説明

疎水性処理および上塗のための組成物

式(I)を有する1つまたは複数の混合された化合物を含む疎水性処理のための組成物


[式中、少なくとも1つのRは、C2a+1基であり、aは、自然数であり、ここで他のRは、SiX3−b基であることが可能であり、bは、0、1または2であり、Xは、アルコキシ、ヒドロキシルまたはハロゲノなどの加水分解可能基であり、Rは、低級アルキルなどの炭化水素基であり、Sは、水素原子、OH基、アルキル基であり、特にCHなどの低級基でありまたはOまたはSi基であり、R、R、RおよびRは、同一でありまたは異なっており、特に(CH−R、水素原子、234アルキル基またはOSiR基などのSi原子によって担持された上記の基の1つからなり、nは、自然数≧1であり、Si原子の総数は20を超えない。]。この組成物による処理方法。かくして得られた、ガラスに対する疎水性基体、および特に上塗としてのこの用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性の基体、特に建設工業または輸送車両のための「雨撥水性」上塗の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性機能は、水滴、特に雨の水滴が、例えば、十分に傾斜している上塗(glazing)上を、重力によりまたは移動中の自動車のフロントガラスの表面において空気の圧力の下に、上塗の表面を流れる容易さによって達成される。
【0003】
特許EP799873は、疎水性薬剤が、次式
C−(CF−(CHSi(OR)3−pR’
[式中、
mは、0から15の間の整数であり、
nは、1から5の間の整数であり、
p=0、1または2、
Rは、アルキル基であり、
R’は、アルキル基または水素原子である。]
のフッ素化アルコキシシランである、上塗疎水性処理組成物を記載している。
【0004】
この疎水性薬剤は、アルコールに対する水の比が3体積%から20体積%の間である少なくとも1つのアルコールおよび水ならびにブレンステッド酸および/または塩基から選択される少なくとも1つの触媒を含む水性溶剤の系中に置かれる。
【0005】
疎水性層は、シリカゾル/ゲルプライマー上に付着される。
【0006】
しかし、多数の、機械的ストレス(摩擦、ぬぐい操作)および気候に関連したストレス(塩、UV放射線、酸性雨などによる腐食)のために、この被覆は、自動車側窓について約3年のおよびフロントガラスについて約1年の耐久性を有し、この耐久性は、改良の余地がある。
【0007】
したがって、さらに耐久性のある疎水性層が、出願WO2005/084943に従って調製された。この疎水性層は、ここでは、活性化された状態において生じるケイ素を含む本質的に無機の組成物により表面に付着される。
この後者のものは、
適切な方法によって調製された前記表面から、または
0.1nmから40nmの間のRMS粗さを作り出す、ガラスの脱アルカリまたはフッ素プラズマによるシリカの処理などの、適切な処理にかけたときの前記表面から
得ることができる。
【0008】
この活性化状態にある表面はまた、静電的に荷電し得る。
【0009】
この疎水性の特性は、上記のフッ素化アルコキシシランによって付与される。しかし、耐久性は著しく改良されるものの、空気流の下で水滴を落とす上塗の能力によって示される疎水性の機能は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許EP799873
【特許文献2】出願WO2005/084943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明者らは、低い車両速度において水滴の自然な落下を可能とする疎水性被覆を開発することを、この機能が特に自動車製造業者によってますます必要とされていることから、目的とした。一方、本発明者らは、ぬぐい操作の減少により、したがって機械的ストレスの低下により与えられる、被覆の許容可能な耐久性、すなわち水滴の自然な落下速度の低下、を維持することに留意した。したがって、本発明者らは、本発明者らの目的を達成することを可能にする、疎水性薬剤の新規なファミリーを定義した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の主題は、次式
【0013】
【化1】

