説明

異種金属接合体及びその製造方法

【課題】金属間化合物を有しつつ、せん断強度及び剥離強度の高い接合部とする。
【解決手段】異種金属接合体は、アルミニウム系金属材20と、少なくとも表面の一部を亜鉛で被覆する鉄系金属材10と、を接合した異種金属接合体であって、鉄系金属材10とアルミニウム系金属材20との界面には、亜鉛がアルミニウムに固溶してなる合金層40が介在されており、さらに合金層40には、亜鉛が析出されている。合金層40には、鉄、アルミニウムおよび亜鉛からなる群より選択される2種以上の原子からなる金属間化合物23が分散されている。このようなレーザ照射とローラ圧接の組合せにより、接合対象とする金属材への急熱急冷効果を得ることができ、この急熱急冷効果でもって高い継手強度を有する異種金属接合体とできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材質の異なる金属が接合された異種金属接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの工業製品に対して、高性能、高付加価値化への要求が高まっている。例えば、環境保全や省エネルギーの観点から、自動車、鉄道車両などに使用される金属材料の減量化が促進されており、材料である鉄鋼の一部を軽量なアルミニウムで構成する策が講じられている。
【0003】
ところが、鉄とアルミニウムのような異種金属の組み合わせにおいて、従来の溶融溶接法は両金属を溶融融合させるため、異種金属の界面でアルミニウムリッチなAl−Fe系の金属間化合物が生成される。一般に金属間化合物は脆く十分な継手強度を得ることができない上、高温割れが発生しやすく成形加工が困難である。脆弱な金属間化合物が広範囲に形成されると、せん断強度及び剥離強度の強い接合部を得ることができない。
【0004】
このため、金属間化合物の生成を抑制させて接合強度を向上させる方法が幾つか提案されている。例えば特許文献1及び2に記載される異種材料の接合方法では、亜鉛めっき鋼板とアルミニウム板とを接合する際に、めっき層であるZnと、Alの共晶溶融を生じさせ、アルミニウム合金の表面の酸化被膜を除去する。これにより両材料の新生面同士を接合させて、金属間化合物の生成を抑制すると共に、強固な接合状態を得る。また、共晶溶融を実現するための両材料へのエネルギー投与は、特許文献1ではレーザ溶接にて、特許文献2では抵抗スポット溶接にて、それぞれ行われる。
【0005】
また、特許文献3に記載されるレーザブレージング接合工法では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とアルミニウム系板材との接合に際して、まず先行するレーザ光で亜鉛めっき鋼板側の接合部位のめっき層を除去し、次いで別のレーザ光により、ろう材であるワイヤを溶融させる。そして、溶融されたワイヤでもって、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とアルミニウム系板材を接合させる。
【0006】
さらに、特許文献4に記載のレーザ溶接を用いた異材の接合方法では、鉄系被覆材とアルミニウム系被溶接材とを、2つの熱源でもって重ね合わせ接合する。具体的に、鋼板の上にアルミニウム系板を重ね合わせ、先行する第1レーザでもって下板の鋼板の亜鉛系被覆層のみを溶融する。続いて後行の第2レーザにより、上板のアルミニウム系板を上方から溶融させる。そして、双方の溶融部を親和させて溶接接合継手を得る。
【特許文献1】特開2006−198678号公報
【特許文献2】特開2006−198679号公報
【特許文献3】特開2007−75872号公報
【特許文献4】特開2006−281279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の方法は、金属材質を溶融させるためのエネルギー投与の方法において多少の相違はあるものの、いずれもその目的は共通している。すなわち脆弱な金属間化合物の生成を抑制させることを主題とし、これにより接合継手の強度を高めようとするものである。しかしながら、金属間化合物を全く生成させずに異種金属を接合することは著しく困難である。なぜなら、金属間化合物の生成量は金属の溶融量に依存しており、このため金属の溶融量を精密に調節することが重要となるが、この調節作業は極めて困難であるためである。例えば特許文献1ないし3のように、金属材のめっき層のみを除去させて、金属間化合物を薄く抑制させるには、入熱量のコントロールが必須となり、実現が難しい。さらに特許文献4では、両金属材における溶融部の相乗効果により亜鉛系被覆層が広範囲に溶融することで、溶融した亜鉛が両金属の接合におけるろう材の役割を果たしていると推測されるが、具体的な溶融部の寄与については記載がなく不明である。いずれにしろ、双方の部材に対応する精密な金属材の溶融量の調節が難しく、したがって金属間化合物の生成を制御することは難しい。
【0008】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、金属間化合物を存在させながらも、異種の金属接合体を特異な結合状態で構成することにより、せん断強度及び剥離強度の強い接合部が得られるという新規な知見を見出した。すなわち、金属間化合物を排除しようとする従来の発想とは逆に、金属間化合物を積極的に利用することで高い接合継手を実現したものである。
