説明

疎水性酸化物粒子懸濁液の製造方法

本発明は、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、低構造化された疎水性酸化物粒子を、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁し、その後に懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を添加することを特徴とするものであって、さらに、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液、ならびに対象物上への防汚性および撥水性被覆を製造するためのこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法、ならびに規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液、および目的物上への防汚性および撥水性の被覆を製造するためのその懸濁液の使用に関する。
【0002】
疎水性のナノ構造を有する粒子の懸濁液は、対象物およびテキスタイル平面構造物上への防汚性および撥水性被覆を製造する際に使用される。これらの被覆を製造する場合には、製品の表面上に疎水性粒子を塗布することで、製品の表面上に凸部を伴う表面構造を生じ、これにより、防汚性および撥水性の性質を示す。
【0003】
自浄性被覆の原理は一般に公知である。表面の良好な自浄性の獲得のために、表面は顕著な疎水性に加えて、ある程度の粗さを有していなければならない。構造と疎水性との適切な組合せによって、少量の移動する水が、表面にこびりついた汚れの粒子を随伴することで、表面を清浄化させることはすでに知られている(WO96/04123;US3354022)。
【0004】
EP0933388では、疎水特性を有する構造化された表面を製造するための方法は、最初に、フォトリソグラフィーによりネガフォームを製造し、これらのネガフォームを用いてプラスチックフィルムに型押し、その後にプラスチックフィルムを、フルオロアルキルシランを用いて疎水化する。
【0005】
EP−A0909747では、セラミック成形体、たとえば屋根瓦上において自浄特性を獲得するための方法が示されており、この場合、この方法は、有機性シリコン樹脂溶剤中の粘土粒子の分散液を、セラミック成形体上に塗布し、その後に塗膜を硬化させることによる。
【0006】
JP7328532−Aでは、疎水性表面を有する微粒子を、湿性のラッカー上に塗布し、かつこれらを硬化させることによる被覆方法が記載されている。これによって撥水性の表面が得られている。
【0007】
DE10022246A1では、疎水性ナノ構造化粒子を、接着剤または接着剤類似成分と一緒にスプレーの形で使用する方法が記載されている。これらの方法を用いて、構造化された表面が製造されるが、しかしながらこれらの表面は耐久性のあるものではなかった。
【0008】
技術水準の方法において記載された、極めて湿潤性の表面を獲得するための方法は、極めてエネルギー消費的であるか、あるいは十分な結果をもたらすことはなかった。型押し法による構造化された表面の獲得は消費的であり、かつ平坦表面に限り経済的に使用することができる。付加的に疎水性粒子を塗布することによって構造化が達成される表面は、しばしば不十分な形で再生されるか、あるいは、わずかな機械的荷重安定性のみ示す。加えて、これらの方法は極めて非経済的である。また、しばしばフッ素有機化合物またはフッ素含有ポリマーが要求されることから、高価なばかりでなく、さらに環境的にも著しく憂慮されるものである。
【0009】
ドイツ特許出願DE10135157では、繊維製品上に自浄性被覆を適用するための方法が記載されている。これらの方法において、疎水性の構造化された熱分解法シリカを、化学的清浄化剤、たとえばペルクロロエチレン、テトラクロロエチレンまたは重ガソリンと一緒に混合し、化学的清浄化に基づく自浄性の撥水性効果が衣服上に生じる。これらの方法では、環境的に憂慮されるハロゲン含有溶剤を使用する。
【0010】
撥水性の表面を有するテキスタイル平面構築物上での自浄性を達成するための可能性が、ドイツ特許出願DE10118346には記載されている。ここで示された疎水性粒子懸濁液は、浸漬方法または転写方法を用いてのみ相当するテキスタイル上に塗布することができるといった欠点を有し、かつ、粒子は、ポリマー繊維をエッチングすることによってポリマー繊維表面中で堅固に固定される。
【0011】
したがって、本発明の課題は、規定された調整可能な粘度を有する疎水性酸化粒子の懸濁液を製造するための方法を提供することであり、これによって、疎水性酸化物粒子の懸濁液の塗布方法に関しては、たとえば浸漬塗布またはスプレー塗布のような公知の方法に加えてナイフ塗布を使用することができる。
【0012】
