説明

異種金属の接合方法並びに関連装置

【課題】
異なる材料からなる第1の物品と第2の物品を接合する方法が開示されている。
【解決手段】
本方法では、第1の物品と第2の物品の間に配置された二元合金部材を使用する。二元合金部材は第1の材料、この第1の材料とは異なる第2の材料及び第1の材料と第2の材料の間の鍛錬領域からなる。本方法ではさらに、第1の物品の材料の局所領域と第1の材料とを一緒に溶融させて、第1の材料と第2の材料との相互混合が実質的に存在しない第1の溶接継手を生じさせ、第2の物品の材料の局所領域と第2の材料とを一緒に溶融させて、第2の材料と第1の材料との相互混合が実質的に存在しない第2の溶接継手を生じさせ、もって第1の物品と第2の物品を接合せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般にタービンローターに関し、特に複数の異種金属からなるタービンローターの溶接に関する。例えばガス及び蒸気タービンのようなタービンの作動条件には、高い温度、速度及び力が含まれる。タービンローターは、タービンローターの作動寿命を延ばすのに適した材料特性を有する先端材料から製造されることが多い。さらに、例えば温度のような作動条件は、タービン内の位置によって変動することが知られている。そのため、タービン内の位置に対応する条件に最も適した異なる又は異種先端材料からタービンローターを構築するのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
タービンローター用の先端材料はタービンローターに相当する大きさでの製造が難しいので、タービンローターは小さなサブアセンブリ同士を接合して製造することが多い。タービンローターの一つの構築法は、嵩張ったセグメントのサブアセンブリ同士をボルト留めすることであり、その結果非常に複雑で質量の大きいタービンローターが得られる。タービンローターの別の構築法では、質量と複雑さの低減したサブアセンブリ同士を溶接する。しかし、異なる又は異種合金部品同士の溶接は、部品の溶接継手又は隣接する熱影響部に亀裂を生じるおそれがあるだけでなく、溶接継手における機械的性質に劣るおそれもある。その原因は、異なる合金の溶接継手の溶融池がいずれかの母材よりも広い温度域で凝固する傾向があるためであり、溶接継手の最後に凝固する部分が周囲の固体金属よりも弱くなり、溶接継手の収縮によって割れを生じる。さらに、異なる化学成分の溶融と凝固(融合としても知られる)の結果、そのミクロ組織、有害な化学相及び高温作動条件下での長期応答の点で予測できないことの多い化学的及び金属学的遷移部を生じる。合金の化学的及び物理的性質(例えば熱膨張など)の差が大きいほど、溶接性及び溶接継手の性質が悪化する。異なる材料を有するローターサブアセンブリ同士を溶接するための現在の方法では、溶接性を向上させるため、部品の接合面に中間的化学組成又は軟質合金からなる溶接又はクラッド中間層を設けている。かかる方法は手間がかかり、複雑で費用がかかるだけでなく、異種合金の融合と特性のトレードオフを依然として伴っており、溶接継手の健全性を損ないかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、当技術分野では、これらの短所を克服するタービンローターの溶接処理に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、異種材料からなる第1の物品と第2の物品との接合法に関する。本方法では、第1の物品と第2の物品の間に配置された二元合金部材であって、第1の材料と、該第1の材料とは異なる第2の材料と、それらの間の鍛錬領域とを含む二元合金部材を使用する。この方法ではさらに、第1の物品の材料の局所領域と第1の材料とを一緒に溶融させて、第1の材料と第2の材料との相互混合が実質的に存在しない第1の溶接継手を生じさせるとともに、第2の物品の材料の局所領域と第2の材料とを一緒に溶融させて、第2の材料と第1の材料との相互混合が実質的に存在しない第2の溶接継手を生じさせ、もって第1の物品と第2の物品を接合せしめる。
【0005】
本発明の別の実施形態は、第1の物品と第2の物品とからなるアセンブリに関する。本アセンブリは、第1の物品と第2の物品の間に配置された二元合金部材を含む。二元合金部材は、第1の材料を含む第1の領域と、該第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2の領域と、第1の領域と第2の領域の間の鍛錬遷移領域とを含む。第1の領域と第1の物品の間には第1の溶接継手が設けられており、第1の溶接継手には第1の材料と第2の材料との相互混合は実質的に存在しない。第2の領域と第2の物品の間には第2の溶接継手が設けられており、第2の溶接継手には第2の材料と第1の材料との相互混合は実質的に存在しない。
