説明

異物除去装置

【課題】 重ね合わされた状態のまま移送中の缶蓋から間隙に挟持されている異物を連続的に除去することのできる異物除去装置の提供。
【解決手段】 重ね合わせた缶蓋を移送路中を連続的に移送しながら、前記缶蓋の間隙に挟持されている異物を除去する異物除去装置であって、前記移送路を湾曲させて湾曲部を形成し、該湾曲部の外周側に除塵装置を配置したことを特徴とする異物除去装置。好ましくは、前記湾曲部は、移送路中に複数箇所有り、少なくとも2つの湾曲部は互いに異なった方向に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の製造工程における部品や完成品に付着したり、混入したりした異物を除去することは重要であり、多くの方法が知られている。簡単な異物除去の方法としては、対象物を目視しながら異物を手やブラシで取り除く方法がある。工業的には、対象物を洗浄液に浸けたり、対象面を自動的にブラシ清掃したり、対象物に気体や液体を噴射して異物を除去したりしている場合が多い。
【0003】
しかし、複雑な構造や特殊な形態の対象物の異物除去には、それぞれの対象物や付着している異物に対応した異物除去方法が考えられている。例えば、特許文献1には、金型の異物除去装置が開示されている。金型は複雑な構造をしているものが多く、一方で異物が付着していると製品の寸法精度が落ちるため、異物除去は重要な課題である。さらに、金型の生産性を挙げるためには、異物除去の時間をできるだけ短くする必要がある。そこで、特許文献1においては、先端にスクレーパとブラシとエジェクタを配備したアームを持つロボットを提案している。これにより、金型に付着した異物を迅速完全に除去できるとしている。
【0004】
特許文献2には、連続して配列されているチューブ(短管)の異物除去装置が開示されている。この異物除去装置は、一列に配列して搬入されてくるプラスチックコーティングされたチューブを、列状に配列されたまま、除電して密閉室へ導き、チューブに空気を噴射して異物を剥離し、剥離した異物を密閉室の下部から空気とともに吸引して異物を取り除いている。
【0005】
特許文献3には、半導体集積回路装置に付着しているレジンフラッシュバリ等の異物を連続的に除去する装置を開示している。この異物除去装置においても、連続的に搬入される半導体集積回路装置に複数のノズルから空気を噴射して異物を剥離させ、半導体集積回路装置搭載治具の下部に配置した吸引装置により吸引している。そして、ノズルによる空気の噴射量、噴射方向、半導体集積回路装置搭載治具の移動速度等の作業全体を制御しながら最適な異物除去を実行している。
【特許文献1】特開2005−319351号公報
【特許文献2】特開2007−175678号公報
【特許文献3】特開平09−27506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、製造工程における部品や製品の異物除去装置は、対象物や異物除去目的に応じて各種の装置がある。しかし、缶蓋のような平板構造をしており、重ね合わせて包装し、保管、輸送などされる物品は、製造段階の梱包工程や、使用段階の開梱工程などにおいて一枚ずつ離間状態にして、缶蓋表面に挟持されたり、付着していたりする異物を除去している。特に、重ね合わせて包装されている缶蓋を開梱して缶本体に取り付けていく工程においては、重ね合わさった部分に異物が混入していると、缶の中に異物が混入する恐れがあり完全な除去の必要がある。また、重ね合わせた缶蓋は開梱の際に梱包紙の紙片や塵埃が重ね合わせ部に挟み込まれることがある。一端、重ね合わせ部に挟み込まれた異物は、脱落が容易ではなくなり、缶本体への缶蓋取り付け工程まで持ち込まれ、缶の中に混入する恐れがある。食品工業などでは、缶の内容物は食品である場合が多く、このような異物はその前に完全に除去しておく必要がある。
【0007】