【0009】
このように本発明の主な目的は、金属間化合物を有しつつ、せん断強度及び剥離強度の高い接合部を備える異種金属の接合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の異種金属接合体は、アルミニウム系金属材20と、少なくとも表面の一部を亜鉛で被覆する鉄系金属材10と、を接合した異種金属接合体であって、前記鉄系金属材10と前記アルミニウム系金属材20との界面には、亜鉛がアルミニウムに固溶してなる合金層40が介在されており、さらに前記合金層40には、亜鉛が析出されている。
【0011】
また、第2の異種金属接合体は、前記合金層40には、鉄、アルミニウムおよび亜鉛からなる群より選択される2種以上の原子からなる金属間化合物23が分散されて析出している。
【0012】
さらに第3の異種金属接合体は、前記金属間化合物23の組成式が、FexZny、FexAlyまたはFexAlyZnzの少なくとも一で示される。ただし、1≦x≦11、1≦y≦40、0.4≦z≦10である。
【0013】
さらにまた、第4の異種金属接合体はさらに、前記鉄系金属材10と前記合金層40との間には、鉄と亜鉛からなる化合物層30が介在されている。
【0014】
さらにまた、第5の異種金属接合体は、前記合金層40の総膜厚を1μm以上とできる。
【0015】
さらにまた、第6の異種金属接合体は、前記析出亜鉛の平均粒径を50nm以上80nm以下、前記金属間化合物23の平均粒径を10nm以上200nm以下とできる。
【0016】
さらにまた、第7の異種金属接合体は、前記合金層40内に含有される亜鉛の組成を1%以上とできる。
【0017】
さらにまた、第8の異種金属接合体は、前記合金層40内に含有される前記金属間化合物23の組成を1%以上とできる。
【0018】
さらにまた、第9の異種金属接合体の製造方法は、材質の異なる複数の金属材質をレーザ照射によって接合させる異種金属接合体の製造方法であって、アルミニウム系金属材20と、少なくとも表面の一部に亜鉛を含有する鉄系金属材10と、の合わせ目にレーザ光を照射して、前記鉄系金属材10の表面に含有された亜鉛と、前記アルミニウム系金属材20の表面に含有されたアルミニウムとを溶出させる第1の工程と、前記レーザ光の照射面同士が接触する方向へローラで加圧し、鉄系金属材10とアルミニウム系金属材20との界面に、亜鉛をアルミニウムに固溶させた合金層40を形成させる第2の工程と、を含むことができる。
【0019】
さらにまた、第10の異種金属接合体の製造方法は、前記第2の工程でローラによる加圧後に、加圧した界面を急冷することができる。
【0020】
さらにまた、第11の異種金属接合体の製造方法は、前記第2の工程において、亜鉛、アルミニウム、鉄からなる群より選択される一あるいは2種以上からなる金属間化合物23を、前記合金層40内に分散して析出させることができる。
【0021】
さらにまた、第12の異種金属接合体の製造方法は、前記第2の工程において、前記合金層40の総膜厚が1μm以上に形成できるローラの加圧力でもって、加圧することができる。
【0022】
さらにまた、第13の異種金属接合体の製造方法は、前記第2の工程において、ローラの加圧力を163N/mm以上とできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、レーザ照射とローラ圧接の組合せにより、接合対象とする金属材への急熱急冷効果を得ることができ、この急熱急冷効果でもって高い継手強度を有する異種金属接合体とできる。すなわち、レーザ光により照射された領域は急熱され、この領域をローラでもって加圧することにより、瞬時に熱の拡散領域を増大させて急冷効果を得る。これによりAl−Zn系の固溶体である合金層が形成され、またはこれに加えてZn、Fe、Alからなる群から選択される単一の原子、あるいは2種以上からなる金属間化合物を合金層内に分散させて析出させることができる。さらに、この分散粒子のサイズを小さくし、かつ分散間隔を細かくできるため、合金層の固溶強化、析出強化および分散強化による硬化を一層高められる。
【0024】
第1、5、9、11、12発明によれば、固溶体でもって異種金属接合体の内部に存在する転位を変位し難くできる。すなわち、固溶体が転位の運動を阻害することで高強度な継手とでき、相対的に異種金属接合体を硬化できる。
【0025】
第2、3、6、7、8、10発明によれば、固溶体内に析出物が分散されることにより、固溶体による素地の転位運動の障害が一層強くなり、すなわち接合体は高い降伏強さを示す。
【0026】
第4発明によれば、鉄と亜鉛からなる合金層によって、鉄系金属材の鉄原子がアルミニウム系板側に移動するのを抑制し、いわば合金層が堰止層の役割を果たす。これにより、高い継手強度とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、異種金属接合体及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、異種金属接合体及びその製造方法を以下のものに特定しない。さらに、本明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」、及び「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