驚くべきことに、規定された調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液が製造されることが見出され、この場合、この方法は、低構造化疎水性酸化物粒子を、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁し、その後に、懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を加える。本発明の方法によれば、その調整可能な粘度によって、少ない投資コストおよび蒸発された沈殿防止剤によって少ない環境汚染性を示す塗布方法を可能にする懸濁液を製造することができる。特に有利であるのは、本発明による方法を用いての懸濁液のみが、テキスタイルのナイフ塗布工程またはテキスタイル被覆に自由に使用可能であることである。
【0013】
本発明は、規定の調整可能な粘度を有する疎水性の酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、低構造化疎水性酸化物粒子を、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁し、その後に、懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を添加する。
【0014】
同様に本発明は、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液、ならびに対象物上での防汚性および撥水性被覆を製造するためのその使用に関する。
【0015】
本発明による方法によれば、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の溶液を得ることが可能である。したがって、専ら従来技術よりも高い粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液、さらには疎水性酸化物粒子のペーストを製造することができる。したがって、本発明による方法を用いて製造された懸濁液は、他の塗布方法、たとえばナイフ塗布方法の使用を可能にする。技術水準では、疎水性酸化物粒子の懸濁液を噴霧するか、あるいは、被覆すべき対象物を疎水性酸化物粒子の懸濁液中に浸漬する。この場合には、疎水性酸化物粒子塗布のための高い投資コストが必要とされ、さらに高い有機沈殿防止剤含量による顕著な環境汚染が生じうる。本発明による懸濁液は、テキスタイルの自浄性および撥水性被覆のために特に適していることから、被覆に関しては、たとえばポリウレタン被覆材料を用いる場合の技術水準による、ナイフ塗布を使用する。
【0016】
規定の調整可能な粘度を有する、疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法は、低構造化疎水性酸化物粒子を、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中で懸濁し、その後に、懸濁媒に対して好ましくは0.05〜15質量%、殊に好ましくは1〜12質量%、特に好ましくは2〜10質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を添加することを特徴とする。
【0017】
本発明による方法において、疎水性酸化物粒子として、低構造化ならびに高構造化された、好ましくは、鉱物からなる疎水性の熱分解法による酸化物粒子、この場合、これらは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物から選択された材料に基づくものであるか、あるいは、疎水性の沈降法による酸化物粒子、この場合、これらは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物から選択された材料に基づくものであって、好ましくは疎水性沈降シリカを使用する。本発明による方法において、特に好ましくは、疎水性熱分解法シリカを使用する。本発明による方法の好ましい実施態様において、低構造化疎水性酸化物粒子からの混合物を使用する。しかしながら、さらに高構造化疎水性酸化物粒子からの混合物を使用することも可能である。
【0018】
酸化物粒子の疎水基は内在的に存在するものであるか、あるいは、酸化物粒子を当業者に公知の方法で疎水化することによるものであってもよい(Schtiftenreihe Pigmente, Nummer 18, der Degussa AG)。これらは、好ましくは、アルキルシラン、アルキルジシラザン、たとえばヘキサメチルジシラザン、またペルフルオロアルキルシランから成る群から選択された少なくとも1種の化合物で処理することによって実施される。
【0019】
本発明による方法の第一工程において、好ましくは懸濁媒に対して0.05〜2.5質量%、好ましくは0.1〜2.0質量%、特に好ましくは0.5〜1.2質量%の低構造化疎水性酸化物粒子を、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁する。
【0020】
