説明

疎水性タンパク質を精製する方法

本発明は、洗浄剤を含有する緩衝液を使用した抽出およびヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーによる前記洗浄剤の除去により細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るための方法に関する。一局面において、本発明は、細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るための方法を提供し、この方法は、(i)細胞ホモジネートを精密濾過にかける工程と、(ii)少なくとも1つの洗浄剤を含有する緩衝溶液を使用した精密ダイア濾過により該精密濾過から得た未透過物を抽出する工程と、(iii)該精密ダイア濾過から得た濾液をヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程であって、任意選択で、該HAカラムクロマトグラフィーの前に該精密ダイア濾過から得た濾液を追加のクロマトグラフィー工程にかける工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2007年2月22日に出願された米国仮特許出願第60/902,803号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
連邦支援の研究または開発の下で行われた発明に対する権利に関する陳述
該当なし。
【0003】
「配列表」、表、またはコンパクトディスクで提出されたコンピュータプログラム表付属書への言及
該当なし。
【0004】
本発明は、洗浄剤を含有する緩衝液を使用した抽出およびヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーによる前記洗浄剤の除去によって細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
膜タンパク質、特に疎水性タンパク質の抽出および可溶化のための有望な構想は、洗浄剤の使用である。洗浄剤は両親媒性分子であり、これは極性および非極性化学基を含有する。したがって、洗浄剤は水中で独自の特性を示す。洗浄剤は水に可溶性であり、疎水性ドメイン(たとえば、膜貫通領域)と相互作用をすることにより疎水性タンパク質を可溶化することができる。多数の洗浄剤が公知であるが、原理上、洗浄剤は、非イオン、イオンおよび双性イオン洗浄剤に分類することができる。洗浄剤の可溶化能は、分子内の両親媒性基の親水性/親油性均衡(HLB)により変化する。(ドデシル硫酸ナトリウム−SDSのような)高可溶化能力を有する洗浄剤は、可溶化されるタンパク質の構造に対して変性効果も及ぼす。したがって、目的の用途に適した洗浄剤の選択は、標的タンパク質の特性およびそのプロセスの技術的条件に依存している(たとえば、非特許文献1を参照されたい)。
【0006】
タンパク質などの生体分子を可溶化するために洗浄剤を使用する主要な欠点の1つは、目的の生体分子が洗浄剤自体に汚染されることである。洗浄剤を完全に除去するのは、通常、時間がかかって面倒であり、または一部の場合では不可能でさえある。さらに、多数の抽出後精製工程を必要とすることにより、目的の産物の得られる全収率は不経済的な程度にまで減少することがある。
【0007】
さらに、細胞残屑分離のための当技術分野で公知のもっとも一般的な方法は遠心分離である。しかし、遠心分離は、特に工業的大量生産規模工程を考慮すると、高価な工業規模の遠心分離機および微粒子の場合の低有効性などの種々の欠点を示す。
【0008】
したがって、細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るのに使用することができて、上記の欠点を克服する方法への強い必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】L.M.HjelmelandおよびA.Chrambach、「Solubilization of Functional Membrane Proteins」、Meth.Enzymol.、1984年、104巻、Part C、305〜328頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、膜タンパク質、特に疎水性タンパク質など、細胞から高度に精製されたタンパク質を得るための新規の方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るための方法であって、前記タンパク質を可溶化する洗浄剤、およびその後洗浄剤を除去するためのヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程を使用する方法に関する。
【0012】
本発明に従った方法は、原核生物または真核生物の種の膜結合タンパク質として天然に存在するタンパク質などの脂質付加タンパク質を精製するのに極めて有効である。たとえば、宿主細胞由来の目的の疎水性タンパク質を可溶化する洗浄剤を使用することにより、標的タンパク質は効率的に単離される。たとえば、本発明の方法を使用して、Borrelia spの2つの別々の遺伝子型由来の外表面タンパク質(OspA)タンパク質のドメインを含む組換え合成Lyme抗原(「rSLA」)を精製することができる。
【0013】
本発明はさらに、本発明に従った方法から得られる脂質付加タンパク質などの疎水性タンパク質を含む医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】異なったTRITON(商標)X100濃度を試験した、細菌細胞抽出物を示すクマシーゲルの写真を示す図である。血清型5/3の精製キメラrSLAを基準として使用した(レーン2)。増加するTRITON(商標)X100濃度(0.5パーセントの増分で0.5%〜3.0%)を抽出法に使用した(レーン9〜13)。SDS PAGEは、増加するTRITON(商標)X100濃度に応じて抽出効率の依存度を示した(レーン9〜13)。DE53陰イオン交換クロマトグラフィー後、上清中のE.coliタンパク質(「SN DE53」)のバルクは樹脂上に結合しており、rSLAは結合しなかった(レーン15〜19)。容認できる純度と組み合わせた最高収率は1.5%TRITON(商標)X100で観察された(レーン17)。
【図2】遠心分離および精密濾過を使用した精製プロトコルの比較を示す図である。
【図3】遠心分離または精密濾過のいずれかにより精製され、rSLAにより誘導される高抗体価の発生の比較図である。10マウスのグループを、マウスあたり0.1μg、0.03μgおよび0.01μgのrSLAで皮下免疫した(0日目)。rSLA特異的抗体の作製には、各場合で単一用量で十分であった。3週間(21日目)後著しい応答が検出された。精密濾過または遠心分離のいずれかにより精製された3つのキメラrSLAタンパク質すべてが並行して比較された。「新」は精密濾過の使用を示し、「旧」は遠心分離されたrSLAを示した。免疫原性特性は両調製物で等価であった。したがって、精密濾過はrSLAの免疫原性に悪影響を与えなかった。
【図4】TRITON(商標)X100を使用した精密ダイア濾過(diafiltration)によるrSLAの抽出の実施可能性を立証するクマシーゲルおよびウェスタンブロットを示す図である。rSLA血清型6/4を産生している細菌細胞を懸濁し、ホモジナイズした(レーン2、3、10および11)。先ず、バイオマスの濃縮は精密濾過により実施し、続いて濃縮物をTris緩衝液の3容積変化で洗浄した。小可溶性タンパク質は洗い落され、精密濾液中に見出された(レーン4)。rSLAの損失は最小であり、ウェスタンブロット法により確認された(レーン12)。ダイア濾過緩衝液−1が洗浄剤を全く含有していなかったので、濃縮した未透過物(retentate)は標的タンパク質の大部分を含有していた。精密ダイア濾液(microdiafiltrate)−1により、洗浄によるタンパク質の除去が確認された(レーン5)。可溶性rSLAのごく一部が濾液中に失われた(レーン13)。TRITON(商標)X100含有緩衝液(ダイア濾過緩衝液−2)に変更することにより、かなりの量のrSLAが精密ダイア濾液−2中で検出可能であった(レーン6および14、矢印を参照)。
【図5】TRITON(商標)X100を使用した精密ダイア濾過による血清型1/2のrSLAの抽出が再現可能であることを立証するクマシーゲルおよびウェスタンブロットを示す図である。この実験は、血清型6/4のrSLAの抽出に類似した形で実施された。クマシー染色ゲルおよびウェスタンブロット法により、精密ダイア濾過緩衝液−2中の標的タンパク質の蓄積により示された、血清型1/2のrSLAは精密濾過を使用したTRITON(商標)X100により有効に抽出することができるという最初の実験で得られた結果が立証された(レーン7、矢印を参照)。これは、精密ダイア濾過緩衝液−1では違っていた(レーン5、矢印を参照)。
