説明

異物除去方法、および当該方法を用いた光学フィルムの製造方法

【課題】簡単な装置によって熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させ得るとともに、フィルターの濾過精度を十分に上げ得る異物除去方法、および当該方法を用いた光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】イミド化アクリル系樹脂を含む溶融した状態の樹脂混合物をフィルターに通して、樹脂混合物中に含まれる異物を除去する異物除去方法であって、樹脂混合物には、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの成分が含有され、当該成分は、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応の過程で生じる副生成物、またはイミド化反応の未反応物である。樹脂混合物には、100重量部のイミド化アクリル系樹脂に対して、5重量部以上の成分が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂混合物をフィルターによって濾過することにより、当該樹脂混合物中に含まれる異物を除去するための異物除去方法、および当該方法を用いた光学フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を用いてフィルムを製造する場合、フィルムの原材料である熱可塑性樹脂中には様々な異物が混入している。このとき、異物が混入したままの熱可塑性樹脂を用いてフィルムを製造すれば、最終産物であるフィルムの特性が劣化する。そこで、従来から、フィルターを用いて溶融された状態の熱可塑性樹脂から異物を除去した後、当該熱可塑性樹脂を用いてフィルムを作製している。
【0003】
近年、フィルムの特性に対する要求が厳しくなりつつあり、より濾過精度の高いフィルター(換言すれば、より細かなメッシュ状のフィルター等)を用いて異物を除去する試みがなされている。しかしながら、濾過精度の高いフィルターを用いて溶融粘度の高い熱可塑性樹脂を濾過しようとすれば、フィルターに対して高い圧力を加えることが必要になり、その結果、フィルターが破損したり、濾過に必要な時間が長くなる等の問題が発生する。そこで、現在、熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させた後、当該熱可塑性樹脂をフィルターによって濾過する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、上記特許文献1には、押出機を用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が記載されている。上記製造方法では、溶融した熱可塑性樹脂に対して押出機を用いて振動を加えることにより、当該熱可塑性樹脂の溶融粘度を下げている。そして、当該熱可塑性樹脂をフィルターにかけることによって、フィルターの圧力損失を低減させている。
【特許文献1】特開平11−254501号公報(平成11年9月21日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の異物除去方法を用いれば、大規模な装置を必要とするという問題点を有している。
【0006】
具体的には、上記特許文献1に記載の技術では、熱可塑性樹脂に対して振動を加えるための振動発生装置を必要とするという問題点を有している。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の技術では、他の工程に悪影響を及ぼさないようにするために、上記振動発生装置によって発生する振動が他の装置に伝わることを防止するための別の装置を必要とするという問題点を有している。例えば、上記熱可塑性樹脂を用いて膜厚が均一なフィルムを製造しようとすれば、上記振動発生装置によって発生する振動が他の装置(例えば、フィルムを延伸するためのロール等)に伝わらないようにするための別の装置(例えば、振動制御装置)を必要とするという問題点を有している。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、簡単な装置によって熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させ得るとともに、フィルターの濾過精度を十分に上げ得る異物除去方法、および当該方法を用いた光学フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、最終生産物(例えば光学フィルムなど)の特性を害すると考えられて従来技術においては積極的に除去されてきた成分を、あえて熱可塑性樹脂(例えば、イミド化アクリル系樹脂)中に残すことによって、熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させることが可能であることを見出すとともに、当該熱可塑性樹脂であれば、容易に濾過精度の高いフィルターによって濾過できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の異物除去方法は、上記課題を解決するために、イミド化アクリル系樹脂を含む溶融した状態の樹脂混合物をフィルターに通して、上記樹脂混合物中に含まれる異物を除去する異物除去方法であって、上記樹脂混合物には、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの成分が含有され、上記樹脂混合物には、100重量部の上記イミド化アクリル系樹脂に対して、5重量部以上の上記成分が含まれ、上記イミド化アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって形成されるものであり、上記成分は、上記イミド化反応の過程で生じる副生成物、または上記イミド化反応の未反応物であることを特徴としている。
【0011】
本発明の異物除去方法では、上記アクリル系樹脂は、下記一般式(2)にて示される構造単位、または、下記一般式(2)にて示される構造単位および下記一般式(3)にて示される構造単位、つまり、
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0014】
【化2】

【0015】
(但し、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
を有することが好ましい。
【0016】
本発明の異物除去方法では、上記イミド化反応後の上記樹脂混合物は、外部から隔離された状態で、上記フィルターまで輸送されることが好ましい。
【0017】
本発明の異物除去方法では、上記フィルターは、ファイバータイプのエレメントを有するステンレス製のリーフディスクフィルターであることが好ましい。
【0018】
本発明の異物除去方法では、上記フィルターの温度は、270℃以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の異物除去方法では、上記フィルターの濾過精度は、5μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の光学フィルムの製造方法は、上記課題を解決するために、上記異物除去方法の何れかによって異物が除去された樹脂混合物を原材料に用いることを特徴としている。
【0021】
