説明

疎水性化合物及びポリアミノ酸複合体を含む組成物

疎水性化合物とポリマー複合体を含む種々の組成物が係る。該組成物は、ポリマー複合体、第1の疎水性薬物、及び第2の疎水性薬物を含む。該組成物のポリマー複合体は作用因子、例えば、造影剤、標的化剤、安定化剤及び/又は薬物を複合化できる。さらに、該ポリマー複合体は、前記作用因子を分子レベルに分散することによって該作用因子を水性系に効果的に可溶化し、従って該作用因子の機能性及び/又はバイオアベイラビリティを高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮出願第60/916,903号(名称「疎水性化合物及びポリアミノ酸複合体を含む組成物」、2007年5月9日出願、その内容すべては参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
ここに主として開示されるものは、疎水性化合物及びポリアミノ酸複合体を含む組成物である。ここに記載される組成物は、種々の薬物、生体分子、及び造影剤の送達の用途に有用である。さらに、対象の治療、診断、及び/又は造影のためにここに記載される組成物を使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
種々の系が、薬物、生体分子、及び造影剤の送達に使用されている。例えば、そのような系には、カプセル、リポソーム、ミクロ粒子、ナノ粒子、及びポリマーがある。
【0004】
種々のポリエステル系の生物分解性系が研究されその特徴を調べられている。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、及びそれらの共重合体、ポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)は、薬物送達の用途に対する設計及び性能についてより特徴が調べられている生体材料のいくつかである。Uhrich,K.E.;Cannizzaro,S.M.;Langer,R.S.及びShakeshelf,K.M.“Polymeric Systems for Controlled Drug Release,”Chem.Rev.1999,99,3181−3198及びPanyam J.Labhasetwar V.“Biodegradable nanoparticles for drug and gene delivery to cells and tissues,”Adv.Drug.Deliv.Rev.2003,55,329−47参照。また、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPMA)も薬物送達用ポリマーの調製に広く使用されている。ポリオルトエステルをベースとする生物分解性系も研究されている。Heller,J.;Barr,J.:Ng,S.Y.;Abdellauoi,K.S.及びGurny,R.“Poly(ortho esters):synthesis,characterization,properties and uses.”Adv.Drug Del.Rev.2002,54,1015−1039参照。ポリ無水物系も研究されている。そのようなポリ無水物は、典型的に生体適合性であり、また代謝産物として生体から排除される相対的に無毒の化合物にインビボで分解され得る。Kumar,N.;Langer,R.S.及びDomb,A.J.“Polyanhydrides:an overview,”Adv.Drug Del.Rev.2002,54,889−91参照。
【0005】
アミノ酸系ポリマーも可能性のある新規な生体材料源として考えられている。良好な生体適合性を有するポリアミノ酸が、低分子量の化合物を送達するため研究されている。比較的少ない数のポリグルタミン酸及び共重合体が、薬物送達の候補材料として特定されている。Bourke,S.L.及びKohn,J.“Polymers derived from the amino acid L−tyrosine:polycarbonates,polyarylates and copolymers with poly(ethylene glycol).”Adv.Drug Del.Rev.2003,55,447−466参照。
【0006】
投与された疎水性の抗癌剤並びに治療蛋白質及びポリペプチドは、しばしばバイオアベイラビリティが低いという問題を生じる。そのような低いバイオアベイラビリティの原因は、疎水性薬物と水溶液との二相性溶液が不適合であるということ及び/又はそれらの分子が酵素的分解によって血液循環から速やかに除去されるということである。投与される蛋白質及びその他の小分子薬剤の効力を高める手法の一つは、投与される薬剤にポリマー例えばポリエチレングリコール(PEG)を結合させることを伴うものである。そのようなポリマーはインビボで酵素的分解に対して保護をもたらすことができる。そのような「PEG誘導体化」はしばしば循環時間を向上させ、従って投与される薬剤のバイオアベイラビリティを向上させる。
【0007】
しかしPEGはある点において欠点を有している。例えば、PEGは線状ポリマーであるため、枝分れポリマーに比べてPEGによりもたらされる立体保護は限られている。PEGの別の欠点は、それが一般的に2つの末端において誘導体化を受けやすいということである。このことは、PEGに結合し得る他の機能的分子(例えば特定の組織への蛋白質又は薬物の送達に有用なもの)の数を制限する。
【0008】
ポリグルタミン酸(PGA)は、疎水性抗癌剤を可溶化するため選択できる別のポリマーである。PGAに結合された多くの抗癌剤が報告されている。Chun Li.“Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates.”Adv.Drug Del.Rev.,2002,54,695−713参照。しかし、現在FDAによって承認されているものはない。
【0009】
パクリタキセル(太平洋イチイの樹皮から抽出された)は、卵巣癌及び乳癌の治療に対してFDAが承認した薬物である。Wani他,“Plant antitumor agents.VI.The isolation and structure of taxol,a novel antileukemic and antitumor agent from Taxus brevifolia,”J.Am.Chem.Soc.1971,93,2325−7。しかし、他の抗癌剤と同様、パクリタキセルは、その疎水性及び水溶液不溶性のため、バイオアベイラビリティが低いという問題がある。パクリタキセルを可溶化する方法の一つは、それをクレモホールELと無水エタノールとの混合物(1:1、v/v)中に製剤化するということである。Sparreboom他,“Cremophor EL−mediated Alteration of Paclitaxel Distribution in Human Blood:Clinical Pharmacokinetic Implications,”Cancer Research,1999,59,1454−1457。この製剤はTaxol(登録商標)(Bristol−Myers Squibb)として現在商品化されている。パクリタキセルを可溶化する別の方法は、高剪断のホモジナイズを使用した乳化によるものである。Constantinides他,“Formulation Development and Antitumor Activity of a Filter−Sterilizable Emulsion of Paclitaxel,”Pharmaceutical Research 2000,17,175−182。最近、ポリマー−パクリタキセル複合体が、いくつかの臨床試験に進んでいる。Ruth Duncan“The Dawning era of polymer therapeutics,”Nature Reviews Drug Discovery 2003,2,374−360。さらに最近、パクリタキセルは、ヒトアルブミン蛋白質を用いてナノ粒子に製剤化され、臨床研究に使用されている。Damascelli他,“Intraarterial chemotherapy with polyoxyethylated castor oil free paclitaxel,incorporated in albumin nanoparticles(ABI−007):Phase II study of patients with squamous cell carcinoma of the head and neck and anal canal:preliminary evidence of clinical activity.”Cancer,2001,92,2592−602、及びIbrahim他,“Phase I and pharmacokinetic study of ABI−007,a Cremophor−free,protein−stabilized,nanoparticle formulation of paclitaxel,”Clin.Cancer Res.2002,8,1038−44。この製剤は現在Abraxane(登録商標)(American Pharmaceutical Partners,Inc.)として商品化されている。
【0010】
磁気共鳴映像法(MRI)は病気の診断及び病期特定において重要な手段である。というのもそれが非侵襲的かつ非放射線的であるためである。Bulte他,“Magnetic resonance microscopy and histology of the CNS,”Trends in Biotechnology,2002,20,S24−S28参照。組織の画像を得ることができる一方、造影剤を用いるMRIは顕著にその解像度を向上させている。しかし、MRI造影剤に適する常磁性金属イオンはしばしば毒性である。毒性を低減する方法の1つは、それらの金属イオンを多座分子(例えばジエチレントリアミン五酢酸分子(DTPA))でキレート化することである。Gd−DTPAはFDAによって1988年臨床用に承認された。それは、現在Magnevist(登録商標)として商品化されている。その他にもGd−キレートがFDAによって承認され商品化されており、またその他多くのものが開発中である。Caravan他,“Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications,”Chem.Rev.1999,99,2293−2352参照。
【0011】
しかし、Gd−DTPAは腫瘍組織を標的化するには理想的ではない。というのもそれが特異性を欠いているからである。Gd−DTPAをIV注射により投与した場合、それは自発的かつ速やかに組織の血管外空間に拡散する。従って通常、妥当なコントラストの像を得るため多量の造影剤が必要とされる。さらに、それは腎臓ろ過により速やかに排除される。そのような拡散とろ過を防ぐため、高分子MRI造影剤が開発されている。Caravan他,“Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications,”Chem.Rev.1999,99,2293−2352参照。これらの高分子MRI造影剤には、蛋白質−MRIキレート、多糖−MRIキレート、及びポリマー−MRIキレートがある。以下参照。Lauffer他,“Preparation and Water Pelaxation Properties of Proteins Labeled with Paramagnetic Metal Chelates,”Magn.Reson.Imaging 1985,3,11−16;Sirlin他,“Gadolinium−DTPA−Dextran:A Macromolecular MR Blood Pool Contrast Agent,”Acad.Radiol.2004,11,1361−1369;Lu他,“Poly(L−glutamic acid)Gd(III)−DOTA Conjugate with a Degradable Spacer for Magnetic Resonance Imaging,”Bioconjugate Chem.2003,14,715−719;並びにWen他,“Synthesis and Characterization of Poly(L−glutamic acid)Gadolinium Chelate:A New Biodegradable MRI Contrast Agent,”Bioconjugate Chem.2004,15,1408−1415。
【0012】
最近、組織特異的MRI造影剤が開発されている。Weinmann他,“Tissue−specific MR contrast agents,”Eur.J.Radiol.,2003,46,33−44参照。しかし、腫瘍特異的MRI造影剤は、臨床用途において報告されていない。高い浸透性及び局所留保性効果(EPR)により腫瘍を標的化するためのナノサイズの粒子が報告されている。Brannon−Peppas他,“Nanoparticle and targeted systems for cancer therapy.”ADDR,2004,56,1649−1659参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
相対的に疎水性の造影剤及び薬物(例えばある特定の疎水性抗癌剤、治療蛋白質及びポリペプチド)はしばしば低いバイオアベイラビリティという欠点を有する。この問題は少なくとも部分的にこれらの造影剤及び薬物が水系において溶解度が低いことに起因するものと考えられる。また、酵素により分解可能なある特定の薬物も低いバイオアベイラビリティという欠点を有する。というのも、それらは循環系において相対的に速く分解され、体内から速やかに排除されるからである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ポリマー複合体、第1の疎水性薬物、及び第2の疎水性薬物を含む新規な組成物を見出した。ここに記載される組成物のポリマー複合体は、相当数の作用因子、例えば、造影剤、標的化剤、安定剤及び/又は薬物を複合化することができる。ある実施形態において、このポリマー及び得られる複合体は、ある特定の組織(例えば腫瘍組織)及び/又はある特定の受容体に優先的に蓄積するとともに、体の特定の部分(例えば腫瘍)に薬物(例えば抗癌剤)及び/又は造影剤を送達するのに有用である。いくつかの実施形態において、ここに記載されるポリマー及び得られる複合体はナノ粒子を形成することができ、該ナノ粒子は、薬物を分子レベルに分散することによって該薬物を水性系に効果的に可溶化し、従って該薬物の機能性及び/又はバイオアベイラビリティを高める。
【0015】
いくつかの実施形態において、ポリマー複合体は、共有結合によらずに第1の疎水性薬物を保持するポリマーマトリックスを含むことができ、そして第1の薬物をポリマーマトリックス内に完全に封入又は部分的に封入することができる。一実施形態において、第2の疎水性薬物を含むことができる基を、ポリマーに結合又は連結することができる。第1の疎水性薬物と第2の疎水性薬物の構造は異なっていてもよいし、あるいは、第1の疎水性薬物と第2の疎水性薬物の構造は同じでもよい。
【0016】
ここに記載される一実施形態は、第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物及びポリマー複合体を含むことができる組成物に関する。該組成物において、該ポリマー複合体は、共有結合によらずに該第1の疎水性薬物の少なくとも一部をその中に封入する又は部分的に封入するポリマーマトリックスを有し、また該ポリマー複合体は、下記の式(I)の繰り返し単位を有する。式中、nは1又は2とすることができ、各Aは独立して酸素又はNRとすることができ、ここでRは水素又はC1−4アルキル基とすることができ、かつR及びRの少なくとも1つは該第2の疎水性薬物を含む基とすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、R及びRの一方のみが第2の疎水性薬物を含む基である場合、R及びRのもう一方は、水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基から選択することができる。
【0018】
ここに記載される別の実施形態は、ここに記載される組成物を製造する方法に関する。該方法は、少なくとも部分的にポリマー複合体を溶媒に溶解する工程、及び第1の疎水性薬物を少なくとも部分的に溶解されたポリマー複合体と混合して混合物を調製する工程を有する。
【0019】
ここに示す別の実施形態により、病気又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物にここに記載される有効量のポリマー複合体を投与することを有する病気又は症状を治療又は寛解する方法が提供される。
【0020】
ここに示す別の実施形態により、ここに記載される有効量のポリマー複合体を疾患又は症状の診断が必要な哺乳動物に投与することを有する病気又は症状を診断する方法が提供される。
【0021】
ここに示す別の実施形態により、ここに記載される有効量のポリマー複合体と組織の一部を接触させることを含む組織の一部を造影する方法が提供される。
【0022】
これらの及び他の実施形態を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体を用いてパクリタキセルをカプセル化する製剤スキームを示す図である。
【0024】
【図2】パクリタキセルの血漿濃度について、ここに記載される通りパクリタキセルを含む組成物と従来のパクリタキセル製剤との比較を示す図である。
【0025】
【図3】パクリタキセルの腫瘍濃度について、ここに記載される通りパクリタキセルを含む組成物と従来のパクリタキセル製剤との比較を示す図である。
【0026】
【図4】ここに記載される通りパクリタキセルを含む組成物によって処置したマウスの体重変化を、陽性の対照及び陰性の対照と比較して示す図である。
【0027】
【図5】ここに記載される通りパクリタキセルを含む組成物によって処置したマウスにおける抗腫瘍効果を、陽性の対照及び陰性の対照と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特に断らない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書で引用するすべての特許、出願、出願公開公報、及び他の刊行物は、特に断らない限り、参照によりそれらの内容すべてが本明細書に組み込まれる。本明細書において一つの用語に対して複数の定義が存在する場合、特に断らない限り、この章における定義を優先する。
【0029】
用語「エステル」は、その通常の意味を有するものとして本明細書で使用されており、従って、式−(R)−COOR’(式中、R及びR’は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基(環炭素を介して結合)、及び複素脂環式基(環炭素を介して結合)からなる群から選択され、かつnは0又は1である)の化学部位を含む。
【0030】
用語「アミド」は、その通常の意味を有するものとして本明細書で使用されており、従って、式−(R)−C(O)NHR’又は−(R)−NHC(O)R’(式中、R及びR’は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基(環炭素を介して結合)、及びヘテロ脂環式基(環炭素を介して結合)からなる群から選択され、かつnは0又は1である)の化学部位を含む。アミドは、本明細書に示す薬物分子に結合されたアミノ酸又はペプチド分子中に含まれてもよく、従ってプロドラッグを形成してもよい。
【0031】
本明細書に開示する化合物上の任意のアミン、ヒドロキシ、又はカルボキシル側鎖は、エステル化又はアミド化することができる。この目的を達成するため使用する手法及び特定の基は、当業者の知るところであり、参照文献、例えばGreene及びWuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley & Sons,New York,NY,1999(その内容すべてが本明細書に組み込まれる)において容易に見出すことができる。
【0032】
本明細書で使用するとき、「アルキル」は、完全に飽和の(二重結合又は三重結合がない)炭化水素基を含む線状又は枝分れの炭化水素鎖を指す。アルキル基は1〜20の炭素原子を有してもよい(ここで「1〜20」などの数の範囲を示す場合は必ず、所定の範囲内にある各整数を指している。例えば、「1〜20の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、・・・そして最高20個までの炭素原子からなってもよいことを意味する。なお、この定義は、数の範囲を指定しない場合の用語「アルキル」に対してもあてはまる)。アルキル基は1〜10の炭素原子を有する中位のサイズのアルキルであってもよい。またアルキル基は1〜5の炭素原子を有する低級アルキルとすることもできる。化合物のアルキル基は「C〜Cアルキル」等のように呼ぶことができる。単なる例示であるが、「C〜Cアルキル」はアルキル鎖中に1〜4の炭素原子が存在することを示しており、すなわちアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びt−ブチルからなる群から選ばれる。典型的なアルキル基にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0033】
アルキル基は置換されていてもよく置換されていなくてもよい。置換されている場合、1つ又は複数の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えばモノハロアルキル、ジハロアルキル、及びトリハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えばモノハロアルコキシ、ジハロアルコキシ、及びトリハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、及びアミノ(一置換アミノ基及び二置換アミノ基を含む)、並びにそれらの保護された誘導体からそれぞれ独立して選択される一種以上の基である。ある置換基が「必要に応じて置換」と記載される場合、その置換基は上記置換基のいずれか1つによって置換されていてよい。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、完全に非局在化されたπ電子系を有する炭素環(すべて炭素)の単環式又は多環式芳香環系を指す。アリール基の例にはベンゼン、ナフタレン、及びアズレンがあるが、これらに限定されない。本発明のアリール基は、置換されていてもよく置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基が特に示されていない限り、水素原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えば、モノ−、ジ−、トリ−ハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えば、モノ−、ジ−、トリ−ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、及びアミノ(一置換アミノ基及び二置換アミノ基を含む)、並びにそれらの保護された誘導体から独立して選択される一種以上の基である1つ又は複数の置換基によって置換されている。
【0035】
「常磁性金属キレート」は、配位子が常磁性金属イオンに結合している錯体である。その例には1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)−Gd(III)、DOTA−イットリウム−88、DOTA−インジウム−111、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)−Gd(III)、DTPA−イットリウム−88、DTPA−インジウム−111があるが、これらに限定されない。
【0036】
「多座配位子」は、2つ以上の結合点を介して、例えば配位共有結合により、金属イオンにそれ自身を結合させることができる配位子である。多座配位子の例には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、及びエタン二酸(ox)があるが、これらに限定されない。
【0037】
「保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体」は、適当な保護基で保護された酸素原子(例えばカルボキシル基の単結合酸素原子)を含む多座配位子である。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるがこれらに限定されない。
【0038】
「安定剤」は、バイオアベイラビリティを高め、かつ/又は加水分解酵素に対してより耐性にし免疫原性を低くすることによってインビボでの担体−薬物複合体の半減期を延ばす置換基である。典型的な安定剤はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0039】
当然のことながら、1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が特に示されていない場合、各中心は、独立してR配置若しくはS配置、又はその両方である。従って、本明細書に提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であってもよいし、あるいは立体異性体の混合物であってもよい。また当然のことながら、1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載の任意の化合物でE又はZとして定義し得る幾何異性体をもたらすものにおいて、各二重結合は独立してE若しくはZ又はその両方であってもよい。同様に、すべての互変異性型を含むことも意図するところである。
【0040】
一実施形態により該組成物は第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物及びポリマー複合体を含む組成物が提供される。該ポリマー複合体は、共有結合によらずに該第1の疎水性薬物の少なくとも一部をその中に閉じ込めるポリマーマトリックスを有し、かつ該ポリマー複合体は、式(I):
【化1】

