説明

疎水性モノマーの乳化重合

本発明は、疎水性高級分岐鎖ビニルエステルのコポリマー、及び低臨界ミセル濃度を有する界面活性剤存在下での疎水性モノマーを重合するための重合方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性モノマーを重合させるための方法に関する。
保護コーティングのための主要な要求の一つは、塗装された基材に耐水性を付与できることである。バインダーが大部分の塗料の主要部分であることから、エマルジョンポリマー設計における最近の研究は、製造されるポリマーの疎水性を上げることにより一層効果的なバリア特性を付与することを目指している。それは、次に、疎水性モノマーを効果的かつ効率的に重合させるための手段を必要とする。
【背景技術】
【0002】
ラテックスペイントコーティングは、一般的に、基材に塗布され、そして乾燥されて、装飾目的のため並びに基材を保護するために連続塗膜を形成する。上記ペイントコーティングは、コーティングが連続塗膜を形成するように十分流動的であり、そして周囲温度で乾燥する条件下で、建築物の内装又は外装表面に塗布されることが多い。外装耐久性には、透水、続いて塗膜破壊から膜を保護するための高い疎水性が必要となる。それはまた、次に、疎水性モノマーを効果的かつ効率的に重合させるための手段を必要とする。
【0003】
ラテックスペイントの配合において一般的に用いられる二種のポリマーは、(i)すべてアクリル系、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルの、少量の官能性モノマー(カルボン酸等)とのコポリマー、及び(ii)通常、少量の上述の低級アルキルアクリレートと組み合わせた酢酸ビニル系コポリマーである。その低コストに起因して、酢酸ビニルは、建築物コーティングラテックスの使用において、ある種のアクリレートモノマー(例えば、メタクリル酸メチル)に対する魅力的な代替品となる。残念ながら、酢酸ビニル系コポリマーは、特にアルカリ性条件下での加水分解安定性が悪いので、外装コーティングでは限られた用途しか見出せない。耐アルカリ性は、例えば、ペイントが、例えば、セメント等のアルカリ性建設資材上に塗布される場合に非常に重要である。
【0004】
ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、及びネオドデカン酸ビニル等の長鎖分岐鎖エステルを利用することにより、ポリマーの疎水性を増すための原料の新規選択性が与えられる可能性がある。これらのモノマーは、酢酸ビニル並びにアクリルモノマーと好適に重合する。この汎用性により、内装及び外装用ペイント、透明で着色された木材コーティング、耐食性金属コーティング、並びにセメント及びコンクリート用の安定なコーティング及び添加剤を含む多様な用途に適合するようにポリマー特性を調整する手段が提供される。さらに、ネオモノマーの部類の中で利用可能な広範囲のTgが、耐水性のための共通の必要性を有する異なるコーティング用途の要求事項に対応する上で非常に重要である。分岐鎖ビニルエステルの最も有用な特徴の一つは、それらの耐加水分解性、高pH基材(セメント及びセメント複合材等)上のコーティングに対する価値のある特性である。
【0005】
しかし、特に上記ポリマーが、ポリマー組成の50%を超える場合に、公知の技法を用いてこれらのモノマーを共重合させることは非常に困難であり、ホモポリマー化させることはさらに困難である。この困難性の証拠としては、公知の技術を用い上記モノマーを重合させてきれいなラテックス、すなわち、例えば、250メッシュスクリーンを通してろ過する場合に、スクリーン上にほとんど又は全く残留物を残さないラテックスを製造することが非常に困難であるという事実が挙げられる。それはまた、次に、疎水性モノマーを効果的かつ効率的に重合させるための手段に対する必要性を提示する。
【0006】
乳化重合において非常に疎水性であるモノマーを用いることの別の不利益は、モノマーの水溶性が非常に低いことであり、モノマー輸送が遅く、そして反応性が低い結果となる。
【0007】
ビニル分岐鎖エステルのそれら等の、非常に疎水性であるモノマーのホモポリマーを製造するための試みは、たとえ重合が長時間にわたり、例えば、48時間を超えて行われるとしても、転化率が非常に低く、失敗してきた。また、よく理解されていないが、奇妙な阻害の証拠がある(Balic,R.,deBruyn,H.,Gilbert,R.G.,Miller,C.M.and Bassett,D.R.,“Inhibition and Retardation in Emulsion Polymerization,”Proc.74th Colloid and Surf.Sci.Symp.,Lehigh University,June,p.19(2000).)。
【0008】
上記モノマーを重合させるための多くの試みは、疎水性モノマー用の溶媒として作用するための有機溶媒又は他のモノマーの使用、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物の使用、及び高濃度の界面活性剤の使用等の高価につく技術に頼っている。
【0009】
例えば、米国特許第5,521,266号明細書には、
1)少なくとも1種の水溶性が低いモノマーを、疎水性キャビティを有する高分子有機化合物と複合化させる段階、そして
2)水系において、水溶性が低い複合化モノマー(ポリマー総重量に基づいて約0.1重量%〜約100重量%のモノマー成分)を、少なくとも一種の水溶性が高いモノマー(ポリマー総重量に基づいて、約0重量%〜約99.9重量%)と重合させる段階、
を含む、重合単位として、少なくとも1種の水溶性が低いモノマーを含有するポリマーを形成させるための水性重合法が記載されている。
【0010】
米国特許第5,521,266号明細書において用いられる疎水性キャビティを有する高分子有機化合物には、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体が含まれる。
米国特許第5,777,003号明細書は、エチレン性不飽和モノマー及びシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体のホモポリマー又はコポリマーを含む再分散性ポリマー粉末組成物に関する。ポリマー分散液をスプレードライして、そして得られた粉末を、モルタル組成物に配合する。モルタルの曲げ引張強度及び接着強度が、シクロデキストリン含有分散粉末の存在下で増強される一方、圧縮強度はほんのわずかしか影響を受けない。
【0011】
シクロデキストリン及び化学変性したシクロデキストリンは、乳化重合において用いられる他の成分に較べて非常に高価である。さらに、シクロデキストリンは水溶性であり、重合の際のそれらの包含物は、ポリマーフィルムに対して望ましくない特性(疎水性等の低下等)を付与する場合がある。さらに、一部のモノマーは、ビーズ内部に拡散又は浸透することができず、その結果、容量が減り、そしてより多くの量のシクロデキストリンが必要となる。これにより、次に、疎水性の低下によりもたらされるポリマーフィルムに対する望ましくない属性(コーティング用途において有害である場合がある)が生じる。
【0012】
前述の方法は、ラテックス粒子に機能性を付与するために極性モノマーを用いる。これらの極性モノマーは、通常、カルボン酸並びにヒドロキシ−及びアミド−含有モノマーである。酸性モノマーが、種々の理由(一つはラテックス安定性を改善するため)により、乳化重合に用いられることは、当業者に周知である。しかし、ポリマー中に重合された酸が存在すると、水に対するポリマーの親和性を増大させる、すなわち、ポリマーの疎水性を低下させるので、コーティング用途及び水分に敏感な用途(腐食制御等)向けには望ましくない。
【0013】
米国特許第5,686,518号明細書には、本質的に水に不溶であると言われる(すなわち、0〜約5重量%の範囲にわたる水への溶解度を有する)モノマー及びモノマー混合物を重合させるための、ミニ乳化重合と称される重合法が開示されている。当該モノマー又はモノマー混合物を、0.5μm未満の極微細の液滴サイズに乳化し、続いて従来の手段により重合する。ミニ乳化液を達成するために、界面活性剤に加えて、ポリマーの共界面活性剤を、モノマーに基づいて0.5重量%〜5重量%の濃度で用いる。当該共界面活性剤は、モノマー液滴サイズ及び結果としてのラテックス粒径を小さくする。共界面活性剤が、小さなモノマー液滴からより大きなモノマー液滴へのモノマー移動(すなわち、オストワルド成長)を妨げるので、モノマー液滴の核生成物は、モノマー液滴の粒径に類似する最終ラテックス粒径をもたらす。
【0014】