【図6】最初の精密ダイア未透過物(microdiaretentate)からrSLAを定量的に抽出するための、精密ダイア濾過緩衝液−2(+TRITON(商標)X100)を使用した容積変化の数を決定するためのゲルの写真を示す図である。懸濁液およびホモジナイゼートはレーン2および3により表されている。精密濾過により、rSLAが著しく損失されることなく不純物は除去された(レーン4)。精密ダイア濾液−1に同じことが当てはまった(レーン5)。標的タンパク質は精密ダイア未透過物−1中に存在していた(レーン6)。TRITON(商標)X100含有緩衝液での精密ダイア濾過によりrSLAは可溶化され、これは精密ダイア濾液−2中に見出された(レーン7、矢印)。精密ダイア濾過緩衝液−2でのそれぞれの容積変化後、SDS−ゲル解析のために試料を採取した。標的タンパク質の量は、それぞれの容積変化後にわずかに減少した。精密ダイア濾過緩衝液−2での約6容積変化後、rSLAはほぼ定量的に抽出され、精密ダイア濾過による抽出はこの時点で停止させた(レーン12、矢印)。最終的に10画分すべてを貯蔵した(レーン17)。比較のために、精密ダイア未透過物−2は、定量的抽出を実証するために、濃縮した形および1対10希釈した形でゲル上に負荷した(矢印を参照)。
【図7】0.2μm膜を使用した実験のクマシーゲルおよびウェスタンブロットの写真を示す図である(ゲル1):精密濾過中のTRITON(商標)X100抽出によるrSLA濃縮の有効性。精密未透過物(MR)は、2の倍数で濃縮されて作業容積を減少させた(レーン4)。精密濾液(MF)中に失われたrSLAの量は検出可能であったが中程度であった(レーン5)。精密ダイア濾過により、標的タンパク質の同一損失が示されたが、精製するに値するだけの十分なrSLAがまだ存在していた(レーン6および7)。矢印で示されるように、rSLAの濃縮およびE.coliタンパク質からの分離は精密ダイア濾液−2(MDF−2)においては0.2μmポアサイズ膜で効率的であった。最小量のrSLAのみが精密ダイア未透過物−2において、各自のサイズで見出された(レーン8)。
【図8】1000kD膜を使用した実験のゲルの写真を示す図である(ゲル2):1000kD膜でのE.coliタンパク質の保持率は著しく高くなっていた(レーン11および13)。その結果、精密ダイア濾液中のrSLAの損失は最小であった(レーン12および14)。TRITON(商標)X100でのrSLAの抽出は可能であった(レーン16)が、不完全であり、精密ダイア未透過物−2(MDR−2)中のまだ多量のrSLAにより示された(レーン15)。さらに、MDF−2中のE.coli由来バルクタンパク質の枯渇は、それが0.2μmポアサイズ膜で実施された時には、はるかに効率が低かった(図7参照)。
【図9】キメラrSLA血清型5/3に対するHA ULTROGEL(商標)での精製スキームのクロマトグラムを示す図である。この精製スキームは、原理上は、3つのrSLAキメラすべてに適用可能である。開始最初の大きなピークは試料適用を特徴付けている。試料負荷の初めで、強力なUVシグナルは主に溶液中のTRITON(商標)X100に起因していた。試料負荷後、UV線はゼロに近いレベルにまで減るはずである。溶出工程は、18%および25%緩衝液−B工程の2工程モードで、続いて開始され、緑色線により示された。その後、直線勾配が100%緩衝液Bまで続いた。両工程(18%および25%)は、E.coliタンパク質の除去を示していた。18%緩衝液Bでのタンパク質ピークは明確に視認でき、25%緩衝液Bでのピークはごく小さなこぶであった(矢印)。残留するE.coliタンパク質の枯渇により、非常に高純度のrSLAが可能になった。
【図10】rSLA精製に適用された処理工程のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一態様は、本発明に従って細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るための方法であって、
(i)細胞ホモジネートを精密濾過にかける工程と、
(ii)少なくとも1つの洗浄剤を含有する緩衝溶液を使用した精密ダイア濾過により前記精密濾過から得られた未透過物を抽出する工程と、
(iii)前記精密ダイア濾過から得た濾液を、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程と
を含む方法に関する。
【0016】
工程(i)における本発明の方法に従って、細胞ホモジネートを精密濾過にかけ、可溶性の不純物を除去する(洗浄工程)。本発明に従った上記の方法の工程(iii)は、HAカラムクロマトグラフィーに加えて、洗浄剤および追加の不純物を除去するための1つまたは複数工程のカラムクロマトグラフィーを含んでいてよい。
【0017】
本明細書では、語句「高度に精製された」は、たとえば、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー後の前記疎水性タンパク質の99%より高い純度を意味し、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー後、不純物の含有量は、たとえば、1%未満、好ましくは0.5%未満である。
【0018】
本明細書で使用する用語「不純物」は、疎水性タンパク質の産生に由来する任意の不純物を含み、たとえば、宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸、緩衝液および塩類などのプロセス関連不純物、細胞培地に由来する不純物ならびに多量体またはフラグメントなどの産物関連不純物を含んでいてよい。不純物は、目的の最終組成物成分、たとえば、最終緩衝液製剤成分、または最終治療組成物のために精製されたタンパク質に添加されることもあるアジュバンド、賦形剤、もしくは保存剤などの添加物は除外される。
【0019】
本発明によれば、用語「疎水性タンパク質」は特定の制限下にはなく、上記の方法を使用することにより細胞から精製することができる任意の疎水性タンパク質を含む。さらに、前記用語は特定の値または範囲の疎水性には関係しないが、標的タンパク質を細胞構造体との会合または自己会合により水溶液中で不溶性にして、上記方法による前記タンパク質の精製を可能にする任意の疎水性を意味する。前記用語「疎水性タンパク質」は、タンパク質それ自体、たとえば、膜タンパク質、ならびにその任意の生物学的活性誘導体をさらに含む。本発明によれば、用語「生物学的活性誘導体」は、結合特性などの前記疎水性タンパク質の実質的に同じ機能的および/もしくは生物学的特性、ならびに/またはペプチド骨格などの同じ構造的基礎を有するタンパク質、タンパク質複合体またはポリペプチドの任意の誘導体を含む。前記ポリペプチドの生物活性を改変していない標的タンパク質のポリペプチド配列のアミノ酸の軽微な欠失、付加および/または置換も、生物学的活性誘導体として本願に含まれる。
【0020】
本発明によれば、本発明の方法を使用して精製された疎水性タンパク質は、原核生物または真核生物の一種の膜結合タンパク質として天然に存在するタンパク質などの脂質付加タンパク質でよい。たとえば、脂質付加タンパク質は細菌種中に膜結合タンパク質として天然に存在してもよい。本発明の別の例によれば、精製される疎水性タンパク質はBorrelia由来のリポタンパク質である。
【0021】
本明細書で使用する用語「脂質付加タンパク質」は、脂質と共有結合または非共有結合している任意のペプチドまたはタンパク質を意味する。脂質付加タンパク質の一例は、Borrelia spの外表面タンパク質(Ospタンパク質)のグループである。
【0022】
本発明に従った方法は、脂質付加されたOsp様タンパク質を精製することに特に有用であることが明らかにされた。本発明の方法により精製されるOsp様タンパク質には、Borrelia spのOspAタンパク質に構造的に類似する脂質付加タンパク質が挙げられる。構造的類似性は、たとえば、Altschul、Stephen F.、Thomas L.Madden、Alejandro A.Schaf−fer、Jinghui Zhang、Zheng Zhang、Webb Miller、and David J.Lipman、「Gapped BLAST and PSI−BLAST: a new generation of protein database search programs」、Nuc.Acids Res.、1997年、25巻、3389〜3402頁; およびSchaffer、Alejandro A.、L.Aravind、Thomas L.Madden、Sergei Shavirin、John L.Spouge、Yuri I.Wolf、Eugene V.Koonin、and Stephen F.Altschul、「Improving the accuracy of PSI−BLAST protein database searches with composition−based statistics and other refinements」、2001年、Nuc.Acids Res.、29巻、2994〜3005頁に記載の方法に従って、精製されたタンパク質のタンパク質配列とOspAタンパク質とのタンパク質−タンパク質BLAST比較により決定してもよい。BLAST解析を実施するためのソフトウェアはthe National Center for Biotechnology Information website (www.ncbi.nlm.nih.gov)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、先ず、データベース配列中の同一長の文字列と整列させるとある種のポジティブ値閾値スコアTに適合するまたは満たすクエリー配列中の長さWの短い文字列を同定することにより高スコア化配列対(HSP)を同定することを含む。Tは隣接文字列スコア閾値と呼ばれる(Altschulら、上記を参照)。これらの最初の隣接文字列ヒットは、それを含有するさらに長いHSPを見つけるための検索を開始するための種として働く。