説明

疑似移動床装置におけるオンライン測定のための新規方法、並びに前記装置の制御及び調節への適用

【解決手段】本発明は、擬似移動床(SMB)態様で機能する分離装置の1つのポイントにおいて存在する種の濃度を測定する方法であって、浸漬型プローブと熱電対を使用し、該浸漬型プローブは、該装置内の1つのポイントまたは前記装置に入るまたは前記装置から出る流れの1つに位置し、該熱電対は、該浸漬型プローブの近傍に位置し、785nmの波長において機能するレーザ光源を用いて得られるラマンスペクトルが用いられる、方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疑似移動床(以下、SMB(simulated moving bed)と省略する)装置をキシレン類の分離のために制御及び調節する、オンライン測定(on-line measurement)方法及び装置の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、前記装置の様々な分離帯域内を移動する炭化水素の流れの組成のオンライン測定に関する。この濃度測定は、検討下の流れのラマン(Raman)スペクトルから、本発明の不可欠な部分を形成する、前記スペクトルを処理する特定の方法を使用して得られる。
【0003】
本発明の方法の特に有利な用途は、様々なキシレン類の分離であり、装置内を移動する流れは、メタ−キシレン、オルト−キシレン、パラ−キシレン、及びエチルベンゼンの混合物によって構成され、組成は、検討下の分離装置中の測定地点に応じて変化する、
従来技術では、分析は、装置内を移動する流れからサンプルを採取し、前記流れを分光計キャリブレーション(calibration)に対応する条件下に置くことによって、リアルタイムで実施される。このコンディショニング操作は、分離装置内の所与の地点から採取される様々な流れの直接分析と適合性がない、大きな制限を成す。
【0004】
本発明によって、流れの分析を、特にラマンスペクトルを用いて、装置内のそれらのサンプリング地点に対応する動作条件下で直接実施できるようになる。
【0005】
本発明によって克服され得る他の問題は、ラマンスペクトルの使用に影響を与えるおそれのあるサンプル中の蛍光性不純物の存在に関連した問題である。従来技術で使用された波長範囲とは異なる波長範囲の選択によって、大幅に改善されたシグナル/ノイズ比(signal-to-noise ratio)を享受できることになる。
【0006】
最後に、本発明は、従来技術に比べて大幅に改善された測定精度をもたらし、この改善は、主に以下の3つの要素の組合せによる:
a)最適化された信号/雑音比を得ることができる光源の波長、
b)180℃および10バールまでスペクトルを測定することができる測定方法、
c)浸漬ロッドの使用によってサンプルを原位置(in situ)で直接得ることが可能になり、コンディショニング室中を通過させる必要がなくなる。
【背景技術】
【0007】
特許文献1には、様々な種の濃度を決定することを目的として、サンプルから得られるラマンスペクトルを生成させることと、それを複雑な数学的方法で用いることとを含む方法が記載されており、その測定は、その後、プロセスを制御及び調節するために使用される。採用される数学的方法は、ニューラルネットワークを使用する、多変量PLS(部分最小二乗:partial least square)タイプの統計分析及び/又は主成分タイプ分析(PCA:principal component type analysis)を組み込んだ回帰モデルである。
【0008】
実験スペクトルは、主成分を含むベクターと、既知の因子によって説明されない変動からなるエラーベクターとによって表される。引用特許において提案される方法には、分析ごとに回帰を必要とするという欠点があり、これは、計算時間に関して費用がかかり、分析速度を非常に高速な実験スペクトル収集と適合性のないものにする。
【0009】
その方法はまた、異常値(aberrant values)(その文書では「外れ値診断(outlier diagnostics)」と呼ばれる)の事前分析を必要としており、モデルはそれらの異常値があると機能することができない。最後に、その特許では、特に停止又は開始段階で必然的に変動する、被分析流体の温度の影響については言及されていない。
【0010】
本発明の目的は、事前のキャリブレーションから導出される行列反転方法を使用する、温度に考慮した、様々な成分の濃度を得る別の方法を提案することである。
【0011】
