励磁電源)の信号の消去を同様に行ってもかまわない。アルミ信号消去回路23に入力された信号が、ディジタル信号に変換されてデジタルコンピュータ処理部27に入力される。そして、このディジタル信号を周波数毎に分波して、交流電源、雑音等に起因する信号を消去する。被検査物14からの雑音信号も同様に周波数・波形を解析で消去してもかまわない。
【0101】
図10〜13は、信号処理ユニット13の回路構成を図示している。ここで取り扱う回路の信号は、アナログ回路で処理している。ブリッジ回路22から出力される信号をディジタル化して、それ以後は上記のアルミ信号消去、位相変換・波形整形、感度調整等を全て、又は一部をディジタル的にコンピュータ処理しても良い。
【0102】
以下、回路の重要な部分の概要のみを説明する。図10には、交流電源109とセンサー回路110及び位相反転回路111を図示している。交流電源109は、図5に示す発振回路21である。同様に、センサー回路110はセンサーユニット11、12とブリッジ回路22を合わせた回路で、位相反転回路111は増幅/位相反転回路25である(図5を参照)。
【0103】
図11には、差動アンプ回路112、波形整形回路113を図示している。差動アンプ回路112はアルミ信号消去回路23と増幅/位相変換回路24で、波形整形回路113は波形処理部26である(図5を参照)。センサー回路110は、被検査物14からの信号を受信するセンサー回路であり、その信号は出力「1」へと出力され、図11の「1」から差動アンプ回路112に入力される。
【0104】
図10に示している位相変換回路111は、交流電源109からの信号を取り出して位相を調整して「2」から出力している。これは、図11の「2」であり、差動アンプ回路112に入力される。差動アンプ回路112は、受信された信号、つまりセンサー回路110が出力する信号の中から交流電源109による信号を取り除くための回路である。差動アンプ回路112からは被検査物14による信号だけが取り出され、回路113によって波形整形されて出力される。
【0105】
図12および図13は、被検査物14の信号を解析するための回路であり、アナログ処理を行っている。この部分は、ディジタル化されてコンピュータ処理されてもかまわない。図12には、整流回路114、アンプ回路115、整流回路116、アンプ回路117、直流電源カット回路118、波形処理回路119が図示されている。図13には、感度調整回路120、波形閾値回路121、アンプ回路121が図示されている。
【0106】
整流回路114、116は信号を整流し、波形を整えるための回路である。アンプ回路115、117、122は、信号増幅するための回路である。直流電源カット回路118は、信号に含まれる直流信号をカットするための回路である。波形処理回路119は、被検査物14の信号の波形を形成するための回路である。感度調整回路120は、被検査物14の検知感度を調整するための回路である。この回路の抵抗の値を変化させることによって検知感度を設定できる。波形閾値回路121は出力信号のレベルを調整するための回路である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、冷凍食食品、穀物等の食品素材、医薬品、塗料等の工業用材料等の被検査物に混入した磁性体金属異物を検知する分野に利用可能である。特に、アルミニウム蒸着、又はアルミニウム箔等の導電性の包装材料で包まれた被検査物中に混入した磁性体の金属異物を検知する分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の異物検知装置1の概要を図示した図である。
【図2】図2は、センサーユニット11、12の構成例を示す図である。
【図3】図3は、センサセル17の構造を図示した図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のA−A線の断面図、図3(c)は図3(a)のB−B線の断面図である。
【図4】図4は、センサセル17の接続を示す回路図である。
【図5】図5は、異物検知装置1の信号処理ユニット13の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図6は、センサセル17から発生する磁力線の概要を図示した図である。
【図7】図7は、信号処理ユニット13のデジタルコンピュータ処理部27の動作例を示すフローチャートである。
【図8】図10は、センサーユニット11を含む検知回路100の概要を図示している。
【図9】図9は、検知回路100の周波数の特性を示す図である。
【図10】図10は、回路例を図示している回路図である。
【図11】図11は、回路例を図示している回路図である。
【図12】図12は、回路例を図示している回路図である。
【図13】図13は、回路例を図示している回路図である。
【図14】図14(a)、(b)は、検知回路100を示すものであり、図14(a)は検知回路の概要であり、図14(b)はその等価回路を示す図である。
【図15】図15(a)、(b)は、図14(b)の等価回路を簡略化した回路を示す図面である。
【図16】図16(a)、(b)は、図14の回路の特性を示すグラフである。
【図17】図17は、B−H特性を示す図である。
【図18】図18は、センサーコイルの検知感度の指向性を示した概念図である。
【符号の説明】
【0109】
1…異物検知装置
2…ベルトコンベヤ
3…ベルト
4…駆動用モータ
5…マグネットブースター
6…センサー格納部
7…永久磁石
8…第1センサー
9…第2センサー
10…光センサー
11、12…センサーユニット
13…信号処理ユニット
14…被検査物
