説明

疎水性物質を徐放剤として含有する制御性放出製剤

本発明は、本質的には薬学的に有効な量の薬剤および疎水性物質からなり、乳糖または疎水性の炭水化物ポリマーは存在しない経口投与量形態の徐放性医薬組成物であって、前記薬剤は当該医薬組成物の約25%よりも多い量で存在し、25℃で水10mL当たり約1グラムよりも高い水可溶性を有し、前記疎水性物質は、1atmで少なくとも約40℃から約100℃の範囲の融点を有し、且つ当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%の範囲の量で、且つ当該薬剤よりも少ない量で存在し、前記疎水性物質は前記薬学的組成物のコーティングに存在するものではない徐放性医薬組成物であり;前記医薬組成物が、疎水性物質の不在の下で直接的に圧縮すること、または当該疎水性物質を融解すること、または高切断攪拌器の使用により製造される徐放性医薬組成物に方向付けられる。本発明はまた、前記医薬組成物を製造する方法に方向付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性物質を徐放剤として含有する経口投与量形態、好ましくは錠剤形態にある制御性放出製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
患者および医師の双方にとっての大きな利点は、医薬品が、その薬物が所望される長時間に亘って均一に放出されることにより、最小の数で一日量が投与できるように、製剤化されることである。この効果は、徐放またはゆっくりと放出する組成物を用いることによって達成される。医薬用薬剤または他の活性成分を含む徐放またはゆっくりと放出する組成物は、当該薬剤をより高い濃度で含むように設計され、長時間に亘りヒトまたは動物の胃腸消化管への徐放またはゆっくりとした放出が達成されるような方法で製造される。
【0003】
良好に吸収される経口の徐放またはゆっくりと放出する治療用薬物の投与用形態は、従来の即時放出性投与用形態を上回る固有の利点を有する。当該利点は、薬物の投与回数が少ないことを含み、並びに結果として生ずる、患者の療法コンプライアンス、より持続性の薬物血中濃度応答、より少量で摂取された薬物による治療効果、および副作用の軽減を含む。長期に亘る当該薬剤のゆっくりと且つ安定した放出が提供されることによって、より円滑に且つより持続した血中濃度応答が達成されることによって、吸収された薬物濃度の急激な上昇が緩和または排除される。
【0004】
この目的のために、制御性放出製剤は、幾つかの基準を満たさなくてはならない;即ち、それは薬物の均一で一定した溶解(uniform and constant dissolution)をもたらさなくてならず、更に、それは長時間に亘って有効でなくてはならない。また更に重要なことは、そのような製剤が簡単に作られること、その製造方法が再現性を有すること、更に、当該製造方法によって生産された製品が均一であることである。また更に、異なる薬物が活性成分として当該徐放製剤で使用される場合には、当該製造工程は容易に順応でき、これらの種々の薬物に適応できることが重要である。
【0005】
ポリマーを含む、種々の親水性および疎水性物質が徐放製剤の製造において利用されている。加えて、それらは様々な方法、例えば、溶媒蒸発(solvent evaporation)、加熱融解(heat melting)、直接圧縮(direct compression)および湿式造粒(wet granulation)などによって製造される。それにも拘らず、当該制御性放出を達成するために使用される物質、並びに製造方法が、経口投与量形態の制御性放出パフォーマンスにおいて重大な効果を有することは周知である。例えば、疎水性ポリマーであるエチルセルロースは、薬剤の制御性放出を達成するために使用される。しかしながら、その放出プロフィールは、それをコーティング物質として使用された場合と、直接圧縮性粉末(directly compressible powder)として使用してた場合とでは著しく異なる。更に、マトリックスタイプの錠剤(matrix type tablets)が、エチルセルロースで湿式造粒法を用いて製造される場合には、その放出プロフィールは、エチルセルロースを直接圧縮性粉末として使用することにより、またはエチルセルロースをコーティング物質として使用することにより製造された制御性放出経口投与量形態により示される放出プロフィールとは著しく異なる。その上、仮に当該疎水性物質が徐放性医薬組成物を製造する工程において融解された場合、その放出プロフィールは、異なる方法により製造された制御性放出医薬組成物の放出プロフィールとは異なる。放出プロフィールにおけるこれらの相違は、種々の方法により製造された医薬組成物は「同じものではなく」、「異なるものである」ということを示している。
【0006】
放出プロフィールにおけるこれらの相違は、エチルセルロースを含有する医薬組成物に特有ことではない;他の疎水性物質、例えば、蝋または高級脂肪酸またはアルコールなどを制御性放出剤として含む医薬組成物の放出プロフィールは、制御性放出剤としての当該疎水性物質の一致のみによって左右されるのではなく、更にその医薬組成物を製造する方法によっても左右されるのである。
【0007】
疎水性物質は、薬剤の放出を制御するために使用される。例えば、蝋および脂質は、コーティング物質として使用され、薬物の放出を遅らせる。例えば、コンプリトール888(COMPRITOL(登録商標)888、グリセリルベヘネート(glyceryl behenate))の製造者、ガットエフォース(GATTEFOSSE)は、テオフィリンを含む顆粒および球体に対して、コンプリトール(登録商標)888をホットメルトコーティング(hot melt coating)として異なる濃度で流動床装置(fluid bed equipment)を用いてコーティングしたときの効果を検討した。当該球体のワックスコーティング濃度は、夫々、2重量%、6重量%および10重量%であった。水中での放出プロフィールを測定した。当該蝋の2%(w/w)の濃度では、85%のテオフィリンが1時間以内に放出された。しかしながら、6%濃度の蝋では、55%のテオフィリンが最初の1時間以内で放出され、その35%は5分間で放出されており、また10%(w/w)濃度の蝋では38%のテオフィリンが最初の1時間以内に放出され、その28%は5分間で放出された。この種類の製剤を製造する際に使用される多くの工程を考慮すると、これは、制御性放出製品を形成するための効率のよい方法ではなく、本発明者は、疎水性成分を徐放剤として含有する制御性放出の錠剤を製造するためのより効率のよい工程を見出すための探索を行った。また、本発明者は更に、コーティングに蝋を含ませることなく、疎水性物質を薬物と混合することによって、薬物の放出を制御する方法を見出すための探索も行った。
【0008】
薬剤と混合される際の制御性放出組成物における蝋の使用に関しては多くの文献が存在する。薬剤と共に混合される制御性放出物質として蝋を使用する経口投与量形態における徐放製剤の製造に共通する方法は次の通りである;(a)当該薬物を蝋とともに融解し、次に冷却し、その融解物を粉砕し、最後に賦形剤と混合した後に錠剤にすること;(b)湿式造粒技術(wet granulation techniques)を用いて、有機溶媒を造粒用媒体として利用すること;(c)当該薬物と蝋を高切断攪拌器(high shear mixture)において混合し、当該工程中に生じた熱を均質の混合物を達成するために使用すること;および(d)当該薬物の存在下で当該蝋の融解を達成するために熱放射(heat radiation)を使用すること。これらの方法の全てが厄介であり、危険でもある。
【0009】
これらの技術の大部分は、多くの蝋を使用して、適切な制御性放出製剤を達成しており、その蝋は一般に高濃度で、例えば、投与量形態の30%(w/w)よりも多くの量を薬物に関して1:1よりも多い重量比で存在する。例えば、アブダラー(Abdallah)は、アレックス. J. ファーマ. (Alex. J. Pharm. 1992, 6, 243-246)の中で、3つの選択された親油性ポリマー、プレシロールATO5(Precirol(登録商標)ATO5、グリセリルパルミトステアレート(glyceryl palmito stearate))、プレシロールwL-2155(Precirol(登録商標)wL-2155、ステアリン酸グリセリン)およびコンプリトール888(Compritol(登録商標)888、グリセリルベヘネート)についてイブプロフェンの延長された放出の組成物の製造に関して評価している。その錠剤は、薬物と他の成分を当該ポリマーと共に融解し、当該融解物を冷却し、当該冷却された融解物を圧縮することにより製造された。彼は、その3のポリマーの何れかを10重量%または20重力%の何れかの濃度で用いて製造された200-315ミクロンのサイズの顆粒は、放出を遅らせる効果を示さなかったことを見出した;これらの量で上記で確認された脂質を用いて製造された当該顆粒製剤は、30分以内に当該薬物を完全に放出した。しかしながら、50%濃度のコンプリトール(登録商標)888では、当該顆粒は、ある程度適切な徐放性放出プロフィールを示した。しかしながら、そのような多量の蝋を用いて錠剤を製造すると、必然的に大き過ぎる錠剤になり、従って嚥下がより困難になり、取り分け年配の患者にはより困難になる。本発明者は、従って、相当により少量の疎水性物質を含有する徐放製剤を製造する手段を探索した。
【0010】