米国特許第6,160,049号明細書には、フリーラジカル重合性化合物から水性ポリマー分散液を調製するためのマクロ乳化液及びミニ乳化液の原料流を組み合わせる乳化重合法が開示されている。この方法は、0.001重量%以上の溶解度を有するモノマーと、0.001重量%未満の溶解度を有するモノマーとを別個の流れで供給することを必要とし、両方のモノマー流を乳化することが必要とされる。モノマー流の乳化は、高圧ホモジナイザーを用いて、最大1200バールの圧力で行われる。しかし、この周辺機器は、通常、従来の乳化重合手法においては観察されるものではない。
【0015】
相転移剤としてメチル−β−シクロデキストリンを用い、そして界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸塩を用いる、アクリル酸ステアリル疎水性モノマーの重合が、Leyrer,R.J.及びMachtle,W.により、Macromol.Chem.Phys.,201,No.12,1235〜1243(2000)に開示されている。アクリル酸ステアリルは、米国特許第5,521,266号明細書及び同第6,160,049号明細書の両方の実施例中に用いられている疎水性モノマーの一つである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
公知の方法の不利益に鑑み、疎水性モノマーを重合させて、ラテックス(特に、疎水性コーティング向けに有用なラテックス)を製造することができる方法が必要とされる。最大の疎水性をコーティングに付与するために、疎水性モノマーから極度に疎水性であるモノマーまでの、完全なモノマー溶解度範囲を網羅することができる方法が望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の方法は、上記所望の方法であり、そして水100gにつき約0.02g以下の水への溶解度を有するモノマーを少なくとも一種含むモノマー組成物を、0.05重量%未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する界面活性剤の少なくとも一種と接触させることを含む方法であり、当該接触は、上記モノマー組成物の上記モノマーを重合させるために十分な乳化重合条件下で生じる。
本発明の別の実施形態は、
(i)少なくとも一種のアルケン、及び少なくとも一種の高級分岐鎖(higher branched)ビニルエステル、及び所望によりさらなるモノマー、
(ii)0.05重量%未満の臨界ミセル濃度を有する界面活性剤、及び
(iii)水、
を含む反応混合物から調製される新規なアルケンコポリマーラテックス組成物である。
さらに別の実施形態において、本発明品は、少なくとも二種の高級分岐鎖ビニルエステルモノマーのコポリマーである。
【0018】
全く驚いたことに、CMCが非常に低い界面活性剤を使用することにより、疎水性モノマーの効率的な重合が可能となることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の乳化重合法を、約0.05重量%未満のCMCを有する界面活性剤及び疎水性モノマーを用い、そして本発明のポリマーを調製するために用いることができる。本発明の方法を、ホモポリマー又はコポリマー(すなわち、少なくとも二種のモノマーから形成されるポリマー)を調製するために用いることができる。
【0020】
本明細書において用いられる、(メタ)アクリレート中におけるような用語「(メタ)」は、アクリレート及び/又は対応するメタクリレートを意味し、例えば、(メタ)アクリル酸メチルは、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルの両方を意味する。本明細書において用いられる用語「コポリマー」は、少なくとも二種のモノマーから重合されるポリマーを意味し、ターポリマー及びテトラポリマー等を含む。
【0021】
本明細書において用いられる用語「モノマー組成物のモノマーを重合させるために十分な重合条件」は、当該条件が少なくとも90%のモノマー転化率を達成するために十分であることを意味する。本発明の各種実施形態において、上記転化率は少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。
【0022】
本明細書において用いられる用語「疎水性モノマー」は、水100gにつき約0.02g以下の水への溶解度を有する任意のモノマーを意味し、用語「非常に疎水性であるモノマー」は、水100gにつき約0.01g以下の水への溶解度を有する任意のモノマーを意味し、用語「極度に疎水性であるモノマー」は、水100gにつき約0.001g以下の水への溶解度を有する任意のモノマーを意味する。水への溶解度値は、溶媒として脱イオン水を用いて20℃で測定する。水中における一部のモノマーの溶解度は以下の通りであり、20℃で測定され、水100gあたりのgとして表される:アクリロニトリル、7.1;アクリル酸メチル、5.2;酢酸ビニル、2.5;アクリル酸エチル、1.8;メタクリル酸メチル、1.5;エチレン、1.1;塩化ビニル、0.60;アクリル酸ブチル、0.16;スチレン、0.03;アクリル酸2−エチルヘキシル、0.01;ネオペンタン酸ビニル、0.08;2−エチルヘキサン酸ビニル、<0.01;ネオノナン酸ビニル、<0.001;ネオデカン酸ビニル、<0.001;ネオウンデカン酸ビニル、<0.001;ネオドデカン酸ビニル、<0.001。これらの溶解度は、D.R.Bassettの“Hydrophobic Coatings from Emulsion Polymers,”Journal of Coatings Technology,January 2001に由来するものである。大部分のネオモノマーは、アクリル酸2−エチルヘキシルを除いて、他のモノマーよりもさらに低い溶解度を示す。
【0023】
Shellは、30年以上も前に高度分岐鎖(highly branched)第3級モノカルボン酸の異性体混合物を製造するための製法を開発した。C9〜C11酸混合物(ベルサチックアシッド(versatic acid))は、水及び一酸化炭素の存在下でプロピレンをオリゴマー化して、カルボニル炭素に隣接した炭素上にネオ構造を含有する分岐鎖酸を製造することを含むKoch法を経由して調製される。当該酸を、次に、アセチレンと反応させて、ビニルエステルに転化することができる。
分岐鎖ビニルエステルの一般的な構造を、以下に示す:
【化1】

(式中、R1、R2及びR3はアルキル基である。)。
好ましくは、R1、R2及びR3は、独立して、C1~8アルキル基であり、R1、R2及びR3を一緒にした炭素原子の総数は、6〜約10個である。
【0024】
本質的に、水100gにつき約0.02g以下の水への溶解度を有する任意のモノマーを、本発明の方法に用いることができる。これらのモノマーには、酸残基部分中における全体で8〜12の炭素原子数と、10〜14の総炭素原子数とを有する分岐鎖モノカルボン酸のビニルエステル、例えば、2−エチルヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、ネオドデカン酸ビニル及びそれらの混合物が含まれるがそれらに限定されるものではない(Shell Corporationは、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、及びネオウンデカン酸ビニルを、それぞれ、VeoVa9、VeoVa10及びVeoVa11の商品名で販売し、一方、Exxsonは、ネオドデカン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルを、それぞれ、Exxar12及びExxar10の商品名で販売している)。高級ビニルエステルは、本発明に従う好ましいモノマーである。
【0025】
本明細書において用いられる用語「高級ビニルエステル」は、酸残基部分中に約8〜約12個の炭素原子を含有するビニルエステルを意味する。さらに好ましくは、当該高級ビニルエステルは、分岐鎖ビニルエステルである。好ましい分岐鎖ビニルエステルモノマーは、ピバリン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、ネオドデカン酸ビニル及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、本発明において用いられるモノマー混合物は、少なくとも一種の高級分岐鎖ビニルエステルを含む。
【0026】