本発明の光学フィルムの製造方法は、上記異物が除去された樹脂混合物とエステル化剤とを反応させるエステル化工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の異物除去方法は、イミド化アクリル系樹脂を含む溶融した状態の樹脂混合物をフィルターに通して、上記樹脂混合物中に含まれる異物を除去する異物除去方法であって、上記樹脂混合物には、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの成分が含有され、上記樹脂混合物には、100重量部の前記イミド化アクリル系樹脂に対して、5重量部以上の上記成分が含まれ、上記イミド化アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって形成されるものであり、上記成分は、上記イミド化反応の過程で生じる副生成物、または上記イミド化反応の未反応物である方法である。
【0023】
それゆえ、樹脂混合物の溶融粘度を低下させることができるので、熱可塑性樹脂を低い溶融温度で濾過精度の高いフィルターによって濾過することができる。その結果、熱可塑性樹脂を劣化させることなく、当該熱可塑性樹脂中に含まれる異物を除去することができるという効果を奏する。そして、その結果、最終生産物(例えば、光学フィルム)の特性を低下させることを防止することができるという効果を奏する。
【0024】
また、熱可塑性樹脂の流速を落とす必要、または、フィルターの濾過面積を増加させる必要がないので、フィルター濾過に必要とする時間を短くすることができるという効果を奏する。そして、その結果、最終生産物(例えば、光学フィルム)の特性を低下させることを防止することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の光学フィルムの製造方法は、本発明の異物除去方法によって異物が除去された樹脂混合物を原材料に用いる方法である。
【0026】
それゆえ、優れた特性を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔1.異物除去方法〕
本実施の形態の異物除去方法は、イミド化アクリル系樹脂を含む溶融した状態の樹脂混合物をフィルターに通すことによって、上記樹脂混合物中に含まれる異物を除去するための方法である。上記樹脂混合物にはイミド化アクリル系樹脂以外の成分(例えば、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、またはトリメチルアミン)が含まれており、当該成分の作用によって樹脂混合物の溶融粘度が低下する。そして、溶融粘度が低下した樹脂混合物は、フィルター温度が低い条件下でも、濾過精度の高いフィルターを用いて濾過され得る。以下に、本実施の形態の異物除去方法について説明する。
【0028】
上述したように、上記樹脂混合物には、イミド化アクリル系樹脂とそれ以外の成分とが含まれている。
【0029】
上記イミド化アクリル系樹脂としては、特に限定されず、適宜公知のイミド化アクリル系樹脂を用いることができる。なお、上記イミド化アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって製造することが可能である。上記イミド化反応を行うための方法は特に限定されず、適宜公知の方法に基づいて行うことができる。
【0030】
以下に、まず、イミド化アクリル系樹脂を製造する場合の原料であるアクリル系樹脂とイミド化剤とについて説明する。
【0031】
上記イミド化アクリル系樹脂を製造するための原材料の一つであるアクリル系樹脂は特に限定されないが、下記一般式(2)にて示される構造単位、または、下記一般式(2)にて示される構造単位および下記一般式(3)にて示される構造単位、を有するアクリル系樹脂であることが好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
(但し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す)
【0034】
【化4】

【0035】
(但し、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す)。
【0036】
なお、一般式(2)において、Rは水素原子であることが好ましく、Rはメチル基であることが好ましく、Rはメチル基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Rは水素であることが好ましく、Rはフェニル基であることが好ましい。
【0037】
更に具体的には、一般式(2)にて示される構造単位を有するアクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル重合体に代表される(メタ)アクリル酸エステル重合体等を挙げることができるが、これに限定されない。また、一般式(2)にて示される構造単位および一般式(3)にて示される構造単位を有するアクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体に代表される(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を挙げることができるが、これに限定されない。
【0038】
また、上記アクリル系樹脂(例えば、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体など)は、イミド化反応が可能な構造を有するものであればよく、その具体的な構造は特に限定されない。例えば、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、または架橋ポリマーであり得る。上記アクリル系樹脂がブロックポリマーである場合は、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、またはこれら以外タイプのブロックポリマーであり得る。また、上記アクリル系樹脂がコアシェルポリマーである場合は、一層のコアと一層のシェルとからのみなるものであり得、または、上記コアおよびシェルのそれぞれが、多層であり得る。
【0039】
また、上記アクリル系樹脂をイミド化するためのイミド化剤としては特に限定されず、適宜公知のイミド化剤を用いることが可能である。上記イミド化剤は、アミン類であることが好ましい。イミド化剤としてアミン類を用いれば、イミド化反応の過程で、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンを生成することが可能になる。その結果、上記樹脂混合物中に、これら副成分を個々に添加する工程を省略することが可能になる。なお、この点については、後述することにする。
【0040】
更に具体的には、上記イミド化剤は、メチルアミン、モノメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有アミン、またはアンモニア等であることが好ましい。また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱によって上記アミンを発生する尿素系化合物を用いる事も可能である。なお、上述したイミド化剤の中では、モノメチルアミンが最も好ましい。
【0041】
イミド化反応によってイミド化アクリル系樹脂を製造する際には、例えば、先ずアクリル系樹脂(例えば、メチルメタクリレート−スチレン共重合体に代表される(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、またはメタクリル酸メチル重合体に代表される(メタ)アクリル酸エステル重合体など)を重合し、その後で、当該アクリル系樹脂をイミド化することも可能である。
【0042】
次いで、上記アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって製造されるイミド化アクリル系樹脂について説明する。
【0043】
