説明

疎水性粒子を含むアクリルコーティング粉体およびそれから製造される向上された糸状腐食耐性を有する粉体塗膜

【課題】本発明は糸状腐食耐性塗膜を製造するためのコーティング粉体組成物を提供する。
【解決手段】当該組成物は、緊密に混合された、1種以上の熱硬化性アクリルコポリマーと、前記アクリルコポリマーのための1種以上の架橋剤と、コーティング粉体の全重量を基準にして0.01〜1.5重量%を構成する1種以上の疎水性サブミクロン粒子添加剤とをそれぞれ含む粒子または凝集体を含む。疎水性サブミクロン粒子添加剤は、サブミクロン無機酸化物、例えば、ヒュームシリカまたは金属酸化物、および1種以上の有機ケイ素化合物、例えばポリジメチルシロキサンを含む。さらに、本発明は糸状腐食耐性のクリアコートまたは着色クリアコート粉体塗膜を金属、例えばアルミニウムホイールまたは鍛造合金基体上に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサブミクロン疎水性粒子を含む熱硬化性アクリル樹脂コーティング粉体、およびそれから製造される糸状腐食耐性塗膜に関する。特に、本発明は1種以上のエポキシ、カルボン酸および/またはリンの酸官能性アクリルコポリマー、並びに1種以上の疎水性サブミクロン粒子、例えば疎水性シリカを含むコーティング粉体に関し、並びにそれから製造される糸状腐食耐性塗膜、例えば被覆されたアルミニウムまたは鍛造合金ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
疾走する車の金属ホイールの露出した部分は、保護塗膜を摩耗させる激しい砂粒にさらされる。硬質で強靱な膜が必要とされる。その膜は理想的には細孔のないものであるべきで、かつ膜と金属との界面での腐食の広がりを妨げるために金属に対する優れた接着性を保持すべきである。しかし、糸状腐食の外観は有機塗膜の劣化の何らかの証拠に先立つものであり、例えば塗膜の目に見える穴が金属表面まで到達することは糸状腐食の成長に必須ではない。例えば、保護アクリルおよびポリエステルクリアコート粉体塗膜は本発明の前に、同等のフィルム厚さでアルミニウムホイール上に使用されてきた。このような塗膜は、その塗膜自体が視覚的に容認できない劣化を受けていなかったとしても、長期にわたり糸状腐食を妨げることができないことが観察されてきた。
【0003】
現在、アルミニウムホイール上に適用されるクリアコートは非クロム前処理、例えばアルミニウムホイールの明るい色を保つ単一原子モノレイヤー(SAM)前処理の上に適用される。このような前処理は高毒性の六価クロム前処理剤を回避するが、アクリル粉体コーティングクリアコートを有するアルミニウムホイールは適切な糸状腐食耐性を与えることができない。
【0004】
六価クロムを含まない前処理されたアルミニウムホイールおよびトリム上のポリエステルクリアコート粉体塗膜は適切な糸状腐食耐性を提供する。しかし、ポリエステル粉体塗膜は適切な耐化学薬品性、耐スクラッチ性および耐候性を提供するために液体で重層化されなければならない。
【0005】
六価クロムを含まない前処理されたアルミニウムホイールおよびトリム上のアクリルクリアコート粉体塗膜は、所望の耐化学薬品性、耐スクラッチ性および耐候性を提供するが、それらは適切な糸状腐食耐性を提供することができず、それにより結果的に許容できない塗膜不合格率となる。
【0006】
Chasserらの米国特許出願公開第2003/0077469A1は、硬化剤および置換フェノール系抗酸化化合物を伴った、アクリル、ポリエステルまたはウレタンポリマーからのコーティング粉体を開示する。Chasserの粉体は向上された糸状コーティング耐性を示すアルミニウムホイール上の粉体塗膜を提供しようと試みている。しかし、Chasserはポリエステルおよびアクリル粉体塗膜の性能を同等と見なしている。さらに、Chasserはその塗膜について透明性、耐候性および耐化学薬品性を評価できていない。Chasserの実施例1−8のコーティングはポリエステルから作られているので、それらは適切な耐候性および耐化学薬品性を提供するとは期待されないはずである。さらに、Chasserは六価クロムを含まない前処理剤で前処理したアルミニウム基体上の粉体塗膜における所望の糸状腐食耐性を開示できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0077469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは粉体塗膜の滑らかさ、耐化学薬品性、耐候性および透明度を損なうことなく、アルミニウム、鍛造合金または金属基体のための糸状腐食耐性粉体塗膜を製造するためのアクリルコーティング粉体、特に六価クロムを含まない前処理剤で前処理されたアルミニウムまたは鍛造合金ホイールおよび自動車用トリムのための粉体塗膜における、糸状腐食耐性粉体塗膜を製造するためのアクリルコーティング粉体を提供する課題を解決すること求めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、クリアコートまたは着色[tinted]クリアコート粉体塗膜において向上された糸状腐食を提供するアクリルコーティング粉体が粒子または凝集体を含み、当該粒子または凝集体が1種以上の熱硬化性アクリルコポリマーと、前記アクリルコポリマーのための1種以上の架橋剤と、コーティング粉体の全重量を基準にして0.01〜1.5重量%の1種以上の疎水性サブミクロン[submicron]粒子添加剤とをそれぞれ含む。疎水性サブミクロン粒子添加剤はコーティング粉体組成物に緊密に混合される。好ましくは、1種以上のアクリルコポリマーはエポキシ官能性アクリルコポリマーを含む。コーティング粉体は、コーティング粉体の全重量を基準にして5〜35重量%の架橋剤を含むことができる。さらに、コーティング粉体は1種以上のエポキシまたはイソシアネート官能性接着促進剤を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