疎水性モノマーのさらなる例には、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ステアリルビニルエーテル等の(C9〜C30)アルキル基を有するビニルアルキル又はアリールエーテル;(メタ)アクリル酸の(C6〜C30)アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸パルミチル、及び(メタ)アクリル酸ステアリル;(メタ)アクリル酸の不飽和ビニルエステル、例えば、脂肪酸及び脂肪アルコールから誘導されるもの;コレステロールから誘導されるモノマー;及びオレフィンモノマー、例えば、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、イソブチレン及びイソプレンが含まれるが、しかし、水100gにつき約0.02gを超える溶解度を有する任意のモノマーは、疎水性の定義外であるという条件を有する。疎水性モノマーの混合物を用いることができる。
【0027】
所望の場合には、コモノマーを、本発明の方法に用いることができる。本発明に従って使用するために好適なさらなるモノマーには、本発明のラテックスポリマー組成物に望ましい特徴を付与することができる任意のモノマーが含まれる。本発明における任意のコモノマーとして用いることができるモノマーの例には、スチレン;置換スチレン、例えば、o−クロロスチレン及びビニルトルエン;エチレン;プロピレン;1,3−ブタジエン;低級ビニルエステル、すなわち、酸残基部分中に2〜約4個の炭素原子を含有するもの、例えば、酢酸ビニル;塩化ビニル;塩化ビニリデン;アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸の種々のC1〜C4アルキル又はC3〜C4アルケニルエステル、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸ブチル;エチレン性不飽和ジカルボン酸エステル又はそれらの誘導体、例えば、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−t−ブチル、及びマレイン酸若しくはフマル酸又は無水マレイン酸のジメチル、ジブチル及びジエチルエステル;及びスルホン酸及びその塩、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS(商標)は、Lubrizol Corporationの商標である。)のナトリウム又はアンモニウム塩が含まれる。所望のモノマーの混合物を、用いることができる。本発明の一つの実施形態において、モノマー組成物は、酢酸ビニルを本質的に含まない。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、高級分岐鎖ビニルエステルを、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、イソブテン、1,3−ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種のモノマーと共重合する。
【0029】
モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマー重量に基づいて、約0.1〜約100%の疎水性モノマーを少なくとも一種含有することができる。種々の実施形態においてポリマーに重合される疎水性モノマーの最大量は、ポリマーに重合されるモノマーの重量に基づいて、約50%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、又は約2%以下であり、そして残余は所望のコモノマーである。
【0030】
種々の実施形態においてポリマーに重合される疎水性モノマーの最小量は、ポリマーに重合されるモノマーの重量に基づいて少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、又は少なくとも約5%であり、そして残余は所望のコモノマーである。本発明の種々の実施形態において、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマー重量に基づいて、約0.1〜約50%、約0.5〜約20%、約1〜約10%、又は約2〜約5%の少なくとも一種の疎水性モノマーを含有することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明のコポリマーは、ポリマーに重合されるモノマーの重量に基づいて、0〜約30重量%、好ましくは約1〜約25重量%の重合エチレン単位を含む。
【0032】
上記モノマー混合物は、架橋性モノマーを含むことも含まないこともできる。架橋性モノマーの例には、C1〜C6アルキル基を有するN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(アルコキシメチル)アクリルアミド又はN−(アルコキシメチル)メタクリルアミド、例えば、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド(IBMA)、N−(イソブトキシメチル)メタクリルアミド(IBMMA)、N−(n−ブトキシ−メチル)−アクリルアミド(NBMA)及びN−(n−ブトキシ−メチル)−メタクリルアミド(NBMMA)、ポリエチレン性不飽和コモノマー、例えば、ジアクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジアクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジアクリル酸プロピレングリコール、アジピン酸ジビニル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、及びシアヌール酸トリアリル等が含まれるが、それらに限定されるものではない。ポリマー接着特性の改良用に好適なコモノマー単位には、メタクリル酸及びアクリル酸のヒドロキシルアルキルエステル、例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシブチルアクリレート又はメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アセチルアセトキシエチルアクリレート又はメタクリレート等、アミノエチルエチレン尿素のアリル誘導体、及びウレ(ure)/ウレイドモノマーの環状イミド誘導体等が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0033】
架橋性モノマーの他の例には、シラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニル−トリス−(2−メトキシエトキシシラン)、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ポリヒドロキシル化化合物のアクリル又はメタクリルポリエステル、ポリカルボン酸のジビニルエステル、ポリカルボン酸のジアリルエステル、テレフタル酸ジアリル、N,N’−メチレンジアクリルアミド、ヘキサメチレンビスマレイミド、リン酸トリアリル、トリメリット酸トリビニル、トリメタクリル酸グリセリン、コハク酸ジアリル、ジビニルエーテル、エチレングリコール又はジエチレングリコールのジビニルエーテル、ジアクリル酸エチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート又はメタクリレート、n−メチロールアクリルアミド、n−イソブトキシメチルアクリルアミド、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸ヘキサンジオール、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ジビニルベンゼン、トリ−又はテトラエチレングリコールジアクリレート又はメタクリレート、及びブチレングリコールジアクリレート又はジメタクリレート等が含まれる。架橋性モノマーの混合物を用いることができる。
【0034】
好ましくは、架橋剤の量は、0%〜80%のゲル含有率を提供するために有効な量である。本明細書において用いられる用語「ゲル含有率」は、そのフィルムを、4日間にわたりテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させた後、不溶のままで残るポリマー部分を意味する。元の乾燥膜重量の%として表現されるこの不溶性ポリマーの重量を、ポリマーのゲル含有率%と称する。
【0035】
