説明

異物除去方法及び選択還元触媒システム

【課題】サプライモジュールやその周辺の尿素水経路を閉塞する原因となる異物を除去して尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止し、同時にドライバの負担を軽減することができる異物除去方法及び選択還元触媒システムを提供する。
【解決手段】尿素水を選択還元触媒103に供給して排気ガス中のNOXを浄化する選択還元触媒システム100における尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止すべく、尿素水経路における尿素水圧力を変動させ、閉塞の原因となる異物を除去する異物除去方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択還元触媒システムにおける尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止すべく、閉塞の原因となる異物を除去する異物除去方法及び選択還元触媒システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOXを浄化するための排気ガス浄化システムとして、選択還元触媒を用いた選択還元触媒システムが開発されている。
【0003】
この選択還元触媒システムは、尿素タンクに貯留された尿素水を選択還元触媒の排気ガス上流に供給し、排気ガスの熱でアンモニアを生成し、このアンモニアによって選択還元触媒でNOXを還元して浄化するものである(例えば、特許文献1参照)。尿素水は、選択還元触媒の上流側に設けられたドージングバルブ(尿素噴射装置、ドージングモジュールとも言われる)から噴射されることで、選択還元触媒の排気ガス上流に供給される。
【0004】
ドージングバルブへの尿素水の供給は、サプライモジュールポンプ(SMポンプ)や尿素水圧力センサなどを備えたサプライモジュールによってなされる。サプライモジュールは、送液ラインを介して尿素タンクと接続されており、尿素タンクから送液ラインを通じて吸い上げた尿素水を、サプライモジュールとドージングバルブとを接続する圧送ラインを通じてドージングバルブに供給する。このとき、サプライモジュールの尿素水圧力センサの測定値が一定となるようにフィードバック制御され、尿素水圧力が一定となったら尿素水の噴射が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−303826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、結晶化した尿素水の固体や尿素水に混入した粉塵などの異物によってサプライモジュールやその周辺の尿素水経路が閉塞されると、尿素水圧力の異常な上昇などが生じ、尿素水圧力の適切な制御が行えなくなり、尿素水の噴射を開始することができなくなる。その結果、排気ガス中のNOXを適切に浄化することができなくなってしまう。
【0007】
また、このような不具合が生じた場合にはMIL(Malfunction Indicator Lamp;故障警告灯)を点灯させ、ドライバに異常の発生を知らせるようにしている。これによりドライバは、車両の故障を認識し、MILの表示に基づいてメーカなどに車両の修理を依頼することとなる。ところが、尿素水経路の閉塞は車両側の制御によって簡単に解消できる場合も少なくなく、尿素水経路の閉塞が生じた場合に一律に警告を促すようにすると、車両側の制御によって簡単に解消できると否とに拘わらず、ドライバは車両の修理を依頼しなければならず、到底その煩に耐え得ない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、サプライモジュールやその周辺の尿素水経路を閉塞する原因となる異物を除去して尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止し、同時にドライバの負担を軽減することができる異物除去方法及び選択還元触媒システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために創案された本発明は、尿素水を選択還元触媒に供給して排気ガス中のNOXを浄化する選択還元触媒システムの尿素水経路における尿素水圧力を変動させる異物除去方法である。
【0010】
前記尿素水経路における尿素水圧力の上昇と低下を規定回数だけ繰り返すことで、前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させると良い。
【0011】
イグニッションON後に前記尿素水圧力を上昇させるのに先立って前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させると良い。
【0012】