疎水性サブミクロン粒子は無機酸化物および1種以上の有機ケイ素化合物、例えばオリゴ有機ケイ素化合物、ポリ有機ケイ素化合物およびそれらの混合物を含む。好ましくは、有機ケイ素化合物は樹脂反応性基、すなわちエポキシ、カルボン酸、鉱酸、アミン、イソシアネート、ビニルまたはアクリル系基を実質的に含まない。好ましい有機ケイ素化合物の例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、オリゴジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンおよびオリゴメチルフェニルシロキサンがあげられる。あるいは、有機ケイ素は0.01〜7.5重量%のシラノール(SiOH)基を含むことができる。好適な無機酸化物粒子、例えば、ヒュームシリカは0.001μm(1ナノメートル)から1.0μm、または0.004μm以上、好ましくは0.25ミクロン以下、より好ましくは0.1μm以下の全平均粒子サイズを有する粒子または凝集体を含む。好ましくは、無機酸化物は金属酸化物、例えばアルミナまたはヒュームシリカを含む。
【0011】
さらに、本発明に従って、粉体被覆された金属、例えばアルミニウムまたは鍛造合金基体は本発明のコーティング粉体から製造された塗膜を含む。好ましくは、アルミニウムまたは鍛造合金基体は清浄化および前処理、例えば、リン酸亜鉛またはリン酸鉄前処理剤を用いて前処理される。基体は、例えば、アルミニウムホイールおよび自動車用トリムを含むことができる。
【0012】
すべての丸括弧を含む語句は、その括弧でくくられた事項を含むか、その不存在のいずれかまたは両方を表す。例えば、語句「(コ)ポリマー」は、選択的に、ポリマー、コポリマーおよびそれらの混合物を包含する。
【0013】
他に示されない限り、言及されるすべての方法およびすべての実施例は標準温度および圧力の条件下(STP)で行われた。
【0014】
本明細書において記載されるすべての範囲は包括的で、組み合わせ可能である。例えば、ある成分が0.05重量%以上から1.0重量%の量で、および0.5重量%までの量で存在しうるならば、その場合その成分は0.05から1.0重量%、0.5から1.0重量%、または0.05から0.5重量%の量で存在しうる。
【0015】
本明細書において使用される、用語「平均粒子サイズ」は、他に示されない限りは、Malvern Mastersizer商標2000装置(Malvern Instruments Inc.,Southboro,MA)をメーカーの推奨する手順で用いたレーザー光散乱により決定されるものとしての、粒子直径または粒子の分布における粒子の最大の寸法を意味する。
【0016】
本明細書において使用される、語句「コーティング粉体」は粉体コーティング組成物をいい、および語句「粉体塗膜[powder coating]」は粉体コーティング組成物から形成された塗膜をいう。
【0017】
本明細書において使用される、用語「コポリマー」は2種以上の異なるモノマーから製造される任意のポリマーを意味する。
【0018】
本明細書において使用される、なんらかの樹脂または(コ)ポリマーについての「ガラス転移温度」または「T」という用語は、他に示されない場合には、示差走査熱量計(DSC)(20℃/分の加熱割合)を用いて測定される、変曲の中点がそのTとされる。Tは、別の方法では、FoxのBull.Amer.Physics.Soc.,1,3,ページ123(1956)により記載されるように計算されてもよい。
【0019】
本明細書において使用される、何らかの(コ)ポリマーまたは樹脂についての「ハイブリッド」という用語は、付加(adducts)、グラフトもしくはブロックコポリマーおよびそのような(コ)ポリマーもしくは樹脂の相溶または相溶化されたブレンドをいい、例えば、エポキシポリエステルハイブリッドがあげられる。
【0020】
本明細書において使用される、用語「緊密な[intimate]混合」はポリマーまたは樹脂および添加剤、例えば架橋剤および顔料が一緒にされて、粒子または凝集体コーティング粉体組成物を形成するあらゆる方法をいい、溶融混合、押し出し、微細溶接[microwelding]または粒子結合および顆粒化があげられる。
【0021】
本明細書において使用される、用語「質量溶解度」とは、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V9.04(1994−2007ACD/Labs)を用いて決定される、与えられた物質の水中での計算された溶解度をいい、Chemical Abstracts’Registryにおいて入手できる。
【0022】
本明細書において使用される、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートのいずれかをいい、用語「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルのいずれかをいう。
【0023】
本明細書において使用される、用語「分子量」は、他に示されない場合には、ポリスチレン標準で較正されるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリマーの重量平均分子量をいう。
【0024】
本明細書において使用される、用語「非イオン性コモノマー」は、酸性基もしくは塩、塩基性基もしくは塩、ポリアール(polyahl)基(例えば、OH、SH、NH)または縮合架橋性基を有しないモノマーをいう。
【0025】
本明細書において使用される、用語「オリゴ有機シロキサン」は2〜20の任意の数のシロキサン単位を含み、接頭語「ポリ有機シロキサン」は20を超えるシロキサン単位を含む。
【0026】
本明細書において使用される、用語「リンの酸[phosphorus acid]基」は、水素原子がイオン化可能なPOH部分を有するリンオキソ酸をいう。さらに、用語「リンの酸基」に含まれるものとしては、リンオキソ酸の塩があげられ、すなわち、このリンオキソ酸の塩は、少なくとも1つの酸プロトンの代わりに金属イオンまたはアンモニウムイオンのようなカチオンを有する。リンの酸基の例としては、ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、ピロホスフィン酸[pyrophosphinic acid]、ピロリン酸、それらの部分エステル、およびそれらの塩から形成される基があげられる。