本発明による方法における沈殿防止剤としては、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族または芳香族炭化水素、アミドまたはスルホキシドを使用することができる。本発明による方法の特に好ましい実施態様において、さらに前記沈殿防止剤の混合物を使用することもでき、好ましくは、懸濁媒を使用し、有機沈殿防止剤または有機沈殿防止剤混合物の他に水を含有していてもよい。
【0021】
本発明の範囲内において、低構造化疎水性酸化物粒子は、相当する高構造化疎水性酸化物粒子に対して、少なくとも30%減少したジブチルフタレート−吸収(DBP−吸収)(DIN53601によって測定された)を示すものとされる。さらに、本発明による方法において使用される低構造化疎水性酸化物粒子は、相当する高構造化疎水性酸化物粒子に対して少なくとも50%高いタッピング密度(DIN53194により測定された)を示した。たとえば、Aerosil R 812 Sは、高構造化疎水性熱分解法シリカとして、タッピング密度50g/lを有するものであって、またAerosil VP LE 8241は、低構造化疎水性熱分解法シリカとして、タッピング密度140g/lを有するものである。
【0022】
低構造化疎水性酸化物粒子は、EP0637616B1またはUS5959005による乾式粉砕法を用いて、高構造化疎水性酸化物粒子から製造することができ、その際、強力な粉砕方法によって、通常の粒径減少を上廻る酸化物粒子の破壊が生じる。この場合、これらの方法は、不可逆工程である。
【0023】
本発明による方法の好ましい実施態様においては、低構造化疎水性熱分解法酸化物粒子ならびに高構造化疎水性熱分解法酸化物粒子としてAerosile(R)が使用される。低構造化疎水性Aerosil(R)としては、好ましくはAerosil(R)VP LE 8241が使用される。このAerosil(R)R812Sは、本発明による方法のこれらの好ましい実施態様において、高構造化疎水性Aerosil(R)として使用する。
【0024】
本発明による方法において使用される低構造化疎水性酸化物粒子は、好ましくは、ナノメートルの範囲で、さらには1〜1000nm、好ましくは2nm〜750nmおよび特に好ましくは10〜100nmの範囲の不規則な微細構造を有する表面を示す。微細構造は、示された間隔および範囲で、隆起、くぼみ、割れ目、骨格、裂け目、切り込み、刻み目および/または孔を有する構造であると解される。低構造化疎水性酸化物粒子の微細構造は、好ましくは、1を上廻って、好ましくは1.5を上廻っての縦横比を有する凸部であってもよい。さらに縦横比は、最大の幅に対する最大の高さの商として定義され、その際、凸部が、角度のある凸部であるか、あるいは他の延伸形状の凸部である場合には、横幅は長い方向を横切るものとする。
【0025】
好ましくは、本発明による方法において低構造化疎水性酸化物粒子が使用され、この場合、平均粒径は、0.005μm〜100μm、好ましくは0.01μm〜50μmおよび特に好ましくは0.01μm〜30μmのものを使用する。したがって、さらに低構造化された疎水性酸化物粒子は、懸濁媒中で一次粒子から0.02μm〜100μmの粒径の凝塊になるかまたは凝集物に団結されるものを使用することができる。
【0026】
場合によっては存在する凝塊を破壊するために、疎水性酸化物粒子の懸濁液を、高い剪断エネルギーで、たとえば、ディソルバーディスクを用いて実施することが有利である。乱流を増大させる取付け装置、たとえば、水柱(Wasserwalzen)の形成を減少させるためのフロ−ブレーカーまたは他の障壁を使用することは、同様に有利であってもよい。レオノルド数は、好ましくは、2320を上廻る。リチャードソン数は、流れの剪断強さに対しての熱的層の厚さである。したがって、これらは、大きさに関する測定値であり、この場合、これらは、乱流の広がりまたは弱まりに関係する。リチャードソン数は、流れの1点での局所的勾配に関し、本発明による方法では、リチャードソン数は最大0.25である。リチャードソン数の定義は、たとえばH.Kobus(講演“Gewasserhydraulik”水力学および地下水に関する講座Institut fuer Wasserbau, Universitaet Stuttgart)に記載されている。
【0027】
高構造化疎水性酸化物粒子の添加量に依存して、懸濁液は、20s−1を上廻る剪断速度で、好ましくは1.0〜1000mPas、殊に好ましくは1〜500mPas、特に好ましくは1〜400mPasの動粘度で製造することができる。高構造化疎水性酸化物粒子、たとえばAerosil(R)R812Sの量が、懸濁媒に対して≧5質量%である場合には、構造粘性の流れを有する懸濁液が、本発明による方法を用いて製造することができる。
【0028】