(式中、nは1又は2とすることができ、各Aは独立して酸素又はNRとすることができ、ここでRは水素又はC1−4アルキル基とすることができ、かつR及びRの少なくとも1つは該第2の疎水性薬物を含む基とすることができる)の繰り返し単位を有することができる。一実施形態において、nは1と等しくても良い。他の実施形態において、nは2と等しくても良い。
【0041】
一実施形態においては、R及びRの一方のみが該第2の疎水性薬物を含む基である場合、R及びRのもう一方は、水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択することができる。標的化剤、光造影剤、磁気共鳴造影剤、及び安定剤はここでは一般的に「作用因子」と呼ぶ。
【0042】
一実施形態においては、第1の疎水性薬物は第2の疎水性薬物と異なる化学構造を有する。別実施形態においては、第1の疎水性薬物は第2の疎水性薬物と同じ化学構造を有する。
【0043】
ここに記載される組成物は、第1の疎水性薬物及び第2の疎水性薬物を含むことができる。第2の疎水性薬物は共有結合によってポリマーに結合又は連結することができる一方、第1の疎水性薬物は共有結合によらずにポリマーマトリックス内に封入又は部分的に封入することができる。一実施形態において、組成物からの第1の疎水性薬物及び第2の疎水性薬物の放出速度は、組成物が分解するに従って変わり得る。第1の疎水性薬物は、それが共有結合によらずにポリマーマトリックス内に封入されている形態に少なくとも一部起因する相対速度で、第1の速度において組成物から放出される。第2の疎水性薬物は、それがポリマー複合体に共有結合されていることに少なくとも一部起因して、第2の速度で組成物から放出される。従って、第1の疎水性薬物と第2の疎水性薬物は、ポリマーに対して異なる物理的相互作用を有する。ポリマーが分解するに従って、第1の疎水性薬物は、第2の疎水性薬物がポリマーから放出されるのと異なる態様で、ポリマーから放出される。一実施形態において、第1の放出速度は第2の放出速度より大きい。
【0044】
第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物、及びポリマー複合体を含むことができる組成物は、種々の形態で存在することができる。例えば、組成物は、粒子、フレーク、棒状体、繊維、フィルム、泡状物、懸濁物(液体又は気体における)、ゲル、固体、及び/又は液体の形態で存在することができる。これらの種々の形態の大きさ及び形状は限定されない。一実施形態において、組成物は粒子の形態で存在することができる。組成物の粒子は任意の大きさ及び形状とすることができる。一実施形態において、粒子は最高で約1000ミクロンの直径を有することができる。一実施形態において、粒子は約0.1ミクロン〜約500ミクロンの直径を有することができる。一実施形態において、粒子は約1ミクロン〜約100ミクロンの直径を有することができる。一実施形態において、組成物はナノ粒子の形態で存在する。一実施形態において、ナノ粒子は約0.1ナノメートル〜約500ナノメートルの直径を有することができる。一実施形態において、ナノ粒子は約1ナノメートル〜約250ナノメートルの直径を有することができる。一実施形態において、ナノ粒子は約10ナノメートル〜約100ナノメートルの直径を有することができる。
【0045】
粒子径を調節することにより、特定の環境(例えばインビボ)における組成物の薬物放出速度を調節することができる。組成物の相対的により大きな粒子は、より小さな粒子よりも長い寿命を有し得る。しかし、より大きな粒子が薬物を放出する速度は、同様の形状を有するより小さな粒子よりも大きくなり得る。というのも、相対的により大きな粒子はより大きな表面積を有するからである。特定の環境における組成物の分解速度と寿命を利用して、放出される第1の疎水性薬物及び第2の疎水性薬物の量を制御することができる。本開示に基づき当業者は、粒子径を調節して、組成物の分解速度を制御することができ、そしてさらに第1の疎水性薬物及び第2の疎水性薬物の放出速度を制御することができる。
【0046】
一実施形態において、粒子のサイズにより、対象に配置又は投与した組成物の循環時間を相対的に長くすることができる。例えば、直径が約100nm、200nm、500nmであるか又はそれより大きい比較的大きな粒子又はナノ粒子は、その組成物が対象に配置又は投与されたのち血流において比較的長い半減期を有するような速度で分解する。第1の疎水性薬物及び第2の疎水性薬物の放出速度を変えるとともに、組成物の循環時間をより長くすることにより、標的組織(例えば腫瘍組織)における薬物の蓄積を改善することができる。
【0047】
図1は、第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物、及びポリマー複合体を含有する組成物の実施形態を限定することなく例示する図である。図1は、製剤スキームを示しており、そこにおいて、ポリマー複合体(第2の疎水性薬物を含む)はポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体を含み、かつ第1の疎水性薬物はパクリタキセルを含む。図1に示すとおり、第2の疎水性薬物(この例ではパクリタキセル)は、ポリマーに沿った異なる枝においてポリ(γ−グルタミル−グルタミン)に共有結合されている。下記に詳しく記載する工程において、このポリマー複合体は、溶解又は部分的に溶解することができ、そして第1の疎水性薬物(この例ではやはりパクリタキセル)と混合することができる。得られる組成物又は製剤が図1に示され、そこにおいて、ポリマー複合体は、該ポリマーの異なる枝に共有結合されたパクリタキセルを保持するとともに、ポリマーマトリックス内に遊離のパクリタキセルを封入又は部分的に封入している。
【0048】
一実施形態において、ポリマー複合体(式(I)の繰り返し単位を含む)は、式(II):
【化2】

(式中、mは1又は2とすることができ、各Aは独立して酸素又はNRとすることができ、ここでRは水素又はC1−4アルキル基とすることができ、かつR及びRはそれぞれ独立して水素、アンモニウム、及びアルカリ金属からなる群から選択されることができる)の繰り返し単位をさらに有することができる。一実施形態において、nは1と等しくても良い。他の実施形態において、nは2と等しくても良い。
【0049】
組成物中に存在する第1の疎水性薬物の量は、広範囲に変わり得る。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第1の疎水性薬物の重量の割合)で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約5%〜約40%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約10%〜約30%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約20%〜約40%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。一実施形態において第1の疎水性薬物は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第1の疎水性薬物の質量比で、約30%〜約50%(重量/重量)の範囲の量で存在することができる。
【0050】
組成物中に存在する第2の疎水性薬物の量も広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第2の疎水性薬物の重量の割合)で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約5%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約10%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約20%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、第1の疎水性薬物とポリマー複合体の合計重量に対する第2の疎水性薬物の質量比で、約30%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第2の疎水性薬物を含むことができる。
【0051】
ポリマー中に存在する1つ又は複数の作用因子(例えば標的化剤、光造影剤、磁気共鳴造影剤、及び安定剤)の量は、広範囲に変わり得る。また、ポリマー中に存在する配位子又は配位子前駆体の量も広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比(第2の疎水性薬物の重量とともに、1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の重量がポリマー複合体中に占める割合)で、約0.1%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約5%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約10%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約20%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約30%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含むことができる。
【0052】
ポリマー複合体は1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。キラル炭素(アステリスクで示すことができる)は、R(rectus(右旋))配置又はS(sinister(左旋))配置をとることができ、従って、繰り返し単位は、ラセミ体、エナンチオマー、又はエナンチオマー過剰とすることができる。本明細書の別の個所で使用する記号「n」及び「」(キラル炭素を指定)も、特に断らない限り、上記と同じ意味を有する。
【0053】
式(I)の繰り返し単位及び式(II)の繰り返し単位を含むポリマーは、式(I)及び式(II)の2種以上の異なる繰り返し単位を含む共重合体である。また、式(I)の繰り返し単位(式(II)の繰り返し単位を含むポリマーに限定されるものではない)含むポリマーは、式(I)及び/又は式(II)ではない他の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。ポリマー中の式(I)の繰り返し単位及び式(II)の繰り返し単位の数は、広範囲に変わり得るが、それぞれ独立して、約50〜約5000の範囲が好ましく、例えば約100〜約2000の範囲がよい。
【0054】
他の種々の繰り返し単位が、式(I)の繰り返し単位及び選択的に式(II)の繰り返し単位を有するポリマー複合体に含まれてもよい。いくつかの実施形態において、ポリマー複合体は以下の式(III)の繰り返し単位をさらに含む。
【化3】