【0006】
本発明のさらに別の実施形態はタービンローターに関する。本タービンローターは、第1のサブアセンブリと、第2のサブアセンブリと、それらの間に溶接された二元合金部材とを含む。二元合金部材は、第1の材料を含む第1の領域と、該第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2の領域と、第1の領域と第2の領域の間の鍛錬遷移領域とを含む。第1の領域と第1のサブアセンブリの間には第1の溶接継手が設けられており、第1の溶接継手には第1の材料と第2の材料との相互混合は実質的に存在しない。第2の領域と第2のサブアセンブリの間には第2の溶接継手が設けられており、第2の溶接継手には第2の材料と第1の材料との相互混合は実質的に存在しない。
【0007】
上記その他の効果及び特徴については、添付の図面と併せて本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を参照することによって容易に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照するが、図面において同様の要素には同様の参照番号を付した。
【0009】
本発明の一実施形態では、鍛錬(例えば鍛造又はリング圧延のような塑性変形)二元合金遷移部材を用いて、異なる合金からなる部品を接合するプロセスを提供する。二元合金遷移部材の両端はそれぞれ異なる合金組成の成分を含んでおり、それらの間に化学遷移領域がある。二元合金遷移部材は、本明細書に記載する代表的な金属加工法のいずれかで製造することができ、二元合金遷移部材の各端部において同種材料間で形成された健全性の高い溶接継手で部品同士を接合できる。二元合金遷移部材の使用によって、部品間で機械力を伝達するのに適した構造強度が得られる。
【0010】
遷移部材における化学遷移領域の性状及び範囲は、二元合金遷移部材を用いて形成される継手の熱応力が最小限となるように製造プロセスで制御できる。また、二元合金遷移部材は、その機械的性質を最適化するため一体熱処理(monolithic heat treatment)又は傾斜熱処理(differential heat treatment)を用いて熱処理することができる。かかる最適化処理は、例えばタービンローターのような重い大型部品に現在用いられている異種合金を用いた概して狭い継手では実施できないことは明らかであろう。
【0011】
ここで図1を参照すると、外枠26に対するローター24の回転によって熱及び運動エネルギーを機械エネルギーに変換するためローター24と作動可能に連動した複数のタービン動翼を用いるタービン20の一実施形態の概略図が記載されている。タービン20はガスタービンであってもよく、燃焼ガス12の膨張で生じる熱及び運動エネルギーが機械エネルギー又は発電のために変換される。或いは、タービン20は蒸気タービンであってもよく、高温蒸気12の膨張で生じる熱及び運動エネルギーが例えば様々な用途のための機械エネルギーへと変換される。
【0012】
図2は、ローター24の一実施形態の断面図である。ローター24は2以上のセクション25,26,27を含む。セクション25,26,27はいずれも他のセクション25,26,27のいずれとも異なる材料から製造して、互いに溶接してもよい。かかる製造法によって、用途で必要とされる位置だけに高価な耐熱合金を使用して、総コストを削減し、ローター24の製造性を高めることができる。
【0013】
次に図3を参照すると、タービン20の部分断面図が記載されている。第1のローターサブアセンブリのような第1の物品28と、第2のローターサブアセンブリのような第2の物品32と、二元合金遷移部材36(本明細書では単に部材ともいう。)とが描かれている。一実施形態では、第1のローターサブアセンブリ28及び第2のローターサブアセンブリ32はタービン20の作動条件での使用に適した先端材料から造られ、部材36はサブアセンブリ28,32間に配置されたリング部材である。先端材料の例としては、718、706、Rene95、625のような超合金、M152、403、450のようなマルテンサイト系ステンレス鋼、NiCrMoV、CrMoVのような低合金鋼、並びにTi−6−4、Ti6Q2のようなチタン合金が挙げられる。これらの具体例は例示にすぎず、限定的なものではない。
【0014】