また、本発明において金属の界面とは、接合対象の金属材同士の接触点、接触線、接触面のみならず、その近傍も含む意味で使用する。加えて、「ローラの加圧力」とは、ローラ加重をローラで接合させようとする接合材の幅で割ったものをいう。
【0028】
(実施の形態)
図1は、異種金属接合体1の製造方法を示す説明図である。図1の異種金属接合体1は、材質の異なる2種の金属材を急熱及び急冷して接合したものである。異種金属接合体1は、少なくとも表面の一部を亜鉛で被覆する鉄系金属材10と、アルミニウム系金属材20とから構成され、主に以下のような手順を経て接合される。すなわち、鉄系金属材10として亜鉛めっき鋼板を使用し、これとアルミニウム系金属材20であるアルミニウム板とを重ね合わせて接合面を共有できるよう、双方の金属材を位置合わせする。さらに、この2つの金属板の合わせ目にレーザ光2を照射し、亜鉛めっき鋼板10及びアルミニウム板20の表面をほぼ同時に溶融させる。そして、亜鉛めっき鋼板10及びアルミニウム板20における、レーザ光2の照射面同士が接触する方向に、ローラ3でもって加圧する。この結果、継手強度の高い異種金属接合体1が得られる。以下に各部材について説明する。
【0029】
(亜鉛めっき鋼板)
被接合部材である鉄系金属材10として、鋼材を使用する。また、この鋼材に溶融亜鉛めっきを施したもの、あるいは溶融亜鉛めっき鋼板を加工することでFe−Zn合金を形成したもの、鋼材に亜鉛膜を被覆したもの等、少なくとも鋼材の表面に亜鉛を含有するものを利用する。また、鋼材における亜鉛の含有領域は、少なくともアルミニウム系金属材20との接合領域をカバーしていればよく、鋼材の全表面に形成されていなくてもよい。亜鉛めっき鋼板を利用することで、ろう材などを使用することなく亜鉛を供給できる。
【0030】
(アルミニウム系板)
一方、他の被接合部材であるアルミニウム系金属材20は、その種類を特に限定せず、汎用のアルミニウム板材、鍛造材、鋳材などが適宜選択される。
【0031】
(合金層と金属間化合物)
図2は、上記の方法で得られた異種金属接合体1の断面図であって、鉄系金属材10とアルミニウム系金属材20との接合付近における模式図である。レーザ光でもって急熱された双方の金属材10、20は、その表面がほぼ同時に溶融する。そしてレーザ光の照射面同士が接面する方向へ、ローラでもって密着圧力以上のローラの加圧力を加えると同時に接合領域を急冷することにより、溶融した亜鉛めっき鋼板10の亜鉛が、アルミニウム板20のアルミニウムに固溶してAl−Zn系の合金層40を形成する。そして、この合金層を介して双方の金属材10、20が強固に接合されて異種金属接合体1を得る。
【0032】
合金層40は、亜鉛がアルミニウムに固溶してなる固溶体である。合金層40には、析出された亜鉛を含有する他、鉄、アルミニウム、亜鉛からなる群の内、少なくとも2種の原子からなる金属間化合物23が分散されて析出している。この金属間化合物23は、金属元素と金属元素との間に形成される化合物であり、金属的な性質を示す固体結晶である。金属間化合物23の組成式は、例えばFexZny、FexAlyまたはFexAlyZnz(ただし、1≦x≦4、1≦y≦13、0.4≦z≦10)と示され、具体的にはFe2Al5Zn0.4、Fe4All3、FeAl、Fe2Al5等が挙げられる。ただし、金属間化合物は、合金の構成要素(相)の一つとして金属材料の組織の中(Al−Znの合金層内)に出現する固相であるので、単純な原子価の考え方が適用できない結晶も数多く含まれており、その組成の範囲は上記の範囲に限定されない。
【0033】
また図2に示すように、合金層40において、亜鉛及び金属間化合物23は細かく分散されてほぼ均等に存在することが好ましい。すなわち、アルミニウムと亜鉛から構成される比較的柔軟な合金層40が、双方の金属材の接着層としての役目を担い、さらにこの合金層内に固い金属間化合物23が細かい微粒子となって分散し、かつ好ましくは高密度に一様に介入することで、合金層40が硬化されて、ひいては継手強度の高い接合体を得られる。
【0034】
ところで、金属の変形は、金属内の原子の乱れによって生じる。すなわち転位の動きが金属の変形に寄与する。したがって、いわゆる固い金属の接合体を得るためには、金属の塑性変形を抑止して、転位の運動を抑止することが必須となる。図2の例では、合金層40内に亜鉛及び金属間化合物23が存在することによって、結晶素地である合金層40が硬化する。これが転位運動の障害となって、転位の運動を起こすには非常に大きな応力を加えなければならず、接合体は高い降伏強さを示す。析出亜鉛及び金属間化合物23の分散粒子は、粒子間の間隔が小さく密である程、分散強化によって強度が一層向上するので好ましい。また、分散粒子は転位の発生源として働き、これにより素地である合金層40そのものが硬化を起こす。このように、アルミニウムと亜鉛の固溶体中に、これらの金属間化合物を分散させることで、分散硬化により接合部分の強度を向上させることができる。