文字列ヒットは、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列ではパラメータM(適合残基の対に対するリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対するペナルティースコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列では、スコア化行列を使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量X低下する;1つもしくは複数のネガティブスコア化残基アラインメントの蓄積により、累積スコアが0以下になる;またはどちらかの配列の末端に到達すると、各方向への文字列ヒットの延長は停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXはアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列では)はデフォルトとして、文字列長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムはデフォルトとして、文字列長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア化行列(Henikoff and Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻、10915頁、1989年を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。
【0023】
BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(たとえば、Karlin and Altschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90巻、5873〜87頁、1993年を参照されたい)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の一尺度は、最小計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の適合が偶然起きると考えられる確率という指標を提供する。たとえば、試験核酸と基準核酸の比較における最少計確率が、約0.2未満、典型的には約0.01未満、さらに典型的には約0.001未満の場合には、核酸は基準配列と類似していると見なされる。
【0024】
一部の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも50%の同一性を有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも60%の同一性を有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも70%の同一性を有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも75%の同一性を有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも80%の同一性を有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも85%の同一性を有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と約87%の同一性を有する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小360のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小400のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小440のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小480のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小520のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小560のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小580のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小600のBLASTスコアを有する。他の実施形態では、本発明の方法により精製されたタンパク質は、Borrelia sp.のOspAタンパク質と比べた場合、最小620のBLASTスコアを有する。
【0026】
実施例では、本発明の方法を使用して、Borrelia sp.の2つの別々の遺伝子型由来のOspAタンパク質のドメイン、ならびに安定化点突然変異を含む組換え合成Lyme抗原(「rSLA」)を精製する。本発明で使用するのに適したOspAタンパク質は当技術分野では公知である。本発明で使用するのに適した非限定的な例示的OspAタンパク質配列は、Borrelia burgdorferiss(ジェンバンク受託番号Q45050)、Borrelia afzelii(ジェンバンク受託番号Q0SLZ0)、ならびにBorrelia garinii(ジェンバンク受託番号Q1HLI9、Q44959、Q44961、およびQ932R4)から得ることができる。ジェンバンクのOspA配列と比べた場合、rSLAは配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたって、約56%から約87%までの範囲のOspA配列との同一性を有し、Borrelia sp.の種々のOspAタンパク質と比べた場合、約360から約620までの範囲のBLASTスコアを有する。
【0027】
本発明に従った疎水性タンパク質は、当技術分野で公知の任意の方法により作製することができる。これには当技術分野で公知の任意の方法、(i)遺伝子工学により、たとえば、RNAの逆転写および/またはDNAの増幅を介しての組換えDNAの作製、(ii)トランスフェクションにより、たとえば、化学的に媒介されたトランスフェクション、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションを介した組換えDNAの原核または真核細胞への導入、(iii)たとえば、連続的にまたはバッチ式での前記形質転換された細胞の培養、(iv)たとえば、構成的または誘導での疎水性タンパク質の発現、ならびに(v)疎水性タンパク質を得るための、たとえば、培地からのまたは形質転換された細胞の回収によるタンパク質の単離が含まれていてよい。さらに、前記疎水性タンパク質をコードする組換えDNA、たとえば、プラスミドは、組換えDNAで首尾よくトランスフェクトされた細胞を選択するための選択可能マーカーをコードするDNA配列も含有していてよい。本発明の一例によれば、疎水性タンパク質は、当技術分野で公知の任意の方法に従って、回収された培養細胞から得られる。
【0028】
語句「細胞ホモジナイゼート」は、本発明によれば、当業者に公知の任意の均質化および/または細胞破壊工程により得られるあらゆる種類の細胞ホモジナイゼートを意味する。本発明に従って細胞ホモジナイゼートを調製するためのこれらの工程には、たとえば、粉砕、高速混合、ミンチ、細断、超音波処理、圧力変化、浸透圧ショック、凍結解凍、ならびに、酵素もしくは洗浄剤などの細胞破壊剤の添加、またはそのような工程の任意の組合せが挙げられる。
【0029】
本発明において使用する用語「緩衝溶液」は、当業者に公知のタンパク質の精製に使用可能な任意の緩衝液、ならびに、2つ以上のそのような緩衝液の任意の混合物を含む。そのような緩衝溶液の例は、水、Tris緩衝液、リン酸緩衝液、またはクエン酸緩衝液である。しかし、本発明の方法において使用可能な緩衝液は特定の形で限定されてはおらず、タンパク質安定剤などの、タンパク質の精製に有用な任意の物質または物質の混合物をさらに含有することができる。さらに、本発明に従った方法の工程それぞれにおいて使用される各自の緩衝液の濃度は特に限定されてはおらず、すなわち、前記緩衝液濃度は、各自の工程それぞれにおいて、その必要条件に応じて、同一でもよくまたは異なっていてもよい。たとえば、緩衝液濃度は、約0.1mMから約1.0Mまでの範囲にあってもよく、または約1mMから約600mMまでの範囲にあってもよい。さらに、本発明に従った方法において使用される緩衝液のpH値は、それが上記方法の実現可能性を許容する範囲にある限り、特定の制限下にはない。本発明の一例によれば、各自の緩衝液のpH値は、約3から約10まで、または約6から約8までの範囲である。
【0030】
本発明の具体例によれば、上記方法の精密濾過工程(i)で使用される緩衝液は、Tris緩衝液である。本発明の追加の例では、上記の方法の抽出工程(ii)において使用される緩衝液は、洗浄剤を含有するTris緩衝液である。本発明に従った方法の別の例によれば、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)において使用される緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝液である。
【0031】