ペレス(Perez)らは、PRHSJ(1993, 12, 263-267)の中で、薬物放出における蝋濃度の変更の効果およびマトリックス製剤化の方法について検討した。当該製剤における薬物の量は10%w/wで維持し、これに対して当該蝋の濃度は10%から50%w/wまでの間で変更した。当該薬物製剤は、2つの異なる方法により製造された。1つめの方法は、物理的方法と呼ばれる方法であって、当該薬物、蝋および希釈剤をタービュラ攪拌器(turbula mixer)内で等比希釈(geometric dilution)により20分間混合し、次に、当該混合物を錠剤に圧縮した。第2の方法は、固体分散法(solid dispersion method)と呼ばれる方法であり、この方法では、蝋を融解し、薬物を様々な濃度でその融解された蝋に取り込ませる。当該融解された混合物は凝固するまで放置冷却し、次に凝固塊をスクリーンNo.12を備えたストークス・オッシレーティング造粒機(Stokes oscillating granulator)を通して造粒した。ペレスらは、同濃度の蝋を含む物理的方法により製造された錠剤は、固体分散法により製造された対応する薬物よりも、早い速度で当該薬物を放出することを見出した。物理的混合系により製造された30%(w/w)の蝋を含む錠剤は、約79%の薬物を約6時間以内に放出したのに対し、50%(w/w)の蝋を含む錠剤においては、当該薬物は6時間後に50%の薬物を放出した。他方、固体分散により製造され30%(w/w)で蝋を含む錠剤は、6時間で72%の薬物を放出し、一方、同方法により製造され50%(w/w)の蝋を含む錠剤は、6時間で当該薬物の30%のみを放出した。更に、彼らは、薬物の蝋質物質に対する重量比が1:1よりも大きい場合、例えば、少なくとも3:1の場合に満足な放出プロフィールが得られたことを示した。
【0011】
更にペレスらは、10%(w/w)濃度の蝋では、何れの方法を使用したかには関係なく、その放出プロフィールは不満足なものであったと示した;当該徐放製剤は、何れの方法で製造された場合でも約80%の薬物を約2時間で放出した。
【0012】
従来技術は、蝋質物質が30%以上の濃度であれば、許容される徐放プロフィールが得られるが、それよりも低い濃度、例えば、10%などでは不満足な徐放プロフィールしか得られないことを示した。従って、これらの従来技術の参照文献は、30%未満で蝋を含む徐放製剤の製造からは離れたものを教示するものである。
【0013】
レイリーらは(Reilly, et al.)、AAPS(1991)において、種々の濃度、10%、30%または50%のグリセリルベヘネートを用いた球体および錠剤における10%濃度のアセトアミノフェンの放出プロフィールを調査した。後者の当該錠剤は、直接圧縮または湿式造粒法により製造された。当該参照文献は、当該球体へのグリセリルベヘネートの簡単な組み入れはゆっくりとした放出を提供するのもではないと開示している。当該錠剤においては、しかしながら、10重量%の蝋はどのような徐放効果も提供せず、しかし、30重量%および50重量%の濃度(即ち、グリセリルベヘネートの薬物に対する重量比が3:1または5:1の場合)では、当該錠剤は徐放効果を示した。更に、当該錠剤製剤については、蝋の量が増加すれば、その徐放効果の大きさも増大する。
【0014】
もう1人の発明者テリア(Terrier)は、グリセリルパルミトステアレートの薬物放出における効果について検討した。彼は、サリチル酸ナトリウムを薬剤として、グリセリルパルミトステアレートを賦形剤として40重量%で含有する錠剤であって、湿式造粒法により製造された錠剤が、どのような徐放も示さなかったことに注目している。例えば、50%の薬物が20分後に水中に放出された。
【0015】
上記で当該医薬組成物の製造に使用された方法は、直接圧縮以外の方法により製造された。しかしながら、仮に当該製剤が直接圧縮によって製造されたとしても、当該従来技術により、少なくとも30%の当該蝋が、徐放を達成するためには当該製剤中に必要であったことが示された。例えば、エル・セイドら(El-Sayed, et al.)は、STP.ファーマ.サイエンシーズ(S.T.P. Pharma. Sciences, 1996, 6, 398-401)において、50%のテオフィリンと30%のグリセリルベヘネート、HPMCまたはカルボポール(carbopol)、および残りの賦形剤を含有する製剤を製造した。そのように製造された錠剤は徐放製剤であると示されてはいたが、本発明者は、更に一層少ない、30%(w/w)未満で蝋を含む徐放製剤と、並びにそれを製造するための方法を探索した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、従来技術の欠点を克服し、その目的を達成するための方法を見出した。更に取り分け、本発明者は、簡単な製造工程、例えば、直接圧縮などを用いて制御性放出投与量形態を製造する方法であって、簡単な混合手順の後に種々の成分を圧縮することを含む方法を提供する。本発明者は、効果的な徐放製剤が、従来使用されていたよりも顕著に少ない疎水性物質を組み入れる方法で製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
本発明は、薬学的有効量の薬剤と徐放剤としての疎水性物質を含む錠剤形態の徐放性医薬組成物であって、前記薬剤および疎水性物質は当該医薬組成物のコアに存在し、前記コアは当該医薬組成物の崩壊の原因となる膨張を招く可能性のあるポリマーが除外され、疎水性炭水化物ポリマーを含み、且つ乳糖を含む高濃度の低分子量の水可溶性賦形剤が除外され、前記薬剤は、当該医薬組成物の約25%(w/w)よりも多量に存在し、25℃で10mLの水当たりに約1グラム未満の水可溶性を有し、前記疎水性物質は1atmで少なくとも約40℃から約100℃の範囲の融点を有し、且つ当該薬剤の放出を制御するのに有効な量で存在し、前記疎水性物質は当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%までの範囲の量で、且つ当該薬剤の重量よりも少ない量で存在する徐放性医薬組成物に方向付けられる。好ましくは、当該医薬組成物は、当該疎水性物質の融解または高切断攪拌器の使用を伴わない直接圧縮で製造される。当該医薬組成物は湿式造粒技術を使用して製造されてもよいが、好ましくはそのようには製造されない。
【0018】
本発明はまた、錠剤形態の徐放性医薬組成物を製造する方法であって以下の工程を具備する方法に方向付けられる;
(a)薬剤および疎水性物質並びに任意の滑沢剤および任意の賦形剤および任意の補助剤を混合し、実質的に均質で且つ均一な混合物(substantially homogenous and uniform blend)を形成することと、
前記混合物は当該錠剤の崩壊の原因となる膨張を招く可能性のあるポリマーと高濃度の低分子量水可溶性賦形剤が除外され、前記薬剤は当該医薬組成物の約25重量%よりも多量に存在し、25℃で10mLの水当たり約1グラム未満の水可溶性を有し、前記疎水性物質は1atmで少なくとも約40℃から約100℃までの範囲の融点を有し、且つ当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%の範囲の量で存在する;
(b)工程(a)の生成物を圧縮して、その錠剤を形成すること、
前記医薬組成物は、当該疎水物質の融解と高切断攪拌器(high shear mixer)の使用を伴わずに形成される。
【0019】
当該医薬組成物は湿式造粒により製造されてもよいが、そうでない方が好ましい。
【0020】
もう1つの態様において、本発明は、以下の工程を具備する薬剤を患者に投与する方法に方向付けられる;
(a)薬学的有効量の薬剤と当該医薬組成物からの当該薬剤の放出を制御するために有効な量の疎水性物質を含有する錠剤形態にある徐放性医薬組成物を、前記疎水性物質を融解することや高切断攪拌器を使用することの何れもなしに直接に圧縮することによって製造することと、
前記医薬組成物は前記薬剤と前記疎水性物質を含むが、当該錠剤の崩壊の原因となる膨張を招く可能性のある何れのポリマーも、および高濃度の水可溶性低分子量賦形剤も除外され、前記薬剤は、25℃で10mLの水当たり約1グラム未満の水可溶性を有し、且つ当該医薬組成物中で約25重量%よりも多量に存在し、並びに前記疎水性物質は約40℃から約100℃の範囲の融点を有し、且つ当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%までの範囲で、且つ当該薬剤の重量よりも少ない量で存在する;
(b)工程(a)の生成物を前記患者に投与すること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
先に述べた通り、本発明の1側面は、約40℃よりも高く約100℃未満までの融点を有する疎水性物質を含有する薬学的に活性な薬剤の徐放製剤に方向付けられる。
【0022】
ここで使用される、用語「薬物(drug)」および「薬剤(medicament)」および「活性物質(active substance)」は、互いに交換可能に使用される。更に、用語「制御性放出(controlled release)」および「徐放(sustained release)」は交換可能に使用される。本出願の目的では、「徐放」の語は、当該治療に役立つ活性薬剤または薬物が、動物において当該薬剤の治療に有益な血中濃度(毒性濃度未満)になるように制御された速度で当該製剤から放出され、更に長時間に亘り維持されること、例えば、4、8、12、16または24時間の1投与量形態で提供されることを意味する。
