説明

異種樹脂管の接続構造及び接続方法

【課題】 複雑な経路の配管施工現場において、異種樹脂管の接続構造を容易に得ることを可能とすることにより配管施工の能率向上を図る。
【解決手段】 この接続構造は、軟質樹脂管3の端部から所定範囲を加熱・膨張により拡径部3aを形成し、端部から所定範囲に接着剤を塗布した硬質樹脂管5を拡径部に挿着したものからなる。拡径部3aの冷却により軟質樹脂管3と硬質樹脂管5とを有機溶剤固着させて接続構造1を得る。有機溶剤により軟質樹脂管3と硬質樹脂管5との境界を溶融状態にすることにより一体になるため、接続部の強度はこれ以外の範囲における管の強度に劣らないものとなっている。こうして硬質樹脂管と軟質樹脂管との接続構造を実現容易となるので、複雑な経路の配管を底コストで施工可能となる。とくに、障害物を迂回する経路の配管に対して容易に対応可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道やガスなどの配管の曲がり部に用いる異種樹脂管の接続構造及び接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道やガスなどの配管は樹脂管を接続して目的地に流体を供給あるいは排出可能とするために必須のものである。通常は最も多く使われている塩化ビニール(以下「塩ビ」という)管は固くて弾性係数も大きいため、小さな曲率半径に曲げることには適さないので、方向転換するためには管継ぎ手を介して所定の角度になるように繋いでいる。また、直線状になっている場合には接続端の一方をリーマで穴拡げを行い、他方は外周部を削り取って両者を継ぎ合わせて接着剤で固定している。この場合にも直線用管継ぎ手(例えば特許文献1)を用いて端部同士を接続することも行われている。例えば図5に示すように、硬質樹脂管41の進行途上に電柱などの障害物49があって、直進を妨げられることからこれを迂回する必要がある場合には、管継ぎ手45,…及び短管43,44を用いて迂回し、再び直進に戻るようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−118486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような硬質樹脂管と継ぎ手の組合せによる迂回管路は、複数個所の接続の手間がかかる上に、管継ぎ手などの部品数が増えるなど管工事のコスト上昇の原因となっている。また、管路が直角に曲がるため流体抵抗が大きく円滑な流体の流れを妨げる恐れがある等の問題がある。本発明は管工事のコストの低減及び円滑な流体の流れを確保することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用することにより以下の作用効果を奏するようにした。請求項1に記載した発明は、異種樹脂管の接続構造(以下「接続構造」という)に関するものである。すなわち、すなわち、この接続構造は軟質樹脂管の端部から所定長範囲に設けてある拡径部に、この軟質樹脂管と概ね同一直径の硬質樹脂管が挿着してあり、軟質樹脂管の内周面と硬質樹脂管の外周面との当接部分は接着剤により固着したものからなる。ここで硬質樹脂管とは、塩化ビニール管のように常温下では撓む程度にしか曲がらない性質の樹脂管を指し、軟質樹脂管とはポリエチレン管のように軟らかく曲がりやすい性質を有する樹脂管を指す。また、拡径部とは管体の外形及び内径が部分的に通常の状態よりも大きくなっている範囲の部分を指す。
【0006】
軟質樹脂管の内周面と硬質樹脂管の外周面との当接部分はプラスチック接着剤により融解して三者が一体になるため強固な接続構造が得られる。この接続構造は、曲線状の配管を必要とする場合に、軟質樹脂材の部分を任意に折り曲げ可能なことから広範な用途に対応可能となる。曲率半径の小さい曲線配管は硬質樹脂管では対応できないことから、曲線部となる範囲については、本発明の接続構造を採用して硬質樹脂管に軟質樹脂管を接続すれば大部分の曲線状の配管に対応可能となる。この接続構造を採用して異種樹脂管を接続することにより、複雑な経路の配管や障害物を迂回する配管が施工容易となる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、異種樹脂管の接続方法に関するものである。これは軟質樹脂管の端部から所定範囲を加熱及び膨張させることにより拡径部を形成し、この拡径部に接続しようとする硬質樹脂管の端部から所定範囲に接着剤を塗布してこれを挿着し、硬質樹脂管を挿着した状態で上記の拡径部を冷却することにより軟質樹脂管と硬質樹脂管とを接続することにより請求項1に記載した接続構造を容易に得ることができるようにしたものである。冷却による拡径部の収縮現象で軟質樹脂管の拡径部が硬質樹脂管を周囲から締め付ける上に、有機溶剤系のプラスチック接着剤が介在するために強固な固着状態が得られる。作業が簡単であり、特別な工具も必要としないので、施工費の切り下げを可能にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、構成が簡単な硬質樹脂管と軟質樹脂管との接続構造を実現可能となるので、複雑な経路の配管を低コストで施工可能となる。