説明

異物発生試験方法および異物発生試験装置

【課題】インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、これを貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を、オフラインで簡単に試験することができる異物発生試験方法等を提供する。
【解決手段】インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド13aに導入される機能液と、機能液を貯留するタンク21との相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法であって、超音波発生手段22を用い、タンク21に貯留した機能液に対し、超音波発生手段22により超音波振動を与えて異物の発生を促進する異物発生加速工程S1を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、これを貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法および異物発生試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク(機能液)を貯留したインク供給容器(タンク)からインク供給チューブを介して機能液が供給される機能液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置において、機能液に含まれる導電性微粒子等の異物を除去する方法(異物除去方法)が知られている(特許文献1参照)。この機能液滴吐出ヘッドは、機能液の導入口となるインク導入針と、インク導入針内に配設されたフィルターと、フィルターを介して液滴吐出ヘッド内にインクを導入するインク導入路と、機能液に振動を与える圧電振動子を有するアクチュエータユニットと、を備えている。この液滴吐出ヘッドでは、アクチュエータユニットを用いて、機能液に対して高周波微振動を印加することで、機能液の攪拌およびキャビテーション効果により、フィルターに機能液内に含まれる導電性微粒子が付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−230012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タンク内に貯留した機能液は、タンク内の上部空間の空気(酸素や水分)に触れたり、タンクとの擦動することにより、時間の経過とともに、導電性微粒子が異物として析出する場合がある。従来の異物除去方法では、フィルターの目詰まりを一時的に防止することはできるものの、生じた異物は定期的に除去しなければならない。係る場合には、液滴吐出装置の動作を全て停止し、異物除去のための作業を行わなければならないため、生産効率が著しく低下するという問題があった。
このような問題を防止するためには、機能液を機能液滴吐出ヘッドに導入(供給)する前に、使用する機能液を検査し、異物が発生せず安全に使用可能な期間を予め求めておくことが非常に重要となる。
【0005】
本発明は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、これを貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を、オフラインで簡単に試験することができる異物発生試験方法および異物発生試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異物発生試験方法は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法であって、超音波発生手段を用い、タンクに貯留した機能液に対し、超音波発生手段により超音波振動を与えて異物の発生を促進する異物発生加速工程を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の異物発生試験装置は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験装置であって、機能液を貯留するタンクと、タンク内の機能液に超音波振動を与える超音波発生手段と、超音波発生手段の駆動を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
異物の発生の仕組みは、機能液がタンク中の空気中の水分を含み、機能液の顔料が、タンクの内壁に付着し、硬化したものが剥がれて異物化すると考えられている。
これらの構成によれば、超音波振動により、タンク内の機能液が波立ち、攪拌されて、機能液とタンク内の空気との接触、およびタンク内面との接触が促進される。このため、機能液内における異物の発生を促進することができる。すなわち、異物の発生を加速させた状態で、機能液の異物発生試験を行うことができる。また、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する前のオフライン状態で、機能液内での異物発生の状況を評価することができる。これにより、機能液とこれを貯留するタンクとの相互作用による異物の発生の有無を、比較的短い時間で且つ簡単に確認することができる。
【0009】
この場合、異物発生加速工程は、タンクの内面から所定の間隙を存して配設された超音波発生手段を用いて行われることが好ましい。
【0010】