第1のローターサブアセンブリ28はタービン20にそれを配置したときの第1の位置に付随する作動条件での使用に適した第1の材料から造られ、第2のローターサブアセンブリ32はタービン20にそれを配置したときの第2の位置に付随する作動条件での使用に適した第2の異種材料から造られる。例えば、第1のローターサブアセンブリ28が第2の位置よりも温度の高いタービン20内の位置に配置される場合、第1のローターサブアセンブリ28は第1の位置に付随する温度での作動に適した材料から製造される。同様に、第2のローターサブアセンブリ32は第2の位置に付随する温度での作動に適した材料から製造される。なお、以上は単なる例示にすぎず、適当な材料の選択には2以上の作動条件の考察を伴う可能性が高いことは自明であろう。
【0015】
本明細書で用いる「異種」という用語は化学組成の異なる合金をいう。なお、あるクラスの合金(例えば鋼)に属する複数の合金が、化学組成に基づいて異種と分類されることもあることは自明であろう。本明細書において、溶接に関連した2つの合金について用いる「同種」という用語は、化学組成の同じ2つの合金をいう。組成の同じ同種合金が、例えば結晶粒度、強度及びミクロ組織などの異なる金属学的性質を有し得ることも自明であろう。従って、2つの同種合金間の溶接継手には、異種合金の溶接で得られるような欠陥が存在しない。さらに、2つの同種材料間の性質(例えば、機械的、化学的、金属学的及び熱的性質並びにミクロ組織的性質など)は、2種類の異種材料間の溶接継手に比べて残留応力の低減した2つの同種材料間の溶接継手を生じる。かかる残留応力の低下によって、溶接後の各種加工処理(例えば熱処理及び機械加工など)に対する溶接継手の適合性が高まる。
【0016】
部材36は、ローターサブアセンブリ28,32の各々と溶接させるため第1のローターサブアセンブリ28と第2のローターサブアセンブリ32の間にそれらに接触して配置される。第1のローターサブアセンブリ28及び第2のローターサブアセンブリ32の各々に部材36を溶接すると、部材36は、タービン20の作動に随伴する力をローターサブアセンブリ28,32間で伝達するのに適した強度(タービン20内の部材36が配置された位置に付随する作動条件での)を有する溶接継手をもたらす。すなわち、部材36は、第1の物品28と第2の物品32との構造的結合をもたらす。本明細書で用いる「構造的結合」という用語は、第1の物品28と第2の物品32との間の物理的、機械的及び/又は金属結合をもたらす結合をいう。また、「構造的結合」という用語は、第1の物品28及び第2の物品32(ローターサブアセンブリ28,32など)を作動して一方の物品28,32から他方の物品28,32に予測される力を伝達する際に予測される条件下で適当な強度を与える結合をいう。構造的結合は例えば2つのローターサブアセンブリ28,32間での力の伝達をもたらすが、これはローターサブアセンブリ28,32が用いられるタービン20などの用途で所定の限度内のローターサブアセンブリ28,32間の相対運動を伴うものであってもよい。
【0017】
部材36は第1の領域40と第2の領域44と遷移領域48とを含む。第1の溶接継手52で第1の領域40が第1の物品28と接合し、第2の溶接継手56で第2の領域44が第2の物品32と接合する。第1の領域40は、第1の物品28が造られた材料と同種の第1の材料を含む。第2の領域44は、第1の材料とは異種の第の材料であって、第2の物品32が造られた材料と同種の第2の材料を含む。同種材料間の溶接継手52,56は、タービン20内の作動条件、例えばローターサブアセンブリ28,32間に存在する作動条件で予測される力の伝達に適している。
【0018】
部材36の遷移領域48は第1の材料と第2の材料の間の化学的及びミクロ組織的な傾斜又は遷移領域を含む。すなわち、遷移領域48の少なくとも一部は第1の材料と第2の材料との組合せ又は混合物を含む。さらに、遷移領域48の少なくとも一部は第1の領域40の材料のミクロ組織と第2の領域44の材料のミクロ組織との組合せを含む。
【0019】
部材36を接合した物品28,32の一方から部材36へと伝わる力は遷移領域48を通して伝達しなければならない。例えば、第1の物品28から第1の溶接継手52を介して第1の領域40へと伝わる力も、遷移領域48を通して第2の領域44、次いで第2の溶接継手56を介して第2の物品32へと伝達しなければならない。同様に、第2の物品32から第1の物品28へと伝わる力も遷移領域48を介して伝達されることは明らかである。従って、部材36の塑性変形又は成形(これについては、以下でさらに詳しく説明する)によって、第1の物品28と第2の物品32(タービン20内のローターサブアセンブリ28,32など)の構造的結合をもたらすのに適した構造強度を与える。
【0020】
次に図4を参照すると、二元合金遷移部材36のような二元合金遷移部材を製造するためのプロセス段階のフローチャート100を示す。プロセスは、段階104での適当な材料の選択(例えば、第1の物品28の材料と同種の第1の材料、第2の物品32の材料と同種の第2の材料など)によって開始される。
【0021】