缶蓋を開梱して使用前に殺菌工程を有するような場合には、重ね合わされた缶蓋を一枚ずつ離間させて、表裏とも殺菌しているので、その際に異物除去が簡単に実施できる。しかし、缶蓋製造工程で殺菌をした缶蓋については、再度の殺菌を行わなくてもよい場合もある。このような場合は、開梱した缶蓋を、すぐに缶本体への缶蓋取り付け工程に移送することになる。この場合、缶本体への缶蓋取り付け工程に移送される缶蓋に付着している異物は完全に除去しておく必要がある。缶蓋製造段階においては、梱包前に完全に異物を除去したとしても、梱包及び開梱時に梱包材料の破片などの異物が混入した場合は、缶本体への缶蓋取り付け工程のすぐ前でこれらの異物を除去する必要がある。しかし、重ね合わされている缶蓋を一枚ずつ離間させて、空気噴射などにより異物を除去することは非常に非効率的な作業である。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を踏まえ、重ね合わされた状態のまま移送中の缶蓋の間隙に挟持されている異物を連続的に除去することのできる異物除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明者等は、以下の発明を完成した。
本発明は、重ね合わせた缶蓋を移送路中を連続的に移送しながら、前記缶蓋の間隙に挟持されている異物を除去する異物除去装置であって、前記移送路を湾曲させて湾曲部を形成し、該湾曲部の外周側に除塵装置を配置したことを特徴とする異物除去装置である。
【0010】
好ましい本発明は、前記湾曲部が前記移送路中に複数箇所有り、少なくとも2つの湾曲部は互いに異なった方向に湾曲していることを特徴とする前記異物除去装置である。
【0011】
好ましい本発明は、前記移送路が前記重ね合わせた缶蓋の外周方向への移動を規制する構造であることを特徴とする前記異物除去装置である。
【0012】
好ましい本発明は、前記移送路が複数の棒又は管を平行に配列した構造であり、前記平行に配列した棒又は管は前記重ね合わせた缶蓋を内接させるように形成されていることを特徴とする前記異物除去装置である。
【0013】
好ましい本発明は、前記移送路が内部を前記重ね合わせた缶蓋が内接して移送される管状体であり、少なくとも前記湾曲部の壁面に開口があることを特徴とする前記異物除去装置である。
【0014】
好ましい本発明は、前記移送路は入口側が出口側より高い位置にあり、前記缶蓋は重力により移送される構造であることを特徴とする前記異物除去装置である。
【0015】
好ましい本発明は、前記缶蓋を前記移送路の入口側から押圧する押圧手段を備えたことを特徴とする前記異物除去装置である。
【0016】
好ましい本発明は、前記缶蓋よりも前記移送路中の移送抵抗が大きく、前記移送路中における重ね合わせた前記缶蓋の列の最前部、最後部又は途中に配置する缶蓋転倒防止部材を備えたことを特徴とする前記異物除去装置である。
【0017】
好ましい本発明は、前記移送路の出口には、前記缶蓋の移送速度を制御する移送速度制御手段を備えたことを特徴とする前記異物除去装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、重ね合わされた状態のまま移送中の缶蓋から、間隙に挟持されている異物を連続的に除去することのできる異物除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の異物除去装置は、重ね合わせた缶蓋を移送路中を連続的に移送しながら、缶蓋の間隙に挟持されている異物を除去する装置であり、移送路を湾曲させて湾曲部を形成し、湾曲部の外周側に除塵装置が配置されている。
【0020】
缶蓋の移送路は、重ね合わされ積み重ねられた複数の缶蓋が、重ね合わされたまま一列に列をなして移送路中を、重ね合わされている方向に移動していく構造となっている。この際、缶蓋は、移送路中では缶蓋の外周方向への自由な移動はできないように制限されている。言い換えれば、一列に並んで重ね合わされた缶蓋が、湾曲部を持つ移送路の中を移送路に案内されて重ね合わされたまま、前の缶蓋にほぼ密着したまま続いて移送されていくように移送路が形成されている。例えば、円形の缶蓋であれば、重ね合わせた缶蓋は円柱状をしており、この円柱が隙間なく内部に挿入できるパイプ(管)等の管状体を移送路とすることができる。通常のパイプを使用する場合は、上述の湾曲部の壁面に開口を形成することが必要である。これは、湾曲部に除塵装置を配置して、缶蓋に挟持されている異物を除塵装置により取り除く際の異物の通路を確保するためである。この為、開口は、想定される異物が通過できる程度の小さな孔やスリットが複数形成されている構造や、パイプに形成した比較的大きな孔に、想定される異物よりも大きな目の網を張った構造でもよい。また、管状体としては、金属やプラスチック製のパイプやチューブ、あるいは網製のパイプなどでもよい。