17…センサセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体異物を検知する異物検知方法において、
前記センサーは、磁束を通すコアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルにより前記磁性体異物を検知する
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項2】
請求項1の異物検知方法において、
前記センサセルは、前記被検査物の流れ方向と直交する2列を形成するように配置されている
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項3】
請求項2の異物検知方法において、
前記センサセルの前記導線は、同一の前記列同士が直列に接続されている
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項4】
請求項1又は2の異物検知方法において、
前記コアは、前記コアの長手方向が前記搬送路の搬送方向に対して45度を有するように配置されている
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項5】
請求項4の異物検知方法において、
前記2列の一方の列の前記センサセルと、前記2列の他方の列の前記センサセルとは、それぞれの前記コアの長手方向が互いに90度を成すように配置される
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項6】
搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、
前記磁性体物の長手方向と前記センサーの長手方向の配置角度によって前記センサーの検知感度が変動する検知指向性を低減するための異物検知方法であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置された
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項7】
搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、
前記被検査物を包装した金属包装材の熱シール部分又は前記包装材の重なり部分は、細長い形状をし、この長手方向と前記センサーの長手方向とが直交して前記センサーがそれに大きく反応して誤検知するのを低減するための異物検知方法であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置された
ことを特徴とする異物検知方法。
【請求項8】
搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体異物を検知する異物検知装置において、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなる
ことを特徴とする異物検知装置。
【請求項9】
請求項8の異物検知装置において、
前記センサセルは、前記被検査物の流れ方向と直交する2列を形成するように配置されている
ことを特徴とする異物検知装置。
【請求項10】
請求項9の異物検知装置において、
前記センサセルの前記導線は、同一の前記列同士が直列に接続されている
ことを特徴とする異物検知装置。
【請求項11】
請求項7ないし9から選択される1項に記載の異物検知装置において、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向に対して45度を有するように配置される
ことを特徴とする異物検知装置。
【請求項12】
請求項9又は10の異物検知装置において、
前記2列の一方の列の前記センサセルと、前記2列の他方の列の前記センサセルとは、それぞれの前記コアの長手方向は互いに90度を成すように配置される
ことを特徴とする異物検知装置。
【請求項13】
搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、
前記磁性体物の長手方向軸と前記センサーの長手方向軸の配置によって前記センサーの検知感度が大きく変動する検知指向性を低減するための異物検知装置であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置された
ことを特徴とする異物検知装置。
【請求項14】
搬送路によって被検査物を搬送し、前記搬送路の途中に配置され、かつ、交番磁界を発生するセンサーによって前記被検査物に混入した磁性体物を検知するとき、
前記被検査物を包装した金属包装材の熱シール部分又は前記包装材の重なり部分は、細長い形状をし、その長手方向と前記センサーの長手方向と直交して前記センサーがそれに大きく反応して誤検知するのを低減するための異物検知装置であって、
前記センサーは、コアに導線を巻いたセンサセルであり、かつ前記導線が電気的に直列に接続された複数の前記センサセルからなり、
前記コアの長手方向は、前記搬送路の搬送方向(z軸)に対して45度を有するように配置された
ことを特徴とする異物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−329963(P2006−329963A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158074(P2005−158074)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(599058866)トック・エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】