本プロセスは次いで、段階108で、第1の材料と第2の材料を冶金的に結合して、第1の材料からなる第1の領域40と第2の材料からなる第2の領域44とを含むプリフォームにする。本プロセスでは、次の段階112でプリフォームを成形して、プリフォームの強度を増大させるとともに、第1の領域40と第2の領域44の間の遷移領域48の化学組成及びミクロ組織の傾斜を与える。
【0022】
段階112での成形は、溶接欠陥、内部不連続性、異方性又は許容できない化学的偏析のない、充分に再結晶した等軸晶均質ミクロ組織を特徴とする鍛錬組織を与える。かかる鍛錬組織は鋳造したままの組織に比べて向上した強度、延性、靱性及び疲労性能を示す。溶接中間層の使用によって得られる鋳造したままの組織は、化学的不均一性又は偏析及び潜在的溶接欠陥(例えば、ポロシティ、融合不良、ミクロ割れ(microfissure)、粒界欠陥、液化(liquation)、酸化物又はスラグ巻込みなど)を呈する方向性凝固デンドライト間結晶粒組織によって特徴付けられる。さらに、これらの欠陥は遷移領域48の強度、延性、疲労性能及び靱性に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0023】
本プロセスは、さらに段階116で、プリフォームを完成部材36の概略形状に賦形する。段階116の賦形によって、完成部材36に要求される最終的な幾何形状及び寸法公差を与えるための後段のプロセス段階(例えば機械加工など)で必要とされる材料除去の量が最小限となる。本プロセスの最終段階は段階120の機械加工であり、段階116の賦形で得られた概略形状を機械加工して、部材36を物品28,32間に配置して溶接するための望ましい幾何形状及び寸法公差とする。
【0024】
一実施形態では、本プロセスは、部材36の特性(例えば、部材36の強度、硬さ、延性、耐酸化性、耐腐食性、応力腐食耐性、クリープ耐性及び耐衝撃性のような1以上の特性)を向上させるための熱処理も含む。一実施形態では、熱処理は、第1の材料と第2の材料の間の化学組成及びミクロ組織傾斜の拡散の結果として部材の特性を向上させるためのものである。
【0025】
次に図5を参照すると、第1の領域40と第2の領域44と遷移領域48とを有する二元合金スペーサーリング130のような部材36の代表的な製造プロセスの概略を図解する。二元合金スペーサーリング130の製造プロセスの一実施形態を図解したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではなく、本発明が2つの物品28,32間に配置してそれらを接合するのに適した他の幾何形状の部材36にも適用できることは自明であろう。
【0026】
代表的な実施形態では、段階104での適当な材料の選択は、粉末金属成分を選択し、圧粉体134を製造することを含む。粉末金属成分の選択は、上述の通り、第1の物品28の材料と同種の第1の成分及び第2の物品と同種の第2の成分を含む。
【0027】
段階108での冶金的結合は、圧粉体134をダイ138内で押出して、超塑性成形又は通常の成形のための微細な再結晶粒組織を有するプリフォーム142又はビレットを得ることを含む。段階112の成形は、等温鍛造、通常の鍛造、又は熱間等方圧プレス後の鍛造を含み、これによって第1の材料と第2の材料の異種合金の一様な流れが生じる。段階116での賦形は、「ドーナツ型」プリフォーム150を製造するための再度の鍛造146及び二元合金スペーサーリング130を製造するリング圧延153を含む。
【0028】
次に図6を参照すると、二元合金スペーサーリング130のような部材36の別の製造プロセスの概略を図解する。図6に示すプロセスでは、初期プロセス入力として二元合金電極154を利用する。一実施形態では、段階104での適当な材料の選択は、第1及び第2のローターサブアセンブリ28,32のそれぞれの材料と同種の第1の材料及び第2の材料からそれぞれ造られた第1の電極155及び第2の電極157を選択する。段階104での適当な材料の選択は、さらに、2つの電極155,157の融接及びイナーシャ式摩擦圧接の少なくともいずれかによって二元合金電極を製造することを含む。段階108での冶金的結合は、二元合金電極154のエレクトロスラグ再融解(ESR)によって、中心部に狭い化学遷移領域を有する二元合金インゴット158をプリフォームとして得ることを含む。段階112の成形では、プリフォーム158をサイジングするとともに所望の強度増加を与えるため鍛造する。段階116での賦形では、別の鍛造146で「ドーナツ型」プリフォーム150を製造し、リング圧延153で二元合金スペーサーリング130を得る。
【0029】
