説明

異物除去装置及び異物除去方法並びに酸化ウランペレット及び燃料集合体の製造方法

【課題】酸化ウラン粉末から異物を効率的に除去できると共にクリーニング性にも優れた異物除去装置及び異物除去方法、並びに、高品質の酸化ウランペレット又は燃料集合体を高い歩留りで製造できる酸化ウランペレット又は燃料集合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】磁石片14及び継鉄15が交互に配列された磁石列12を外管11に挿脱自在に収納した棒状磁石10を複数列及び複数段となるように回転不能に配置してなる磁力除去部5と、磁力除去部5に対して上流又は下流側に配置された篩6とを有する異物除去装置1、並びに、酸化ウラン粉末を異物除去装置1に通過させる工程を有する異物除去方法、この異物除去方法で得られた酸化ウラン粉末を用いる酸化ウランペレットの製造方法及び燃料集合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異物除去装置及び異物除去方法並びに酸化ウランペレット及び燃料集合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、酸化ウラン粉末から異物を効率的に除去できると共にクリーニング性にも優れた異物除去装置及び異物除去方法、並びに、高品質の酸化ウランペレット又は燃料集合体を高い歩留りで製造できる酸化ウランペレット又は燃料集合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉用燃料集合体を構成する燃料棒には酸化ウラン粉末を原料とする酸化ウランペレットが封入されている。この酸化ウランペレットを形成する酸化ウラン粉末は、高品質の酸化ウランペレット又は燃料集合体を高い歩留りで製造するために、高純度であることが要求され、特に金属及び非金属の異物等が混入していないことが要求される。ところが、現実的には酸化ウラン粉末に金属異物又は非金属異物等が混入していることがあり、酸化ウランペレット中にもこれらの異物が混入することもある。酸化ウランペレット中に混入した異物が燃料棒の検査工程で発見された場合、当該燃料棒は不良品となるが、燃料棒は密封溶接されているため燃料棒解体に時間がかかり、燃料棒内部から取り出した酸化ウランペレットは再使用できないためスクラップとなる。また、混入した異物が磁性体等の金属異物であった場合には、燃料棒の検査工程でガドリニア濃縮度の判別のために磁化率を測定(Gd濃度検査とも称する。)すると、金属異物が測定結果に影響を及ぼすため、たとえガドリニア濃度が正常な範囲内であっても金属異物に起因するノイズのために不良と判断される虞がある。
【0003】
ところで、粉体から金属異物を除去する装置として、例えば、特許文献1には「長手軸を有し、表面が保護層で被覆された複数の永久磁石を所定の隙間をもって平行に配列した永久磁石列を、所定間隔をもって上下に複数段重ね合わせた構造からなり、異物を含有するバルク体粒子群が各段の永久磁石の前記隙間を通過する際に、前記異物を前記永久磁石に吸着してバルク体粒子群から除去することを特徴とする異物除去装置」が記載されている。また特許文献2には「回転自在な横向き円筒状磁石と、該磁石を回転させる駆動部と、該磁石の曲面に近接した粉末状物質用流路と、該流路に接続された粉末状物質の流路誘導用漏斗と、該漏斗の開口部の口径を縮小し得る開閉板と、粉末状物質用の受器を具備し、該磁石が該流路の内部に格納されている精密磁選機」が記載されている。
【0004】
粉体中に混入している異物を簡便に除去する別の装置として篩が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−273264号公報
【特許文献2】特開2006−116453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の異物除去装置及び特許文献2の精密磁選機は金属異物を除去する装置であるから、粉体中の金属異物を除去することはできても非金属異物を除去することはできない。
【0007】
一方、篩を用いる場合には、篩目開きが大きすぎるすなわち粗すぎると異物を十分に除去できず、一方、篩目開きが小さすぎるとすなわち細かすぎると篩別に時間がかかるうえ篩目の間に酸化ウラン粉末が付着又は目詰まりして篩をクリーニングしにくくなることがあった。
【0008】
ところで、酸化ウラン粉末で形成した酸化ウランペレットを封入した燃料棒においては酸化ウランペレットのウラン濃縮度を相違させる必要があるので、通常酸化ウランペレットの製造ロット毎に異なるウラン濃縮度が設定され、他の製造ロットで使用又は製造された酸化ウラン粉末が混入することを防止しなければならないという特殊な事情が存在する。
【0009】
しかし、特許文献1の異物除去装置及び特許文献2の精密磁選機は磁力で金属異物を吸着して除去するので、酸化ウラン粉末を処理した後に吸着した金属異物を磁力に反してこれらの装置から取り外しにくく粉体から除去した金属異物が装置内に残存しやすく、直前に使用又は製造した酸化ウラン粉末が混入する虞があった。特に特許文献2の精密磁選機では、回転自在な円筒状磁石の取付部近傍の間隙に酸化ウラン粉末が付着又は侵入すると酸化ウラン粉末を除去できないことがある。一方、篩では酸化ウラン粉末を通過させた後に篩中に残存する酸化ウラン粉末を除去しにくく、直前に使用又は製造した酸化ウラン粉末が混入する虞があった。特に、篩目が細かいと付着又は目詰まりした酸化ウラン粉末を除去するのに長時間を要するうえ十分に除去できないこともある。
