説明

疎水性PET剤を用いたPETイメージングのために適した配合物

本発明は親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体の配合物に関し、およびより特定には、非経口的に、例えば静脈内に投与可能な配合物であって、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体が19Fまたは18F標識された、それらの放射性医薬品である配合物に関する。さらに、本発明は、前記の適した配合物の無菌化ろ過法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体の配合物に関し、およびより特定には、非経口的に、例えば静脈内に投与可能な配合物であって、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体が、18Fで標識されたそれらの放射性医薬品である配合物に関する。さらに、本発明は、前記の適した配合物の無菌化ろ過法に関する。
【0002】
背景
患者のポジトロン断層撮影(PET)イメージングのために有用なスチルベン誘導体は、WO2003/018070号A1およびWO2006/066104号A1から公知である。放射標識は有機溶液中、スチルベン誘導体の前駆体および[18F]の存在中でもたらされ、スチルベン誘導体が18F放射性同位体で放射標識される。スチルベン誘導体の前駆体は、乾燥条件中にあってよく、且つ随意に、不活性な製剤学的に認容性の担体および/またはそこに添加される補助物質、および還元剤および随意にキレート化剤を有する。フッ素で放射標識されたスチルベン誘導体は、任意の添加剤、例えばpH調節剤(例えば酸、塩基、緩衝剤)、安定剤(例えばアスコルビン酸)または等張化剤(例えば塩化ナトリウム)を含有することがある。
【0003】
通常、PET供給センターは、オンデマンドで、患者に注射される放射性医薬品を含む放射性の(hot)原液を作業日にあわせて製造する。その放射性の原液は、安定且つ貯蔵可能でなければならない。今までのところ、PETの放射性医薬品のために適した配合物については、あまり発表されていない。
【0004】
従って、PET剤を含む、市場で受け容れ可能な適切な配合物であって、該PET剤が低い水溶性を示すもの、即ち、PET剤が、PETイメージングに有用なAβリガンドスチルベンに基づく誘導体である親油性PET剤であることを特徴とする配合物が必要とされている。
【0005】
意外なことに、該放射性医薬品配合物は化学的に安定であり、且つ、8時間より長く貯蔵でき、且つ、この配合物が適したフィルター材料を使用して、活性を損失することなく、無菌化ろ過を可能にすることが判明した。
【0006】
フッ素で放射標識されたスチルベン誘導体が、本発明の配合物によって可溶化され且つ安定化されることが判明した。この配合物を使用して、活性の調節のために必要な希釈を、広範な希釈率で行うことができ、任意の患者についての正確な調節を、貯蔵寿命の所定の時間で可能にする。この配合物が、Aβリガンドスチルベンに基づく誘導体の可溶化のために有用なだけでなく、他の疎水性PET剤にも有用であることが実証された。それは、良好な局所許容性(local tolerability)と、放射標識されたPETトレーサーのための製造工程における容易な適用性とを併せ持つ。
【0007】
無菌化ろ過段階は、無菌の非経口配合物を提供するために必要であり、且つ、製剤学的使用のために適した製剤学的溶液を得るために必要である。残念ながら、フッ素標識された成分の決定的な損失が、多くの場合において観察されている。従って、精製段階を改善し、放射標識率を高める必要がある。
【0008】
意外なことに、本発明の適した配合物は、無菌化フィルターと共に効果的に使用され、放射性医薬品の無菌化フィルター上への吸着を減少させることが見出された。
【0009】
概要
本発明は親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体の配合物に関し、およびより特定には、非経口的に、例えば静脈内に投与可能な配合物であって、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体が18F標識されたそれらの放射性医薬品である配合物に関する。さらに、本発明は、前記の適した配合物の無菌化ろ過法に関する。
【0010】
詳細な説明
本発明は、放射性医薬品を含む配合物であって、哺乳類への非経口投与のために適している配合物に関する。
【0011】
第一の態様において、本発明は
・ 親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、
・ アルコール、および
・ ポリエーテル
を含む配合物に関する。
【0012】
親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体:
親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体は、好ましくは式Iの化合物またはそれらの適した塩である
【化1】