次に図7を参照すると、二元合金スペーサーリング130のような部材36の別の製造プロセスの概略を図解する。一実施形態では、段階104での適当な材料の選択は、第1の物品28の材料と実質的に同種の第1の材料と第2の物品32の材料と実質的に同種の第2の材料とを選択し、真空チャンバー166内に配置された溶融るつぼ162に入れ、「ドーナツ型」プリフォーム170を製造する。段階108の冶金的結合では、第1の材料及び第2の材料を溶融させ、アトマイザー174から回転プリフォームマンドレル178上に噴霧する。段階112の成形では、「ドーナツ型」プリフォームをサイジング及び強化し、段階116の賦形では、リング圧延153して二元合金スペーサーリング130を準備する。
【0030】
以上から、部材36は、異なる材料でできた2つの物品の接合方法を容易にする。ここで図8を図3と併せて参照すると、異なる材料でできた2つの物品(第1の物品28と第2の物品32など)を接合するためのプロセス段階のフローチャート200を示す。
【0031】
この方法は、段階204における第1の物品28と第2の物品32の間に配置された二元合金遷移部材36の使用によって開始される。部材36は、第1の物品28と第1の溶接継手52を形成するための第1の領域40と、第2の物品32と第2の溶接継手56を形成する第2の領域44と、第1の領域40と第2の領域44の間の鍛錬遷移領域48とを有している。遷移領域48は、第1の領域40の第1の材料と第2の領域44の第2の材料の間の化学組成傾斜も含んでいる。
【0032】
この方法では、次いで、第1の物品28と部材36の第1の領域40の間に熱を発生させ、段階208で、第1の物品28の材料の局所領域を部材36の第1の領域40の第1の材料と一緒に溶融させる。熱の発生は、第1の物品28の材料と部材36の第1の材料との溶融で、第2の領域44の第2の材料の溶融が起こらないように制御される。従って、部材36の第2の領域44の第2の材料との相互混合が実質的に存在しない第1の溶接継手52が得られる。したがって、第1の溶接継手52には、異種溶融材料との相互混合に起因し溶接継手52の強度を損なう欠陥が存在しない。本明細書で用いる「実質的に存在しない」という用語は、従来の2種類の材料の相互混合に起因する欠陥の作用を受けない部材36の溶接をいう。
【0033】
この方法は、次いで、第2の物品32と部材36の第2の領域44値の間に熱を発生させ、段階212で、第2の物品32の材料の局所領域を部材36の第2の領域44の第2の材料と一緒に溶融させる。熱の発生は、第2の物品32の材料及び第2の材料の溶融で、第1の領域40の第1の材料の溶融が起こらず、それによって部材36の第1の領域40の第1の材料の相互混合が実質的に存在しない第2の溶接継手56が得られるように制御される。従って、第2の溶接継手52は、異種溶融材料との相互混合に起因し溶接継手56の強度を損なう欠陥が存在しない。
【0034】
第1の溶接継手52と第2の溶接継手56を形成すると、第1の物品28と第2の物品32とが部材36を介して接合し、第1の物品28と第2の物品32との構造的結合をもたらす。
【0035】
一実施形態では、段階208及び段階212の少なくとも一方での溶融のための熱の発生は、溶接工具と被接合材料との間での電気アークの発生を含む。別の実施形態では、段階208と段階212の少なくとも一方での溶融のための熱の発生は、物品28、30及び部材36間の相対運動によって摩擦を生じさせることを含む。
【0036】
一実施形態では、本方法は、さらに、部材36の機械的性質を最適化するための溶接後熱処理を含む。一実施形態では、部材36を、強度、延性、耐衝撃性及び硬さのような性質を最適化するための均一な熱処理パラメーター(温度及び暴露時間など)を用いて、単一のモノリシック部材として熱処理する。別の実施形態では、第1の領域40と第2の領域44の各々に対して異なる熱処理パラメーターを用いて部材36を熱処理し、熱処理パラメーターは、例えば化学組成及びミクロ組織のような第1の材料と第2の材料の特性に応じて選択される。さらに別の実施形態では、物品28,32と溶接継手52,56と第1の領域40及び第2の領域44の性質を最適化するため第1の材料及び第2の材料の特性に応じた選択されたパラメーターを用いて、部材と接合した物品28,32の少なくとも一部を第1の領域40及び第2の領域44と共に熱処理する。
【0037】
上述の通り、本発明の幾つかの実施形態は、ローターサブアセンブリの溶接によってタービンローターの複雑さ及び質量を低減できること、各々が暴露される作動条件に対して最適化された異種先端材料からなるタービンローター部品同士の溶接性を向上させることができること、異種金属からなる2つの物品間の2つの溶接継手を、各々同種材料間の溶接継手として実施できること、という効果の幾つかを含む。
【0038】