【0035】
実施の形態における合金層40の総膜厚は1μm以上であることが好ましい。また、合金層40に析出される亜鉛の平均粒径が50nm以上80nm以下であり、金属間化合物23の平均粒径が10nm以上200nm以下であることが好ましい。さらに、合金層40内に析出される亜鉛、金属間化合物の割合は、以下の範囲であることが好ましい。すなわち、合金層40内に含有される亜鉛の組成が1%以上であり、または/かつ、合金層40内に含有される金属間化合物23の組成が1%以上であることが好適である。上記の範囲であれば、下地の合金層40に対して、亜鉛または/かつ金属間化合物23の分散状態が良好であり、すなわち、合金層40と析出物との割合が、高い継手強度を維持できる程度であって、かつ析出物が高密度に合金層内に充填されていて好適である。
【0036】
一方、従来の接合界面近傍では、大きく成長した金属間化合物が単層あるいは数層にわたって介在しているのみであって、結晶素地である合金層40は介在していない。したがって、金属間化合物が合金層40内に含有されることもなく、そもそも合金層40内が存在しないため、金属間化合物が分散されて配置されることもない。すなわち金属間化合物が金属材の接合界面に直に介在していた。上述したように金属間化合物は、それ自体は固いが外部からの応力によって組織が容易に破断されて脆い。これは、格子欠陥の一種であり、結晶内のずれに起因して線状につながっておきている一連の原子の変位が生じるためである。特に、従来のように金属間化合物が大きく成長し、層を形成する状態では、結晶のすべりによる変形が容易に起きて脆くなり、その強度は著しく低減されてしまう。したがって相対的に脆弱な継手層となっていた。具体的には、異種金属間の接合において接合界面に生成する金属間化合物が1μmを超えると、継手強度が低下するといわれており、このため従来は、金属間化合物の生成を極力抑制することに注力されていた。
【0037】
これに対し、本発明では逆に金属間化合物を積極的に利用して継手強度を向上させることに成功したものである。具体的に、実施の形態における合金層40および合金層40内の構成は、以下のようにして形成される。レーザ光の急熱により金属材の表面が溶融し、この溶融領域同士を重ね合わせる方向にローラでもって圧着させる。この際、ローラは、レーザ光の照射面同士を密着圧力以上のローラの加圧力でもって加圧する。これにより、まず急熱作用により溶融した亜鉛がアルミニウムに固溶して、Al−Zn系の固溶体からなる合金層40を形成する。そして、ローラの加圧力によって接触領域が拡大し、この結果、金属側の熱をローラ側や接合近傍の周辺等へと瞬時に拡散させて接合域を急速に冷却させる。合金層40の急冷に伴い、温度が下降するにしたがって、Alの亜鉛に対する固溶の許容範囲を超えた亜鉛が、合金層40内に析出される。ほぼ同時に、加熱により溶融した鉄、アルミニウム、亜鉛からなる群より選択される、少なくとも2種から構成される金属間化合物23が、急冷により合金層40内に分散されて析出される。
【0038】
図3に、アルミニウムと亜鉛の2元系状態図を示すグラフを示す。グラフ中の斜線領域はアルミニウムの亜鉛に対する固溶限の領域を示す。このグラフより、常温において亜鉛はアルミニウムにほとんど固溶しないことが判る。一方、温度が高い範囲では、アルミニウムの中に亜鉛が固溶される。したがって、図2に示すように、アルミニウムと亜鉛の固溶体を構成している異種金属接合体1では、いったん高温でもって接合されて、この温度域でアルミニウムに亜鉛が固溶されて固溶体を構成し、その後の急冷により亜鉛が再結晶化されて合金層内に析出されると考えられる。
【0039】
また、Al−Zn系の合金層40内に、上記に示した組成の金属間化合物23が析出される要因は、以下のように説明される。鉄とアルミニウムの親和性が高く、そのため亜鉛と鉄との結合が少し遅れる。したがって、残存した亜鉛はアルミニウムと固溶体を作る。その後の冷却により亜鉛が純亜鉛として合金層内に析出したと考えられる。
【0040】
上記に示した金属間化合物および合金層の組成を考慮すると、亜鉛めっき鋼板10がレーザ光でもって溶融される際の亜鉛の供給は、亜鉛めっき層の一部からでもよく、または亜鉛めっき層全てからでも構わない。亜鉛めっき鋼板に被覆されるめっき層は、耐食性向上等のため単層に限られず複数層で構成されることがある。図2の例では、亜鉛めっき層の一部を溶融させ、鉄側の亜鉛めっき層の一部であるFe3Zn10を残存させている。このように、亜鉛めっき鋼板10と合金層40との間に、鉄と亜鉛からなる化合物層30を介在させている。この化合物層30は、鉄原子が合金層40側へ溶出するのを防ぐ堰止層の役割を果たし、Alリッチな金属間化合物層が生成するのを抑制し、強度が低下するのを抑止できる。ただ、亜鉛めっき層全てを溶融した場合で、すなわち化合物層を残さない場合でも、圧接後に急冷させることで鉄原子の移動を抑制できる。このようにして、合金層40内に析出される結晶の分散効果を高め高強度な接合体とできる。以下にレーザとローラについて説明する。
【0041】
(レーザ)