式中、R基は水素、アンモニウム、又はアルカリ金属とすることができる。ポリマーにおける式(III)の繰り返し単位の数も同様に広範囲に変わり得る。例えば、式(III)の繰り返し単位の数は、約50〜約5000の範囲内、例えば約100〜約2000の範囲内とすることができる。
【0055】
第1の疎水性薬物を含む基、第2の疎水性薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基の1つ以上は、多くの異なる方法でポリマーに複合化させることができる。いくつかの実施形態において、上述した化合物は、ポリマー(例えば式(I)の繰り返し単位)に直接結合させることができる。一実施形態において、第1の疎水性薬物を含む基、第2の疎水性薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基の1つ以上を、該作用因子又は薬物の酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及び/又は炭素原子を介してポリマーに直接結合させることができる。
【0056】
他の実施形態において、第1の疎水性薬物を含む基、第2の疎水性薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基の1つ以上は、リンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第1の疎水性薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第2の疎水性薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、及び/又は安定剤を含む基は、リンカー基をさらに有することができる。リンカー基は、例えば作用因子(又は作用因子を有する化合物)をポリマーに結合させる基である。一実施形態において、上述した化合物の1つ以上を、リンカー基を介してポリマー(例えば式(I)の繰り返し単位)に結合させることができる。リンカー基は比較的小さなものとすることができる。例えば、リンカー基は、アミン、アミド、エーテル、エステル、水酸基、カルボニル基、又はチオールエーテル基を有するものとすることができる。あるいは、リンカー基は比較的大きなものとしてもよい。例えば、リンカー基は、アルキル基、エーテル基、アリール基、アリール(C1−6アルキル)基(例えばフェニル−(CH1−4−)、ヘテロアリール基、又はヘテロアリール(C1−6アルキル)基からなることができる。一実施形態において、リンカー基は−NH(CH1−4−NH−とすることができる。別の実施形態において、リンカー基は−(CH1−4−アリール−NH−とすることができる。リンカー基は、第1の疎水性薬物を含む基、第2の疎水性薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基の1つ以上に、任意の適当な位置において結合させることができる。例えば、リンカー基は、上述した化合物の1つにおいて炭素の位置にある水素の代わりに結合させることができる。リンカー基は、当業者に知られた方法を用いて化合物に付加することができる。
【0057】
多くの異なる種類の薬物を第1の疎水性薬物に用いることができる。一実施形態において、第1の疎水性薬物は抗癌薬を含むことができる。一実施形態において、抗癌薬はタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。別の実施形態において、第1の薬物を疎水性ではなく親水性とすることができる。例えば、親水性薬物をポリマーマトリックス内に封入又は部分的に封入することができる。適当な親水性薬物には、例えば白金薬(例えばシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン)があるが、これに限定されるものではない。
【0058】
同様に、多くの異なる種類の薬物を第2の疎水性薬物に用いることができる。一実施形態において、第2の疎水性薬物は抗癌薬を含むことができる。一実施形態において、抗癌薬はタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第2の疎水性薬物がパクリタキセルを含むことができ、一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子の位置で式(I)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。別の実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子の位置で式(I)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。他の一実施形態において、第2の薬物を疎水性ではなく親水性とすることができる。例えば、親水性薬物をここに記載されるポリマーにコンジュゲートさせることができる。適当な親水性薬物には、例えば白金薬(例えば上述したもの)がある。
【0059】
作用因子は任意の種類の活性化合物を含んでいてよい。一実施形態において、作用因子は光造影剤を含んでいてよい。好ましい実施形態において、光造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素からなる群から選択される1種以上である。例えば、具体的な光造影剤には、Texas Red、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、フルオレセイン、Oregon Green(登録商標)色素、及びRhodamine Green(商標)色素(これらは市販されているか又は当業者に知られた方法により容易に調製される)が含まれ得る。
【0060】
別の実施形態において、作用因子は標的化剤であってよい。一実施形態において、標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体からなる群から選択される1種以上とすることができる。他の好ましい実施形態において、標的化剤は、α,β−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用し得る。一実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)とすることができる。
【0061】
別の実施形態において、作用因子は磁気共鳴造影剤を含むことができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤は常磁性金属化合物を含むことができる。例えば、磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含んでいてよい。一実施形態において、Gd(III)化合物は以下から選択することができる。
【化4】

及び
【化5】

【0062】
別の実施形態において、作用因子は安定剤を含むことができる。好ましい実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールとすることができる。
【0063】
別の実施形態において、ポリマー複合体は多座配位子を含むことができる。一実施形態において、多座配位子は、常磁性金属と反応して磁気共鳴造影剤を形成できるものであってよい。多座配位子は、数個のカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を含んでいてよい。一実施形態において、多座配位子は、以下から選択することができる。
【化6】

及び
【化7】

式中、各R及びRは独立して水素、アンモニウム、又はアルカリ金属とすることができる。
【0064】
別の実施形態において、ポリマー複合体は、多座配位子前駆体を含むことができる。そのような実施形態において、多座配位子の酸素原子は、適当な保護基により保護され得る。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるが、これらに限定されない。保護基を有する多座配位子前駆体の一例を以下に示す。
【化8】

【0065】
ある実施形態においては、ここに記載するポリマーはアルカリ金属を含む。ある実施形態においてアルカリ金属はナトリウム、カリウムであってよい。ある実施形態において、アルカリ金属はナトリウムとすることができる。
【0066】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(I)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約100モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、ポリマーにおける繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマーは、ポリマーにおける繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマーは、ポリマーにおける繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマーは、ポリマーにおける繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマーは、ポリマーにおける繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。
【0067】
式(I)の繰り返し単位に加えて、ポリマーは式(II)の繰り返し単位を含んでもよい。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。
【0068】
式(I)及び(II)の繰り返し単位に加えて、ポリマー複合体は種々の他の繰り返し単位を含んでもよい。例えば一実施形態において、ポリマー複合体は式(III)の繰り返し単位を含む。式(I)及び(III)の繰り返し単位を含むポリマー複合体における繰り返し単位の総数に対する式(I)の繰り返し単位の割合は広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。
【0069】
一実施形態において、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位を含むポリマー複合体における繰り返し単位の総数に対する式(I)の繰り返し単位の割合は広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。
【0070】
式(I)及び(II)の繰り返し単位を含むポリマー複合体における繰り返し単位の総数に対するポリマー複合体の式(II)の繰り返し単位の割合は広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、式(I)及び(II)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。
【0071】
式(I)及び(III)の繰り返し単位を含むポリマー複合体における繰り返し単位の総数に対するポリマー複合体の式(III)の繰り返し単位の割合は広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)及び(III)における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。
【0072】
同様に式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位を含むポリマー複合体における繰り返し単位の総数に対するポリマー複合体の式(II)の繰り返し単位の割合は広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。
【0073】
式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位を含むポリマー複合体における繰り返し単位の総数に対するポリマー複合体の式(III)の繰り返し単位の割合は広範囲に変わり得る。実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、(II)及び(III)の繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。
【0074】
一実施形態において、少なくとも1つのn及びmは1とすることができる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのnは1とすることができる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのnは2とすることができる。別の実施形態において、少なくとも1つのn及びmは2とすることができる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのmは2とすることができる。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのmは2とすることができる。
【0075】
1つ又は複数の作用因子の量、第1及び第2の薬物の量、並びに式(I)、(II)及び/又は(III)の繰り返し単位のパーセント量を選択することによって、得られるポリマー複合体の溶解度を有利に制御できることが見出された。例えば、いくつかの実施形態において、1つ又は複数の作用因子及び/又は1つ又は複数の薬物の量、並びに種々の繰り返し単位(例えば式(I)、式(II)及び/又は式(III)の繰り返し単位)のパーセント量を選択することにより、目的とする特定のpH及び/又はpH範囲においてポリマー複合体を可溶性(又は不溶性)にすることができる。いくつかの実施形態では、溶解度を制御するためポリマーの分子量も選択することができる。例えば、作用因子の量、式(I)、式(II)及び/又は式(III)の繰り返し単位のパーセント量、並びに分子量を適当に選択することにより、溶解度の制御を行うことができる。当業者は、本明細書の記載に従って、日常的な実験により、所望の溶解特性を有するポリマー複合体をもたらすような1つ又は複数の作用因子の適当な量及び種々の繰り返し単位の適当なパーセント量を特定することができる。そのような溶解度の制御は、用途に応じて有利となり得る。例えば、ここに記載されるポリマー複合体の実施形態を用いることにより、溶解度が低い抗癌薬の選択した組織への送達を向上させることができ、好ましくは、望ましくない副作用を低減することができ、かつ/又は対象が抗癌薬投与を受けなければならない頻度を減らすことができる。
【0076】
また、1つ又は複数の作用因子及び/又は1つ又は複数の薬物の量、並びに式(I)、(II)及び/又は(III)の繰り返し単位のパーセント量を選択することによって、同じ1つ又は複数の作用因子及び/又は薬物を実質的に同じ量で含む比較のポリグルタミン酸複合体の溶解度よりも高いポリマー複合体の溶解度をもたらすことができる。一実施形態において、ポリマー複合体の溶解度は、比較のポリグルタミン酸複合体の溶解度よりも高くすることができる。溶解度の測定は、約22℃において0.9wt%のNaCl水溶液中ポリマー複合体を5mg/mL以上含むポリマー複合体溶液を調製し、その光学的透明度を測定することによって行うことができる。光学的透明度は、例えば、目視観測により、又は当業者に知られた適当な計器を使用する方法により、濁度を測定することによって決定することができる。得られる溶解度を同様に調製したポリグルタミン酸複合体溶液と比較することで、より広いpH値の範囲において光学的透明度がより高いことが明らかになれば、溶解度が向上したことがわかる。従って、約22℃において0.9wt%のNaCl水溶液中ポリマー複合体を5mg/mL以上含むポリマー複合体の試験溶液が、比較のポリグルタミン酸複合体の試験溶液と比べて、より広いpH範囲においてより高い光学的透明度を有する場合、ポリマー複合体の溶解度は、実質的に同じ量の作用因子及び/又は薬物を含む比較のポリグルタミン酸複合体の溶解度よりも高い。当業者に明らかなとおり、「比較の」ポリグルタミン酸複合体は対照材料であり、そこにおいて、複合体のポリマー部分は、比較の対象となっているポリマー複合体(式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、及び/又は式(III)の繰り返し単位を有する)とほぼ同じ分子量を有する。
【0077】
一実施形態において、作用因子の量、第一薬物の量及び第二薬物の量、式(I)、式(II)及び/又は式(III)の繰り返し単位の割合は、ポリマー複合体の溶解度がほぼ同じ量の作用因子又は薬物を含む比較のポリグルタミン酸複合体よりも高くなるよう選択することができる。式(I)の繰り返し単位を含むポリマー複合体が比較のポリグルタミン酸複合体よりも高い溶解度を有するpH値の範囲は、狭くてもよいし、広くてもよい。上述したとおり、溶解度は、約22℃で0.9重量%のNaCl水に5mg/mL以上のポリマー複合体を含むポリマー複合体溶液を調製し、その光学的透明度を調べることにより測定される。一実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約3のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。一実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約8のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。一実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約9のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、約2〜約5の範囲にある少なくとも1つのpH値を含み、例えば、pH=2、pH=3、pH=4、及び/又はpH=5で可溶性である。ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、比較のポリグルタミン酸複合体が可溶性であるpH範囲よりも広いことが好ましい。例えば一実施形態において、ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、比較のポリグルタミン酸複合体が可溶性であるpH範囲よりも、約1pH単位以上広く、好ましくは約2pH単位以上広い。
【0078】
溶解度を測定するため溶液に含まれるポリマー複合体の量も大きく変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体の試験溶液が少なくとも約5mg/mLのポリマー複合体を含む場合の溶解度を測定することができる。一実施形態において、ポリマー複合体の試験溶液が少なくとも約10mg/mLのポリマー複合体を含む場合の溶解度を測定することができる。一実施形態において、ポリマー複合体の試験溶液が少なくとも約25mg/mLのポリマー複合体を含む場合の溶解度を測定することができる。一実施形態において、ポリマー複合体の試験溶液が少なくとも約100mg/mLのポリマー複合体を含む場合の溶解度を測定することができる。一実施形態において、ポリマー複合体の試験溶液が少なくとも約150mg/mLのポリマー複合体を含む場合の溶解度を測定することができる。当業者に明らかなとおり、比較のポリグルタミン酸複合体は、試験されるポリマー複合体とほぼ同じ濃度で試験される。
【0079】
一実施形態において、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルタミン酸及びアミノ酸(例えばアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)から開始して生成させることができる。一方、別の実施形態において、ポリマーは、まずポリグルタミン酸出発材料を塩の形に変換することにより調製することができる。ポリグルタミン酸の塩形は、ポリグルタミン酸を適当な塩基(例えば重炭酸ナトリウム)と反応させることにより得ることができる。アミノ酸部位は、ポリグルタミン酸の側鎖カルボン酸基に結合させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は、限定されないが、約10000〜約500000ダルトンが好ましく、約25000〜約300000ダルトンがより好ましい。そのような反応を用いてポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)又はポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を調製することができる。
【0080】
一実施形態において、アミノ酸は、ポリグルタミン酸に結合させる前に、保護基によって保護されうる。この反応に適する保護アミノ酸部位の一例は、以下に示すL−アスパラギン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩である。
【化9】

