説明

疎水性シリカ粉末の製造法

【課題】 簡素な疎水化処理工程による疎水性シリカ粉末の製造法を提供すること。
【解決手段】 5.5〜550m2/gの比表面積を有する親水性コロイド状シリカを含有する水性シリカゾルに式(1)
[化1]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物を親水性コロイド状シリカの表面積100m2当たり0.1〜10ミリモル添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得る疎水化処理工程を含む疎水性シリカ粉末の製造法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性シリカゾルを原料として優れた分散性を有する疎水性シリカ粉末を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、疎水性シリカ粉末の製造に用いられるシリカ原体として、沈降性シリカ、クロロシランの火炎熱分解によって製造される微細シリカ(一般にはフュームドシリカと呼ばれる。)が多く用いられている。疎水化処理方法としては、シリカ粉末に、疎水化剤、例えば界面活性剤、シリコーンオイル、又はアルキルハロゲノシラン、アルキルアルコキシシラン、アルキルジシラザンなどのシリル化剤の気体を接触させ疎水化処理する方法、水と親水性有機混合溶媒中でシリル化剤に接触させ疎水化処理する方法などがある。
【0003】
しかしいずれの疎水化方法においても沈降法シリカ、フュームドシリカを用いた場合にはシリカ原体自体が凝集しているため、優れた分散性を有する疎水性シリカ粉末を得ることはできなかった。
【0004】
実際、以下の沈降法シリカ、フュームドシリカを用いる疎水化処理が開示されている。いずれの方法もシリカ原体の一次粒子径と疎水化処理後の凝集粒子径の関係について述べたものはなく、高分散性の疎水性シリカ粉末は得られていない。
【0005】
親水性沈降シリカの水性懸濁液を触媒量の酸及びオルガンシラン化合物と、有機ケイ素化合物と親水性沈降シリカとの反応を促進させるのに十分な量の水−混和性有機溶媒の共存下で接触させて、疎水性沈降シリカを生成させる方法(特許文献1参照。)。
【0006】
平均一次粒子径が5〜50nmで、ヘキサメチルジシラザンで表面処理して粒子表面のシラノール基を40%以上封鎖し、かつ残存シラノール基濃度が1.5個/nm2以下である酸化ケイ素粒子を得る方法(特許文献2参照。)。
【0007】
フュームドシリカをヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物で疎水化処理した80〜300g/lの嵩密度を有し、単位表面積あたりのOH基が0.5個/nm2以下であり、且つ粒子径45μm以上の凝集粒子が2000ppm以下であることを特徴とする疎水性フュームドシリカとその製造方法(特許文献3参照。)。
【0008】
フュームドシリカを、ポリシロキサンで処理した後、トリメチルシリル化剤で処理することを特徴とする疎水性シリカ粉末の製造方法。(特許文献4参照。)
シリコーンオイル系処理剤による一次表面処理、一次表面処理後の解砕、および解砕後のアルキルシラザン系処理剤による二次表面処理を行うことを特徴とする高分散疎水性シリカ粉末とその製造方法(特許文献5参照。)。
【0009】
一方シリカ原体として分散性の良いシリカゾルを出発原料として疎水化を行う方法も知られている。シリカゾルをアルコールなどの有機溶媒中に分散し、アルキルハロゲノシラン、アルキルアルコキシシラン、アルキルジシラザンなどのシリル化剤を反応させた後に有機溶媒を除去し、疎水性シリカ粉末が得られている。これらの方法では疎水化反応は有機溶媒中で行っているため、有機溶媒分散ゾルを作る工程が煩雑であること、反応後の多量の有機溶媒の除去が必要なことなどの欠点があった。またアルキルハロゲノシランによる疎水化では腐食性の酸が副生するという欠点がある。アルキルアルコキシシランは反応性がやや低く、またジアルコキシシラン、トリアルコキシシランは縮合反応が起きやすく、この縮合反応により粒子間の架橋が起こることもあり、分散性の良い疎水性シリカ粉末を得るのは困難である。また加えてアルコキシシランの自己縮合物を除去するのは困難である。アルキルジシラザンは反応性が比較的高く、腐食性のガスも発生しないが、反応をアルコール中で行うと疎水化剤とアルコールが反応し、多量のジシラザンを加えないと疎水化率が上がりにくいという欠点があった。以下に開示されている技術の例を挙げる。
【0010】
水分が10%以下のオルガノシリカゾルにシリル化剤を添加し、反応させた後溶媒を留去して、コロイドシリカ粒子表面に炭素数1〜36のシリル基が1〜100/10nm2結合した、有機溶媒に再分散可能なシリカ粉末が得られることが記載されている(特許文献6参照。)。
【0011】
平均粒子直径が4nmより大きい親水性コロイドシリカを濃塩酸、イソプロパノール、ヘキサメチルジシロキサンの混合溶媒に添加して疎水化処理し、次いで疎水性コロイドシリカを疎水性有機溶媒で抽出し加熱還流後、シラン化合物を添加し、加熱還流して疎水化処理を行っている(特許文献7参照。)。