本発明による、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子懸濁液は、低構造化された疎水性の酸化物粒子と、懸濁媒に対して好ましくは0.05〜15質量%、殊に好ましくは1〜12質量%および特に好ましくは2〜10質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁された形で含有する。
【0029】
本発明による懸濁液は、好ましくは、懸濁媒に対して0.05〜2.5質量%、殊に好ましくは0.1〜2.0質量%、特に好ましくは0.5〜1.2質量%の低構造化疎水性酸化物粒子を有する。
【0030】
好ましくは、本発明による懸濁液は、前記に示された本発明による方法にしたがって製造される。
【0031】
本発明による懸濁液は、疎水性の酸化物粒子として、低構造化ならびに高構造化された、好ましくは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物から選択された材料から成る疎水性の熱分解法による酸化物粒子であるか、あるいは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物から選択された、疎水性の沈降法による酸化物粒子、好ましくは疎水性の沈降シリカを有する。特に好ましくは、本発明による懸濁液は、疎水性の熱分解法シリカを有する。一つの好ましい実施態様において、本発明による懸濁液は、低構造化された疎水性の酸化物粒子からの混合物を有する。しかしながら本発明による懸濁液は、さらに高構造化された疎水性酸化物粒子からの混合物を有する。
【0032】
酸化物粒子の疎水基は、内在的に存在するものであるか、あるいは、この酸化物粒子を当業者に公知の方法で疎水化することで得られたものであってもよい(Schriftenreihe Pigmente, Nummer 18, der Degussa AG)。これらは、好ましくは、アルキルシラン、アルキルジシラザン、たとえばヘキサメチルジシラザン、またはペルフルオロアルキルシランの群から選択された少なくとも1種の化合物で処理することによって実施される。
【0033】
沈殿防止剤としては、本発明による懸濁液は、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族または芳香族炭化水素、アミドまたはスルホキシを有していてもよい。好ましくは、本発明による懸濁液は、前記に示された沈殿防止剤の混合物を含有するが、しかしながら好ましくは、懸濁媒は、有機沈殿防止剤または有機沈殿防止剤混合物に加えて水を有していてもよい。
【0034】
低構造化疎水性酸化物粒子としては、本発明の範囲内においては、疎水性の酸化物粒子であるとされるが、この場合、これらは相当する高構造化疎水性有機粒子と比較して、少なくとも30%の減少したジブチルフタレート−吸収(DBP−吸収)(DIN53601によって測定される)を示す。これらはさらに、本発明による懸濁液中で、低構造化された疎水性の酸化物粒子を、相当する高構造化疎水性酸化物粒子と比較して、少なくとも50%の増加したタッピング密度(DIN53194によって測定される)を示す。たとえば、Aerosil R812Sを、タッピング密度50g/lを示す高構造化された疎水性の熱分解法シリカとして使用し、これに対してAerosil VP LE 8241を、タッピング密度140g/lを有する低構造化された疎水性の熱分解法シリカとして有する。
【0035】
低構造化疎水性酸化物粒子は、EP0637616B1またはUS5959005による乾式粉砕法によって、高構造化された疎水性酸化物粒子から製造することができ、その際、強力な粉砕方法によって、金属酸化物の破壊に関して通常の粒径減少を上廻るものが生じる。したがって不可逆的工程である。
【0036】
本発明による懸濁液は、低構造化疎水性酸化物ならびに高構造化疎水性酸化物、好ましくはAerosil(R)を有する。これらの懸濁液は、低構造化疎水性Aerosil(R)として、好ましくはAerosil(R)VP LE8241を有する。本発明による懸濁液のこれらの好ましい実施態様において、高構造化疎水性Aerosil(R)として、Aerosil(R)R812Sを有する。
【0037】
本発明による懸濁液中に含有される低構造化疎水性酸化物粒子は、好ましくは、不規則な微細構造を、ナノメートルの範囲で、1nm〜1000nmで、好ましくは2nm〜750nmで、特に好ましくは10nm〜100nmの範囲で有する表面を有している。微細構造としては、前記に示された距離および範囲で、くぼみ、割れ目、骨格、裂け目、切り込み、刻み目および/または孔を有する構造であると解される。低構造化疎水性酸化物粒子の微細構造は、好ましくは、1を上廻り、特に好ましくは1.5を上廻っての縦横比を有する凸部を有していてもよい。さらに縦横比は、最大の幅に対する最大の高さの商として定義され、その際、凸部が、角度のある凸部であるか、あるいは他の延伸形状の凸部である場合には、横幅は長い方向を横切るものとする。
【0038】