に対応する、1つまたは2つ以上の化合物を混合物として含む、疎水性処理組成物である
[式中、
少なくとも1つのRは、C2a+1基であり、aは、整数であり、
別のRは、SiX3−b基であることが可能であり、
bは、0、1または2であり、
Xは、アルコキシ、ヒドロキシルまたはハロなどの加水分解可能基であり、
は、低級アルキルなどの炭化水素基であり、
Sは、水素原子、OH基、アルキル基、特にCHなどの低級アルキル基、またはOSiR基であり、R、RおよびRは、同一でありまたは異なっており、特に(CH−R、水素原子、アルキル基またはOSiRなどの、Si原子によって担持されている上記の基の1つであり、
nは、1またはそれ以上の整数であり、
Si原子の総数は20を超えない。]。
【0014】
この化合物のSi原子の数は、好ましくは10を超えなく、特に好ましくは5を超えない。
【0015】
好ましくは、本発明の組成物は、
【0016】
【化2】









から選択される1つまたは複数の化合物を混合物として含む。
【0017】
本発明の組成物の他の有利な特徴によれば、
この組成物は、塩基性アルコール性溶液からなり、
この組成物は、式(I)の化合物の0.05重量%から5重量%を含む。
【0018】
本発明の別の主題は、上記の組成物を付着させることによって基体に疎水性を与えるまたは回復させることを目的とする方法である。
【0019】
第1の代替形態によれば、この方法は、
シランSiX(Xは、加水分解官能基である。)と、アルコールおよび水性溶剤ならびにブレンステッド酸および/または塩基から選択される少なくとも1つの触媒の系との混合物(SiXの含量は、組成物の0.001重量%から5重量%の間である。)から得られる下塗り組成物を調製すること、
疎水性層を施そうとする基体の少なくとも一部分を前記下塗り組成物で処理することからなる準備段階を含む。
【0020】
第2の代替形態によれば、この方法は、
ジシランXSiRSiX(Xは、加水分解官能基であり、Rは、直鎖の、分枝のまたは芳香族の、好ましくは、2つのケイ素原子間の結合を形成する炭素原子の数が1から4の間である直鎖のアルキル鎖である。)と、アルコールおよび水性溶剤ならびにブレンステッド酸および/または塩基から選択される少なくとも1つの触媒の系との混合物(XSiRSiXの含量は、組成物の0.001重量%から5重量%の間である。)から得られる下塗り組成物を調製すること、
疎水性層を施そうとする基体の少なくとも一部分を前記下塗り組成物で処理することからなる準備段階を含む。
【0021】
本発明の方法の第3の代替形態によれば、上に定義された組成物は、ケイ素分を含む本質的に無機の下層上に付着され、この本質的に無機の下層の表面は、活性化状態にある。
【0022】
この活性化状態は、本出願の導入部分において、出願WO2005/084943に関連して定義されている。
【0023】
一方においてこの本方法の第1および第2の代替形態および他方において第3の代替形態は、相互排除的なものではなく、結合して実施し得るものであることが明示される。
【0024】
本発明の他の主題は、
本発明の組成物から形成された外層を有する疎水性ガラス基体、
地上、海または空の輸送機関に対する上塗、建物に対する、バス待合所、ビルボード、ランプなどの街路備品に対する、家庭電化製品、特に冷蔵庫、冷凍庫、オーブン、ガラス−セラミック加熱器の棚または扉に対する、家具、棚、シャワー室、水槽、照明器具、テレビスクリーン、コンピュータまたはその他眼鏡などの室内備品に対する、ボトル、フラスコまたはジャーなどの包装に対する上塗としてのこのような基体の利用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】開環前に還元されたパーフルオロアルキル化環のメチル基のNMRを表す。
【図2】水酸化カリウム媒体中の開環後の、還元されたパーフルオロアルキル化環のメチル基のNMRを表す。
【図3】環に対して水酸化カリウム2当量の場合のクロマトグラムを表す。
【図4】添加された水酸化カリウムの当量数の関数としての、時間に対する3種の存在物の変化を表す。
【0026】
本発明を次の実施例によって例示する。
【実施例1】
【0027】
式(I)の化合物の合成
a)この合成の第1段階は、無水のおよび溶剤のない媒体中の、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンのパーフルオロアルキル化からなる。テトラビニルシリコーン分子1.5mlすなわち4.4ミリモルを丸底フラスコに入れ、次いで2時間間隔で分割して、ヨードパーフルオロヘキサンCF(CFI(RfI)7.55ml(すなわち、8当量、35ミリモル)を、分割毎にAIBN約50mgと共に添加する。合わせた混合物を終夜窒素雰囲気下100℃で還流させる。粗製のオレンジイエロー色の油状物が得られる。この反応の間に、このRfIは、二量化して、生成物として二量体CF(CF10CFを形成することができるまたはプロトン化してRfHを形成することができる。これらの2次生成物は、引き続いてベーンポンプ上で反応生成物を乾燥することによって除かれる。
【0028】
精製後に、生成物7.9gが得られ、すなわち得られた収率84%。プロトンNMRにより、得られた生成物の純度を明確に確認する。
【0029】
【化3】