【0012】
テトラアルコキシシラン化合物を塩基性物質とともに加水分解することにより、親水性シリカ微粒子水性分散液を調製し、アルコールを除去する。次いでアルキルトリアルコキシシラン化合物でシリカ微粒子を疎水化し、溶媒をケトン系溶媒に置換し、シラザン化合物あるいはトリアルキルアルコキシシラン化合物でシリカ微粒子表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化し、最後に溶媒を減圧留去して表面処理シリカを得ている(特許文献8参照。)。
【0013】
メタノール中でアルキルシリケートを加水分解して得られたメタノールシリカゾルに、シリカとしてSiO21モルに対し5モル%以上のトリメチルシリル化剤を添加し反応させた後、余剰のトリメチルシリル化剤及び分散溶媒を留去して、表面がシリル化処理された、分散性に優れたシリカ粉末が得られることが記載されている。例えばテトラメトキシシランをメタノール中でアンモニア水存在下加水分解して得られたシリカ粒子メタノール分散液に、シリカとしてSiO21モルに対し20モル%のメトキシトリメチルシランを添加し、過剰のシリル化剤を回収した後、乾燥して疎水化シリカ粉末を得ている(特許文献9参照。)。
【特許文献1】特開2000-327321号公報
【特許文献2】特開平07−286095号公報
【特許文献3】特開2000-256008号公報
【特許文献4】特開2002−256170号公報
【特許文献5】特開2004−168559号公報
【特許文献6】特開昭58−145614号公報
【特許文献7】特開2000−080201号公報
【特許文献8】特開2000−044226号公報
【特許文献9】特開平03−187913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、分散性に優れた疎水性シリカ粉末を効率良く製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の疎水性シリカ粉末の製造法は、5.5〜550m2/gの比表面積を有する親水性コロイド状シリカを含有する水性シリカゾルに式(1)
[化1]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物を親水性コロイド状シリカの表面積100m2当たり0.1〜10ミリモル添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得る疎水化処理工程を含む。
【0016】
その好ましい態様は、以下に示される。
【0017】
水性シリカゾルが5〜55質量%のSiO2濃度を有すること。
【0018】
ジシラザン化合物としてヘキサメチルジシラザンを用いること。
【0019】
更に、疎水化処理工程に続いて、得られた疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液に、原料に用いた親水性コロイド状シリカ、100質量部当たり1〜100質量部の式(1)
[化2]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物もしくは式(2)
[化3]
23SiO(R22SiO)nSiR23 (2)
(式中の各R2はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基であり、nは0〜3の整数である。)
で表されるシロキサン化合物またはこれらの混合物を添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を水相から分相させる分相工程を含むこと。ここで、より好ましくは前記式(1)で表されるジシラザン化合物もしくは前記式(2)で表されるシロキサン化合物またはこれらの混合物の中ではヘキサメチルジシロキサンを用いること。
【0020】
その実施態様は、以下のように示される。
【0021】
下記の(A)、(B)、(C)及び(D)工程を含む、疎水性シリカ粉末の製造法である。
(A):5.5〜550m2/gの比表面積を有する親水性コロイド状シリカを含有する水性シリカゾルに式(1)
[化4]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物を親水性コロイド状シリカの表面積100m2当たり0.1〜10ミリモル添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得る疎水化処理工程、
(B):(A)工程で得られた疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液に、原料に用いた親水性コロイド状シリカ100質量部当たり、1〜100質量部の式(2)
[化5]
23SiO(R22SiO)nSiR23 (2)
(式中の各R2はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基であり、nは0〜3の整数である。)
で表されるシロキサン化合物を添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を水相から分相させる分相工程、