【0021】
移送路の好ましい形態として、複数の棒、条又は管(以下、棒等という。)が平行に配置されて、重ね合わせた缶蓋が平行に配置された棒等に内接するように形成したものがある。平行に配置する棒等の本数は、複数本であればよいが、2〜6本程度が好ましく、3〜5本が特に好ましい。そして、これらの複数の棒等が作る断面形状は、その本数に合わせて缶蓋の外周面を内包するような三角形、四角形、五角形などとなる。棒等の材料はどのようなものでもよいが、例えば金属やプラスチック製の丸棒、角棒、パイプ、条、ロープなどが挙げられる。なお、これらの棒等は缶蓋との接触部は、滑りやすいことが好ましく、特に缶蓋の移動方向に対して滑らかであることが好ましい。
【0022】
その他にも、移送路としては、樋のようにパイプの一部を利用したもの、ベルトコンベアのベルトのようにゴム等のベルトを幅方向に湾曲させたもの等としてもよい。棒等で形成される空間は、上記の重ね合わせた缶蓋の円柱が挿入されたときに、一枚々々の缶蓋が重なった状態のまま、その外周方向に自由に移動して、棒等で形成された移送路から脱落できないような構造になっていればよい。この場合、樋のような移送路では重力の作用も利用して缶蓋の脱落を規制している。また、通常は、移送路は移動しないで、缶蓋の列だけが移送路中を移動する構造であることが多いが、移送路と缶蓋が同時に移動して缶蓋が移送される構造としてもよい。この場合は、移送路の缶蓋との接触面は滑らかな必要はない。
【0023】
移送路は、湾曲部を有している。湾曲部は、移送路中に複数箇所有り、少なくとも2つの湾曲部は互いに異なった方向に湾曲していることが好ましい。通常、湾曲部は、2〜6箇所好ましくは、3〜4箇所に設け、それぞれ異なった方向に湾曲している。そして、それぞれの湾曲部の外周側には除塵装置が配置されており、この湾曲部でゴミや紙片、紙粉などの異物を除去している。
【0024】
除塵装置は、空気吸入式の集塵機や空気噴射式の除塵機、又はこれらの両者を備えた除塵装置を用いることができる。空気吸入式の集塵機を備えた除塵装置は、缶蓋に付着、挟持されている異物を吸入してしまい、周囲に拡散させないので好ましい除塵装置である。集塵機を移送路の湾曲部の外周側に配置しているのは、移送路が湾曲していると、移送される缶蓋の列が作る円柱も移送路に沿って湾曲する。そうすると、缶蓋の列が作る円柱は、湾曲部の外周側で缶蓋に隙間を生じる。隙間が生じると、缶蓋間に挟持されていた異物は、挟持の保持力を失って移動可能となる。このような状態の異物を除塵装置で除去することは容易である。特に、集塵機で移送路の湾曲部の外周側から吸引すれば容易に異物除去ができる。
【0025】
ここで、缶蓋の作る円柱の湾曲部の外周側の異物は容易に除去できるが、湾曲部の内周側の異物は容易に除去できない恐れがある。この為、移送路の湾曲部を複数箇所形成し、それぞれの湾曲部の湾曲方向を異なった方向にすることが好ましい。そうすれば、缶蓋の作る円柱の湾曲部の外周側の異物は、それぞれの湾曲部で缶蓋の異なった側面方向に間隙が生じ、それぞれの側面方向に挟持されていた異物を容易に除去できる。
【0026】
通常、缶蓋は、重なり合って一列の柱状になって移送路中を滑りながら移動していく。この場合、缶蓋の移動の推進力は、重力であってもよいし、移送路入口側からの押圧力であっても、この両者を併用してもよい。推進力として重力を利用する場合は、移送路は入口側が出口側より高い位置にあり、そして入口から出口まで常に入口側が高くなるように傾斜していることが好ましい。さらに、入口側の傾斜が出口側の傾斜より大きくなっていることが好ましい。また、移送路の缶蓋と接する面は、平滑で缶蓋が滑りやすいことが好ましい。このような構造とすることで、缶蓋は、移送路中を重力により落下するように移動していき、移送路の入口側にあるほど強く重力による移動方向への力を受けるので、連続した列状の缶蓋は、前の缶蓋である移動方向下流側の缶蓋から離れることなく移動していくことができる。移送路の上流側より下流側の傾斜を緩やかにできない場合は、下流側の部分の移送路と缶蓋の移動抵抗を大きくするとよい。移動抵抗を大きくする方法としては、移送路の断面を少し小さくして缶蓋の移動を窮屈にしたり、移送路の缶蓋との接触面の摩擦抵抗を挙げるため粗面にしたり、摩擦抵抗の大きい材料を貼り付けたりすればよい。