イグニッションOFF後に前記尿素水経路の圧送ラインから尿素水を抜くのに先立って前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させると良い。
【0013】
前記尿素水圧力が異常閾値を超えたときに前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させると良い。
【0014】
また本発明は、排気管に接続された選択還元触媒と、前記選択還元触媒の上流側で尿素水を噴射するドージングバルブと、尿素タンク内の尿素水を吸い上げて前記ドージングバルブに尿素水を供給すると共に余剰の尿素水を前記尿素タンク内に戻すサプライモジュールと、前記ドージングバルブと前記サプライモジュールを制御するドージングコントロールモジュールと、を備える選択還元触媒システムにおいて、前記ドージングコントロールモジュールは、前記選択還元触媒システムの尿素水経路における尿素水圧力を変動させる異物除去モードを実行するように構成された選択還元触媒システムである。
【0015】
前記ドージングコントロールモジュールは、前記尿素水経路における尿素水圧力の上昇と低下を規定回数だけ繰り返すことで、前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させると良い。
【0016】
前記ドージングコントロールモジュールは、イグニッションON後に前記尿素水圧力を上昇させるのに先立って前記異物除去モードを実行すると良い。
【0017】
前記ドージングコントロールモジュールは、イグニッションOFF後に前記尿素水経路の圧送ラインから尿素水を抜くのに先立って前記異物除去モードを実行すると良い。
【0018】
前記ドージングコントロールモジュールは、前記尿素水圧力が異常閾値を超えたときに前記異物除去モードを実行すると良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サプライモジュールやその周辺の尿素水経路を閉塞する原因となる異物を除去して尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止し、同時にドライバの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する選択還元触媒システムの一例を示す概略図である。
【図2】DCMの入出力構成を示す図である。
【図3】本発明に係る異物除去モードの動作フローを示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る選択還元触媒システムの動作フローを示すフローチャートである。
【図5】異物除去モード1における時間と尿素水圧力との関係を示す図である。
【図6】異物除去モード2における時間と尿素水圧力との関係を示す図である。
【図7】異物除去モード3における時間と尿素水圧力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0022】
先ず、車両に搭載される選択還元触媒システムについて説明する。
【0023】
図1に示すように、選択還元触媒システム100は、エンジン101の排気管102に接続された選択還元触媒103と、選択還元触媒103の上流側(排気ガスの上流側)で尿素水を噴射するドージングバルブ104と、尿素水を貯留する尿素タンク105と、尿素タンク105内の尿素水を吸い上げてドージングバルブ104に尿素水を供給すると共に余剰の尿素水を尿素タンク105内に戻すサプライモジュール106と、ドージングバルブ104やサプライモジュール106などを制御するドージングコントロールモジュール(DCM;Dosing Control Module、DCU;Dosing Control Unitとも言われる)107と、を備える。
【0024】
エンジン101の排気管102には、排気ガスの上流側から下流側にかけて、酸化触媒(DOC;Diesel Oxidation Catalyst)及びディーゼルパティキュレートフィルタ108、選択還元触媒103が順次配置される。DOCは、エンジン101から排気される排気ガス中のNOを酸化してNO2とし、排気ガス中のNOとNO2の比率を制御して選択還元触媒103における脱硝効率を高めるためのものである。また、ディーゼルパティキュレートフィルタは、排気ガス中のPM(Particulate Matter)を捕集するためのものである。
【0025】
ドージングバルブ104は、高圧の尿素水が満たされたシリンダに噴口が設けられ、その噴口を塞ぐ弁体がスリットを有する筒状のプランジャに取り付けられた構造となっており、コイルに通電することによりプランジャを引き上げることで弁体を噴口から離間させて尿素水を噴射するようになっている。また、ドージングバルブ104の内部には、プランジャを介して弁体を常閉の状態に付勢するバネが設けられているため、コイルへの通電を止めると、そのバネ力によりプランジャが引き下げられて弁体が噴口を塞ぐので尿素水の噴射が停止される。