(C):(B)工程で得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を分別する分離工程、
及び(D):(C)工程で得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を乾燥する乾燥工程。
【0022】
そして、その実施態様において、好ましい態様は、以下に示される。
【0023】
(A)工程において、水性シリゾルが5〜55質量%のSiO2濃度を有すること。
【0024】
(A)工程において、前記式(1)で表されるジシラザン化合物としてヘキサメチルジシラザンを用いること。
【0025】
(B)工程において、前記式(2)で表されるシロキサン化合物としてヘキサメチルジシロキサンを用いること。
【発明の効果】
【0026】
本発明の製造法は、様々な粒子径、粒子形状を有する水性シリカゾルに対して適用できる。シリカ原体に高分散性を有する水性シリカゾルを用いることにより、疎水化処理後も高分散性を有する疎水性シリカ粉末を得られること、疎水化剤に難水溶性のジシラザン化合物を用いることにより、疎水化剤が溶媒(水)に希釈されず、高濃度の疎水化剤をシリカ原体に接触させることができること、ならびに疎水化処理後に疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相と水相とに分相するため、ろ過等の簡便な方法により疎水化されたシリカを取り出すことができる。
【0027】
本発明の製造法により簡便な装置で簡素な疎水化処理工程による疎水性シリカ粉末の製造が可能となる。本発明で得られた疎水性シリカ粉末は電子写真等のトナー用外添剤や樹脂の内添剤、ハードコート剤、撥水化剤、難燃剤等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明で使用する水性シリカゾルは5.5〜550m2/g、好ましくは5.5〜300m2/g以下の比表面積を有する親水性コロイド状シリカである。5〜55質量%のSiO2(シリカ)濃度で含有することが好ましい。
【0029】
水性シリカゾルは例えば水ガラスを原料として公知の方法により製造することができる。親水性コロイド状シリカの粒子径はBET法により求めた比表面積S(m2/g)からD(nm)=2720/Sの式で計算される。よって、親水性コロイド状シリカの粒子径は5nm以上であり、好ましくは9nm以上である。粒子径が5nm未満の水性シリカゾルでは高濃度化が困難であり、更にその表面処理にはシリカ単位質量当たり多くのシリル化剤を必要とする。
【0030】
親水性コロイド状シリカの含有量が5質量%以下では疎水性シリカ粉末の製造効率が低くなるとともに、反応系中のシリカ濃度が低いためジシラザン化合物との接触効率が低下し、親水性コロイド状シリカの表面積当たりジシラザン化合物の必要量も多くなり、好ましくない。55質量%以上では疎水化処理工程において著しく増粘するため、撹拌が困難になり均質な疎水化処理を行うことが難しくなる。
【0031】
使用する水性シリカゾルは遊離するアルカリ金属イオンを含まない水性シリカゾルであることが好ましい。アルカリ金属イオンを含むアルカリ性水性シリカゾルを原料に用いると、シリル化剤と親水性コロイド状シリカ表面のシラノール基との反応性が低下し、シリル化剤の反応率の低下や、疎水性シリカ粉末の疎水化度に悪影響を及ぼしたりする可能性がある。遊離するアルカリ金属イオンを含まない水性シリカゾルは、例えばNaイオンを含むアルカリ性シリカゾルの遊離するNaイオンを陽イオン交換等の方法で除去することにより得ることができる。またNH3、アミンなどで安定化されたシリカゾルも用いることができる。
【0032】
本発明に使用する疎水化剤はジシラザン化合物であり、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
水性シリカゾルにジシラザン化合物を親水性コロイド状シリカの表面積100m2当たり0.1〜10ミリモル、好ましくは0.3〜5ミリモル添加する。過剰のジシラザン化合物を使用しても疎水化反応に消費されず、経済的にも非効率である。また、ジシラザン化合物が不足すると疎水性が低くなる原因になる。
【0033】
水性シリカゾルにジシラザン化合物を添加する時は親水性コロイド状シリカとジシラザン化合物との接触を促す為に強撹拌下で添加することが好ましい。ジシラザン化合物は難水溶性化合物であり、撹拌が弱いと接触が不十分で疎水化反応が不均質になる可能性がある。
【0034】
ジシラザン化合物添加時の水性シリカゾルの温度は特に限定されないが、水性シリカゾルにジシラザン化合物を添加すると反応の進行によって凝集を伴い一時的に著しく増粘するので、増粘するまでに多くのジシラザン化合物を添加して均質な疎水化処理を行うために、ジシラザン化合物添加時の水性シリカゾルの温度は反応速度が緩やかである50℃以下が好ましい。
【0035】
ジシラザン化合物添加後に水性シリカゾルとジシラザン化合物との混合液を50℃〜100℃に加温し、撹拌によって疎水化処理シリカが水相中でスラリー状に分散するまで熟成して疎水化反応を促進させるとよい。