上述したように、上記イミド化アクリル系樹脂は、上記アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって製造され得る。そしてこのとき、上記アクリル系樹脂およびイミド化剤の種類または量を適宜設定することによって、様々な構造を有するイミド化アクリル系樹脂を製造することができる。上記イミド化アクリル系樹脂の構造としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)にて示される構造単位と一般式(2)にて示される構造単位とを有するもの、または下記一般式(1)にて示される構造単位と一般式(2)にて示される構造単位と一般式(3)にて示される構造単位とを有するものであることが好ましい。
【0044】
【化5】

【0045】
(但し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である)。
【0046】
上記イミド化アクリル系樹脂においては、RおよびRが水素またはメチル基であるとともに、Rが水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましい。また、上記イミド化アクリル系樹脂においては、Rがメチル基であるとともに、Rが水素であり、Rがメチル基であることが、特に好ましい。
【0047】
また、上記イミド化アクリル系樹脂は、一般式(1)〜一般式(3)にて示される各構造単位が同一のものからなるイミド化アクリル系樹脂であってもよく、各構造単位が異なるものからなるイミド化アクリル系樹脂であってもよい。
【0048】
上記イミド化アクリル系樹脂中の、一般式(1)にて示される構造単位(グルタルイミド単位)の含有量は、例えばRの構造にも依存するが、イミド化アクリル系樹脂の20重量%以上であることが好ましい。更に具体的には、一般式(1)にて示される構造単位の含有量は、イミド化アクリル系樹脂の20重量%〜95重量%であることが好ましく、40重量%〜90重量%であることが更に好ましく、50重量%〜80重量%であることが最も好ましい。一般式(1)にて示される構造単位の割合が上記範囲よりも小さい場合には、得られる最終産物(例えば、光学フィルムなど)の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれる場合がある。一方、一般式(1)にて示される構造単位の割合が上記範囲よりも大きい場合には、不必要に最終産物の耐熱性および溶融粘度が上がり、その結果、成形加工性が悪くなる。また、得られる最終産物の機械的強度が極端に脆くなるとともに、透明性が損なわれる場合がある。
【0049】
上記イミド化アクリル系樹脂中の、一般式(3)にて示される構造単位(芳香族ビニル単位)の含有量は、イミド化アクリル系樹脂の1重量%以上であることが好ましい。更に具体的には、一般式(3)にて示される構造単位の含有量は、1重量%〜40重量%であることが好ましく、1重量%〜30重量%であることが更に好ましく、1重量%〜25重量%であることが最も好ましい。一般式(3)にて示される構造単位の割合が上記範囲よりも大きい場合には、得られる最終産物(例えば、光学フィルムなど)の耐熱性が不足する。一方、一般式(3)にて示される構造単位の割合が上記範囲よりも小さい場合には、得られる最終産物の熱安定性が悪くなる場合がある。
【0050】
イミド化アクリル系樹脂の主原料である、一般式(2)にて示される構造単位、一般式(3)にて示される構造単位、および副原料であるイミド化剤の割合を調整することによって、一般式(1)にて示される構造単位、一般式(2)にて示される構造単位、および/または一般式(3)にて示される構造単位とを任意の割合で含有するイミド化アクリル系樹脂を得ることができる。そして、そのようにして製造されたイミド化アクリル系樹脂は、使用目的に応じた所望の物性を有することが可能になる。
【0051】
例えば、本発明のイミド化アクリル系樹脂を、先ずメチルメタクリレート−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を重合した後にイミド化して製造する場合、例えば(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルの重合割合を調整することによって一般式(3)にて示される構造単位の割合を決め(一般式(3)にて示される構造単位の割合を0とする事も可能)、更にイミド化反応に用いるイミド化剤の添加割合を調整することによって、一般式(1)および一般式(2)にて示される構造単位の割合を調整することができる。
【0052】
次いで、上記樹脂混合物中に含有されるイミド化アクリル系樹脂以外の成分(副成分)について説明する。
【0053】
本実施の形態の異物除去方法では、上記樹脂混合物中にイミド化アクリル系樹脂以外の副成分が含まれている。
【0054】
上記副成分は、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの成分であることが好ましい。上記構成によれば、樹脂混合物の溶融粘度を低下させることができるので、濾過精度の高いフィルターを用いて上記樹脂混合物を濾過することが容易になる。
【0055】
上記樹脂混合物中に副成分を含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば、上記副成分を上記樹脂混合物に個別に添加する方法、または、上記アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によってイミド化アクリル系樹脂を製造する過程で生じる副生成物または未反応物を、上記樹脂混合物中にあえて残す方法と、を挙げることが可能である。
【0056】
副成分を樹脂混合物に個別に添加する方法としては特に限定されず、フィルターにかけられる前の樹脂混合物中に上記含有成分を添加できる方法であればよい。
【0057】
樹脂混合物中に副成分を含有させる方法としては、上記イミド化アクリル系樹脂をイミド化反応によって製造する過程で生じる副生成物または未反応物を、上記樹脂混合物中にあえて残す方法を用いることが好ましい。当該構成によれば、工程を複雑にすることなく、しかも簡便な装置を用いて、上記樹脂混合物中に副成分を含有させることが可能になる。なお、当該方法は、例えば、アクリル系樹脂のイミド化反応に用いるイミド化剤を適切に選択することによって実現することが可能であり、これについて、以下に説明する。
【0058】
上述したように、本実施の形態の異物除去方法では、イミド化アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって製造され得る。
【0059】
アクリル系樹脂(例えば、スチレン共重合体アクリル樹脂)をアミンによってイミド化すれば、副生成物として少なくともメタノールおよび水が生成する。また、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いれば、イミド化反応の過程において、少なくともメタノール、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンが生成する。
【0060】
したがって、アミンをイミド化剤として用いれば、イミド化反応の過程において少なくともメタノールを生成する。換言すれば、アミンをイミド化剤として用いれば、少なくともメタノールを上記樹脂混合物中に含有させることができる。また、モノメチルアミンをイミド化剤として用いれば、イミド化反応の過程においてメタノール、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンを生成するとともに、未反応のモノメチルアミンが樹脂混合物中に残留する。換言すれば、モノメチルアミンをイミド化剤として用いれば、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの成分を上記樹脂混合物に含有させることができる。
【0061】