【0027】
本明細書において使用される、用語「phr」は樹脂系の100重量部あたりのある成分の重量による量を意味する。樹脂系は樹脂またはポリマーおよび架橋剤または硬化剤を含む。
【0028】
本明細書において使用される、用語「ポリマー」はランダム、ブロック、セグメント化およびグラフトコポリマー、並びにこれらの任意の混合物または組み合わせ物を包含する。
【0029】
本明細書において使用される、用語「樹脂」および「ポリマー」は交換可能である。
【0030】
本明細書において使用される、用語「樹脂系」とは、エポキシ樹脂、強化用樹脂および架橋された構造の一体化された部分となる架橋剤、硬化剤またはハードナー[hardener](しかし、触媒ではない)の総計をいう。
【0031】
本明細書において使用される、用語「樹脂反応性基を実質的に含まない」とは、加工および/または硬化においてまたはその結果として、本発明のアクリルコポリマーと反応する基を、分子または化合物の合計重量基準で0.1重量%未満しか有さない分子または化合物をいう。
【0032】
本明細書において使用される、用語「wt.%」は重量%をいう。
【0033】
ここで、他に示されない限りは、すべてのパーセンテージは重量パーセントである。
【0034】
本発明のコーティング粉体は粒子を含み、その粒子はその中に1種以上の熱硬化性アクリルコポリマーと、同じ粒子中に1種以上の疎水性サブミクロン粒子添加剤とをそれぞれ含む。本発明のコーティング粉体は、周知の塗膜適用技術を用いて、および許容できない大きな糸状腐食の不合格率を有する粉体塗膜を今まで生じさせてきた周知のアクリルコポリマー樹脂を用いて、アルミニウムまたは鍛造合金基体、例えば自動車用ホイール基体上に優れた糸状腐食耐性を示す透明なまたは着色された粉体塗膜を提供する。よって、本発明のコーティング粉体は、コーティング粉体またはその使用におけるコストを実質的に高くすることなく、糸状腐食について顧客により不合格とされるホイールおよびトリムの割合を非常に低減させることができる。さらに、本発明のコーティング粉体は、鉄、鋼、マグネシウム合金および真ちゅう基体上の耐腐食性塗膜を提供する。
【0035】
1種以上の疎水性サブミクロン粒子は無機酸化物および有機ケイ素化合物、例えば、オリゴ有機シロキサン化合物またはポリ有機シロキサン化合物を含む。
【0036】
本発明の疎水性サブミクロン粒子の製造に好適な有機ケイ素化合物は、ポリジ有機シロキサン、ポリ有機シロキサン、ポリジ有機シラザンまたはポリ有機シラザン;有機シラン、例えば、オクチルシラン、ジ有機シラン;有機シラザン、例えば、ヘキサメチレンジシラザン;有機ジシラザン;シランのオリゴマー、例えば、ペンタメチルジシロキサン;有機オリゴシラザン、およびこれらの混合物を含むことができる。本明細書において使用される、用語「有機」はC〜C12アルキル、シクロアルキル、(アルキル)アリールまたはフェニル基により定義される。好ましくは、有機ケイ素化合物は、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサン、またはジハロアルキルシランまたはジハロジアルキルシランの縮合反応生成物、すなわちオリゴ−またはポリ−ジアルキルシロキサンである。
【0037】
本発明の疎水性サブミクロン粒子の製造に好適な無機酸化物粒子および凝集体は、0.004μm(5ナノメートル)から1.0μmまで、好ましくは0.2ミクロン以下、または0.1μm以下、またはより好ましくは0.075μm以下の平均粒子サイズを有することができる。無機酸化物はシリカ、ヒュームシリカ[hume silica]、金属酸化物、例えばアルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物およびマグネシウム酸化物;シリケート、例えば、アルカリ金属シリケート、および有機−無機酸化物複合体、例えばシリカまたはシリケートとの縮合反応生成物または(ジ)アルコキシシランであってよい。好ましくは、1種以上の疎水性サブミクロン粒子は処理されたヒュームシリカ、例えばジメチルジハロシラン処理されたヒュームシリカの縮合反応生成物である。
【0038】
好適な疎水性サブミクロン粒子の例としては、例えば、ジメチルジクロロシランで(加熱)処理されたヒュームドシリカ、例えば、Aerosil商標R972またはAerosil商標R974またはAerosil商標R976(Degussa Corporation,Parsippany NJ)のような様々な粒子サイズで入手可能なもの、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理されたヒュームドシリカ、例えば、Aerosil商標RX50(Degussa)として入手可能なもの、シラン化酸化亜鉛、例えばVP Ad Nano商標Z805(Degussa)として入手可能なもの、オクチルシランで処理された焼成酸化アルミニウム、例えば、AluC805Aeroxide商標(Degussa)として入手可能なもの、ジクロロジメチルシラン修飾焼成シリカ、例えば、Aeroxide商標LE2(Degussa)として入手可能なもの、高度に分散された疎水性二酸化チタン、例えば、Aeroxide商標T805(Degussa)として入手可能なもの、および疎水性ヒュームドシリカ、例えば、Aerosil商標R8200、Aerosil商標R9200またはAerosil商標R504としてDegussaから入手可能なそれぞれのものがあげられる。
【0039】
コーティング粉体組成物における1種以上の疎水性サブミクロン粒子の好適な量は、コーティング粉体の全重量を基準にして0.01から1.5重量%まで、または塗膜の透明度を確実にするためには1.0重量%まで、またはより好ましくは0.5重量%まで、またはさらにより好ましくは0.3重量%までの範囲である。好ましくは、コーティング粉体組成物は0.05重量%以上の疎水性サブミクロン粒子を含む。