【0027】
移送路の入口側から缶蓋を押圧する押圧手段を備えた異物除去装置であれば、入口側と出口側の高低差を考慮する必要がない。むしろ、移送路中に缶蓋が急傾斜で下部へ落下していく箇所があると、連続した列状の缶蓋として移動中に、前の缶蓋が急速に落下し、後の缶蓋と離れてしまうことがある。そうすると、缶蓋が支えを失って移送路中で転倒し移動できなくなったり、移送路から脱落してしまったりする恐れがある。この為、移送路中に急傾斜を設けなければならない場合は、この部分の移送路と缶蓋の移動抵抗を大きくするとよい。移動抵抗を大きくする方法としては、移送路の断面を少し小さくして缶蓋の移動を窮屈にしたり、移送路の缶蓋との接触面の摩擦抵抗を挙げるため粗面にしたり、摩擦抵抗の大きい材料を貼り付けたりすればよい。
【0028】
重力による自然落下力を利用した構造の移動方式であっても、入口側からの押圧力を利用した移動方式移動方式であっても、移送路の出口に缶蓋の移送速度を制御する移送速度制御手段を備えて、出口における移送速度制御手段が缶蓋の移動速度の律速にすれば、重なり合って列を作って移動している缶蓋は途中で離間し転倒したり、移送路外へ脱落したりすることがない。この場合の移送速度制御手段としても、上記の缶蓋の移動抵抗を大きくする手段を採用すればよい。
【0029】
重ね合わせた缶蓋の列を移送路中に導入して移送を開始する場合。最前部に位置する缶蓋は、前に何もないと前側へ転倒してしまう恐れがある。最初の缶蓋が転倒すれば、後続の缶蓋も転倒して正常な缶蓋の列の移動ができなくなる。そこで、この異物除去装置は、缶蓋よりも移送路中の移送抵抗が大きい缶蓋転倒防止部材を備えていることが好ましい。この缶蓋転倒防止部材は、移送路中における重ね合わせた前記缶蓋の列の最前部に配置して後続の缶蓋が連続して追随し易いように、缶蓋よりも移送路中の移送抵抗が大きくなっている。そして、この缶蓋転倒防止部材は、移動中に前に何もなくても缶蓋のように転倒することはない。缶蓋転倒防止部材の具体的な形状としては、缶蓋が円形の場合は、例えば、移送路の断面とほぼ同じ断面を持つ球や楕円球、卵型、これらの半割りにしたもの、移送路中で転倒しない程度の厚さを持つ円盤(比較的薄い円柱)等が挙げられる。缶蓋が円形以外の場合は、その形状に合わせた移送路に内接する断面形状を持つ柱状体などとすればよい。
【0030】
転倒防止部材は、缶蓋の異物除去操作を終了するときの缶蓋の列の最後尾や、途中の缶蓋の転倒防止にも利用できる。缶蓋の列の最後尾では、缶蓋が移動方向後側に転倒することを防ぐためである。この為、最後尾に配置する缶蓋転倒防止部材は、缶蓋よりも移送路内での移動抵抗が小さいことが臨まれる。そして、移動中は前の缶蓋に押圧力を作用することができるものがよい。また、缶蓋の列の途中に設ける缶蓋転倒防止部材は、缶蓋の移動速度を調節し、移送途中で缶蓋の列に間隙ができ離間しようとしたときに缶蓋の転倒を防止するものである。この為、缶蓋の列の途中に設ける缶蓋転倒防止部材は、缶蓋と同じ程度の移動抵抗であることが好ましい。なお、缶蓋の列の最後尾に配置する缶蓋転倒防止部材も途中に設ける缶蓋転倒防止部材も、その形状は、上述の缶蓋の列の最前部に配置する缶蓋転倒防止部材と同じでもよい。
【0031】
[具体的実施形態]
本発明を実施するための最良の形態を必要に応じて図面を参照にして説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の好ましい形態における例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0032】
本発明の異物除去装置の具体的実施形態を図1に示した。図1において、(a)図は異物除去装置1の正面図であり、(b)図は(a)図のA部分の平面図である。この異物除去装置1は、移送路が立体的に曲がりくねっており、(a)図に示すように、正面図上で移送路上流部2は第一湾曲部2a、第二湾曲部2bでそれぞれ左右に湾曲しながら比較的急な傾斜をもって図の手前側に伸びるように形成されており、移送路下流部3は右方向へ約90度屈曲し、移送路上流部2よりも緩い傾斜で出口3cに向かう。移送路下流部3は、A部の平面図1(b)に示すように、平面図上で第三湾曲部3a、第4湾曲部3bでそれぞれ左右に湾曲している。