【0023】
本発明の制御性放出製剤は、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与されるべきであり、当該製剤に存在する当該薬剤は薬学的に活性な量で投与される。哺乳動物の語により、脊椎動物門に属する哺乳綱、即ち、体毛および乳腺を有することにより特徴付けられることを意味する。例は、取り分け、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウシ、ヒトなどを含む。本発明の徐放製剤が投与されるべき哺乳動物の好ましい種はヒトである。
【0024】
本発明の医薬組成物は、単位投与量形態にある製剤を含む。ここで使用される「単位投与量形態」の用語は、ヒトを含む哺乳動物に対する1の投与量として都合よく物理的に分離している単位を示し、夫々の単位で、ここで記載される通り、当該疎水性物質、もし存在するのであれば滑沢剤、もし存在するのであれば賦形剤、もし存在するのであれば他の補助剤と関連して、所望の効果を生ずるために計算され予め決められた量の活性物質を含むことを指示する。
【0025】
本発明の製剤は、徐放製剤における使用に適切な広範囲に多様な薬物または活性な薬剤に適用される。
【0026】
代表的な薬剤は、制酸剤、抗炎症性物質、冠状動脈拡張薬、脳血管拡張薬、向精神薬、抗躁薬、刺激薬、抗ヒスタミン薬、下剤、鬱血除去薬、ビタミン剤、胃腸鎮静薬(gastrointestinal sedatives)、止痢製剤、抗狭心症薬、血管拡張性抗不整脈薬、降圧薬、血管収縮薬(vaconstrictors)、および偏頭痛治療薬、抗凝固薬、抗血栓薬、鎮痛薬、解熱薬、催眠薬、鎮静薬、制吐薬(anti-emetics)、抗悪心薬(anti-nauseants)、抗痙攣薬、神経筋薬、高血糖および低血糖薬、甲状腺および抗甲状腺製剤、利尿薬、抗スパスム薬、子宮弛緩薬、ミネラルおよび栄養補給剤、抗肥満薬、アナボリック剤、赤血球形成薬、抗喘息薬、去痰薬、鎮咳薬、粘液溶解薬、高尿酸血症薬、および他の薬物または口中で局所的に作用する物質、例えば、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、またはその組み合わせなどを含む。本発明の製剤は、1以上の活性成分を含んでもよい。
【0027】
本発明において使用される薬剤は、25℃、1atmで水溶液中で低可溶性を示す。それは、胃腸管において存在する何れのpHの、典型的にはpH1から7.5の間の水の10mL当たり約1グラム未満の水可溶性を有する。しかしながら、当該薬物が水中で不溶性過ぎる場合には、そのために徐放性製剤として製造することが非常に困難であったり、或いは徐放性医薬組成物として有効に機能を果たさないこともある。従って、当該薬物は、25℃で水1L当たり約100mg以上の可溶性を有するべきである。
【0028】
当該薬物は、好ましくは、約5から約300ミクロン、より好ましくは約20から約200ミクロン、最も好ましくは約30から約100ミクロンの平均粒子直径を有する。
【0029】
好ましい薬剤は、テオフィリン、硫酸第一鉄、ナイアシン、グアイフェネシン、クラリスロマイシン、バルプロ酸の塩、特にそのIA群の塩、例えば、ジバルプロエックスナトリウム(divalproex sodium)、ベラパミル、デキストロメトルファン、ジクロフェナクまたはその薬学的に許容される塩、一硝酸イソソルビド、レボドパ、カルビドパ(carbidopa)、ナプロキセンなどである。通常の当業者には周知の通り、ジバルプロエックスは、約50%(w/w)のバルプロ酸のナトリウム塩または他のIA群金属塩と約50%(w/w)のバルプロ酸との混合物である。
【0030】
当該薬剤は薬学的に有効な量で存在する。好ましくは当該薬剤は当該医薬組成物の約25重量%から約97重量%の範囲の量で存在する。
【0031】
本発明の薬学的担体は、当該疎水性物質を含む。当該疎水性物質は、当該徐放剤である。本医薬組成物は、何れの親水性徐放剤をも含まない。当該疎水性成分は、水不溶性蝋様物質を含む。当該蝋様物質は、蝋質の粘稠性(consistency)を有する固体で一般的に不溶性の物質を含む。勿論それは、摂取可能であり、薬学的に許容可能であり、且つ無毒性であるべきである。多くのそのような物質が知られており、脂肪および蝋を含む。ここで使用される蝋は、低融解性有機混合物または高分子量の化合物であり、室温で固体であり、それがグリセリドを含まないことを除いては、通例、組成において脂肪および脂油に類似するものである。蝋は、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、およびその混合物を含む。別の見方をすれば、脂肪は、高級脂肪酸のグリセリンエステルである。当該用語がここで使用される場合、これらの全ては疎水性物質である。
【0032】
当該疎水性物質は、持続する放出を遅らせる効果的な量で存在する。それは本発明の当該医薬組成物において、当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%、好ましくは約3重量%から約15重量%、より好ましくは約5重量%から約15重量%、最も好ましくは約7重量%から約12重量%までの範囲の量で存在する。従って、好ましくは20重量%未満で存在する。
【0033】
ここで定義される通り、当該疎水性物質は、1成分からなっても、2以上の疎水性成分の混合物であってもよい。
【0034】
当該疎水性物質は、ヒト体温よりも高い、即ち約37℃以上の融解範囲を有する。本発明において使用される当該疎水性物質は、融点が約40℃よりも高く、より好ましくは約45℃よりも高い。しかしながら、当該疎水性物質がヒトの体温よりも高い融点を有することが重要(critical)である。37℃など、体温に近い融点を有する蝋は、貯蔵中の安定性に問題があり、同様に服用量の急激な低下(dumping)の危険がある。従って、当該疎水性物質の当該最低温度は約40℃、即ち、前記の問題がそれらに表れない温度以上の温度である。好ましくは当該疎水性物質の融点は、約40℃から約100℃、更により好ましくは約45℃から約90℃、特により好ましくは約50℃から約80℃、最も好ましくは約55℃から約75度の間の範囲である。本発明の滑沢剤および/または他の疎水性物質の存在が融解範囲に影響を及ぼし得ることに注目することが重要である。しかしながら、当該製剤においてこれらの他の物質と関連する場合にも、当該疎水性物質の融解範囲は体温以下に低下するべきではない。
【0035】
好ましくは、当該疎水性成分は約10ミクロンから約20ミクロンまでの平均粒子サイズを有する。より好ましくは、当該平均粒子サイズの範囲は約20から約150ミクロン、最も好ましくは当該平均粒子サイズの範囲は約30から約100ミクロンである。
【0036】
先に示したとおり、本発明において有用な疎水性物質は、蝋および中性脂肪を含む。以下に記載するように、本発明において使用される疎水性物質は少なくとも10炭素原子を含まなくてはならない。
【0037】
有用な蝋は、植物および/または動物の供給源から、または石油製品として得られるもの、即ち、天然の供給源から得られるものを含む。このような種類の好ましい蝋の例には、カルナウバ蝋、キャンデリラ蝋、鯨蝋、蜜蝋、モンタン蝋、水素を添加された植物油、レシチン、水素を添加された綿実油、水素を添加された獣脂、パラフィン蝋、セラック蝋、ワセリンなど、同様に合成蝋、例えば、ポリエチレンなども含まれる。
【0038】
当該疎水性物質はまた、脂肪酸物質も含む。当該脂肪酸物質は、好ましくは10から40の炭素を有する脂肪酸からなる種類のものである。当該脂肪酸は、直鎖であっても、または枝分かれ鎖であってもよいが、好ましくはそれらは直鎖である。それらは炭素炭素二重結合を含んでいなくてもよく、またはそれらが炭素炭素二重結合を含んでいてもよい。仮にそれらが炭素炭素二重結合を含んでいる場合、それらは好ましくは1、2、3または4の炭素炭素二重結合を含み、より好ましくは1または2の炭素炭素二重結合を含む。例には、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、エリオステアリン酸(eleostearic acids)、ステアリン酸とパルミチン酸との混合物、例えば、85重量%のステアリン酸と15重量%のパルミチン酸の混合物などが含まれる。
【0039】
当該脂肪酸物質はまた、16から44の炭素原子を有する脂肪族アルコールも含む。それらも、直鎖であっても、枝分かれ鎖であってもよいが、好ましくはそれらは直鎖である。それらは完全に飽和していても、炭素炭素二重結合を含んでもよい。仮にそれらが炭素炭素二重結合を含む場合、それらは好ましくは1、2、3または4の炭素炭素二重結合を含み、好ましくは1または2の炭素炭素二重結合を含む。例には、ステアリルアルコール、セチルアルコール、パルミトールなどが含まれる。
【0040】
当該脂肪酸物質はまた、13から45の炭素を有する脂肪族アミン(fatty amine)および11から45の炭素を有する脂肪酸アミド(fatty amide)も含む。
【0041】
当該疎水性物質はまた、中性脂質も含む。当該中性脂質は、好ましくはモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドからなる種類のものである。
【0042】
当該モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドは以下の式で示される:
【化9】