好ましくは、本発明による低構造化疎水性酸化物粒子を有し、この場合、これらは、0.005μm〜100μm、好ましくは0.01μm〜50μmおよび特に好ましくは0.01μm〜30μmの平均粒子直径を有する。したがって、さらに懸濁媒中で一次粒子から0.02μm〜100μmの大きさを有する凝塊または凝集体に団結する、低構造化疎水性酸化物粒子を、本発明による懸濁液中で含有する。
【0039】
高構造化疎水性酸化物の含量に依存して、本発明による懸濁液は、20s−1Sを上廻る剪断速度である場合には、動粘度1.0〜1000mPas、好ましくは1〜500mPas、特に好ましくは1〜400mPasを示す。高構造化疎水性酸化物粒子、たとえばAerosil(R)R812Sの場合は、懸濁媒に対して≧5質量%である場合には、本発明による懸濁液は、構造粘性の流れを示す。
【0040】
本発明による懸濁液および本発明による方法によって製造された懸濁液は、対象物上で防汚性および撥水性の被覆を製造するために使用することができ、その際、対象物の表面上の疎水性粒子の被覆を塗布し、かつ、対象物の表面上に凸部を有する表面構造が製造されることによって、防汚性および撥水性の性質が示される。対象物の被覆は、本発明による懸濁液または本発明による方法によって製造された懸濁液が、少なくとも対象物の表面上に塗布され、その後に懸濁媒を除去することによって特徴付けられる。
【0041】
好ましい実施態様において、本発明の懸濁液の使用または本発明による方法を用いて製造された懸濁液の防汚性または撥水性被覆製造のための使用は、本発明による懸濁液または本発明による方法によって製造された懸濁液を、ドクターナイフを用いて、被覆すべき表面、好ましくはテキスタイル上に塗布する。本発明による懸濁液または本発明による方法によって製造された懸濁液は、好ましくは、防汚性および撥水性の被覆を有するテキスタイルを製造するか、あるいは、テキスタイル上での防汚性および撥水性の被覆を製造するために適している。
【0042】
本発明による懸濁液または本発明による方法によって製造された懸濁液は、衣服を製造するために、特に防護服、雨具およびシグナル効果を有する安全服、工業繊維、特にシート、テント、保護用LKW−シートおよび繊維製品の布地、特に日よけシート、たとえば日よけテント、天幕、日傘を製造するのに適している。
【0043】
以下の実施例は、本発明による方法ならびに本発明による懸濁液を詳細に説明するものであるが、本発明はこれらの実施態様によって制限されるものではない。
【0044】
例1:
ウルトラターラックス中に、1質量部のAerosil(R)VP LE 8241(Degussa AG)を、100質量部の変性無水エタノール中に懸濁した。エタノール中のAerosil(R)VP LE 8241の懸濁液に、ウルトラターラックスの使用下で、5質量部のAerosil(R)R812S(Degussa AG)を添加し、かつ激しく混合した。
【0045】
例2:
例1で製造された、変性エタノール中のAerosil(R)VP LE 8241から成る懸濁液を、ドクターナイフを用いて、クラフトライナー(SCA Flex Pack papers GmbH)上で、50μmの層厚で、ドクターナイフを用いて塗布した。室温で、沈殿防止剤を蒸発させた後に、第1表によるポリウレタン(Novotex Italien)を、フィルム塗布用ドクターナイフを用いて、前処理されたライナー上に、50μmの層厚で塗布した。なおも湿性の表面において、ポリウレタン被膜を、ポリアミド布地(DECOTEX, IBENA Textilwerke Beckmann GmbH)から成るトリコット織物に貼り付けた。ポリウレタン被覆は、150℃の温度で、2分間に亘って熱的に効果させ、その後にライナーを除去した。
【0046】
【表1】

【0047】
得られた平面構造物の特徴付けについては、最初に視覚的におこなった。
【0048】
+++は、さらに水滴が形成されたことを意味する。転がり角(Abrollwinkel)は10°を下廻った。++は、水滴の形成が不完全であることを意味し、転がり角は20°を下廻った。
【0049】
例3:
ウルトラターラックス中で、1質量部のAerosil(R)VP LE 8241を、100質量部の有機沈殿防止剤中に懸濁した。Aerosil(R)VP LE 8241の懸濁液に対して、ウルトラターラックスの使用下で、Aerosil(R)R812Sを添加し、かつ激しく混合した。その後に、得られた懸濁液をポリエステル混合織物(DECOTEX IBENA Textilwerke Beckmann GmbH)上に、ドクターナイフを用いて、50μmの層厚で塗布した。その後に、懸濁媒を室温でか、あるいは乾燥室中で蒸発させた。
【0050】
【表2】

【0051】
得られた平面構造物の特徴付けは、最初に視覚的におこなった。
【0052】
+++は、水滴が形成されたことを意味する。転がり角は10°を下廻った。++は、水滴の形成が不完全であることを意味し、転がり角は20°を下廻った。
【0053】
例4:
a.)ウルトラターラックス中で、5質量部のAerosil(R)R812Sを、100質量部のトルエン中に懸濁し、かつ激しく混合した。その後に得られた懸濁液を、ポリエステル混合織物(DECOTEX, IBENA Textilwerke Beckmann GmbH)上で、ドクターナイフを用いて、50μmの層厚で塗布し、その後に懸濁媒体を室温で、あるいは乾燥室中で蒸発させた。得られた布地を乾燥させた後に付着の欠陥箇所が生じた。ロータス効果は、布地上への酸化物粒子の不十分な付着の理由から測定することはできなかった。
b.)ウルトラターラックス中で、1質量部のAerosil(R)VP LE 8241を、100質量部のトルエン中に懸濁した。Aerosil(R)VP LE 8241のこれらの懸濁液に対して、ウルトラターラックスを使用して、Aerosil(R)R812Sを添加し、かつ激しく混合した。その後に得られた懸濁液を、ポリエステル混合織物(DECOTEX, IBENA Textilwerke Beckmann GmbH)上に、ドクターナイフを用いて、50μmの層厚で塗布し、その後に懸濁媒を室温で、あるいは乾燥室中で蒸発させた。これらの方法で被覆されたテキスタイル平面構造物の特徴付けは、最初に視覚的におこない、ロータス効果の評価は+++であった。これらは、水滴はほぼ完全に形成され、かつ転がり角が10°を下廻ることを意味する。
【0054】
例5:
例1と同様に、Aerosil(R)VP LE 8241およびAerosil(R)R812Sの種々の溶剤を用いての懸濁液を製造し、その後に、23℃の温度で、かつγ=0.3〜50S−1の剪断勾配で、Hakke社タイプRS75のレオメーターを用いて、円板−円錐−測定系(Platte-Kegel-Masssysytems)HC60/2°によって動粘度を測定した。結果および各懸濁液の組成については第3表に示す。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法において、少なくとも1種の沈殿防止剤中に低構造化疎水性酸化物粒子を懸濁し、その後に懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化酸化物粒子を添加することを特徴とする、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法。
【請求項2】
疎水性酸化物粒子として、疎水性の熱分解法酸化物粒子または疎水性の沈降法酸化物粒子を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物から選択された材料から成る疎水性の熱分解法酸化物粒子を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
疎水性の熱分解法酸化物粒子として、疎水性の熱分解法シリカを使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
懸濁媒として低構造化疎水性酸化物粒子0.05〜2.5質量%を使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アルコール、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族または芳香族炭化水素、アミドまたはスルホキシドから選択された有機沈殿防止剤を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
懸濁媒として、有機沈殿防止剤の他に水を含有する懸濁媒を使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁された、低構造化疎水性酸化物粒子および懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を有する、調整可能な規定された粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法によって製造された請求項8に記載の懸濁液。
【請求項10】
懸濁液が、懸濁媒に対して0.05〜2.5質量%の疎水性の低構造化酸化物粒子を有する、請求項8または9に記載の懸濁液。
【請求項11】
懸濁液が、20S−1を上廻る剪断速度で、1.0〜1000mPasの動粘度を示す、請求項8から10までのいずれか1項に記載の懸濁液。
【請求項12】
懸濁媒が、有機沈殿防止剤の他に水を含有する、請求項8から11までのいずれか1項に記載の懸濁液。
【請求項13】
対象物上での防汚性被覆または撥水性被覆を製造するための、請求項8から12までのいずれか1項に記載の懸濁液の使用。
【請求項14】
懸濁液を、少なくとも1個の対象物表面上に塗布し、その後に懸濁媒を除去する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
懸濁液を、ドクターナイフを用いて塗布する、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
