説明

畳表の製造方法

【課題】C6テロマーを原料とする撥水撥油剤を用いることで環境や人への負荷を低減させると共に、従来のC8テロマーを用いたものと同様に耐汚染性・耐久性・静音性に優れた紙製畳表を製造できる畳表の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)木質繊維から抄造された紙に撚りをかけて得られる筒状抄繊糸10の表面に、主鎖或いは側鎖に架橋基を有する架橋性高分子からなるバインダー樹脂組成物20を塗布した後、乾燥させて下塗り層14を形成し、(b)前記下塗り層14の表面に、末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖と、末端が親水基で構成された側鎖とを有するフッ素系樹脂からなる撥水撥油剤22を塗布した後、乾燥させて上塗り層16を形成することによって筒状抄繊糸10の表面に撥水撥油加工を施し、然る後(c)撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸12を編織することを特徴とする畳表の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境や人への負荷を低減させた畳表の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、畳表は天然のイ草を編織して製造されているが、この天然のイ草は、その栽培が天候に左右され易いことから安定した供給が期待できず、価格変動も大きいと云うような欠点があった。そこで、従来、この天然のイ草に代わる物として、紙に撚りをかけた筒状抄繊糸を用いた畳表について研究開発が進められており、現に製品化が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この筒状抄繊糸は、幅約20mm程度のテープ状の原糸を撚糸機にてコヨリ状に連続加工した後、その表面にアクリル系樹脂およびフッ素系樹脂の混合液などからなる撥水撥油剤を塗布して製造される物であり、このように工業的に生産が可能な筒状抄繊糸を畳表の素材とすることによって、より均一で品質のバラツキが少ない畳表を安定的に供給することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2885658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで筒状抄繊糸に塗布される撥水撥油剤用のフッ素系樹脂としてC8テロマーを原料とするものが使用されてきた。ここで、C8テロマーとは、パーフルオロアルキル基(Cn2n+1−)のうち炭素数が8のパーフルオロオクチル基(C817−)の構造を有する含フッ素化合物(短鎖重合体)のことであり、このC8テロマーを原料としたフッ素系樹脂で撥水撥油剤を製造すると、その製造工程で微量のPFOA(パーフルオロオクタン酸:C715COOH)が副生されることが知られていた。なお、C8テロマーから製造されるフッ素系樹脂は、非常に良好な撥水撥油性をもたらし、筒状抄繊糸からなる紙製畳表に優れた耐汚染性を付与すると共に、音鳴り現象(筒状抄繊糸に耐久性を与えるアクリル系樹脂等のバインダーによる筒状抄繊糸同士の密着が歩行などで剥がされた際に生じる異音)も抑制していた。
【0006】
しかしながら、近年、このPFOAは、人体へのリスクレベルは明らかになっていないものの、生体蓄積性が懸念されることや、環境残留性が高いことなどが明らかになってきており、国内メーカーにおいては、2012年を目処に、PFOAが副生するC8テロマーの生産を取り止め、撥水撥油剤の原料となるフッ素系樹脂として実質的にPFOAを副生しないC6テロマーを原料とする物へと切替えが進められている。
【0007】
ここで、C6テロマーとは、パーフルオロアルキル基(Cn2n+1−)のうち炭素数が6のパーフルオロヘキシル基(C613−)の構造を有する含フッ素化合物(短鎖重合体)のことであり、C8テロマーに比べて「-CF2-」の鎖が2個少ないことから、一般的に撥水撥油性が劣っている。このため、C6テロマーを原料とするフッ素系樹脂で製造した撥水撥油剤では、従来のように耐汚染性・耐久性・静音性に優れた紙製畳表を製造するのが困難になると云う問題があった。