この場合、超音波発生手段の振動発生部は、タンクの内面から所定の間隙を有して配設されていることが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、機能液とタンクの内壁とが擦動する面積が大きくなるため、異物発生をより加速(促進)させることができる。これにより、より短時間での機能液の異物発生率(異物発生の状況)を評価することができる。
【0012】
また、この場合、異物発生加速工程では、タンクの内の機能液に対し、任意の1の方向であるX軸方向、これに直交するY軸方向およびX軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向のうち少なくとも1の方向から、超音波振動を与えることが好ましい。
【0013】
また、この場合、超音波発生手段は、タンクの内の機能液に対し、任意の1の方向であるX軸方向、これに直交するY軸方向およびX軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向のうち少なくとも1の方向から、超音波振動を与えることができるように配設されていることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、一または複数の任意の方向から機能液に振動を与えることができるため、様々な試験環境を作り出すことができる。これにより、短期間で異物発生率を見定めたい場合や、実際に機能液滴吐出ヘッドから吐出させる時と同様の環境(実機搭載時の環境)での異物発生率を見定めたい場合等、目的に応じた異物発生試験を行うことができる。
【0015】
この場合、異物発生加速工程は、機能液に対し、所定の時間だけ超音波振動を付与する振動付与工程と、機能液に対し、所定の時間だけ超音波振動の付与を停止する振動停止工程と、を交互に繰り返すことが好ましい。
【0016】
この場合、制御手段は、タンク内の機能液に間欠的に超音波振動を与えるように超音波発生手段を制御することが好ましい。
【0017】
これらの構成によれば、超音波発生手段を駆動している時には、短波長の超音波振動が与えられ、超音波発生手段を停止している時には、超音波振動時の惰性により、ゆったり(長波長)と振動する。これにより、機能液に対し、様々な振動が与えられ、異物発生をより促進させることができる。
【0018】
また、この場合、異物発生加速工程は、タンクに貯留した機能液を所定の温度に昇温した状態で実施されることが好ましい。
【0019】
また、この場合、タンクに貯留した機能液を所定の温度に昇温する機能液昇温手段を、更に備え、制御手段は、タンク内の機能液を所定の温度に昇温した状態で、超音波発生手段の駆動することが好ましい。
【0020】
これらの構成によれば、機能液の種類によっては、一定以上(常温以上)の温度にすることで、異物の発生を更に促進させることができる。これにより、短時間で異物発生の有無を試験することができる。
【0021】
この場合、タンクは、金属製であり、タンクの内面と機能液とが接触する面積が、タンクの内面の総面積の10%以上であることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、機能液とタンクとの擦動面積を一定以上維持するため、有効な機能液の異物化促進を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液滴吐出装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る異物発生試験装置を模式的に示した斜視図である。
【図3】異物発生試験方法の手順を示したフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る異物発生試験装置を模式的に示した斜視図である。
【図5】第3実施形態に係る異物発生試験装置を模式的に示した斜視図(a)および平面図(b)である。
【図6】第4実施形態に係る異物発生試験装置を模式的に示した斜視図(a)および平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る異物発生試験方法およびこれを実施するため異物発生試験装置について説明する。この異物発生試験は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速(促進)させて試験するものである。
異物発生試験方法(装置)の説明に先立ち、検査対象である機能液が使用される液滴吐出装置について簡単に説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれ、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0025】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル11と、X軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース12a上に配設され、Y軸方向に延在するY軸テーブル12と、Y軸テーブル12に移動自在に吊設され、複数の機能液滴吐出ヘッド13aが搭載された複数のキャリッジユニット13と、機能液滴吐出ヘッド13aに機能液を供給する機能液供給ユニット14と、を備えている。この液滴吐出装置1は、制御装置15の指示により、X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド13aから機能液を吐出させて、ワークWに所定のパターンを描画する。
【0026】