【0013】
[式中、
1は、
NR34
ヒドロキシ、
1〜C4−アルコキシ、
ヒドロキシ(C1〜C4)アルキル、
ハロゲン、
シアノ、
水素、
ニトロ、
(C1〜C4)アルキル、
ハロ(C1〜C4)アルキル、および
ホルミル
を含む群から選択される;
3およびR4は独立して水素、C1〜C4−アルキルまたは(CH2d5であり、且つdは1〜4の整数である;
9は、R5、水素、R5−(C1〜C4)アルキル、[R5−(C1〜C4)アルキル]アミノ、[R5−(C1〜C4)アルキル]アルキルアミノ、およびR5−(C1〜C4)アルコキシを含む群から選択される;
2は、ヒドロキシル、C1〜C4−アルコキシ、(C1〜C4)−アルキルオキソアルク(C1〜C4)オキシ、(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、カルボキシ(C1〜C4)アルキル、ハロ(C1〜C4)アルコキシ、ハロ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、ハロ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ−アルキルオキシ、ハロ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、ハロ(C1〜C4)アルキル、NR610、フェニル(C1〜C4)アルキル、R5−(C1〜C4)アルコキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、R5−(C1〜C4)アルキルからなる群から選択される;
518Fまたは19Fである;
6およびR10は、独立して、水素、ヒドロキシ(C1〜C4)アルキルおよびC1〜C4−アルキルを含む群から選択される;
7およびR8は、各々の場合において独立して、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルキルおよびヒドロキシ(C1〜C4)アルキルを含む群から選択される]。
【0014】
好ましい実施態様において、R1はNR34であり、前記R3およびR4は独立して水素またはC1〜C4−アルキルであり、且つR9は水素である。より好ましくは、R1はNR34であり、前記R3およびR4は独立して水素またはC1−アルキルであり、且つR9は水素である。
【0015】
好ましい実施態様において、R2は、R5−(C1〜C4)アルコキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、R5(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、R5−(C1〜C4)アルキルであり、好ましくは、アルキルオキソはC1〜C2−アルキルオキソである。より好ましくは、R2はR5−C2−アルコキシ、R5−C2−アルキルオキソC2−アルコキシ、R5−C2−アルキルオキソC2−アルキルオキソC2−アルキルオキシ、R5−C2−アルキルオキソC2−アルキルオキソC1−アルキルオキシ、R5−C4−アルキルである。さらにより好ましくは、R2は、R5−C2−アルキルオキソC2−アルキルオキソC2−アルキルオキシである。
【0016】
好ましい実施態様において、R7およびR8は各々の場合において、独立して、ハロゲン、水素、ヒドロキシまたはアミノを含む群から選択される。より好ましくはR7およびR8は水素である。
【0017】
好ましい実施態様において、R518Fである親油性アミロイドベータリガンドスチルベンは、放射性医薬品の線量が37MBq(1mCi)〜740MBq(20mCi)の範囲であるように投与される。特に、150MBq〜370MBqの範囲の線量が使用される。
【0018】
本発明の化合物は、配合物中に、室温で最大濃度10μg/mLで存在し、且つより好ましくは室温で5μg/mLである。
【0019】
好ましい親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体は下記である
化合物1:
【化2】

メチル−[4−((F)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
および
化合物2:
【化3】

メチル−[4−((F18)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
【0020】
好ましい配合物は、
・ 化合物1
【化4】

メチル−[4−((F)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
・ アルコール、および
・ ポリエーテル
を含む。
【0021】
他の好ましい配合物は、
・ 化合物2
【化5】