本発明に従って使用される用語「洗浄剤」は、任意の両親媒性物質または両親媒性物質の混合物を含み、たとえば、水溶液中での疎水性物質の溶解または分散性を増加することができる。洗浄剤という用語は通常、疎水性基と親水性基の両方を含有する有機化合物に関する。本発明の方法において使用可能な洗浄剤は、たとえば、イオン性、双性イオン性、または非イオン性でもよい。本発明の方法において使用可能な洗浄剤は、それが前記疎水性タンパク質の精製にマイナスの影響を及ぼさない限り、特定の制限下にはなく、さらに2つまたはいくつかの異なる洗浄剤を含む混合物からなるものでもよい。
【0032】
本発明の一例によれば、上記の方法において、細胞ホモジネートは、抽出工程(ii)の前に、適切な緩衝液を使用して洗浄する。
【0033】
本明細書で使用する用語「適切な緩衝液」は、特定の制限下にはなく、目的の疎水性タンパク質を好ましくない程度にまで溶解することなくホモジナイゼートを洗浄することを可能にする任意の緩衝液を含む。ホモジネートを洗浄するのに適した緩衝液の例には、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液が挙げられる。
【0034】
本発明の別の例によれば、上記方法において、前記抽出工程(ii)から得られた濾液を、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、イオン交換クロマトグラフィーにかける。
【0035】
本発明の方法において使用されるイオン交換クロマトグラフィー材料(樹脂)は、高度に精製された疎水性タンパク質が得られるように上記不純物が除去される限り、特定の制限下にはない。本発明によれば、イオン交換樹脂には、イオン交換クロマトグラフィーに適した任意の材料が挙げられる。本発明の具体例では、イオン交換樹脂は正に荷電した基を含有し、したがって、陰イオン交換材料である。好ましい選択肢は、DE−53、すなわちセルロース材料を主成分とする陰イオン交換樹脂である。
【0036】
イオン交換クロマトグラフィー工程において使用可能な緩衝液は特定の形で限定されておらず、イオン交換クロマトグラフィーにおいて使用可能な当技術分野で公知の任意の緩衝液が挙げられる。適切な緩衝液は、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸緩衝液もしくはリン酸緩衝液、またはその混合物からなる。
【0037】
本発明によれば、上記方法の抽出工程(ii)は、濃縮工程、洗浄工程等などの追加の工程を含んでいてよく、それはいかなる順番および/またはいかなる組合せでもよい。本発明の具体例によれば、上記方法の抽出工程(ii)は、(a)バイオマスを洗浄し、精密ダイア濾過により再利用する工程、および(b)少なくとも1つの洗浄剤を含有する緩衝液を使用した精密濾過により、上記工程(a)において得られた未透過物から疎水性タンパク質を抽出する工程を含む。別の具体例によれば、抽出工程は、上記工程(a)および(b)に加えて、上記工程(b)から得られた濾液を、0.2μmポアサイズ精密濾過カセットを使用した精密濾過および/または精密ダイア濾過にかける工程(c)を含む。
【0038】
本発明に従ったヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)は特定の形で制限されておらず、当業者には公知のすべてのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー材料およびプロトコルを含む。
【0039】
上記の方法の具体例では、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにおいて使用されるヒドロキシアパタイトカラム材料は、HA ULTROGEL(商標)など市販されている。
【0040】
上記方法のヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(vi)において使用可能な緩衝液は、特に限定されてはおらず、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにおいて使用することができる当技術分野では公知の任意の緩衝液を含む。本発明の具体例では、前記ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにおいて使用される緩衝液は、リン酸ナトリウム緩衝液であり、約1mMから約600mMまでの範囲にある濃度および約6から約8までの範囲にあるpH値を有する。
【0041】
本発明の追加の例によれば、上記の方法において、前記抽出工程(ii)から得られる濾液を、ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、膜吸着体(membrane adsorber)を使用したイオン交換濾過にかける。適切な吸収体は、Pall社またはSartorius社から入手可能である。本発明の具体例では、使用される陰イオン交換膜吸着体は、Mustang Q(Pall社)である。
【0042】
上記の方法の一例によれば、精製される疎水性タンパク質は組換え合成Lyme抗原(rSLA)である。
【0043】
本発明に従った方法の追加の例では、工程(i)において提供される前記疎水性タンパク質を含有する宿主細胞は、E.coliからなる群より選択される宿主細胞であるが、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、トリ細胞または哺乳動物細胞のような、組換え疎水性タンパク質を発現することができるいかなる宿主細胞も記載された工程にかけることができる。
【0044】
本発明の具体例によれば、上記の方法において使用される洗浄剤は、コール酸およびその誘導体、N,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド、1−アルキルスルホン酸ナトリウム、Nラウロイルサルコシンもしくは脂肪酸塩などの陰イオン性でも、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドおよびその誘導体もしくは塩化ベンザルコニウムなどの陽イオン性でも、ドデシルベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドおよびその誘導体もしくは3−(N,N−ジメチルアルキルアンモニオ)プロパンスルホン酸などの双性イオン性でも、またはオクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルポリ(エチレンオキシド)およびその誘導体、アルキルポリグルコシドもしくは脂肪アルコールなどの非イオン性でもよい。
【0045】
本発明の別の具体例によれば、上記の方法において使用される洗浄剤は、オクチルフェノールエトキシレート(たとえば、TRITON(商標)X100もしくはTRITON(商標)X114)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(たとえば、TWEEN(商標)80)またはN−アルキル−N,N−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(たとえば、ZWITTERGENT(商標)3−14)など市販されている。
【0046】
上記の方法の別の例では、工程(ii)において使用される緩衝液は、洗浄剤としてオクチルフェノールエトキシレート(Triton(商標)X100)を含有している。
【0047】
本発明の追加の例によれば、上記の方法において、精密濾過および/または精密ダイア濾過工程は、たとえば、0.2μmポアサイズ精密濾過カセットを使用して、抽出工程(ii)後に実施する。
【0048】
本発明に従った方法において使用される作動温度は特定の制限下にはなく、たとえば、約室温または約0から約15℃までの範囲でなど、室温未満でもよい。
【0049】
上記の方法の一例によれば、高度に精製された脂質付加タンパク質は、
(i)前記脂質付加タンパク質を含有する細胞を提供する工程と、
(ii)前記細胞をホモジナイズする工程と、
(iii)そのようにして得られたホモジネートを、
(a)精密濾過により前記ホモジネートを濃縮する工程、
(b)バイオマスを精密ダイア濾過により洗浄し、それによって精密ダイア濾液−1および精密ダイア未透過物−1を得る工程、
(c)前記精密ダイア未透過物−1から洗浄剤を含有する緩衝液を使用した精密ダイア濾過により脂質付加タンパク質を抽出し、それによって精密ダイア濾液−2および精密ダイア未透過物−2を得る工程
を含む精密(ダイア)濾過にかける工程と、
(iv)抽出された脂質付加タンパク質を含有する前記精密ダイア濾液−2をイオン交換クロマトグラフィーにかける工程であって、その溶出液が精製された脂質付加タンパク質を含有する、工程と、
(v)工程(iv)におけるイオン交換クロマトグラフィーから得られた溶出液を、残留内毒素除去のために陰イオン交換濾過にかける工程と、
(vi)脂質付加タンパク質を含有するそのようにして得られたタンパク質溶液をヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程と
を含めて、細胞から得ることができる。
【0050】
上記の方法の具体例によれば、高度に精製された組換え合成Lyme抗原(rSLA)は、
(i)前記rSLAを含有する細胞を提供する工程と、
(ii)前記細胞をホモジナイズする工程と、
(iii)そのようにして得られたホモジネートを、
(a)精密濾過により前記ホモジネートを濃縮する工程、
(b)バイオマスを精密ダイア濾過により洗浄し、それによって精密ダイア濾液−1および精密ダイア未透過物−1を得る工程、