機能液供給ユニット14は、機能液の供給源となる複数のメインタンク14aと、各キャリッジユニット13に対応して設けた複数のサブタンク14bと、各サブタンク14bを介してメインタンク14aと各機能液滴吐出ヘッド13aとを接続する機能液流路14cと、を備えている。各サブタンク14bは、一対のY軸支持ベース12aに掛け渡されたブリッジプレート12b上に配設されており、対応するキャリッジユニット13と共に移動する。そして、各キャリッジユニット13に搭載された各機能液滴吐出ヘッド13aには、各サブタンク14bから自然水頭を利用し、機能液流路14cを通じて機能液が供給されるようになっている。
【0027】
このような、液滴吐出装置1では、機能液滴吐出ヘッド13aへの機能液の供給は、サブタンク14bから自然水頭を利用しているため、サブタンク14b内における機能液は、空気(或いは窒素)に触れると共に、その量は増減を繰り返すこととなる。また、サブタンク14bはY軸テーブル12に搭載され、キャリッジユニット13と共に移動を繰り返す。このため、サブタンク14b内に貯留している機能液は、攪拌され、機能液とこれを貯留するサブタンク14bとの相互作用により異物が発生しやすい環境といえる。この異物が、機能液滴吐出ヘッド13aに流入すると、機能液滴吐出ヘッド13a内の流路やノズルに詰り、吐出不良が生じ、ワークWへの描画品質に影響を及ぼす。この場合、異物除去すべく液滴吐出装置1の動作が全て停止されるため、生産効率が著しく低下する。
そこで、異物発生試験装置2を用いて、液滴吐出装置1に機能液を導入する前の状態(オフライン状態)で、サブタンク14b内に貯留した機能液の異物発生の状況を加速させて試験を行う。
【0028】
(第1実施形態)
図2を参照して、異物発生試験装置2について説明する。異物発生試験装置2は、機能液を貯留するタンク21と、タンク21内の機能液に超音波振動を与える超音波発生手段22と、タンク21内の機能液を所定の温度に昇温させる機能液昇温手段23と、超音波発生手段22の動作を制御するためのPC等から構成された制御手段24と、を備えている。
【0029】
タンク21は、サブタンク14bと同一(または同等)のものであり、ステンレス等の金属材料で、薄型直方体形状に形成されている。また、タンク21の上面は開放されており(蓋体を取り外した状態)、そこからタンク21内に機能液を注入できるようになっている。このようにタンク21の上面は開放されているため、タンク21内の機能液と空気(大気)とが直接接触し、機能液内に異物が発生しやすくなっている。なお、開放式のタンク21に限らず、蓋付の密閉式タンクを用いてもよい。また、以下の説明のために、直交座標軸を図2に示すように規定した。
【0030】
超音波発生手段22は、超音波の発生源となる超音波発信器31と、タンク21内に配設される振動板32と、超音波発信器31と振動板32とを電気的に接続する専用ケーブル33と、を備えた、いわゆるセパレート型のものである。この超音波発生手段22は、超音波発信器31からの超音波信号が、専用ケーブル33を介して振動板32に伝えられ、振動板32が超音波振動する。そして、タンク21内の機能液には、振動板32を介して超音波振動を与えられる。これにより、タンク21内の機能液が波立ち、攪拌されて、機能液と空気との接触の機会が増加し、機能液内における異物の発生を促進させることができる。すなわち、異物の発生を加速させた状態で、機能液の異物発生試験を行うことができる。なお、振動板32と超音波発信器31とがユニット化された一体型の超音波発生手段22を用いてもよい。また、本実施形態の超音波発生手段22(超音波発信器31)は、30kHz程度の周波数の超音波を発生するが、発生する超音波の周波数は、これに限定されるものではない。
【0031】
振動板32は、タンク21内において超音波振動を与えたい方向に応じて任意の位置に配設してよいが、本実施形態における振動板32は、タンク21のY軸方向略中央において、X軸方向に沿って、且つZ軸方向全域に渡って配設されている。つまり、タンク21内をY軸方向に2つに仕切るように、振動板32を配設している。このため、機能液には、振動板32の両面を介して、Y軸方向中央から外側に向かって超音波振動が与えられる。これにより、Y軸方向に2つに分離された機能液に対して、効率良く超音波振動を与えることができると共に、機能液とタンク21の内壁とが擦動する面積を広く(大きく)確保することができるため、異物発生をより加速(促進)させることができる。これにより、機能液とタンク21との相互作用による異物発生の有無や異物発生率(異物発生の状況)を、短時間で且つ簡単に確認、評価することができる。なお、振動板32を、タンク21のX軸方向略中央において、Y軸方向に沿って配設してもよい。
【0032】
機能液昇温手段23は、タンク21内に貯留した機能液を所定の温度に昇温させるためのヒーター41を備えたチャンバー42で構成されている。チャンバー42は、異物発生試験を行うために必要なタンク21や超音波発生手段22等の機材を配置する試験室であり、異物発生試験を行う環境を、ヒーター41により所定の温度に昇温することで、タンク21内の機能液の温度を昇温する。これにより、機能液内の異物発生を更に促進させることができる。これは、一定以上の温度にすることで異物が発生しやすくなる種類の機能液に対して特に有効である。なお、本実施形態では、異物発生試験を行うための環境温度(機能液の試験温度)を、機能液の物性に影響を与えない40℃以下となるように調整している。
【0033】