【0040】
向上された糸状腐食耐性を確実にするために、疎水性サブミクロン粒子は緊密な混合もしくは樹脂粒子凝集の前または間にコーティング粉体に添加されて、コーティング粉体を形成し、コーティング粉体粒子または凝集体の部分となる。さらに、使用される疎水性サブミクロン粒子の全量の95重量%を超えない1種以上の疎水性サブミクロン粒子の一部分は、緊密に混合されたコーティング粉体と、すなわち別の粒子として、ポスト−ブレンドまたはドライブレンドされてもよい。
【0041】
本発明の1種以上のアクリルコポリマーは40℃〜90℃、好ましくは50℃以上のガラス転移温度(T)を有する。1種以上のアクリルコポリマーは1種以上のエポキシ、カルボン酸またはリンの酸官能性モノマーと、1種以上のビニルまたはアクリルコモノマー、好ましくはコモノマー自体が25℃〜175℃、より好ましくは50℃以上のガラス転移温度(T)を有するホモポリマーを形成するであろうコモノマーとの共重合反応生成物を含む。好適なアクリルコポリマーTを保つことは、適切な流動および膜−形成特性を維持しつつ、適切な耐ブロッキング性またはパッケージ安定性を確実にする。
【0042】
1種以上のアクリルコポリマーは40℃〜90℃のTを有するエポキシ官能性アクリルコポリマー、40℃〜90℃のTを有するカルボン酸官能性アクリルコポリマー、40℃〜90℃のTを有するリンの酸官能性アクリルコポリマー、並びにこれらの混合物および組み合わせ物から任意に選択されることができる。
【0043】
1種以上のエポキシ官能性アクリルコポリマーは、共重合されるべき全モノマーを基準にして10〜40重量%の1種以上のエポキシ官能性不飽和モノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレートと、1種以上のビニルまたはアクリルコモノマー、好ましくはコモノマー自体が25℃〜175℃のガラス転移温度(T)を有するホモポリマーを形成するであろうコモノマーとの共重合生成物を含むことができる。エポキシ官能性不飽和モノマーの量が共重合されたモノマーの全重量を基準にして10重量%未満の場合には、それは耐溶媒性および機械的強度の向上に対して計測できる程度に貢献しない。一方で、その量が40重量%を超える場合には、耐腐食性におけるさらなる向上が得られない。
【0044】
1種以上のカルボン酸官能性アクリルコポリマーは約1000から約30,000の重量平均分子量、かつ約300から約1000、好ましくは少なくとも約500のカルボン酸当量重量を有するコポリマーであって、共重合されるモノマーの全重量を基準にして2.5から25重量%の1種以上のα−βエチレン性不飽和カルボン酸と、1種以上のビニルまたはアクリルコモノマー、好ましくはコモノマー自体が25℃〜175℃のガラス転移温度(T)を有するホモポリマーを形成するであろうコモノマーとの共重合生成物を含むことができる。好適なカルボン酸官能性アクリルコポリマーは、例えば、BASF Corporation,Wyandotte,MIからのJoncryl 819およびJoncryl 821を包含しうる。
【0045】
1種以上のリンの酸[phosphorus acid]官能性アクリルコポリマーは、共重合されるモノマーの全重量を基準にして0.5から10重量%、好ましくは1から5重量%の1種以上のリンの酸モノマーと、1種以上のビニルまたはアクリルコモノマー、好ましくはコモノマー自体が25℃〜175℃のガラス転移温度(T)を有するホモポリマーを形成するであろうコモノマーとの共重合生成物を含むことができる。リンの酸官能性アクリルコポリマーは、共重合されるモノマーの全重量を基準にして10重量%までの、好ましくは1から5重量%の1種以上のα−βエチレン性不飽和カルボン酸の共重合生成物をさらに含むことができる。アクリルコポリマーは1種以上のリンの酸官能性アクリルコポリマーおよび1種以上のエポキシ官能性アクリルコポリマーの混合物を含むことができる。
【0046】
好適なエポキシ官能性不飽和モノマーは、例えば、α−βエチレン性不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはイタコン酸のグリシジルエステルおよびアリルグリシジルエーテルの1種以上を含むことができる。好ましくは、エポキシ官能性モノマーは、式HC=C(R)C(O)OR、式中RはHまたは低級アルキル基であり、かつRはグリシジル末端の、分岐または非分岐の1から4の炭素原子を含有するアルキレン残基、すなわちグリシジル環が不飽和に対して遠位端部にある、グリシジル(メタ)アクリレートモノマーから選択される。前記式の定義の範囲内の例となる化合物は、グリシジルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、および1,2−エポキシブチルアクリレート、好ましくは、式中Rがメチルであり、かつRがグリシジルメチレン基である前記式のグリシジル(メタ)アクリレートである。グリシジル(メタ)アクリレートモノマーは式Iのモノマーの混合物を含むことができる。グリシジル(メタ)アクリレートはEastman Chemical Co.(Calvert City,Ky.)から商業的に入手することができ、またはそれは当業者に周知の反応条件下で製造することができる。
【0047】
好適なα−βエチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、クロトン酸、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステルおよびこれらの混合物を含むことができる。
【0048】