本明細書において用いられる用語「疎水性界面活性剤」は、0.05重量%未満の臨界ミセル濃度を有する任意の界面活性剤を意味し、用語「非常に疎水性である界面活性剤」は、0.005重量%未満のCMCを有する任意の界面活性剤を意味し、用語「極度に疎水性である界面活性剤」は、0.0009重量%未満のCMCを有する任意の界面活性剤を意味する。本発明の目的において、「CMC」は、界面活性剤ミセルが形成し始める界面活性剤濃度を意味し、“Critical Micelle Concentrations of Aqueous Surfuctant Systems,”United States Department of Commerce,National Bureau of Standards,NSRDS−NBS 36,Issued February 1971に記載されているように界面張力−界面活性剤濃度プロット法によって測定される。
【0036】
界面活性剤をモノマー−水系に添加すると、界面活性剤分子が水相中に溶解する。次に、これらの界面活性剤分子は、気液界面並びにモノマー−水界面に移動する。界面活性剤をさらに添加することにより、気液界面及びモノマー−水界面の飽和が生ずる。界面活性剤濃度をCMCに等しい濃度に上げることにより、ミセルが形成する。水相における過剰の界面活性剤は、液体/空気及びモノマー−水界面で吸着される界面活性剤及びミセルと平衡状態にある。
【0037】
CMCを超えると、界面活性剤量の増量は、単にミセルの数を増やすだけである。本発明により、好適に用いられる界面活性剤は、約0.05重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満、そして最も好ましくは約0.0009重量%未満のCMC値を有する。非イオン性、両性イオン性、又はイオン性(関連対イオンを伴う)であるかどうかを問わず、界面活性剤の親水性部分の役割は、炭化水素鎖に十分な溶解性を与えるために不可欠なものであり、その結果、CMC値に到達又はそれを超えることができるが、しかし、その条件を満足させる上で、界面活性剤が非イオン、両性イオン、又はイオン性であるかどうかは、本発明にとって決定的なものではない。
【0038】
本発明において有用であるCMC値を有する多くの陰イオン性、非イオン性、陽イオン性及び両性界面活性剤は、McCutcheon’s Detergents and Emulsifier 1998,North America Edition,MC Publishing Company,Glen Rock,N.J.等の文献に記載されている。多くの界面活性剤の臨界ミセル濃度を、“Critical Micelle Concentrations of Aqueous Surfactant Systems,”United States Department of Commerce,National Bureau of Standards,NSRDS−NBS 36,Issued February 1971中に見出すことができる。いくつかの界面活性剤に関するCMC値のリストを、Rosen,M.J.,“Surfactants and Interfacial Phenomena,”Second Ed.,John Wiley & Sons,New York,1989,Table3−2,page122に見出すことができる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、用いられる界面活性剤は、その溶解度が、CMCにより反映されるように、重合すべきモノマー又はモノマー混合物の溶解度に類似することに基づいて選択される。従って、本発明の好ましい実施形態において、低CMC界面活性剤と疎水性モノマーの任意の組合せを、重合性媒体中の二つの溶解度が互いに類似である限り用いることができる。換言すれば、モノマーが疎水性になればなるほど、本発明による重合において用いようとする界面活性剤がより疎水性になること(それによりCMCがより低くなる)が好ましい。
【0040】
重合反応を行うために有用な特定の界面活性剤系は、存在する少なくとも一種の界面活性剤のCMCが、0.00001重量%〜0.05重量%の範囲にある限り、そして当該界面活性剤系が乳化重合に対応する限り、本発明に決定的ではない。重合性及び/又は反応性界面活性剤を用いることができる。本発明において好適に用いることができる界面活性剤の例には、スルホコハク酸ジエステル、スルホコハク酸モノエステル、スルホスクシンアマート、硫酸ノニルフェノールエーテル及びアルキルアリールポリエーテルスルホン酸のナトリウム塩、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、アルキルフェノールエーテル硫酸塩、及び3、6及び10モルのエチレンオキシドを有する脂肪族リン酸エステル等の低CMCリン酸エステル型界面活性剤が含まれる。好適な非イオン性界面活性剤の例には、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート及び脂肪酸エステルが含まれる。
【0041】
市販の界面活性剤の例には、Aerosol(商標)TR−70、Aerosol(商標)TR−70−HG、Aerosol(商標)501、Aerosol(商標)OT−85AE、Aerosol(商標)OT−NV、Aerosol(商標)A−103、Aerosol(商標)18、Aerosol(商標)22、Aerosol(商標)NPES−428、Aerosol(商標)NPES−430、Aerosol(商標)NPES458、Aerosol(商標)NPES−930、Aerosol(商標)NPES2030、Aerosol(商標)NPES−3030、Aerosol(商標)DPOS−45、Rhodapex(商標)CO−433、Rhodafac(商標)RS−410、Rhodafac(商標)RS−610、Rhodafac(商標)RS−710、Igepal(商標)CA−630、Igepal(商標)CO−630、Igepal(商標)CO−710、Igepal(商標)CO−720、Igepal(商標)CO−730、Rhodosurf(商標)L−790、ATOPOL E−1231、ATOPOL E−1501、ATOPOL E−1502、Calsolene Oil HS、ATOPOL E−5730、ATOPOL E−5837、BRIJ35及びBRIJ58が含まれる。Aerosol(商標)界面活性剤は、ニュージャージー州、ウエストパターソンのCYTEC Industries,Inc.により販売されている。Igepal(商標)、Rhodapex(商標)、Rhodafac(商標)及びRhodosurf(商標)界面活性剤は、ニュージャージー州、クランベリのRhodia,Inc.により販売されている。ATOPOL、Calsolene Oil HS、及びBRIJ界面活性剤は、Imperial Chemical Industries PLCの国際ビジネス部門、Uniqemaにより販売されている。低CMC及び非低CMC界面活性剤の混合物を含む界面活性剤混合物を用いることができる。
【0042】
当業者に反応性界面活性剤と呼ばれることが多い重合性界面活性剤は、本発明によるモノマー及びモノマー混合物を重合させる上で有用である。重合性界面活性剤は、ミセル形成及び界面張力低下等の従来の界面活性剤のすべての典型的な特性を有する;実際、それらの長い疎水性基により、それらはまた、CMC値が低い傾向がある。さらに、重合性界面活性剤は、重合性基を含有するので、ラテックス粒子を構成するポリマー鎖中に組み込まれる。それらのポリマー鎖中への組込みの結果として、重合性界面活性剤は、従来の界面活性剤とは対照的に、フィルム表面又は基材/ポリマー界面に移動せず、接着性損失、ウォータースポット、及び白化等の界面活性剤の移動に関連する問題点が排除される。
【0043】
本発明において好適に有用な反応性界面活性剤は、界面活性を保持するために従来の界面活性剤に類似の疎水性及び親水性部分を含有しながら、モノマー及びモノマー混合物とのラジカル重合するためのエチレン性不飽和二重結合を少なくとも一種有する化合物であることが好適である。界面活性剤モノマーには、C1827−(エチレンオキシド)20メタクリレート及びC1225−(エチレンオキシド)23メタクリレート等の長鎖アルコキシ−又はアルキルフェノキシ−ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートが含まれ、そして上記反応性界面活性剤は、米国特許第4,075,411号明細書(当該教示内容を、参照により本明細書に組み入れる。)に開示されている。それらは、(a)C8〜C20アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)10〜60エチルアルコール、(b)C12〜C20脂肪酸の(エチレンオキシ)15〜25ソルビタンエステル及び(c)メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールとの、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸のエステル、及びマレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びアコニット酸のモノ−及びジ−エステルである。反応性界面活性剤には、米国特許第4,224,455号明細書(当該教示内容を、参照により本明細書に組み入れる。)中に開示されているもの等のアルコキシル化アルキルアリールオル(arylols)との無水マレイン酸の環状スルホン化ハーフエステルを含むものが含まれる。