上記樹脂混合物中におけるイミド化アクリル系樹脂と上記副成分との含有比は、100重量部のイミド化アクリル系樹脂に対して、5重量部以上の副成分が含まれていればよい。また、100重量部のイミド化アクリル系樹脂に対して、30重量部以上の副成分が含まれていることが好ましい。上記構成であれば、樹脂混合物の溶融粘度を低下させることができるので、低温でありかつ濾過精度の高いフィルターを用いて、上記樹脂混合物を濾過することができる。
【0062】
また、100重量部のイミド化アクリル系樹脂に対する副成分の含有比の上限は特に限定されないが、例えば、100重量部のイミド化アクリル系樹脂に対して、125重量部以下の副成分が含まれていることが好ましい。副成分の含有比を上げようとすれば、例えば、イミド化アクリル系樹脂を製造する際に用いるイミド化剤の量を多くする必要がある。しかしながら、イミド化剤の量を多くし過ぎれば、例えば押出機内の反応系が不安定になり、その結果、イミド化アクリル系樹脂および最終産物の生産性を低下させる。それ故、100重量部のイミド化アクリル系樹脂に対して、125重量部以下の副成分が含まれていることが好ましい。
【0063】
本実施の形態の異物除去方法では、少なくとも上記樹脂混合物をフィルターにかけるまでは、樹脂混合物中に上記副成分(例えば、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、またはトリメチルアミン)が含有されている必要がある。
【0064】
そこで、本実施の形態の異物除去方法では、イミド化反応後の樹脂混合物(イミド化アクリル系樹脂と副成分とを含む)は、外部から隔離された状態で、フィルターまで輸送されることが好ましい。換言すれば、イミド化反応後の樹脂混合物は、外部から隔離された閉鎖系の経路によってフィルターまで輸送されることが好ましい。なお、本明細書において「外部から隔離された状態」とは、上記樹脂混合物中に含有される上記含有成分が、当該樹脂混合物から揮発して失われることを防ぐことができる程度に密閉された状態が意図される。また、本明細書において「外部から隔離された閉鎖系の経路」とは、上記樹脂混合物中に含有される上記含有成分が、当該樹脂混合物から揮発して失われることを防ぐことができる程度に密閉された経路が意図される。
【0065】
外部から隔離された状態で、上記樹脂混合物をフィルターまで輸送する方法としては特に限定されない。例えば、押出機を用いてアクリル系樹脂を加熱溶融するとともに、当該溶融樹脂とイミド化剤とを反応させる反応押出法においては、当該押出機にベント口が設けないとともに、当該押出機内の押出経路上にフィルターを設ければ、外部から隔離された状態で、上記樹脂混合物をフィルターまで輸送することが可能になる。
【0066】
従来技術では、押出機にベント口を設けることによって、積極的に上記含有成分を除去していた。一方、本実施の形態の異物除去方法では、あえてベント口を設けないことによって、樹脂混合物中に上記含有成分を残すことが可能になる。そして、これによって、樹脂混合物の溶融粘度を低下させることができる。
【0067】
なお押出機を用いる場合には、当該押出機の具体的な構成は特に限定されない。例えば、上記押出機として、単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等各種押出機を用いることが可能である。上記押出機の中では、特に、混錬/分散能力が高い点において各種二軸押出機が好ましく、混錬/分散能力、生産性が高い点において同方向噛合型二軸押出機が更に好ましい。
【0068】
本実施の形態の異物除去方法は、上記樹脂混合物中に含有される異物を、フィルターによって除去する。
【0069】
上記フィルターの設置場所としては特に限定されず、上記樹脂混合物の輸送経路上にあればよい。例えば、上記フィルターの設置場所としては押出機の吐出口に設けられることが好ましい。
【0070】
また、例えば、第1反応(例えば、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応)を行うことができる第1押出機と第2反応(例えば、イミド化アクリル系樹脂のエステル化反応)を行うことができる第2押出機とを直列に配置したタンデム型反応押出機を用いて各種フィルムを製造する場合には、上記第1押出機の吐出口と上記第2押出機の原料供給口との間にフィルターが設けられることが好ましい。なお、上記フィルターの上流には樹脂混合物を昇圧するために、ギヤポンプが設置されていることが好ましい。
【0071】
上記フィルターとしては特に限定されず、適宜公知のフィルターを用いることが可能である。
【0072】
例えば、上記フィルターは、リーフディスクフィルターであることが好ましい。さらに具体的には、上記リーフディスクフィルターは、ファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプのフィルターエレメントを有していることが好ましい。
【0073】
また、上記フィルターの材質は特に限定されないが、例えば、ステンレスであることが好ましい。上記構成であれば、樹脂混合物を必要最低限の高温状態に維持することができるので、樹脂混合物を熱変性させることなく、濾過精度の高いフィルターを用いて濾過することができる。
【0074】
また、上記フィルターの温度は特に限定されず、上記樹脂混合物中に含有されるイミド化アクリル系樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、上記フィルターの温度は、270℃以下に設定されていることが好ましく、260℃以下に設定されていることが更に好ましい。上記構成であれば、樹脂混合物の溶融粘度を十分に低下させることができるので、濾過精度の高いフィルターを用いて上記樹脂混合物を濾過することができる。更に、上記構成であれば、樹脂混合物に対して不必要に熱を加えることを防止することができるので、上記樹脂混合物および当該樹脂混合物を用いて作製される各種産物(例えば、光学フィルム等)が変色することを防止することができるとともに、これらの中に熱変性したイミド化アクリル系樹脂が混入することを防止することができる。
【0075】
また、本実施の形態の異物除去方法に用いるフィルターの濾過精度は特に限定されず、適宜公知の濾過精度を有するフィルターを用いることができる。つまり、本実施の形態の異物除去方法であれば、樹脂混合物の溶融粘度を十分に低下させることができるので、濾過精度の高いフィルターを用いることが可能になる。例えば、上記フィルターの濾過精度は、5μm以下であることが好ましく、3μ以下であることが更に好ましい。上記構成であれば、樹脂混合物中に含まれる小さな異物をも確実に除去することができる。
【0076】
〔2.光学フィルムの製造方法〕
本実施の形態の光学フィルムの製造方法は、本願発明の異物除去方法によって異物が除去された樹脂混合物を原材料に用いて光学フィルムを製造する方法である。
【0077】
上記構成によれば、原材料である樹脂混合物は熱変性されることなく、しかもサイズの小さな異物まで確実に除去されているので、特性の優れた光学フィルムを作製することができる。
【0078】
なお、本実施の形態の光学フィルムの製造方法の特徴点の1つは、イミド化アクリル系樹脂を含む樹脂混合物から異物を除去する工程であって、当該工程については既に説明した。また、本実施の形態の光学フィルムの製造方法において、イミド化アクリル系樹脂から光学フィルムを製造する工程については特に限定されず、適宜公知の工程を用いることが可能である。
【0079】
例えば、本実施の形態の光学フィルム製造方法は、異物が除去された樹脂混合物とエステル化剤とを反応させるエステル化工程を有することが好ましい。つまり、上記エステル化工程では、異物が除去されたイミド化アクリル系樹脂とエステル化剤とが反応する。上記構成によれば、所望の特性を有する光学フィルムを作製することができる。
【0080】