(c)前記精密ダイア未透過物−1から洗浄剤を含有する緩衝液を使用した精密ダイア濾過によりrSLAを抽出し、それによって精密ダイア濾液−2および精密ダイア未透過物−2を得る工程
を含む精密(ダイア)濾過にかける工程と、
(iv)抽出されたrSLAを含有する前記精密ダイア濾液−2をイオン交換クロマトグラフィーにかける工程であって、その溶出液が精製されたrSLAを含有する、工程と、
(v)工程(iv)におけるイオン交換クロマトグラフィーから得られた溶出液を、残留内毒素除去のために陰イオン交換濾過にかける工程と、
(vi)rSLAを含有するそのようにして得られたタンパク質溶液をヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程と
を含めて、細胞から得ることができる。
【0051】
本発明に従った方法の上記の例は、抽出工程(iii)(c)後に、たとえば、0.2μmポアサイズ精密濾過カセットを使用した、精密濾過および/または精密ダイア濾過工程をさらに含んでいてよい。
【0052】
本発明の追加の態様は、上記方法により得られる疎水性タンパク質および少なくとも薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0053】
本発明の別の例では、上記の医薬組成物は、上記の方法により精製された治療効果のある量の疎水性タンパク質、ならびに、任意選択で、薬学的に許容可能な担体、薬剤的に許容可能な塩、補助剤、希釈剤および溶剤、またはその任意の組合せからなる群より選択される1つまたは複数の追加の成分を含む。
【0054】
一例によれば、上記の医薬組成物は、上記の方法により得られる脂質付加タンパク質ならびに少なくとも薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤を含む。
【0055】
上記の医薬組成物の別の具体例では、前記医薬組成物は、上記の方法により得られるrSLAならびに少なくとも薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤を含む。
【0056】
本発明の方法により、調製物に有利に使用され、医薬品および診断への適用に使用することができる高度に精製された疎水性タンパク質への到達がもたらされる。特に、前記疎水性タンパク質を可溶化するための洗浄剤の適用および本発明において特定されるパラメータの下でヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによる前記洗浄剤の連続的除去により、疎水性タンパク質の驚くほど効率的で多用途の精製が可能になり、前記疎水性タンパク質を作製するために使用される細胞培養および精製工程に由来する不純物は有利に少量になる。
【0057】
以下の実施例において、本発明を、限定することなくさらに例証する。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
rSLA抽出のためのTRITON(商標)X100の濃度
細胞膜からのrSLAの抽出の有効性を、異なるTRITON(商標)X100濃度を使用して試験した。E.coliタンパク質および膜脂質の可溶化はTRITON(商標)X100濃度が上昇する結果として増加するために、それに続く精製工程の効率に対するマイナス影響が生じる可能性がある。したがって、最適TRITON(商標)X100濃度を見つけるために、TRITON(商標)X100濃度が異なる画分を、E.coliタンパク質のバルクを除去するのに強力な陰イオン交換クロマトグラフィー手順の前および後で比較した。
【0059】
再懸濁緩衝液中の次の濃度のTRITON(商標)X100を試験した(0.5%、1.0%、1.5%、2.0%および3.0%)。ペレットを各自のTRITON(商標)X100含有緩衝液に再懸濁し、室温で1時間攪拌した。懸濁液は16,000rpmで(JA20ローターをBeckman遠心分離機で)20分間遠心分離した。こうして得られる上清は続いて分析し、E.coliタンパク質のバルクを除去するために、試料の一定分量を陰イオン交換樹脂でさらに精製した。これは、陰イオン交換クロマトグラフィー後のrSLAの純度に対するTRITON(商標)X100濃度の影響を評価するのに必要であった。異なるTRITON(商標)X100濃度を使用した、全タンパク質およびrSLA含有量の判定により測定される抽出手順の有効性は表1に収載している。
【0060】
表1:陰イオン交換樹脂DE−53は、TRITON(商標)X100抽出後の遠心分離した上清からE.coliタンパク質の大部分を除去した。rSLAタンパク質のDE−53樹脂への結合は最小であったために、rSLAは、上清画分に高度に残された。DE−53バッチインキュベーション後、1.0〜1.5%のTRITON(商標)X100(ボールド)での抽出物ではrSLAの割合は最大であった。
【0061】
【表1−1】

【0062】
【表1−2】

DE−53樹脂での精製後、全タンパク質レベルは減少したが、抽出物の遠心分離後の上清と比べると、rSLA−タンパク質は著しく濃縮された。溶液中の全タンパク質(μg/mlで測定)由来のrSLAの割合は、それぞれ1.5および1.0%のTRITON(商標)X100濃度で、約75%からほぼ80%までのレベルに到達した。rSLAの収率のわずかな向上により、後者の濃度に有利に働いた。どれくらいのTRITON(商標)X100濃度が好ましいかを明確に決定するために、クマシー染色PAGEを実施した(図1を参照されたい)。
【0063】
(実施例2)
精密濾過対遠心分離の比較
混濁液の遠心分離は通常、細胞残渣分離のための第一選択である。工業的製造規模工程の樹立に関しては、工業規模の遠心分離機の高コストおよび作動流体の面倒な取扱いにより、代替方法が有利な投資になると思われる。代替分離戦略は精密濾過により提供される。したがって、遠心分離が精密濾過により代用される精製戦略が調査された(図2を参照されたい)。
【0064】
精密濾過または遠心分離のいずれかにより精製されたrSLAの収率および純度の比較
表2に収載されている次のデータにより、精密濾過は遠心分離の代わりになりうることが実証された。したがって、精密濾過はrSLAハイブリッドタンパク質のための精製工程に有効に組み込むことができる。
【0065】
表2:3種類のキメラすべてに対するrSLAの純度を示す。精製は遠心分離または精密濾過のいずれかにより実施された。精密濾過されたrSLAの収率および純度は、遠心分離を使用することにより精製された前臨床ロットにおけるよりもさらに高かった。
【0066】
【表2】

精製工程へ精密濾過を組み込むことにより、3種類のキメラ構築物すべてに対して高純度rSLAが生産される。精密濾過されたrSLA由来の免疫原性特性が前臨床ロット由来のrSLAと同じであることを証明するために、3種類すべてのrSLAキメラ由来のマウスにおける免疫原性研究が実施された。
遠心分離または精密濾過を使用した精製されたrSLAの免疫原性の比較
遠心分離が精密濾過で代用される工程で精製されたrSLAの免疫原性が減少されていないことを立証するために、両精製戦略からの産物が免疫原性研究において比較された。精密濾過されたrSLA(「新」)由来の材料で高抗体力価を生じる効率は、遠心分離の使用により精製されたrSLA(「旧」)と等価であった(図3を参照されたい)。
【0067】
(実施例3)
精密濾過の工程
精密濾過は、2工程で実施し、すなわち、
1)精密濾過工程の最初に、ホモジネートの濃縮を精密濾過により実施し、続いてバイオマスをTRIS緩衝液で洗浄する(=精密ダイア濾過−1)。
2)続いて、精密ダイア濾過による精密ダイア未透過物から、TRITON(商標)X100含有緩衝液によりrSLAを抽出した。
【0068】
最初の実験的精密濾過では、脂質付加されたrSLA血清型6/4を使用した。原理上、精密濾過は、小可溶性タンパク質を除去し、試料を濃縮するために実施された。初回の精密濾過では、2の濃縮係数が最適であることが確立された。この濃縮係数は、続く精製工程をさらに損なうことはない。比較的初期の実験では濃縮係数4が使用されたが、精密ダイア未透過物−1のあまりに高い粘度により、後にはこの数字は放棄された。精密濾過による濃縮後、ダイア濾過緩衝液−1(TRITON(商標)X100なし)の3容積変化での精密ダイア濾過が実施された。ある割合の可溶性タンパク質が洗い流された。
精密ダイア濾過によるrSLAのTRITON(商標)X100抽出
精密ダイア濾過−1の後に、抽出手順が行われる。精密ダイア未透過物−1の濃縮後、TRITON(商標)X100が最終濃度1.5%まで添加された。バイオマスはマグネチックスターラ上で攪拌された。30分のインキュベーション時間は抽出に十分であった。次に、精密ダイア濾過−2(MDF−2)を、TRITON(商標)X100を含有する抽出緩衝液で実施した。精密ダイア濾液−2は抽出されたrSLAを含有していた(図1、図4)。精密ダイア濾過緩衝液での容積変化中の一定のTRITON(商標)X100濃度は、抽出を可能にし、rSLAを濾液中に可溶化しておくのに重要であった。
【0069】
rSLA血清型6/4で得られた結果を再現し、精密濾過によるrSLA抽出の方法を立証するために、同じ手順を脂質付加されたrSLA血清型1/2で実施した(図5を参照されたい)。
【0070】
抽出手順の最適化のために、rSLAの定量的抽出に必要な精密ダイア濾過緩衝液−2での容積変化(VC)の数を調査した。試料は、各容積変化(VC)後に精密ダイア濾液−2から収集し、SDS PAGEによるrSLA含有量を調べるために解析した(図6)。
【0071】