【0036】
更に、疎水化処理工程に続いて、得られた疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液に、原料の親水性コロイド状シリカ100質量部当たり、1〜100質量部の式(1)のジシラザン化合物もしくは式(2)で表されるシロキサン化合物またはこれらの混合物を添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を水相から分相させる分相処理を行う。この操作により、疎水化処理後の水相との分離が容易になる。スラリー状に分散する前にシロキサン化合物を添加すると疎水性コロイド状シリカを含む有機相中に含まれる水分が多くなり、疎水化処理後に有機相と水相とを分別する処理が困難になることがある。ジシラザン化合物は疎水化工程に用いられるが、過剰に加えると水と反応してジシロキサンとなり、分相の際に有機相として機能することができる。
【0037】
疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液に添加するジシラザン化合物もしくはジシロキサン化合物またはこれらの混合物は、原料の親水性コロイド状シリカ100質量部当たり1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部であり、より好ましくは10〜40質量部である。ジシラザン化合物もしくはシロキサン化合物またはこれらの混合物の添加量が少ないと十分に分相せず疎水性コロイド状シリカはスラリー状のままになることがある。添加量が多いと疎水性コロイド状シリカを含む有機相中に含まれる水分が多くなり、分相処理が困難になったり、疎水性シリカ粉末を有機溶媒に分散させた時の凝集粒子径が大きくなったりすることがある。ジシラザン化合物もしくはシロキサン化合物またはこれらの混合物を添加後に、50〜100℃に加温して熟成することにより、分相処理を促進させるとよい。
【0038】
分相処理工程に用いるシロキサン化合物としては乾燥工程において除去しやすいという観点から沸点が150℃以下のシロキサン化合物が好ましく、具体的にはヘキサメチルジシロキサンが最も好ましい。さらにヘキサメチルジシロキサンが好ましい理由として疎水化剤にヘキサメチルジシラザンを用いた場合、残余するヘキサメチルジシラザンは加水分解してヘキサメチルジロキサンとして存在するため、疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相の乾燥工程で揮発するヘキサメチルジシロキサンを回収して再利用できることが挙げられる。
【0039】
疎水化処理後、水相との分離工程は特に限定されないが、公知の方法によって疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相と水相を分離することができる。例えば、ろ過による濾別や、分液、水相の蒸留留去が挙げられる。
【0040】
得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相は水分やシロキサン化合物を含むので、乾燥工程にて、水相を分離した疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を乾燥する。乾燥方法としては、熱風型乾燥機やマイクロウェーブ方式の乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤーなど公知の乾燥方法が挙げられる。
【0041】
また、乾燥疎水化シリカを粉体用ミル等で粉砕し、粉末状の疎水性シリカを得ることができる。粉砕方法としては、振動ミル、ボールミル、アトライターなどの乾式粉砕方法が採用される。この粉砕工程において疎水性シリカを有機溶媒に分散した時の分散粒子径は特に変わらない。
【実施例】
【0042】
実施例1
市販の酸性水性シリカゾル(商品名:スノーテックス(登録商標)−O、日産化学工業(株)製)、SiO2濃度20質量%、pH3.0、粒子径12nm)をロータリーエバポレーターでSiO2濃度33%まで濃縮し、濃縮酸性水性シリカゾルを調製した。続いて、撹拌機、滴下漏斗、冷却管、温度計を備えた2リットルのガラス製反応容器中、濃縮酸性水性シリカゾル1250gに強撹拌下でヘキサメチルジシラザン180gを滴下することにより、シリカゾル中のコロイド状シリカは凝集し、流動性が失われた。滴下後も1時間撹拌を継続することによりシリカ凝集体が水に分散し、疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得た。次いでヘキサメチルジシラザン120gを滴下し、内容物を60℃に加温し、1時間熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカが得られた。ブフナー漏斗によって疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相と水相を濾別し、得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を150℃で乾燥した。顆粒状の疎水性シリカ粉末が412g得られた。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの各種有機溶媒にゾル状に再分散した。