【0030】
ヨウ素原子のラジカル還元が、化学量論的量のトリブチル錫水素化物の存在下において実施され、トルエン中のAIBNによって触媒され、次いで生成物をシリカ/KFクロマトグラフィーカラムを通過させることによって精製される。
【0031】
トリブチル錫水素化物は、周囲の湿気に対して非常に反応性であるので、この環の還元は、不活性雰囲気下で実施する必要がある。
【0032】
新たに蒸留されたまたはアルミナカラムを通したトルエン10mlおよびパーフルオロアルキル化2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン7.8gを丸底フラスコに入れ、AIBN70mgも添加した。周囲温度において、窒素下で30分間撹拌した後に、トリブチル錫水素化物3.95ml(すなわち、ヨウ素当たり1当量)をスリーブ形隔壁ストッパーを通して添加する。次いで、この丸底フラスコを、終夜撹拌しながら温度70℃において加熱する。
【0033】
【化4】

【0034】
得られた混合物は、2相の媒体である。これらの2相のそれぞれのNMRスペクトルは、高密度相だけが所望の生成物を含み、一方低密度相は、トルエンとの反応で得られる本質的に錫誘導体を含むことを推定することを可能にする。
【0035】
したがって、第1のステップにおいて、これら2つの相は静置することによって分離される。
【0036】
この生成物は、シリカ(45g)90重量%からなりおよびフッ素化カリウム(KF)(5g)10重量%からなり、クロマトグラフィーカラムを通過させることによって精製される。このカラムを先ずエーテル200mlを2回用いて状態を整え、次いで、エーテルに溶解された生成物は、今度はクロマトグラフィーカラムに通される。
【0037】
BuSnIが、KFとカラム上で反応してBuSnFが得られ、BuSnFは、シリカと迅速に反応する。エーテル中の精製された生成物は、回収され、次いでベーンポンプ上で乾燥される。
【0038】
【化5】

【0039】
精製後に、還元されたパーフルオロ化環4.9gが得られ、還元の収率は82%である。パーフルオロ化の全体の収率は、69%である。
【0040】
得られた粗製生成物は、極く僅かに黄色の油状物であり、これは周囲温度において非常に迅速に結晶化する。
【0041】
この生成物は、さらには通常の有機溶剤の殆どに不溶性である。したがって、H NMRスペクトルは重水素化THF中で記録することができ、重水素化THFは、この反応を追跡するために本発明者らの生成物に対して非常に良好な溶剤である。
【0042】
b)Si−O−Si結合は、塩基性媒体中で解裂するので、線状フッ素化シリコーン化合物を得るために、上に得られた環は、アルコール性媒体中水酸化カリウムの存在により開環される。これは、この環は、エタノールに不溶であるが一旦開環されれば、この溶剤に溶解するからである。この反応は、40℃における加熱の間に、水酸化カリウムが溶解するのに必要な水の最小量を添加することによって実施される。
【0043】
【化6】