【0010】
このように、酸化ウラン粉末を用いて軽水炉用燃料集合体を製造する場合には、その特殊な事情から、酸化ウラン粉末に混入しているおそれのある異物の効率的な除去と共に残存する異物及び酸化ウラン粉末を容易に除去できる優れたクリーニング性も要求されている。
【0011】
この発明は、酸化ウラン粉末から異物を効率的に除去できると共にクリーニング性にも優れた異物除去装置及び異物除去方法を提供することを、目的とする。
【0012】
また、この発明は、高品質の酸化ウランペレット又は燃料集合体を高い歩留りで製造できる酸化ウランペレット又は燃料集合体の製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、酸化ウラン粉末を通過させて酸化ウラン粉末中の異物を除去する異物除去装置であって、磁石片及び継鉄が交互に配列された磁石列を外周面が鏡面加工されたステンレス製の外管に挿脱自在に収納した棒状磁石を、前記通過方向と交差する方向に複数列及び前記通過方向に複数段となるように、回転不能に配置してなる、前記酸化ウラン粉末の通路中に配置された磁力除去部と、前記磁力除去部に対して前記通過方向の上流又は下流側に配置された篩とを有する異物除去装置であり、
請求項2は、前記通過方向の2段目以降に配置された前記棒状磁石はその断面形状が前記通過方向の上流側に向かって尖形の涙滴形状である請求項1の異物除去装置であり、
請求項3は、前記篩は前記下流側に配置されている請求項1又は2の異物除去装置であり、
請求項4は、前記磁力除去部に対して前記通過方向の下流側に配置された異物回収部を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の異物除去装置であり、
請求項5は、前記異物回収部は板状部材である請求項4に記載の異物除去装置であり、
請求項6は、前記異物回収部は前記篩と一体的に配置されている請求項4又は5に記載の異物除去装置であり、
請求項7は、酸化ウラン粉末を請求項1〜6のいずれか1項に記載の異物除去装置を通過させる工程を有する酸化ウラン粉末から異物を除去する異物除去方法であり、
請求項8は、酸化ウラン粉末を請求項1〜6のいずれか1項に記載の異物除去装置を通過させる工程と前記異物除去装置を通過させた酸化ウラン粉末を成形する工程と成形した成形体を焼成する工程とを有する酸化ウランペレットの製造方法であり、
請求項9は、請求項8に記載の酸化ウランペレットの製造方法で製造された酸化ウランペレットをジルコニウム合金製の燃料被覆管に収納して密閉溶接する工程と密閉溶接した燃料棒を集束する工程とを有する燃料集合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る異物除去装置は、磁石片及び継鉄が交互に配列された磁石列を外周面が鏡面加工されたステンレス製の外管に挿脱自在に収納した棒状磁石を通過方向と交差する方向に複数列及び通過方向に複数段となるように回転不能に配置してなる磁力除去部と篩とを有しているから、金属異物を磁力除去部で、金属異物及び非金属異物を篩で除去できるうえ、可動部がないので残存する酸化ウラン粉末及び異物を除去しやすく棒状磁石から磁石列を抜脱することにより磁力で吸着された金属異物を容易に脱落させることができる。また、この発明に係る酸化ウラン粉末から異物を除去する異物除去方法(以下、この発明に係る異物除去方法と称する。)は酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程を有している。したがって、この発明によれば、酸化ウラン粉末から異物を効率的に除去できると共にクリーニング性にも優れた異物除去装置及び異物除去方法を提供できる。
【0015】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法は、酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程と、この発明に係る異物除去装置を通過させた酸化ウラン粉末を成形する工程と、成形した成形体を焼成する工程とを有しているから異物のほとんどない酸化ウランペレットを製造でき、また、この発明に係る燃料集合体の製造方法は、この発明に係るこの発明に係る酸化ウランペレットの製造方法で製造された酸化ウランペレットをジルコニウム合金製の燃料被覆管に収納して密閉溶接する工程と密閉溶接した燃料棒を集束する工程とを有しているから異物のほとんどない酸化ウランペレットを有する燃料集合体を製造できる。したがって、この発明によれば、高品質の酸化ウランペレット又は燃料集合体を高い歩留りで製造できる酸化ウランペレット又は燃料集合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明に係る異物除去装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線における概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る異物除去装置の磁力除去部を構成する棒状磁石の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、この発明に係る異物除去装置を装備した酸化ウラン粉末を取り扱う装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る異物除去装置は、酸化ウラン粉末を通過させて酸化ウラン粉末中の異物を除去する装置であって、酸化ウラン粉末を取り扱う装置、例えば、酸化ウラン粉末の混合器、成型器等の投入口等に装着される。