【0026】
ドージングバルブ104の上流側の排気管102には、選択還元触媒103の入口における排気ガスの温度(選択還元触媒入口温度)を測定する排気温度センサ109が設けられる。また、選択還元触媒103の上流側(ここでは排気温度センサ109の上流側)には、選択還元触媒103の上流側でのNOX濃度を検出する上流側NOXセンサ110が設けられ、選択還元触媒103の下流側には、選択還元触媒103の下流側でのNOX濃度を検出する下流側NOXセンサ111が設けられる。
【0027】
サプライモジュール106は、尿素水を圧送するSMポンプ112と、サプライモジュール106の温度(サプライモジュール106を流れる尿素水の温度)を測定するサプライモジュール温度センサ(SM温度センサ)113と、サプライモジュール106内における尿素水の圧力(SMポンプ112の吐出側の圧力)を測定する尿素水圧力センサ114と、尿素水の流路を切り替えることにより、尿素タンク105からの尿素水をドージングバルブ104に供給するか、あるいはドージングバルブ104内の尿素水を尿素タンク105に戻すかを切り替えるリバーティングバルブ115と、を備えている。ここでは、リバーティングバルブ115がOFFのとき、尿素タンク105からの尿素水をドージングバルブ104に供給するようにし、リバーティングバルブ115がONのとき、ドージングバルブ104内の尿素水を尿素タンク105に戻すようにした。
【0028】
リバーティングバルブ115が尿素水をドージングバルブ104に供給するように切り替えられている場合、サプライモジュール106は、そのSMポンプ112にて、尿素タンク105内の尿素水を送液ライン(サクションライン)116を通して吸い上げ、圧送ライン(プレッシャーライン)117を通してドージングバルブ104に供給するようにされ、余剰の尿素水を回収ライン(アフターライン)118を通して尿素タンク105に戻すようにされる。
【0029】
尿素タンク105には、選択還元触媒センサ119が設けられる。選択還元触媒センサ119は、尿素タンク105内の尿素水の水位を測定する水位センサ120と、尿素タンク105内の尿素水の温度を測定する温度センサ121と、尿素タンク105内の尿素水の品質を測定する品質センサ122と、を備えている。品質センサ122は、例えば、超音波の伝播速度や電気伝導度から、尿素水の濃度や尿素水に異種混合物が混合されているか否かを検出し、尿素タンク105内の尿素水の品質を検出するものである。
【0030】
尿素タンク105とサプライモジュール106には、エンジン101を冷却するための冷却水を循環する冷却ライン123が接続される。冷却ライン123は、尿素タンク105内を通り、冷却ライン123を流れる冷却水と尿素タンク105内の尿素水との間で熱交換するようにされる。同様に、冷却ライン123は、サプライモジュール106内を通り、冷却ライン123を流れる冷却水とサプライモジュール106内の尿素水との間で熱交換するようにされる。
【0031】
冷却ライン123には、尿素タンク105とサプライモジュール106に冷却水を供給するか否かを切り替えるタンクヒータバルブ(クーラントバルブ)124が設けられる。なお、ドージングバルブ104にも冷却ライン123が接続されるが、ドージングバルブ104には、タンクヒータバルブ124の開閉に拘わらず、冷却水が供給されるように構成されている。なお、図1では図を簡略化しており示されていないが、冷却ライン123は、尿素水が通る送液ライン116、圧送ライン117、及び回収ライン118に沿うようにして配索される。
【0032】
次に、DCM107の入出力構成について説明する。
【0033】
図2に示すように、DCM107には、上流側NOXセンサ110、下流側NOXセンサ111、選択還元触媒センサ119(水位センサ120、温度センサ121、及び品質センサ122)、排気温度センサ109、サプライモジュール106のSM温度センサ113と尿素水圧力センサ114、及びエンジン101を制御するエンジンコントロールモジュール(ECM;Engine Control Module、ECU;Engine Control Unitとも言われる)125からの入力信号線が接続されている。ECM125からは、外気温、エンジンパラメータ(エンジン回転数など)の信号が入力される。
【0034】
また、DCM107には、タンクヒータバルブ124、サプライモジュール106のSMポンプ112とリバーティングバルブ115、ドージングバルブ104、上流側NOXセンサ110のヒータ、及び下流側NOXセンサ111のヒータへの出力信号線が接続される。なお、DCM107と各機器との信号の入出力に関しては、個別の信号線を介した入出力、コントローラエリアネットワーク(CAN;Controller Area Network)を介した入出力のどちらであっても良い。