【0043】
ここで、R1は水素または
【化10】

【0044】
;R2は水素または
【化11】

【0045】
;Rは水素または
【化12】

【0046】
並びにR4、RおよびRは独立してアルキルまたはアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニル基は、9から39の炭素原子を有し、R1、R2およびR3の少なくとも1は水素以外のものである。
【0047】
R4、RおよびRの当該アルキル基およびアルケニル基は枝分かれ鎖でもよく、好ましくは直鎖である。当該アルケニル基は、1、2、3または4の炭素炭素二重結合を有してもよく、仮に存在するのであれば、それらはより好ましくは1または2の炭素炭素二重結合を含む。
【0048】
例には、グリセリルベヘネート、グリセリルパルミトステアレート、グリセリルモノステアレート、ポリグリコライズされたグリセリド(polyglycolyzed glycerides)などが含まれる。
【0049】
グリセロールエステルに並んで、当該疎水性物質は、2以上のヒドロキシル基をその分子内に有する他の多価アルコールの脂肪酸エステルを含み、それらの1以上の脂肪酸がエステル化されていてもよく、ここで定義されるように、先に述べた通り前述の特徴、例えば、先に記載した範囲の融点であるなどの特徴を有する。そのような多価アルコールの例は、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどを含む。好ましくは当該多価アルコールは2または3のヒドロキシル基を含む。当該多価アルコールは、ここで定義された通り、少なくとも1の脂肪酸がエステル化されてもよい。好ましい脂肪酸は、式R4COOHを有するものであり、ここで夫々の脂肪酸におけるR4は同じであっても異なってもよく、先に定義した通りである。
【0050】
当該疎水性物質はまた、当該脂肪酸が先に示した範囲の融点を有する限り、脂肪酸の薬学的に許容される塩を含む。当該脂肪酸は先に定義した通りである。例には、ステアリン酸マグネシウム、並びに、パルミチン酸のカルシウムおよびアルミニウム塩などが含まれる。
【0051】
好ましくは、当該疎水性物質は、脂肪酸またはその塩、脂肪族アルコール、蝋または中性脂質である。更に好ましくは、当該疎水性物質は、脂肪酸がエステル化されたモノ−、ジ−またはトリグリセリドである。
【0052】
最も好ましい疎水性物質は、グリセリルヘヘネート、グリセリルパルミトステアレート、グリセリルモノステアレート、ポリグリコライズされたグリセリド、ステアリン酸、水素を添加された植物油、スチルアルコールまたはその混合物である。最も好ましい疎水性物質は、グリセリルベヘネートである。
【0053】
本発明の医薬組成物は、先に記述した通りの薬剤および徐放剤が存在する当該錠剤のコアから、当該錠剤の崩壊の原因となり得る何れの成分をも排除する。これは何れのポリマー、例えば、膨張を招く可能性のある親水性ポリマー、または疎水性炭水化物ポリマーなども含み、以下に記す通りである。更に、高濃度の低分子量水可溶性賦形剤は、当該錠剤の崩壊を引き起こす可能性があるので、それらもまた当該コアから排除される。ここで使用される場合、「高濃度の低分子量水可溶性賦形剤」とは、低分子量水可溶性賦形剤が当該錠剤の約20%(w/w)以上の濃度で存在することを指示する。言い換えれば、本発明の当該医薬組成物のコアは、当該錠剤の約20重量%未満の濃度である限り、低分子量賦形剤を含んでもよい。より好ましくは、その濃度(w/w)は当該錠剤の10重量%未満である。
【0054】
低分子量水可溶性賦形剤は、当該技術分野における通常の技術を有する者に周知である。ここで定義される場合、「低分子量水可溶性賦形剤」とは、分子量が約1000ダルトン未満の水可溶性賦形剤を指示する。低分子量水可溶性賦形剤の例は、乳糖、蔗糖、ブドウ糖、クエン酸、リン酸ナトリウム、緩衝剤などである。従って、仮に低分子量賦形剤が、25℃、1atmで20mLの水に約1グラムより多い可溶性を有する、より好ましくは25℃、1atmで10mLの水に約1グラムよりも多い可溶性を有する場合、先に定義した通り、当該錠剤のコアには高濃度で存在しない。当該水可溶性低分子量賦形剤は、当該錠剤の約20重量%未満、より好ましくは当該錠剤の約10重量%未満で存在する。低分子量賦形剤の語は、1000ダルトン未満の分子量を有する賦形剤を意味する。
【0055】
従って、本発明の組成物は好ましくは、膨張を招く可能性のある何れのポリマーも含まれず、また乳糖などの何れの低分子量賦形剤も高濃度では含まれない。従って、当該疎水性物質は、取り分けそれらは前述の範囲内で融解しないので、疎水性の炭水化物ポリマーを排除する。ここで定義する場合、疎水性炭水化物ポリマーとは、疎水性セルロース誘導体であり、そこにおいて、セルロース−Rまたはセルロース−ROHのRのモイエティまたはR誘導体は、2から100またはそれ以上の炭素の脂肪族アシル基、または1から100またはそれ以上の炭素を含む脂肪族アルキル基、またはキチン質の何れかである。ここで使用される疎水性物質から排除される疎水性ポリマーの例は、エチルセルロース、プロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどである。更に、当該疎水性物質は、水和したアルキルセルロース、例えば、水和したアルキルセルロースを排除する。
【0056】
本発明の医薬組成物の徐放遅延剤が疎水性物質であることから、膨張するポリマーを排除するものであり、親水コロイド、並びに何れのゲル形成物質、例えば、キサンタンゴム(xanthan gum)、グアルゴム(guar gum)、ヒドロキシプロピルエチルセルロース(hydroxypropylmethycellulose)、メタクリレートまたはアクリレートポリマーなどを含む徐放剤としての親水性化合物を排除する。加えて、それはタンパク質を排除する。
【0057】
強制されるべきであると望まれる場合を除いて、当該薬剤の制御性放出は、蝋によって部分的に不溶性にされている非崩壊投与量で存在するために達成されると思われる。当該蝋は、放出の制御を助ける。水中で不溶性であるから、z仮に十分に水中で不溶性でないものであっても、その同じものを含む医薬組成物を当該蝋が少なくとも部分的に不溶性にする。仮に賦形剤も不溶性であれば、当該蝋と賦形剤が共に当該錠剤を強化する。分解または拡散速度は、侵食の制御並びに可溶性の制御の双方により制御される。
【0058】
他方、錠剤表面を破裂し得る何れの成分、例えば、膨張する可能性のあるポリマーまたは崩壊剤などは当該マトリックス(コア)を脆くし、当該錠剤を崩壊する原因となる。実際に、従来技術で、高濃度の蝋が使用されていた理由は、膨張剤または崩壊剤を含有していたためであると思われる。
【0059】
崩壊の他の原因は、先に考察した通り、低分子量水溶性賦形剤を含む高濃度の可溶性成分であると結論付けた。
【0060】
しかしながら、それが不溶性または可溶性何れのポリマーであっても、膨張を生じないのであれば、本発明から排除されることはない。更に、1000ダルトンよりも大きな分子量を有する水可溶性賦形剤もまた排除されず、当該コアも含めて本医薬組成物の錠剤中に、当該錠剤の20重量%より多い濃度であっても、または20重量%(w/w)未満の濃度であっても存在してよい。従って、例えば、マルトデキストリンは水可溶性であり且つポリマーであるが、膨張しないので崩壊の原因にはならない。それは当該コアも含めて当該錠剤に、20重量%より多い濃度でも、少ない濃度でも存在してよい。また、1000ダルトンよりも大きな分子量のポリエチレングリコールも、当該錠剤のコアも含む当該医薬組成物に、当該錠剤の約20重量%より多い濃度でも、少ない濃度でも存在してよい。これらは完全に水可溶性であるが、それらは膨張しない上に、PEGの高分子量が崩壊を遅らせるので使用することが可能である。
【0061】
更に、水可溶性賦形剤であっても、当該錠剤の約20%より多い濃度でも、少ない濃度でも存在してよい。これらは微晶質セルロース、リン酸二カルシウムなどを含む。
【0062】
本発明の医薬組成物において、徐放剤は疎水性物質である。それは活性薬剤と混合され、当該医薬組成物に加えて中心のコアに存在する。仮に当該医薬組成物がコーティングを具備する場合、当該コアは徐放剤を含まない。
【0063】
更に、仮にコーティングが存在する場合、これらは当該錠剤の外側に(表面に)あるため、低分子量水可溶性賦形剤を含む膨張するポリマーまたは崩壊剤を含んでもよい。従って、膨張可能なポリマーではあるが、当該錠剤のコアに存在できないのであれば、本発明の医薬組成物のコーティング中に存在してもよい。更に、当該水可溶性賦形剤の濃度の制限は、当該医薬組成物のコアにおけるそれらの存在に対しても当て嵌まる。仮に水可溶性賦形剤がコーティング中に存在する場合には、それについての制限はない。しかしながら、好ましくは、当該錠剤はコーティングを含まない。しかし仮にコーティングが存在する場合には、当該水可溶性低分子量賦形剤および膨張可能なポリマーは、夫々好ましくは、当該医薬組成物の約20%未満、より好ましくは当該医薬組成物の約10%未満で存在する。更に、仮にコーティングが存在する場合には、好ましくは崩壊剤を含まず、また好ましくは水膨張性ポリマーも含まない。