明確な形で温度を考慮に入れると、特に、装置が定常状態になく、その期間の分析が特に重要となるときの、任意の産業プロセスにおける前記温度の不可避の変動に関連した問題が克服される。
【0012】
本発明で使用される数学的方法は、非常に高速の応答時間と適合性があり、「毎秒」分析、すなわち、1ヘルツ程度の測定周波数を可能にする。
【0013】
特許文献2には、8個の炭素原子を含む芳香族炭化水素異性体の混合物を処理する、疑似移動床分離プロセスを調節する方法及び装置が記載されている。その特許は、本発明に最も近い先行技術となる。
【0014】
引用特許に記載されている方法は、レーザタイプの光源から得られる単色信号をSMB分離装置の様々なポイントに送ること、ラマン効果に対応する拡散信号を回収すること、及び、その回収された信号を、その信号に対応するラマンスペクトルを提供する分光器において処理することからなる。
【0015】
ラマンスペクトルを処理する数学的方法によって、検討下の装置内のポイントに存在する様々な種の濃度を決定することができるようになる。
【0016】
実際の濃度プロファイル(ラマンスペクトルから計算される)と、指標値の役割を果たす基準プロファイルとの比較によって、装置のための補正動作を規定することができるようになる。
【0017】
引用特許の方法には、本発明が克服することができる、後述する特定の数の限界がある。
【0018】
励起波長は、400〜1300nm(nmは、ナノメートル、すなわち、10−9メートルの略号である)の範囲、好ましくは420〜650nmの範囲である。第1の範囲はきわめて広く、1990年代にレーザに利用可能な波長すべてをカバーする。
【0019】
好ましい範囲420〜650nmの選択には、大きな欠点がある。実際に、不純物が媒体に存在する。そのような不純物は、500〜600nmの範囲の波長で蛍光を発するいくつかの縮合芳香環(アントラセン、フルオレンタイプ、及びそれらの誘導体の縮合芳香環)を含有する化合物によって構成される。したがって、それらをオプトロードに送る前に、それらを活性炭又は活性白土に吸着させなければならない。したがって、原位置での分析は不可能である。
【0020】
さらに、このような事前の対策にもかかわらず、蛍光性不純物の量は、装置毎に異なっており、観察される背景雑音が高いことがある。これは結果として、厳密には平坦でないベースライン(それより上方でラマン信号の強度が測定される)をもたらすことになる。
【0021】
レーザダイオードの波長を変えることによって、縮合芳香環ベースの不純物の蛍光性が非常に低くなることがここに見出された。したがって、プロセスの動作条件下で直接分析を実施することが可能となる。
【0022】
1)さらに、縮小されたスペクトル幅をもつ別個のいくつかの光源を用い、単一のプログラムと単一のマルチチャンネル検出器による単一のキャリブレーションとを有することによって、いくつかの分析ポイントでの同時定量化を実施することが可能となる。驚くべきことに、750〜800nmの範囲の波長の新規操作窓における検出器でのシグナル/ノイズ比は、1/λに比例するシグナルの減衰にもかかわらず、514〜532nmの間(従来技術)で観察され得るものと同程度のものである。
【0023】
2)疑似移動床技術を使用してC8芳香族炭化水素異性体を分離するプロセスが開発された。特に、分配プレート及びモレキュラーシーブの技術が進歩を遂げた。現在、より少数の床により、2つではなく単一の吸着装置を使用して、高純度のパラキシレンを分離することが可能である。したがって、プロセスを調節するために、内部の分離帯域内に位置する1つのポイントで流れを分析することで十分となる。
【0024】
内部の分離帯域内に位置する少なくとも2つのポイントで流れの分析を実施することは、もはや不可欠ではない。
【0025】
さらに、純粋に2成分の分離がまれであるので、3つの異性体、すなわち、オルト−キシレン、メタ−キシレン、及びパラ−キシレン、並びにエチルベンゼンの基本的分析、並びに、脱着剤、一般にトルエン若しくはパラ−ジエチルベンゼン、又は可能性のある他の任意の脱着剤の基本的分析を実施できるようにする、単一の定量化プログラムを使用することが特に有利である。
【0026】
3)従来技術で解決されていない他の問題は、温度モニタリングの問題であり、ラマンスペクトルは、この可変操作に敏感である。実際、産業プロセスでは、特に停止及び開始段階の間では温度は厳密には一定でないので、特許文献3の発明を実施するには、分離プロセスの主要装置の1つから生成物の小量の流れを採取して、それを、蛍光性不純物を部分的に吸着させることを目的として処理し、次いで、それを、制御された温度まで冷却してから、分析用の窓を内部に備えたセル内に送る必要がある。