【0043】
実施例2
実施例1と同様の反応装置を用い、同様の方法で調製した濃縮酸性水性シリカゾル(SiO2濃度33質量%、pH3.0、粒子径12nm)1000gに強撹拌下でヘキサメチルジシラザン84gを滴下することにより、シリカゾル中のコロイド状シリカは凝集し、流動性が失われた。滴下後も0.5時間撹拌を継続した。次いで内容物を50℃〜60℃に加温し、疎水化反応を促進させ、撹拌を継続することによりシリカ凝集体が分散し、疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得た。次いでヘキサメチルジシロキサン100gを滴下することにより、疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を水相から分相させた。次いで内容物を80℃〜90℃に加温し、2〜3時間熟成した。ブフナー漏斗によって疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相と水相とを濾別し、得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を120℃で乾燥した。次に、得られた乾燥疎水化シリカを粉体用ミルによる粉砕を行い、次いで200℃で乾燥し、330gの疎水性シリカ粉末を得た。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの有機溶媒にゾル状に再分散した。
【0044】
実施例3
市販の酸性水性シリカゾル(製品名:スノーテックス(登録商標)−O−40、日産化学工業(株)製)、SiO2濃度40質量%、pH3.0、粒子径22nm)をSiO2濃度30質量%に希釈した酸性水性シリカゾル1000gに強撹拌下でヘキサメチルジシラザン75gを滴下した以外は実施例2と同様の処理方法を行い、300gの疎水性シリカ粉末を得た。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの有機溶媒にゾル状に再分散した。
【0045】
実施例4
酸性水性シリカゾル(SiO2濃度39質量%、pH2.5、粒子径80nm)1000gに撹拌下でヘキサメチルジシラザン20gを滴下した以外は実施例2と同様の処理方法を行い、390gの疎水性シリカ粉末を得た。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの有機溶媒にゾル状に再分散した。
【0046】
実施例5
ヘキサメチルジシラザンを60g用いた以外は実施例2と同様の処理方法を行い、330gの疎水性シリカ粉末を得た。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの有機溶媒にゾル状に再分散した。
【0047】
実施例6
ヘキサメチルジシロキサンを50g用いた以外は実施例2と同様の処理方法を行い、330gの疎水性シリカ粉末を得た。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの有機溶媒にゾル状に再分散した。
【0048】
比較例1
実施例1と同様の反応装置を用い、同様の方法で調製した濃縮酸性水性シリカゾル(SiO2濃度33重量%、pH3.0、粒子径12nm)1000gに強撹拌下でトリメチルメトキシシラン110gを滴下し、滴下後も0.5時間撹拌を継続した。次いで内容物を50℃〜60℃に加温し、疎水化反応を促進させることによりペースト状の疎水化処理コロイド状シリカになった。次いでヘキサメチルジシロキサン100gを滴下した後、内容物を80℃〜90℃に加温し、2〜3時間熟成したが、ペースト状の疎水化処理コロイド状シリカのままであり、疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相と水相とに分相しなかった。ペースト状の疎水化処理コロイド状シリカを120℃で乾燥し、粉体用ミルによる粉砕を行い、次いで200℃で乾燥し、330gの疎水性シリカ粉末を得た。得られた疎水性シリカ粉末はメチルエチルケトンなどの有機溶媒にゾル状に十分に再分散せず、懸濁した。
【0049】
評価
[疎水性シリカ粉末の分析方法]
得られた疎水性シリカ粉末中の炭素量を、CHNS/Oアナライザ(PE2400シリーズII パーキンエルマー製)を用いて測定した。疎水性シリカ粉末単位表面積当たりのトリメチルシリル基の数(個/nm2)は以下の計算式(α)で算出した。
【0050】
A:トリメチルシリル基含有量(質量%)=炭素量(質量%)×(73.19/36.03)。
【0051】
B:疎水性シリカ粉末1g当たりのトリメチルシリル基(個)=6.02×1023×(A/73.19)×10-2
【0052】
C:疎水性シリカ粉末1g当たりの表面積(nm2)=疎水性シリカ粉末の比表面積(m2/g)×1018×固形分(質量%)×10-2
