説明

疎水性コーティング

a)一次粒子、b)一次粒子の表面に結合し、一次粒子の平均直径より小さい平均直径を有する二次粒子、c)二次粒子の表面を少なくとも部分的に覆い、そしてその表面に結合する疎水性層、を含む疎水性フィルムまたはコーティングであって、二次粒子が共有化学結合によって一次粒子の表面に結合していることを特徴とする疎水性フィルムまたはコーティング。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、コーティング、コーティングを製造するためのパーツのキットおよびコーティングの塗布方法に関する。好ましくは、本発明によるコーティングは疎水性コーティングであり、そのコーティングは超疎水性でさえあるかもしれない。
【0002】
疎水性コーティングは、窓、TVスクリーン、DVDディスク、調理器具、衣類、医療機器などの多数の用途でますます普及してきている。その理由は、それらは清掃が容易であり、かつ、低い接着特性を有するからである。一般に、疎水性材料またはコーティングは、90°もしくはそれ以上の水の静的接触角(θ)によって特徴づけられる。ポリ(テトラフルオレテン)(PTFE)またはポリプロピレン(PP)などの疎水性ポリマー材料が数十年の間利用可能であった。これらの材料は、工業材料または高度に架橋されたコーティングと比べて劣った機械的特性だけでなく、限られた疎水性も問題になる。例えば、PPはおおよそ100°の水の静的接触角を有するが、公知の最も疎水性であるポリマー材料の1つであるPTFEは、おおよそ112°の水の静的接触角を有する。
【0003】
幾つかの疎水性コーティングは、当該技術分野で超疎水性コーティングと呼ばれている。超疎水性コーティングは一般に140°を超える静的水接触角によって定義される。
【0004】
超疎水特性を有する表面は自然界に見いだされ、例えばハスの葉またはキャベツの葉である。葉の粗面上へ分泌されるワックスにより、水および汚染粒子の葉への接着性が低下させられる。葉上に沈積した水滴は簡単に転がり落ち、塵芥粒子を集め、そしてそのプロセスにおいて葉を清浄化する。
【0005】
コーティングの高められた疎水性は、シリコーンベースのペンキまたはポリオレフィンベースのスプレー中へのミクロンサイズの球状粒子の包含によって得られる(BASF Press release、2002年10月28日、P345e、Dr Karin Elbl−Weiser、Lotusan、ネイチャー・ニュース・サービス(Nature news service)/Macmillan Magazines Ltd 2002年)。これらの懸濁液はペンキとしてまたはスプレーから塗布され、機械的ロバスト性の欠如がなおも問題になる。かかるコーティングの耐摩耗性は低く、従ってコーティングは、表面の疎水性機能を維持するために短期間の後に再塗布される必要がある。さらに、コーティングは可視範囲の光を散乱させ、これは、不透明のそして光学的に不透明のコーティングを効果的にもたらす。
【0006】
米国特許第6,068,911号明細書で、日立(Hitachi)は、非反応性ナノ粒子を含有する樹脂およびフルオロポリマーのUV硬化によって製造された表面粗さの原理にも基づいた超疎水性コーティングを記載した。それらのコーティング調合物は少なくとも2つの溶剤からなり、大部分の揮発性溶剤の蒸発によって、フルオロポリマーが表面に移動され、表面を疎水性にする。不活性の非反応性ナノ粒子の存在は表面粗さをもたらし、そして全体コーティングは超疎水性を示す。この技術は、処理中に表面粗さを生み出すための有機溶剤の蒸発に基づくので、動力学がこのプロセスで役割を果たすであろう。また、コーティングの硬度、耐久性および耐摩耗性は、望まれるべきより良好な性能を残す。
【0007】
別のアプローチは、大きい程度の粗さおよび亀裂を有する無機材料の蒸着された最上層を最上部に持った固体マトリックス層中の移動性蛍光体含有試剤のリザーバから連続的に補給される非耐摩耗性層を使用することである(国際公開第01/92179号パンフレット)。該コンセプトは、フルオロポリマーが無機層を通って拡散し、そして表面を覆い、こうして再生表面層を形成することである。これは、高い水接触角および非常に低いロールオフ角の、硬い光学的に無色透明の表面をもたらす。しかしながら、蒸着によるかかる複雑な構造体の製造は非常に時間がかかり、かつ、面倒であり、そしてコートすることができる面積サイズは限定される。また、移動性フルオロポリマーの放出および洗い流しは環境上望ましくない。