この発明に係る異物除去装置を備えた装置として、例えば、図4には、酸化ウラン粉末を成型する成型器8と、成型器8の投入口に装着された、この発明に係る異物除去装置の一例としての異物除去装置1と、異物除去装置1に接続され、酸化ウラン粉末を異物除去装置1に案内するホッパー9とを有する、酸化ウラン粉末を取り扱う装置が示されている。この発明に係る異物除去装置を装備した酸化ウラン粉末を取り扱う装置には異物も他の製造ロットの酸化ウラン粉末も実質的に混入していない酸化ウラン粉末が投入される。したがって、この発明に係る異物除去装置は酸化ウラン粉末中の異物を除去すると共に他の製造ロットの酸化ウラン粉末が混入しない装置とも称することができる。
【0018】
この発明に係る異物除去装置の一例の異物除去装置1を説明する。この異物除去装置1は、永久磁石片14及び継鉄15が交互に配列された磁石列12を外周面が鏡面加工されたステンレス製の外管11に挿脱自在に収納した棒状磁石10を、前記通過方向と交差する方向に複数列及び前記通過方向に複数段となるように、回転不能に配置してなる、前記酸化ウラン粉末の通路中に配置された磁力除去部3と、磁力除去部3に対して前記通過方向の上流又は下流側に配置された篩4と、磁力除去部3に対して前記通過方向の下流側に配置された異物回収部5とを有している。なお、図1に示される異物除去装置1には異物回収部5は装着されていないので装着状態を破線で示す。
【0019】
磁力除去部3は、図1及び図2に示されるように、回転不能に配置された棒状磁石10A及び棒状磁石10B(これらを併せて棒状磁石10と称する。)を有している。まず、棒状磁石10について説明する。この棒状磁石10は、図3(a)及び図3(b)に示されるように、外周面が鏡面加工されたステンレス製の外管11と、この外管11に挿脱自在に収納された磁石列12とを有している。
【0020】
外管11は、ステンレス鋼で形成され、一端が開口した管である。この外管11はその外周面が鏡面加工されて鏡面になっている。外管11の外周面が鏡面になっていると酸化ウラン粉末が外管11の外周面に堆積しにくくなり、仮に堆積しても容易に除去でき、磁力除去部3のクリーニング性が向上する。この外管11の寸法は適宜に設定され、例えば、軸線長さは異物除去装置1を設置できる長さであればよく、外管11の外径、特に同一段において複数列に配置された方向の寸法、具体的には、図1における横方向における寸法も適宜に設定される。外管11の壁厚は薄すぎると耐久性及び強度が劣ることがあり、一方、厚すぎると表面磁束密度が低下してしまうので、これらに応じて適宜に設定される。
【0021】
酸化ウラン粉末の通過方向に対して1段目に配置された棒状磁石10Aの外管11A及び、この通過方向に対して2段目以降に配置された棒状磁石10Bの外管11Bにおいて、軸線に垂直な平面における断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形、涙滴形状等が挙げられる。この発明において、棒状磁石10Bの外管11Bの前記断面形状は外管11B上に酸化ウラン粉末が堆積しにくく磁力除去部3のクリーニング性に優れる点で酸化ウラン粉末の通過方向の上流側に向かって尖形を有している、例えば、多角形、涙滴形状等が好ましく、涙滴形状が特に好ましい。棒状磁石10Aの外管11Aの前記断面形状は略円形になっている。
【0022】
磁石列12は、図3(a)及び図3(b)によく示されるように、軸体13と軸体13が貫通し、交互に配置された永久磁石片14及び継鉄15とを有している。軸体13は、永久磁石片14及び継鉄15を外管11から挿脱自在にすなわち取り出し可能になるように一体的に支持している。この軸体13は外管11よりも長い軸線長さを有している。継鉄15はスペーサとも称され、永久磁石片14と共に磁力線を発生する。この継鉄15は例えばステンレス鋼等の金属材料でリング状に形成され、軸体13が貫通する軸孔を有している。この継鉄15の軸線方向に垂直な平面における断面形状は外管11の前記断面形状と同一であるのが高い表面磁束密度を棒状磁石10が発揮する点で好ましく、外管11に間隙なく収納される断面形状及び寸法であるのが特に好ましい。継鉄15の厚さは永久磁石片14の厚さ、棒状磁石10の表面磁束密度等を考慮して適宜に決定される。永久磁石片14は、継鉄15と共に磁力線を発生させ、磁石材料でリング状に形成されて軸体13が貫通する軸孔を有している。この永久磁石片14は、ゴム磁石、フェライト磁石、希土類磁石、例えば、サマリウムコバルト系希土類磁石、ネオジウム系希土類磁石等の磁石材料で永久磁石として形成され、棒状磁石10が後述する範囲の表面磁束密度を発揮するようにその磁力が調整されている。永久磁石片14の軸線方向に垂直な平面における断面形状は継鉄15と同様に形成されるのが好ましい。永久磁石片14の厚さ以外の寸法は継鉄15と基本的に同様である。永久磁石片14の厚さは継鉄15の厚さ、棒状磁石10の表面磁束密度等を考慮して適宜に決定される。
【0023】
