説明

異音を防止可能な緩衝体

【課題】 異音の発生を防止することのできる異音を防止可能な緩衝体を提供する。
【解決手段】 可撓性を有する基材層1と、この基材層1の表面に一体的に積層される弾性の表層2とを備え、押出積層法により成形して車体パネル10の窓用開口部11とウインドウガラス12の周縁部との間に介在されるウインドウモール20に異音防止材として設ける。起立している小片が倒れて衝撃を緩和するので、「プチ、プチ」等の異音の発生することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行時等に樹脂やゴムを原因に発生する異音を防止可能な緩衝体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車は多数の部品により構成されているが、その部品の一つとして図5に示すように、車体パネル10の窓用開口部11とウインドウガラス12との間に介在されるウインドウモール20があげられる。このウインドウモール20は、車体パネル10の窓用開口部11とウインドウガラス12の周縁部との隙間を閉塞するが、この他にも、埃の付着を防止したり、ワイパーで飛ばされた水の流路を形成する。
【0003】
このような機能を有するウインドウモール20は、外観美と成形加工性の双方を満たすため、軟質塩化ビニル樹脂を使用して成形されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7‐62183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のウインドウモール20は、以上のように軟質塩化ビニル樹脂を使用して成形されているので、低温走行時や高速走行時に車体パネル10の窓用開口部11、あるいはウインドウガラス12との接触部で周期的に「プチ、プチ」等の異音を発生させ、この異音が運転者や同乗者に不安感、不快感を与えるという大きな問題がある。
【0005】
この問題を解消する方法として、ウインドウモール20の材質の変更等があげられるが、単に材質を変更しても、異音の発生を有効に防止することはできない。また、加硫EPDM等の特定の材質を選択すれば、異音の発生を防止できるが、そうすると、装飾部品として機能しなくなるという問題が新たに生じることとなる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、異音の発生を防止することのできる異音を防止可能な緩衝体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、可撓性の基材層と、この基材層に設けられる表層とを含み、この表層から不特定多数の小片を略鱗状に突出させ、この不特定多数の小片をXY方向の少なくともいずれか一方向に向けて傾けたことを特徴としている。
【0008】
なお、表層を50〜3,000μmの厚さとすることができる。また、各小片の表面を粗して凹凸に形成することができる。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における基材層と表層とは、直接接触していても良いし、発泡層等の他の層を単数複数介して対向していても良い。表層には、発泡剤、フィラー、ビーズ等を適宜添加することができる。小片の略鱗状という形状には、少なくとも鱗状、おおよそ鱗状、毛玉状、毛羽状、図3や図4のような形状、これに類似する形状が含まれる。
【0010】
本発明に係る異音を防止可能な緩衝体は、自動車のウインドウモールの他、電車、船舶、航空機等に使用することができる。また、各種の電気電子機器や家電機器等にも緩衝体として使用することができる。この異音を防止可能な緩衝体は、押出積層法や射出成形法等により成形することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異音の発生を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における異音を防止可能な緩衝体は、図1ないし図4に示すように、可撓性を有する基材層1と、この基材層1の表面に一体的に積層される弾性の表層2とを備え、押出積層法により成形されて車体パネル10の窓用開口部11とウインドウガラス12の周縁部との間に介在されるウインドウモール20に異音防止材として設けられる。
【0013】
基材層1と表層2とは、容易に積層して一体化できるよう同一の熱可塑性エラストマー、具体的にはTPO(オレフィン系樹脂)によりそれぞれ成形され、リサイクルの容易化に資する。基材層1はウインドウモール20の周面に部分的に設けられ、表層2は車体パネル10の窓用開口部11に接触したり、ウインドウガラス12の周縁部に接触する。
【0014】
表層2は、50〜3,000μm、好ましくは100μmの厚さに薄く成形され、図2に示すように平面視で規則性のない略まだら模様、あるいは略虫食い状に形成される。この表層2は、図3や図4に示すように、発泡剤、非溶融粒子やビーズ等の影響によりごつごつした岩肌状に起伏形成され、不特定多数の小片3が断面略鱗状に突出形成されており、この不特定多数の小片3がXY方向に不規則に並べられるとともに、XY方向に向けそれぞれ不規則な角度で傾斜している。
【0015】
多数の小片3はそれぞれ非同一の厚さ、幅、大きさに形成され、各小片3は不均一な厚さや大きさに形成されており、表面が凹凸に粗されて規則性のない凹凸を形成する(図3、図4参照)。例えば、各小片3は、突出方向に徐々に細くなったり、太くなったり、あるいは細くなった先端から水平方向等に枝分かれした形状等に形成される。その他の部分は、従来例と同様なので説明を省略する。
【0016】
上記構成によれば、自動車が寒冷地で走行したり、高速で走行する場合等でも、車体パネル10の窓用開口部11、あるいはウインドウガラス12との接触部で隆起している鱗状の小片3が倒れて衝撃を緩和するので、「プチ、プチ」等という異音の発生することがない。したがって、乗車している者に不安感や不快感等が生じるのを有効に防ぐことができる。
【0017】
なお、上記実施形態のウインドウモール20に対して基材層1を別体に設けても良いし、一体化しても良い。また、基材層1と表層2の材料は、熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではない。また、表層2を略まだら模様にする非溶融粒子、発泡剤、ビーズ等は、1種類でも良いし、複数種でも良い。
【0018】
また、小片3に気泡を形成しても良いし、そうでなでなくても良い。さらに、異音を防止可能な緩衝体を自動車のウインドウモール20に設けたが、何らこれに限定されるものではなく、他の用途のガスケットに設けたり、ガスケットの一部としてではなく、緩衝体として単独使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る異音を防止可能な緩衝体の実施形態におけるウインドウモール等を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る異音を防止可能な緩衝体の実施形態を示す説明図である。
【図3】図2のIII−III線に沿って切断した断面を拡大して示す写真である。
【図4】図2のIV−IV線に沿って切断した断面を拡大して示す写真である。
【図5】自動車のウインドウモール等を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 基材層
2 表層
3 小片
10 車体パネル
11 窓用開口部
12 ウインドウガラス
20 ウインドウモール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の基材層と、この基材層に設けられる表層とを含み、この表層から不特定多数の小片を略鱗状に突出させ、この不特定多数の小片をXY方向の少なくともいずれか一方向に向けて傾けたことを特徴とする異音を防止可能な緩衝体。
【請求項2】
表層を50〜3,000μmの厚さとした請求項1記載の異音を防止可能な緩衝体。
【請求項3】
各小片の表面を粗して凹凸に形成した請求項1又は2記載の異音を防止可能な緩衝体。


【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−95858(P2006−95858A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284521(P2004−284521)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】