【0008】
本発明の目的は、製造するのが容易であり、再現性のある品質を有する、かつ、非常に良好な機械的特性を有する疎水性コーティングを提供することである。
【0009】
驚くべきことに、この目的は、
a)一次粒子、
b)一次粒子の表面に結合し、一次粒子の平均直径より小さい平均直径を有する二次粒子、
c)二次粒子の表面を少なくとも部分的に覆い、そしてその表面に結合する疎水性の上面層
を含む疎水性フィルムまたはコーティングであって、
二次粒子が共有化学結合によって一次粒子の表面に結合している疎水性フィルムまたはコーティングによって達成される。
【0010】
本発明によるコーティングの利点は、明らかな一定の品質を有する本発明によるコーティングを製造することが可能であることである。
【0011】
本発明によるコーティングのさらなる利点は、コーティングが高度に耐摩耗性および/または耐スクラッチ性であることである。
【0012】
本発明によるコーティングのその上さらなる利点は、本発明によるコーティングが製造するのが容易であることである。
【0013】
本発明によるコーティングのなおさらなる利点は、本コーティングがいかなるフッ素原子も含まないことが可能であることである。
【0014】
ラズベリー粒子を含む層の最上部の上に疎水性の上面層を使用する代わりに、異なる種類の上面層、例えば親水性層、吸収特性を有する、例えば臭いを吸収するまたは芳香を広げるための層、触媒活性を有する、例えば大気汚染物質を酸化的に排除するための層などを使用することもまた可能である。二次粒子の表面に結合する層が全く存在しないことさえも可能である。
【0015】
その特有の構造および一次粒子と二次粒子との間の共有化学結合のため、多種多様な可能性を有する、新規でユニークなコーティングまたはフィルムがこのようにして得られる。本コーティングまたはフィルムの利点の1つは、ラズベリー粒子の構造のために高い比表面積を有するコーティングが得られることである。それ故本発明はまた、
a)一次粒子、
b)一次粒子の表面に結合し、一次粒子の平均直径より小さい平均直径を有する二次粒子
を含むコーティングまたはフィルムであって、
二次粒子が共有化学結合によって該一次粒子の表面に結合しているコーティングまたはフィルムにも関する。
【0016】
好ましくは、本コーティングまたはフィルムはまた、二次粒子の表面を少なくとも部分的に覆い、そしてその表面に結合する上面層を含む。上面層は、最後に塗布され、そしてコーティングの表面を形成する層である。好ましくは、上面層の厚さは、粒子の構造がコーティングの上面で少なくとも部分的に依然として観察可能であるほどに小さい。より好ましくは、上面層は一次粒子の平均直径の3倍にほぼ等しいかもしくはそれ以下の厚さを有し、より好ましくは、該層は一次粒子の平均直径に等しいかもしくはそれ以下の厚さを有する。最も好ましくは、該層は、一次粒子の平均直径の0.5倍に等しいかもしくはそれ以下の厚さを有する。厚さは好ましくは1ナノメートルより上、より好ましくは2ナノメートルより上である。
【0017】
好ましくは、上面層は共有化学結合によって二次粒子の表面に同様に結合させられる。これは、本発明によるコーティングの機械的特性をさらに向上させる。
【0018】
より好ましくは、一次粒子または二次粒子は共有化学結合によって基材に結合している。このようにして、さらに向上したレベルの耐スクラッチ性および基材への高レベルの粘着性を有するコーティングが得られる。
【0019】
最も好ましくは、一次粒子または二次粒子は共有化学結合によって支持層に結合している。例えば基材が粒子と共有化学結合を形成することができる反応性官能基を含まない場合、基材は支持層で覆われてもよい。
【0020】
良好な結果は、二次粒子の平均直径が一次粒子の平均直径より少なくとも5倍小さい場合に得られる。これは、水について高い静的接触角および低いロールオフ角をもたらし、そのようにして向上した自己清浄化特性を提供する。
【0021】
好ましくは、二次粒子の平均直径は、一次粒子の平均直径より8倍小さい、より好ましくは10倍小さい、もっとより好ましくは20倍小さい、その上もっとより好ましくは40倍小さい。
【0022】