【0035】
DCM107は、ECM125からのエンジンパラメータの信号と排気温度センサ109からの排気ガス温度とを基に、排気ガス中のNOXの量を推定すると共に、推定した排気ガス中のNOXの量を基にドージングバルブ104から噴射する尿素水量を決定するようにされ、更にドージングバルブ104にて決定した尿素水量で噴射したとき、上流側NOXセンサ110の検出値に基づいてドージングバルブ104を制御してドージングバルブ104から噴射する尿素水量を調整するように構成される。
【0036】
さて、本実施の形態に係る選択還元触媒システム100では、尿素水を選択還元触媒103に供給して排気ガス中のNOXを浄化する選択還元触媒システム100における尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止すべく、尿素水経路における尿素水圧力(尿素水圧力センサ114の測定値)を変動させ、閉塞の原因となる異物を除去する異物除去方法を採用している。
【0037】
なお、尿素水経路とは、例えば、サプライモジュール106やその周辺の尿素水が流れる経路を指すが、これに限られず尿素水が流れるその他の経路も含むものとする。
【0038】
この異物除去方法は、DCM107に実装されたモードの1つである異物除去モードによって実現される。そのため、本実施の形態におけるDCM107は、サプライモジュール106内の尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止すべく、サプライモジュール106を制御して尿素水経路における尿素水圧力を変動させ、閉塞の原因となる異物を除去する異物除去モードを実行するように構成される。
【0039】
図3に示すように、異物除去モードは、尿素水圧力を低下させるステップS101と、尿素水圧力が予め設定した下限閾値以下であるか否かを判断するステップS102と、尿素水圧力を上昇させるステップS103と、尿素水圧力が予め設定した上限閾値以上であるか否かを判断するステップS104と、尿素水圧力を低下させるステップS105と、尿素水圧力が予め設定した下限閾値以下であるか否かを判断するステップS106と、繰り返し回数を+1するステップS107と、繰り返し回数が予め設定した規定回数以上であるか否かを判断するステップS108と、からなる。
【0040】
ステップS101では、DCM107がサプライモジュール106を制御して尿素水経路における尿素水圧力を低下させる。このステップS101は、ステップS102で尿素水圧力が予め設定した下限閾値以下になったと判断されるまで繰り返される。
【0041】
ステップS103では、DCM107がサプライモジュール106を制御して尿素水経路における尿素水圧力を上昇させる。このステップS103は、ステップS104で尿素水圧力が予め設定した上限閾値以上になったと判断されるまで繰り返される。
【0042】
ステップS105では、DCM107がサプライモジュール106を制御して尿素水経路における尿素水圧力を低下させる。このステップS105は、ステップS106で尿素水圧力が予め設定した下限閾値以下になったと判断されるまで繰り返される。
【0043】
ステップS107とステップS108では、これまでの一連の動作が行われた繰り返し回数を計数し、この繰り返し回数が予め設定した規定回数になるまでステップS101〜108が繰り返される。
【0044】
このようにDCM107は、異物除去モードにおいて、サプライモジュール106を制御して尿素水経路における尿素水圧力の上昇と低下を規定回数だけ繰り返すことで、尿素水経路における尿素水圧力を変動させて異物を除去する。
【0045】
DCM107が異物除去モードを実行するタイミングは特に限定されるものではないが、以下のようなタイミングが想定される。
【0046】
(1)DCM107は、サプライモジュール106を制御してサプライモジュール106とドージングバルブ104とを接続する圧送ライン117を尿素水で満たした後、尿素水圧力を上昇させるのに先立って異物除去モードを実行する。
【0047】
(2)DCM107は、イグニッションOFF直後に異物除去モードを実行する。
【0048】
(3)DCM107は、尿素水圧力を一定にすべくサプライモジュール106をフィードバック制御する際に、尿素水圧力が異常閾値を超えたときに異物除去モードを実行する。ここで異常閾値とは、DCM107が尿素水圧力の異常な上昇に基づいて何らかの異常が生じたことを判断するための基準となる閾値を指す。
【0049】
これらは単独で実行されても良いし、複合して実行されても良い。以下、(1)〜(3)のタイミングで実行される異物除去モードをそれぞれ異物除去モード1〜3と指称する。
【0050】