メチル−[4−((F18)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
・ アルコール、および
・ ポリエーテル
を含む。
【0022】
追加的且つ随意に、本発明の配合物は、アスコルビン酸(Ascorbid acid)、リン酸二水素ナトリウム二水和物、および/またはリン酸一水素ナトリウム二水和物、または当該技術分野で公知の任意のpH調節剤を含む。
【0023】
アルコール:
好ましい実施態様において、アルコールは、配合物中に約8%v/v〜20%v/vの量で存在する。好ましくは、該アルコールは、約10%v/v〜15%v/v、より好ましくは15%v/vの量で存在する。アルコールは、少なくとも2の炭素鎖長を有するアルコールである。好ましくは、アルコールはC2〜C5−アルコールである。より好ましくは、該アルコールはC2、C3またはC4アルコールである。アルコールは、好ましくはエタノールである。該エタノールは、96%から100%までのエタノールである。
【0024】
ポリエーテル:
好ましい実施態様において、ポリエーテルは、配合物中に約10%v/v〜25%v/vの量で存在する。好ましくは、該ポリエーテルは、約8%v/v〜20%v/v、より好ましくは20%v/vの量で存在する。ポリエーテルは好ましくは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、例えばPEG300、PEG400またはPEG1500である。
【0025】
本発明の配合物は、哺乳類への非経口投与のために適した製剤学的配合物である。
【0026】
好ましい配合物は、
・ 式Iの化合物またはそれらの適した塩
【化6】

[式中、
1はNR34であり、前記R3およびR4は独立して水素またはC1アルキルである;
9は水素である;
2はR5−C2−アルキルオキソC2−アルキルオキソC2−アルキルオキシである;
7およびR8は水素である、且つ
518Fまたは19Fである]
・ 約10%v/v〜15%v/vの量の96%のエタノール、および
・ 約8%v/v〜20%v/vの量のポリエチレングリコール(PEG400)
を含む。
【0027】
より好ましい配合物は、
・ 化合物
【化7】

メチル−[4−((F)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
または
【化8】

メチル−[4−((F18)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
またはそれらの混合物、
・ 約15%v/vの量の≧96%のエタノール、および
・ 約20%v/vの量のポリエチレングリコール(PEG400)
を含む。
【0028】
さらなる実施態様において、本発明は
・ 親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、
・ アルコール、
・ ポリエーテル、および
・ pH調節剤
を含む配合物に関する。
【0029】
好ましくは、該配合物は
・ 化合物1
【化9】

メチル−[4−((F)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
または、化合物2
【化10】

メチル−[4−((F18)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
またはそれらの混合物
・ アルコール、
・ ポリエーテル、および
・ pH調節剤
を含む。
【0030】
アスコルビン酸およびリン酸一水素ナトリウム二水和物は、当該技術分野で公知のpH調節剤である。
【0031】
さらなる実施態様において、本発明は
・ 親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、
・ アルコール、
・ ポリエーテル、
・ アスコルビン酸、および
・ リン酸一水素ナトリウム二水和物
を含む配合物に関する。
【0032】
好ましくは、該配合物は
・ 化合物1
【化11】