好適なリンの酸モノマーはリンの酸基を有する任意のα−βエチレン性不飽和モノマーであることができ、そのリンの酸基の酸形態であってもよいし、そのリンの酸基の塩として存在していてもよい。リンの酸モノマーとしては、例えば、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えばホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、ビニルホスフェート並びに(メタ)アリルホスフェートをあげることができる。好ましいものはホスホアルキルメタクリレートである。他の好適なリンの酸モノマーとしては、リン酸二水素官能性モノマー、例えばアリルホスフェート、ビス(ヒドロキシメチル)フマレートもしくはイタコネートのモノ−またはジホスフェート;ホスホネート官能性モノマー、例えば、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、α−ホスホノスチレン、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸;1,2−エチレン性不飽和(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレートモノマー;並びにオリゴマーのリンの酸モノマー、例えば、ジホスホモノアルキル(メタ)アクリレート、すなわち、(メタ)アクリロイルオキシアルキルジホスフェート、トリホスホモノアルキル(メタ)アクリレート、メタホスホモノアルキル(メタ)アクリレートおよびポリホスホモノアルキル(メタ)アクリレートをあげることができる。
【0049】
他の態様においては、リンの酸官能性アクリルコポリマーは、まず、第2共反応性基とリンの酸基とを含む化合物と反応することができるペンダント第1共反応性エポキシ基を含む前駆体ポリマーを製造することにより製造することができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを使用して前駆体ポリマーを製造することができる。第2共反応性基とリンの酸基とを有する化合物上の好適な第2共反応性は、アミン、ヒドロキシルおよびリン酸無水物である。エポキシ官能性前駆体ポリマーはポリリン酸またはグリホサートと反応して、内部ペンダントリンの酸基を有するリンの酸官能性アクリルコポリマーを生じさせることができる。
【0050】
好適なコモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレート、ビニルエステル、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、不飽和二塩基酸のジアルキルエステルおよびこれらの混合物から選択される1種以上の非イオン性アクリル、ビニルまたはアリルモノマーがあげられうる。アクリルコモノマーの好適な例は、例えば、(メタ)アクリル酸のC−C20(シクロ)アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートおよびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸の高級アルキルエステル、例えばエイコシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物;ベンジル(メタ)アクリレートおよびフェニル(メタ)アクリレートがあげられうる。好適なビニルコモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルエステル、例えば、ビニルアセテート、ビニルエーテル、アリルエーテル、アリルアルコール、およびこれらの混合物があげられうる。好ましくは、コモノマーは(メタ)アクリル酸のC−C(シクロ)アルキルエステルの1種以上、例えば、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、およびイソブチルアクリレートを包含する。
【0051】
アクリルコポリマーの好適な混合物は、カルボン酸官能性アクリルコポリマー、リンの酸官能性アクリルコポリマー、およびエポキシ官能性アクリルコポリマーから選択される1種以上のアクリルコポリマーと混合された1種以上のエポキシ官能性アクリルコポリマーを含むことができる。
【0052】
アクリルコポリマーは熱開始剤またはレドックス開始剤の存在下で従来の重合方法によって形成されうる。エポキシ官能性アクリルコポリマーの場合には有機溶媒重合が行われる。他の場合には、水性エマルジョン重合が行われうる。
【0053】
コーティング粉体はコーティング粉体の全重量基準で5〜35重量%の1種以上の架橋剤をさらに含む。架橋剤は化学量論量で0.75:1から1.25:1、好ましくは0.95から1.05:1の酸対エポキシで添加される。そのような架橋剤はエポキシ基と反応する任意のものを含むことができる。エポキシ官能性アクリルポリマーのための好ましい架橋剤は、セバシン酸、ドデカンジオン酸のような有機ジカルボン酸およびその無水物、並びに有機ジカルボン酸または無水物のポリエステルでのエステル化から製造される付加物を包含することができる。好ましい架橋剤が塗膜に柔軟性を与え、耐チッピング性[chip resistaice]を向上させることができる。カルボン酸官能性アクリルコポリマーまたはリンの酸官能性アクリルコポリマーコーティング粉体のための架橋剤は、ポリエポキシ架橋剤、例えばトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、ビスフェノールAエポキシ樹脂、またはエポキシフェノールノボラックを含むことができる。
【0054】
接着促進剤は追加的に40℃以上のTを有するエポキシ樹脂またはイソシアネート化合物またはプレポリマー接着促進剤、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ−フェノールノボラック樹脂;イソホロンジイソシアネート(IPDI)のダイマーおよびトリマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)またはトルエンジイソシアネート、ブロックされたイソシアネート、例えばカプロラクタムブロックIPDI、およびポリオールまたはグリコールを用いたジイソシアネートまたはそのダイマーまたはトリマーのイソシアネート末端プレポリマーを含んでいてもよい。好ましい接着促進剤はビスフェノールエポキシ樹脂、より好ましくはビスフェノールAまたはビスフェノールFエポキシ樹脂である。エポキシ接着促進剤の存在は、その接着促進剤を有しない同じ粉体に対して、CASS(銅加速塩噴霧)耐腐食性を向上させることができる。接着促進剤の好適な量は、コーティング粉体の全重量に基づいて、10重量%まで、好ましくは0.2から3重量%まで、より好ましくは1重量%までの範囲であることができる。3重量%よりも多い量は耐候性の課題に貢献することができる。