【0027】
特許文献3によると、濃度は、分析温度において計算され、したがって、その分析温度は、キャリブレーション温度に等しいものでなければならない。
【0028】
本発明によれば、温度及び圧力のキャリブレーション(例えば、100〜180℃の間のいくつかの温度、10バール(1バール=10パスカル))が実施されることを条件として、および、分子相互作用を考慮する、特に、様々な種の実効断面積における変動をそれらの濃度に応じて明確に考慮に入れるシグナル処理方法が利用可能であることを条件として、測定ポイントにおけるサンプルのラマンスペクトル及び温度の同時測定に基づいた新規分析方法の使用がこの問題を克服する。
【0029】
最後に、1990年代の始めに、高出力ガスレーザ(514nm)しか、ラマン分光法への想定される適用に適していなかった。そのようなガスレーザの欠点は、それらの体積(bulk)が大きいこと、ヘッドを冷却するための水が必要なこと、及びそれらの電力消費が高いことであった。様々な測定ポイントのそれぞれにビームを分配するために、光学的ビーム分割(splitting)システムがレーザヘッドの前に据え付けられた。
【0030】
1990年代の終わりに、532nmで動作する、ラマン分光法と適合性のあるスペクトル特徴をもつ固体レーザが出現した(diode-pumped solid-state:DPSS)。それらを測定ヘッド自体の中に設置すること及びそれらの電力供給は、それらを耐炎性キャビネット内で使用しなければならないことを意味していた。
【0031】
現在、強力な固体レーザを品質管理研究室内に設置することができ、また、光源を光ファイバによって案内することができ、これは、それらの体積が小さく、電力消費が低減させられており、また、測定地点ごとに単一のレーザを使用できることを意味している。故障した場合、1つの測定ポイントだけが関わっており、他の測定ポイントは機能し続けるので、メンテナンスが軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第5684580号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開92/16034号明細書(米国特許第5569808号明細書)
【特許文献3】仏国特許発明第2699917号明細書
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】レーザ光源、分光計、浸漬型プローブ、並びに制御及び調節ループを含む測定ラインの線図であり、必要ならばラマンスペクトルを使用して装置のための補正動作を定義できることを意味している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0034】
レーザ光源(1)は、785nmでビームを放出する。このビームは、光ファイバ(2)に沿って浸漬型プローブ(3)へと案内される。この浸漬型プローブは、キシレン分離ユニット(4)の測定ポイントに浸漬され、そこで様々な成分の濃度が決定されることになる。
【0035】
測定ポイントのところで発せられたラマンシグナルは、浸漬型プローブによって収集され、次いで、第2の光ファイバ(5)を使用してラマン分光計(6)へと伝達される。この分光計は、測定ポイントに対応するラマンスペクトルを生じさせる。このスペクトルは、PC分析装置(7)に送られる。
【0036】
同時に、測定ポイントに近い帯域において、熱電対(8)が装置に浸漬され、この熱電対(8)は、検討下の(したがって、ラマンスペクトルについての測定ポイントを含む)帯域の温度をPC分析装置(7)に伝達することができるものである。
【0037】
PC分析装置は、ラマンスペクトル及び温度を使用して、本発明の不可欠な部分を形成する処理方法を用いて測定ポイントに存在する様々な種の濃度を決定する。こうして得られた濃度値を基準濃度値と比較することによって、作動装置(9)を使用して、プロセスの1つ以上の操作変数、例えば、10のところに点線で示される弁の流量に作用を及ばさせる。
【0038】
点線は、それが本測定ライン内の任意要素であることを意味する。
【0039】
本発明は、疑似移動床(SMB)態様で機能する分離装置の1つのポイントに存在する種の濃度を測定する方法であって、
浸漬型プローブと熱電対とを使用し、該浸漬型プローブは、測定ポイントと呼ばれる検討下の装置内の1つのポイントに位置し、又は前記装置に入る若しくは前記装置から出る流れのうちの1つの上に位置し、該熱電対は、該浸漬型プローブの近傍に位置して測定ポイントの温度(Tspl)を捕捉し、