一次粒子の平均直径は0.1〜20μmの範囲にあってもよい。好ましくは、一次粒子の平均直径は0.5〜10μm、より好ましくは0.6〜5μm、最も好ましくは0.6〜3μmの範囲にある。このようにして有利な自己清浄化特性が得られる。
【0023】
二次粒子の平均直径は5〜1000nmの範囲にあってもよい。好ましくは、二次粒子の平均直径は10〜500nm、より好ましくは30〜300、最も好ましくは40〜60nmの範囲にある。このようにして透明なコーティングが得られてもよい。
【0024】
透明なコーティングが望まれる場合、良好な結果は、一次粒子の平均直径が300nmより小さい場合に得られる。
【0025】
最も好ましくは、一次粒子の平均直径は0.3〜3μmの範囲にあり、そして二次粒子の平均直径は10〜100nmの範囲にある。
【0026】
粒子寸法の測定方法には、透過電子顕微鏡法(TEM)、走査電子顕微鏡法(SEM)、原子間力顕微鏡法(AFM)画像形成が含まれる。
【0027】
粒子の寸法を測定するために、層のTEM写真画像において単一粒子が観察可能であるように、粒子は、薄層で表面上に塗布された非常に希薄な混合物中にある。次に、ランダムに選択されたような100個の粒子から、寸法が測定され、そして平均値がとられる。粒子が直径に関して球形でない場合には、粒子の一つの面から他の面に引くことができる最長直線がとられる。
【0028】
好ましくは、粒子は2より下、好ましくは1.5より下、より好ましくは1.2より下、最も好ましくは1.1より下のアスペクト比を有する。アスペクト比は、d1、粒子の一つの面から他の面に引くことができる最長直線と、d2、粒子の一つの面から他の面に引くことができる最短直線との比である。
【0029】
好ましくは、粒子の少なくとも80%は、平均直径の50%〜200%の値を有する直径を有する。
【0030】
一次粒子および二次粒子は、有機粒子か無機粒子かどちらかであってもよい。有機の例はカーボンナノスフェアである。好ましくは、一次粒子および二次粒子は無機粒子である。好適な無機粒子は例えば酸化物粒子である。好ましい酸化物粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、および酸化セリウムの群から選択された酸化物の粒子である。異なる酸化物からの粒子の混合物を使用することも、または混合酸化物の粒子を使用することもまた可能である。最も好ましくは、粒子は酸化ケイ素の粒子である。
【0031】
良好な結果は、二次粒子を一次粒子の表面に結合させる共有化学結合が一次粒子の表面の反応性官能基Iと二次粒子の表面の反応性官能基IIとの間の反応によって形成され、反応性官能基Iが反応性官能基IIと相補的である場合に得られる。これは、第1反応性官能基が第2反応性官能基と反応するであろうこと、しかし第1および第2反応性官能基がそれらの間で反応しないであろうことを意味する。これは、一次粒子が一次粒子に結合するおよび二次粒子が二次粒子に結合することなく、二次粒子を一次粒子に結合させる。このようにして、二次粒子が単層で一次粒子の表面を実質的に覆っている、いわゆるラズベリー構造が提供される。ラズベリー構造は自己清浄化特性に非常に有利である。
【0032】
上面層を二次粒子の表面に結合させる共有化学結合が二次粒子の表面の反応性官能基IIと疎水性層中の反応性官能基IまたはIIIとの間の反応によって形成され、反応性官能基IIが反応性官能基IおよびIIIを相補することもまた望ましい。
【0033】
二次粒子を支持層に結合させる共有化学結合が二次粒子の表面の反応性官能基IIと支持層中の優遇反応性官能基IまたはIIIまたはIVとの間の反応によって形成されることもまた望ましい。
【0034】
共有化学結合を形成するために本発明のコーティングに使用されるのに好適な反応性官能基および対応する相補的な反応性官能基のペアの例は、酸およびエポキシ、アミンおよびエポキシ、ヒドロキシルおよびエポキシ、シラノールおよびエポキシ、チオールおよびエポキシ、チオールおよびイソシアネート、ヒドロキシルおよびイソシアネート、アミンおよびイソシアネート、酸およびアジリジン、酸およびカルボジイミド、アミンおよびケトン、アミンおよびアルデヒドを含む群によって構成される。
【0035】
非常に良好な結果は、エポキシおよびアミン官能基が共有化学結合の形成に使用される場合に得られる。
【0036】