【0064】
強制されるべきであると望まれる場合を除いて、当該疎水性物質は薬剤と相互作用して、それが当該経口投与量形態から放出されるのを遅延させると思われる。更に取り分け、本発明に使用される当該疎水性物質は、延長された期間に亘り、完全性を維持し、制御された速度での当該薬剤の浸出または拡散を可能にする水不溶性マトリクスを形成すると思われる。
【0065】
本発明者は、使用される疎水性物質の重量を当該薬剤の重量よりも少なくすることを見出した。従って、疎水性物質の薬剤に対する重量比は、1:1未満である。好ましくは薬剤の疎水性物質に対する当該重量比の範囲は約9:1から約5:4である。強制されるべきであると望まれる場合を除いて、より少ない量の疎水性物質が、より安定し、且つ物理的により強固な投与量形態を作ると思われる。使用される疎水性物質の濃度は、合理的に少なく、種々の過酷さに抵抗し得る極めて硬質な錠剤の形成を可能にする。また、強制されるべきであると望まれる場合を除いて、ヒト体温よりも高い範囲の融点を有する疎水性物質の使用が、当該投与形態の安定性と、当該薬剤のインビボでの放出が予測できることに寄与すると思われる。強制されるべきであると望まれる場合を除いて、圧縮において生じる熱が、蝋を柔らかくし、それが当該製剤成分をコーティングし、連続したマトリックスおよび粒子を形成するのを助ける原因になり得ると思われる。強制されるべきであると望まれる場合を除いて、先に記載した方法により製造された投与量形態が、侵食および拡散によって、本質的に非崩壊性のマトリックスから当該薬物が放出されると思われる。
【0066】
また本発明の製剤は、任意の成分も含む。例えば、必須ではないのだが、好ましい態様において、本発明の製剤は更に滑沢剤を含み、これは経口錠における製剤技術において典型的に使用されるものである。ここで使用される場合、用語「滑沢剤」は、錠剤の圧縮および排出(ejection)中に生じる打ち型壁(die wall)と打ち抜き面(punch faces)との間の摩擦を小さくすることのできる物質を指示する。当該滑沢剤は、当該錠剤物質が打ち抜き面や打ち型壁に付着するのを防ぐ。ここで使用される場合、「滑沢剤」の語は接着防止剤を含む。滑沢剤の例は、ステアリン酸塩、例えば、アルカリ、アルカリ土類およびその遷移金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウムまたは亜鉛;ステアリン酸、ポリエチレンオキシド、タルク、水素を添加された植物油、および植物油の誘導体、ヒュームシリカ(fumed silica)、シリコーン、高分子量ポリアルキレングリコール、例えば、高分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのモノエステル、約8から22の炭素原子、好ましくは16から20の炭素原子を含む飽和脂肪酸を含む。好ましい滑沢剤はステアリン酸塩、ステアリン酸、タルクなどである。
【0067】
滑沢剤を使用する場合、それは当該滑沢剤が潤滑に有効な量で存在する。好ましくは、当該滑沢剤は、当該錠剤の約0.1重量%から約5重量%、より好ましくは約1重量%から約3重量%の範囲の量で存在する。
【0068】
他の任意の成分は不活性な賦形剤(filler、賦形剤(excipient))である。当該賦形剤は実質的に水可溶性または水不溶性であってもよい。本製剤には必要ではないが、もし必要または所望される場合には、賦形剤が使用される。本製剤において使用される賦形剤は、錠剤などの経口投与量形態のための薬学的技術において、典型的に、使用されるものである。例には、カルシウム塩、例えば、硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなど、グリセロールホスフェート;シトレート;およびその混合物などを含む。しかしながら、本発明の徐放製剤の不活性な賦形剤は、薬学的に許容される糖類を含んでもよく、それは単糖類、二糖類または多価アルコールおよび/または前記の何れかの混合物を含んでもよい。その例は、蔗糖、デキストロース、ポリデキストロース、マルトデキストリン、微晶質セルロース、果糖、キシリトール、ソルビトール、その混合物などを含む。好ましい賦形剤はマルトデキストリンである。
【0069】
従って、本発明の更なる態様は、薬学的に有効な量の薬剤および徐放剤としての疎水性物質ならびにマルトデキストリンを含有し、乳糖および疎水性炭水化物ポリマーは不在であり、前記薬剤は当該医薬組成物の約25%(w/w)よりも多い量で存在し、25℃、1atmで水10mL当たり約1グラム未満の水可溶性を有し、且つ25℃、1atmで水1L当たり約100mgより多い水可溶性を有し、前記疎水性物質は1atmで少なくとも約40℃から約100℃の範囲の融点を有し、且つ当該薬剤の放出を制御するために効果的な量で存在し、前記疎水性物質は、当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%の範囲の量で、且つ前記薬剤の重量よりも少ない量で存在する。
【0070】
また、好ましくは、当該医薬組成物は乳糖を含まない。乳糖は、幾つかの理由から望ましくない。第一に乳糖不耐性に罹患する多くの人々が、乳糖を含有する経口投与量形態を消化することは困難であるだろう。加えて、乳糖は、ある官能基、例えば、アミンなどをその上に含む種々の薬物と相互作用する。それを使用してもよいが、好ましくは、本発明の当該医薬組成物は二糖類を含有しない。
【0071】
仮に存在する場合、当該賦形剤は約0重量%(しかし0よりも多い量)から約72重量%の範囲の量で存在する。
【0072】
また、典型的に本製剤において使用される他の任意の成分(補助剤)も存在してもよく、例えば、着色剤、保存剤(例えば、メチルパラベンなど)、人工甘味料、香味料、抗酸化剤などなども存在してよい。人工甘味料は、これに制限するものではないが、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリジン酸二カリウム、ステビア、タウマチンなどを含む。香味料は、これに制限するものではないが、レモン、ライム、オレンジおよびメンソールなどを含む。当該着色料は、これに制限するものではないが、種々の食用色素、例えば、FD&Cカラーズ(FD&C colors)、例えばFD&C 黄色6番、食紅などを含む。抗酸化剤の例は、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulphite)などを含む。これらの任意の成分は、仮に存在するのであれば、好ましくは、当該錠剤の約0.1重量%から約5重量%、より好ましくは、当該錠剤の約3%(w/w)未満の範囲の量で存在する。
【0073】
しかしながら、好ましくは、最も高濃度の成分は当該薬剤である。更に、薬剤と疎水性物質の総和は、当該経口投与量形態の45重量%よりも多く、より好ましくは当該医薬組成物の約60重量%よりも大きいことが好ましい。
【0074】
本発明の本製剤は、当該薬剤を疎水性物質と、もし存在するのであれば滑沢剤、もし存在するのであれば賦形剤、もし存在するのであれば補助剤を混合することにより製造される。当該成分は典型的には、製剤分野において一般的に利用されている混合機(blender)、例えば、ホバート攪拌器(Hobart mixer)、V字型混合器(V-blender)、遊星形ミキサー(planetary mixer)、ツインシェル混合器(Twin shell blender)などにおいて混合される。当該成分は、典型的には凡そ室温(ambient temperature)で互いに混合され;更なる加熱は必要ないが、それから若干の温度変更も利用される。好ましくは、当該攪拌器は、約10℃から約35℃の範囲の温度で管理される。当該疎水性物質は融解されない。更に、仮に当該組成物が加熱される場合、本工程において使用される温度の上昇は、当該疎水性物質の融点に実質的に近づくことさえない。本発明の当該医薬組成物は、熱浸出(heat infusion)により製造されない。
【0075】
当該製剤における成分は、好ましくは製剤分野において周知の技術を用いた大規模なバッチにおいて共に混合され、当該混合物が当該薬物に関して均質になるまで、本質的に混合される。当該薬物に関して「均質(homogenous)」の用語を用いることにより、本発明の全体に亘って、種々の成分が実質的に均一であることが、即ち、実質的に均質な混合物が形成されることが示される。
【0076】
当該混合物が均質である場合、当該単位投与量形態が当該分野で公知の技術により製造される。従って当該混合物は、ペレット剤(pellet)、カプセル剤、顆粒剤、丸剤(pill)、錠剤または当該技術分野で公知の慣用的な技術を用いることに使用される他の投与量形態に製造されてもよい。
【0077】
好ましい単位経口投与量形態は錠剤である。当該錠剤は以下の方法によって製造される。
【0078】