メチル−[4−((F)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
または、化合物2
【化12】

メチル−[4−((F18)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
またはそれらの混合物
・ アルコール、
・ ポリエーテル、
・ アスコルビン酸、および
・ リン酸一水素ナトリウム二水和物
を含む。
【0033】
好ましくは、化合物1または2、またはそれらの混合物は、配合物中に約0.0001〜0.0010%w/vの量で、より好ましくは0.0003%w/vまたは0.0005%w/vの量で存在する。
【0034】
好ましくは、該アルコールは、配合物中に約8%v/v〜20%v/vの量で存在する。より好ましくは、該アルコールは、約10%v/v〜15%v/v、より好ましくは15%v/vの量で存在する。該アルコールは、少なくとも2の炭素鎖長を有するアルコールである。好ましくは、該アルコールはC2〜C5−アルコールである。より好ましくは、該アルコールはC2、C3またはC4アルコールである。アルコールは、好ましくはエタノールである。該エタノールは、96%から100%までのエタノールである。
【0035】
好ましくは、該ポリエーテルはポリ(エチレングリコール)(PEG)、例えばPEG300、PEG400またはPEG1500である。より好ましくは、ポリエーテル、例えばPEG400は、配合物中に約10%w/v〜約25%w/vの量で存在する。さらにより好ましくは、ポリエーテル、例えばPEG400は、約8%w/v〜約20%w/vの量で、より好ましくは20%w/vの量で存在する。
【0036】
好ましくは、アスコルビン酸は、配合物中に約0.1%w/v〜2%w/vの量で存在する。より好ましくは、アスコルビン酸は、約0.1%w/v〜1%w/vの量で存在する。さらにより好ましくは、アスコルビン酸は、約0.1%w/v〜0.5%w/vの量で存在する。
【0037】
好ましくは、リン酸一水素ナトリウム二水和物は、配合物中に約0.1%w/v〜2%w/vの量で存在する。より好ましくは、リン酸一水素ナトリウム二水和物は、約0.1%w/v〜1%w/vの量で存在する。さらにより好ましくは、リン酸一水素ナトリウム二水和物は、約0.1%w/v〜0.5%w/vの量で存在する。
【0038】
より好ましくは、該配合物は、
化合物1または2またはそれらの混合物を、約0.0001〜0.0010%w/v、
96%(V/V)のエタノールを、約8%v/v〜20%v/v、
PEG400を、約10%v/v〜25%v/v、
アスコルビン酸を、約0.1%w/v〜2w/v、および
リン酸一水素ナトリウム二水和物を、約0.1%w/v〜2%w/v
を含む。
【0039】
さらにより好ましくは、該配合物は
0.0005%w/vの化合物1または2またはそれらの混合物、
15%v/vの96%(V/V)エタノール、
20%w/vのPEG400、
0.2%w/vのアスコルビン酸
0.25%w/vのリン酸一水素ナトリウム二水和物、および
残部としての水
を含有する。
【0040】
好ましくは、該配合物は化合物1を含む。
【0041】
好ましくは、該配合物は化合物2を含む。
【0042】
第二の態様において、該発明は、親油性のアミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体を含む本発明の配合物の製造方法に関する。好ましくは、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体は、上記に開示される式Iの化合物である。
【0043】
該方法は、
・ 親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体をアルコール中で可溶化する段階、および
・ 第一の段階のアルコール溶液をポリエーテルに添加する段階
を含む。
【0044】
親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、アルコールおよびポリエーテルについて上記で開示された実施態様は、この中に含まれる。
【0045】
好ましくは、該方法は、
・ 化合物1または2またはそれらの混合物をアルコール中で可溶化する段階、および
・ 第一の段階のアルコール溶液をポリエーテルに添加する段階
を含む。
【0046】
追加的且つ随意に、得られた配合物にpH調節剤が添加される。
【0047】
第三の態様において、該発明は、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体を含む本発明の配合物の無菌化ろ過法に関する。好ましくは、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体は、上記に開示される式Iの化合物である。
【0048】
意外なことに、本発明の配合物を使用した場合、無菌化フィルター上への吸着が非常に低減されることが判明した。無菌化フィルターは、放射線トレーサーろ過のために使用される標準的な無菌化フィルターであってよい。かかる無菌化フィルターは、当該技術分野においてよく知られている。
【0049】
本発明の配合物の無菌化ろ過のための方法は、本発明の配合物を無菌化フィルター上にもたらす段階を含む。
【0050】
式の親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体は疎水性物質であり、且つ、該配合物は必要とされる線量での該物質の溶解を可能にする。疎水性フィルターが、疎水性物質に対する親和性を有することがよく知られており、且つ認められている。溶剤/補助溶剤の使用により、疎水性物質の疎水性フィルター上への吸着が低減される。さらに、本発明の配合物が、この吸着を防止し、且つ、高い収率の無菌化ろ過を可能にすることが判明した。