疎水性の上面層として、化合物、フッ素原子を含むポリマーまたは硬化ポリマー材料、少なくとも一部分の化合物を含む層が使用されてもよく、該ポリマーまたは硬化ポリマー材料は共有化学結合によって二次粒子に結合している。例えばこれらは、−CF−または−CF基を含む化合物、ポリマーまたは硬化ポリマー材料である。
【0037】
化合物の例には、2−パーフルオロオクチル−エタノール、2−パーフルオロヘキシル−エタノール、2−パーフルオロオクチル−エタンアミン、2−パーフルオロヘキシル−エタンアミン、2−パーフルオロオクチル−エタン酸、2−パーフルオロヘキシル−エタン酸、3−パーフルオロオクチル−プロペンオキシド、3−パーフルオロヘキシル−プロペンオキシドが挙げられる。
【0038】
ポリマーの例には、パーフルオロポリエーテル(PFP)が挙げられる。
【0039】
好ましくは疎水性の上面層として、ポリマーを含む層が使用されてもよく、そのポリマーはシランまたはシロキサンモノマー単位を含み、ポリマーの少なくとも一部分は共有化学結合によって二次粒子に結合している。このようにして、得られたコーティングは非常に耐スクラッチ性であり、そしてまた非常に十分に耐候性である。かかるモノマー単位の例には、ジメトキシシロキサン、エトキシシロキサン、メチルオクチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、トリメチルシロキサン、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジエチルシロキサン、トリフルオロプロピルメチルシロキサン、メチルフェニルシランが挙げられる。
【0040】
ポリマーの例には、例えばモノ(3−アミノプロピル)−ポリジメチルシロキサン、モノ−3−グリシドキシプロピル−)ポリジメチルシロキサン、ビス(3−アミノプロピル)−ポリジメチルシロキサンおよびビス−3−グリシドキシプロピル−)ポリジメチルシロキサンなどの、その末端基が反応性官能基、好ましくはエポキシまたはアミン基で官能化されているポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0041】
当業者は、一次および二次粒子を製造する方法ならびに共有化学結合の形成に好適な反応性官能基をかかる粒子の表面に提供する方法を知っている。本発明によるコーティング用の一次および二次粒子の製造に非常に好適な方法は、ステーバー(Stoeber)ら著、J.Coll.Interface Sci.26(1968年)、62ページなどに開示されている。該方法は、テトラ−アルコキシシランを、例えばエタノールなどの好適な溶媒に溶解させる工程と、次にシランを、撹拌しながら触媒の存在下に水と反応させて粒子を形成する工程とを含む。
【0042】
その後、反応性官能基は、粒子を、例えば官能性オルガノシロキサン、例えば3−グリシドキシプロピル−または3−アミノプロピル−トリアルコキシシランと反応させることによって粒子に付けられる。好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシランがこの目的のために使用される。
【0043】
粒子は、場合により例えば酸、塩基もしくは界面活性剤などの電荷制御剤の助けを借りて水、エタノールにまたは水/エタノール混合物に分散されて粒子を含む層の塗布に好適な組成物を形成する。この組成物は好ましくは、さらなる固体成分を全く含まないか、または限定された量を含むにすぎず、その量は非常に限定されているので、粒子は、いったん本発明によるコーティングが生み出されると、かかる成分中に埋め込まれていないかまたは部分的に埋め込まれているにすぎない。
【0044】
本発明はまた、
1)一次粒子を含むコーティング組成物、
2)二次粒子を含む組成物、
3)疎水性の化合物またはポリマーを含む、疎水性の上面層のための組成物
を含むパーツのキットに関する。
【0045】
本発明はまた、
1)表面が二次粒子で覆われるように二次粒子と反応させられた一次粒子を含む組成物、
2)疎水性の化合物またはポリマーを含む、疎水性層のための組成物
を含むパーツのキットに関する。
【0046】
本発明はまた、
1)表面が二次粒子で覆われるように二次粒子と反応させられた一次粒子を含む組成物、
2)一次または二次粒子と共有化学結合を形成することができる化合物を含む、支持層のための組成物