【0044】
本発明により好適に用いられる他の非イオン性界面活性剤には、BASF Corporationにより販売されているエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤のTetronic(商標)、Tetronic(商標)R、Pluronic(商標)及びPluronic(商標)Rシリーズが含まれる。
【0045】
Pluronic(商標)界面活性剤は、CMCにおいてミセル化しないが、しかし、代わりに、集合濃度範囲(aggregation concentration range,ACR)と呼ばれる広い濃度範囲にわたって集合が生ずる(BASF Performance Chemical−“Pluronic and Tetronic Surfactants Product Description Catalog,”BASF Corporation,1996)。上記カタログには、上記界面活性剤が飽和に達する濃度(上記カタログにおいて、「より、従来の臨界ミセル濃度に相当するであろう」と記載される)として、限界集合濃度(limiting aggregation concentration,LAC)が定義されている。本発明の目的において、集合濃度範囲の下限値は、疎水性モノマーの可溶化が高められ、そして適用される場合に、本発明の目的においてCMCとして用いられる特徴的な濃度である。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明における使用に好適な、Pluronic(商標)、Pluronic(商標)R、Tetronic(商標)及びTetronic(商標)R界面活性剤には、Pluronic(商標)L−61、Pluronic(商標)L−101、Pluronic(商標)P−103、Pluronic(商標)P−104、Pluronic(商標)P−105、Pluronic(商標)L−121、Pluronic(商標)F−127、Pluronic(商標)31R1、Pluronic(商標)25R1、Tetronic(商標)701、Tetronic(商標)901、Tetronic(商標)1101、Tetronic(商標)1301、Tetronic(商標)1501、Tetronic(商標)150R1、Tetronic(商標)130R1、Tetronic(商標)110R1、Tetronic(商標)50R1、Tetronic(商標)70R1、Tetronic(商標)90R1が含まれる。
【0048】
好適に用いられる疎水性界面活性剤の量は、乳化重合条件下で疎水性モノマーを含有するモノマー混合物の重合を促進するために有効な量である。重合混合物中の疎水性界面活性剤の量は、好ましくはモノマーに基づいて0.01重量%〜5重量%、さらに好ましくはモノマーに基づいて0.05重量%〜3重量%、最も好ましくはモノマーに基づいて0.1〜1.5重量%である。本発明のモノマーの重合の際に存在することができる、極度に疎水性である界面活性剤に加える他の界面活性剤の量は、好適にはモノマーに基づいて0重量%〜5重量%、好ましくはモノマーに基づいて0重量%〜3重量%、さらに好ましくはモノマーに基づいて0〜1.5重量%である。これらの疎水性界面活性剤の重量%は、乾燥界面活性剤、すなわち、水を含まない界面活性剤の重量に基づくものである。
【0049】
本発明のラテックスポリマーは、一般的に、コロイド形態、すなわち、水性分散液であり、好ましくは、重合開始剤及び所望により連鎖移動剤の存在下で、乳化重合により調製される。
【0050】
乳化重合を行う上で、重合開始剤(当該技術分野で、触媒とも称される)は、好ましくは、重合反応を開始するために十分な濃度で用いられる。重合開始剤の量は、充填されたモノマー重量に基づいて、好適には約0.01〜約3重量%であり、好ましくは約0.05〜2重量%であり、そして最も好ましくは約0.1〜約1重量%である。用いられる特定濃度は、当業者に周知であるように、反応を受ける特定のモノマー混合物及び用いられる特定の重合開始剤によって決まるものである。
【0051】
例示的な重合開始剤には、過酸化水素、過酢酸、t−ブチルヒドロペロキシド、ジ−t−ブチルヒドロペロキシド、ジベンゾイルペロキシド、ベンゾイルヒドロペロキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペロキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、過安息香酸、t−ブチルペルオキシピバレート、過酢酸t−ブチル、ジラウロイルペロキシド、ジカプリロイルペロキシド、ジステアロイルペロキシド、ジベンゾイルペロキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジデシルペルオキシジカーボネート、ジシコシル(dicicosyl)ペルオキシジカーボネート、過安息香酸ジ−t−ブチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過リン酸ナトリウム、及びアゾビスイソブチロニトリル、並びに他の公知の任意の重合開始剤が含まれる。また、過硫酸ナトリウム−ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド−メタ重亜硫酸ナトリウム、過酸化水素−アスコルビン酸、及び他の公知の酸化還元系等のレドックス重合開始剤系が有用である。さらに、当業者に公知のように、必要に応じて、ある金属イオンを、活性化剤として微量添加して、重合速度を改善することができる。
【0052】
用いられる場合に、連鎖移動剤は、重合反応の際、総モノマー含量に基づいて約0.01〜約5重量%、好ましくは約0.1〜約1重量%の濃度で好適に存在する。水不溶性及び水溶性の両方の連鎖移動剤を用いることができる。実質的に水溶性である連鎖移動剤の例には、ブチルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸イソオクチル、メルカプト酢酸、メルカプトエタノール、3−メルカプトール−1,2−プロパンジオール及び2−メチル−2−プロパンチオール等のアルキル及びアリールメルカプタンが含まれる。実質的に水に不溶性である連鎖移動剤の例には、例えば、t−ドデシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、テトラメルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトール、オクチルデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン及び3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルが含まれる。
【0053】
重合を行うために用いられる装置は、本発明に対して決定的なものではなく、例えば、連続攪拌槽型反応器、ピストン型(plug flow)反応器、湿式流動層反応器(wet bed fluidized reactor)及びループ型反応器等の反応器が含まれる。好適な装置の詳細は当業者に公知である。本発明の組成物を調製するために用いられる方法は決定的なものではなく、バッチ、半連続又は連続であることができる。本発明の方法はまた、本発明モノマーの重合の前及び/又はその際に、最終ラテックス粒子の内核となる事前に生成させたラテックスを、当該反応器に導入することにより行うことができる。
【0054】
さらに、全て又は一部のモノマー流を、重合領域に入る前にモノマー槽中で混合及び/又は乳化することができ、あるいは個別に反応器に添加することができる。乳化重合に関する手順及び条件に関する特定の詳細事項は、当業者に公知であり、好適な温度及び圧力を用いることができる。好ましくは、上記重合を、約25〜90℃の温度で行う。エチレンがコモノマーとして用いられる場合に、反応の少なくとも一部に対する反応器の圧力は、有利には約50〜約1,200psig又はそれ以上、さらに好ましくは約60〜約500psig、そして最も好ましくは約75〜約300psigである。
【0055】