レーザ光2は電子ビームと同程度のエネルギー密度を有し、これを集光して材料に照射すると溶接又は切断を行うことができる。また、触媒として気体、液体、固体を用いるレーザ等各種存在するが、実施の形態では、固体レーザ媒質として希土類をドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット) レーザを使用した。ただ、この例に限られず他の固体レーザ媒質として、LiSrF、LiCaF、YLF、NAB、KNP、LNP、NYAB、NPP、GGG等も用いることもできる。また、レーザ媒質としてバルクに代わってファイバーを発振器として利用した、いわゆるファイバーレーザにも適用可能である。さらに、固体レーザ媒質を使用せず、言い換えるとレーザ光を発振させる共振器を構成せず、波長変換のみを行う波長変換素子を使用することもできる。この場合は、半導体レーザの出力光に対して波長変換を行う。波長変換素子としては、例えばKTP(KTiPO4)、有機非線形光学材料や他の無機非線形光学材料、例えばKN(KNbO3)、KAP(KAsPO4)、BBO、LBOや、バルク型の分極反転素子(LiNbO3(Periodically Polled Lithium Niobate:PPLN)、LiTaO3等)が利用できる。また、Ho、Er、Tm、Sm、Nd等の希土類をドープしたフッ化物ファイバを用いたアップコンバージョンによるレーザの励起光源用半導体レーザを用いることもできる。このように、本実施の形態においてはレーザ発生源として様々なタイプを適宜利用できる。さらにまた、レーザ発振部は固体レーザに限られず、CO2やヘリウム−ネオン、アルゴン、窒素等の気体を媒質として用いる気体レーザを利用することもできる。
【0042】
ところで、レーザ溶接法は、高エネルギー密度のビーム熱源の高指向性と短時間加熱、また高冷却速度の特長を持つため、照射対象へのエネルギー制御が実現できて好ましい。つまり、上昇した温度の時間が短くでき金属の溶融量を制御できる。また、レーザによる加熱方式は、出力を止めることで、熱源を断つことができることから、冷却も速くでき、結晶組織の変質が防止される。加えて、指向性が高いため、金属の溶融量又は溶融面積をコントロールしやすく、したがって使用する金属の厚みを薄くできる。レーザ光の照射によって金属材料は急熱急冷の熱サイクルをもち、平衡状態とは異なった状態になる。さらに、本手法では、レーザは多重反射により所望の位置に集光されるため、レーザ反射率の高い金属においても、入熱損失を少なくすることができる。このように本手法では多重反射が有効である一方、他の手法ではエネルギーロスとなる。
【0043】
また、使用するレーザ光源は単数でも複数でもよい。さらに一つのレーザ光源からの出力光は一とは限らず、分岐させることで複数の出力光としてもよい。複数のレーザ光源、あるいは出力光であれば、接合面における合わせ目の両サイドから中央までを走査させて、照射時間を短縮できる。さらに、レーザのスポット形状も特に限定されない。ただ、両金属の接合部にレーザ光を照射する際、接合部の酸化により接合不能或いは接合の強度が低下する場合がある。これを防ぐため、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中或いは真空で溶接をするのが好適である。
【0044】
(ローラ)
このように、異種材料の界面へレーザ光を照射して急熱した後、ローラでもって密着圧力以上のローラの加圧力を接合領域に加えることができる。またローラによる圧接加熱は、圧接後の温度伝達を速やかに行えるため、急冷効果も得られる。この結果、高い継手強度を有する異種金属接合体とできる。ここで、密着圧力とは、異種金属接合体に対して破断する方向に応力を加えた際に、接合部より破断せず、母材の金属材から破断する程度の継手強度を備えるよう、接合時に双方の金属材へ印加する圧力を指す。
【0045】
すなわち、ローラの加圧力を印加することにより、以下のような利点が得られる。まず、双方の金属材10、20の密着領域を稼ぐことができる。すなわち接合部における空隙の発生を制御し強度を高められる。さらに接合面積を稼ぐことで、接合領域の熱がローラ側あるいは接合領域の周辺近傍に拡散されて、接合部を瞬時に急冷する。これにより、上述した合金層を両金属材の界面に形成し、さらに、合金層内に析出する結晶を微粒子として分散させることができる。この結果、合金層における硬化が促進され、この合金層でもって金属内の原子の転位を抑止して強固な接合体とできる。
【0046】
また、実施の形態における合金層40及び合金層内の構成は、急熱及び急冷の双方の作用が必須であり、したがって、これらの作用効果を促進できる手段を任意に付加することができる。例えば、急冷手段として、ローラに加えて熱交換器や冷風ブロワー等別の冷却装置を付加することもできる。
【実施例1】
【0047】