a)波長が785nm±1nmであるレーザ光源から生じる単色シグナルが、浸漬型プローブに接続された第1の光ファイバを通じて送られ、
b)ラマンシグナルと呼ばれる、ラマン効果に対応するシグナルが捕捉され、該シグナルが該浸漬型プローブを再び横断し、分光計に接続された第2の光ファイバに入り、
c)検討下のシグナルのラマンスペクトルが分光計出口のところで回収され、
d)得られたラマンスペクトルが測定ポイントの温度(Tspl)を考慮する数学的方法を使用して処理されて、検討下の測定ポイントに存在する種の濃度を得る、方法について説明する。
【0040】
C8芳香族化合物の濃度の1つ以上の測定値と1つ以上の基準値との差に応じて装置の制御及び調節を実施するために本測定方法が使用される、本発明のバリエーションでは、以下の変数から選択される少なくとも1つの作動変数に従って作用される:内部流量、又は供給液(feed)、溶離液(eluent)、若しくは抽出液(extract)の流量、或いは置換期間。
【0041】
好ましくは、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバの累積全長は、1000m未満、好ましくは700m未満である。
【0042】
工程d)で使用される濃度Cを得る方法は、次式に基づいている:
【0043】
【数1】

【0044】
(ここで、
・Pは、分子iに起因するラマンバンドの積分強度であり、σは、分子iの相対実効断面積の逆数であり、式中、積分強度Pは、ラマンスペクトル上の測定強度Mから行列積を使用して得られ、ここで、行列Mの係数aijは、測定ポイントの温度(Tspl)において又は測定ポイントの前記温度を取り囲む複数の温度において実施されるキャリブレーションの結果として得られ、
・σは、分子iの相対実効断面積の逆数を示す)
式中、積分強度Pは、ラマンスペクトル上の測定強度Mから行列積を使用して得られ、ここで、行列Mの係数aijは、測定ポイントの温度(Tspl)において又は測定ポイントの前記温度を取り囲む複数の温度において実施されるキャリブレーションの結果として得られ、実効断面積の逆数σは、温度(T)と様々な成分の濃度(C)との関数である。
【0045】
好ましくは、分光計は、遮断閾値を規定するフィルタを使用する。一例として、これらのフィルタは、閾値エネルギーの上方又は下方の遮断をもたらすことができる。それらは、エッジフィルタとして知られている。
【0046】
好ましくは、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバの全長は、1000m未満、より好ましくは700m未満である。
【0047】
本発明の測定方法は、装置にわたって分配された1つ以上の測定ポイントに適用され得る。装置は、疑似移動床(SMB)分離装置であり、該装置には、キシレン類およびエチルベンゼンを含有する供給液が供給され、ラフィネートおよび抽出液を生じさせる。
【0048】
この装置がSMBによってキシレン類を分離する装置であるので、装置上に単一の測定ポイントがあるときには、これは、好ましくは、このポイントの前で解釈される内部濃度プロファイルを再構築することができるように、再循環回路上の再循環ポンプのところに位置する。
【0049】
装置上に2つの測定ポイントがあるときには、第1の測定ポイントは、好ましくは再循環回路上の再循環ポンプの近傍に位置し、第2の測定ポイントは、好ましくは供給回路上の供給ポンプの近傍に位置する。
【0050】
装置上に3つの測定ポイントがあるときには、第1のポイントは、好ましくは再循環回路上の再循環ポンプの近傍に位置し、第2のポイントは、好ましくは供給回路上の供給ポンプの近くに位置し、第3の測定ポイントは、好ましくはラフィネート蒸留カラムの精留帯域内に位置する。
【0051】
本発明の測定方法は、SMBキシレン分離装置の制御及び調節に適用され得、本方法によって測定される濃度プロファイルと、基準濃度プロファイル(装置内に存在する成分のうちの少なくとも1つに対応する)との差により、内部流量、供給液流量、溶離液流量、抽出液流量、及び置換期間によって構成される群から選択される制御パラメータのうちの少なくとも1つに作用を及ぼすことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(発明の詳細な説明)
本発明は、疑似移動床分離装置内の所与のポイントに存在する様々な種の濃度を連続的に測定する方法として記載され得る。当該方法の主要な用途は、疑似移動床(SMB)を使用したキシレン類の分離であり、したがって、本明細書の以降の部分は、この用途を使用して本発明の可能性を例証することになるが、本発明は、例えば、ノルマル又はn−パラフィンの分離など、有機化合物の他の分離にも適用可能である。