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、C6テロマーを原料とする撥水撥油剤を用いることで環境や人への負荷を低減させると共に、C6テロマーを原料とする撥水撥油剤を用いているにもかかわらず、従来のC8テロマーを用いたものと同様に耐汚染性・耐久性・静音性に優れた紙製畳表を製造できる畳表の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における第1の発明は、「(a)木質繊維から抄造された紙に撚りをかけて得られる筒状抄繊糸10の表面に、主鎖或いは側鎖に架橋基を有する架橋性高分子からなるバインダー樹脂組成物20を塗布した後、乾燥させて下塗り層14を形成し、(b)前記下塗り層14の表面に、末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖と、末端が親水基で構成された側鎖とを有するフッ素系樹脂からなる撥水撥油剤22を塗布した後、乾燥させて上塗り層16を形成することによって筒状抄繊糸10の表面に撥水撥油加工を施し、然る後(c)撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸12を編織する」ことを特徴とする畳表の製造方法である。
【0010】
本発明における第2の発明は、上記第1の発明において、「前記架橋性高分子が、アクリル樹脂である」ことを特徴とする畳表の製造方法である。
【0011】
本発明における第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、「前記フッ素系樹脂が、パーフルオロヘキシル基含有アクリルモノマー、ポリエチレンオキシド鎖含有アクリルモノマーおよび架橋性モノマーの共重合体である」ことを特徴とする畳表の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
これらの発明によれば、下塗り層の表面に撥水撥油剤を塗設して上塗り層を形成する際、撥水撥油剤を構成するフッ素系樹脂の親水基が下塗り層を形成するバインダー樹脂組成物の架橋基と結合するようになるが、これと同時にフッ素系樹脂の末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖(=このフッ素系樹脂はC6テロマーを原料としている)が親水基とは逆の方向、すなわち上塗り層の表面側へと配向するようになる。このため、下塗り層と上塗り層とを強固に結合させることができるのに加え、フッ素系樹脂の撥水撥油機能を担うパーフルオロヘキシル基を余すことなく上塗り層の表面側に配置させてその撥水撥油機能を無駄なく最大限発揮させることができるようになる。
【0013】
したがって、C6テロマーを原料とする撥水撥油剤を用いることで環境や人への負荷を低減させると共に、C6テロマーを原料とする撥水撥油剤を用いているにもかかわらず、従来のC8テロマーを用いたものと同様に耐汚染性・耐久性・静音性に優れた紙製畳表を製造できる畳表の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】撥水撥油処理済みみの筒状抄繊糸を示す概略図である。
【図2】フッ素系樹脂の構造を示す説明図である。
【図3】抄繊糸の撥水撥油処理工程を示すフロー図である。
【図4】撥水撥油処理済みみの筒状抄繊糸の表面状態を描いたイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る畳表の製造方法は、筒状抄繊糸10に撥水撥油処理を施して図1に示すような撥水撥油処理済みみの筒状抄繊糸12を形成する「撥水撥油処理工程」と、この撥水撥油処理済みみの抄繊糸12を編織して目的とする畳表を形成する「編織工程」とで大略構成されている。
【0016】
「撥水撥油処理工程」は、筒状抄繊糸10の表面に撥水撥油処理を施して、より具体的には、筒状抄繊糸10の表面に下塗り層14と上塗り層16とからなる撥水撥油層18を形成して撥水撥油処理済みみの筒状抄繊糸12を形成する工程である。
【0017】
ここで、(撥水撥油処理前の)筒状抄繊糸10は、針葉樹パルプなどの木質繊維を主体とする抄造紙を筒状に撚ったものであり、本実施例では、その外径が0.7〜1.5mm程度に設定されており、その中央部分には必要に応じて口径が0.2〜0.8mm程度の空洞が設けられている(勿論、中央部分に空洞ができないよう抄造紙を撚ることによって筒状抄繊糸10を形成してもよい。)。
【0018】
筒状抄繊糸10を構成する抄造紙の種類や抄造紙の巻数は、特に限定されるものではないが、この実施例では、抄造紙としてNBKP(針葉樹パルプ)を坪量15〜35g/m2程度で抄造した幅15〜40mm程度のテープ状のものが用いられ、その巻数は4〜15巻程度に設定されている。
【0019】