【0081】
ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応は、任意の適当な溶媒の存在下で行うことができる。一実施形態において、溶媒は非プロトン性溶媒とすることができる。好ましい実施形態において、溶媒はN,N’−ジメチルホルムアミドとすることができる。一実施形態において、溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群から選択することができる。
【0082】
カップリング剤を用いて、式(I)の繰り返し単位を有するポリマーの形成反応を補助することができる。任意の適当なカップリング剤を用いることができる。一実施形態において、カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP(登録商標))、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及びベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)から選択されうる。一実施形態において、カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)である。
【0083】
別の実施形態において、反応は、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物を触媒の存在下で反応させることをさらに含んでもよい。反応を促進する任意の触媒を用いることができる。一実施形態において、触媒は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含むことができる。
【0084】
反応終了後、アミノ酸の酸素原子が保護されている場合、公知の方法(例えば適当な酸(例えばトリフルオロ酢酸)を用いる方法)を用いて保護基を除去することができる。必要に応じて、ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応により得られるポリマーを、酸形のポリマーを適当な塩基溶液(例えば重炭酸ナトリウム溶液)で処理することにより、塩形にすることができる。
【0085】
ポリマーは、当業者に知られた方法によって回収かつ/又は精製することができる。例えば溶媒は、適当な方法によって除去することができる。限定されないが、一つの例として溶媒除去として回転蒸発があげられる。さらに、反応混合物をろ過して酸性水溶液に加え、沈殿を生成させることができる。次いで得られた沈殿をろ過し、水で洗浄することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーは、上述した式(II)の繰り返し単位をさらに含むこともできる。別の実施形態において、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーは、式(III)の繰り返し単位をさらに含むこともできる。さらに別の実施形態において、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーは、式(II)の繰り返し単位及び式(III)の繰り返し単位をさらに含むこともできる。
【0087】
作用因子、多座配位子、及び/又は酸素原子が保護された多座配位子前駆体を含む基をポリマー酸又はその塩形に結合させることは、種々の方法によって(例えば、作用因子、多座配位子、及び/又は酸素原子が保護された多座配位子前駆体を含む基を種々のポリマーに共有結合させることにより)行うことができる。ポリグルタミン酸及び/又はその塩から得られたポリマーに上述した基を結合させる一つの方法は、熱(例えば、マイクロ波法を使用することによる熱)を使用することによるものである。一方、結合は室温で行ってもよい。通常当業者に知られた又は本明細書に記載された適当な溶媒、カップリング剤、触媒、及び/又は緩衝剤を用いてポリマー複合体を形成することができる。ポリグルタミン酸と同様に、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、ポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。
【0088】
ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーに結合又は連結させることができる適当な作用因子には、薬物、光剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤(例えば常磁性金属化合物)、安定剤、多座配位子、及び保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体があるが、これらに限定されない。
【0089】
一実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーは、例えば本明細書に記載されるような光造影剤と結合させることができる。一実施形態において、光造影剤はTexas Red−NH(テキサスレッド−NH)とすることができる。
【化10】