磁石列12は、永久磁石片14及び継鉄15を交互に隣接するように配列してなり、具体的には、両端に継鉄15が位置するように8枚の継鉄15と7枚の永久磁石片14とが継鉄15の間に永久磁石片14が位置するように配置されている。そして、永久磁石片14及び継鉄15はそれらの軸孔に軸体13が貫通しており、図3(a)に示されるように、軸体13によって一体的に支持され、外管11内に収納されている。磁石列12はその端部に外管11の開口を閉塞する蓋16を有している。この軸体13、永久磁石片14及び継鉄15はいずれも外管11に固着されてなく、単に挿入配置されているに過ぎないから、外管11の端部から突出する軸体13の端部を操作することによって磁石列12を外管11内に収納することも、また外管11から取り出すこともできる。すなわち棒状磁石10において磁石列12は外管11に挿脱自在に収納又は装填されている。磁石列12を外管11から取り出す過程が図3(b)に示されている。
【0024】
この棒状磁石10は、酸化ウラン粉末から金属異物を効率よく除去でき、一旦吸着した金属異物を容易に脱落させない点で、例えば、その表面磁束密度が0.2〜1.5テスラー(T)に設定されることができる。具体的には、フェライト磁石の場合は0.2テスラーに、ネオジウム系希土類磁石等の場合は1.5テスラーに設定できる。
【0025】
磁力除去部3は、図1及び図2に示されるように、酸化ウラン粉末の通路中に、酸化ウラン粉末の通過方向と交差する方向に複数列及び前記通過方向に複数段となるように配置されている。具体的には、磁力除去部3は、酸化ウラン粉末の通路中に、断面形状が略円形の棒状磁石10Aが5本並列に配置された酸化ウラン粉末の通過方向に対する1段目と、断面形状が涙滴形状の棒状磁石10Bが4本並列に配置された前記通過方向に対する2段目とを有している。磁力除去部3の1段目は、酸化ウラン粉末の通過方向に交差する方向、すなわち、この通過方向に対して略垂直な方向に5本の棒状磁石10Aが異物除去装置1の筐体に掛け渡されている。また、磁力除去部3の2段目は、酸化ウラン粉末の通過方向に交差する方向、すなわち、この通過方向に対して略垂直な方向に4本の棒状磁石10Bが図2に示されるように平面視したときに棒状磁石10Aの間に位置するように異物除去装置1の筐体に掛け渡されている。2段目において、棒状磁石10Bは、図1に示されるように、涙滴形状の尖形が酸化ウラン粉末の通過方向の上流側、すなわち1段目に向かうように略並列に配列されている。棒状磁石10Bがこのように配列されていると棒状磁石10Bに酸化ウラン粉末が堆積又は滞留することなく、クリーニング性に優れる。
【0026】
1段目及び2段目の水平方向に沿う棒状磁石10A及び棒状磁石10Bの配列間隔は、図2に示されるように、平面視したときに他方の棒状磁石10の間に位置するように、好ましくは他方の棒状磁石10との間隔17が小さくなるように、又は、平面視したときに他方の棒状磁石10との間隔17がなく他方の棒状磁石10に一部が重複するように、設定される。この例においては、他方の棒状磁石10との間隔17が小さくなるように設定されている。このように、複数段に配置された棒状磁石10を互い違いに、図1のように所謂「千鳥状」に配置すると、磁力除去部3を通過する酸化ウラン粉末は満遍なく棒状磁石10に接触するから酸化ウラン粉末に混入している金属異物を効率よく吸着できる。
【0027】
この磁力除去部3は外管11で被覆された磁石列12を有する棒状磁石10が回転不能に配置されている。このように、磁石列12が外管11で被覆されており、棒状磁石10が回転不能に異物除去装置1の筐体に掛け渡されていると、棒状磁石10に隙間がなく、また棒状磁石10及び筐体に可動部がないから、酸化ウラン粉末が隙間及び可動部に侵入することなく、筐体又は棒状磁石10に付着した酸化ウラン粉末を容易に除去でき、クリーニング性が向上する。
【0028】
篩4は、磁力除去部3に対して酸化ウラン粉末の通過方向の下流側に着脱自在に配置されている。この篩4は、磁力除去部3で除去しきれなかった金属異物、及び/又は、酸化ウラン粉末に混入している非金属異物を除去する。したがって、磁力除去部3に加えて篩4を備えていると、磁力除去部3の補助除去装置として金属異物の除去性能を向上させることができ、また、磁力除去部3及び篩4で異なる異物を除去することで各種異物例えば金属異物と非金属異物とを一挙に除去できる。
【0029】
篩4は、酸化ウラン粉末中の異物を除去できる程度の篩目開きを有していればよく、例えば、USAメッシュで#100(篩目開き0.150mm)〜#40(篩目開き0.425mm)の篩目開きの中から除去しようとする異物に応じて適宜に選択される。例えば、磁力除去部3とは別に非金属異物を除去しようとするのであれば混入が想定されるに非金属異物よりも小さな篩目開きに設定され、一方、非金属異物に加えて磁力除去部3の補助として金属異物をも除去しようとするのであれば混入が想定される金属異物よりも小さな篩目開きに設定する。なお、USAメッシュ#40は篩目開きを同じとすると#35Tylerメッシュに相当する。この篩4は異物除去装置1用に作製してもよく、また公知の篩を採用してもよい。
【0030】
異物除去装置1は、磁力除去部3及び篩4に対して酸化ウラン粉末の通過方向の下流側に配置された異物回収部5を有している。この異物回収部5は、異物除去装置1又は異物除去装置1を具備する装置をクリーニングする際に異物除去装置1に装着され、異物除去装置1を具備する装置内例えば成型器8(図4参照。)内に酸化ウラン粉末、金属異物及び非金属異物が落下するのを防止する。したがって、異物回収部5は異物除去装置1のクリーニング時に最も下流側に配置され、異物除去装置1を稼働させるときすなわち酸化ウラン粉末を通過させるときには機能しないように配置され、例えば異物除去装置1に装着されない。この異物回収部5は、図2に破線で示されるように、篩4の下流側に隣接して一体的に異物除去装置1又はその筐体に着脱自在に配置された板状部材であり、酸化ウラン粉末及び異物を通過させる孔を有していない。