【0044】
反応媒体中に入れるべき水酸化カリウムの量の最適化が検討された。
【0045】
添付の図1および図2は、「還元されたパーフルオロアルキル化環」として知られているパーフルオロアルキル化2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンのメチル基の、水酸化カリウム媒体中のそれぞれ開環前および開環後のプロトンNMR分析を表す。
【0046】
図2は、1.02ppmおよび0.80ppmにおけるシグナルの2つのタイプを表し、これらはそれぞれ−O−Si−O−鎖の中央のおよび−O−Si−OH−鎖の末端のメチルに特定される。
【0047】
ケイ素−29NMRにより、環が開環されたことを明確に確認される。
【0048】
立体障害クロマトグラフィーを検討することにより、異なる大きさの断片得るために、媒体中に入れるべき水酸化カリウムの量を最適化することが可能になる。
【0049】
立体障害クロマトグラフィーは、元来ポリマーの研究に使用されている。我々は、ここで小さいシリコーンポリマーを研究していると推測する。
【0050】
クロマトグラフィーの通常の方法とは違って、異なる高分子の分離を可能にする立体障害クロマトグラフィーに関与する物理的現象は、支持体との化学的親和性にではなく、分子の大きさ、より正確には分子の流体力学的体積に基づいている。これは、流出される分子が多孔性ビーズからなるカラム中に浸透する場合もしない場合もあり、したがって、最も大きい分子がより速く流出するのに対して、最も小さい分子が保持されるからである。このカラムの末端において、検出器が、所与の時間にカラムから出てくる高分子の数を積算することができる。
【0051】
使用されるカラムは、G2000HXLカラムであり、検出器は、カラム中に浸透するもの(THF+反応媒体)と流出液(THF)との間の指数の差を計算する屈折率測定器である。使用される溶剤は、流速0.8ml/分におけるTHFであり、カラムの温度は、25℃である。
【0052】
パーフルオロ化2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンの塩基性加水分解は、上に指定した条件下で実施される、すなわち濃厚な水酸化カリウム溶液を含むアルコール中において40℃で撹拌しながらである。
【0053】
考慮されている加水分解時間は、加水分解の開始とTHF中の希釈との間である。
【0054】
パーフルオロ化2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンの濃度を、この混合物の全体に対して3重量%に設定し、水酸化カリウムの当量数(フッ素化環に対するモル当量)を変化させた。
2当量
5当量
10当量
【0055】
クロマトグラムは、15分間から4時間の範囲の加水分解時間について記録した。水酸化カリウム2モル当量による開環に対するクロマトグラムを図3に表す。水酸化カリウム5当量および10当量によるこれらの開環を同様に記録した。
【0056】
図3から、加水分解の15分後に、他の加水分解時間においては検出されない1つのピークが7.8分において見られることが注目される。これは、閉鎖されたパーフルオロ化環に対応し、この環は加水分解1時間後には開環する。
【0057】
さらに、7.9分、8.30分および9.0分において3つの主ピークが観察され、これらの存在する際の変化を、添加された水酸化カリウムの量の関数として時間に対してプロットする(添付の図4)。
【0058】
これまで述べてきたことから、最も短い滞留時間を有する存在は、最も濃厚なものである。これは、7.9分における存在は4個のケイ素原子の状態で含まれる断片に対応し、8.3分および9.0分における存在は3個または2個のケイ素原子を表す線状断片に対応することを想定させる。さらに長い、またはさらに短い滞留時間を有する存在は、他のものに比べて無視し得る。
【0059】
【表1】