撥水撥油層18を構成している下塗り層14は、筒状抄繊糸10の表面にバインダー樹脂組成物20を塗布することによって形成される。
【0020】
ここで、バインダー樹脂組成物20は、架橋性高分子、水および必要に応じて後述する上塗り層16と同じフッ素系樹脂などを加えて構成されている。
【0021】
架橋性高分子は、主鎖或いは側鎖に架橋性の官能基を有し、筒状抄繊糸10の表面に後述する撥水撥油剤を固定化させるものである。この架橋性高分子としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等を例示でき、このうち、筒状抄繊糸10に対する接着性(親和性)、撥水撥油剤との親和性等を考慮すれば、アクリル樹脂を用いるのが最も好適である。また、架橋性高分子を構成する「架橋性の官能基」としては、水酸基、カルボニル基、メチロール基、エポキシ基などを挙げることができる。
【0022】
撥水撥油層18を構成している上塗り層16は、下塗り層14の表面に撥水撥油剤22を塗布することによって形成される。
【0023】
ここで、撥水撥油剤22は、フッ素系樹脂および水を混ぜ合わせることによって構成されている。
【0024】
フッ素系樹脂は、C6テロマー、親水基含有モノマーおよび架橋性モノマーの共重合体で、末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖と、末端が親水基で構成された側鎖とを有する含フッ素化合物である。
【0025】
上述のように下塗り層14をアクリル樹脂で形成する場合には、このフッ素系樹脂として、図2に示すように、パープルオロヘキシル基含有アクリルモノマーとポリエチレンオキシド鎖含有アクリルモノマーと架橋性モノマーとの共重合体、つまりベース樹脂がアクリル樹脂のものを用いるのが好ましい。下塗り層14と上塗り層16とを共にアクリル系の樹脂とすることで、両層の層間を高い親和性で強固に結合させることができるようになるからである。
【0026】
筒状抄繊糸10の表面に撥水撥油処理を施す際には、図3に示すような撥水撥油処理装置30が用いられる。
【0027】
撥水撥油処理装置30は、複数のガイドローラ32によって構成された搬送路34を備えている。搬送路34の始点には、搬送路34に対して筒状抄繊糸10を供給する供給装置36が配置されており、搬送路34の終点には、撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸12を巻き取る巻取装置38が配置されている。なお、撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸12は、巻き取られずにイ草のように一定長さに切断されて堆積される場合もあり、この場合は、巻取装置38の代わりに図示しない切断機が配置される。また、搬送路34の途中には、第一浸漬槽40、一次加熱装置42、第二浸漬槽44および二次加熱装置46が配置されている。
【0028】
そして、第一浸漬槽40には、架橋性高分子、水(清水)および必要に応じてフッ素系樹脂などが加えられたバインダー樹脂組成物20が収容されている。
【0029】
また、第二浸漬槽44には、C6テロマーと親水基含有モノマーとを原料とするフッ素系樹脂および水(清水)を混ぜ合わせることによって構成された撥水撥油剤22が収容されている。
【0030】
この撥水撥油処理装置30を用いて筒状抄繊糸10の撥水撥油処理を行う際には、供給装置36から搬送路34に対して筒状抄繊糸10が供給され、この筒状抄繊糸10が第一浸漬槽40に浸漬される。そして、第一浸漬槽40において、筒状抄繊糸10の表面にバインダー樹脂組成物20が付着する。なお、筒状抄繊糸10の表面に付着したバインダー樹脂組成物20の一部は、筒状抄繊糸10の表層近く(図1の円中、Aで示した表面から下の4層程度)まで滲み込んでいる。
【0031】
第一浸漬槽40を経た筒状抄繊糸10は、一次加熱装置42に与えられ、筒状抄繊糸10の表面に付着しているバインダー樹脂組成物20の表面が加熱乾燥され、抄繊糸12の表面に下塗り層14が形成される。なお、一次加熱装置42における乾燥条件(乾燥温度や乾燥時間)は、バインダー樹脂組成物20を構成している樹脂の種類や乾燥方法の違いによって適宜設定される(後述する二次加熱装置46についても同様)。
【0032】
続いて、一次加熱装置42を経た筒状抄繊糸10は、自然冷却されながら第二浸漬槽44へと搬送される。そして、第二浸漬槽44において、下塗り層14の表面に撥水撥油剤22が塗布され、その表面が二次加熱装置46で加熱乾燥されることによって下塗り層14の表面に撥水撥油剤からなる上塗り層16が形成され、撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸12が得られる。