【0051】
好ましくは、本発明の配合物の無菌化ろ過のための方法は、本発明の配合物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)無菌化フィルター、例えばSartorius Minisart 0.2μm、注文番号16596またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)無菌化フィルター、例えばMillipore Millex 0.2μm SLGV013SL上にもたらす段階を含む。
【0052】
より好ましくは、疎水性フィルターはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)無菌化フィルターである。
【0053】
場合により、本発明に配合物の調製が、無菌化ろ過法に先行する。
【0054】
親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、アルコールおよびポリエーテルについて上記で開示された実施態様は、ここに含まれる。
【0055】
第四の態様において、該発明は、本発明の配合物を、哺乳類への非経口投与のために適したPETイメージング剤の製造のために用いる使用に関する。
【0056】
第五の態様において、該発明は、本発明の配合物を、哺乳類への非経口投与のために適した放射線治療薬剤の製造のために用いる使用に関する。
【0057】
第六の態様において、本発明は、
・ 放射性医薬品用途のための、自動化装置を介して得られる放射線トレーサーを含む本発明の配合物の製造のための装置
・ 放射性医薬品用途のための、自動化装置を介して得られる放射線トレーサーを含む本発明の配合物の製造方法
に関する。
【0058】
発明者らは、自動化装置上で実施される放射性医薬品の工程に容易に組み込むことができる、本発明の配合物を得るための方法を見出した。
【0059】
放射性医薬品用途のための、自動化装置を介して得られる放射線トレーサーを含む本発明の配合物の製造方法は
・ 放射線トレーサーを得る段階、
・ 固相抽出カートリッジまたはカラムを使用して放射線トレーサーを精製する段階、ここで、放射線トレーサーはアルコールを用いて溶出される、
・ アルコール溶出液をポリエーテルに添加し、本発明の配合物を得る段階、および
・ 該配合物を無菌化ろ過する段階
を含む。
【0060】
放射線トレーサーは、親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、例えば化合物2である。アルコールおよびポリエーテルは上記で定義された通りである。
【0061】
定義
本発明において使用される用語を以下で定義するが、しかし、本発明の範囲を限定するわけではない。
【0062】
本発明による化合物の適した塩は、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の塩、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩を含む。
【0063】
本発明による化合物の適切な塩は、通例の塩基の塩、例えば例として且つ好ましくは、アルカリ金属塩 (例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩 (例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)およびアンモニウム塩、アンモニアまたは1〜16個の炭素原子を有する有機アミンから誘導されるもの、例えば、例として且つ好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リシン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジンも含む。
【0064】
ハロゲンは、クロロ、ヨード、フルオロ、およびブロモを意味する。好ましくは、ハロゲンはヨードまたはブロモを意味する。
【0065】
ここで使用される用語「アルキル」は、C1〜C4−直鎖または分枝鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチルまたはt−ブチルを示す。アルキル基は、過フルオロ化または、ハロゲン、ヒドロキシルまたはC1〜C4−アルコキシからなる群から選択される1〜3つの置換基によって置換されていてよい。より好ましくは、アルキルはC1〜C2−またはC1〜C3−アルキルである。
【0066】
ここで使用される場合、用語「アルコキシ」は、−O−C1〜C4−直鎖または分枝鎖アルキル基に関する。
【0067】
ポリエーテルは、1つより多くのエーテル基を有する化合物である。該用語は、一般にポリマー、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを示す一方で、時として低分子量化合物、例えばクラウンエーテルが含まれ得る。
【0068】
放射性医薬品または放射線トレーサーは、医療用途、例えば核イメージング、化学療法およびその種のものにおける使用のために適した化合物である。放射性医薬品は一般に、製剤学的に認容の担体中で提供される。
【0069】
適した配合物は、当該技術分野においてよく知られている製剤学的調製物のpH、濃度または他の物理的特性を調節することによって、製剤学的用途のために適するようになる。
【0070】
特段記載されない限り、本発明それ自体の式の化合物、並びにそれらの任意の製剤学的組成物に言及する場合、本発明は全ての水和物、塩および錯体を含む。
【0071】
実験データ
1. 化合物1(フッ素標識)および2(フッ素標識)
【化13】