【0055】
コーティング粉体組成物には、少量の当該分野で周知の他の成分をさらに組み込むことができ、例えば、耐候性の助けとするために、0.1から15phr、好ましくは5phrまでの1種以上の紫外線安定剤または光吸収剤をさらに組み込むことができる。好適な光安定剤としては、例えば、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジンエタノールを用いて形成されるコハク酸ジメチルポリマーのようなヒンダードアミン、ヒンダードフェノールまたは上記光安定剤の少なくとも1種を含む組み合わせ物があげられる。
【0056】
加水分解可能なシラン、例えば、アルコキシシランはコーティング粉体の全重量を基準にして、0.01から3重量%、好ましくは0.3重量%以下の量で使用されることができ、疎水性サブミクロン粒子をコーティングマトリックスに結合させることができる。好適なシランの例としては、グリシジルアルコキシシランおよびアミノアルコキシシラン、例えばグリシジルトリメトキシシランがあげられる。
【0057】
少量、例えばコーティング粉体の全重量を基準にして0.10重量%まで、好ましくは0.05重量%までの有機顔料、例えばフタロシアニン類が黄色度を制御するために含まれてもよい。コーティング粉体は、コーティング粉体の全重量を基準にして0.001から1.0重量%の蛍光増白剤および/またはレベリング剤;コーティング粉体の全重量を基準にして0.1から10phrの1種以上の艶消し剤、例えばアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、6phrまでの1種以上のワックス;並びにコーティング粉体の全重量を基準にして0.01から1.0重量%のポストブレンド[post blend]添加剤、例えばシリカまたはヒュームアルミナのような乾燥流動添加剤を追加的に含んでいてもよい。
【0058】
本発明のコーティング粉体は従来の方法に従って製造される。成分はブレンドされることができ、次いで、例えば有意な硬化が起こらないように溶融コンパウンディング[melt−compounding]などにより、緊密に混合されうる。溶融コンパウンドは押し出され、次いで素早く冷却されることができ、続いて、粉砕されることができ、必要であればサイズに従って粒子を選別することができる。あるいは、コーティング粉体はアクリルコポリマー粒子を疎水性サブミクロン粒子と結合させ、凝集体粒子を形成することことにより製造されることができる。
【0059】
コーティング粉体は従来の手段を介して適用されることができる。静電塗装のためには、粒子の平均サイズは5から200μm、好ましくは25μm以上、または75μm以下の範囲であり得る。
【0060】
一旦適用された塗膜は熱で、例えば、90から250℃の温度で、30秒から90分の間硬化される。熱的硬化のための熱は対流、赤外(IR)または近IR源からもたらされうる。
【0061】
好適な基体としては、例えば、アルミニウム、鍛造合金、鉄、鋼、電子製品のようなマグネシウム合金、並びにカギおよびドア付属品のような真ちゅうがあげられうる。アルミニウム基体としては、例えば、アルミニウムケイ素合金、アルミニウムリチウム合金、アルミニウムマグネシウム、アルミニウム亜鉛、アルミニウムマンガン、アルミニウム青銅のようなアルミニウム銅ベースの合金などがあげられうる。これら合金は単一成分、2成分であってもよく、または2より多い金属を有していてもよい。
【0062】
好ましくは、基体は前処理される。アルミニウムおよび鍛造合金基体は、例えば、リン有機物質の自己組織化単一層、チタン酸ジルコニウム、またはアクリル改変チタン酸ジルコニウムで前処理されてもよい。鋼および鉄基体はリン酸亜鉛またはリン酸鉄のような不活性化剤[passivating agents]で前処理されてもよい。
【0063】
次の実施例は本発明の有用性を示す。
【実施例】
【0064】
試験方法
フィルム厚さ:乾燥フィルム厚さは、DeFelsko Corporation, Ogdensburg,NYのPOSITECTOR商標モデル6000−FN1Coating Thickness Gaugeを用いて測定され、フィルム厚さはASTM D1400−00「非鉄金属ベースに適用された非導電塗膜の乾燥膜厚さの非破壊的測定の標準試験方法[Standard Test Method for Nondestructive Measurment of Dry Film Thickness of Nonconductive Coatings Applied to a Nonferrous Metal Base]」2000に従って測定された。フィルム厚さはパネルの中心部で測定された3つの読み取り値の範囲(低から高)として報告される。
【0065】
メチルエチルケトン(MEK)耐摩擦性:先端に綿のついたアプリケータがMEKで飽和され、約2.6cmのストロークで2−2.5Kgの適用圧力で試験塗膜の表面に対して、前後に往復して横断するこすりつけを合計50回おこなう。一回の前後の動きは一往復のこすりつけに等しい。アプリケータは50回の往復のこすりつけの全体にわたってMEKで飽和されたままであるようにする。4−5のMEK耐性評定を示す塗膜は許容できる硬化、物理的特性および耐溶媒性を有すると見なされる。試験パネルは表2において次のように評定される。
【0066】
【表1】

【0067】