【0060】
図4から次の結論が引き出され得る。
水酸化カリウム2当量だけでは、加水分解15分では環は開環されず、加水分解には少なくとも1時間待つことが必要である。
水酸化カリウム2当量の場合、主流をなすのは4個のケイ素原子を含む断片であり、ところが5当量の場合は主流は4個のケイ素原子を含む断片であり、10当量の場合は主流は2個のケイ素原子を含む断片である。
水酸化カリウム2当量の場合、断片のそれぞれの量は、たとえ縮合が反応の2時間30分後に開始することが観察されても、時間に対して事実上一定に留まる。
水酸化カリウム5当量の場合、縮合および断片化は、同時に起こる。これは、4個のケイ素原子を含む断片が豊富に残留するためには媒体が塩基性過ぎるが、加水分解時間の増加は、平衡して、3個のケイ素原子を含む支配的な線状存在物を与える傾向にある縮合を引き起こすからである。
【0061】
このように、我々は、パーフルオロ化環の開環は、環に対する水酸化カリウムの可変量により水酸化カリウム/エタノール(またはイソプロパノール)媒体中で単純におよび迅速に実施し得ることを示した。アルコール性水酸化カリウムの量を制御することによって、所定の大きさ(2,3または4ケイ素原子)の線状フッ素化シリコーンポリマーを得ることが可能であることが分かる。
【実施例2】
【0062】
式(I)の化合物の他の合成
キューブと呼ばれる以下に示すオクタビニル分子の二重結合は、実施例1におけると同様にパーフルオロアルキル化される。
【0063】
オクタビニル分子は、周囲温度においておよび周囲圧力において固体形態(粉体)にある。この分子は、ヨードパーフルオロヘキサンに不溶であるので、パーフルオロアルキル化の反応に対する溶剤を見出すことが必要である。
【0064】
いくつかの試みの後に、オクタビニル分子は、アセトン、トルエン、エーテルおよびTHF中だけに加熱状態で可溶であり、アルコール、アルカンおよびアセトニトリルには不溶であることが分かった。実際は、パーフルオロアルキル化反応は、かなり高い温度(100℃)において実施されるが、これらの溶剤(110℃の沸点を有するトルエンを除いて)ほぼ50℃の沸点を有する。したがって、中間の沸点70℃を示すTHFを溶剤として選択した。
【0065】
THF20mlに溶解させたオクタビニル分子2.5gを、丸底フラスコに入れ、次いでAIBN100gを含むRfI(16当量)13.7mlを3回に分けて添加する。この反応混合物を、終夜窒素雰囲気下に70℃にもっていく。
【0066】
【化7】

【0067】
終夜反応させた後に、丸底フラスコ中に2つの相の形成が観察され、1つは、THF(これはベーンポンプにより容易に除去することができる。)を含む液体であり、他方はTHFに不溶ではるかに粘稠である。したがって、この存在物が形成される間に、反応媒体のおよび形成される相の相分離が生じていた。さらに、この粘稠な相は、加熱状態であまり可溶性ではない。
【0068】
2つの相を分液濾斗を使用して分離し、粘稠な相をフッ素化THFで、液体相をエタノールで溶解した。
【0069】
ベーンポンプでこれらの2つの相のそれぞれを乾燥した後に、粘稠相11.43gおよび液体相5.89gが得られる。
【0070】
2つの異なる生成物に対応する2つの相を得てから、この2つの相を個別に還元した。これらの還元は、パーフルオロアルキル化環(実施例1)に関して同様に、すなわち70℃で終夜および窒素雰囲気下でトルエン中において実施された。
【0071】
粘稠な相から生成物11.4gを、次いで、トルエン20mlを丸底フラスコに入れた。先ず空気を排除し、撹拌しながらこの反応混合物を加熱して、生成物を少なくとも部分的に溶解した。続いてこれにAIBNの触媒量を添加した。丸底フラスコを30分間撹拌し、最後に、トリブチル錫水素化物5.8ml(すなわち、8当量)をスリーブ形隔壁ストッパーを通じて入れる。
【0072】
次いで、この反応混合物を、終夜窒素雰囲気下で70℃にし、得られたこの生成物をシリカ:KFカラムを通過させることによって精製する。
【0073】
精製された生成物4.3gが得られ、還元の収率は50%であり、総反応の収率は34%である。
【0074】
これに対し、他の液相は、還元に対して不活性のままであり、Si−CH−CH−C13に対するプロトンNMRシグナルは何も示さない。本発明者らは、この液相は、溶剤(THF)とRfIとの付加生成物であると考え、これは、AIBNなどのラジカル開始剤の存在下で開環することができる。このプロトンおよびフッ素NMRスペクトルにより、この仮説を明確に確認する。
【0075】
【化8】