【0090】
一実施形態において、少なくとも1つの式(I)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する反応物は、DCC、テキサスレッド−NH色素、ピリジン、及び4−ジメチルアミノピリジンと反応させることができる。この混合物はマイクロ波法を用いて加熱される。一実施形態において、反応は、約100℃〜150℃の範囲の温度まで加熱することができる。別の実施形態において、材料の加熱時間は5〜40分である。必要に応じて、反応混合物を室温まで冷却することができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、反応混合物をろ過して酸性水溶液に投入することができる。生成する沈殿物があれば、次いでそれをろ過し、水で洗浄することができる。必要に応じて、沈殿物を任意の適当な方法により精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移して溶解させることができ、そして得られた溶液を再度ろ過して重炭酸ナトリウム溶液に投入することができる。必要に応じて、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。
【0091】
一実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーは、薬物(例えば抗癌剤)に結合又は連結させることができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテシンのようなカンプトテカ、及び/又はドキソルビシンのようなアントラサイクリンとすることができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン(例えばパクリタキセル又はドセタキセル)とすることができる。いくつかの実施形態において、ポリマーに結合又は連結された抗癌剤はドキソルビシンとすることができる。他の実施形態において、ポリマーに結合又は連結された抗癌剤はパクリタキセルであとすることができる。一実施形態において、パクリタキセルは、C2’−酸素原子においてポリマーに結合させることができる。別の実施形態において、パクリタキセルは、C7−酸素原子においてポリマーに結合させることができる。別の実施形態において、ポリマーは、C2’−酸素原子のみによってポリマーに結合されたパクリタキセルを含む。さらに別の実施形態において、ポリマーは、C7−酸素原子のみによってポリマー鎖に結合することができるパクリタキセルを含む。さらに別の実施形態において、ポリマーは、C2’結合パクリタキセル基とC7結合パクリタキセル基との両方を有する。
【0092】
抗癌剤は、テキサス−レッドついて上述した方法を用いて、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーに結合又は連結させることができる。
【0093】
一実施形態において、パクリタキセルを、必要に応じて、カップリング剤(例えばEDC及び/又はDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。さらなる試薬(例えばピリジン又はヒドロキシベンゾトリアゾール)を用いてもよい。一実施形態において、反応は0.5〜2日間行うことができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、反応混合物を酸性溶液に注入して沈殿を形成することができる。形成される沈殿があれば、次いでそれをろ過し、水で洗浄することができる。必要に応じて、沈殿を任意の適当な方法により精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移して溶解させることができ、そして得られた溶液を再度ろ過して重炭酸ナトリウム溶液に投入することができる。必要に応じて、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。得られるポリマー中のパクリタキセルの含量は、UV分光測定法により測定することができる。
【0094】
一方、作用因子を含む化合物は、アミノ酸(例えばグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸)と反応させることができ、そこにおいて作用因子を含む化合物は該アミノ酸に結合される(例えば共有結合される)。次いで、アミノ酸−作用因子化合物をポリグルタミン酸又はその塩と反応させてポリマー複合体を形成することができる。一実施形態において、パクリタキセルをグルタミン酸と反応させて、グルタミン酸の側鎖カルボン酸基にパクリタキセルが共有結合する化合物を形成することができる。次いでグルタミン酸−パクリタキセル化合物を、ポリグルタミン酸又はその塩と反応させて、ポリマー複合体を形成することができる。一実施形態において、パクリタキセルをアスパラギン酸と反応させて、アスパラギン酸の側鎖カルボン酸基にパクリタキセルが共有結合した化合物を形成する。次いでアスパラギン酸−パクリタキセル化合物を、ポリグルタミン酸又はその塩と反応させて、ポリマー複合体を形成することができる。必要に応じて、公知の分離法(例えばHPLC)を用い、C2’−酸素によりアミノ酸に結合したパクリタキセルを、C7−酸素によりアミノ酸に結合したパクリタキセルから分離することができる。
【0095】
ポリマー複合体の形成の後、ポリマーに共有結合していない遊離の作用因子があれば、その量を測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて、パクリタキセルに結合又は連結したポリマーの組成物中に遊離のパクリタキセルが実質的に残存しないことを確認してもよい。
【0096】
一実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーを、多座配位子に結合させることができる。適当な多座配位子には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、及びエタン二酸(ox)があるが、これらに限定されない。通常当業者に知られた及び/又は本明細書に記載された適当な溶媒、カップリング剤、触媒、及び/又は緩衝剤を用いてポリマー複合体を形成することができる。別の実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーを、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体に結合させることができる。ポリグルタミン酸と同様に、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、ポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。
【0097】
一実施形態において、多座配位子はDTPAとすることができる。別の実施形態において、多座配位子はDOTAとすることができる。一実施形態において、DTPAなどの多座配位子(保護された酸素原子を有する又は有しない)を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。保護基が存在する場合、適当な方法を用いて除去することができる。例えば、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体(例えば酸素原子がt−ブチル基により保護されたDTPA)を有するポリマー複合体を、トリフルオロ酢酸などの酸で処理することができる。保護基を除去した後、酸を回転蒸発により除去することができる。一実施形態において、DTPAを適当な塩基で処理してカルボン酸、−OH基の水素原子を除くことができる。いくつかの実施形態において塩基は重炭酸ナトリウムとすることができる。
【0098】
一実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーを標的化剤に結合又は連結させることができる。例示的な標的化剤には、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体があるが、これらに限定されない。標的化剤として、特定の受容体と相互作用するものを選ぶことができる。例えば、標的化剤として、以下の受容体の1種以上と相互作用するものを選ぶことができる:α,β−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体。一実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)とすることができる。
【0099】
ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、標的化剤を有するポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。一実施形態において、標的化剤を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。ポリマー複合体の形成後、ポリマーに共有結合していない遊離の作用因子がいくらかあるかどうか測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて遊離の標的化剤が実質的に存在しないことを確認してもよい。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる(例えば凍結乾燥)。
【0100】
一実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーを、磁気共鳴造影剤に結合又は連結させることができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含むことができる。磁気共鳴造影剤を形成する方法の一つは、多座配位子を含むポリマー複合体と常磁性金属とを反応させることによるものである。適当な常磁性金属には、Gd(III)、インジウム−111、及びイットリウム−88があるが、これらに限定されない。例えば、DTPAを含むポリマー複合体を、緩衝溶液中、Gd(III)で数時間処理することができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。常磁性金属の量を、誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)測定により定量してもよい。
【0101】
一実施形態において、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーを安定剤に結合又は連結させることができる。いくつかの実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールとすることができる。一つの方法において安定剤を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。反応の経過を任意の適当な方法(例えばTLC)により測定することができる。得られたポリマー複合体を、当業者に知られた方法(例えば透析)を用いて精製することができる。
【0102】
ポリマー複合体を用いて、造影剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は薬物を選択された組織に送達することができる。例えば、テキサスレッド色素を含むポリマー複合体を用いて、選択された組織に造影剤を送達することができる。一実施形態において、少なくとも1つの式(I)の繰り返し単位を含むポリマー複合体を用いて、癌などの病気又は症状を治療又は寛解することができる。一実施形態において、本明細書に記載されるポリマー複合体を用いて、病気又は症状(例えば癌)を診断することができる。さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるポリマー複合体を用いて、組織の部分を造影することができる。いくつかの実施形態において、病気又は症状は、癌、例えば肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫であり得る。一実施形態において、病気又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択される腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、造影された組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及び/又はメラノーマ腫瘍からなる群から選択される組織であり得る。
【0103】
作用因子を含む複数の化合物を、式(I)の繰り返し単位を含むポリマー複合体に結合又は連結させることができる。いくつかの実施形態において、複数の作用因子は異なるものとすることができる。例えば、標的化剤を含む化合物を、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーに結合又は連結させることができる。次いで得られたポリマーを、造影剤を含む化合物と反応させることができ、それにより、式(I)の繰り返し単位を含むポリマー複合体であって標的化剤と造影剤との両方を有するポリマー複合体を形成することができる。必要に応じて、標的化剤と造影剤とを有するポリマー複合体を、安定剤を含む化合物とさらに反応させることができ、それにより安定剤をポリマーに結合させることができる。
【0104】
一実施形態において、本明細書に記載されるポリマーは、水溶液中でナノ粒子にしてもよい。一実施形態において、同様に、ポリマー及び薬物を含む複合体をナノ粒子にすることができる。一実施形態において、ナノ粒子を用いて、薬物を選択された組織に送達することができる。
【0105】
複数の疎水性化合物及び式(I)の繰り返し単位を有するポリマーを含む組成物は、種々の方法で調製することができる。一実施形態において、該組成物を製造する方法は、予め結合された第2の疎水性化合物を有する溶解された又は部分的に溶解されたポリマー複合体を、第1の疎水性化合物、例えば第1の疎水性薬物と反応させて混合物を形成する工程を含むことができる。
【0106】
一実施形態により組成物の製造方法が提供され、該製造方法は、ポリマー複合体を溶媒に部分的に溶解する工程と、少なくとも部分的に溶解されたポリマー複合体を第1の疎水性薬物と混合して混合物を調製する工程とを含むことができる。一実施形態において、該方法は、該混合物を乾燥して乾燥形態の組成物を調製する工程をさらに含むことができる。一実施形態において、該混合工程は、該第1の疎水性薬物の溶液を少なくとも部分的に溶解されたポリマー複合体と混合して混合物を調製する工程を含む。
【0107】
ポリマー複合体は、第1の疎水性薬物との混合物を調製するため、種々の溶媒に溶解又は部分的に溶解することができる。一実施形態において、溶媒は、親水性溶媒(例えば極性溶媒)を含むことができる。適当な極性溶媒には、プロトン性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ギ酸、及び酢酸がある。他の適当な極性溶媒には、非プロトン酸、例えばアセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及び1,4−ジオキサンがある。一実施形態において、溶媒は水性溶媒(例えば水)とすることができる。
【0108】
溶媒へのポリマー複合体の溶解又は部分的な溶解は、従来の機械的手法を用いてさらに促進することができる。例えば、ポリマー複合体を溶媒中で振とう又は撹拌することにより溶解又は部分的溶解をもたらすことができる。一実施形態において、ポリマーと溶媒は、超音波処理される。超音波処理は、音のエネルギー、例えば超音波エネルギーを印加してサンプル中の粒子を撹拌する作用である。超音波処理は、例えば超音波槽又は超音波プローブを用いて行うことができる。ポリマーが溶解される程度は、機械的振とう又は撹拌の強さ及び時間を変えることにより、又は超音波処理の条件を変えることにより制御することができる。振とう、撹拌、又は超音波処理は、任意の時間にわたって行うことができる。例えば、混合物を、数秒〜数時間の範囲の時間、超音波処理することができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、約1分〜約10分の範囲の時間、溶媒中で超音波処理される。一実施形態において、ポリマー複合体は、溶媒中で約5分間、超音波処理される。
【0109】
一実施形態において、第1の疎水性薬物は、ポリマー複合体溶液に添加することができる。第1の疎水性薬物は、それをポリマー複合体と混合する前に、種々の溶媒中に溶解又は部分的に溶解してもよいし、そうでなくともよい。疎水性薬物が溶媒に溶解又は部分的に溶解する場合、溶媒は親水性溶媒(例えば極性溶媒)を含むことができる。適当な極性溶媒には、プロトン性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ギ酸、酢酸、及びアセトンがある。他の適当な極性溶媒には、非プロトン酸、例えばアセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及び1,4−ジオキサンがある。一実施形態において、第1の疎水性薬物をアルコールに溶解又は部分的に溶解することができる。一実施形態において、第1の疎水性薬物をエタノールに溶媒又は部分的に溶解することができる。
【0110】
第1の疎水性薬物を例えばピペットを用いてポリマー複合体溶液に添加した後、さらなる撹拌を行うことができる。例えば、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物の溶液を、振とう又は撹拌してもよい。一実施形態において、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物の溶液を超音波処理することができる。振とう、撹拌、又は超音波処理は、任意の時間にわたって行うことができる。例えば、混合物を、数秒〜数時間の範囲の時間、超音波処理することができる。一実施形態において、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物の溶液を、約1分〜約10分の範囲の時間、超音波処理することができる。一実施形態において、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物の溶液を、約5分間、超音波処理することができる。
【0111】
一実施形態において、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物は、それらのいずれかを溶媒に溶解する前に、互いに混合することができる。一実施形態において、溶媒又は複数の溶媒の混合物を、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物の混合物に添加することができる。溶媒又は複数の溶媒の混合物を、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物に添加した後、ポリマー複合体と第1の疎水性薬物の一方又は両方を溶解又は部分的に溶解することができる。一実施形態では、ポリマー複合体に第1の疎水性薬物を封入又は部分的に封入することができる。溶媒又は複数の溶媒の混合物は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ギ酸、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及び1,4−ジオキサンの1つ以上を含有することができる。一実施形態において、複数の溶媒の混合物は、アルコールと水を含有する。一実施形態において、複数の溶媒の混合物は、エタノールと水を含有する。
【0112】
十分な混合の後、ここに記載されるとおり第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物、及びポリマー複合体を含む組成物ができる。必要に応じて、その後、組成物を分離及び/又は精製してもよい。当業者に知られた適当な方法を用いて、ポリマー複合体及び封入された(又は部分的に封入された)第1の疎水性薬物を分離及び/又は精製することができる。次いで、組成物を当業者に知られた任意の適当な方法によって乾燥することができる。例えば、一実施形態において、組成物は凍結乾燥される。組成物を凍結乾燥する条件は様々となり得る。一実施形態において、混合物は、約−30℃〜約−10℃の範囲にある温度で凍結乾燥される。また一実施形態において、混合物は、約−20℃の温度で凍結乾燥される。一旦、組成物を必要に応じて分離かつ乾燥した場合、次いで組成物を適当な条件において保存することができる。例えば、上述したような凍結乾燥に適する温度で組成物を保存してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)のプロドラッグ、代謝産物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形体、及び製薬上許容される塩が提供される。
【0114】
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換される薬剤を指す。プロドラッグはしばしば有用である。なぜなら、親薬物よりもプロドラッグの方が投与しやすい場合があるからである。例えば、親薬物はそうではないのに対し、プロドラッグを経口投与により生物学的に利用可能にすることができる。またプロドラッグは、医薬組成物において親薬物よりも高い溶解度を有することができる。限定されないが、プロドラッグの例として、細胞膜での移動を容易にするためエステル(プロドラッグ)として投与される化合物がある。細胞膜において水溶性は移動に不利である一方、プロドラッグが一旦細胞の内部に入ると、代謝によって加水分解されカルボン酸(活性体)となり、そこでは水溶性が有利となる。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であろう。酸基において該ペプチドは代謝され、活性部位を外に出す。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための在来法は、例えばDesign of Prodrugs(H.Bundgaard,Elsevier編,1985)(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0115】
用語「プロドラッグエステル」は、生理的条件下で加水分解されるいくつかのエステル形成基のいずれかを付加することにより形成される本開示の化合物の誘導体を指す。プロドラッグエステル基の例には、ピバロイルオキシメチル基、アセトキシメチル基、フタリジル基、インダニル基、及びメトキシメチル基、さらには当該技術において知られた他の基、例えば(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基がある。プロドラッグエステル基の他の例は、例えばT.Higuchi及びV.Stella,in “Pro−drugs as Novel Delivery Systems”,Vol.14,A.C.S.Symposium Series,American Chemical Society(1975)、及び“Bioreversible Carriers in Drug Design:Theory and Application”,E.B.Roche編,Pergamon Press:New York,14−21(1987)(カルボキシル基を含む化合物に対しプロドラッグとして有用なエステルの例を提供している)に存在する。なお上述した各文献は、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる。
【0116】
用語「製薬上許容される塩」は、化合物の塩であって、投与される生体に顕著な刺激を引き起こさず、また該化合物の生物活性及び特性を損なわないものを指す。いくつかの実施形態において、該塩は、化合物の酸付加塩である。医薬塩は、化合物を無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸など)と反応させることにより得ることができる。また医薬塩は、化合物を有機酸(脂肪族又は芳香族のカルボン酸又はスルホン酸(例えば酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、又はナフタレンスルホン酸)と反応させることにより得ることもできる。また医薬塩は、化合物を塩基と反応させて塩(例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩)、有機塩基(例えばジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C〜Cアルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン)の塩、及びアミノ酸(例えばアルギニン、リシンなど)との塩)を形成することにより得ることもできる。
【0117】
医薬製剤の製造が、医薬賦形剤と塩の形態の有効成分との混合を伴う場合、塩基性でない医薬賦形剤(すなわち、酸性又は中性の賦形剤)を使用することが望ましい。
【0118】
種々の実施形態において、本明細書に開示される化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)は、単独で用いることができ、本明細書に開示される他の化合物と組み合わせて用いることができ、あるいは、本明細書に記載される治療分野において活性である1種以上の他の薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0119】