当該均質な混合物の単位投与量は、製剤化の分野において典型的に使用される錠剤成形機を用いて、錠剤形態に圧縮される。更に取り分け、当該混合物を、錠剤成形機の打ち型に供給し、十分な圧力が加えられ、固形錠剤が形成される。そのような圧力は変更することが可能であり、典型的には、約1000psiから約6000psi、好ましくは約2000psiの力の範囲で変更される。本発明に従う固形製剤は圧縮され、十分な硬度を得て、当該錠剤中への水性媒体の早期の進入を妨げる。好ましくは当該製剤は、スクレウニガー硬度試験(Schleuniger hardness tested)により測定された場合、5-20Kpのオーダー、より好ましくは8-20Kpのオーダーで錠剤形態に圧縮される。
【0079】
改変法では、もし滑沢剤が当該製剤に添加されるべき場合には、初めに滑沢剤の不在下で当該混合が実施されることを除いて、上記の工程の全てが繰り返される。当該混合物が当該薬物に関して均質である場合、もし存在するのであれば次に滑沢剤が添加され,当該混合は、当該滑沢剤が実質的に均等に当該混合物中に分散するまで継続される。その後混合が終了し、当該混合物はその後直ちに単位投与量形態に製造される。例えば、上述した通りに、それは錠剤に圧縮されてもよい。
【0080】
当該混合工程に優先して、個々の成分を任意に製粉し、例えば、スクーン、篩などを通過させ、その粒子のサイズを小さくしてもよい。或いは、単位投与量形態の形成に先立って、実質的に均一に混合物を混合してもよい。例えばそれが錠剤である場合、当該混合物は、圧縮工程の前に製粉されてもよい。
【0081】
ここで記載される工程では、多くの方法とは異なり、当該疎水性物質は、当該医薬組成物の他の成分とは別にされていても、または当該医薬組成物の他の成分と共にあってもその何れであっても、融解されてはいない。更に取り分け、本発明の工程では、当該混合工程における成分は当該疎水性物質の融解温度にまで加熱されないか、または実質的に当該温度近くまでの加熱はされていない。本発明は、加熱融解に関連する不利益を避ける。第一に、熱に不安定な成分は、当該融解した疎水性物質中、例えば蝋などの中で分解するであろう。更に、この融解した蝋の技術を量産(muss production)に採用することは、費用がかかることであり、危険でもある。多量の融解物質を扱う作業が危険であることを別にしても、混合容器から取り除き、サイズを合わせなくてはならない硬質な凝固薬剤混合物を扱う作業は困難である。加えて、当該硬質な凝固薬剤混合物のサイジング(sizing)は、前もって容器に入れられた薬剤を露出するが、それによってその次に続く投与形態における制御された放出プロフィールがそれから損なわれてしまう。更に、当該公知技術の徐放性製剤を製造する方法、特に、融解加熱工程による未解決な不都合は、高投与量薬物が満足な放出特性で容易に製造されないことである。本発明者は、疎水性成分、例えば蝋などを融解することなしに、優れた徐放特性を有する医薬組成物を製造することが可能であることを見出した。
【0082】
加えて、本発明者は、当該成分が高切断混合(high shear mixing)を受けることなく、実質的に均質な混合物を得ることが可能であることを見出した。更に、上記で示したように、上述の方法論は、単純で、経済的であり、高切断攪拌器に関連する費用を回避できる。その上、本発明者は、本方法が、優れた徐放特性を伴う医薬組成物を提供することを見出した。
【0083】
更に、本医薬組成物を製造するための本発明において使用される方法論は、湿式造粒を利用することがない。従って,本方法は、湿式造粒に関連する不利益を有していない。湿式造粒法において使用される有毒または可燃性の溶剤の使用に関連する危険を回避する。
【0084】
本発明の当該徐放性医薬組成物を製造するための本工程において使用される方法は、幾つもの利点を有する。それは、仮に当該組成物が疎水性物質を融解すること、または高切断攪拌器を利用することによって製造する場合に比較して、より単純で且つ効率的な製造方法である。それは、疎水性物質、例えば蝋などを用いる製剤化の欠点、例えば、熱および摩擦に関連する寸法安定性(dimensional stability)などを克服する。当該疎水性物質は、融解されず、また、例えば輻射加熱(radiaton heating)などの技術を利用することによるような、まさに融解温度未満の温度にまでも加熱されない。好ましい態様において、当該疎水性物質は、室温よりも若干高い温度よりも高くはない温度で、しかし実質的に当該疎水性物質の融解温度よりも低い温度で,他の成分と混合される。この技術は、従来技術における使用に比較して、本発明の単位投与量形態の製造における加熱およびエネルギーを最小化し、それによって本工程はより効率的になる。好ましい態様において、何れの造粒溶剤も必要としないことによって、この態様における本方法は、徐放性医薬品の製造において湿式造粒方法を使用する際に潜在的に存在する毒性および火災の危険を避けることができる。
【0085】
当該単位投与量形態、例えば錠剤などを形成した後で、もし望むのであれば、それは製剤化において標準的に使用される物質を用いてコーティングされてもよい。もしコーティングされる場合、当該コーティングは、当該技術分野において公知の技術によって製造されてよいが、しかしながら制御性放出剤として使用される当該疎水性物質はそのコーティングには存在しない。しかしながら、本発明の製剤は、好ましくはコートされない。
【0086】
本発明により製造される当該単位投与量形態は、当該製薬分野において典型的に見られる特徴を有する。例えば、当該投与量形態が錠剤である場合、当該錠剤製品は、薬学的錠剤で典型的に見られる所望の硬度および脆砕性を有するように得られる。当該硬度は、好ましくは5-25Kp、更に好ましくは8-20Kpである。
【0087】
本発明の製剤は、単位投与量形態、例えば錠剤形態などであり、優れた薬剤放出プロフィールを有する。本発明の薬学的製剤の放出プロフィールは非線形性である。例えば、それは、予め決められた制御または維持された作用、規則的に遅延された様式を有し、それにより、使用される単位投与量形態の種類、当該単位投与量形態の精密なサイズ、当該活性成分の本質(identity)、当該活性成分の水可溶性、硬度および特定の単体組成物に依存して、当該薬剤が36時間に至るまでの期間に亘り利用できるようになる。例えば、本発明の方法に従うと、制御性放出の医薬組成物は、放出時間が2-4時間、8-10時間、15-18時間、20-24時間など、所望に応じて製造され得る。更に、各製剤の放出プロフィールは実質的に均一である。最終的に、仮に当該経口投与量形態が錠剤である場合、本発明に従って製造された錠剤は、硬質且つ高密度(hard and dense)であり、低脆砕性であり、且つ長時間に亘る制御性放出および徐放性を提供する。本発明により製造された固体乾燥形態は安定であり、且つそれらの放出速度は、(もしあったとしても)長い期間保管に亘ってどのような顕著な程度にも変化しない。
【0088】
当該徐放性製剤は、固体形態で、都合よくは単位投与量形態で提供される。経口投与のための固体単位投与量形態、特に錠剤形態にある当該徐放性製剤が提供されることが好ましい。好ましくは、当該製剤が胃腸管にそって進行する場合、体内に服用された後、当該薬学的活性成分がゆっくりと、または定められた速度に従って放出されることが意図される。この点について、当該胃腸管とは、腹部消化管、即ち、食道の下部終末、胃および腸であるとみなされる。
【0089】
本発明に従ってその必要のある哺乳動物に投与される製剤の投与量は、当業者に公知の特定の活性成分の通常の投与量に相当する。患者に対して投与される薬物の正確な量は、多数の因子、なかんずく当該患者の年齢、その病気の重症度および過去の病歴を含む因子に依存し、且つ常に管理する医師の信頼できる裁量内にあるだろう。適切な投与量のガイドラインとして、フィジシャンズ・デスク・リファレンス(Physicians Desk Referance)が参考になる。
【0090】
形成される当該医薬組成物は、好ましくは、多層ではないが、一層だけというものでもない。
【0091】
相反するものが記載されていない限り、全てのパーセンテージは、当該経口投与量形態に比する重量%である。更に、相反するものが記載されていない限り、当該活性成分、疎水性物質および何れかの他の任意成分、例えば、滑沢剤、賦形剤および他の成分は、水または他成分の何れの存在にも関係なく、乾燥重量を基準に計算されている。
【0092】
更に、ここで使用される場合において、単数形が複数形のものを指すことも、また逆の場合も同様で、複数形で示されることが単数形のことを指すこともある。
【0093】
以下の非限定的な例によって、本発明は更に説明される。
【0094】
例1
硫酸第一鉄(160mg)、グリセリルベヘネート(30mg)およびマルトデキストリン(110mg)をV字型混合器(V blender)で互いに入念に1時間に亘り混合し、回転式打錠機(rotary tablet press)を用いて圧縮して錠剤にした。その溶解物をUSP装置Iを用いて水中で測定した。その放出プロフィールは以下の通りである。
【表1】