【0033】
ここで、下塗り層14の表面に、撥水撥油剤22を塗布して上塗り層16を形成する際には、図4に示すように、撥水撥油剤22を構成するフッ素系樹脂の親水基が下塗り層14を形成するバインダー樹脂組成物20(架橋性高分子)の架橋基と結合するようになるが、これと同時にフッ素系樹脂の末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖が親水基とは逆の方向、すなわち上塗り層16の表面側へと配向するようになる。このため、下塗り層14と上塗り層16とを強固に結合させることができるのに加え、フッ素系樹脂の撥水撥油機能を担うパーフルオロヘキシル基を余すことなく上塗り層16の表面側に配置させることができ、その後、二次加熱装置46で該フッ素系樹脂をキュアすることにより、その撥水撥油機能を無駄なく最大限発揮させることができるようになる。
【0034】
なお、筒状抄繊糸10に下塗り層14および上塗り層16を形成する方法としては、上述の実施例のような浸漬法の他に、吹き付け法や流し塗り法などを用いてもよい。
【0035】
編織工程は、上述のようにして得られた撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸12を、図示しない編織機を用い、所定の織り込み密度で編織することにより目的の畳表を得る工程である。
【実施例】
【0036】
発明者等は、上述の方法にて得られた畳表の耐汚染性等について試験を行い、その実用性を検証した。以下には、その試験方法および試験結果について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(1)実施例および比較例試料の調製
[実施例]
筒状抄繊糸として、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)を坪量18g/m2で抄造した幅25mmのテープ状の抄造紙を巻き数10で撚りあわせたものを準備した。
【0038】
次に、バインダー樹脂組成物を構成する架橋性高分子(バインダー樹脂)としてDIC社製のアクリル系樹脂を準備すると共に、撥水撥油剤を構成するフッ素系樹脂としてダイキン工業社製のものを準備した。そして、下表1に示す組成割合にてバインダー樹脂組成物および撥水撥油剤をそれぞれ調製した。なお、この実施例のバインダー樹脂は架橋基を有するものであり、フッ素系樹脂はC6テロマーを原料とし且つ側鎖に親水基を有するものである。
【0039】
【表1】

【0040】
続いて、上記で準備した筒状抄繊糸に図3で示すような浸漬法により上記バインダー樹脂組成物の塗布を行なった。具体的には、バインダー樹脂組成物を浸漬槽に張り、筒状抄繊糸を当該バインダー樹脂組成物に0.3秒浸漬させた後、加熱装置に導入し、80℃で3分間乾燥し、筒状抄繊糸の表面に塗布量75g/m2の下塗り層を形成させた。
【0041】
続いて、下塗り層の表面に、図3で示すような浸漬法により上記撥水撥油剤の塗布を行なった。具体的には、撥水撥油剤を浸漬槽に張り、表面に下塗り層が形成された筒状抄繊糸を当該撥水撥油剤に0.3秒浸漬させた後、加熱装置に導入し、180℃で1.5分間乾燥し、下塗り層の表面に塗布量25g/m2の上塗り層を形成させた。
【0042】
そして、以上のようにして得られた撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸を、織り込み密度0.85kg/m2で編織することにより実施例の畳表を得た。
【0043】
[比較例1]
バインダー樹脂として架橋基を有さないアクリル系樹脂(コニシ社製)を用いると共に、フッ素系樹脂としてC6テロマーを原料としているが側鎖に親水基を有さないダイキン工業社製のものを用いたこと以外は上記実施例と同様な方法で比較例1の畳表を得た。
【0044】
[比較例2]
バインダー樹脂として架橋基を有さないアクリル系樹脂(コニシ社製)を用いたこと以外は上記実施例と同様な方法で比較例2の畳表を得た。
【0045】
[比較例3]
フッ素系樹脂としてC6テロマーを原料としているが側鎖に親水基を有さないダイキン工業社製のものを用いたこと以外は上記実施例と同様な方法で比較例3の畳表を得た。
【0046】
[比較例4]