また、チャンバー42内には、機能液を貯留したタンク21(および振動板32)が配設されていればよく、超音波発生手段22の超音波発信器31をチャンバー42の外部に配設してもかまわない。また、制御手段24は、ユーザーが操作することを考慮するとチャンバー42の外部に配設されることが好ましい。他にも、チャンバー42を省略して、ヒーター41(フィルムヒーター等)を、タンク21の外側から囲むように配設してもよい。もちろん、防水処理したプレートヒーターを、機能液に浸漬する構成であってもよい。いずれにあって、機能液の温度は、センサーによりヒーター41をON−OFFしながら一定に管理させることとなる。
【0034】
続いて、図2および図3を参照して、異物発生試験装置2の制御手段24による制御方法(異物発生試験方法)について説明する。この異物発生試験方法は、タンク21に貯留した機能液に対し、超音波発生手段22により超音波振動を与えて異物の発生を促進する異物発生加速工程S1を備えている。
【0035】
ユーザーは、異物発生加速工程S1に先立ち、試験に供する機能液をタンク21に注入する。この際、超音波振動を付与したときに機能液がタンク21の外に溢れ出すことを防止するため、タンク21の最大貯留量(容量)の10〜80%程度に留める。また、タンク21の内面と機能液とが接触する面積が、タンク21の内面の総面積の10%以上になるようにする。これにより、機能液とタンク21との擦動面積を一定以上維持することができるため、機能液の異物化促進を有効に行える。なお、密閉式タンクを用いた場合でも、最大貯留量を80%以下にしているため、タンク21内の上部には、空間(空気層)が形成される。このため、超音波振動の付与により、機能液と空気とが攪拌され、機能液の異物化を有効に加速することができる。
【0036】
次に、ユーザーは、機能液を貯留したタンク21をチャンバー42内に設置する。その後、ユーザーの指示により制御手段24は、異物発生加速工程S1を実施する。異物発生加速工程S1は、タンク21内の機能液の温度を昇温させる昇温工程S2と、機能液に対し、所定の時間だけ超音波振動を付与する振動付与工程S3と、機能液に対し、所定の時間だけ超音波振動の付与を停止する振動停止工程S4と、を有している。
【0037】
昇温工程S2では、チャンバー42内の温度を所定の温度(40℃程度)にするため、制御手段24がヒーター41を駆動する。ヒーター41を駆動して、しばらく経過するとタンク21内の機能液の温度もチャンバー42内の温度と略同一となる(タンク21内のセンサーで検出する。)。
【0038】
次に、制御手段24は、超音波発生手段22の駆動を制御し、振動付与工程S3と振動停止工程S4とを交互に繰り返すことで、タンク21内の機能液に対し、間欠的(断続的)に超音波振動を与える。本実施形態では、振動付与工程S3および振動停止工程S4を、7日間に渡り実施する。このような駆動制御をすることで、超音波発生手段22を駆動している時には、短波長の振動が与えられ、超音波発生手段22を停止している時には、超音波振動時の惰性により、ゆったり(長波長)と振動する。これにより、機能液に対し、様々な振動が与えられ、異物発生をより促進させることができる。なお、超音波振動を付与する時間および停止する時間の長さは任意であり、また、振動付与工程S3および振動停止工程S4を実施する期間も任意に設定してよい。さらに、振動停止工程S4を省略して、機能液に対して超音波振動を与え続けてもよい。
【0039】
以上の構成によれば、超音波振動により、機能液と空気との接触、および機能液とタンク21の内面との接触の機会を増加させ、機能液内における異物の発生を加速させた状態で異物発生試験を行うことができる。また、機能液滴吐出ヘッド13aに機能液を供給する前のオフライン状態で、機能液内での異物発生の状況を評価することができる。これにより、機能液とこれを貯留するタンク21との相互作用による異物の発生の有無を、短い時間で且つ簡単に確認可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態に係る異物発生試験装置2では、超音波発生手段22の振動板32が、タンク21の下部に配設されている。このため、超音波振動は、下方から上方へと伝わることとなる。このような構成によっても、第1実施形態に係る異物発生試験装置2と同様の効果が得られる。なお、第2実施形態と第1実施形態とを併せた形態としてもよい。
【0041】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態に係る異物発生試験装置2では、タンク21の内側面21a(4面)に沿うように、複数(4枚)の振動板32が配設されている。この各振動板32は、複数の支柱部材21bを介してタンク21の各内側面21aに取り付けられている。すなわち、各振動板32は、各内側面21aに対し、所定の間隙を有して取り付けられている。この場合、4枚の振動板32から同時に超音波振動を発生させると、四方から中心に向けて超音波振動が伝わることとなる。
【0042】
このような構成によれば、一または複数の任意の方向から機能液に対して、超音波振動を与えることができるため、様々な試験環境を作り出すことができる。また、各振動板32を各内側面21aに沿うように配設しても、機能液と各内側面21aとの接触面積を広く確保することができるため、機能液と各内側面21aとが擦動する面積も大きくなり、異物発生をより加速(促進)させることができる。これにより、短期間で異物発生率を見定めたい場合や、実際に機能液滴吐出ヘッド13aから吐出させる時と同様の環境(実機搭載時の環境)での異物発生率を見定めたい場合等、目的に応じた異物発生試験を行うことができる。なお、第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態を相互に併せた形態としてもよい。