なお、二元合金リングを例にとって本発明の実施形態を説明してきたが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではなく、また本発明の実施形態は3種以上の合金を含む部材36にも適用できることは自明であろう。
【0039】
代表的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱せずに、様々な変更をなすことができるし、本発明の要素を均等物で置換することもできる。また、特定の状況又は材料を本発明の教示内容に適合させるべく、本発明の本質的な技術的範囲から逸脱せずに、多くの修正をなすことができる。従って、本発明は、発明を実施するための最良又は唯一の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。また、図面及び明細書に本発明の代表的な実施形態を開示し、特定の用語を用いてきたが、これらは、特記しない限り、包括的で説明のために用いたものにすぎず、限定的なものではなく、本発明の技術的範囲を限定するものではない。さらに、第1、第2などの用語の使用は、順序又は重要性を意味するものではなく、ある要素を他の要素から区別するためのものである。なお、単数形で記載したものであっても、数量を限定するものではなく、そのものが1以上存在することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るタービンの概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係るタービンローターの断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る第1の物品と第2の物品の間の部材の断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る部材の製造法のプロセス段階のフローチャート。
【図5】本発明の一実施形態に係る部材の製造法の一実施形態を図解した図。
【図6】本発明の一実施形態に係る部材の製造法の一実施形態を図解した図。
【図7】本発明の一実施形態に係る部材の製造法の一実施形態を図解した図。
【図8】本発明の一実施形態に係る異なる材料からなる2つの物品を接合するためのプロセス段階のフローチャート。
【符号の説明】
【0041】
20 タービン
24 ローター
28 第1の物品
32 第2の物品
36 二元合金遷移部材
40 第1の領域
44 第2の領域
48 遷移領域
52 第1の溶接継手
56 第2の溶接継手
100 フローチャート
130 二元合金スペーサーリング
134 圧粉体
138 ダイ
142 プリフォーム
146 鍛造
150 プリフォーム
153 リング圧延
154 二元合金電極
155 電極
157 電極
158 二元合金インゴット
162 溶融るつぼ
166 真空チャンバー
170 プリフォーム
174 アトマイザー
178 プリフォームマンドレル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる材料からなる第1の物品と第2の物品を接合する方法であって、
第1の物品と第2の物品の間に配置された二元合金部材であって、第1の材料と、該第1の材料とは異なる第2の材料と、それらの間の鍛錬領域とを含む二元合金部材を使用し、
第1の物品の材料の局所領域と第1の材料とを一緒に溶融させて、第1の材料と第2の材料との相互混合が実質的に存在しない第1の溶接継手を生じさせ、第2の物品の材料の局所領域と第2の材料とを一緒に溶融させて、第2の材料と第1の材料との相互混合が実質的に存在しない第2の溶接継手を生じさせ、もって第1の物品と第2の物品を接合せしめることを含んでなる方法。
【請求項2】
第1の物品の材料の局所領域と第1の材料とを一緒に溶融させること及び第2の物品の材料の局所領域と第2の材料とを一緒に溶融させることの少なくともいずれかが電気アークを生じさせることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の物品の材料の局所領域と第1の材料とを一緒に溶融させること及び第2の物品の材料の局所領域と第2の材料とを一緒に溶融させることの少なくともいずれかが、二元合金部材を第1の物品及び第2の物品の少なくともいずれかに対して相対運動させることによって摩擦熱を生じさせることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記二元合金部材が二元合金スペーサーリングからなる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第1の物品が第1のタービンローターサブアセンブリからなり、第2の物品が第2のタービンローターサブアセンブリからなる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