クラックひび割れ耐性:イソプロピルアルコールに曝露されたときの、透明な粉体塗膜のひび割れに対する相対的な耐性を決定するために、粉体被覆された基体が165度のマンドレル上で曲げられた。得られたパネルは水平から30〜45度の曲りを有し、イソプロピルアルコールが最大曲率の位置でコーティング上に適用される。その後直ちに、処理された領域がクラックの形成について観察された。クラックを観察するために参照される点は軸に対して垂直であった。イソプロピルアルコールが適用された1分後、ひび割れの程度が視覚的に観察され報告される。
【0068】
クロスハッチ接着:塗膜は米国材料試験協会(ASTM)により公表された方法D3359−02「テープテストにより接着を測定するための標準試験方法[Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test]」、試験方法B−クロスカットテープテスト(2002)を用いる接着試験方法に従って試験された。この方法は、特定の間隔のクロスハッチパターンでフィルムを切断し、その切断された領域をPermacel99テープでテープ貼り付けをし、次いでそのテープを素早く取り外すことを提供する。切断された領域は次いで塗料が緩んでいるかまたは取り除かれているかどうかを決定するために検査され、その領域に評定が与えられる。
【0069】
5Bの評定は完全な評定であり、塗膜が取り除かれていないことを必要とする。評定0Bは塗膜の65%以上が取り除かれたことを示し、それにより塗膜の基体への接着性が悪いことを示す。最低の許容可能な接着の評定は3Bである。
【0070】
化学薬品試験:基準燃料Bおよびウォッシャー液:室温で被覆されたパネル上に、それぞれの溶媒を含む綿パッドが、特定の時間の間表面上に配置され、蒸発速度を遅らせるためその上にるつぼが置かれる。基準燃料B(70%イソオクタンおよび30%トルエン)試験について、綿パッドが基体上に1時間の間配置され、DI水で洗浄され、紙タオルで乾燥される。ウォッシャー液試験(パート.No.8710320、ボルボオリジナル)について、綿パッド上の50%酢酸メチルおよび50%エタノールの混合物が基体上に2時間の間配置され、DI水で洗浄され、紙タオルで乾燥される。評価は試験の終了から24時間後に行われる。塗膜の表面は膨潤について0から3の評定、「0」は膨潤を示さず、「3」は重度の膨潤を示す、で評価され、および変色について0から3の評定、「0」は塗膜の変色がなく、「3」は塗膜の重度の変色がある、で評価される。「合格」は表面の変化または軟化がないことを意味する。塗膜は次いで接着試験にかけられる。試験に合格するためには、爪でこすることにより、試験下で表面の塗膜を取り除くことができるべきではない。
【0071】
銅加速酢酸塩噴霧(CASS)DIN ISO EN9227(10/2006):粉体コーティングのCASS腐食耐性試験はホイールセクションにおいて、セクションあたり2つのスクライブを、互いに最小20mmの距離で、最小100mmのスクライブ長さおよび1mmのスクライブ幅で、Sikkens/Erichsenモデル463手動スクライブツールを用いて、金属基体まで下方に塗膜を貫通するように(Erichsen,Hemer,Germany)切りつけ、最大20のホイールセクションを、アクリルガラスノズルおよび脱イオン水飽和塔を有するフィルター付き空気加圧アトマイザーを備えた加速塩噴霧チャンバー(タイプSC1000塩噴霧試験器、Weiss Umwelttechnik GmbH,Reiskirchen,DE)内に配置し、脱イオン水中の50±5g/l塩化ナトリウム(NaCl)および0.26±0.02g/l塩化銅(II)二水和物(CuCl・2HO)の、pH3.1〜3.3の溶液(VIN50021 CASS溶液)を基体ホイールセクションの各80cmの領域あたり、1.5ml/h±0.5ml/hで、50℃±2℃の温度で、24時間の間受け取るように調節することにより行われた。
【0072】
糸状腐食耐性(パネル):
塗膜における糸状腐食耐性を測定するために、Erichsenモデル463手動スクライブツールを用いて、各パネル上に、塗膜を2つに分ける1mmスクライブが塗膜を基体まで下方に貫通する様につけられ、そして上述のCASS試験のために使用された塩噴霧溶液を用いて、24時間の間、23℃の温度で、そのスクライブがつけられた塗膜が加速塩噴霧チャンバー内で老化された。各パネルにおけるフィラメントのすべての長さはメートル定規で測定された。各パネルのフィラメントの平均長さおよび最長フィラメント長さは以下の表3に報告される。
【0073】
ダイムラーDC糸状腐食耐性PPAP3002(TA762)手順:
被覆されたホイールセクションにおける糸状腐食耐性を測定するために、上述のDIN ISO EN9227 CASS手順が、リンスすることなく続いた。次いで、得られた標本は82%RH、60℃に672時間の間、直接に配置された。それぞれの標本上のフィラメントのすべての長さはメートル定規で測定され、平均クリーページ[creepage](フィラメントの長さ)および最大クリーページ(最長フィラメント長さ)が以下の表3に報告される。
【0074】
外観/滑らかさ:これは粉体コーティング機関(Powder Coating Institute,PCI)標準パネルを用いてコーティングを比較することによって評定され、1(悪い)のスコアは重度のオレンジピールとして評定され、10は最も滑らかな評定である。
【0075】
QUV−B:それぞれの被覆されたパネルの初期光沢および色(比色)が決定され、次いでそのパネルは平均波長313nmで、3000時間の間、Pausch Messtechnik GmbH(Haan,Germany)により製造されたUV−B試験器中で、放射線に曝露され、続いて最終光沢および色変化(Δe)の決定が行われた。
【0076】
実施例1〜6:配合および適用