【0095】
例2−6
以下の成分を適切な混合器で1時間混合した。
【表2】

【0096】
得られた混合物を回転式打錠機を用いて圧縮して錠剤にした。各製剤の溶解度をUSP装置Iを用いて水中で測定した。その放出プロフィールは以下の通りである。
【表3】

【0097】
例7
クラリスロマイシン(500mg)、グリセリルベヘネート(25mg)、珪酸化微結晶セルロース(220.15mg)、およびマルトデキストリン(220.15mg)を40メッシュスクリーンに二度通した。種々の成分をダブルコーン混合器(double cone blender)で30分間混合した。ステアリン酸マグネシウム(14.7mg)をその混合物に添加し、更に15分間攪拌した。その混合物を圧縮して錠剤にした。当該錠剤を20x10mmのカプセル型パンチ(capsul shaped punch)を用いて打ち抜いた。当該錠剤は500mgのクラリスロマイシンを含み、総重量は980mgであった。
【0098】
その溶解をUSP装置Iを用いてアセテートバッファー(pH5.0)中で測定した。その放出プロフィールは以下の通りである。
【表4】

【0099】
例8
ジバルプロエックスナトリウムの錠剤を以下の通りに製造した。
【0100】
ジバルプロエックスナトリウム(576.21mg)、グリセリルベヘネート(190mg)、ポリビニルピロリドン(47.5mg)、リン酸カルシウム(2塩基)二水和物(44.4mg)、珪酸化微結晶セルロース(44.4mg)およびエアロゾル(aerosol、19mg)を40メッシュスクリーンに二度通した。種々の成分をダブルコーン混合器中で30分間混合した。ステアリン酸マグネシウム(28.5mg)を当該混合物に添加し、その混合物を更に15分間攪拌した。その混合物を圧縮して錠剤にした。その錠剤を20x10mmのカプセル型パンチを用いて打ち抜いた。当該錠剤は、576.21mgのジバルプロエックスナトリウムを含み、総重量は950mgであった。
【0101】
その溶解をU.S.P装置Iを用いて水中で測定した。その放出プロフィールは以下の通りである。
【表5】