図4に示すように、選択還元触媒システム100の通常動作モードは、ドライバがイグニッションONするステップS201と、排気温度が予め設定した閾値以上であるか否かを判断するステップS202と、選択還元触媒制御システムを起動するステップS203と、SMポンプ112を起動するステップS204と、圧送ライン117を尿素水で満たすステップS205と、尿素水圧力を上昇させるステップS206と、尿素水圧力が一定に制御できているか否かを判断するステップS207と、尿素水の噴射を開始するステップS208と、ドライバがイグニッションOFFするステップS209と、圧送ライン117から尿素水を抜くステップS210と、選択還元触媒制御システムを終了(シャットダウン)するステップS211と、尿素水圧力の異常を確定するステップS212と、圧送ライン117から尿素水を抜くステップS213と、選択還元触媒制御システムを終了するステップS214と、ドライバがイグニッションOFFするステップS215と、からなる。
【0051】
ステップS202では、ステップS201でイグニッションONされてから排気温度が予め設定した閾値以上になるまで待機する。
【0052】
ステップS203では、ECM125がDCM107を制御して選択還元触媒制御システムを起動する。
【0053】
ステップS204、ステップS205では、DCM107がサプライモジュール106を制御してSMポンプ112を起動し、圧送ライン117を尿素水で満たす。
【0054】
ステップS206では、DCM107がサプライモジュール106を制御して尿素水圧力を上昇させると共に尿素水圧力が規定値で一定となるようにサプライモジュール106をフィードバック制御する。
【0055】
ステップS207では、尿素水圧力が規定値で一定であるか否かが判断され、尿素水圧力が規定値で一定であればステップS208に進み、そうでなければステップS212に進む。
【0056】
ステップS208では、DCM107がドージングバルブ104とサプライモジュール106とを制御して尿素水の噴射を開始する。
【0057】
ステップS210では、ステップS209で運転が終了してイグニッションOFFされた後、DCM107がサプライモジュール106を制御して圧送ライン117から尿素水を抜く。
【0058】
ステップS211では、ECM125がDCM107を制御して選択還元触媒制御システムを終了する。
【0059】
一方、ステップS212では、尿素水圧力が異常閾値を超えたときに何らかの異常が発生したことを検知し、尿素水圧力の異常を確定する。
【0060】
ステップS213では、DCM107がサプライモジュール106を制御して圧送ライン117から尿素水を抜く。
【0061】
ステップS214では、ECM125がDCM107を制御して選択還元触媒制御システムを終了し、ステップS215で運転が終了してイグニッションOFFされるまで待機する。
【0062】
これらステップS201〜S215によって通常動作モードの1ドライビングサイクルが構成される。
【0063】
この1ドライビングサイクルにおいて異物除去モード1は、ステップS205の後に実行される。このときの尿素水圧力の遷移は図5に示すようになり、圧送ライン117が尿素水で満たされた後に尿素水圧力を低下させると共に尿素水圧力の上昇と低下を繰り返し、しかる後、尿素水圧力を規定値で一定に制御する通常動作に移行する。
【0064】
また、異物除去モード2は、ステップS209の後に実行される。このときの尿素水圧力の遷移は図6に示すようになり、尿素水圧力が規定値で一定に制御された状態から尿素水圧力を低下させると共に尿素水圧力の上昇と低下を繰り返した後、圧送ライン117から尿素水を抜き、選択還元触媒制御システムを終了する。
【0065】
これら異物除去モード1と異物除去モード2は、尿素水経路の閉塞が発生しているか否かに関わらず、尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止することを目的として実行される。
【0066】
一方、異物除去モード3は、ステップS212の後に実行される。このときの尿素水圧力の遷移は図7に示すようになり、尿素水圧力が異常に上昇して異常閾値以上となったときに尿素水圧力を低下させると共に尿素水圧力の上昇と低下を繰り返し、その後、圧送ライン117から尿素水を抜き、選択還元触媒制御システムを終了する。なお、図7における測定限界値とは、尿素水圧力センサ114で測定できる尿素水圧力の限界値を指し、尿素水圧力センサ114によってはこれ以上の値を測定することはできない。
【0067】