上記エステル化工程を行う方法は特に限定されない。例えば、第1反応(例えば、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応)を内部で行うことができる第1押出機と第2反応(例えば、イミド化アクリル系樹脂のエステル化反応)を内部で行うことができる第2押出機とを直列に配置したタンデム型反応押出機を用いて、上記エステル化工程を行うことも可能である。上記構成によれば、イミド化反応とエステル化反応とを連続して行うことができるので、特性の優れた光学フィルムを製造することができる。なお、当該構成では、第1押出機における樹脂混合物の吐出口と第2押出機における原料供給口との間に、上記樹脂混合物中に含有される異物を除去するためのフィルターが設けられることが好ましい。また、当該構成では、上記樹脂混合物を第1押出機から上記フィルターまで輸送する経路は、当該経路の内部が外部から隔離された状態であることが好ましい。つまり、上記樹脂混合物を第1押出機から上記フィルターまで輸送する経路には、ベント口などが設けられないことが好ましい。
【0081】
一方、第2押出機の原料供給口よりも下流側には、ベント口が設けられることが好ましい。上記構成によれば、樹脂混合物をフィルターにかける工程は既に終了している。したがって、各反応(イミド化反応およびエステル化反応)において生じた未反応物および副生成物を除去することによって、生産物である光学フィルムの特性を更に上昇させることができる。また、このとき第2押出機内では、上記樹脂混合物に対して加熱処理を行うことが好ましい。なお、加熱温度としては特に限定されないが、150℃〜400℃であることが好ましく、180℃〜320℃であることがより好ましく、200℃〜280℃であることが最も好ましい。上記構成によれば、上記未反応物および副生成物が揮発しやすいので、当該未反応物および副生成物をより確実に除去することができる。
【0082】
上記エステル化剤としては特に限定されず、適宜公知のエステル化剤を用いることができる。例えば、上記エステル化剤は、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、またはベンジルグリシジルエーテル等であることが好ましい。
【0083】
上記エステル化工程におけるエステル化剤の添加量は特に限定されず、光学フィルムに付与する特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、100重量部の樹脂混合物に対して、1〜100重量部のエステル化剤を添加することが好ましい。
【0084】
また、上記エステル化工程において、エステル化反応を促進させるための触媒を用いることも可能である。上記触媒は、例えば、塩基触媒(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、酸触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸、テトラブチルチタネート、マンガンテトラアセテート)、およびルイス触媒であることが好ましい。これらのうちで塩基触媒が好ましく、より好ましくは例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミンといった三級アミンであり、さらに好ましくはトリエチルアミンである。
【0085】
また、上記エステル化工程では、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤などの添加剤を添加することも可能である。
【実施例】
【0086】
〔測定サンプル〕
二段目の押出機より吐出されたフィルムサンプルのストランドを冷却浴槽に通した後、ペレタイザーでカッティングしてペレットを作製し、当該ペレットを各種測定に用いた。なお、測定用のペレットは、押出条件を満足してから5時間経過後に採取したものを用いた。
【0087】
〔サンプルの着色の判定〕
各サンプルを500ccの瓶に入れ、目視にて着色を観察した。
【0088】
〔イミド化率の算出〕
最終産物であるペレット1gを塩化メチレン約5ccに溶解した後、FT−IR測定装置の検出部に当該溶液を加え、溶媒を飛ばしてから赤外スペクトル(IR)を測定した。
【0089】
得られた赤外スペクトルにおけるエステルカルボニル基(ピークA)に帰属される吸収強度と、イミドカルボニル基(ピークB)に帰属される吸収強度とに基づいて、下記式(1)からイミド化率を求めた。なお、各ピークの高さは、各々のベース線からの高さとした。
イミド化率=ビークAの高さ/(ピークAの高さ+ピークBの高さ)×100[%]
・・・・・・・・式(1)
〔異物数の算出〕
濾過水によって表面に付着した異物を除去した最終産物のペレットを500g秤量し、当該ペレットを、0.5ミクロンのフィルターによって濾過された塩化メチレン10000gに溶かした。
【0090】
1ミクロンのフィルターによって上記溶液を全量濾過した。その後、当該フィルターを乾燥させて、トラップされた異物を顕微鏡で観察して当該異物のサイズと個数とを求めた。
【0091】
〔分子量低下率〕
最終産物であるペレット5mgをクロロホルム2mLに溶解し、50μmフィルターによって濾過したものを用いた。
【0092】
RI検出器としては、RID−10A(島津製作所製)を使用し、UV検出器としては、SPD−10−Avp(島津製作所製)を使用した。GPCカラムとしては、2本のShodex、K−806Mを使用し、溶離液としては、クロロホルムを使用した。また、検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した。なお、実施例1の分子量を基準にして、下記の式(2)に基づいて分子量低下率を求めた。
分子量低下率=各サンプル/実施例1の分子量×100[%]・・・・・・式(2)
〔ガスクロマトグラフィー分析〕
2段目のベント口より高真空下で除去されたガスを凝縮させたものをサンプリングし、GC/MSでその組成比を測定した。
【0093】
装置としては、GCにAgilent Technologies製のGC−6890を、MSにThermo electron製のMD800を用いた。また、キャリアガスはヘリウム、カラムはポーラスポリマー系カラムを用いた。
【0094】
〔実施例1〕
図1に、実施例および比較例で用いた押出機の基本的な構成を示す。なお、比較例に用いた押出機では、1段目の押出機に、ベント口を設けた(図示せず)。当該押出機の更に詳細な構成に関しては、以下の説明で明らかになるであろう。
【0095】
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0096】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口が設けられなかった。
【0097】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0098】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0099】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0100】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0101】
フィルター6としては、公称濾過精度5μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0102】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0103】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルターの差圧が4MPaになるように調整した際のフィルター6および配管2の設定温度は、250℃であった。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して15重量部とした。
【0104】