また、この接続構造を採用した異種樹脂管の接続構造を採用すれば、複雑な経路や障害物を迂回する経路の配管にも容易に対応可能となる。さらに、軟質樹脂管の拡径部を加熱による膨張を利用して形成し、その周囲に接着剤を塗布した硬質樹脂管の端部を挿着してから冷却させることにより、上記の接続構造を得るようにすれば、複雑な経路の配管施工現場において異種樹脂管の接続構造を容易に得られるので配管施工の能率を向上可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に発明を実施するための最良の形態として軟質樹脂管と硬質樹脂管との接続構造について図面を参照して説明する。図1に示すように、この接続構造1は、軟質樹脂管3と硬質樹脂管5とを突き合わせて接続したものである。軟質樹脂管3の素材は、ポリエチレンであり、硬質樹脂管5の素材は塩化ビニールである。軟質樹脂管3における先端部の所定長さの範囲は加熱により内外径を大きくして拡径部3aとしてある。この拡径部3aに、周囲に有機溶剤系プラスチック接着剤を塗布した硬質樹脂管5の端部を挿着してある。この拡径部3aに硬質樹脂管5が挿着してある部分における軟質樹脂管3の内周面と硬質樹脂管5の外周面との当接部分は、図2に示すように、両材とも有機溶剤系のプラスチック接着剤による溶融部7が生じている。溶融部7は軟質樹脂管3と硬質樹脂管5とを溶融状態にすることにより一体に固着しているため、接続部の強度はこれ以外の範囲における管の強度に劣らないものとなっている。
【0010】
図3は、硬質樹脂管5の先端部に軟質樹脂管3を上記の接続構造により接続した例を示している。軟質樹脂管3の末端部には管継ぎ手等により何らかの機器等を接続可能としてあり、自由度の高い配管設備を採用可能としてある。また、図4は、硬質樹脂管5,5間に軟質樹脂管3を接続した例を示したものであり、配管の途中に電柱などの障害物が存在するような場合に、軟質樹脂管によりこれを迂回するようにしたものである。2か所で接続構造1,1を設けるだけで済み、しかもその施工が簡単であるので配管施工の経費を大幅に節減可能とする。
【0011】
次に接続構造を採用した異種樹脂管の接続方法について説明する。まず、接続体を構成する硬質樹脂管を所定の長さにしたものを準備する。次に、軟質樹脂管の端部の接続構造を形成する範囲をバーナーで加熱して拡径して拡径部3aを形成する。こうして形成された拡径部3aに硬質樹脂管5の端部を圧入して挿着する。硬質樹脂管5の挿着部には予め、有機溶剤系のプラスチック接着剤を塗布しておく。軟質樹脂管の拡径部3aは加熱手段を遠ざけた時点から冷却現象が開始し、収縮作用により硬質樹脂管を締め付けて圧着状態となる。この時、軟質樹脂管の拡径部の内周面と、硬質樹脂管の挿着部の外周面との境界は有機溶剤により溶融部7が生じて混然一体化する。このため垂直方向の強度(引っ張り強さ及びせん断強さ)は他の部分と同等以上のものとなる。
【0012】
以上の説明においては、軟質樹脂管としてポリエチレン、硬質樹脂管として塩化ビニールを採用してあるが、もちろんこれら以外の樹脂材を用いることは可能であり、場合によっては軟質樹脂管同士を突き合わせて接続するようにしてもよい。また、接着剤は硬質樹脂管にのみ塗布するように説明してあるが、軟質樹脂管の拡径部の内周面にも塗布するようにすればさらに強固な接続部が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明に係る接続構造の採用により配管工事の施工費を切り下げるとともに、配管工事の能率向上により産業発達に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】要部構成を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図2】軟質樹脂管と硬質樹脂管との結合状態を示す断面図である。
【図3】本発明を実施した接続対を示す正面図である。
【図4】軟質樹脂管で障害物を迂回配管の例を示した平面図である。
【図5】背景技術における迂回配管の例を示した平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 接続構造
3 軟質樹脂管
3a 拡径部
5 硬質樹脂管
7 溶融部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂管の端部から所定長範囲に設けてある拡径部に、当該軟質樹脂管と概ね同一直径の硬質樹脂管が挿着してあり、上記軟質樹脂管の内周面と上記硬質樹脂管の外周面との当接部分は接着剤により固着してある
ことを特徴とする異種樹脂管の接続構造。
【請求項2】
軟質樹脂管の端部から所定範囲を加熱及び膨張させることによりほぼ同径又は同径の他の樹脂管を挿着可能な拡径部を形成し、
上記拡径部に接続しようとする硬質樹脂管の端部から所定範囲に接着剤を塗布した当該硬質樹脂管を挿着し、
硬質樹脂管を挿着し他状態で上記拡径部を冷却することにより上記軟質樹脂管と上記硬質樹脂管とを接続する
ことを特徴とする異種樹脂管の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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