この異物除去モード3は、実際に尿素水経路の閉塞が発生してから尿素水経路の閉塞を解消することを目的として実行される。イグニッションONとイグニッションOFFを何度か繰り返して異物除去モード3が数度実行されても尿素水経路の閉塞が解消しない場合には、MILを点灯させてドライバに異常を知らせるようにすると良い。これにより、車両側の制御によって簡単に解消できる不具合なのかそうでないのかが判断でき、解消可能な不具合にも拘わらずドライバに故障を警告し、ドライバに過度な負担を強いるような事態を防止できる。
【0068】
これまで説明してきたように、本発明によれば、サプライモジュールやその周辺の尿素水経路を閉塞する原因となる異物を除去して尿素水経路の閉塞を解消又は未然に防止し、同時にドライバの負担を軽減することができる。
【0069】
なお、前述した実施の形態は、本発明を具現化するための一手段に過ぎず、異物除去モードの動作フローや選択還元触媒システムの動作フローを限定する趣旨ではない。即ち、本発明の思想を具現化できる範囲で様々な設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 選択還元触媒システム
101 エンジン
102 排気管
103 選択還元触媒
104 ドージングバルブ
105 尿素タンク
106 サプライモジュール
109 排気温度センサ
110 上流側NOXセンサ
111 下流側NOXセンサ
112 SMポンプ
113 SM温度センサ
114 尿素水圧力センサ
115 リバーティングバルブ
116 送液ライン
117 圧送ライン
118 回収ライン
119 選択還元触媒センサ
120 水位センサ
121 温度センサ
122 品質センサ
123 冷却ライン
124 タンクヒータバルブ
125 ECM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水を選択還元触媒に供給して排気ガス中のNOXを浄化する選択還元触媒システムの尿素水経路における尿素水圧力を変動させることを特徴とする異物除去方法。
【請求項2】
前記尿素水経路における尿素水圧力の上昇と低下を規定回数だけ繰り返すことで、前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させる請求項1に記載の異物除去方法。
【請求項3】
イグニッションON後に前記尿素水圧力を上昇させるのに先立って前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させる請求項1又は2に記載の異物除去方法。
【請求項4】
イグニッションOFF後に前記尿素水経路の圧送ラインから尿素水を抜くのに先立って前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させる請求項1〜3のいずれかに記載の異物除去方法。
【請求項5】
前記尿素水圧力が異常閾値を超えたときに前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させる請求項1〜4のいずれかに記載の異物除去方法。
【請求項6】
排気管に接続された選択還元触媒と、
前記選択還元触媒の上流側で尿素水を噴射するドージングバルブと、
尿素タンク内の尿素水を吸い上げて前記ドージングバルブに尿素水を供給すると共に余剰の尿素水を前記尿素タンク内に戻すサプライモジュールと、
前記ドージングバルブと前記サプライモジュールを制御するドージングコントロールモジュールと、
を備える選択還元触媒システムにおいて、
前記ドージングコントロールモジュールは、前記選択還元触媒システムの尿素水経路における尿素水圧力を変動させる異物除去モードを実行するように構成されたことを特徴とする選択還元触媒システム。
【請求項7】
前記ドージングコントロールモジュールは、前記尿素水経路における尿素水圧力の上昇と低下を規定回数だけ繰り返すことで、前記尿素水経路における尿素水圧力を変動させる請求項6に記載の選択還元触媒システム。
【請求項8】
前記ドージングコントロールモジュールは、イグニッションON後に前記尿素水圧力を上昇させるのに先立って前記異物除去モードを実行する請求項6又は7に記載の選択還元触媒システム。
【請求項9】
前記ドージングコントロールモジュールは、イグニッションOFF後に前記尿素水経路の圧送ラインから尿素水を抜くのに先立って前記異物除去モードを実行する請求項6〜8のいずれかに記載の選択還元触媒システム。
【請求項10】
前記ドージングコントロールモジュールは、前記尿素水圧力が異常閾値を超えたときに前記異物除去モードを実行する請求項6〜9のいずれかに記載の選択還元触媒システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72392(P2013−72392A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212944(P2011−212944)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】