本発明の方法はまた、重合の際に、別個にかつ明確に区分されたモノマー混合物を反応混合物に供給すること(当業者に「段階的供給」として知られる)、又は重合の際にモノマー添加率を変えること(当該技術分野において「パワーフィード」として知られる)により行うことができる。この種の操作を、第2のモノマーを含有するモノマー保持領域を準備し、そして次に、第1のモノマーを当該保持領域に導入し、一方で第1のモノマー及び第2のモノマーを含む保持領域からの流れを抜き取ることにより、好適に実施することができる。この方法の様式において、第1のモノマーは疎水性モノマーであることができ、そして第2のモノマーは重合に関与する残りのモノマーであることができる。
【0056】
この方法の様式において、「第2」のモノマー及び「第1」のモノマーは、重合しようとするいずれかのモノマーを指し、選択は便宜上の性質のものである。この種の操作に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許第3,804,881号明細書及び第4,039,500号明細書(当該教示内容を、参照により本明細書に組み入れる。)に開示されている。本発明の別の態様において、上記反応領域に入れる前に、上記モノマーを最初に乳化し、その後、反応器に供給することができる。残留モノマー濃度を下げることを、当業者に周知の方法により達成することができる。本発明の上述の態様を、互いに組み合わせて、又は独立して行うことができる。
【0057】
本発明のポリマーのガラス転移温度は、一般的に、−80℃〜90℃、好ましくは−70℃〜30℃の範囲にあり、当業者に公知のように、共重合に関与するコモノマーの適切な組合せにより達成することができる。ペイント用途に用いられる本発明のポリマーのTgは、一般的に約−15℃〜20℃、好ましくは約−10℃〜10℃、そしてさらに好ましくは約0℃〜5℃である。本発明のポリマーが粘着剤(「PSA」)用途に用いられる場合には、ポリマーのTgは、一般的に−60℃〜−5℃、好ましくは約−45℃〜−15℃、そしてさらに好ましくは約−40℃〜−30℃である。本明細書において用いられる用語「Tg」は、ガラス転移温度を意味する。ポリマーのガラス転移温度を測定するための技術は、当業者に公知である。一つの上記技術は、例えば、示差走査熱量計である。
【0058】
ポリマーのガラス転移温度を推定するために、特に有用な手段は、以下のフォックス(Fox)式により与えられる:
1/Tg(ポリマー)
1/Tg1+x2/Tg2+x3/Tg3+・・・+xn/Tgn
(式中、x1はコポリマー中の第1のモノマー重量分画であり、そしてTg1は第1のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度である。)。
本発明の好ましいモノマー及びコモノマーにおいて、これらのホモポリマーガラス転移温度は、酢酸ビニル=32℃、アクリル酸ブチル=−54℃、アクリル酸2−エチルヘキシル=−70℃、ネオデカン酸ビニル=−3℃、ネオノナン酸ビニル=60℃、ネオペンタン酸ビニル=86℃、2−エチルヘキサン酸ビニル=−50℃、プロピオン酸ビニル=10℃である。
【0059】
本発明のラテックスポリマーを含む反応生成物は、ラテックス重量に基づいて、一般的に約10〜90重量%、好ましくは約45〜75重量%、そしてさらに好ましくは約50〜70重量%の固形物含有率を有する。上記ラテックスポリマーの体積平均粒径は、約0.03〜2.0μm、好ましくは約0.1〜1.0μm、さらに好ましくは約0.3〜0.5μm、そしてさらに好ましくは約0.15〜0.30μmである。本発明のコポリマーは、ランダムコポリマーであることが好ましい。
【0060】
本発明のコポリマーの例には、少なくとも二種の高級分岐鎖ビニルエステルモノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ネオウンデカン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル)コポリマー、ポリ(ネオノナン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル)コポリマー、及びポリ(ネオノナン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル−co−ウンデカン酸ビニル)ターポリマーが含まれる。本発明のコポリマーの好ましい部類は、高級分岐鎖ビニルエステルを含む重合混合物を、重合された形態で含むコポリマー(例えば、重合混合物が、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、及びネオドデカン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも二種のモノマーを含むコポリマー)である。
【0061】
本発明のコポリマーの別の好ましい部類は、エチレンと、少なくとも一種(好ましくは少なくとも二種)の高級分岐鎖ビニルエステルとを含む重合混合物を、重合された形態で含むコポリマー(例えば、重合混合物が、エチレンと、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、及びネオドデカン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーとを含むコポリマー)である。上記コポリマーの例には、ポリ(エチレン−co−ネオノナン酸ビニル−co−ネオウンデカン酸ビニル)ターポリマー、ポリ(エチレン−co−ネオノナン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル)ターポリマー、ポリ(エチレン−co−ネオノナン酸ビニル−co−ネオドデカン酸ビニル)ターポリマー、ポリ(エチレン−co−ネオデカン酸ビニル−co−ネオウンデカン酸ビニル)ターポリマー、ポリ(エチレン−co−ネオデカン酸ビニル−co−ネオドデカン酸ビニル)ターポリマー、及びポリ(エチレン−co−ネオウンデカン酸ビニル−co−ネオドデカン酸ビニル)ターポリマーが含まれる。
【0062】
本発明により製造されるポリマーは、ラテックスにおいて疎水性が望まれる任意の用途において有用である。本発明のラテックス組成物は、例えば、保護又は装飾用コーティング、例えば、ラテックスペイント;接着剤、例えば、PSA;パーソナルケア用途、例えば、毛髪固定剤;及び工業用コーティング等を含む種々の最終用途を有することができる。他の潜在的な用途には、例えば、フィルム、コーキング及びシーラント、マスチック、インク、紙用コーティング、石工用添加剤、革用途、不織布、織物、原油及び中間流出油の流れを改善するための添加剤、金属用の耐食性プライマーコート、プラスチック、例えば、ポリプロピレン及びポリ塩化ビニル等の接着の難しい表面用の接着剤、並びにコンクリート、木材、タイル、レンガ及び金属用の防水コーティングが含まれる。
【実施例】
【0063】
以下の例は、具体的な説明の目的のために提供されるものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特に明記しない限り、重量はグラムで与えられ、%は重量%で与えられる。すべての量は材料自体を指す、すなわち、それらの固形物含有率に対する調整のない量である。
【0064】
本発明の特定の実施形態
次の例において、以下の材料を用いた。
【0065】
【表2】

【0066】
ラテックス調製法1
適切な量の一又は複数のモノマー及び界面活性剤を容器に入れ、可変速攪拌器を用いて当該内容物を混合することによりモノマー混合物を調製した。攪拌器を備えた1ガロンのガラス反応器に当初の充填量を添加した。重合用に望ましい温度を、温度自動調整水槽の温度設定点を調整することにより達成した。反応器の攪拌器速度を、200rpmに設定し、当初のモノマー充填量を反応器に添加した。一旦、当初のモノマー添加が完了したら、当初の重合開始剤充填量を反応器に添加し、続いて当初の還元剤充填量を添加した。当初充填物の重合による発熱の結果として、反応器温度が上昇した。
【0067】
当該発熱後、反応器内容物を、2分間にわたり追加のモノマーなしでさらに反応させた。次に、遅延モノマー、供給する触媒及び供給する還元剤の供給をすべて同時に開始した。すべての供給が終わったら、反応器内容物を、残留モノマーの減少を促進するために、30〜70分間にわたりさらに反応させた(後加熱した)。この後加熱段階の後、後触媒反応段階を開始した。後酸化剤及び後還元溶液を、残留モノマー濃度が望ましい限度内にすることを確実にするために一定時間にわたって供給した。後触媒反応が完了した後、上記反応器を30℃未満に冷却した。
【0068】
例1