原料成分がPrismミキサーで30秒間、2100RPMでブレンドされ、ついでZSK30(Coperion Werner&Pfleiderer,Stuttgart,Germany)において、400rpm、15−30%トルクおよび90−130℃バレル温度セッティングで押し出されたという方法に従って、コーティング粉体は次の表1に示された実施例2の成分から形成された。得られる溶融押し出し混合物は冷却されたチルロールを通して供給され、固体シートを形成し、これはその後にチップ形態に顆粒化された。袋を0.25−0.5分の間振ることにより乾燥流動添加剤がそのチップと混合された。次いで、ポストブレンド処理されたチップは、ZM100ラボミル(Retsch,Wuppertal−Haan,DE)中、18.000rpmで、0.5mmスクリーンサイズスクリーンを用いて微細粉体に粉砕された。得られる粉体は125μmメッシュサイズのふるいを通して選別され、Nordson Versa−spray商標Amherst Ohio静電噴霧ガンを用いて、示された厚さまで、示された基体に適用され、次いで、175℃で20分間、電気加熱ラボオーブン中で硬化され、粉体塗膜を形成した。
【0077】
実施例1のコーティング粉体は、ZSK25(Coperion Werner&Pfleiderer,Stuttgart,Germany)中、500rpm、15−30%トルクおよび90−130℃バレル温度セッティングで、示された成分の単純な溶融混合により形成された。得られる溶融押し出し混合物は冷却されたチルロールを通して供給され、固体シートを形成し、これはその後にチップ形態に顆粒化された。ポストブレンド(乾燥流動)添加剤は、0.25−0.5分の間、袋をふる[bag−shaking]ことによりそのチップと混合された。ポストブレンド処理されたチップは、次いで、ZM100ラボミル(Retsch,Wuppertal−Haan,DE)中、18.000rpmで、0.5mmスクリーンサイズスクリーンを用いて微細粉体に粉砕された。得られる粉砕された粉体は、その後の塗膜を形成するための適用のために125μmメッシュサイズのふるいを通して選別され、GEMA Optiflex−Optistar CG07(St.Gallen,Switzerland)静電噴霧ガンを用いて、示された厚さまで、示された基体に適用され、次いで、175℃で、20分の間、電気加熱ラボオーブンHeraeus UT60−6120(Hanau,Germany)中で硬化された。
【0078】
【表2】

【0079】
適用:実施例1から2のコーティング粉体はホイールセクションおよびパネルのそれぞれに適用された:ホイールセクション:クロム不使用自己集合単層(Gardobond商標X−4707 X−4661、Chemetall,Frankfurt a.M.,DE)前処理された、機械加工されたアルミニウム合金(Ford スポーク7M2J−1007−AA(AlSi7Mgwa))ホイールセクション、これは6.5〜7.5%のケイ素、0.25〜0.45重量%のMg、0.10重量%未満のFe、0.03重量%未満のCu、0.06〜0.07重量%のZn、0.14重量%のTi、および0.02重量%のMnでドープされたアルミニウム、Ford Motor Company,Dearborn,MI.から構成される。パネル:Gardobond商標X−4707 X−4661前処理された、10.16cm×15.24cm(4”×6”)AA6016アルミニウムパネル、Chemetall,Frankfurt a.M.,DEから入手可能。塗膜は15分間硬化され、190.6℃(375°F)の基体表面温度を達成し、50−75μmの厚さを有する塗膜を与えた。
【0080】
【表3】

【0081】
糸状腐食耐性試験に示されるように、本発明の疎水性サブミクロン粒子を含まない実施例1の周知のエポキシ官能性アクリルコポリマーコーティング粉体と比較して、実施例2の本発明のコーティング粉体は非常に向上された糸状腐食耐性を提供する。同時に、本発明のコーティング粉体から製造される塗膜は、MEK耐摩擦性および化学薬品試験により示されるように、前記周知のコーティング粉体の耐化学薬品性を維持しており、かつそれらは実施例1の周知のコーティング粉体の外観および透明度特性を維持している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリアコートまたは着色クリアコート粉体塗膜を提供する静電コーティング粉体組成物であって、1種以上の熱硬化性アクリルコポリマーと、前記熱硬化性アクリルコポリマーのための1種以上の架橋剤と、コーティング粉体の全重量を基準にして0.01〜1.5重量%を構成する1種以上の疎水性粒子添加剤とをそれぞれ含む粒子または凝集体を含み、粉砕される前に前記疎水性粒子添加剤が前記コポリマーと、溶融混合、押し出し、微細溶接または粒子結合によって緊密に混合されてコーティング粉体組成物の粒子または凝集体を形成している、静電コーティング粉体組成物。
【請求項2】
疎水性粒子が無機酸化物および1種以上の有機ケイ素化合物を含む請求項1に記載のコーティング粉体。
【請求項3】
無機酸化物が0.001μm〜1.0μmの平均粒子サイズを有する請求項2記載のコーティング粉体。
【請求項4】
無機酸化物がヒュームシリカまたは金属酸化物である請求項3に記載のコーティング粉体。
【請求項5】
1種以上の有機ケイ素化合物が実質的に樹脂反応性基を含まない請求項2に記載のコーティング粉体。
【請求項6】
1種以上のエポキシまたはイソシアネート官能性接着促進剤をさらに含む請求項1記載のコーティング粉体。
【請求項7】
1種以上のアクリルコポリマーがエポキシ官能性アクリルコポリマーを含む請求項1記載のコーティング粉体。
【請求項8】
請求項1のコーティング粉体から製造される、金属基体上の塗膜。
【請求項9】
基体がアルミニウムまたは鍛造合金を含む請求項8に記載の塗膜。

【公開番号】特開2012−162748(P2012−162748A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−125942(P2012−125942)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2008−126025(P2008−126025)の分割
【原出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】