別の態様において、本開示は、1つ以上の生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、懸濁剤、製膜物質、コーティング助剤、又はそれらの組み合わせと、本明細書に開示される化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)とを含む医薬組成物に関する。治療用途のため許容される担体又は希釈剤は、製薬技術においてよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されている。保存剤、安定剤、色素、甘味料、香料、矯味矯臭剤などを医薬組成物に加えてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを保存剤として添加することができる。さらに、抗酸化剤及び懸濁剤を使用してもよい。種々の実施形態において、アルコール類、エステル類、硫酸化脂肪族アルコールなどを界面活性剤として用いることができ、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを賦形剤として用いることができ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを滑沢剤として用いることができ、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆を懸濁剤又は滑剤として用いることができ、酢酸フタル酸セルロース(炭水化物(例えばセルロース又は糖)の誘導体として)あるいは酢酸メチル−メタクリル酸エステル共重合体(ポリビニルの誘導体として)を懸濁剤として用いることができ、そして可塑剤(例えばフタル酸エステル等)を懸濁剤として用いることができる。
【0120】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示される化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)と他の化学成分(例えば希釈剤又は担体)との混合物を指す。医薬組成物は、化合物の生体への投与を容易にする。化合物を投与する手法は当該技術において多数存在し、例えば、経口投与、注射投与、エアゾール投与、非経口投与、及び局所投与があるが、これらに限定されない。また医薬組成物は、化合物を無機酸又は有機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と反応させることにより得ることもできる。
【0121】
用語「担体」は、化合物の細胞又は組織への取り込みを容易にする化合物を指す。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生体の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを促進するため、一般的に使用される担体である。
【0122】
用語「希釈剤」は、水中に希釈される化合物であって、目的の化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)を溶解するとともに、該化合物の生物学的活性形を安定化するものを指す。当該技術において緩衝溶液に溶解された塩は希釈剤として利用される。一般的に使用される緩衝溶液の1つは、リン酸緩衝生理食塩水である。それはヒトの血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御できるので、緩衝希釈剤は化合物の生物学的活性をほとんど変化させない。用語「生理学的に許容される」は、化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体又は希釈剤を指している。
【0123】
本明細書に記載される医薬組成物は、それ自体で、あるいは、それを併用療法のように他の活性な成分と混合した医薬組成物として、又はそれを適当な担体又は希釈剤と混合した医薬組成物として、ヒトに投与することができる。本願の化合物を製剤化し投与するための手法は、“Remigton’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PA,第18版,1990に見出すことができる。
【0124】
投与の適当な経路には、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、又は腸内投与、非経口送達(筋内注射、皮下注射、静脈注射、骨髄内注射、さらには、クモ膜下注射、直接的心室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注入、又は眼内注射を含む)がある。また化合物(ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、持効性又は制御放出性の剤形(所定の速度での長期投与、適時投与、間欠投与のためのデポ注射剤、浸透ポンプ、丸剤、経皮(エレクトロトランスポートを含む)パッチ等を含む)で投与することもできる。
【0125】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の方法、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠調製、研和、乳化、カプセル化、封入、又は錠剤化の方法により製造することができる。
【0126】
かくして本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用可能な製剤に加工するのを容易にする賦形剤及び助剤を含む生理学的に許容される1つ以上の担体を用いて通常の方法により調製することができる。適切な製剤は、選択される投与経路による。周知の手法、担体、及び賦形剤の任意のものを当該技術(例えば上記Remington’s Pharmaceutical Sciences)において適切かつ妥当なように使用することができる。
【0127】
注射剤は、通常の形態(溶液又は懸濁液として)で、注射の前に溶液又は懸濁液にするのに適当な固体の形態で、あるいは乳剤として、調製することができる。適当な賦形剤には、例えば水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などがある。さらに必要に応じて、注射可能な医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。生理学的に適合する緩衝剤には、ハンクス溶液、リンゲル液、あるいは生理的塩類緩衝液があるが、これらに限定されない。必要に応じて、吸収促進製剤(例えばリポソーム類)を利用してもよい。
【0128】
経粘膜投与のため、透過させるべき障壁に適する浸透剤を製剤に使用することができる。
【0129】
非経口投与(例えばボーラス注射又は連続点滴)のための医薬製剤には、水溶性形態の活性化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)の水溶液がある。さらに活性化合物の懸濁液を適当な油性注射懸濁剤として調製してもよい。適当な親油性溶媒又は媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)あるいは他の有機油(例えば大豆油、グレープフルーツ油又は扁桃油)、あるいは合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド)、あるいはリポソーム類がある。水性注射懸濁剤は、懸濁剤の粘度を上げる物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストラン)を含んでもよい。必要に応じて、懸濁剤は、適当な安定剤、又は高濃度の溶液の調製を可能にするよう化合物の溶解度を上げる適当な物質をさらに含むこともできる。注射用製剤は、単位剤形(例えばアンプル又は反復投与容器)で保存剤を添加して提供することができる。組成物は、油性媒体又は水性媒体中の懸濁剤、溶液、又は乳剤のような形態をとることができ、また、製剤化剤(例えば懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含んでもよい。一方、使用前、有効成分は、適当な賦形剤(例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水)を用いて構成するため、粉末の形態であってもよい。
【0130】
経口投与のため、当該技術においてよく知られた製薬上許容される担体と活性化合物とを合わせることにより、化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)を容易に製剤にすることができる。そのような担体は、本発明の化合物を、治療すべき患者が経口摂取できるよう、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などの製剤にすることを可能にする。経口用医薬製剤は、活性化合物を固体の賦形剤と合わせ、得られた混合物を必要に応じて粉砕し、そして必要に応じて適当な助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して錠剤又は糖衣錠の核を得ることにより、得ることができる。適当な賦形剤には、特に、充填剤、例えば糖類(ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む)、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)がある。必要に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)を加えてもよい。糖衣錠核は適当なコーティングが施されている。この目的のため、高濃度の糖溶液を用いることができ、該糖溶液は、必要に応じて、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のためあるいは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤又は糖衣錠のコーティングに染料又は顔料を添加することができる。この目的のため、高濃度の糖溶液を用いることができ、該糖溶液は、必要に応じて、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のためあるいは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤又は糖衣錠のコーティングに染料又は顔料を添加することができる。
【0131】
経口で使用できる医薬製剤には、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル剤、さらにはゼラチン及び可塑剤(例えばグリセロール又はソルビトール)からなるソフトシールドカプセル剤がある。プッシュ−フィットカプセル剤は、有効成分(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)と合わせて充填剤(例えばラクトース)、結合剤(例えばデンプン)、及び/又は滑剤(例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム)、及び必要に応じて安定剤を含むことができる。ソフトカプセル剤において、活性化合物は、適当な液体(例えば脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール)に溶解又は懸濁することができる。さらに安定剤を加えてもよい。全ての経口投与用製剤がその投与に適した用量となっていることが望ましい。
【0132】
口腔投与のため、組成物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)は通常の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態をとることができる。
【0133】
吸入による投与のため、本発明に従って使用される化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)は、適当なプロペラント(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガス)の使用とともに加圧容器又はネブライザから供給できるエーロゾルスプレーの形態で送達することが有利である。加圧エーロゾルの場合、計測量を送るバルブを設けることにより、用量単位を決めることができる。吸入器又は噴霧器で使用するための例えばゼラチンからなるカプセル及びカートリッジを、化合物と適当な粉末基剤(例えばラクトース又はデンプン)との粉末混合物を含むよう調製することができる。
【0134】
眼内、鼻腔内、及び耳介内の送達を含む使用のための製薬技術においてよく知られた種々の医薬組成物がさらに本明細書に開示される。これらの使用のための適当な浸透剤は当該技術において一般的に知られている。眼内送達用の医薬組成物には、水溶性形態の(例えば点眼剤)又はゲランガムにおける活性化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)の眼科用水性液剤(Shedden他,Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))又はヒドロゲル(Mayer他,Ophthalmologica,210(2):101−3(1996))、眼軟膏剤、懸濁性点眼剤(例えば液体の担体媒質中に懸濁されたミクロ粒子、薬物含有小ポリマー粒子(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、脂質溶解性製剤(Alm他,Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、ミクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999))、並びに眼球インサートがある。上記参考文献はすべて参照によりその内容が本明細書に組み込まれる。そのような適当な医薬製剤は、多くの場合そして好ましくは、安定性及び快適性のため、滅菌され、等張性となり、かつ緩衝されるよう調製される。また鼻腔内送達用の医薬組成物には、滴剤及びスプレー剤があり、それらは多くの場合、正常な線毛作用の維持を確保するため多くの点で鼻の分泌物をシミュレートして調製される。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(参照によりその内容はすべて本明細書に組み込まれる)に開示されるように、また当業者によく知られているとおり、適当な製剤は、多くの場合そして好ましくは、等張性であり、pH5.5〜6.5を維持するようわずかに緩衝されており、また多くの場合そして好ましくは、抗菌性の保存剤及び適当な薬物安定剤を含むものである。耳介内送達用の医薬組成物には、懸濁剤及び耳の局所的塗布のための軟膏剤がある。そのような耳用製剤のための一般的な溶媒には、グリセリン及び水がある。
【0135】
また化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)は直腸用組成物(例えば座剤又は保持用浣腸剤(例えばカカオ脂又は他のグリセリドなどの通常の座剤基剤を含む))に調製することができる。
【0136】
上記製剤に加えて、化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)は、デポ製剤として調製することもできる。そのような長時間作用型の製剤は、移植により(例えば皮下又は筋内で)あるいは筋肉注射により投与することができる。従って、例えば、化合物は、適当なポリマー材料又は疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)を用いて、あるいはイオン交換樹脂を用いて、あるいはゆるやかに溶解する誘導体として(例えばゆるやかに溶解する塩として)製剤化される。
【0137】
疎水性化合物に対して適当な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水性相を含む共溶媒系とすることができる。使用される一般的な共溶媒系の一つはVPD共溶媒系であり、これは3%w/vベンジルアルコール、8%w/v非極性界面活性剤ポリソルベート80(商標)、及び65%w/vポリエチレングリコール300、無水エタノール(規定の体積まで仕上げる)の溶液である。当然のことながら、共溶媒系の組成は、その溶解性及び毒性の性質を損なうことなく顕著に変えることができる。また、共溶媒成分の種類を変えてもよい。例えば、他の低毒性で非極性の界面活性剤をポリソルベート80(商標)の代わりに使用してもよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズを変えてもよく、他の生体適合性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン)をポリエチレングリコールの代わりに使用してもよく、また他の糖類又は多糖類をデキストロースの代わりとしてもよい。
【0138】
一方、疎水性医薬化合物に対して他の送達系を使用してもよい。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物用の送達ビヒクル又は担体のよく知られた例である。通常代償として毒性が高くなるが、ある特定の有機溶媒(例えばジメチルスルホキシド)を用いることもできる。さらに、化合物は、徐放系(例えば治療剤を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)を用いて送達することができる。種々の徐放性材料が確立されており、当業者によく知られるところである。徐放性カプセル剤は、その化学的性質に応じて、化合物を数時間又は数週間〜最高100日以上の間放出する。治療剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、蛋白質の安定化のためさらなる戦略を用いてもよい。
【0139】
細胞内に投与することを目的とする薬剤は、当業者によく知られた手法を用いて投与することができる。例えば、そのような薬剤はリポソームに封入することができる。リポソーム形成時に水溶液中に存在するすべての分子は、水性の内部に組み込まれる。リポソームの内容物は、外の微小環境から保護されるとともに、リポソームは細胞膜と融合するため、効率的に細胞質中に送達される。リポソームを組織特異的抗体で被覆してもよい。リポソームは、所望の器官を標的化するようになり、所望の器官によって選択的に取り込まれる。一方、小さな疎水性有機分子は、直接細胞内に投与してもよい。
【0140】
追加の治療薬又は診断薬を医薬組成物に組み込んでもよい。その代わりに又はそれに加えて、医薬組成物は、他の治療薬又は診断薬を含む他の組成物と組み合わせてもよい。
【0141】
ここに記載する組成物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)は、任意の適当な手段により患者に投与することができる。限定されないが、投与方法の例には、特に以下のものがある:(a)経口経路による投与(その投与には、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、スプレー剤、シロップ剤、又は他のそのような剤形による投与がある)、(b)非経口経路による投与(例えば、直腸、膣、尿道内、眼内、鼻腔内、又は耳介内。その投与には、水性懸濁剤、油性製剤などとして、あるいは、点滴、スプレー剤、座剤、軟膏、軟膏剤などとしての投与がある)、(c)注射による投与(皮下、腹腔内、静脈内、筋内、皮内、眼窩内、包内、脊椎内、胸骨内などであって、注入ポンプによる送達を含む)、(d)局部的投与(例えば、腎臓又は心臓の部分に直接注入(例えばデポ移植により))、並びに(e)局所的投与(活性化合物を生きた組織に接触させるため当業者が妥当と考えるもの)。
【0142】
投与に適する組成物(例えば組成物、ポリマー複合体、疎水性薬物及び/又はポリマー複合体を有する作用因子)には、その目的を達成するのに有効な量で有効成分が含まれる組成物がある。本明細書に開示の化合物の用量として必要とされる治療上有効な量は、投与の経路、治療される動物(ヒトを含む)の種類、及び対象となる特定の動物の身体的性質による。用量は、所望の効果を得るため調整することができるが、体重、食生活、並存する薬物治療、当業者が認識するであろう他の要因による。より具体的には、治療上有効な量は、病状を防ぎ、軽減し、又は寛解するのに有効な化合物の量、又は、治療される対象の生存を延ばすのに有効な化合物の量を意味する。治療上有効な量の決定は、特に本明細書の詳細な開示に照らして、当業者に十分可能な範囲の事項である。
【0143】
当業者に容易に理解されるとおり、インビボで有用な投与すべき用量及び特定の投与形態は、年齢、体重、治療される哺乳動物の種類、使用される特定の化合物、及びそれらの化合物を使用する特定の用途による。当業者は日常的な薬理学的方法を用いて、有効な用量のレベル(すなわち所望の結果を得るために必要な用量のレベル)を決定することができる。典型的に、生成物をヒトの臨床用途に用いる場合、より低い用量レベルから始め、所望の効果が得られるまで、用量レベルを上げていく。一方、確立された薬理学的方法を用いて、本方法により特定される組成物の有効な用量及び投与経路を確立するため、可能なインビトロ研究を採用してもよい。
【0144】
非ヒト動物の研究では、可能性のある生成物の使用は、一般的により高い投与量レベルから始められ、所望の効果がもはや得られなくなるか又は有害な副作用が消えるまで投与量が減らされる。投与量は、所望の効果及び治療指標に応じて、広い範囲で変わる可能性がある。典型的には、投与量は、約10マイクログラム/kg〜100mg/kg体重、好ましくは約100マイクログラム/kg〜10mg/kg体重とすることができる。一方、投与量は、当業者に明らかなとおり、患者の表面積に基づき算出することができる。
【0145】
ここに記載する組成物についての的確な製剤、投与経路、及び投与量は、患者の症状を見て、個々の医師が選択することができる(例えばFingl他,1975,“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)参照、特にCh.1,p.1参照)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者の体重kgあたり0.5〜1000mgとすることができる。投薬は、患者の必要に応じて、1日又は2日以上のうちに1回又は一連の2回以上の投与とすることができる。少なくともある症状に対していくつかの化合物のヒトへの投与量が確立されている場合、本発明は、それと同じ投与量を用いるか、あるいは、確立されたヒトへの投与量の約0.1%〜500%、より好ましくは約25%〜250%を用いることができる。新たに見出されたここに記載する組成物の場合のようにヒトへの投与量が確立していない場合、適切なヒトへの投与量は、ED50又はID50の値から推測することができ、あるいは、動物での毒性試験及び効力試験により限定されるように、インビトロ又はインビボの試験から得られる他の適切な値から推測することができる。
【0146】
なお、担当の医師は、毒性や臓器不全に起因してどのようにそしていつ投与を終了、中止、又は調整すべきか理解するはずである。逆に、担当の医師は、臨床反応が十分でない(毒性を除いて)場合、より高いレベルに治療を調整することも理解するはずである。目的とする疾患の処置における用量の大きさは、治療すべき症状の重症度及び投与経路によって変わってくる。例えば、症状の重症度は、部分的に、従来の予後評価法によって評価することができる。さらに、用量、場合によっては投薬頻度も、個々の患者の年齢、体重、及び反応による。獣医学においては、上述したことに相当するプログラムを用いることができる。
【0147】
的確な投与量は薬物ごとに決定することになるが、多くの場合、投与量に関していくらかの一般化を行うことができる。例えば、成人の患者に対する1日の投薬計画は、経口用量で各有効成分0.1mg〜2000mg、好ましくは1mg〜500mg、例えば5〜200mgとすることができる。他の実施形態において、静脈内、皮下、又は筋内の用量で、各有効成分0.01mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mg、例えば1〜40mgが使用される。製薬上許容される塩を投与する場合、投与量は遊離ベースとして算出することができる。いくつかの実施形態において、組成物は1日1〜4回投与される。一方、本発明の組成物は、連続的な静脈内点滴により、好ましくは各有効成分1日1000mgまでの用量で投与することができる。当業者に明らかなとおり、ある特定の状況では、特に進行性の病気又は感染を有効かつ積極的に治療するため、上述した好ましい投与量範囲を超えた、あるいははるかに超えた量で、本開示の化合物を投与する必要がある場合がある。いくつかの実施形態において、化合物は、連続的な治療期間の間、例えば1週間以上、あるいは、数か月又は数年、投与されることとなる。
【0148】
投与量及び投与間隔は、調節作用が持続するのに十分な活性成分の血漿濃度、すなわち最小有効濃度(MEC)が得られるよう、個々に調節することができる。MECは、各化合物によって変わるが、インビトロのデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の性質及び投与経路による。しかしながら、HPLCアッセイ又はバイオアッセイを使用して血漿濃度を測定することができる。
【0149】
MEC値を用いて投与間隔を決定することもできる。期間の10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の間、MECより高い血漿濃度が維持される投薬計画を用いて組成物を投与することが望ましい。
【0150】
局所的投与又は選択的摂取の場合、薬物の有効な局所的濃度は、血漿濃度と無関係であり得る。
【0151】
投与される組成物の量は、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、処方する医師の投与方法及び診断方法によって変わる場合がある。
【0152】