接合材として、厚さ1mm、幅12mm、長さ300mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、「GA鋼板」と表記することがある)と工業用純アルミニウム(以下、「A1050」と表記することがある)を用いた。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層のみかけの厚さは約17μmである。接合は、これら2枚を合わせ、その合わせ面にレーザを照射・走査し、ローラにより加圧して接合を行った。アルミニウム表面は酸化物を除去するために♯1500番のエミリー紙により研磨した。レーザ出力は1200〜1500W、ビームスキャン速度30Hz、ローラ加圧力0.98〜2.94kN、送り速度10mm/sの範囲で変化させ、いずれの試料についてもアセトンで脱脂を行い、また接合部の酸化が接合不能や継手強度低下の原因となる事態を防ぐため、アルゴンガス雰囲気中においてレーザ圧接法により接合を行った。
【0048】
また、実施例1では、2kWYAGレーザ(FANUC製)を用いた。発振器から出射したビームは光ファイバにより伝送され、ビームスキャナ(SCANLAB製)に導光される。導光されたビームはコリメータレンズにより平行光となり、X−Y軸の振動ミラーによりスキャンされ、fθレンズを通り素材の合わせ面にφ2.0mmのビームスポットとして集光される。
【0049】
さらに、得られた接合材の接合部断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。加えて、化学組成分布をSEMに装着されたEDX(エネルギー分散X線解析)を用いて測定を行った。継手の機械的性質は、引張せん断試験および剥離試験で評価した。試験片形状は、幅12mmのレーザ圧接のままの継手形状で行った。
【0050】
各種実験条件において接合実験を行ったところ、全ての条件で接合が可能であり、GA鋼板とA1050は広範囲に接合が可能であることが判った。また、いずれの接合条件においても接合界面には化合物層である合金層が明確に認められた。この接合部断面を光学顕微鏡観察を行ったところ、合金層の厚さは、レーザ出力1300Wの場合、厚いところで20μm程度、平均で約13μm程度であった。一方1500Wの場合、約7μmと薄くなっており、レーザ出力が増加することで合金層厚さは減少した。レーザ出力が高いときはGA鋼板表面の亜鉛めっき層の一部が溶融または蒸発して亜鉛めっき層が除去されるため、合金層厚さが減少したと考えられる。
【0051】
また、得られた接合体の引張せん断試験結果および剥離試験結果をそれぞれ図4(b)及び図5(b)に示す。グラフの横軸は、金属材へのレーザ出力であり、縦軸は引張せん断強度あるいは剥離破断強度をそれぞれ示す。また、図中のマークにおける丸、三角および四角は、それぞれローラ加圧力が0.98kN、1.96kN、2.94kNであることを示す。さらに各マークの黒塗りは、母材で破断したことを示し、接合部が破断されなかったことを意味する。また白抜きマークは、接合部でもってせん断または剥離破断したことを示す。
【0052】
引張せん断試験では、図4(a)に示すように、接合部とほぼ水平な方向であって母材が互いに離間する側に引っ張ることで、接合部の強度を測定した。図4(b)に示すように、レーザ出力が1400Wでローラ加圧力が0.98kNの場合、せん断破断したが、その他の条件ではすべてA1050の母材から破断した。引張せん断強度は、合金層厚さが20μm程度と厚い場合でも高い継手強度を得られることが分かった。
【0053】
一方、剥離試験では、図5(a)に示すように、接合部とほぼ垂直な方向であって母材が互いに離間する側に引っ張ることで、接合部の強度を測定した。図5(b)に示すように、レーザ出力1400Wでローラ加圧力0.98kNの場合とレーザ出力1500Wではすべてのローラ加圧力において剥離破断した。これは、レーザ出力1500Wの場合、蒸発した亜鉛がガス化して圧接接合される際に閉じこめられることにより、接合部に空隙が生じ、接合面積が減少して剥離強度が弱まったためと推測される。したがって、レーザ出力は、亜鉛を溶融させつつも、亜鉛が蒸発しない程度に抑えることが好ましいと言える。上記以外の条件では剥離強度が20N/mm以上を示し、A1050の母材から破断した。このとき、最大剥離強度は42.9N/mmであった。一部の接合条件では、引張せん断および剥離強度共にA1050の母材破断する高い継手強度を得ることができた。
【0054】
図4、図5に示す引張せん断試験および剥離試験の結果より、ローラでもって1.96kN以上の圧力を印加することで、継手強度の高い接合体を得ることができた。したがって、ローラ加圧力、すなわち、ローラ加重をローラで接合させようとする接合材の幅で割った値に換算すると、1.96kN÷12mm(金属材の幅)≒163N/mmとなり、すなわち163N/mm以上のローラの加圧力で高い接合体とできることが判明した。
【0055】
また、合金層の厚さが13μm程度と厚く、継手強度が引張せん断、剥離共に高かった接合条件であるレーザ出力1300Wで、ローラ加圧力が2.94kNでのSEM観察およびEDX分析結果を、図6に示す。具体的に、図6(a)に示すSEM写真において、金属層が3層確認され、上側から亜鉛めっき鋼板(GA steel)10、合金層40、アルミニウム板(A1050)20に相当する。また、図6(b)は(a)の囲み領域における拡大図である。図6(b)から合金層40は約12μm程度に生成していることが確認できる。また、図6(b)のSEM写真中に記載されたラインに沿って1μm間隔で点分析を行ったEDX分析結果を図6(c)に示す。図6(c)の点分析結果から、合金層40内での濃度比率はほぼ一様であり、組成はAl:約60%、Fe:約30%およびZn:約10%となっている。