【0076】
パーフルオロ化オクタビニル分子のH NMRスペクトルは、内部標準:パラキシレンを含むクロロホルム毛細管を使用して、フッ素化THF中で記録した。第1の段階の終点において得られる粘稠な相は、実際にパーフルオロアルキル化オクタビニル分子に対応することが確認される。
【0077】
パーフルオロ化の総収率は、34%である。
【0078】
イソプロパノールの沸点は、エタノールの沸点よりも高く、反応媒体を60℃に加熱することができるので、得られたキュービック分子を開環するために、我々は、溶剤としてイソプロパノールとともに水酸化カリウムを使用した。
【0079】
同様に、一旦開環すると、パーフルオロ化キューブは、一見この溶解は困難に見えるとしても溶解する。
【0080】
さらに我々は、立体障害クロマトグラフィーによってこの開環を追跡しようとしたが、得られたクロマトグラムは複雑であることが分かった。これは、このキューブが、同じケイ素数を有するが異なる配置を有する多数の部分に断片化し得るからである。パーフルオロ化環(実施例1)について実施された検討から、媒体中の水酸化カリウムが多いほど、この分子はより多く断片化すると考えられる。
【実施例3】
【0081】
本発明による化合物は、EP799873を参照してこの出願の導入部分において記載された第1世代疎水性被覆と同様な条件下で接合される。
【0082】
先ず、ソーダ石灰シリカフロートガラス表面を酸化セリウムで磨く。これは、微視的CeO粒子を主として含む研磨粉でガラスを磨くことである。これを次いで水で機械的に洗浄し、最後に脱イオン水で洗浄して、乾燥する。
【0083】
続いて下塗りを、イソプロパノール90重量%および0.3MHCl水溶液10重量%の混合物(以下、「加水分解混合物」と呼ぶ混合物)中のテトラエトキシシラン(TEOS)0.3重量%の溶液により実施する。この溶液を、この調製(加水分解時間)から保持時間15分後に周囲温度において付着させる。平均厚さ5nmを有するSiOの層が、かくしてガラスの表面に形成される。
【0084】
次いで、いま定義された加水分解混合物中の、15分間から1時間の間の加水分解時間による種々の疎水性薬剤の異なる重量濃度を付着させた。
【0085】
水平位置にある基体上の平衡にある、脱イオン水の1滴の接触角を測定する。
【0086】
さらに、ヒステリシスと呼ばれる、前進接触角および後退接触角をこれらの差とともに測定する。前進接触角および後退接触角は、1滴が離れる前の傾斜面上の1滴の接触角の限界である。
【0087】
前進接触角は、水滴の成長(体積の増加)の間に測定され、後退接触角は、この減退(この体積の減少)の間に測定される。成長および減退は、注射器を使用して生じさせる。
【0088】
また45°および90°の上塗の傾斜における水滴の脱離体積も測定する。脱離体積は、水平に対して傾斜した基体から、滴がそれから自然に脱離を始める体積に対応する。この体積は、フロントガラス上の雨水の滴が空気の流れの影響下に脱離する、車両の最低速度に関係する。
【0089】
先の実施例において得られた化合物の層を付着させる。
【0090】
これらは、環(実施例1による)またはキューブ(実施例2による)と呼ばれる。
【0091】
比較のために、既知の技術の疎水性層を表す化合物F17−(CH−Si(OEt)(以下Xと呼ぶ)を評価した。
【0092】
a)パーフルオロ化環
立体障害クロマトグラフィーにおいて得られた結果から、パーフルオロ化環は、異なる量の水酸化カリウムに対してエタノール中で開環する。したがって、付着は水酸化カリウム(アルコール中)の次の量および加水分解時間に対して実施した。
2当量および加水分解1時間
5当量および加水分解15分間
10当量および加水分解15分間
【0093】
この結果を以下の表に記録する。疎水性薬剤の濃度は、重量百分率である。
【0094】
【表2】