バインダー樹脂として架橋基を有さないアクリル系樹脂(コニシ社製)を用いると共に、フッ素系樹脂としてC8テロマーを原料としており側鎖に親水基を有さないDIC社製のものを用いたこと以外は上記実施例と同様な方法で比較例4の畳表を得た。
【0047】
[比較例5]
フッ素系樹脂としてC8テロマーを原料としており側鎖に親水基を有さないDIC社製のものを用いたこと以外は上記実施例と同様な方法で比較例5の畳表を得た。
【0048】
(2)各種特性評価試験の方法
[耐汚染性試験]
汚染物として約80℃の緑茶とミルク入りコーヒーを用い、それぞれ適量滴下した後2時間後にふき取りを行い、汚れ跡を目視で2段階(○:汚れ跡なし,×:汚れ跡あり)に評価した。
【0049】
[耐久性(耐摩耗性)試験の方法]
JIS L−0849の摩擦に対する染色堅牢度試験方法に準拠し、学振型摩耗試験機を用いて実施例及び各比較例試料の表面を擦り、表面の状態を目視で2段階(○:変化なし,×:毛羽立ち或いは破れあり)に評価した。
【0050】
[湿潤耐久性(耐洗浄性)試験]
水を含ませ硬絞りした日本手拭いで500gの荷重で100回摩擦させた後に、表面の状態を目視で2段階(○:異常なし,×:紙のめくれあり)に評価した。
【0051】
[静音性]
試験片を60℃で2時間、乾燥機中で加温した後常温に自然冷却し、試験片を折り曲げて開いた時の試験片の密着剥がれ音の発生を耳で聞いて2段階(○:異音なし,×:異音あり)に評価した。
【0052】
(3)各種特性評価試験結果
上記各特性評価試験の結果を下表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
この表が示すように、バインダー樹脂が架橋基を有すると共に、フッ素系樹脂がC6テロマーを原料とし且つ側鎖に親水基を有する実施例の畳表は、従来のC8テロマーを原料としたフッ素系樹脂を用いた比較例4および5のものと同程度の耐汚染性、耐久性、及び静音性を有することが窺える。
【0055】
これは、上述したように、下塗り層の表面に、撥水撥油剤を塗布して上塗り層を形成する際、図4に示すように、撥水撥油剤を構成するフッ素系樹脂の親水基と下塗り層を形成するバインダー樹脂組成物の架橋基とが結合すると同時に、フッ素系樹脂の末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖が親水基とは逆の方向、すなわち上塗り層の表面側へと配向することに起因するものと考えられる。
【符号の説明】
【0056】
10…(撥水撥油処理前の)筒状抄繊糸
12…撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸
14…下塗り層
16…上塗り層
18…撥水撥油層
20…バインダー樹脂組成物
22…撥水撥油剤
30…撥水撥油処理装置
32…ガイドローラ
34…搬送路
36…供給装置
38…巻取装置
40…第一浸漬槽
42…一次加熱装置
44…第二浸漬槽
46…二次加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維から抄造された紙に撚りをかけて得られる筒状抄繊糸の表面に、主鎖或いは側鎖に架橋基を有する架橋性高分子からなるバインダー樹脂組成物を塗布した後、乾燥させて下塗り層を形成し、
前記下塗り層の表面に、末端がパーフルオロヘキシル基で構成された側鎖と、末端が親水基で構成された側鎖とを有するフッ素系樹脂からなる撥水撥油剤を塗布した後、乾燥させて上塗り層を形成することによって筒状抄繊糸の表面に撥水撥油加工を施し、然る後
撥水撥油処理済みの筒状抄繊糸を編織することを特徴とする畳表の製造方法。
【請求項2】
前記架橋性高分子が、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の畳表の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂が、パーフルオロヘキシル基含有アクリルモノマー、ポリエチレンオキシド鎖含有アクリルモノマーおよび架橋性モノマーの共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の畳表の製造方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76282(P2013−76282A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217234(P2011−217234)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】