を含む、支持層をはじめとする、本発明によるフィルムまたはコーティングを製造するためのパーツのキットに関する。
【0047】
本発明はまた、本発明によるコーティングの塗布方法に関する。
【0048】
一実施形態では、本方法は、
1)基材または支持層の最上部の上へ一次粒子を含む組成物を塗布し、そして適切であれば該粒子が支持層と反応するような高温で硬化する工程、
2)一次粒子の最上部の上へ二次粒子を含む組成物を塗布し、そして適切であれば高温で、二次粒子を一次粒子に結合させるために硬化する工程、
3)上面層用のコーティング組成物を塗布し、そして適切であれば高温で、上面層を二次粒子に結合させるために硬化する工程
を含む。
【0049】
工程1〜3での塗布は、コーティング組成物を塗布するための当業者に公知の方法、例えばスピンコーティング、吹き付けまたは圧延によって実施されてもよい。工程1および2の後に、結合していない粒子は、液体、例えば水もしくは溶剤を用いて最終的に洗い流されもよいし、または機械的に、例えばソニフィケーションによって除去されてもよい。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明によるコーティングの塗布方法は、
1)表面が二次粒子で覆われる(ラズベリー粒子)ように二次粒子と反応させられた一次粒子を含む組成物を基材または支持層の最上部の上へ塗布し、そして適切であれば二次粒子が支持層と反応するような高温で硬化する工程、
2)上面層用のコーティング組成物を塗布し、そして適切であれば高温で、上面層を二次粒子に結合させるために硬化する工程
を含む。
【0051】
このようにしてコーティング・プロセスは加速されるので、コーティング・プロセスで直接に、以前に製造されたラズベリー粒子を使用することは非常に有利である。
【0052】
工程1および2での塗布は、コーティング組成物を塗布するための当業者に公知の方法、例えばスピンコーティング、吹き付けまたは圧延によって実施されてもよい。工程1後に、結合していない粒子は最終的にすすぎによってまたは機械的な、例えばソニフィケーションによって除去されてもよい。
【0053】
支持層は、例えば顔料およびフィラーなどのコーティング用の通常の添加剤を含んでもよい。
【0054】
支持層は好ましくは、優遇反応性官能基を持った2つの成分を含む樹脂混合物から形成される。支持層それ自体は、まだ硬化していない、部分的に硬化しているまたは完全に硬化している。好ましくは、成分の1つが過剰であり、その結果当該成分の反応性官能基は支持層の形成後に一次または二次粒子の表面での官能基との反応のために依然として利用可能である。最も好ましくは、支持層は工程1の前に部分的に硬化しており、その後に完全に硬化している。
【0055】
硬化反応とも呼ばれる一次粒子と二次粒子との間、二次粒子と支持層および上面層との間の共有化学結合または支持層中の共有化学結合の形成は例えば、10〜250℃、好ましくは20〜200℃の温度で、例えば2分〜数時間の期間に行われてもよい。これは例えば、選択される反応性官能基および相補的な反応性官能基に従属する。当業者はこれらの反応条件を非常に上手に選ぶことができる。
【0056】
自己清浄性コーティングとして、本コーティングは建築コーティングとしての用途に非常に好適である。
【0057】
本発明は、それに限定されることなく、実施例でさらに説明される。
【0058】
[実施例で使用する原材料]
TEOS:ABCRから入手した、テトラエトキシシラン
DMS−A15:ABCRから入手した、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン
TPGE:アルドリッチ(Aldrich)から入手した、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TPTGE)
GPS:アルドリッチから入手した、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(98%純度)
APS:アルドリッチ製の、3−アミノプロピルプロピルトリエトキシシラン(98%純度)
DMSE21:ゲレスト社(Gelest Inc.)から入手した、エポキシプロポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン
ジェファミン(Jeffamine)D−230:ハンツマン(Huntsman)から入手した、ポリオキシプロピレンジアミン、アミン−水素当量=60
アンモニア溶液(25%)はメルク(Merk)から購入した。これらの化学薬品のすべてはさらなる精製なしに使用した。
【0059】
[測定]
透過電子顕微鏡法(TEM)。TEM実験は、80KVでのJEOL JEM−2000FX TEMで行った。従来の陰極板をデータ記録のために用いた。該陰極は、8ビット/チャネルのグレースケールでグレードモードで動作するスキャナー(アグファDUOスキャナー(Agfa DUO Scanner))を用いてデジタル化された。サンプルは、シリカ粒子をエタノールに分散させ、そして希薄懸濁液の1滴をカーボン膜でコートされた銅グリッド上に沈積させることによって調製した。
【0060】
接触角測定。接触角およびロールオフ角は、室温(およそ21℃)でデータフィジックス(Dataphysics)OCA 30で、脱イオン水で測定した。接触角およびロールオフ角はすべて、各サンプル表面上の3つの異なるポイントで測定した値を平均することによって求めた。動的前進および後退角を、プローブ液をそれぞれ、滴に加えながらおよび滴から引き抜きながら記録した。
【0061】
[アミノ−官能化二次シリカナノ粒子の製造]
先ず、直径が約70nmの単分散シリカ粒子を、ステーバー法(ステーバーら著、J.Coll.Interface Sci.26(1968年)、62ページなどに開示された)に従って、TEOSの重合によって製造した。手短に言えば、6mLのTEOSを、磁気撹拌下に、15mLのアンモニア溶液(25%、触媒)および200mLのエタノールを含有するフラスコに滴加した。反応を60℃で5時間、引き続き5mLのエタノール中の0.3mLのAPSの添加で実施した。撹拌をN雰囲気下に60℃で12時間続行した。二次ナノ粒子を遠心分離によって分離し、上澄み液を捨てた。粒子を次にエタノールで3回洗浄した。白色粉末を50℃で16時間真空乾燥させた。
【0062】
二次シリカナノ粒子の外周でのアミン基の存在をニンヒドリン試験で調べた。アミノ−官能化二次シリカ粒子を室温で5%ニンヒドリン水溶液へ加えた。粒子の色は2、3分内に白色から青色に変化し、シリカ粒子表面上へのアミン部分の成功したグレーティングを示唆した。
【0063】
[エポキシ−官能化一次シリカマイクロ粒子の製造]
直径が700nmの裸のシリカ粒子を先ず合成した。室温で、10mLのTEOSを、磁気撹拌下に、21mLのアンモニア溶液、75mLのイソプロパノール、および25mLのメタノールを含有するフラスコに滴加した。5時間後に、粒子を遠心分離によって分離し、蒸留水/エタノールで洗浄し、50℃で16時間真空乾燥で乾燥させた。次に1.5gのシリカマイクロ粒子を40mLの乾燥トルエンへ再分散させ、そして5mLの乾燥トルエン中0.2gのGPSを、激しく撹拌しながらシリカ懸濁液に滴加した。懸濁液をN雰囲気下に50℃で24時間撹拌した。一次粒子を次に遠心分離によって分離し、トルエンで3回洗浄した。洗浄した粉末を50℃で16時間真空乾燥させた。
【0064】
[ラズベリー・アミノ−官能化シリカ粒子(それらの表面を二次粒子でカバーされた一次粒子)の製造]
それぞれ、アミノ−官能化二次シリカナノ粒子(0.4g)を20mLのエタノールに懸濁させ、そして0.6gのエポキシ−官能化一次シリカマイクロ粒子を15mLのエタノールに懸濁させた。その後、一次シリカマイクロ粒子懸濁液を、激しい撹拌下に、二次シリカナノ粒子懸濁液へ滴加した。懸濁液をN雰囲気下に24時間還流させた。粒子を次に遠心分離によって分離し、エタノールで洗浄した。粉末を50℃で16時間真空乾燥させた。結果は、図1でのTEM写真によって示されるようなラズベリー構造化粒子であった。
【0065】
[デュアルサイズ表面粗さのエポキシ−アミンコーティングの製造]
先ず、エポキシが10%過剰のエポキシ−アミンの支持層を、アルミニウム基材上に次の手順によって製造した:0.44gのTPTGEおよび0.24gのジェファミンD−230を、約2.2:1のエポキシ/アミノモル比で、1mLのトルエンに溶解させた。その後、約30μm(湿潤フィルム厚さ)のフィルムを自動フィルム塗布機でアルミニウムパネル上に引き下ろし、次に75℃で2時間硬化させた。次に、0.05gのラズベリー・アミノ−官能化シリカ粒子を1mLエタノールに懸濁させた。懸濁液を自動フィルム塗布機によって第1エポキシ層上に沈積させ(約60μmの湿潤フィルム厚さ)、次に75℃で18時間保った。冷却後に、フィルムをソニケーターにてエタノールでフラッシュして結合していない粒子を除去し、室温で乾燥させた。