【0102】
上記の好ましい態様および例は、本発明の範囲および趣旨を説明するために示した。これらの態様および例は、当業者に対して他の態様および例があることを明白に理解させるであろう。そのような他の態様および例も本発明の意図する範囲である。従って、本発明は付随する請求項のみに限定されるべきものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的有効量の薬剤と徐放剤としての疎水性物質を含み、且つその錠剤の崩壊の原因となる膨張を招く可能性のあるポリマーと高濃度の水可溶性低分子量賦形剤は除外されるコアを具備する錠剤の形態にある徐放性医薬組成物であって、前記薬物は当該医薬組成物の約25%の量よりも多く存在し、25℃、1atmで水10mL当たり約1グラム未満の水可溶性を有し、且つ25℃、1atmで水1L当たり約100mgより多い水可溶性を有し、前記疎水性物質は、1atmで少なくとも約40℃から約100℃の範囲の融点を有し、且つ当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%未満の範囲の量で、当該薬剤の重量よりも少ない量で存在する徐放性医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該錠剤がコーティングを施されていない医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質は当該医薬組成物の約5重量%から約15重量%の範囲の量で存在する医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質が当該医薬組成物の約7重量%から約12重量%の範囲の量で存在する医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該薬剤の疎水性物質に対する重量比が約9対1から約5:4の範囲である医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質の融点が約40℃から約90℃の範囲である医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質の融点が約50℃から約80℃の範囲である医薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質の融点が約55℃から約75℃の範囲である医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質の平均粒子サイズが約10ミクロンから約200ミクロンの範囲である医薬組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質の平均粒子サイズが約30から約100の範囲である医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該薬剤が当該医薬組成物の約25重量%から約97重量%の範囲の量で存在する医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬組成物であって、当該薬剤が当該医薬組成物生物の約35重量%から約90重量%の範囲の量で存在する医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物であって、当該薬剤が当該医薬組成物の約40重量%から約85重量%の範囲の量で存在する医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の医薬組成物であって、滑沢剤が追加で存在する医薬組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の医薬組成物であって、賦形剤が追加で存在する医薬組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の医薬組成物であって、賦形剤が追加で存在する医薬組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の医薬組成物であって、賦形剤がマルトデキストリンである医薬組成物。
【請求項18】
請求項16に記載の医薬組成物であって、賦形剤がマルトデキストリンである医薬組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質が脂肪酸またはその塩またはモノグリセリド、ジグリセリド若しくはトリグリセリドである医薬組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質がグリセリルベヘネート、水素を添加された植物油、ステアリン酸、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、またはセチルアルコールである医薬組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質が、10から30の炭素を有する脂肪酸若しくはその塩、10から44の炭素原子を有する脂肪族アルコール、または
【化1】

である方法:
ここで、R1は水素または
【化2】

;R2は、水素または
【化3】

;R3は、水素または
【化4】

;R4、R5およびR6は、独立して、9から29の炭素原子を有する低級アルキルまたは低級アルケニルであり、少なくともR1、R2およびR3の少なくとも1は水素以外のものである。
【請求項22】
請求項1に記載の医薬組成物であって、当該薬剤はテオフィリン若しくはその薬学的に許容される塩、硫酸第一鉄、クラリスロマイシンまたはジバルプロエックスである医薬組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬組成物であって、当該疎水性物質がグリセリルベヘネートである医薬組成物。
【請求項24】
経口投与量形態にある徐放性医薬組成物の製造方法であって、以下の工程を具備する方法;
(a)薬剤と疎水性物質と任意の滑沢剤と任意の賦形剤と任意の補助ポリマーを混合して実質的に均質で均一な混合物を形成することと、
前記混合物は、その錠剤の崩壊の原因となる膨張を招く可能性のあるポリマーと高濃度の低分子量賦形剤が除外され、前記薬剤は、当該医薬組成物の約25重量%よいも多量に存在し、且つ25℃、1atmで水10mL当たり約1グラム未満、25℃、1atmで水1L当たり約100mgよりも多い水可溶性を有し、前記疎水性物質は、1atmで少なくとも約40℃から約100℃の範囲の融点を有し、当該医薬組成物の約3重量%から約20重量%の範囲の量で、当該薬剤の重量よりも少ない重量で存在する;
(b)工程(a)の生成物を圧縮してその錠剤を形成すること、
前記医薬組成物は疎水性物質の融解なしで、または高切断攪拌器を使用して、または当該疎水性物質の融点よりも僅かに低い温度に加熱することによって形成されている。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、滑沢剤が更に存在する方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、当該薬剤、疎水性物質並びに任意の賦形剤および任意の補助剤が共に混合され、十分に均質且つ均一な第一の混合物が形成され、潤滑に有効な量の滑沢剤が前記第一の混合物に添加され、それと共に混合され実質的に均一且つ均質な第二の混合物が形成され、第二の混合物は圧縮され錠剤が形成される方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、賦形剤が更に存在する方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であって、賦形剤が更に存在する方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、当該賦形剤がマルトデキストリンである方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、当該賦形剤がマルトデキストリンである方法。
【請求項31】
請求項24に記載の方法であって、当該疎水性物質が、当該医薬組成物の約5重量%から約15重量%の範囲の量で存在する方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、当該疎水性物質が当該医薬組成物の約7重量%から約12重量%の範囲で存在する方法。
【請求項33】
請求項24に記載の方法であって、当該薬剤の疎水性物質に対する重量比の範囲が約9:1から約5:4である方法。
【請求項34】
請求項24に記載の方法であって、当該疎水性物質の融点の範囲が約40℃から約90℃である方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、当該疎水性物質の融点の範囲が約50℃から約80℃である方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、当該疎水性物質の融点の範囲が約55℃から約75℃である方法。
【請求項37】
請求項24に記載の方法であって、当該疎水性物質が約10ミクロンから約200ミクロンまでの範囲の平均粒子サイズを有する方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、当該疎水物質が約30から約100ミクロンまでの範囲の平均粒子サイズを有する方法。
【請求項39】
請求項24に記載の方法であって、前記薬剤が当該医薬組成物の約25重量%から約97重量%までの範囲の量で存在する方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、当該薬剤が当該医薬組成物の約35重量%から約90重量%までの範囲の量で存在する方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、当該薬剤が当該医薬組成物の約40重量%から約85%の範囲の量で存在する方法。
【請求項42】
請求項24に記載の方法であって、当該疎水性物質が蝋、脂肪酸またはその塩、またはモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドである方法。
【請求項43】
請求項24に記載の方法であって、当該疎水性物質がグリセリルベヘネート、水素を添加された植物油、ステアリン酸、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、またはセチルアルコールである方法。
【請求項44】
請求項24に記載の方法であって、当該疎水性物質が10から30の炭素を有する脂肪酸若しくはその塩、10から44の炭素原子を有する脂肪族アルコール、または
【化5】

である方法;
ここで、R1は水素または
【化6】

;R2は水素または
【化7】

;R3は水素または
【化8】

;R4、R5およびR6は独立した10から29の炭素原子を有する低級アルキルまたは低級アルケニルであり、少なくともR1、R2およびR3の1が水素以外のものである。
【請求項45】
請求項24に記載の方法であって、当該薬剤がテオフィリンまたはその薬学的に許容される塩、硫酸第一鉄、クラリスロマイシンまたはジバルプロエックスである方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、当該疎水性物質がグリセリルベヘネートである方法。

【公表番号】特表2006−514672(P2006−514672A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569167(P2004−569167)
【出願日】平成15年3月4日(2003.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/006505
【国際公開番号】WO2004/078164
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(501233938)ノストラム・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】