二元合金部材を熱処理することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記二元合金部材の熱処理が、
第1の材料を含む第1の領域を、第1の材料の特性に応じた第1の組の熱処理パラメーターで熱処理し、
第2の材料を含む第2の領域を、第2の材料の特性に応じた第2の組の熱処理パラメーターで熱処理する
ことを含み、第2の組の熱処理パラメーターが第1の組の熱処理パラメーターとは異なる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記二元合金部材の熱処理が、
第1の物品の材料の少なくとも一部と第1の領域を、第1の材料の特性に応じたパラメーターで熱処理し、
第2の物品の材料の少なくとも一部と第2の領域を、第2の材料の性質に応じたパラメーターで熱処理する
ことを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第1の材料が、超合金、マルテンサイト系ステンレス鋼、低合金鋼及びチタン合金から選択される1種以上を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1の物品と第2の物品とからなるアセンブリであって、
第1の物品と第2の物品の間に配置された二元合金部材であって、第1の材料を含む第1の領域と、該第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2の領域と、第1の領域と第2の領域の間の鍛錬遷移領域とを含む二元合金部材、
第1の領域と第1の物品の間に設けられた第1の溶接継手であって、第1の材料と第2の材料との相互混合が実質的に存在しない第1の溶接継手、及び
第2の領域と第2の物品の間に設けられた第2の溶接継手であって、第2の材料と第1の材料との相互混合が実質的に存在しない第2の溶接継手
を備えるアセンブリ。
【請求項11】
前記鍛錬遷移領域が第1の物品と第2の物品との構造的結合をもたらす、請求項10記載のアセンブリ。
【請求項12】
第1の物品がタービンの第1のローターサブアセンブリからなり、第2の物品がタービンの第2のローターサブアセンブリからなる、請求項10記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記二元合金部材が二元合金スペーサーリングである、請求項12記載のアセンブリ。
【請求項14】
第1の材料が、超合金、マルテンサイト系ステンレス鋼、低合金鋼及びチタン合金から選択される1種以上を含む、請求項10記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記鍛錬遷移領域の一部が第1の材料と第2の材料の間の化学組成傾斜を含む、請求項10記載のアセンブリ。
【請求項16】
第1のサブアセンブリと、第2のサブアセンブリと、それらの間に溶接された二元合金部材とを含んでなるタービンローターであって、上記二元合金部材が、
第1の材料を含む第1の領域と、該第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2の領域と、第1の領域と第2の領域の間の鍛錬遷移領域とを含んでおり、
第1の領域と第1のサブアセンブリの間に設けられた第1の溶接継手であって、第1の材料と第2の材料との相互混合が実質的に存在しない第1の溶接継手、及び
第2の領域と第2のサブアセンブリの間に設けられた第2の溶接継手であって、第2の材料と第1の材料との相互混合が実質的に存在しない第2の溶接継手
を含む、タービンローター。
【請求項17】
前記鍛錬遷移領域が第1のサブアセンブリと第2のサブアセンブリとの構造的結合をもたらす、請求項16記載のタービンローター。
【請求項18】
前記二元合金部材が二元合金スペーサーリングである、請求項16記載のタービンローター。
【請求項19】
第1の材料が、超合金、マルテンサイト系ステンレス鋼、低合金鋼及びチタン合金から選択される1種以上を含む、請求項16記載のタービンローター。
【請求項20】
前記鍛錬遷移領域の一部が第1の材料と第2の材料の間の化学組成傾斜を含む、請求項16記載のタービンローター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−56512(P2009−56512A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219114(P2008−219114)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】