【0053】
市販されている多くの機器部品から、ラマン分光法におけるそれらの使用と適合性があることから、785nmで発光する拡張共振器ダイオードレーザ(extended cavity diode laser)が選択された。
【0054】
本発明の状況で使用されるラマン分光計は、光学収差、特に非点収差を補正することによって検出器における画像の品質を改善する、トロイダル入力(troidal input)ミラーを備えた分散型ラマン分光計である。本発明者らの用途は、現在、3本の経路(6本のファイバ)を使用するが、スペクトログラフの品質ゆえに、必要ならば、例えば好ましくは3〜6本の経路を用いて、この経路数を大幅に増やすことが可能であるだろう。
【0055】
分光計の特定のポイントは、レイリー(Rayleigh)ラインを遮断するために使用される阻止フィルタの性質に関係する。本発明者らは、経験上、ある範囲内で遮断するフィルタ(ノッチフィルタ)が時間とともに変化することを知っており、それらのフィルタは、経年劣化し、外部条件(特に、温度及び湿度)に応じた様々な速度でそれらの元の仕様を失う。
【0056】
進歩によって、ラマン分光法におけるそれらの使用に関してより良好な特徴を有する、エネルギー閾値の上方又は下方を遮断することができるフィルタ(エッジフィルタ)が市場にもたらされてきた。これらの改善された特徴は、温度及び湿度の影響を受けないというそれらの元の特徴を維持しながら、カットオフ閾値、密度、及び非常に低いリップルに対応するエネルギーに関係する。
【0057】
フィルタに対する変化は、ノッチタイプのフィルタと比較してエッジタイプのフィルタに唯一残っている欠点が、アンチストークス線(後述の定義を参照)の可視化が不可能なことであることを意味していた。
【0058】
エッジフィルタは、ハイパスフィルタであり、ノッチフィルタは、バンドパスフィルタである。本発明者らの用途では、「アンチストークス」部分と呼ばれる、カットオフ閾値の下方に位置するスペクトル部分は使用されず、したがって、エッジフィルタの使用は、この事実によって全く影響を受けない。
【0059】
入射励起レーザの波長λは、スペクトルバックグラウンドに大きな影響を与え、したがって、得られるラマンスペクトルの外観を大きく改変する。最適化された波長の選択は、いくつかの基準に左右され、しばしば、妥協の結果となる。まず第1に、ラマンシグナルは弱く、その強度は1/λに比例するので、低波長レーザは、理論上、シグナルの増大を引き出す。
【0060】
一例として、532nmレーザは、785nmレーザよりも5倍強いシグナルを提供する。しかしながら、この議論は、エクスポートされた測定にはもはや有効ではない。シグナルは、通常はシリカベースである光ファイバを通じて送られなければならない。
【0061】
そのようなファイバは、減衰を引き起こし、その減衰の値は、主にファイバの長さ(L)及びシグナルの波長によって決まる。伝達率は、T(%)=10によって与えられ、Xは、X=(−A(λ)L/10)によって定義され、式中、
Lは、ファイバの長さ(km)であり、
A(λ)は、減衰係数(dB/km)である。
【0062】
標準的なシリカファイバの場合、減衰係数は、波長とともに減少する。この特性は、長波長レーザの使用に有利に働く。
【0063】
一例として、光ファイバが長さL=1kmを有すると仮定すると、波長532nmの場合の減衰A(532nm)は、13dB/kmであり、波長785nmの場合、減衰A(785nm)は、4dB/kmである。
【0064】
回収されるラマンシグナルは、2つの入射レーザビームに対して近い強度を有することになる。結果として、エクスポートされた測定の場合、可視領域内のレーザ(532nm)の使用は、近赤外のレーザ(785nm)と比較してラマンシグナルの大幅な増大をもたらさない。
【0065】
最後に、近赤外のレーザ(785nm)の使用は、可視レーザ(532nm)と比較して別の利点をもたらす。分散型ラマン分光計は、回折格子を使用して、スペクトルシグナルをエネルギーに応じて分散させる。
【0066】
しかしながら、波数(cm−1/mm)の観点での分散は、532nmよりも785nmでより良好である。
【0067】
したがって、可視レーザから近赤外レーザへと変更し、かつ、よりライン数の少ない回折格子(大きすぎる作用角を回避し、したがって低すぎる光度(luminosity)を回避する)を用いることによって、ラインについて同一の鮮明度(すなわち、同等数のピクセルがラマンラインを記載する同等数のピクセル)を保持することが可能である。