本明細書に開示される化合物(例えば組成物、ポリマー複合体、ポリマー複合体が有する疎水性薬物及び/又は作用因子)は、公知の方法を用いて効力及び毒性に関し評価することができる。例えば、特定の化合物の毒性、又は、ある特定の化学部位が共通する化合物のサブセットの毒性は、細胞株(例えば哺乳動物の細胞株、好ましくはヒトの細胞株)に対するインビトロの毒性を測定することによって、特定することができる。そのような試験の結果は、多くの場合、動物(例えば、哺乳動物、より具体的にはヒト)における毒性の予測となる。一方、動物モデル(例えばマウス、ラット、ウサギ、又はサル)において特定の化合物の毒性を、公知の方法を用いて調べることができる。特定の化合物の効力は、いつくかの認められた方法、例えばインビトロの方法、動物モデル、又はヒトの臨床試験を用いて確立することができる。ほぼすべての種類の病気(例えば癌、心臓血管の疾患、及び種々の免疫不全があるがこれらに限定されない)についてインビトロモデルの存在が認められる。同様に、そのような症状を治療する化学物質の効力を確立するため、可能な動物モデルを使用してもよい。効力を調べるためのモデルを選択する場合、適当なモデル、用量、及び投与経路、並びに投薬計画を選択するよう、通常の技術水準により当業者を導くことができる。もちろんヒトの臨床試験を用いてヒトにおける化合物の効力を調べることもできる。
【0153】
必要に応じて、ここに記載する組成物は、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含むことができるパック又はディスペンサ装置において提供してもよい。例えばパックは、金属又はプラスチックの箔、例えばブリスターパックを含んでよい。パック又はディスペンサ装置は、投与のための説明書が付随されている場合がある。またパック又はディスペンサは、医薬の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で容器に関する通知が付随されている場合もある。そのような通知は、ヒト又はヒト以外の動物に投与するための薬物の形態を該機関が承認していることを反映するものである。そのような通知は、例えば、処方薬又は承認された製品への挿入物について米国食品医薬品局が認めた表示とすることができる。また、ここに記載する、適合する医薬担体中に製剤化される組成物は、表示される症状の治療のため、調製され、適当な容器に収容され、そして表示を付与することができる。
【0154】
式(I)の繰り返し単位を有するポリマー及びコポリマーは、多くの異なる用途を有することができる。一実施形態により疾患又は症状を治療又は寛解する方法が提供され、該方法は、疾患又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物にここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を投与することを有する。別の実施形態により、疾患又は症状を治療又は寛解するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。一実施形態において、疾患又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択されるものである。一実施形態において、疾患又は症状は、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫から選択されるものである。
【0155】
一実施形態により疾患又は症状を診断する方法が提供され、該方法は、疾患又は症状の診断が必要な哺乳動物にここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を投与することを有する。別の実施形態により、疾患又は症状を診断するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。一実施形態において、疾患又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択されるものである。一実施形態において、疾患又は症状は、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫から選択されるものである。
【0156】
一実施形態により組織の一部を造影する方法が提供され、該方法は、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を組織の一部に接触させることを有する。別の実施形態により、組織の一部を造影するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。いくつかの実施形態において、造影される組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及び/又はメラノーマ腫瘍からの組織とすることができる。
【実施例】
【0157】
本明細書に記載される実施形態をさらに説明するため以下の実施例を提供するが、それらは本発明の技術範囲を限定するものではない。
【0158】
(材料)
分子量の異なるポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(多角度光散乱(MALS)に基づく平均分子量41400(PGA(97k))、17600(PGA(44k))、16000(PGA(32k))、及び10900(PGA(21k))ダルトン);N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC);ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt);ピリジン;4−ジメチルアミノピリジン(DMAP);N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF):ガドリニウム−酢酸;クロロホルム;カンプトテシン、及び重炭酸ナトリウムを、Sigma−Aldrich Chemical Companyから購入した。ポリ−L−グルタミン酸塩は、2N塩酸溶液を用いてポリ−L−グルタミン酸に変換した。トリフルオロ酢酸(TFA)はBioscienceから購入した。L−グルタミン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Glu(OtBu)−OtBu・HCl)、N−α−CBZ−L−グルタミン酸α−ベンジルエステル(Z−Glu−OBzl)は、Novabiochem(ラホーヤ、カリフォルニア州)から購入した。パクリタキセルは、PolyMed(ヒューストン、テキサス州)から購入した。H−パクリタキセルをMoravek Biochemicals,Inc.から購入した。細胞毒性MTT試験(細胞の生存率)のためのスルホルホダミンB色素は、Molecular Imaging Products Company(Michigan)から購入した。化学薬品p−NH−Bn−DPTA−ペンタ−(t−Buエステル)は、Macrocyclics(ダラス、テキサス州)から購入した。
【0159】
H NMRはJoel(400MHz)より入手したものであり、粒子径はZetalPals(Brookhaven Instruments Corporation)によって測定した。マイクロ波による化学処理はBiotageにおいて行った。ポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)と多角度光散乱(MALS)検出器(Wyatt Corporation)とを組み合わせて測定した。ポリマー−パクリタキセル複合体中のパクリタキセルの含量は、メタノール中既知濃度のパクリタキセルを用いて作成した検量線に基づき、UV−可視分光測定法(Lambda Bio 40,PerkinElmer)により見積もった(λ=228nm)。
【0160】
ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を、ポリグルタミン酸ナトリウム塩から、米国特許公開番号第2007-0128118(2006年12月1日出願、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載された手順に従って調製した。特に本明細書に記載されるポリマー(例えばポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)、ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸、及びポリ−(γ−L−アルパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸)の合成を説明する目的のため、その内容すべてが本明細書に組み込まれる。ポリ(β−アスパルチル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(PGA−21−A−パクリタキセル−20)及びポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(PGA−21−G−パクリタキセル−20及びPGA−32−G−パクリタキセル−20)を、米国特許出願第2007−0128118号(2006年12月1日出願)に記載される手順に従って調製した。ポリ−L−グルタメート−パクリタキセル複合体(PGA−PTX)の合成を、先の文献に報告されているとおり行った。Liら“Complete Regression of Well−established tumors using a novel water−soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate”Cancer Research 1998,55,2404−2409参照(それらの内容は参照によりその全体が本明細書に援用されたものとする)。
【0161】
ポリマーの平均分子量は、下記のシステム及び条件(以下、MALS検出器を用いたHeleosシステムと呼ぶ)を使用して測定した。
(SEC−MALS分析条件)
HPLSシステム:Agilent1200
カラム:Shodex SB 806M HQ(プルランに対する排除限界は20000000である。粒子径:13ミクロン、サイズ(mm)ID×長さ;8.0×300)
移動相:1×DPBS又はDPBS中1%LiBr(pH7.0)
流速:1ml/分
MALS検出器:WyattからのDAWN HELEOS
DRI検出器:WyattからのOptilab rEX
オンライン粘度計:WyattからのViscoStar
ソフトウェア:WyattからのASTRA5.1.9
サンプル濃度:1〜2mg/ml
注入量:100μl
ポリマーのdn/dc値:0.185を測定に使用した。
実際のサンプルを流す前にBSAを対照として使用した。
【0162】
実施例1
(PGA−21−G−パクリタキセル−20を使用した第1のパクリタキセル製剤)
PGA−21−G−パクリタキセル−20(110mg)(ポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン−19800の出発ポリマーから調製されたもので、パクリタキセルの含量が20重量%のもの)を蒸留水(3mL)に溶解した。この試料を5分間超音波処理した。次いで、パクリタキセル(22mg)のエタノール(0.4mL)溶液を、ピペットを用いて試料中に添加した。次いで溶液の混合物をさらに5分間超音波処理した。得られた混合物を、凍結乾燥し、そしてさらなる実験まで−20℃で保存した。
【0163】
実施例2
(PGA−21−G−パクリタキセル−20を使用した第2のパクリタキセル製剤)
PGA−21−G−パクリタキセル−20(110mg)を蒸留水(3mL)に溶解した。この試料を5分間超音波処理した。次いで、パクリタキセル(11mg)のエタノール(0.4mL)溶液を、ピペットを用いて試料中に添加した。次いで溶液の混合物をさらに5分間超音波処理した。得られた混合物を、凍結乾燥し、そしてさらなる実験まで−20℃で保存した。
【0164】
実施例3
(PGA−32−G−パクリタキセル−20を使用した第1のパクリタキセル製剤)
PGA−32−G−パクリタキセル−20(110mg)(ポリ−(γ−グルタミル)−ポリ−L−グルタミン−37400の出発ポリマーから調製されたもので、パクリタキセルの含量が20重量%のもの)を蒸留水(3mL)に溶解した。この試料を5分間超音波処理した。次いで、パクリタキセル(22mg)のエタノール(0.4mL)溶液を、ピペットを用いて試料中に添加した。次いで溶液の混合物をさらに5分間超音波処理した。得られた混合物を、凍結乾燥し、そしてさらなる実験まで−20℃で保存した。
【0165】
実施例4
(エタノール:クレモホール(登録商標)を用いた第1の対照パクリタキセル製剤)
エタノールとクレモホール(ポリエトキシル化ヒマシ油(リシノール酸、ポリグリコールエステル、グリセロールポリグリコールエステル類、及びポリグルコール類の混合物))が1:1の割合の溶液に、30mg/mLの濃度でパクリタキセルを溶解することにより、ポリマーによらない対照試料を調製した。この溶液は、試験に用いる前、注射の直前に6mg/mLの濃度まで生理食塩水によってさらに希釈した。
【0166】
実施例5
(薬物動力学及び薬力学のためのPGA−21−G−パクリタキセル−20を使用した第3のパクリタキセル製剤)
PGA−21−G−パクリタキセル−20(110mg)を蒸留水(3mL)に溶解した。この試料を5分間超音波処理した。次いで、パクリタキセル(22mg)のエタノール(0.5mL)溶液及びH−パクリタキセル220μl(lmCi/mL)(トリチウムは検出目的のため)を、ピペットを用いて試料中に添加した。溶液の最終体積を蒸留水で調整して4mLとした。この溶液の混合物をさらに5分間超音波処理した。溶液を5つの小さなバイアル(0.8mL/バイアル)のそれぞれに分けた。バイアル中の試料を凍結乾燥し、そしてさらなる実験まで低温(−20℃)で保存した。
【0167】
実施例6
(PKPDのためエタノール:クレモホール(登録商標)を用いた第2の対照パクリタキセル製剤)
エタノールとクレモホールが1:1の割合の溶液に、30mg/mLの濃度でパクリタキセル(22mg)を溶解することにより、対照試料を調製し、そして、H−パクリタキセル220μl(lmCi/mL)(トリチウムは検出目的のため)を、ピペットを用いて試料中に添加した。この溶液は、試験に用いる前、注射の直前に6mg/mLの濃度まで生理食塩水によってさらに希釈した。
【0168】
実施例7
(細胞培養及び調製)
B16F0細胞をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド州)から購入し、10%胎児ウシ血清及び100単位/mLペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において成長させた。細胞は37℃で5%CO環境において成長させた。培養培地を除去し、処分した。細胞をダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS)で濯ぎ、次いでトリプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(0.5ml)を細胞に添加し、そして細胞を倒立顕微鏡下で観察してその分散を確認した。完全成長培地(6.0〜8.0ml)を添加し、そして細胞をゆっくりピペットに吸い込んだ。細胞懸濁液の適当なアリコートを新たな培養プレートに移した。さらなる実験の前に細胞を37℃で5%COにおいて24時間成長させた。
【0169】
実施例8
(インビトロ細胞毒性MTT試験)
実施例1〜4で調製した製剤を、生理食塩水(滅菌水中0.9%NaCl)でパクリタキセルに対し6mg/mLの濃度に再構成した。パクリタキセルを含有するここに記載の製剤それぞれを、該薬物のいくつかの異なる濃度で、B16F0黒色腫細胞の増殖に対する効果について評価した。細胞毒性MTTアッセイを、Monks他,JNCI 1991,83,757−766(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に報告されるとおり行う。
【0170】
実施例9
(薬物動態学的研究動物及び腫瘍のモデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30g、オス)をCharles River Lab(ウィリングトン、マサチューセッツ州)から購入した。B16F0細胞株をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド州)から購入した。10%胎児ウシ血清、2μMグルタミン、1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、100U/mlペニシリン、及び100ug/mlストレプトマイシンで補足したDMEMにおいて、B16F0細胞株を培養した。細胞培養物から採集したB16FO細胞を数えて5×10/mLの濃度に再懸濁した。TBシリンジを用いて、細胞含有溶液0.4mL(合計2×10細胞)を各マウスに皮下注射によって投与した。一動物あたり4種の腫瘍を接種した。腫瘍の位置は、右肩、左肩、右臀部、及び左臀部であった。
【0171】
実施例9a
実施例5で調製した製剤を、6mg/mLのパクリタキセル濃度となるよう生理食塩水(滅菌水中0.9%NaCl)で再構成した。実施例9からのマウスの全個体群に対して平均腫瘍体積が200〜300mm(6〜8mm直径)に一旦到達したら、腫瘍を有する各マウスに対し、実施例5に記載のPGA−21−G−パクリタキセル−20を使用したパクリタキセル製剤20mg/kg又は実施例6に記載のエタノール及びクレモホールを使用したパクリタキセル製剤20mg/kgのいずれかを、1回IVボーラス注射した。それぞれの薬物に対し、4匹のマウスの群に種々の時点で麻酔をかけた。麻酔の時点は0.5時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後であった。
【0172】
0.5mlの量の血液を、心臓穿刺又は眼窩後方穿刺により採取した。その後、マウスを麻酔から覚める前に屠殺した。各マウスの血液試料を11000rpmで遠心分離にかけた。血液試料からの上清血漿(0.2〜0.3mL)を集め、そして新たなバイアルに移した。各試料の血漿試料0.1niLをそれぞれ新たな10mLのバイアルに移し、そして液体シンチレーション溶液(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含量を、液体シンチレーション計数器LS6500(Beckman)を用いて分析し、そして各試料の検量線から算出した。その結果を図2に示す。
【0173】
PGA−21−G−パクリタキセル−20を使用したパクリタキセル製剤のパクリタキセル濃度は、対照試料よりも、長期間にわたって高く維持された。これらの結果から、PGA−21−G−パクリタキセル−20を使用した新規なパクリタキセル製剤は、エタノール及びクレモホールを使用したパクリタキセル製剤に比べて、循環血液中でより長い期間有効であることがわかる。
【0174】
実施例9b
実施例5で調製した製剤を、6mg/mLのパクリタキセル濃度となるよう生理食塩水(滅菌水中0.9%NaCl)で再構成した。実施例9からのマウスの全個体群に対して平均腫瘍体積が200〜300mm(6〜8mm直径)に一旦到達したら、腫瘍を有する各マウスに対し、実施例5に記載のPGA−21−G−パクリタキセル−20を使用したパクリタキセル製剤20mg/kg又は実施例6に記載のエタノール及びクレモホールを使用したパクリタキセル製剤20mg/kgのいずれかを、1回IVボーラス注射した。それぞれの薬物に対し、4匹のマウスの群に種々の時点で麻酔をかけた。麻酔の時点は0.5時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後であった。
【0175】
2つの臀部及び2つの肩からそれぞれ腫瘍を採取した。その後、マウスを麻酔から覚める前に屠殺した。約80〜180mgの各腫瘍をシンチレーションバイアルに入れ、そして腫瘍をソルエン(腫瘍可溶化剤)(1mL)で消化した。次いで、0.1mLの消化された腫瘍を10mLバイアルに移し、そして液体シンチレーションカクテル(5mL)をバイアルに加えた。パクリタキセルの含量を、液体シンチレーション計数器LS6500(Beckman)を用いて分析し、そして各試料の検量線から算出した。その結果を図3に示す。
【0176】
PGA−21−G−パクリタキセル−20を使用した製剤によるパクリタキセルの腫瘍内蓄積は、対照試料よりも、長期間にわたって高く維持された。これらの結果から、PGA−21−G−パクリタキセル−20を使用したパクリタキセル製剤は、エタノール及びクレモホールを使用したパクリタキセル製剤に比べて、腫瘍中の蓄積が向上していることがわかる。
【0177】
実施例10
(インビボ効力試験のための動物及び腫瘍モデル)
ヌードマウス(6〜8週齢、体重21〜25g、雄)をCharles River Lab(Willington,MA)から購入した。B16−F0−EGFP安定細胞を、10%ウシ血清、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンで補足したDMEM中において増殖させた細胞培養物に維持した。接種の前に細胞を48時間分裂させ、採取時が対数増殖期となるようにした。トリプシン−EDTAを用いて組織培養物から細胞を採取し、そして生存細胞数を、トリパンブルーの存在下で血球計において数えることにより、測定した。血清を用いることなく細胞をDMEM培地中5×10/mlの濃度に懸濁した。次いで、1ccインスリンシリンジを用いて腫瘍細胞懸濁物0.1mlを注射することにより、各肩及び各臀部(マウス1匹あたり4部位)に対し、5×10細胞/mlの濃度で腫瘍細胞懸濁物を接種した。
【0178】
腫瘍接種の日、マウスを逐次6群に分け、そして3匹のマウスを1つのケージに収容し、合計12のケージとした。腫瘍接種時の麻酔下において各マウスの耳に穴をあけ、実験を通じてそれぞれが識別できるようにした。各ケージには、薬物の名称、収容マウスに投与した薬物の用量、及び収容したマウスの数を添付した。
【0179】
実施例10a
実施例1に従って調製したポリマーの最大耐量(MTD)における体重減少毒性を測定した。ここでMTDは、2週間以内に最大15%の体重減少をもたらす用量として定義する。実施例1で調製した製剤を、生理食塩水(滅菌水中0.9%NaCl)でPGA−21−G−パクリタキセル−20に対して50mg/mLの濃度に再構成した。この実施例に対する陽性の対照は、抗癌薬PGA−21−G−パクリタキセル−20であった。また生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない陰性の対照として用いた。
【0180】
動物に注射する薬物の実際量は、各動物の体重によって決定した。マウス全個体群の平均腫瘍サイズが約15〜約50mm(腫瘍サイズは式(w×l)/2(式中、lは腫瘍の最長直径であり、wはミリメートルで測定した最長直径に垂直な直径である)から見積もった)に達したとき、マウスに最初の薬物投与を行った。マウスは、2日連続して2回薬物投与を尾の静脈注射により受け、投与は麻酔なしで行った。注射の日に新鮮なストック溶液を調製した。薬物のストック溶液は、1ccシリンジに吸引し、静脈内に注射した。マウスの体重は0.1g単位で測定した。ヌードnu/nuマウスには、PGA−21−G−20ポリマー単独(用量175mg/kg)又はPGA−21−G−20ポリマーによるパクリタキセル製剤(用量225mg/kg)のいずれかを、高い投与量で注射した。各薬物処置の際の体重変化(%)をそれぞれ観測し、経時的(日)に記録した。その結果を図4に示す。
【0181】
PGA−21−G−パクリタキセル−20と組み合わせたパクリタキセル製剤では、PGA−21−G−パクリタキセル−20単独と比べて、より高い用量で同等の体重減少がみられた。これらの結果は、本発明のPGA−21−G−20を使用した製剤が対照試料よりもマウスに対して毒性が低いことを示している。
【0182】
実施例10b
(インビボ効力試験)
実施例10記載のヌードnu/nuマウスにおいてB16F0−EGF黒色腫に対する最大耐量(MTD)でのPGA−21−G−20ポリマーと組み合わせたパクリタキセル製剤及びPGA−21−G−20ポリマー単独の抗腫瘍効果を経時的に測定した。生理食塩水を陰性の対照として用いた。実施例1で調製した製剤を、生理食塩水(滅菌水中0.9%NaCl)でPGA−21−G−パクリタキセル−20に対して50mg/mLの濃度に再構成した。この実施例において陽性の対照は、抗癌薬PGA−21−G−パクリタキセル−20であった。生理食塩水を、抗腫瘍薬を含まない陰性の対照として用いた。
【0183】
動物に注射する薬物の実際量は、各動物の体重によって決定した。本実験におけるマウス全個体群の平均腫瘍サイズが15〜50mmに達したとき、マウスに最初の薬物投与を行った。マウスは、2日連続して2回薬物投与を、尾静脈への注射により麻酔なしで受けた。注射の日に新鮮なストック溶液を調製した。薬物のストック溶液は、1ccシリンジに吸引し、静脈内に注射した。腫瘍のサイズは0.1mm単位で測定した。ヌードnu/nuマウスには、PGA−21−G−20ポリマー(用量175mg/kg)又はPGA−21−G−20によるパクリタキセル製剤(用量225mg/kg)のいずれかを、高い投与量で注射した。各薬物処置の際の腫瘍体積変化をそれぞれ観測し、経時的(日)に記録した。その結果を図5に示す。
【0184】
PGA−21−G−20と組み合わせたパクリタキセル製剤は、顕著に腫瘍の増殖を阻害した。これらの結果は、ここに記載した第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物、及びポリマー複合体の組成物が有効な抗癌剤であることを示している。
【0185】
当業者に明らかなとおり、多数の種々の変更が、本発明の精神を逸脱することなく可能である。従って、当然のことながら、本発明の形態は、単に例示であって本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の疎水性薬物、第2の疎水性薬物及びポリマー複合体を含む組成物であって、
該ポリマー複合体は、共有結合によらずに該第1の疎水性薬物の少なくとも一部をその中に閉じ込めるポリマーマトリックスを有し、かつ該ポリマー複合体は、式(I):
【化1】