テキスタイル上での防汚性および撥水性の被覆を製造するための、請求項13から15までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
衣類、工業繊維およびテキスタイル構造物を製造するための、請求項16に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法において、少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に低構造化疎水性酸化物粒子を懸濁し、その後に懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を添加し、その際、低構造化疎水性酸化物粒子は、相当する高構造化疎水性酸化物粒子に対して、少なくとも30%減少したジブチルフタレート吸収および少なくとも50%増加したタッピング密度を示す疎水性酸化物粒子である、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液を製造するための方法。
【請求項2】
疎水性酸化物粒子として、疎水性の熱分解法酸化物粒子または疎水性の沈降法酸化物粒子を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたはこれらの混合物から選択された材料から成る疎水性の熱分解法酸化物粒子を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
疎水性の熱分解法酸化物粒子として、疎水性の熱分解法シリカを使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
懸濁媒として低構造化疎水性酸化物粒子0.05〜2.5質量%を使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アルコール、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族または芳香族炭化水素、アミドまたはスルホキシドから選択された有機沈殿防止剤を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
懸濁媒として、有機沈殿防止剤の他に水を含有する懸濁媒を使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
低構造化疎水性酸化物粒子および懸濁媒に対して0.05〜15質量%の高構造化疎水性酸化物粒子を少なくとも1種の有機沈殿防止剤中に懸濁した形で有し、その際、低構造化疎水性酸化物粒子は、相当する高構造化疎水性酸化物粒子に対して、少なくとも30%減少したジブチルフタレート吸収および少なくとも50%増加したタッピング密度を示す疎水性酸化物粒子である、規定の調整可能な粘度を有する疎水性酸化物粒子の懸濁液。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法によって製造された請求項8に記載の懸濁液。
【請求項10】
懸濁液が、懸濁媒に対して0.05〜2.5質量%の疎水性の低構造化酸化物粒子を有する、請求項8または9に記載の懸濁液。
【請求項11】
懸濁液が、20S−1を上廻る剪断速度で、1.0〜1000mPasの動粘度を示す、請求項8から10までのいずれか1項に記載の懸濁液。
【請求項12】
懸濁媒が、有機沈殿防止剤の他に水を有する、請求項8から11までのいずれか1項に記載の懸濁液。
【請求項13】
対象物上での防汚性および撥水性の被覆を製造するための、請求項8から12までのいずれか1項に記載の懸濁液の使用。
【請求項14】
懸濁液を対象物の少なくとも1種の表面上に塗布し、その後に懸濁媒を除去する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
懸濁液を、ドクターナイフを用いて塗布する、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
テキスタイル上での防汚性および撥水性の被覆を製造するための、請求項13から15までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
衣類、工業繊維およびテキスタイル構造物の織物を製造するための、請求項16に記載の使用。

【公表番号】特表2006−505476(P2006−505476A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547499(P2004−547499)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010722
【国際公開番号】WO2004/039909
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】