【0068】
さらに、C8〜C10芳香族分子の濃度を測定するために、最も関心の大きい(すなわち、最も特徴的なバンドをもつ)スペクトル帯域は、720〜900cm−1の間に限定される。532nmレーザから785nmレーザへと変更し、近赤外について最適化された別の回折格子を選択することによって、このスペクトル帯域は、依然として、以前と同じ条件下に使用され得る。
【0069】
結論として、可視レーザ(532nm)から近赤外レーザ(785nm)に変更すると、得られるラマンシグナルの強度をさほど低減させることなく、蛍光の問題を克服することができ、同等の分解能が得られることになる。これらの要素によって、より精確且つよりロバストな濃度測定を実施することができるようになる。
【0070】
浸漬型プローブは、レンズを通じてレーザビームの焦点をサンプルに合わせることができ、放出されるラマンシグナルを収集することができる。
【0071】
浸漬型プローブは、2本の光ファイバ(レーザ光源から測定ポイントへとシグナルを案内する往路ファイバ(out fibre)(又は第1のファイバ)および測定ポイントから分光計へとラマンシグナルを案内する復路ファイバ(return fibre)(又は第2のファイバ))に接続された円筒形の鋼管である。
【0072】
プローブの浸漬端(したがって、浸漬型プローブとしてのその指定)は、光を通すことができるサファイアから一般に形成される窓によって構成される。
【0073】
この端部は、分析されるべき媒体に直接浸漬され、これにより、バイパスループの必要なしに原位置での分析を実施することができることになる。1つ以上の浸漬型プローブが、所期の目的に応じて装置の異なるポイントに位置し得る:
・それが動作安定性の観点から装置をモニタリングすることになる場合、1つ以上の浸漬型プローブを、ポンプの下流の吸着床を連結するライン内に配置することができる。その場合、目的は、装置内の所与のポイントにおける種の濃度プロファイルを得ることである。
【0074】
・1つ以上の浸漬型プローブを吸着床の内側に置くことも可能である。この場合、種それぞれの濃度プロファイルが混乱させられる(dislocated)ので、先行する値と比較され得る値を再び得ることができるまでに、サイクルの1期間に対応する時間が経過しなければならない。一例として、24床の装置が75秒の置換期間を有する場合、1サイクルの期間は、30分である。
【0075】
・それは、また、入口供給液の濃度、又はラフィネート及び/若しくは抽出液排出生成物の濃度の測定の実施に関与することがある。この場合、測定ポイントは、供給ライン内、又は、ラフィネート若しくは抽出液生成ライン上(一般に脱着剤からラフィネートを分離する若しくは脱着剤から抽出液を分離する蒸留装置の下流)のいずれかに位置することになる。
【0076】
ラマンスペクトルが測定される装置のポイントの近くに熱電対が設置されて、サンプル帯域のラマンスペクトルとその温度とが同時に捕捉される。用語「近く」は、プローブの浸漬端と熱電対との間の距離が最大でも30cmであることを意味する。
【0077】
本文書の以降の部分では、簡単にするために、装置の様々なポイントに分布させられた1つ以上が存在し得ることを知った上で、用語「測定ポイント」を使用する。各測定ポイントは、前記測定地点の近傍を移動する流体の温度を測定するために、前記近傍に位置する熱電対と関連付けられる。
【0078】
2つのデータ(ラマンスペクトル及び温度)は、処理のために分析ラインを制御するPCへと送信される。
【0079】
混合物の様々な成分の相対濃度は、以下の処理方法を使用してラマンスペクトル及び温度を測定することによって得られる。5つの成分(オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、エチルベンゼン、及びトルエン又はパラ−ジエチルベンゼン)を含むサンプルの場合、種jの相対濃度Cは、以下の関係式によって与えられ、(Tspl)は、サンプルの温度である:
【0080】
【数2】

【0081】
式中、
・Pは、分子iに起因するラマンバンドの積分強度であり、
・σは、分子iの相対実効断面積の逆数であり(慣例により、溶媒の相対断面積を1とする、すなわち、σトルエン=σパラジエチルベンゼン=σ=1)、
・Pは、分子jのラマンバンドの積分強度であり、
・σは、分子iの相対実効断面積の逆数を表す。
【0082】
添え字iとjとの区別は、単純に表記上の便宜であり、iは、総和内の現在の添え字を表しており、jは、検討下の分子の添え字を示す。
【0083】