(式中、nは1又は2であり、各Aは独立して酸素又はNRであり、ここでRは水素又はC1−4アルキル基であり、かつR及びRの少なくとも1つは該第2の疎水性薬物を含む基である)の繰り返し単位を有する、組成物。
【請求項2】
及びRの一方のみが該第2の疎水性薬物を含む基である場合、R及びRのもう一方は、水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該ポリマー複合体は、式(II):
【化2】

(式中、mは1又は2であり、各Aは独立して酸素又はNRであり、ここでRは水素又はC1−4アルキル基であり、かつR及びRはそれぞれ独立して水素、アンモニウム、及びアルカリ金属からなる群から選択される)の繰り返し単位をさらに有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
該ポリマー複合体は、式(III):
【化3】

(式中、Rは水素、アンモニウム、又はアルカリ金属である)の繰り返し単位をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
該第1の疎水性薬物は該第2の疎水性薬物と異なる化学構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該第1の疎水性薬物は該第2の疎水性薬物と同じ化学構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
該第1の疎水性薬物の少なくとも1つと該第2の疎水性薬物の少なくとも1つは抗癌薬である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
該抗癌薬がタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該タキサンがパクリタキセル及びドセタキセルから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該タキサンがパクリタキセルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子の位置で式(I)の繰り返し単位に複合化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子の位置で式(I)の繰り返し単位に複合化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
該カンプトテカはカンプトテシンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
該アントラサイクリンはドキソルビシンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
該ポリマー複合体は、該第1の疎水性薬物と該ポリマー複合体の合計重量に対する該第2の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の該第2の疎水性薬物を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
該第1の疎水性薬物は、該第1の疎水性薬物と該ポリマー複合体の合計重量に対する該第1の疎水性薬物の質量比で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の量で存在する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
該第2の疎水性薬物を含む基は、リンカー基をさらに有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
該標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体からなる群から選択される、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
該標的化剤は、α,β−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用するものである、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
該光造影剤はアクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素からなる群から選択される、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
該磁気共鳴造影剤が、Gd(III)化合物を含む、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
該Gd(III)化合物が、
【化4】

を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
該Gd(III)化合物が、
【化5】

を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
該多座配位子が、
【化6】

(式中、各Rはそれぞれ独立して水素、アンモニウム及びアルカリ金属からなる群から選択される。)を含む、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
該多座配位子が、
【化7】

(式中、各Rはそれぞれ独立して水素、アンモニウム及びアルカリ金属からなる群から選択される。)を含む、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
該保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体が、
【化8】

を含む、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
該安定剤がポリエチレングリコールである、請求項2〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
リンカーは、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基からなる群から選択される1つ以上を、式(I)の繰り返し単位に結合する、請求項2〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
該アルカリ金属が、ナトリウムである、請求項2〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
n及びmの少なくとも1つが、1である、請求項3〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
n及びmの少なくとも1つは、2である、請求項3〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1項の組成物を製造する方法であって、
少なくとも部分的にポリマー複合体を溶媒に溶解する工程、及び、
第1の疎水性薬物を少なくとも部分的に溶解されたポリマー複合体と混合して混合物を調製する工程を有する、方法。
【請求項33】
該混合物を乾燥して乾燥形態の組成物を調製することをさらに有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該混合する工程は、該第1の疎水性薬物の溶液を少なくとも部分的に溶解されたポリマー複合体と混合して混合物を調製することを有する、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
疾患又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物に、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の有効量を投与することを有する、疾患又は症状を治療又は寛解する方法。
【請求項36】
該疾患又は症状が、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
該疾患又は症状が、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
疾患又は症状の診断が必要な哺乳動物に請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の有効量を投与することを有する、疾患又は症状を診断する方法。
【請求項39】
該疾患又は症状が、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
該疾患又は症状が、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の有効量を組織の一部に接触させることを有する、組織の一部を造影する方法。
【請求項42】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該ポリマー複合体は、静脈内に投与される、請求項35〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
疾患又は症状の治療用又は寛解用医薬を製造するための請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項45】
該疾患又は症状が、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
該疾患又は症状が、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
疾患又は症状の診断用医薬を製造するための請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項48】
該疾患又は症状が、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
該疾患又は症状が、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項47に記載の使用。
【請求項50】
組織の一部の造影用医薬を製造するための請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項51】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
該ポリマー複合体は、静脈内に投与される、請求項44〜51に記載のいずれか1項の使用。
【請求項53】
疾患又は症状を治療又は寛解するための請求項1〜31に記載のいずれか1項の組成物。
【請求項54】
該疾患又は症状が、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
該疾患又は症状が、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項53に記載の組成物。
【請求項56】
疾患又は症状を診断するための請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
該疾患又は症状が、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
該疾患又は症状が、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
組織の一部の造影するための請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項59に記載の組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−526829(P2010−526829A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507672(P2010−507672)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/063114
【国際公開番号】WO2008/141107
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】