結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に示すように、イミド化率は、56%〜58%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計31.4重量部(水1.9重量部、メタノール16.0重量部、モノメチルアミン0.6重量部、ジメチルアミン5.0重量部、トリメチルアミン7.9重量部)であった。なお、スチレン、メチルメタクリレート低分子量物、イミド樹脂低分子量物は、検出されなかった。
【0107】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が2個、20μm以上のサイズの異物が8個であった。
【0108】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下は観察されず、着色に関しても、目視上は観察されなかった。
【0109】
〔実施例2〕
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0110】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口が設けられなかった。
【0111】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0112】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0113】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0114】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0115】
フィルター6としては、公称濾過精度5μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0116】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0117】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルターの差圧が4MPaになるように調整した際のフィルター6および配管2の設定温度は、240℃であった。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して40重量部とした。
【0118】
表1に示すように、イミド化率は、71%〜72%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計66.7重量部(水7.0重量部、メタノール19.1重量部、モノメチルアミン25.6重量部、ジメチルアミン8.1重量部、トリメチルアミン6.9重量部)であった。なお、スチレン、メチルメタクリレート低分子量物、イミド樹脂低分子量物は、検出されなかった。
【0119】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が2個、20μm以上のサイズの異物が8個であった。
【0120】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下は観察されず、着色に関しても、目視上は観察されなかった。
【0121】
実施例2は、過剰なイミド化剤をイミド化アクリル系樹脂の合成に用いたために未反応のモノメチルアミンが増え、その結果、フィルターの設定温度が他の実施例等と比較して低い条件でも、他の実施例等と同じフィルター差圧にて濾過できることを示している。つまり、樹脂混合物の溶融粘度が低下していることが明らかになった。
【0122】
〔実施例3〕
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0123】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口が設けられなかった。
【0124】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0125】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0126】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0127】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0128】
フィルター6としては、公称濾過精度3μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0129】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0130】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルターの差圧が4MPaになるように調整した際のフィルター6および配管2の設定温度は、260℃であった。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して15重量部とした。
【0131】
表1に示すように、イミド化率は、56%〜58%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計31.4重量部(水1.9重量部、メタノール16.0重量部、モノメチルアミン0.6重量部、ジメチルアミン5.0重量部、トリメチルアミン7.9重量部)であった。なお、スチレン、メチルメタクリレート低分子量物、イミド樹脂低分子量物は、検出されなかった。
【0132】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が0個、20μm以上のサイズの異物が4個であった。
【0133】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下は観察されず、着色に関しても、目視上は観察されなかった。
【0134】
実施例3は、フィルターの濾過精度が他の実施例等と比較して高い条件でも、低いフィルター温度にて濾過できることを示している。つまり、樹脂混合物の溶融粘度が低下していることが明らかになった。
【0135】
〔実施例4〕
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0136】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口が設けられなかった。
【0137】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0138】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0139】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0140】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0141】
フィルター6としては、公称濾過精度5μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0142】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0143】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルターの差圧が4MPaになるように調整した際のフィルター6および配管2の設定温度は、270℃であった。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して9重量部とした。
【0144】