ラテックス調製法1を用いて、ネオデカン酸ビニルホモポリマーラテックスを調製した。表2に、条件及び配合を与える。この例は、AerosolTR−70、陰イオン界面活性剤(製造者により、CMCが0.0005〜0.001重量%であるとリストアップされている)の使用を説明するものである。さらに、陰イオン界面活性剤、Rhodacal DS−4及びAerosolA−102(両方とも、約0.1重量%のCMC値を有することが、製造者によりリストアップされている)を用いた。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
後触媒反応の終わりにおいて、残留ネオデカン酸ビニルモノマー濃度は、6,144ppmであり、そして第2の後触媒反応を行って、残留ネオデカン酸ビニルモノマー濃度を2,500ppm未満とし、生成物を回収した。表3に、上述の方法により製造されたポリ(ネオデカン酸ビニル)ホモポリマーの一般特性をリストアップする。
【0075】
例2
Aerosol A−102の量を25グラムに増量し、2倍量の当初の酸化剤及び当初の還元剤を用いることを除いて、例1の手順を繰り返した。後触媒反応の終わりに、残留ネオデカン酸ビニルモノマー濃度は、2,076ppmであった。表3に、得られたラテックスの特性をリストアップする。
【0076】
【表8】

【0077】
ここで留意すべきは、粒径及び粒径分布のすべての実験測定値において、用いられた機器が、動的光散乱技術を介して0.0032μm〜6.54μm範囲にある粒径分布を測定するために設計されたLeeds & Northrup Microtrac UPA(超微細粒径分析器)であることである。
【0078】
例3
ラテックス調製法1を用い、表2に与えられる配合及び手順に従って、ネオデカン酸ビニルホモポリマーラテックスを調製した。この例は、Aerosol TR−70及びAerosol A−102の使用を具体的に説明するものである。さらに、製造業者によりリストアップされるように約1.3重量%の高いCMCを有するAerosol MA−80−Iを用いた。
【0079】
後触媒反応の終わりにおいて、残留ネオデカン酸ビニルモノマー濃度は、1014ppmであった。後触媒反応段階が完了した後、生成物を回収した。表4に、得られたポリ(ネオデカン酸ビニル)ホモポリマーの特性をリストアップする。
【0080】
例4
Aerosol TR−70の量を13グラムに増加することを除き、例3の手順を用いて、ネオデカン酸ビニルホモポリマーラテックスを調製した。後触媒反応の終わりに、残留ネオデカン酸ビニルモノマー濃度は1195ppmであった。表4に、得られたラテックスの特性を与える。
【0081】
【表9】

【0082】
例5
ラテックス調製法1を用い、表2に与えられる配合及び手順に従って、ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルのコポリマーを含むラテックスを調製した。この例は、ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニル、二つの極度に疎水性であるモノマーの混合物を重合させるために、Aerosol TR−70を使用することを説明するものである。さらに、Aerosol MA−80−I及びAerosol A−102を用いた。
【0083】
後触媒反応の終わりに、残留ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルモノマー濃度は、それぞれ、638ppm及び1,026ppmであった。表5に、ラテックスの物性をリストアップする。
【0084】
例6
Aerosol A−102の量が13グラムであることを除いて、例5の方法を繰り返した。後触媒反応の終わりに、残留ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルモノマー濃度は、それぞれ、906ppm及び898ppmであった。表5に、得られたラテックスの特性をリストアップする。
【0085】
例7
ラテックス調製法1を用い、表2に与えられる配合及び手順に従って、ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルのコポリマー、モノマーに基づいて1重量%のメタクリル酸、及びモノマーに基づいて1重量%のアクリル酸ヒドロキシエチルを含むラテックスを調製した。この例は、Aerosol TR−70の使用を具体的に説明するものである。さらに、Aerosol MA−80−I及びAerosol A−102を用いた。
【0086】
後触媒反応の終わりに、残留ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルモノマーモノマー濃度は、それぞれ、950ppm及び2,330ppmであった。表5に、得られたラテックスの特性を与える。
【0087】
【表10】

【0088】
例8
発熱後、反応器内容物を2分ではなく10〜12分間の時間にわたり追加モノマーなしで反応させることを除いて、そして当初の攪拌器速度を200〜250rpm範囲に設定することを除き、ラテックス調製法1を用い、表2に与えられる配合及び手順により、酢酸ビニル及びネオデカン酸ビニルのラテックスコポリマーを調製した。この例は、Pluronic L−61及びPluronic L−64(両方とも、それぞれ、0.022重量%及び0.139重量%のCMC値を有するエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマーである)の使用を具体的に説明するものである。さらに、Rhodacal DS−4及びCellosize QP−300もまた用いた。後触媒反応の終わりに、残留酢酸ビニルモノマー濃度は、366ppmであった。表6に、得られたラテックスの特性をリストアップする。
【0089】
【表11】

【0090】
例9−1
以下及び表4に与えられる製法及び手順に従って、エチレン、ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルのコポリマーを含むラテックスを調製した。この例は、エチレン及びビニル分岐鎖エステル、ネオノナン酸ビニル及びネオデカン酸ビニルのモノマー混合物を重合させるためのAerosol TR−70を使用することを具体的に説明するものである。さらに、Aerosol MA−80−I及びAerosol A−102を用いた。
【0091】
適切な量の各モノマーを容器に充填し、可変速攪拌器を用いて内容物を混合することにより、モノマー混合物を調製した。当初の充填量を、ペンシルベニア州、エリーのAutoclave Engineers Groupから入手したDISPERSI MAX(商標)中空軸、ステンレス鋼ダブルディスクタービンインペラを備える5ガロンのステンレス鋼反応器に添加した。重合に望ましい温度を、温度自動調整水槽における温度設定点を調整することにより達成した。望ましい設定値における反応器温度を用いて、当初のモノマーを反応器に投入し、続いて、エチレンを添加して望ましい圧力(この例では、250psig)とした。
【0092】
エチレン添加後、反応器内容物を300rpmで15分間にわたり完全に混ぜ合わせた。反応器のこの処理の後、当初の重合開始剤を反応器に添加し、続いて当初の還元剤を添加した。攪拌器を、初期の間及び追加の110分間にわたり300rpmで運転し続け、その後、速度を600rpmに上げた。当初の充填量の重合による発熱の結果として、反応器温度が上昇した。発熱後、エチレン弁を反応器の方向に開け、エチレン、モノマー、供給される触媒及び供給される還元剤の供給をすべて同時に開始させた。
【0093】
すべての供給を完了した後、残留モノマーの還元を促進するために、一定時間にわたり反応器内容物をさらに反応させた。この後加熱段階後、後触媒反応段階を開始させた。残留モノマー濃度が望ましい限度範囲内にあることを確実にするために、後酸化剤及び後還元剤溶液を、65〜66℃で120分にわたり供給した。後触媒反応段階を、同量の後酸化剤及び後還元剤を用いて一度繰り返し、次に、それらの半分の量を用いて再度繰り返した。この後触媒反応の終わりにおいて、残留ネオノナン酸エステルモノマー濃度は、3989ppmであり、残留ネオデカン酸エステルモノマー濃度は、4580ppmであった。
【0094】
反応器を、後触媒反応が完了した後、30℃未満に冷却し、当該生成物を15ガロンドラムに移した。次に、当該生成物を、表4に示す後酸化剤及び後還元剤の量の20%を用い、大気圧での最終後触媒反応段階用の5ガロンミルク缶に移した。この後触媒反応の終わりにおいて、残留ネオノナン酸エステルモノマー濃度は、905ppmであり、残留ネオデカン酸エステルモノマー濃度は、1612ppmであった。表7に、生成されたラテックスの特性をリストアップする。