【0066】
[実施例1]
本発明による超疎水性フィルムを、ラズベリー粒子を含有するダブル構造化フィルム上へPDMSをグラフトさせることによって得た。表面粗化フィルムを先ず、エポキシ−アミンフィルムか大きいシリカ粒子かのどちらかからのいかなる残存エポキシ基も末端アミノ基へ変換されることを確実にするためにアミン−エンドキャップトDMS−A15と80℃で4時間反応させ、反応後にトルエンによって十分に洗浄して未反応のDMS−15を除去した。終わりに、フィルムをエポキシ−エンドキャップトDMS−E21と80℃で4時間反応させ、引き続きトルエンで洗浄して、粗化表面を覆うPDMSの層をもたらした。
【0067】
[比較実験A]
PDMSで表面改質した、いかなる粒子も含まない、平滑なエポキシ−アミンフィルムを、アルミニウム基材上に次の手順によって製造した:0.44gのTPTGEおよび0.24gのジェファミンD−230を、約2.2:1のエポキシ/アミノモル比で、1mLのトルエンに溶解させた。その後、約30μm(湿潤フィルム厚さ)のフィルムを自動フィルム塗布機でアルミニウムパネル上に引き下ろし、次に75℃で2時間硬化させた。最後に、アミノ−PDMS(DMS−A15)をフィルムにグラフトさせた。
【0068】
[比較実験B]
比較目的のために、一次シリカ粒子のみを含有するフィルムを次の通り製造した(反応条件は上記と同じものである)。エポキシ−アミンフィルムを、比較実験Aに概説した手順に従って10%アミン過剰で、引き続き上に概説したような手順に従って製造した、一次シリカ粒子(表面にエポキシ基を含有する)の表面グラフト化で製造した。結合していない一次粒子をソニケーターにてエタノールでフラッシュすることによって除去した。最後に、アミノ−PDMS(DMS−A15)をフィルムにグラフトさせた。
【0069】
フィルムの湿潤性は、表面上での水の接触角(CA)によって反映される。平滑フィルム(比較実験A)上での前進水CAは、約40°のCAヒステリシスで、92±2°である(図2a)。PDMSで表面改質した、一次粒子を含むにすぎないフィルム(比較実験B)については、水前進CAの増加があり、141±1.5°に達する(図2b)が、同時に、CAヒステリシスもまた約110°に劇的に増加する。フィルムを上下逆さまにしたときでさえ、水小滴はフィルム表面に固定されて留まったままであろう。際立って対照的に、本発明に従ってPDMSで表面改質した、ラズベリー粒子を含有するフィルムについては、水の前進CAは168±1°にさらに増加し(図2c)、CAヒステリシスは約4°であることが示される。さらに重要なことには、該表面上の20μL水小滴のロールオフ角は5±1°である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ラズベリー・シリカ粒子のTEM写真である。
【図2】(a)粒子なし(比較実験A)、(b)一次粒子(比較実験B)、および(c)本発明によるラズベリー粒子を含有するフィルム上の5μLの水小滴である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一次粒子、
b)該一次粒子の表面に結合し、該一次粒子の平均直径より小さい平均直径を有する二次粒子、
c)該二次粒子の表面を少なくとも部分的に覆い、その表面に結合する疎水性の上面層
を含む疎水性フィルムまたはコーティングであって、
該二次粒子が共有化学結合によって該一次粒子の表面に結合していることを特徴とする疎水性フィルムまたはコーティング。
【請求項2】
a)一次粒子、
b)該一次粒子の表面に結合し、該一次粒子の平均直径より小さい平均直径を有する二次粒子
を含むコーティングまたはフィルムであって、
該二次粒子が共有化学結合によって該一次粒子の表面に結合していることを特徴とするコーティングまたはフィルム。
【請求項3】
前記二次粒子の表面を少なくとも部分的に覆い、その表面に結合する上面層をまた含むことを特徴とする請求項2に記載のフィルムまたはコーティング。
【請求項4】
前記上面層が共有化学結合によって前記二次粒子の表面に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティングまたはフィルム。