【0095】
水酸化カリウム10当量を含む被覆のための溶液は、イソプロパノール中で調製されたことを指摘されるべきである。これは、エタノール中において、この断片はガラスに十分に接合させるには不十分な溶解性だからである。
【0096】
さらに、この溶液を水酸化カリウムに対してHClの0.5当量で中和した。これは、中和しないと、この反応媒体は塩基性過ぎ、それ故にガラスの表面における付着反応が不利であるからである。
【0097】
上の表から、基体は、標準パーフルオロシランにより得られたものよりも満足すべき水との接触角および小さい脱離体積示すことが観察される。最良の結果は、水酸化カリウムの当量数が10に等しい場合に得られ、これはフッ素化二量化シリコーンに対応する。
【0098】
b)パーフルオロ化キューブ
パーフルオロアルキル化オクタビニル分子(キューブ)は、15分間水酸化カリウムの異なる量で60℃においてイソプロパノール中で開環された後に、接合された。
2当量
5当量
7当量
10当量
【0099】
キューブ中の歪は、環中の歪より大きいので、キューブを開環するためには水酸化カリウムの2当量により15分間だけ必要とされる。
【0100】
異なる量の水酸化カリウムの存在下でパーフルオロ化オクタビニル分子により生成された被覆の特徴を以下の表にまとめる。
【0101】
【表3】

【0102】
水との接触角は、約110°の値で以って、満足である。
【0103】
脱離体積は、溶液中入れられる水酸化カリウムの量に反比例して変わる。媒体中キューブがそれ程強くない塩基性である場合には、断片が非常に異なる大きさを有する可能性がある。したがって、分子が接合されると、被覆はある程度のむらを示すことがあり、大きい脱離体積となる。しかし、この脱離体積は、既知の技術の脱離体積より小さく留まる。最良の結果は、水酸化カリウムの当量数が10に等しい場合に得られ、これは多分2または3個の単位のシリコーンに対応する。
【0104】
【化9】

【実施例4】
【0105】
疎水性層をシリカ下層に付着させ、このシリカ層の表面は、出願WO2005/084943に関連してこの出願の前文において述べられた活性化状態にある。
【0106】
これは、ソーダ石灰シリカフロートガラス上に、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)によって付着されたシリカ層であり、この上に5nmのRMS粗さが、疎水性層の付着の長くとも約1時間前に、好ましくは長くとも15分間前に、特に好ましくは5分間前に新しく作り出された。
【0107】
RMS粗さは、酸素と一緒に、Cなどのフッ素含有ガスによってプラズマ処理にかけることによりシリカ下層上に作り出される。
【0108】
溶液は、平らな表面上の付着に関してフッ素化キューブの、またはフッ素化環の同様な溶液により、研磨または下塗りなしに、しごき塗りによって付着させる(実施例3)。
【0109】
3通りの付着を実施し、これらの特徴を以下の表にまとめる。
1:イソプロパノール:HCl(90:10)混合物中の3%におけるX+加水分解15分間
2:イソプロパノール中の水酸化カリウム2当量を含む3%におけるパーフルオロ化環+40℃における加水分解1時間
3:イソプロパノール中の水酸化カリウム5当量を含む3%におけるパーフルオロ化キューブ+60℃における加水分解15分間
【0110】
【表4】