【0056】
また、化合物層について詳しく検討するために、TEMを用いて詳細に観察した。図7は、図6と同様の接合部近傍を示す写真であり、図7中のI〜IVに示す界面の代表的な箇所においてTEM観察を実施し、得られた明視野像を図8〜図11にそれぞれ示す。また、各視野像内で確認された析出物の結晶相は、電子回折で同定され、その結果を図中に併せて示す。
【0057】
図7における亜鉛めっき鋼板10側近傍Iの観察を示す図8をみると、鋼の主成分であるFeに、亜鉛との合金層であるFe3Zn10が積層されている。すなわち、亜鉛めっき鋼板10と合金層40との間には鉄と亜鉛からなる化合物層30が介在されている。これにより、鉄原子が固溶体側へ溶出するのを防ぐ防波堤の役割となり、Fe基板上へのAlリッチな金属間化合物層の生成を抑制し強度が低下する現象を抑止できる。
【0058】
さらに、図7の合金層40内であるIIの観察を示した図9では、アルミニウム、亜鉛の単独あるいは、鉄、アルミニウムおよび亜鉛の組成、さらに鉄とアルミニウムからなる金属間化合物が確認された。
【0059】
また、図7の合金層40内であってアルミニウム側近傍IIIの観察では、図10に示すように、Fe2Al5、Fe4All3、FeAl、Fe2Al5Zn0.4等の金属間化合物が見られる。さらに、図7の合金層40及びアルミニウム20界面近傍IVでは、図11に示すように、Fe4All3の組成を示す鉄およびアルミニウムの金属間化合物の他、アルミニウム母材内には、楕円形をしたコントラストの異なる50〜80nm程度の亜鉛の析出物が多数観察された。
【0060】
このGA鋼板とA1050の接合では、合金層40の総膜厚が1μm以上であって、さらに詳しくは10μm以上と厚く形成された。これはレーザ照射により亜鉛めっき層およびA1050の極表面が薄く溶融することで、AlとZnの固溶体が厚く生成したと考えられる。その後、ローラにより加圧される際に、それぞれの母材側およびローラ側に熱が発散することで急冷され、AlとZnの固溶体はAl+Zn層(Al地にZnが析出)層になり、その層の中に金属間化合物が分散した。しがたって、金属間化合物層のみが一様に生成しているのに比べて接合強度が高くなったと推測される。
【0061】
(比較例)
一方、図12(a)は亜鉛めっき鋼板10およびアルミニウム板との異種金属接合体100の外観図である。図12(a)の異種金属接合体100は、SPS(放電プラズマ焼結装置)を用いて接合された。SPSは、金属材へ低電圧でパルス状大電流を投下し、瞬時に発生する放電プラズマの高エネルギーを熱拡散、電界拡散などへ応用することで、粒間結合を形成しようとする部分に高エネルギーのパルスを集中させることができる。この結果、粒子表面のみの自己発熱による急速昇温が可能なため、短時間で緻密な焼結体を得ることができる。
【0062】
また、図12(b)は、図12(a)における、両金属材10、20の接合部の顕微鏡観察写真である。図12(b)に示すように、双方の金属材10、20の界面に介在される化合物層は厚く形成されている。得られた異種金属接合体100は、わずかな応力で接合部が剥離するほど低強度であった。これは、SPSでもって急熱作用は得られたものの、その後の急冷手段が得られなかったことにより、合金層内の金属間化合物が成長し、粒径が大きくなったことが要因と推測される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の異種金属接合体及びその製造方法は、自動車用鋼材など、軽量化が要求される分野での亜鉛めっき鋼板とアルミニウム板材との接合に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施の形態に係る異種金属接合体の製造方法を示す説明図である。
【図2】異種金属接合体の断面図であって、異種金属材の接合付近における模式図である。
【図3】アルミニウムと亜鉛の2元系状態図を示すグラフである。
【図4】図4(a)引張せん断試験を説明する説明図であり、図4(b)は引張せん断試験結果を示すグラフである。
【図5】図5(a)剥離試験を説明する説明図であり、図5(b)は剥離試験結果を示すグラフである。
【図6】図6(a)は接合体近傍におけるSEM写真であり、図6(b)は(a)の囲み領域における拡大図、図6(c)は(b)のライン部分におけるEDX分析結果をそれぞれ示す。
【図7】実施例1に係る接合部近傍の写真である。
【図8】図7のI領域における明視野像および結晶相の電子回折結果を示す。
【図9】図7のII領域における明視野像および結晶相の電子回折結果を示す。
【図10】図7のIII領域における明視野像および結晶相の電子回折結果を示す。
【図11】図7のIV領域における明視野像および結晶相の電子回折結果を示す。
【図12】図12(a)は、比較例における接合部の外観図を示し、図12(b)は(a)の接合部における顕微鏡観察写真を示す。
【符号の説明】
【0065】
1…異種金属接合体
2…レーザ
3…加圧ローラ