最適化実験により、ダイア濾過緩衝液−2での6容積変化でrSLAの定量的抽出に十分であることが明らかになった。
【0072】
(実施例4)
正確なカセットポアサイズを選択することによる精密濾過の最適化
E.coliタンパク質のバルクの最適除去および標的タンパク質の十分な保持を評価するために、2つの異なるポアサイズを有する精密濾過カセットを研究した。これらの精密濾過実験では、Pall社製のポリエーテルスルホン膜(supor TFF)を使用した。寸法(0.1m濾過面積)は実験室規模容積としては適切である。2つのポアサイズ、すなわち0.2μmおよび1000kDを比較した。画分はクマシー染色PAGEゲルおよびウェスタンブロット解析により分析した(図7を参照されたい)。
【0073】
同一濾過面積のPall社製1000kD膜で、同じ手順を実施した。1000kD膜でのE.coliタンパク質の保持は有意に高かった(図8、レーン11および13を参照されたい)。その結果、精密ダイア濾液でのrSLAの損失は最小であった(レーン12および14)。TRITON(商標)X100でのrSLAの抽出は可能であった(レーン16)が、精密ダイア未透過物−2(MDR−2)中のまだ多量のrSLAにより示されるように不完全であった(レーン15)。さらに、MDF−2中のE.coli由来バルクタンパク質の枯渇は、それを0.2μmポアサイズ膜で実現した時にははるかに効率が低かった(図7を参照されたい)。
【0074】
rSLAの抽出は0.2μmポアサイズ膜ではもっと効率がよく、したがってこのサイズの膜はその後の精密濾過実験すべてに使用された(図7、レーン9および20参照)
(実施例5)
ヒドロキシアパタイトによる洗浄剤除去
ヒドロキシアパタイト(HA)ULTROGEL(商標)クロマトグラフィー
DE−53でのネガティブクロマトグラフィー工程後、大半のE.coliタンパク質はrSLA溶液から除去された。ヒトワクチンでは、純度は最優先である。したがって、残留する細菌細胞タンパク質を除去する最終研磨工程が必要であった。
【0075】
HA ULTROGEL(商標)にはいくつかの利点がある。HAは、優れた化学的および機械的安定性、広いpH値作動範囲、室温で保存できる可能性を示し、0.1Nから1NまでのNaOH溶液での簡単な再生およびデピロゲネーションを提供する。
【0076】
HAクロマトグラフィーの展開中の一中心的作業は、洗浄剤TRITON(商標)X100を除去し、高純度のrSLAを生産することであった。プロセス展開の初めでの最初の試用により、洗浄剤除去が機能していることが立証された。この方法は、rSLAの抽出および可溶化に欠かせない溶液からのTRITON(商標)X100の除去に非常に効率的であることが判明した。3種類のrSLAハイブリッドタンパク質すべての精製により、HA工程後の最小量の残留TRITON(商標)X100が明らかにされた。HAクロマトグラフィー手順の展開中の第2の戦略は、溶出条件を修正することにより標的タンパク質の純度を改善することであった。そのアプローチは、増大したイオン強度の長期の工程を適用することにより溶出条件の厳密さを高めることであった。
ヒドロキシアパタイトULTROGEL(商標)でのクロマトグラフィー工程
この実施例は、使用前のヒドロキシアパタイトの適切な調製を含むHAクロマトグラフィー手順を説明している。AKTAエクスプローラ制御システム(GE Healthcare社)により制御することができるカラムクロマトグラフィー工程を実施するために、ヒドロキシアパタイトULTROGEL(商標)(HA)をカラムに充填した。長期保存のため、HAは20%EtOHと1M NaClに入れた。HAゲルの再生およびデピロゲネーションでは、カラムは2カラム容量の0.5N NaClで洗い流した。クロマトグラフィー手順から始めるためには、カラムを一組の異なった液体ですすがなければならなかった。先ず、充填したカラムを2カラム容量(CV)の水(WFI、注射用蒸留水)で洗い流し、続いて2CVの0.5N NaOHで、および最終的に8CVのWFIで再度洗い流し、これには初回のすすぎ手順が含まれていた。これにより、クロマトグラフィー工程の開始時にすべての残留汚染物質および考えられる発熱性物質が除去されたことが保証された。これに続く平衡手順は3すすぎ工程からなっていた。樹脂は1CVのpH=6.8の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(平衡緩衝液)で洗い流し、続いて2CVの500mMリン酸ナトリウム緩衝液(溶出緩衝液または緩衝液−B)、pH=6.8で、および再度3CVの平衡緩衝液で洗い流した。中間の500mM工程は、このクロマトグラフィー工程において用いられる最大イオン強度をシミュレートしていた。これにより、最大溶出条件下で、残留タンパク質は、タンパク質溶液を適用する前に樹脂から洗い流された。
【0077】
この時点で、カラムは試料適用の準備が整った。試料の量が負荷時間を規定した(負荷の速度はml per 分で与えられる;高速負荷はシステム圧力により制限され、最大値6bar)。タンパク質はUV光により280nmで検出された。試料負荷中、負荷ピークは非常に高かった。これは、TRITON(商標)100が、同様に280nmで吸収することが知られているタンパク質溶液に溶解されるという事実を反映していた(図9を参照されたい)。試料負荷の終了後、カラムは再度平衡緩衝液で洗い流した。洗い流しは、280nmシグナルが無変化のままになるまで続けられた。これは約3CVの平衡緩衝液後に起こった。
【0078】
UVシグナルがベースラインで安定化した後、溶出プログラムが開始された。このプログラムは少数の別々の工程からなっていた。先ず、溶出緩衝液の連続添加で、これは徐々にイオン強度を増加させ、約18%の溶出緩衝液(「緩衝液B」)での小ピークによりクロマトグラムにおいて目に見える不純物が枯渇した。この工程は、タンパク質ピークのUV線が再度ベースラインにくるまで延長された。25%緩衝液Bでは、勾配は、直線勾配が続く前にUVシグナルが再度ベースラインレベルに出会うまで再度延長された。一般に、約30〜35%緩衝液Bでは、rSLAは溶出しはじめピークを形成したが、これは約60%緩衝液Bでは中断した。この画分は別々のバイアルに収集され、これはこの時点で精製産物を含有していた。
【0079】
rSLA溶出では、緩衝液Bの割合の幅は狭くなるよう選択された(30〜60%の代わりに35〜55%緩衝液B)。標的タンパク質のわずかな損失は避けられなかったが、キメラrSLAの3つすべての場合で高純度の最終産物が得られた。
【0080】
(実施例6)
完全なrSLA精製プロトコルの具体例
具体例によれば、本発明の方法は以下の通りに実施された。
【0081】
rSLAを発現しているE.coliの湿潤細胞塊を再懸濁しホモジナイズして細菌細胞を破壊した。次にこの細胞懸濁液を精密濾過し、微小粒子および可溶性E.coliタンパク質を洗い流すためにTris緩衝液で洗浄(精密ダイア濾過)した。抽出は、E.coli細胞膜由来のrSLAを可溶化するTRITON(商標)X100含有第2精密ダイア濾過緩衝液により実施した。次に、このタンパク質溶液を、それに続く陰イオン交換カラムを無菌状態に保っておくために0.2μm濾過した。陰イオン交換クロマトグラフィーはネガティブクロマトグラフィー工程として使用した。E.coliタンパク質はかなり結合していた。これとは対照的に、rSLAは大部分がカラムを通過し、したがって通過流中に見出された。次に、標的タンパク質を含有する通過流を、残留内毒素除去のために膜吸着体を通過させた(陰イオン交換濾過)。それに続く最終クロマトグラフィー工程のために緩衝液条件を変えるために、限外濾過を実施した。次に、大量のrSLAおよびTRITON(商標)X100のあるタンパク質溶液をHAカラム上に負荷し、このカラムは残留E.coliタンパク質およびTRITON(商標)X100を枯渇させた。最終限外濾過を実施してrSLAを生理的緩衝系に移した。最終滅菌濾過により精製工程は終了した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞から高度に精製された疎水性タンパク質を得るための方法であって、
(i)細胞ホモジネートを精密濾過にかける工程と、
(ii)少なくとも1つの洗浄剤を含有する緩衝溶液を使用した精密ダイア濾過により該精密濾過から得た未透過物を抽出する工程と、
(iii)該精密ダイア濾過から得た濾液をヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程であって、任意選択で、該HAカラムクロマトグラフィーの前に該精密ダイア濾過から得た濾液を追加のクロマトグラフィー工程にかける工程と
を含む方法。
【請求項2】
抽出工程(ii)の前に、前記細胞ホモジネートを、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液からなる群より選択される適切な緩衝液を使用して洗浄する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、前記抽出工程(ii)から得た濾液をイオン交換クロマトグラフィーにかける、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、前記抽出工程(ii)から得た濾液を、膜吸着体を使用した陰イオン交換濾過にかける、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
精製される前記疎水性タンパク質が組換え合成Lyme抗原(rSLA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