【0111】
次の観察をすることができる。
キューブの分子は、この大きさにより、高度の立体障害を示す。これは、開環すると、環状分子または対照Xよりも接合され難いためである。
【0112】
このキューブおよびこの環は、これらが接合された場合、粗さを平らにする。したがって、これらの脱離体積は、この大きさのために凹みをそれ程よく充填できないXの脱離体積より良好である。第1の目的は達成される。
【0113】
最後に、この環の水との接触角は、優れていることを指摘することができる。
【0114】
フロントガラス上の水滴の自然な落下は、本発明によるシリコーン被覆に関して、既知の技術のフッ素化シラン被覆に関するよりも低い速度で生じる。したがって、ぬぐい操作は、頻度が、ぬぐい操作から生じる機械的ストレス同様に、低い。このことは、被覆の改良された耐久性に対して好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化10】

[式中、
少なくとも1つのRは、C2a+1基であり、aは、整数であり、
他のRは、SiX3−b基であることが可能であり、
bは、0、1または2であり、
Xは、アルコキシ、ヒドロキシルまたはハロなどの加水分解基であり、
は、低級アルキルなどの炭化水素基であり、
Sは、水素原子、OH基、アルキル基、特にCHなどの低級アルキル基、またはOSiR基であり、R、RおよびRは、同一または異なって、特に(CH−R、水素原子、アルキル基、またはOSiRなどの、Si原子によって担特される上記の基の1つであり、
nは、整数≧1であり、
Si原子の総数は20を超えない。]
に対応する、混合物として、1つまたは複数の化合物を含む疎水性処理組成物。
【請求項2】
Si原子の数が10を超えないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Si原子の数が5を超えないことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、混合物として、
【化11】









から選択される1つまたは複数の化合物を含むことを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
塩基性アルコール性溶液からなる、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が式(I)の化合物を0.05重量%から5重量%含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6の一項に記載の組成物の付着によって、基体の疎水性を与えるまたは回復することを目的とする方法。
【請求項8】
シランSiX(Xは加水分解性官能基である。)と、アルコールおよび水性溶剤ならびにブレンステッド酸および/または塩基から選択される少なくとも1つの触媒の系との混合物(SiXの含量は組成物の0.001重量%から5重量%の間である。)から得られる下塗り組成物を調製すること、
疎水性層を施そうとする基体の少なくとも一部分を前記下塗り組成物で処理すること
である準備段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ジシランXSiRSiX(Xは加水分解性官能基であり、Rは、直鎖の、分枝のまたは芳香族の、好ましくは2つのケイ素原子間の結合を形成する炭素原子の数が1から4の間である直鎖のアルキル鎖である。)と、アルコールおよび水性溶剤ならびにブレンステッド酸および/または塩基から選択される少なくとも1つの触媒の系との混合物(XSiRSiXの含量は、組成物の0.001重量%から5重量%の間である。)から得られる下塗り組成物を調製すること、
疎水性層を施そうとする基体の少なくとも一部分を前記下塗り組成物で処理すること
である準備段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から6の一項に記載の組成物が、表面が活性化状態にある、ケイ素分を含む本質的に無機の下層上に付着される、請求項7から9の一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から6の一項に記載の組成物から形成される外層を有する疎水性ガラス基体。
【請求項12】
地上、海または空の輸送機関に対する上塗、建物に対する、バス待合所、ビルボード、ランプなどの街路備品に対する、家庭電化製品、特に冷蔵庫、冷凍庫、オーブン、ガラス−セラミック加熱器の棚または扉に対する、家具、棚、シャワー室、水槽、照明器具、テレビスクリーン、コンピュータまたはその他眼鏡などの室内備品に対する、ボトル、フラスコまたはジャーなどの包装に対する上塗としての、請求項11に記載のガラス基体の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−542888(P2009−542888A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518934(P2009−518934)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051625
【国際公開番号】WO2008/007011
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】