【0053】
疎水性シリカ粉末単位表面積当たりのトリメチルシリル基の数(個/nm2)=B/C (α)。
ここで固形分とは得られた疎水性シリカ粉末を800℃で焼成して得られる焼成残分のことである。
【0054】
得られた疎水性シリカ粉末をメチルエチルケトンに分散し、分散粒子径を動的光散乱法(サブミクロン粒子アナライザー model N4、ベックマン・コールター社製)にて測定した。
【0055】
評価結果は表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
以上、本発明の製造法により簡便な装置で簡素な疎水化処理工程による疎水性シリカ粉末の製造が可能となる。本発明で得られた疎水性シリカ粉末は電子写真等のトナー用外添剤や樹脂の内添剤、ハードコート剤、撥水化剤、難燃剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.5〜550m2/gの比表面積を有する親水性コロイド状シリカを含有する水性シリカゾルに式(1)
[化1]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物を親水性コロイド状シリカの表面積100m2当たり0.1〜10ミリモル添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得る疎水化処理工程を含む疎水性シリカ粉末の製造法。
【請求項2】
水性シリカゾルが5〜55質量%のSiO2濃度を有する請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記式(1)で表されるジシラザン化合物としてヘキサメチルジシラザンを用いる請求項1又は2に記載の製造法。
【請求項4】
更に疎水化処理工程に続いて、得られた疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液に、原料に用いた親水性コロイド状シリカ100質量部当たり、1〜100質量部の式(1)
[化2]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物もしくは式(2)
[化3]
23SiO(R22SiO)nSiR23 (2)
(式中の各R2はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基であり、nは0〜3の整数である。)
で表されるシロキサン化合物またはこれらの混合物を添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を水相から分相させる分相工程を含む請求項1に記載の疎水性シリカ粉末の製造法。
【請求項5】
前記式(1)で表されるジシラザン化合物もしくは前記式(2)で表されるシロキサン化合物またはこれらの混合物としてヘキサメチルジシロキサンを用いる請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
下記の(A)、(B)、(C)及び(D)工程を含む、請求項1に記載の疎水性シリカ粉末の製造法。
(A):5.5〜550m2/gの比表面積を有する親水性コロイド状シリカを含有する水性シリカゾルに式(1)
[化4]
(R13Si)2NH (1)
(式中の各R1はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるジシラザン化合物を親水性コロイド状シリカの表面積100m2当たり0.1〜10ミリモル添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液を得る疎水化処理工程、
(B):(A)工程で得られた疎水化処理コロイド状シリカのスラリー状分散液に、原料に用いた親水性コロイド状シリカ100質量部当たり、1〜100質量部の式(2)
[化5]
23SiO(R22SiO)nSiR23 (2)
(式中の各R2はそれぞれ独立に選択される炭素原子数が1〜6のアルキル基またはフェニル基であり、nは0〜3の整数である。)
で表されるシロキサン化合物を添加し、50〜100℃の温度範囲で加温して熟成することにより疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を水相から分相させる分相工程、
(C):(B)工程で得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を分別する分離工程、及び
(D):(C)工程で得られた疎水化処理コロイド状シリカを含む有機相を乾燥する乾燥工程。
【請求項7】
(A)工程において、水性シリゾルが5〜55質量%のSiO2濃度を有する請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
(A)工程において、前記式(1)で表されるジシラザン化合物としてヘキサメチルジシラザンを用いる請求項6に記載の製造法。
【請求項9】
(B)工程において、前記式(2)で表されるシロキサン化合物としてヘキサメチルジシロキサンを用いる請求項6に記載の製造法。