精製される前記疎水性タンパク質が、脂質付加タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
精製される前記疎水性タンパク質がBorrelia由来のリポタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
精製される前記疎水性タンパク質が、一次配列の少なくとも130個の連続したアミノ酸にわたってBorrelia sp.のOspAタンパク質と少なくとも50%の同一性を有するリポタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性タンパク質を含有する細胞が、E.coli、酵母、植物細胞、昆虫細胞、トリ細胞または哺乳動物細胞からなる群より選択される宿主細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(ii)において使用される緩衝液が、陰イオン洗浄剤、陽イオン洗浄剤、双性イオン洗浄剤および非イオン洗浄剤からなる群より選択される洗浄剤を含有し、
該陰イオン洗浄剤が、コール酸およびその誘導体、N,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド、1−アルキルスルホン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンまたは脂肪酸塩からなる群より選択され、
該陽イオン洗浄剤が、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドおよびその誘導体、または塩化ベンザルコニウムからなる群より選択され、
該双性イオン洗浄剤が、ドデシルベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドおよびその誘導体または3−(N,N−ジメチルアルキル−アンモニオ)−プロパンスルホン酸塩からなる群より選択され、
該非イオン洗浄剤が、オクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルポリ(エチレンオキシド)およびその誘導体、アルキルポリグルコシドまたは脂肪アルコールからなる群より選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄剤が約0.5%から約3.0%までの量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄剤が約1%から約1.5%までの量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(ii)で使用される緩衝液がTris緩衝液である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(ii)で使用される緩衝液が、洗浄剤としてオクチルフェノールエトキシレートを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抽出工程(ii)の工程の後、0.2μmポアサイズ精密濾過カセットを使用して精密濾過および/または精密ダイア濾過工程を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記緩衝液濃度が約0.1mMから約1.0Mまでの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記緩衝液濃度が約1.0mMから約600mMまでの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記緩衝液のpHが約3.0から約10.0までの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記緩衝液のpHが約6.0から約8.0までの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
室温で前記方法を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
約0℃から約15℃までの温度で前記方法を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって得られる疎水性タンパク質ならびに少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
前記高度に精製された疎水性タンパク質が、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィー工程の後に1%未満の不純物含有量を有する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記高度に精製された疎水性タンパク質が、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィー工程の後に0.5%未満の不純物含有量を有する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
細胞から高度に精製された脂質付加タンパク質を得るための方法であって、
(i)該脂質付加タンパク質を含有する細胞を提供する工程と、
(ii)該細胞をホモジナイズする工程と、
(iii)そのようにして得られたホモジネートを、
(a)精密濾過により該ホモジネートを濃縮する工程、
(b)該バイオマスを精密ダイア濾過により洗浄し、それによって精密ダイア濾液−1および精密ダイア未透過物−1を得る工程、
(c)該精密ダイア未透過物−1から、洗浄剤を含有する緩衝液を使用した精密ダイア濾過により該脂質付加タンパク質を抽出し、それによって精密ダイア濾液−2および精密ダイア未透過物−2を得る工程
を含む精密ダイア濾過にかける工程と、
(iv)該抽出された脂質付加タンパク質を含有する該精密ダイア濾液−2を、イオン交換クロマトグラフィーにかける工程であって、その溶出液が該精製された脂質付加タンパク質を含有する、工程と、
(v)該工程(iv)におけるイオン交換クロマトグラフィーから得られた溶出液を、残留内毒素除去のために陰イオン交換濾過にかける工程と、
(vi)該脂質付加タンパク質を含有するそのようにして得られたタンパク質溶液を、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程と
を含む方法。
【請求項26】
抽出工程(ii)の前に、前記細胞ホモジネートを、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液からなる群より選択される適切な緩衝液を使用して洗浄する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、前記抽出工程(ii)から得られた濾液をイオン交換クロマトグラフィーにかける、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、前記抽出工程(ii)から得られた濾液を、膜吸着体を使用した陰イオン交換濾過にかける、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記疎水性タンパク質を含有する細胞が、E.coli、酵母、植物細胞、昆虫細胞、トリ細胞または哺乳動物細胞からなる群より選択される宿主細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記工程(ii)において使用される緩衝液が、陰イオン洗浄剤、陽イオン洗浄剤、双性イオン洗浄剤および非イオン洗浄剤からなる群より選択される洗浄剤を含有し、
該陰イオン洗浄剤が、コール酸およびその誘導体、N,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド、1−アルキルスルホン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンまたは脂肪酸塩からなる群より選択され、
該陽イオン洗浄剤が、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドおよびその誘導体、または塩化ベンザルコニウムからなる群より選択され、
該双性イオン洗浄剤が、ドデシルベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドおよびその誘導体または3−(N,N−ジメチルアルキル−アンモニオ)−プロパンスルホン酸塩からなる群より選択され、
該非イオン洗浄剤が、オクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルポリ(エチレンオキシド)およびその誘導体、アルキルポリグルコシドまたは脂肪アルコールからなる群より選択される、