10…鉄系金属材(亜鉛めっき鋼板)
20…アルミニウム系金属材(アルミニウム板)
23…化合物(金属間化合物)
30…化合物層
40…合金層(固溶体)
100…異種金属接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系金属材(20)と、少なくとも表面の一部を亜鉛で被覆する鉄系金属材(10)と、を接合した異種金属接合体であって、
前記鉄系金属材(10)と前記アルミニウム系金属材(20)との界面には、亜鉛がアルミニウムに固溶してなる合金層(40)が介在されており、
さらに前記合金層(40)には、亜鉛が析出されていることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項2】
請求項1に記載の異種金属接合体において、
前記合金層(40)には、鉄、アルミニウムおよび亜鉛からなる群より選択される2種以上の原子からなる金属間化合物(23)が分散されて析出していることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項3】
請求項2に記載の異種金属接合体において、
前記金属間化合物(23)の組成式が、FexZny、FexAlyまたはFexAlyZnzの少なくとも一で示されることを特徴とする異種金属接合体。
ただし、1≦x≦11、1≦y≦40、0.4≦z≦10
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一に記載の異種金属接合体において、
さらに、前記鉄系金属材(10)と前記合金層(40)との間には、鉄と亜鉛からなる化合物層(30)が介在されていることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一に記載の異種金属接合体において、
前記合金層(40)の総膜厚が1μm以上であることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一に記載の異種金属接合体において、
前記析出亜鉛の平均粒径が50nm以上80nm以下であり、
前記金属間化合物(23)の平均粒径が10nm以上200nm以下であることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一に記載の異種金属接合体において、
前記合金層(40)内に含有される亜鉛の組成が1%以上であることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一に記載の異種金属接合体において、
前記合金層(40)内に含有される前記金属間化合物(23)の組成が1%以上であることを特徴とする異種金属接合体。
【請求項9】
材質の異なる複数の金属材質をレーザ照射によって接合させる異種金属接合体の製造方法であって、
アルミニウム系金属材(20)と、少なくとも表面の一部に亜鉛を含有する鉄系金属材(10)と、の合わせ目にレーザ光を照射して、前記鉄系金属材(10)の表面に含有された亜鉛と、前記アルミニウム系金属材(20)の表面に含有されたアルミニウムとを溶出させる第1の工程と、
前記レーザ光の照射面同士が接触する方向へローラで加圧し、鉄系金属材(10)とアルミニウム系金属材(20)との界面に、亜鉛をアルミニウムに固溶させた合金層(40)を形成させる第2の工程と、
を含むことを特徴とする異種金属接合体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の異種金属接合体の製造方法において、
前記第2の工程でローラによる加圧後に、加圧した界面を急冷することを特徴とする異種金属接合体の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の異種金属接合体の製造方法において、
前記第2の工程において、亜鉛、アルミニウム、鉄からなる群より選択される一あるいは2種以上からなる金属間化合物(23)が、前記合金層(40)内に分散して析出されることを特徴とする異種金属接合体の製造方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一に記載の異種金属接合体の製造方法において、
前記第2の工程において、前記合金層(40)の総膜厚が1μm以上に形成できるローラの加圧力でもって、加圧することを特徴とする異種金属接合体の製造方法。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか一に記載の異種金属接合体の製造方法において、
前記第2の工程において、ローラの加圧力が163N/mm以上であることを特徴とする異種金属接合体の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−107158(P2009−107158A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279726(P2007−279726)
【出願日】平成19年10月27日(2007.10.27)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】