【0031】
異物除去装置1は、磁力除去部3に対して酸化ウラン粉末の通過方向の上流側に配置された案内板6を有している。この案内板6は、磁力除去部3の上流側に配置され、酸化ウラン粉末が異物除去装置1と磁力除去部3との間隙を通過しないように、酸化ウラン粉末を磁力除去部3に案内する。したがって案内板6はじゃま板とも称される。案内板6の形状及び寸法等は酸化ウラン粉末を案内できれば特に限定されず、例えば、図1に示されるように、異物除去装置1の筐体を形成する側壁のうち棒状磁石10が掛け渡されていない側壁に棒状磁石10の軸線方向に沿って酸化ウラン粉末の通過方向に向かって互いの離間距離が短くなるように設けられた1対の平板が挙げられる。
【0032】
次いで、この発明に係る異物除去方法を説明する。この発明に係る異物除去方法は、酸化ウラン粉末から異物を除去する方法であり、酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程を有している。
【0033】
この発明に係る異物除去方法においては、準備した酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置例えば異物除去装置1に投入する。そうすると、酸化ウラン粉末及び混入している異物は案内板6で案内されて磁力除去部3に到達する。そして、案内板6で案内され磁力除去部3に到達した酸化ウラン粉末及び非金属異物は棒状磁石10に吸着されずに磁力除去部3を通過し、金属異物は磁力除去部3の棒状磁石10に吸着され磁力除去部3を通過しない。このとき、磁力除去部3は前記のように棒状磁石10が配置されているから、金属異物は棒状磁石10に満遍なく接触してそのほとんどが効率よく吸着される。そして、一旦吸着された金属異物は酸化ウラン粉末の通過等によって棒状磁石10の下流側に回り込んで酸化ウラン粉末の通過を阻害することもなく作業性を犠牲にしない。なお、棒状磁石10の下流側に回り込んだ金属異物は前記表面磁束密度を有する棒状磁石10から脱落しない。
【0034】
一方、棒状磁石10に吸着されず磁力除去部3を通過した酸化ウラン粉末及び非金属異物は篩4に到達する。そうすると、非金属異物及び棒状磁石10に吸着されなかった金属異物は篩4の篩目開きよりも大きいから篩4を通過できずに篩4上に残存して篩4を通過しない。一方、酸化ウラン粉末は通常篩4の篩目開きよりも小さな粒径を有しているから篩4を通過して異物除去装置1が装着された装置例えば成型器8(図4参照。)に到達する。
【0035】
このようにして磁力除去部3及び篩4を備えた異物除去装置1によって異物が混入している酸化ウラン粉末から異物を効率よく除去することができる。
【0036】
酸化ウラン粉末が異物除去装置1を通過した後には異物除去装置1をクリーニングする。磁力除去部3においては、1段目の棒状磁石10Aは異物除去装置1の開口に近接しているから棒状磁石10A上に堆積又は滞留した酸化ウラン粉末は清掃具又は送風等によって容易にクリーニングできる。一方、2段目の棒状磁石10Bはその断面形状が涙滴形状になっているからその上に酸化ウラン粉末がほとんど堆積せず通常クリーニングを要しない。また、磁石列12は外管11で被覆されており、棒状磁石10はいずれも回転不能に配置されているから、棒状磁石10には隙間がなく、また棒状磁石10及び筐体に可動部もなく、磁力除去部3に残存する酸化ウラン粉末を容易に除去できる。このようにして磁力除去部3に残存する酸化ウラン粉末を容易かつ効果的にクリーニングできる。
【0037】
一方、磁力除去部3の棒状磁石10に吸着された金属異物をクリーニングするには、例えば、異物回収部5を磁力除去部3の下流側に設置した後に、図3(b)に示されるように、棒状磁石10の外管11から軸体13を引き出して磁石列12を抜脱する。すなわち棒状磁石10の磁石列12を外管11から抜脱して棒状磁石10に吸着された金属異物を取り外すクリーニング工程を実施する。そうすると、棒状磁石10の表面磁束密度は消滅し、棒状磁石10の外管11に吸着されていた金属異物は重力によって落下する。このようにして金属異物を容易に棒状磁石10から脱落させることができる。棒状磁石10から脱落した金属異物は篩4又は異物回収部5で補足され、異物除去装置1が装着された装置例えば成型器8(図4参照。)及び異物除去装置1に残存することなく、次ぎに処理する酸化ウラン粉末への混入が防止される。
【0038】
このようにして磁力除去部3から残存する酸化ウラン粉末及び金属異物を容易に異物除去装置1外に排出すなわち除去できる。
【0039】
篩4においては、例えば、異物回収部5を設置せず、又は、異物回収部5を設置した後に異物除去装置1の筐体から取り外すことによって、篩4で補足した非金属異物又は金属異物を異物除去装置1が装着された装置例えば成型器8(図4参照。)及び異物除去装置1に残存させることなく異物除去装置1外に排出できる。このようにして篩4から非金属異物又は金属異物を容易に除去できる。
【0040】