分母は、混合物中に存在する一連の成分iにわたる積Pσの総和を表す。一般に、P及びσの値は、サンプルの温度Tsplと様々な成分の相対濃度Cとの両方に依存する。
【0084】
後述するキャリブレーション方法は、P及びσの数値を決定するためのものである。
【0085】
(キャリブレーション温度Tcalにおける積分強度Pの決定)
所与の温度について、ラマンスペクトルを利用する方法は、伝達行列(transfer matrix)と呼ばれる行列Mを使用する。この行列Mは、キャリブレーション温度(Tcal)において得られたラマンスペクトル上で測定される積分強度Mを行列積MP=Mにしたがって成分jのラマンバンドの積分強度Pに結び付けることができる。
【0086】
ijを伝達行列Mの一般要素(generic element)として示すと(構造上、aij=1)、以下の関係式が得られる:
【0087】
【数3】

【0088】
したがって、逆行列M−1によって、成分jのラマンバンドの積分強度Pを、種iごとの測定強度Mの線形結合として得ることができるようになる。実際に、aijの値は、キャリブレーション温度Tcalにおいて測定された純粋な成分のラマンスペクトルから得られ、これはPの値が他の成分の濃度に依存しないという仮定から導出される。この近似は、パラ−キシレン及びパラ−ジエチルベンゼンの場合にはもはや有効ではない。実際、パラ−キシレン及びパラ−ジエチルベンゼンについてのラマンバンドは、伝達行列中のそれらのそれぞれの係数をそれらの濃度の関数として決定しなければならないほど大きくオーバーラップする。このために、これらの2つの成分それぞれとメタ−キシレンとの様々な濃度での二成分混合物のラマンスペクトルが使用される。
【0089】
(キャリブレーション温度Tcalにおける相対実効断面積の逆数σの決定)
種jの相対実効断面積の逆数σは、係数Aijによって加重された他の成分の濃度の線形結合として定義される:
σ=Aj1+Aj2+Aj3+Aj4+Aj5 (3)
ijの値の決定は、一連の5つの合成サンプルを使用するキャリブレーションによって実施される。各サンプルは、処理されるべき供給液中に存在する5つの成分の所与の組成をもつ混合物、すなわち、本説明の例証のように、オルト−キシレン(OX)、メタ−キシレン(MX)、及びパラ−キシレン(PX)と、これに、トルエン又はパラ−ジエチルベンゼン(PDEB)であってよい溶媒とともにエチルベンゼン(EB)が加えられた混合物である。
【0090】
慣例により、溶媒の実効断面積が1に等しい、すなわち、σ=1であることが思い出されることになる。
【0091】
5つのサンプルそれぞれに対応する混合物の濃度(重量百分率として表される)は、以下の表で定義される。
【0092】
【表1A】

【0093】
各サンプルについて、キャリブレーション温度Tcalにおいてラマンスペクトルが測定される。
【0094】
各成分についての積分強度Pの値は、ラマンスペクトルから、伝達行列Mから開始して前述の手順を使用して決定される。成分の濃度は、サンプルごとに知られており、したがって、式(1)を使用して、式(1)では未知数となる実効断面積の逆数σを決定する。
【0095】
サンプルx(x=1,...5)について、積分強度P及び濃度Cにおける実効断面積の逆数σを結び付ける4つの式は、以下の通りである:
【0096】
【数4】

【0097】
これらの式は、以下の行列式と等価である:
【0098】
【数5】

【0099】
式(1)が混合物x(x=1,...,5)それぞれについて確認されることを書き出すことによって、例えば、成分2については、以下の連立方程式が得られる:
【0100】
【数6】

【0101】
これにより、係数A2jは、以下の行列方程式によって得られる:
【0102】
【数7】

【0103】
類似の表現が、成分3、4、及び5について得られる。したがって、キャリブレーション温度Tcalに対してAijについての一連の値が得られ、キャリブレーション後に格納される。
【0104】
(温度がキャリブレーションに及ぼす影響の考慮)
濃度を決定するときには、温度は、以下のように考慮に入れられる:
前述の手順(P及びσの決定)を、固定されたキャリブレーション温度Tcalについて実施した。それらを、プロセスの温度範囲、通常は100〜180℃をカバーするように、いくつかのキャリブレーション温度(最低3つの温度:Tcal,Tcal,Tcal,...)について再現した。
【0105】
各温度について、一組の69個の係数が得られ、これは、ラマンバンドの周波数、各成分によるベースラインへの寄与、伝達行列Mの要素、並びに濃度及び係数Aijの値に応じたそれらの補正に対応し、この得られた一組の69個の係数によって相対実効断面積の逆数を計算することができるようになる。