【0072】
2. 親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体を含む配合物、一般的な手順
放射薬品学部門における製造手順を模倣するために、以下の手順が開発された。
【0073】
配合物I 化合物1:
アスコルビン酸、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物を一緒に計量した。その後、PEGおよび水を添加した。全ての成分を攪拌して溶解した。最後に、エタノールおよびAβリガンドスチルベンに基づく誘導体の化合物1を添加した。該調製物を混合する。
【0074】
【表1】

【0075】
スチルベンの溶液が感光性を有するので、該溶液を遮光下で貯蔵した。
【0076】
活性物(active)の溶解度を、黒色背景を用いた、照光された拡大鏡を使用する外観検査によって試験し、且つ、HIAC Royco、Liquid Particle Counting System、Model 9703を使用して、粒状物体を評価する実験によって確認した。
【0077】
この手順を使用して、最大溶解度、並びに配合物の選択肢/種々の補助溶剤、種々の量のエタノールおよび種々の量のPEG400を評価した。
【0078】
配合物II、化合物1:
【表2】

【0079】
方法は配合物1について上記に開示された通りである。
【0080】
3. 化合物1のHCl塩を含む配合物の、8時間、室温での安定性
化合物1のHCl塩5.51μg/mLを含有する溶液を配合物1と同様に調製した。種々の時点の後、分析物を解析した。3つの個々のバッチを調製し、且つ分析物および粒状物体について解析した。これらの溶液から、試料を採取し、且つ、HPLCによって解析した。
【0081】
表1は、8時間までの、3つの個々に製造されたバッチの安定性試験の結果を示す。
【0082】
化合物1のHCl塩の分析物は、8時間の観察において95%〜105%の幅内に留まり、経時的な減少傾向はない。化合物1のHCl塩は、配合物中で化学的に安定であるとみなすことができる。
【0083】
表1:
【表3】

【0084】
4. 化合物1のHCl塩を含む配合物中の粒子形成
HIAC Royco、Liquid Particle Counting System、Model 970を使用して、粒子の形成を評価し、通常検査されるチャネル(10μmおよび25μm)に加えて、より小さいチャネル(2μmおよび5μm)も使用して配合物の安定性を評価した。配合物Iを無菌化ろ過し、且つ、1時間および8時間の時点で検査した。
【0085】
表2は、8時間までの、3つの個々に製造されたバッチの粒状物体試験の結果を示す。
【0086】
化合物1は溶解したままであり、且つ沈殿していない。溶液処理を通常の研究室条件下で行ったので、無菌化ろ過された溶液中で測定された粒子のバックグラウンドは外因性の性質を有する。
【0087】
表2:
【表4】

【0088】
5. 疎水性フィルターおよび吸着
化合物1を含む配合物IIを、上記に示された通りに調製し、且つ、選択された無菌化フィルターを使用してろ過した。化合物1の吸着を、種々のフィルターの種類を使用したろ過の前後に測定した。表3は、種々のフィルターを使用した吸着実験の結果を示す。
【0089】
疎水性フィルターのみが、フィルター材料上に吸着した少量の化合物1を示す。
【0090】
表3:
【表5】

【0091】
6. 吸着およびPTFEフィルター
化合物2の標準的な配合物は、8.5mLの等張食塩水、1.5mLのエタノールおよび50μlのリン酸ナトリウム溶液を含む。
【0092】
表4は、大量の化合物2が調製相の間に失われたことを示す。該バルクは、高い放射能を示すF18で放射標識された化合物2を含む配合物を含む。患者への投与のために準備される最終的な製剤学的配合物に至る全ての段階の間に放射能の損失が生じる。
【0093】
化合物2の本発明の配合物は、注射のための6.5mLの水、2mLのPEG、1.5mLのエタノール、20mgのアスコルビン酸、および25mgの二塩基性リン酸ナトリウムを含む。
【0094】
表5は、少量の化合物2が調製相の間に失われたことを示す。吸着は著しく低減される。
【0095】
表4
【表6】