篩4のクリーニングの前又は後に異物回収部5を異物除去装置1の筐体から取り外すことによって異物回収部5で補足した異物を異物除去装置1外に排出でき、この異物を異物除去装置1が装着された装置例えば成型器8(図4参照。)及び異物除去装置1に残存させることなく除去できる。このようにして異物回収部5から異物を容易に除去できる。
【0041】
このように、磁石列12が外管11に挿脱自在に収納された棒状磁石10を有する磁力除去部3、篩4及び異物回収部5を備えた異物除去装置1は、外管11から磁石列12を抜脱することによって、また、篩4及び異物回収部5を異物除去装置1から取り出すことによって、酸化ウラン粉末及び異物を異物除去装置1に残存させることなく容易に異物除去装置1外に排出できる。したがって、この発明に係る異物除去装置及びこの発明に係る異物除去方法によれば、異物混入のない安定した品質の酸化ウラン粉末、濃縮度の異なる酸化ウラン粉末を連続して通過させても濃縮度の異なる酸化ウラン粉末が実質的に混入していない高品質の酸化ウラン粉末を、提供することができる。
【0042】
次いで、この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法を説明する。この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法は、酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程と、この発明に係る異物除去装置を通過させた酸化ウラン粉末を成形する工程と、成形した成形体を焼成する工程とを有している。
【0043】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法においては、好ましくは、酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程を実施する前、又は、通過させる工程を実施した後に、棒状磁石10の磁石列12を外管11から抜脱して棒状磁石10に吸着された金属異物を取り外すクリーニング工程を実施する。このクリーニング工程は前記したこの発明に係る異物除去方法における「棒状磁石の磁石列を外管から抜脱して棒状磁石に吸着された金属異物を取り外すクリーニング工程」と基本的に同様であるので説明を省略する。このクリーニング工程を実施すると、直前に使用又は製造した濃縮度の異なる酸化ウラン粉末の混入を防止できる。
【0044】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法においては、酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程を実施する。この工程は前記したこの発明に係る異物除去方法における「酸化ウラン粉末をこの発明に係る異物除去装置を通過させる工程」と基本的に同様であるので説明を省略する。
【0045】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法においては、次いで、得られた高品質の酸化ウラン粉末をペレット状に成形する工程を実施する。成形に当っては酸化ウラン粉末に他の添加剤等を添加して均一に混合するのが好ましい。このようにして調製した混合物を所定の形状に成形する。成形は各種の成形方法を採用でき、また成形条件も酸化ウラン粉末のペレットを作製するのに選択される公知の成形条件を採用できる。
【0046】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法においては、次いで、成形した成形体を焼成する工程を実施する。成形体の焼成は酸化ウラン粉末のペレットを作製するのに選択される公知の焼成方法及び焼成条件を適宜に選択できる。
【0047】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法においては、所望により、得られた酸化ウランペレットの外観検査を実施する。この発明においては、金属異物が除去された酸化ウラン粉末で酸化ウランペレットが製造されているから、製造された酸化ウランペレットを正確に検査でき、酸化ウランペレットの歩留りが高くなる。
【0048】
このようにして製造された酸化ウランペレットは、使用する酸化ウラン粉末がこの発明に係る異物除去装置を通過させて得られた異物混入のない安定した高品質の酸化ウラン粉末であるから、異物混入のない安定した品質を有しており、また濃縮度の異なる酸化ウラン粉末を実質的に含有していない高い品質を有している。したがって、この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法によれば異物混入のない安定した高い品質を有する酸化ウランペレットを高い歩留りで提供できる。
【0049】
この発明に係る燃料集合体の製造方法を説明する。この発明に係る燃料集合体の製造方法は、この発明に係るこの発明に係る酸化ウランペレットの製造方法で製造された酸化ウランペレットをジルコニウム合金製の燃料被覆管に収納して密閉溶接する工程と密閉溶接した燃料棒を集束する工程とを有している。
【0050】
この発明に係る燃料集合体の製造方法においては、この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法によって製造された酸化ウランペレットを準備する。この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法は前記した通りであるので説明を省略する。