表1に示すように、イミド化率は、40%〜44%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計5.1重量部(水0.3重量部、メタノール2.7重量部、ジメチルアミン0.8重量部、トリメチルアミン1.3重量部)であった。なお、モノメチルアミン、スチレン、メチルメタクリレート低分子量物、イミド樹脂低分子量物は、検出されなかった。
【0145】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が2個、20μm以上のサイズの異物が8個であった。
【0146】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下は観察されず、着色に関しても、目視上は観察されなかった。
【0147】
〔実施例5〕
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0148】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口が設けられなかった。
【0149】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0150】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0151】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0152】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0153】
フィルター6としては、公称濾過精度5μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0154】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0155】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルターの差圧が4MPaになるように調整した際のフィルター6および配管2の設定温度は、230℃であった。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して80重量部とした。
【0156】
表1に示すように、イミド化率は、72%〜73%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計125.3重量部(水8.8重量部、メタノール23.9重量部、モノメチルアミン73.9重量部、ジメチルアミン10.1重量部、トリメチルアミン8.7重量部)であった。なお、スチレン、メチルメタクリレート低分子量物、イミド樹脂低分子量物は、検出されなかった。
【0157】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が2個、20μm以上のサイズの異物が8個であった。
【0158】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下は観察されず、着色に関しても、目視上は観察されなかった。
【0159】
〔比較例1〕
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0160】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口(図示せず)が設けられた。
【0161】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0162】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0163】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0164】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0165】
フィルター6としては、公称濾過精度5μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0166】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0167】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルター6の差圧が4MPaになるように調整した際のフィルターおよび配管2の設定温度は、286℃であった。フィルター6の差圧については、実施例1と同じ温度ではフィルター耐圧の10MPaを超える。そこで、フィルター6の温度を上げたところ、286℃まで上げたところで目標差圧である4MPaまで低下した。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して20重量部とした。
【0168】
表1に示すように、イミド化率は、54%〜56%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計0.276重量部(メタノール0.003重量部、トリメチルアミン0.003重量部、スチレン0.07重量部、メチルメタクリレート低分子量物0.13重量部、イミド樹脂低分子量物0.07重量部)であった。このように副生成物が少ない理由は、上述したように1段目の押出機10にベント口が設けられているからであり、当該ベント口を介して、未反応のイミド化剤および副生成物等が脱揮(除去)されているからである。
【0169】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が10個、20μm以上のサイズの異物が42個であった。
【0170】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下率は30%であった。また、濾過後の樹脂混合物には茶褐色の着色が観察されるとともに、焼けた樹脂も観察された。
【0171】
〔比較例2〕
押出機としては、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル社製)を2基用い、当該押出機をタンデムに連結した装置にてフィルムサンプルを作製した。なお、1段目には、押出機の長さと直径との比(L/D)が90であるとともに、12個の温度調節ゾーンを有する押出機(1段目の押出機10)を用い、2段目には、L/Dが40であるとともに、4個の温度調節ゾーンを有する押出機(2段目の押出機11)を用いた。なお、1段目の押出機10の内部では、アクリル系樹脂のイミド化反応が行われ、2段目の押出機11の内部では、ジメチルカーボネートによりエステル化反応が行われた。
【0172】
1段目の押出機10の各バレル温度は、200℃、230℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃および250℃に設定された。また、1段目の押出機10には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮(除去)させるためのベント口(図示せず)が設けられた。
【0173】
また、2段目の押出機11の各バレル温度は、250℃、250℃、230℃および220℃に設定された。また、2段目の押出機11には、未反応のイミド化剤および副生成物を脱揮させるためのベント口が設けられた。
【0174】
樹脂フィーダー4としては、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ社製)を用いた。なお、上記スクリューの回転数は、1段目の押出機10および2段目の押出機11共に150rpmとし、これによって、樹脂の供給量を30kg/hrに設定した。
【0175】