【0096】
表5
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ 親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体、
・ アルコール、および
・ ポリエーテル
を含む配合物。
【請求項2】
親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体が、式Iの化合物
【化1】

[式中、
1は、
NR34
ヒドロキシ、
1〜C4−アルコキシ、
ヒドロキシ(C1〜C4)アルキル、
ハロゲン、
シアノ、
水素、
ニトロ、
(C1〜C4)アルキル、
ハロ(C1〜C4)アルキル、および
ホルミル
を含む群から選択される;
3およびR4は独立して水素、C1〜C4−アルキルまたは(CH2d5であり、且つdは1〜4の整数である;
9は、R5、水素、R5−(C1〜C4)アルキル、[R5−(C1〜C4)アルキル]アミノ、[R5−(C1〜C4)アルキル]アルキルアミノ、およびR5−(C1〜C4)アルコキシを含む群から選択される;
2は、ヒドロキシル、C1〜C4−アルコキシ、(C1〜C4)−アルキルオキソアルク(C1〜C4)オキシ、(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、カルボキシ(C1〜C4)アルキル、ハロ(C1〜C4)アルコキシ、ハロ(C1〜C4)−アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、ハロ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ−アルキルオキシ、ハロ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、ハロ(C1〜C4)アルキル、NR610、フェニル(C1〜C4)アルキル、R5−(C1〜C4)アルコキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルコキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、R5−(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキソ(C1〜C4)アルキルオキシ、R5−(C1〜C4)アルキルからなる群から選択される;
518Fまたは19Fである;
6およびR10は、独立して、水素、ヒドロキシ(C1〜C4)アルキルおよびC1〜C4−アルキルを含む群から選択される;
7およびR8は、各々の場合において独立して、ハロゲン、水素、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−アルキルおよびヒドロキシ(C1〜C4)アルキルを含む群から選択される]
またはそれらの適した塩である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
アルコールが、約8%v/vから約20%v/vの量のC2、C3またはC4アルコールであり、且つ、ポリエーテルが約10%v/v〜約25%v/vの量のPEG300、PEG400またはPEG1500である、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
・ 式Iの化合物
【化2】

[式中、
1はNR34であり、前記R3およびR4は独立して水素またはC1−アルキルである;
9は水素である;
2は、R5−C2−アルキルオキソC2−アルキルオキソC2−アルキルオキシである;
7およびR8は水素である、且つ
518Fまたは19Fである]
またはそれらの適した塩
・ 約10%v/v〜15%v/vの量の96%エタノール、および
・ 約8%v/v〜約20%v/vの量のポリエチレングリコール(PEG400)
を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の配合物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の配合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の配合物の無菌化ろ過方法であって、該配合物を無菌化フィルター、好ましくは疎水性無菌化フィルター上にもたらす方法。
【請求項7】
放射性医薬品用途のための、自動化装置を介して得られる放射線トレーサーを含む請求項1に記載の配合物の製造方法であって、
・ 放射線トレーサーを得る段階、
・ 固相抽出カートリッジまたはカラムを使用して放射線トレーサーを精製する段階、ここで、放射線トレーサーはアルコールを用いて溶出される、
・ アルコール溶出液をポリエーテルに添加し、本発明の配合物を得る段階、および
・ 無菌化フィルター上で該配合物を無菌化ろ過する段階
を含み、該放射線トレーサーが親油性アミロイドベータリガンドスチルベンに基づく誘導体である、製造方法。
【請求項8】
・ 化合物1:
【化3】

メチル−[4−((F)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
または、化合物2:
【化4】

メチル−[4−((F18)−2−{4−[2−(2−プロポキシ−エトキシ)−エトキシ]−フェニル}−ビニル)−フェニル]−アミン
またはそれらの混合物
・ アルコール、
・ ポリエーテル、および
・ pH調節剤
を含む、請求項1または2に記載の配合物。

【公表番号】特表2013−515694(P2013−515694A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545313(P2012−545313)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070455
【国際公開番号】WO2011/076825
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512158125)ピラマル イメージング ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】