請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記洗浄剤が約0.5%から約3.0%までの量で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記洗浄剤が約1%から約1.5%までの量で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記工程(ii)において使用される緩衝液がTris緩衝液である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記工程(ii)において使用される緩衝液が、洗浄剤としてオクチルフェノールエトキシレートを含有する、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記抽出工程(ii)の工程の後、0.2μmポアサイズ精密濾過カセットを使用して精密濾過および/または精密ダイア濾過工程を実施する、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記緩衝液濃度が約0.1mMから約1.0Mまでの範囲にある、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記緩衝液濃度が約1.0mMから約600mMまでの範囲にある、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記緩衝液のpHが約3.0から約10.0までの範囲にある、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記緩衝液のpHが約6.0から約8.0までの範囲にある、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
室温で前記方法を実施する、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
約0℃から約15℃までの温度で前記方法を実施する、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
請求項25に記載の方法によって得られる脂質付加タンパク質ならびに少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項43】
前記高度に精製された疎水性タンパク質が、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィー工程の後に1.0%未満の不純物含有量を有する、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記高度に精製された疎水性タンパク質が、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィー工程の後に0.5%未満の不純物含有量を有する、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項45】
細胞から高度に精製された組換え合成Lyme抗原(rSLA)を得るための方法であって、
(i)該rSLAを含有する細胞を提供する工程と、
(ii)該細胞をホモジナイズする工程と、
(iii)そのようにして得られたホモジネートを、
(a)精密濾過により該ホモジネートを濃縮する工程、
(b)該バイオマスを精密ダイア濾過により洗浄し、それによって精密ダイア濾液−1および精密ダイア未透過物−1を得る工程、
(c)該精密ダイア未透過物−1から、少なくともオクチルフェノールエトキシレートを含有する緩衝液を使用した精密ダイア濾過によりrSLAを抽出し、それによって精密ダイア濾液−2および精密ダイア未透過物−2を得る工程
を含む精密ダイア濾過にかける工程と、
(iv)抽出されたrSLAを含有する該精密ダイア濾液−2を、陰イオン交換クロマトグラフィーにかける工程であって、その溶出液が精製されたrSLAを含有する、工程と、
(v)該工程(iv)における陰イオン交換クロマトグラフィーから得られた溶出液を、残留内毒素除去のために陰イオン交換濾過にかける工程と、
(vi)rSLAを含有するそのようにして得られたタンパク質溶液を、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィーにかける工程と
を含む方法。
【請求項46】
抽出工程(ii)の前に、前記細胞ホモジネートを、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液からなる群より選択される適切な緩衝液を使用して洗浄する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、前記抽出工程(ii)から得られた濾液をイオン交換クロマトグラフィーにかける、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程(iii)の前に、前記抽出工程(ii)から得られた濾液を、膜吸着体を使用した陰イオン交換濾過にかける、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記疎水性タンパク質を含有する細胞が、E.coli、酵母、植物細胞、昆虫細胞、トリ細胞または哺乳動物細胞からなる群より選択される宿主細胞である、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記工程(ii)において使用される緩衝液が、陰イオン洗浄剤、陽イオン洗浄剤、双性イオン洗浄剤および非イオン洗浄剤からなる群より選択される洗浄剤を含有し、
該陰イオン洗浄剤が、コール酸およびその誘導体、N,N−ジメチルドデシルアミンN−オキシド、1−アルキルスルホン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンまたは脂肪酸塩からなる群より選択され、
該陽イオン洗浄剤が、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドおよびその誘導体、または塩化ベンザルコニウムからなる群より選択され、
該双性イオン洗浄剤が、ドデシルベタイン、アルキルジメチルアミンオキシドおよびその誘導体または3−(N,N−ジメチルアルキル−アンモニオ)−プロパンスルホン酸塩からなる群より選択され、
該非イオン洗浄剤が、オクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルポリ(エチレンオキシド)およびその誘導体、アルキルポリグルコシドまたは脂肪アルコールからなる群より選択される、
請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記洗浄剤が約0.5%から約3.0%までの量で存在する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記洗浄剤が約1%から約1.5%までの量で存在する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記工程(ii)において使用される緩衝液がTris緩衝液である、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記工程(ii)において使用される緩衝液が、洗浄剤としてオクチルフェノールエトキシレートを含有する、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記抽出工程(ii)の工程の後、0.2μmポアサイズ精密濾過カセットを使用して精密濾過および/または精密ダイア濾過工程を実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
前記緩衝液濃度が約0.1mMから約1.0Mまでの範囲にある、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記緩衝液濃度が約1.0mMから約600mMまでの範囲にある、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記緩衝液のpHが約3.0から約10.0までの範囲にある、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記緩衝液のpHが約6.0から約8.0までの範囲にある、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
室温で前記方法を実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
約0℃から約15℃までの温度で前記方法を実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項62】
請求項45に記載の方法によって得られるrSLAならびに少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項63】
前記高度に精製された疎水性タンパク質が、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィー工程の後に1.0%未満の不純物含有量を有する、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記高度に精製された疎水性タンパク質が、ヒドロキシアパタイト(HA)カラムクロマトグラフィー工程の後に0.5%未満の不純物含有量を有する、請求項62に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−518836(P2010−518836A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550674(P2009−550674)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001284
【国際公開番号】WO2008/101667
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】