【0051】
この発明に係る燃料集合体の製造方法においては、酸化ウランペレットをジルコニウム合金製の燃料被覆管に収納して密閉溶接する工程を実施し、次いで、密閉溶接した燃料棒を集束する工程を実施する。この発明に係る燃料集合体の製造方法における密閉溶接する工程及び集束する工程は、いずれも、燃料集合体を製造するのに選択される公知の方法及び条件を適宜に採用して、実施できる。
【0052】
この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法においては、所望により、製造された燃料集合体の検査を実施する。燃料集合体の検査は、例えば、燃料集合体のGd濃度検査等が挙げられる。Gd濃度検査は、Gdの磁化率が酸化ウランペレット中のGd濃度に比例することを利用したGd磁化法が通常用いられる。この検査において、酸化ウランペレットに金属異物が混入しているとGdの磁化率の測定結果に影響を与え、正確なGdの磁化率を測定できなくなるが、この発明においては、金属異物が除去された酸化ウラン粉末で酸化ウランペレットが製造されているから、燃料集合体のGdの磁化率を正確に測定できる。したがって、製造された燃料集合体を正確に検査でき、燃料集合体の歩留りが高くなる。
【0053】
このようにして製造された燃料集合体は、使用する酸化ウランペレットがこの発明に係る酸化ウランペレットの製造方法で製造された異物混入のない安定した高品質の酸化ウランペレットであるから、異物混入のない安定した品質を有しており、また濃縮度の異なる酸化ウラン粉末を実質的に含有していない高い品質を有している。したがって、この発明に係る燃料集合体の製造方法によれば異物混入のない安定した高い品質を有する燃料集合体を高い歩留りで提供できる。
【0054】
また、このようにして製造された燃料集合体は、異物混入のない安定した高品質の酸化ウラン粉末で製造されているから、Gdの磁化率を正確に測定でき、燃料集合体の不良品発生を低減し、高品質の原子炉用燃料集合体を製造できる。特に、検査工程において、たとえGdの磁化率の測定値が許容範囲内であったとしても不良と判断される不良品発生を抑えることができる。したがって、この発明に係る燃料集合体の製造方法によれば磁化率異常のない燃料集合体を歩留りよく製造できる。
【0055】
酸化ウラン粉末を用いた酸化ウランペレットの製造方法、及び、燃料集合体の製造方法は、例えば、「軽水炉燃料のふるまい」(著者:軽水炉燃料のふるまい編集委員会、出版社名財団法人原子力安全研究委員会、刊行年月日:平成10年7月)等に記載されている。
【0056】
この発明に係る異物除去装置は、前記内容に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。例えば、異物除去装置1において、酸化ウラン粉末の通過方向に対して1段目に断面形状が略円形の棒状磁石10Aが配置されているが、この発明において、酸化ウラン粉末の通過方向に対して1段目に断面形状が通過方向の上流側に向かって尖形を有している涙滴形状の棒状磁石が配置されていてもよい。
【0057】
異物除去装置1において、磁力除去部3は5本の棒状磁石10Aが1段目に、4本の棒状磁石10Bが2段目に配置されているが、この発明において、棒状磁石は3段以上に配置されていてもよく、また各段に配置される棒状磁石の数は特に限定されない。
【0058】
異物除去装置1において、磁力除去部3は複数の棒状磁石10が一方向に並列に配置されているが、この発明において、磁力除去部は複数の棒状磁石が他方向に並列に配置されていてもよい。例えば、磁力除去部は複数の棒状磁石が互いに直交する方向に複数段に所謂井桁状に配置されていてもよい。
【0059】
異物除去装置1において、棒状磁石10は永久磁石としての永久磁石片14を備えているが、この発明において棒状磁石は永久磁石に代えて電磁石を備えていてもよく、また永久磁石と電磁石とを備えていてもよい。電磁石を採用する場合には棒状磁石に吸着された金属異物は電磁石への通電を遮断することによって除去される。
【0060】
異物除去装置1において、篩4は磁力除去部3に対して酸化ウラン粉末の通過方向の下流側に1つ配置されているが、この発明において、篩は複数配置されていてもよく、また、磁力除去部に対して酸化ウラン粉末の通過方向の上流側に1つ又は複数配置されていてもよく、さらに通過方向の上流側及び下流側にそれぞれ1つ又は複数配置されていてもよい。
【0061】
異物除去装置1において、異物回収部5は異物除去装置1又はその筐体に着脱自在に配置された板状部材であるが、この発明において、異物回収部は、篩に一体的に設けられた折畳可能な板状部材であってもよく、篩とは別体として開閉自在に配置された折畳可能な板状部材であってもよい。
【0062】
この発明に係る異物除去方法、この発明に係る酸化ウランペレットの製造方法及びこの発明に係る燃料集合体の製造方法は、前記内容に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
図1〜図3に示される異物除去装置1を準備した。その詳細を以下に示す。
【0064】