【請求項5】
前記一次粒子または二次粒子が共有化学結合によって基材に結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
前記一次粒子または二次粒子が共有化学結合によって支持層に結合していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
前記二次粒子の平均直径が前記一次粒子の平均直径より少なくとも5倍小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティングまたはフィルム。
【請求項8】
前記二次粒子の平均直径が5〜1000nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記一次粒子の平均直径が0.3〜20μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
前記二次粒子を前記一次粒子の表面に結合させる前記共有化学結合が、前記一次粒子の表面の反応性官能基Iと前記二次粒子の表面の反応性官能基IIとの間の反応によって形成され、該反応性官能基Iが該反応性官能基IIと相補的であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項11】
前記上面層を前記二次粒子の表面に結合させる前記共有化学結合が、前記二次粒子の表面の反応性官能基IIと前記疎水性層中の反応性官能基IまたはIIIとの間の反応によって形成され、該反応性官能基IIが該反応性官能基IおよびIIIを相補することを特徴とする請求項4〜10のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項12】
前記反応性官能基および対応する相補的反応性官能基が、酸およびエポキシ、アミンおよびエポキシ、ヒドロキシルおよびエポキシ、シラノールおよびエポキシ、チオールおよびエポキシ、チオールおよびイソシアネート、ヒドロキシルおよびイソシアネート、アミンおよびイソシアネート、酸およびアジリジン、酸およびカルボジイミド、アミンおよびケトン、アミンおよびアルデヒドを含む群から選択されることを特徴とする請求項10または11に記載のコーティング。
【請求項13】
前記反応性官能基および相補的反応性官能基としてアミンおよびエポキシが選択されることを特徴とする請求項12に記載のコーティング。
【請求項14】
1)表面が二次粒子で覆われるように二次粒子と反応させられた前記一次粒子を含む組成物、
2)疎水性の化合物またはポリマーを含む、前記疎水性の上層のための組成物
を含む、請求項1および請求項3〜13のいずれか一項に記載のフィルムまたはコーティングを製造するためのパーツのキット。
【請求項15】
1)表面が二次粒子で覆われるように二次粒子と反応させられた前記一次粒子を含む組成物、
2)前記一次または二次粒子と共有化学結合を形成することができる化合物を含む、支持層のための組成物
を含む、請求項6〜13のいずれか一項に記載のフィルムまたはコーティングを製造するためのパーツのキット。
【請求項16】
1)表面が二次粒子で覆われる(ラズベリー粒子)ように二次粒子と反応させられた前記一次粒子を含む組成物を基材または支持層の最上部の上に塗布し、そして適切であれば前記二次粒子が前記支持層と反応するような高温で硬化する工程
2)前記上面層用のコーティング組成物を塗布し、そして適切であれば高温で、該層を前記二次粒子に結合させるために硬化する工程
を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載のコーティングの塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542458(P2008−542458A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512748(P2008−512748)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004837
【国際公開番号】WO2006/125589
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】