【0033】
この移送路は4本の平滑なステンレス製のパイプ11を、移送路の軸方向に対する垂直断面が正方形となるように、平行に配置している。なお、移送路の入口と出口以外には図示していないが、所定距離ごとに中空のフランジを設けて、4本のパイプ11を固定している。この移送路は、円形の缶蓋を移送することを想定しており、4本のパイプ11が作る正方形の断面は、円形の缶蓋が4本のパイプ11が作る正方形断面に内接するような大きさになっている。
【0034】
図2,3には、それぞれ、缶蓋を移送中の移送路上流部2、移送路下流部3の湾曲部の拡大斜視図を示しているが、4本のパイプ11はフランジ9に挟まれて、移動できないように固定されている。なお、このフランジ9は、それぞれのパイプを固定しているが、缶蓋の移動の妨げにならないように内部は中空であり、パイプ11による移送路形成の利便性を考えて、1箇所の側部が解放されている。そして、缶蓋8は、重ね合わされて円柱状になっており、この円柱状のまま移送路中を滑らかに移動していくことになる。
【0035】
図1、2に示すように、移送路上流部2の左へ湾曲している第一湾曲部2a、右へ湾曲している第二湾曲部2bのそれぞれの湾曲部の外周側に第一除塵装置4,第二除塵装置5が配置されている。この除塵装置は、空気噴射式の除塵装置でもよいが、異物や塵埃を周囲に拡散させないため、吸引式の除塵装置を用いている。なお、除塵装置は、それぞれの湾曲部に1つひとつ設置してもよいが、それぞれの湾曲部には吸引ノズルを配置し、連絡チューブによりひとつの吸引装置本体に異物を吸引するようにしてもよい。
【0036】
この移送路は、重力の作用を利用した自然落下式の移送路であり、移送路上流部2の傾斜は比較的急で、60〜30度程度である。そして、移送路の第一湾曲部2aの湾曲と、第二湾曲部2bの湾曲は、図1(a)の正面図でみてそれぞれほぼ左右に向いている。そして、第一除塵装置4、第二除塵装置5の吸引ノズルはこの湾曲部の外周側に配置されているので、缶蓋8の間に挟まった異物をそれぞれ缶蓋8の右と左から順に吸引することになる。このようにして缶蓋8の両側に挟まっていた異物を順に取り除くことができる。
【0037】
また、この第一湾曲部2aと第二湾曲部2bの湾曲は、上や下に凸になるように湾曲していない。移送路を上や下に凸になるように湾曲させると、湾曲部で移送路の傾斜が大きく変化し、移送路中を移動するそれぞれの缶蓋の移動速度が変化しやすく、前を移動している缶蓋より後を移動している缶蓋の移動速度が遅くなる可能性がある。後を移動している缶蓋の移動速度が遅くなると、缶蓋の列の間に間隙が生じて、缶蓋が転倒してしまう恐れがある。この為、移送路は上や下に凸にならないように湾曲さることが好ましい。また、移送路を下に凸に湾曲させると、後述する湾曲部における缶蓋8の隙間の形成が不揃いになりやすく、異物の除去効果が十分でなくなる恐れがある。
【0038】
この異物除去装置では、移送路上流部2に続いて移送路下流部3が形成されている。移送路下流部3は、移送路上流部2の移送方向からほぼ90度方向転換する。図1(a)の正面図でいえば、移送路上流部2はおおむね手前下方に向かっていたものを、送路下流部3は右下方に向かっている。これを図1(b)の平面図で説明すれば、図示していないが、図の上からほぼ垂直に向かってきた移送路が、右方向に90度回転して、図に示したように湾曲部を形成しながら右手の出口側へと向かっていく。
【0039】
このように正面図上の移送路上流部2で上下になっていた移送路が、移送路下流部3でほぼ左右方向に向かうようになると、移送路上流部2において左右側に位置していた面が、移送路下流部3では位相経路の上下の面になる。このような移送路下流部3において、図1(b)の平面図に示すように、移送路下流部3を左右に湾曲させ、その湾曲部外側から除塵装置により異物を吸引してやれば、缶蓋に対しては、移送路上流部2には位置した除塵装置で吸引した方向と90度異なった方向から除塵できることになる。このような方法を利用すれば、移送路下流部3における缶蓋8の水平方向を任意に変化させることができる。
【0040】