【0043】
(第4実施形態)
図6に示すように、第4実施形態に係る異物発生試験装置2では、Z軸方向から見て、四隅に4枚の振動板32が、複数の支柱部材21bを介して配設されている。各振動板32は、タンク21のY軸方向の長さの略半分程度の幅であり、Z軸方向に細長い形状を為している。一方の対角の位置にある一対の振動板32は、X軸方向に超音波振動を発生するように配設され、他方の対角の位置にある一対の振動板32は、Y軸方向に超音波振動を発生するように配設されている。この場合、4枚の振動板32から同時に超音波振動を発生させると、超音波振動は、タンク21の各内側面21aに沿って進み、やがてヨー方向に回転するように伝わる。このような構成によっても、第1実施形態に係る異物発生試験装置2と同様の効果が得られる。なお、各振動板32の配設位置や角度を変更して、ロール方向やピッチ方向に超音波振動が伝わるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
2:異物発生試験装置、13a:機能液滴吐出ヘッド、21:タンク、22:超音波発生手段、23:機能液昇温手段、24:制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、前記機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験方法であって、
超音波発生手段を用い、
前記タンクに貯留した前記機能液に対し、前記超音波発生手段により超音波振動を与えて異物の発生を促進する異物発生加速工程を備えたことを特徴とする異物発生試験方法。
【請求項2】
前記異物発生加速工程は、
前記タンクの内面から所定の間隙を存して配設された前記超音波発生手段を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の異物発生試験方法。
【請求項3】
前記異物発生加速工程では、前記タンクの内の前記機能液に対し、任意の1の方向であるX軸方向、これに直交するY軸方向およびX軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向のうち少なくとも1の方向から、超音波振動を与えることを特徴とする請求項1または2に記載の異物発生試験方法。
【請求項4】
前記異物発生加速工程は、
前記機能液に対し、所定の時間だけ超音波振動を付与する振動付与工程と、
前記機能液に対し、所定の時間だけ超音波振動の付与を停止する振動停止工程と、を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の異物発生試験方法。
【請求項5】
前記異物発生加速工程は、前記タンクに貯留した前記機能液を所定の温度に昇温した状態で実施されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の異物発生試験方法。
【請求項6】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに導入される機能液と、前記機能液を貯留するタンクとの相互作用により発生する異物の発生状況を加速試験する異物発生試験装置であって、
前記機能液を貯留するタンクと、
前記タンク内の前記機能液に超音波振動を与える超音波発生手段と、
前記超音波発生手段の駆動を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする異物発生試験装置。
【請求項7】
前記超音波発生手段の振動発生部は、前記タンクの内面から所定の間隙を有して配設されていることを特徴とする請求項6に記載の異物発生試験装置。
【請求項8】
前記超音波発生手段は、前記タンクの内の前記機能液に対し、任意の1の方向であるX軸方向、これに直交するY軸方向およびX軸方向とY軸方向とに直交するZ軸方向のうち少なくとも1の方向から、超音波振動を与えることができるように配設されていることを特徴とする請求項6または7に記載の異物発生試験装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記タンク内の前記機能液に間欠的に超音波振動を与えるように前記超音波発生手段を制御することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の異物発生試験装置。
【請求項10】
前記タンクに貯留した前記機能液を所定の温度に昇温する機能液昇温手段を更に備え、
前記制御手段は、前記タンク内の前記機能液を所定の温度に昇温した状態で、前記超音波発生手段の駆動することを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の異物発生試験装置。
【請求項11】
前記タンクは、金属製であり、
前記タンクの内面と前記機能液とが接触する面積が、前記タンクの内面の総面積の10%以上であることを特徴とする請求項6ないし10のいずれかに記載の異物発生試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−104506(P2011−104506A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261530(P2009−261530)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】