また、イミド化剤の添加ポンプとしては、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸社製)を用いた。
【0176】
また、ギヤポンプ5としては、高温、高圧用のギヤポンプ(川崎重工業株式会社製)を用いた。なお、ギヤポンプ5の回転数は、ギヤポンプ1次側の圧力、つまり配管1にかかる圧力が一定になるように、回転数を制御した。
【0177】
フィルター6としては、公称濾過精度3μmのリーフ型フィルターエレメント(日本精線社製)を用い、1段目の押出機10と2段目の押出機11とを接続する配管の途中に当該フィルターを設置した。
【0178】
吐出されたフィルムサンプルのストランドは、水槽で冷却された後、ペレタイザーでカッティングされてペレット状にされた。なお、アクリル系樹脂としては、MS−800(新日鉄化学社製)を用い、イミド化剤としては、モノメチルアミン(三菱ガス化学社製)を用いた。
【0179】
また、ギヤポンプ5、配管1および配管3の温度は、250℃に設定し、フィルター6および配管2の温度は、フィルター6の差圧を見ながら4MPaになるように調整した。なお、フィルター6の差圧が4MPaになるように調整した際のフィルター6および配管2の設定温度は、297℃であった。フィルター6の差圧については、比較例1と同じ温度ではフィルター耐圧の10MPaを大きく超えた。そして、目標のフィルター差圧である4MPaまで低下させるには、フィルター温度を297℃まで上げる必要があった。また、モノメチルアミンの添加量は、樹脂100重量部に対して20重量部とした。
【0180】
表1に示すように、イミド化率は、54%〜56%であった。また、主生成物に対する副生成物の比は、主生成物100重量部に対して副生成物が合計1.476重量部(メタノール0.003重量部、トリメチルアミン0.003重量部、スチレン0.27重量部、メチルメタクリレート低分子量物0.53重量部、イミド樹脂低分子量物0.67重量部)であった。このように副生成物が少ない理由は、上述したように1段目の押出機10にベント口が設けられているからであり、当該ベント口を介して、未反応のイミド化剤および副生成物等が脱揮(除去)されているからである。
【0181】
また、表1に示すように、異物の数は、30μm以上のサイズの異物が50個、20μm以上のサイズの異物が182個に大幅に増加した。
【0182】
また、表1に示すように、主生成物の分子量低下率は50%であった。また、濾過後の樹脂混合物には茶褐色の着色が観察されるとともに、焼けた樹脂も多く観察された。
【0183】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上のように、本発明では、樹脂混合物の溶融粘度を低下させることが可能であるため、濾過精度の高いフィルターを用いて上記樹脂混合物を濾過することが可能となる。そのため、本発明は、濾過装置やその部品を製造する分野に利用することができるだけでなく、さらには、当該濾過装置を用いたフィルム製造装置に関わる分野に広く応用することが可能である。
【0185】
例えば、本発明の異物除去方法によって異物が除去された樹脂混合物は、例えば、カメラ用、VTR用もしくはプロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、光ディスク(例えば、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、MDプレイヤー等)用のピックアップレンズ、液晶用導光板、液晶ディスプレイ用フィルム(例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム等)、表面保護フィルム、光ファイバ、光スイッチ、光コネクター、自動車用のヘッドライトもしくはテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフ、眼鏡、コンタクトレンズ、内視境用レンズ、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓、カーポート、照明用レンズ、照明カバー、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具、等に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】実施例にて用いた押出機の基本的な構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0187】
1 配管
2 配管
3 配管
4 樹脂フィーダー
5 ギヤポンプ
6 フィルター
10 1段目の押出機
11 2段目の押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド化アクリル系樹脂を含む溶融した状態の樹脂混合物をフィルターに通して、前記樹脂混合物中に含まれる異物を除去する異物除去方法であって、
前記樹脂混合物には、メタノール、モノメチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの成分が含有され、
前記樹脂混合物には、100重量部の前記イミド化アクリル系樹脂に対して、5重量部以上の前記成分が含まれ、
前記イミド化アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂とイミド化剤とのイミド化反応によって形成されるものであり、
前記成分は、前記イミド化反応の過程で生じる副生成物、または前記イミド化反応の未反応物であることを特徴とする異物除去方法。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂は、下記一般式(2)にて示される構造単位、または、下記一般式(2)にて示される構造単位および下記一般式(3)にて示される構造単位、を有することを特徴とする請求項1に記載の異物除去方法。
【化1】

(但し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【化2】

(但し、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【請求項3】
前記イミド化反応後の前記樹脂混合物は、外部から隔離された状態で、前記フィルターまで輸送されることを特徴とする請求項1または2に記載の異物除去方法。
【請求項4】
前記フィルターは、ファイバータイプのエレメントを有するステンレス製のリーフディスクフィルターであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の異物除去方法。
【請求項5】
前記フィルターの温度は、270℃以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の異物除去方法。
【請求項6】
前記フィルターの濾過精度は、5μm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の異物除去方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の異物除去方法によって異物が除去された樹脂混合物を原材料に用いることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記異物が除去された樹脂混合物とエステル化剤とを反応させるエステル化工程を有することを特徴とする請求項7に記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−143987(P2009−143987A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320060(P2007−320060)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】