異物除去装置1における磁力除去部3は、軸線間距離が55mmで互いに平行かつ回転不能に軸支された5本の棒状磁石10A(1段目)と、軸線間距離が55mmで互いに平行かつ回転不能に軸支された4本の棒状磁石10B(2段目)とを、互い違いになるように「千鳥状」に配置した。また、4本の棒状磁石10Bそれぞれの軸線が2本の隣接する棒状磁石10Aの軸線間距離の中央に位置しており、棒状磁石10A(1段目)と4本の棒状磁石10B(2段目)との軸線間距離が50mmであった。5本の棒状磁石10Aそれぞれは、軸体13に永久磁石片14及び継鉄15が交互に挿入されてなる磁石列12が断面円形(直径25mm)で外周面が鏡面加工された外管11に挿脱自在に収納されており、同一形状で同寸であった。棒状磁石10Aそれぞれの表面磁束密度は1.00Tであった。一方、4本の棒状磁石10Bそれぞれは、断面が涙滴形状であること以外は棒状磁石10Aと基本的に同様である。磁力除去部3における1段目の両側に配置された棒状磁石10Aの斜め上方に案内板6を設置した。
【0065】
USAメッシュで#100の篩目開きを有する篩4を磁力除去部3に対して酸化ウラン粉末の通過方向の下流側に配置し、板状の異物回収部5を篩4に対して酸化ウラン粉末の通過方向の下流側に着脱自在に配置した。
【0066】
次いで、この異物除去装置1の異物回収部5を取り外して、約5tの酸化ウラン粉末を異物除去装置1に投入して磁力除去部3及び篩4を通過させ、棒状磁石10A上に堆積した酸化ウラン粉末を清掃具で落下させて除去した。その後、篩4を取り外し、また異物回収部5を篩4の下流側に装着して棒状磁石10A及び棒状磁石10Bの磁石列12を外管11から抜脱して棒状磁石10A及び棒状磁石10Bに吸着された金属異物を異物回収部5で補足した。このようにして、棒状磁石10A及び棒状磁石10Bすなわち磁力除去部3と篩4とで除去された金属異物は約1.25gであった。なお、この酸化ウラン粉末には非金属異物は混入してなかった。
【0067】
この異物除去装置1において、棒状磁石10A上に堆積した酸化ウラン粉末のクリーニングは容易で棒状磁石10B上には酸化ウラン粉末はほとんど堆積せずクリーニングする必要はなかった。一方、棒状磁石10A及び棒状磁石10Bに吸着された金属異物は磁石列12を外管11から抜脱することで容易に脱落した。なお、篩4上に補足された異物は篩4を異物除去装置1から取り外すことで容易にクリーニングできた。
【0068】
このようにして異物除去装置1を通過させた酸化ウラン粉末を、公知の成形方法及焼成方法に準拠して、成形、焼成して酸化ウランペレットを製造した。この酸化ウランペレットを、公知の方法に準拠して、ジルコニウム合金製の燃料被覆管に収納して密閉溶接し、次いで燃料棒を集束して燃料集合体を複数製造した。このようにして製造した複数の燃料棒についてGd濃度検査を行ったところ、いずれもほど同等の濃度を有しており、磁化率異常のない燃料集合体を歩留りよく製造できた。
【符号の説明】
【0069】
1 異物除去装置
3 磁力除去部
4 篩
5 異物回収部
6 案内板
8 成型器
9 ホッパー
10、10A、10B 棒状磁石
11、11A、11B 外管
12 磁石列
13 軸体
14 永久磁石片
15 継鉄(スペーサ)
16 蓋
17 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ウラン粉末を通過させて酸化ウラン粉末中の異物を除去する異物除去装置であって、
磁石片及び継鉄が交互に配列された磁石列を外周面が鏡面加工されたステンレス製の外管に挿脱自在に収納した棒状磁石を、前記通過方向と交差する方向に複数列及び前記通過方向に複数段となるように、回転不能に配置してなる、前記酸化ウラン粉末の通路中に配置された磁力除去部と、
前記磁力除去部に対して前記通過方向の上流又は下流側に配置された篩と
を有する異物除去装置。
【請求項2】
前記通過方向の2段目以降に配置された前記棒状磁石は、その断面形状が前記通過方向の上流側に向かって尖形の涙滴形状である請求項1の異物除去装置。
【請求項3】
前記篩は、前記下流側に配置されている請求項1又は2の異物除去装置。
【請求項4】
前記磁力除去部に対して前記通過方向の下流側に配置された異物回収部を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記異物回収部は、板状部材である請求項4に記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記異物回収部は、前記篩と一体的に配置されている請求項4又は5に記載の異物除去装置。
【請求項7】
酸化ウラン粉末を請求項1〜6のいずれか1項に記載の異物除去装置を通過させる工程を有する酸化ウラン粉末から異物を除去する異物除去方法。
【請求項8】
酸化ウラン粉末を請求項1〜6のいずれか1項に記載の異物除去装置を通過させる工程と、前記異物除去装置を通過させた酸化ウラン粉末を成形する工程と、成形した成形体を焼成する工程とを有する酸化ウランペレットの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の酸化ウランペレットの製造方法で製造された酸化ウランペレットをジルコニウム合金製の燃料被覆管に収納して密閉溶接する工程と、密閉溶接した燃料棒を集束する工程とを有する燃料集合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−225771(P2012−225771A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93641(P2011−93641)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)
【Fターム(参考)】