例えば、図1(b)の平面図において、垂直方向に移送路下流部3を形成すれば缶蓋8の水平方向は移送路上流部2における場合と変わらない。そして、移送路下流部3の進行方向の垂直方向に対する変化角度に応じて、缶蓋8の水平方向の変化角度が変化する。ちなみに、移送路上流部2が45度の傾斜で下降している場合、図1(b)の移送路下流部3の進行方向は横方向であり、垂直方向に対する角度が90度であるので、缶蓋の水平方向の変化はおよそ45度になっている。この原理を利用すれば、缶蓋の水平方向を任意に変更できるので、移送路下流部3の湾曲部をほぼ横向きに形成しながら缶蓋の異物除去する角度を任意にずらすことができる。このため、湾曲部の数すなわち除塵装置を配置する数に合わせて所定の角度ずつ除塵方向をずらして缶蓋の除塵ができる。なお、移送路の傾斜角度との関係で、缶蓋の水平方向の変更が所望の角度ができない場合は、湾曲部を水平から少し斜めに形成してもよい。
【0041】
図3は、移送路下流部3の一部の拡大斜視図であり、この図に示すように、この異物除去装置1には第三除塵装置6、第四除塵装置7が移送路下流部3の第三湾曲部3a、第四湾曲部3bの外周側に配置されている。図3において、第三除塵装置6と第四除塵装置7は、移送路下流部3として4本のパイプ11が形成する四角柱の、対向する2面に配置されており、第三除塵装置6と第四除塵装置7が配置されていない2面は、移送路上流部2において第一除塵装置4と第二除塵装置5が配置されていた面である。このようにしてこの異物除去装置1においては、移送路の4つの面、言い換えれば缶蓋8の90度ずつ間隔を置いた4つの側面方向から除塵装置により除塵を行うことができる。
【0042】
移送路下流部3は、図1に示すように出口側が低くなるように傾斜しているが、移送路上流部2の傾斜よりもなだらかな傾斜になっている。このため、移送路下流部3における重力による缶蓋の移動応力は、移送路上流部2における重力による缶蓋の移動応力より小さくなっている。このようになっておれば、重なって円柱状の列をなして移動路の中を移動してくる缶蓋は、常に移送路上流部2から移送路下流部3へと押されるようになり、移送路下流部3側の缶蓋が移送路上流部2側の缶蓋より高速で移動することはなく、それぞれの缶蓋が離間することがない。
【0043】
さらに、移動中の缶蓋の離間を防ぐ方法として、移送路出口3cに移送速度制御手段が設置されている。この移送速度制御手段は、移送路出口3cに配置したフランジに缶蓋の側面と接するように弾性体の板を配置したものである。そして、この弾性体の板を缶蓋側へ押圧する押圧力を調整することができる。この弾性体の板の押圧力により缶蓋は、移送路出口3cの内接面に押さえつけられるようにされ、移動抵抗が増加し、缶蓋8の移動速度を低下させることができる。移送路出口3cに缶蓋の移動速度を低下させる移動速度調整手段を備えておれば、移送路全体の缶蓋8の移動速度が制御でき、缶蓋8が移送路途中で離間し転倒することがない。
【0044】
図4は、移送路の湾曲部の外周側に除塵装置を配置して、移送路中の缶蓋の列に混入している異物を除去する原理を説明するための斜視図である。図4から判るように、重なった缶蓋8の間に挟まった紙片などの異物10は、缶蓋が密着して重なっていると簡単には除去できない。しかし、重なった缶蓋8の列が移送路の湾曲部に移動してくると、湾曲部における移送路の内側と外側の長さの違いにより、重なった缶蓋8の列の湾曲部外側だけに隙間ができる。そうすると、缶蓋8の湾曲部外側に相当する位置に挟まっていた異物10は、この隙間により移動可能となる。湾曲部外側に面しては、除塵装置5のノズルが配置されており、この移動可能になった異物10を容易に吸引除去できるようになる。
【0045】
湾曲部の曲率や湾曲の角度は、缶蓋8に異物が移動可能の隙間ができればよく、缶蓋の大きさや厚さ、異物の種類などによって適宜調整することが好ましい。通常のビール缶やジュース缶は、4〜6Cm程度のものが多くこの程度の缶蓋であれば、曲率半径は10〜100cm、湾曲の角度は30〜120の範囲とすればよい。
【0046】