【0095】
【表12】

【0096】
例9−2
エチレンを使用しないことを除いて、例9−1の手順を繰り返した。表8に、エチレン−ネオノナン酸ビニル−ネオデカン酸ビニルターポリマー(例9−1に由来)と、エチレンを含まない対応するネオノナン酸ビニル−ネオデカン酸ビニルコポリマー(例9−2に由来)とのガラス転移温度(Tg)、及び最小膜形成温度(MFFT)をリストアップする。
【0097】
【表13】

【0098】
表8中のTg及びMFFT値は、エチレン存在下における、分岐鎖エステル重合の際に、相当量のエチレンが導入されたことを示唆する。
【0099】
例10
表4に示す材料及び条件を用いて、そして次のさらなる相違点を伴って、例9−1の手順を繰り返した。攪拌器は工程全体を通して600rpmで運転した。望ましい設定値での反応器温度を伴い、反応器を−10psig減圧し、次に、エチレンを用いて10psig加圧した。5分の保持時間を用い、その後反応器を脱気した。上記反応器のこの条件の後、当初の液相モノマーを、上記反応器に添加し、続いて所望の圧力(250psig)レベルに到達するまで、上記反応器にエチレンを添加した。次に、可溶化段階を続けた、すなわち、エチレンを当初のモノマー充填物中に可溶化させた。
【0100】
結果として、反応器圧力が望ましい設定値未満に落ち、従って、圧力が所望のレベルに到達するまで、さらなるエチレンを反応器中に充填させた。この段階を、エチレンがそれ以上液相中に溶解しなくなるまで繰り返した。一旦、可溶化段階が完了すると、当初の重合開始剤を反応器に添加し、続いて当初の還元剤を添加した。当初の充填量の重合による発熱の結果、反応器温度が上昇した。発熱後、反応器内容物を、30分間にわたりさらなるモノマーなしでさらに反応させた。これに続き、エチレン弁を開け、所望の圧力レベル(250psig)に到達するまで、エチレンを反応器中に充填した。
【0101】
所望のレベルにおける反応器圧力を用いて、そしてエチレン供給シリンダー弁を開いて、液体モノマー、供給する触媒及び供給する還元剤の供給をすべて同時に開始した。すべての供給が完了した後、残留モノマー還元を促進するために、一定時間にわたり反応器内容物をさらに反応させた。後酸化剤及び後還元剤溶液を、69〜70℃で45分にわたり供給した。後触媒反応段階を、同量の後酸化剤及び後還元剤を用いて3回繰り返し、次に、170.0gの脱イオン水及び9.5gのt−ブチルヒドロペロキシドからなる後酸化剤溶液と、172.0gの脱イオン水及び8.8gのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、固形物からなる後還元剤溶液とを用いて、60分間にわたり再度繰り返した。
【0102】
この後触媒反応の終わりにおいて、残留酢酸ビニルモノマー濃度は、2801ppmであった。上記反応器を、後触媒反応が完了した後、30℃未満に冷却し、生成物を15ガロンドラムに移した。次に、生成物を、表4に示す後酸化剤及び後還元剤の量の60%を用いて、大気圧における最終後触媒反応段階用の5ガロンミルク缶に移した。この後触媒反応の終わりにおいて、残留酢酸ビニル濃度は729ppmであった。表9に、得られたラテックスの特性をリストアップする。
【0103】
例11
エチレン、酢酸ビニル及びネオデカン酸ビニルのコポリマーを含むラテックスを、Pluronic L−61をPluronic F−68に置換し、用いるPluronic F−68の量を64.2グラムとし、Rhodacal DS−4の量を256.2グラムに増量し、後触媒反応温度を70〜71℃にすることを除いて、例10の手順により製造した。第4の後触媒反応の終わりにおいて、残留酢酸ビニルモノマー濃度は、2722ppmである。最終後触媒反応の終わりにおいて、残留酢酸ビニル濃度は、971ppmであった。表9に、得られたラテックスの特性をリストアップする。
【0104】
【表14】

【0105】
例12
耐白化性は、感水性の試験である。3ミルのアプリケータを用いてレネット(Lennette)チャート上にフィルムを引き、16時間の間空気乾燥させた。次に、フィルムを50℃で8時間にわたりオーブン中に置き、次に取り出し、冷却させた。シリンジを用いて、一滴の脱イオン水をフィルム上に落とした。水滴がポリマー表面上に置かれた時から水滴が蒸発する時までの、耐白化性をモニターした。フィルム明澄度の損失を、水滴がポリマー表面上に置かれた後の黒の背景上のフィルムの色変化を観察することにより測定した。フィルムの残部と比較して、水滴が置かれたフィルムの部分の明澄度の変化が、耐白化性の測定値である。表10は、高度分岐鎖エステルホモポリマー及びコポリマーから製造されるフィルムが白化を示さず、水滴が蒸発した後も完全に透明のまま残ることを示している。
【0106】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のモノマーが、水100gにつき約0.02g以下の水への溶解度を有するモノマー組成物を、0.05重量%未満の臨界ミセル濃度を有する少なくとも一種の界面活性剤と接触させることを含む方法であって、前記接触が前記モノマー組成物の前記モノマーを重合させるために十分な乳化重合条件下で生ずる。
【請求項2】
前記モノマー組成物が、少なくとも一種の高級分岐鎖ビニルエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノマー組成物がエチレンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各モノマーが、水100gにつき約0.02g以下の水への溶解度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、約0.005重量%未満の臨界ミセル濃度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ビス−トリデシルスルホコハク酸ナトリウムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一種のモノマーが、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、ネオドデカン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、又はそれらの混合物からなる群から選択される高級分岐鎖ビニルエステルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)少なくとも一種のアルケン及び少なくとも一種の高級分岐鎖ビニルエステル、及び所望によりさらなるモノマー、
(ii)0.05重量%未満の臨界ミセル濃度を有する界面活性剤、並びに
(iii)水、
を含む重合混合物から調製されるアルケンコポリマーラテックス組成物。
【請求項9】
前記アルケンがエチレンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記コポリマーが、前記コポリマーの重量に基づいて約0〜約30重量%の重合エチレン単位を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記混合物が、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、ネオウンデカン酸ビニル、及びネオドデカン酸ビニルからなる群から選択される少なくとも二種のモノマーを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
重合形態における、少なくとも二種の高級分岐鎖ビニルエステルモノマーを含む重合混合物から本質的になるコポリマー。
【請求項13】
ポリ(ネオウンデカン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル)コポリマー若しくはポリ(ネオノナン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル−co−ウンデカン酸ビニル)ターポリマー、又はポリ(ネオノナン酸ビニル−co−ネオデカン酸ビニル)コポリマーである、請求項12に記載のコポリマー。

【公表番号】特表2008−517096(P2008−517096A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536815(P2007−536815)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036550
【国際公開番号】WO2006/044401
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】