この異物除去装置1の移送路は、透明プラスチック製のカバー12により覆われている。このカバー12は、移送路の形状を維持するためや除塵装置のノズル取付のためのフレームの役割と、外部からの塵埃等の混入を防ぐ役目がある。なお、透明なカバーとしたのは、缶蓋の移動状況を監視し易くするためであるが、缶蓋そのものの変形や異状なども監視できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の異物除去装置は、円形の缶蓋を中心に説明したが、四角形その他の形状の缶蓋についても応用できる。この異物除去装置は、缶蓋製造工程の缶蓋を重ね合わせて梱包する工程中に組み込むことで缶蓋の移送と異物除去を同時に行うことができる。また、缶に内容物を挿入し、缶本体に蓋をする缶蓋使用工程においても、重ね合わせて梱包されている缶蓋を開梱して、一枚ずつ缶本体に蓋をして行く工程の途中で、缶蓋を移送するとともに缶蓋中に付着していた異物を除去することができる。なお、この異物除去装置は、缶蓋と缶蓋の間に挟まった異物を除去することを目的としているが、缶蓋の側面や表面に付着しているだけの異物や塵埃も除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の異物除去装置の正面図(a)とA部の平面図(b)
【図2】缶蓋移送中の本発明の異物除去装置の上流側の湾曲部の斜視図
【図3】缶蓋移送中の本発明の異物除去装置の下流側の湾曲部の斜視図
【図4】湾曲部における移送中の缶蓋に挟まった紙片と除塵装置の拡大図
【符号の説明】
【0049】
1 :異物除去装置
2 :移送路上流部
2a:第一湾曲部
2b:第二湾曲部
3 :移送路下流部
3a:第三湾曲部
3b:第四湾曲部
3c:移送速度制御手段(移送路出口)
4 :第一除塵装置
5 :第二除塵装置
6 :第三除塵装置
7 :第四除塵装置
8 :缶蓋
9 :異物(紙片)
10:フランジ
11:パイプ(丸棒)
12:カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた缶蓋を移送路中を連続的に移送しながら、前記缶蓋の間隙に挟持されている異物を除去する異物除去装置であって、
前記移送路を湾曲させて湾曲部を形成し、該湾曲部の外周側に除塵装置を配置したことを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
前記湾曲部は、前記移送路中に複数箇所有り、少なくとも2つの湾曲部は互いに異なった方向に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項3】
前記移送路は、前記重ね合わせた缶蓋の外周方向への移動を規制する構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記移送路は、複数の棒又は管を平行に配列した構造であり、前記平行に配列した棒又は管は前記重ね合わせた缶蓋を内接させるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記移送路は、内部を前記重ね合わせた缶蓋が内接して移送される管状体であり、少なくとも前記湾曲部の壁面に開口があることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記移送路は入口側が出口側より高い位置にあり、前記缶蓋は重力により移送される構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の異物除去装置。
【請求項7】
前記缶蓋を前記移送路の入口側から押圧する押圧手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の異物除去装置。
【請求項8】
前記缶蓋よりも前記移送路中の移送抵抗が大きく、前記移送路中における前記重ね合わせた缶蓋の列の最前部、最後部又は途中に配置する缶蓋転倒防止部材を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の異物除去装置。
【請求項9】
前記移送路の出口には、前記缶蓋の移送速度を制御する移送速度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154119(P2009−154119A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337050(P2007−337050)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】