【0106】
温度に伴うこれらの係数それぞれの変動は、二次多項式によって表される。多項式の3つの係数は、異なるキャリブレーション温度Tcal、Tcal、Tcalについて得られたデータにわたる回帰によって決定される。
【0107】
したがって、キャリブレーション温度とは演算的に(a priori)異なる、測定ポイントにおけるサンプル温度Tsplについて、この温度Tsplにおける様々な係数の値が得られる。
【0108】
温度Tsplで測定される濃度未知のサンプルのラマンスペクトルが記録されるときには、式(1)を使用して濃度Cの近似値を計算するために、σの近似値(それぞれ、1//1.11//0.86//0.79及び2.70)が使用される。これらの値は、様々な成分とパラ−ジエチルベンゼンとの等モル混合物に対して実施された測定によって得られる。初期設定で、σの値すべてを1に等しいものとすることも可能である。
【0109】
次に、これらの濃度を使用して、式(3)を用いてσについてより精確な値を計算する。計算は、濃度Cについて収束する値が得られるまで反復式に繰り返される。一般に、0.01%未満の濃度の収束を得るには、3回の反復で十分である。収束の典型的な事例を表1において展開する。
【0110】
【表1B】

【0111】
要約すれば、キャリブレーション手順から開始して、測定ポイント近傍のラマンスペクトル及び温度(Tspl)、P及びσの値、並びに様々な成分の濃度Cのオンライン測定が決定される。
【0112】
本発明の方法は、特に、場合によってはトルエンやパラ−ジエチルベンゼンなどの溶媒中に希釈された芳香族C8炭化水素の混合物からパラ−キシレン又は任意の他の異性体(メタ−キシレン、オルト−キシレン、及びエチルベンゼン)を分離するプロセスにおいて、分離時に異性体の濃度プロファイルを決定するために使用され得る。
【0113】
このために、疑似移動床流体を移動させる回路上(典型的には、ただし限定的に、これらのライン上に位置するポンプの下流の吸着装置に連結するライン内)に位置する少なくとも1つの測定ポイントにおいて、ラマンスペクトルが記録され、温度が測定される。
【0114】
吸着装置の内側では、動的平衡状態に達した後に、エチルベンゼン、パラ−キシレン、メタ−キシレン、オルト−キシレン、及び脱着剤(トルエン又はパラジエチルベンゼン)の濃度プロファイルが形成される。このプロファイルは、吸着装置の内側で一定の率で変位させられる。正確に元の位置に戻るには1回の完全なサイクルが必要である。一例として、24床吸着装置では、置換が75秒程度であるならば、24回の置換は、約30分の期間に相当する。
【0115】
この濃度プロファイルを測定するために、光学式プローブは、回路の少なくとも1つの固定ポイントに位置する。好ましくは、2つの光学式プローブが再循環ポンプの下流の吸着装置を連結する再循環ライン上に位置する。混合物の組成は、毎秒約1回測定され、シグナル/ノイズ比を低減させるために10回の測定の平均が行われる。
【0116】
75秒の期間の置換ごとに、エチルベンゼン、パラ−キシレン、メタ−キシレン、オルト−キシレン、及び脱着剤の濃度を含む7つのベクター(すなわち、10秒ごとに約1回、10回の測定の平均に相当する)がメモリに格納される。観察スクリーン上には、各段階の終わりに(すなわち、75秒ごとに)、種の濃度を時間の関数として与える3つの曲線、例えば、PX、EB、MX+OXが、同じグラフ上に示される。
【0117】
キシレン類からの異性体のSMB分離プロセスを制御及び調節するために、当該方法は、したがって、以下の諸工程を含む:
1)750〜800nmの範囲の波長の光シグナルを装置の少なくとも1つのポイントに送る工程、
2)検討下のポイントにおいてラマンスペクトルを捕捉する工程、
3)前述の行列方法を使用してラマンスペクトルを処理する工程、
4)この処理の終わりに存在する種の濃度の値を捕捉する工程、
5)得られた濃度値(又は濃度プロファイル)を基準値(又は基準濃度プロファイル)と比較する工程、
6)測定値と基準値との差に応じて、内部の流量、供給液流量、脱着剤流量、抽出液流量、及び置換期間によって形成される群から選択される少なくとも1つの作動変数に作用させる工程。
【0118】
(実施例)
以下の2つの実施例は、従来技術の実施例1から本発明に合致する実施例2へと進む時に、「絶対差(absolute difference)」変数を使用した測定の改善を例証することを目的としたものである。
【0119】
(実施例1:従来技術に合致する)
この実施例では、測定セルを備えたバイパスループ、532nmレーザ光源、及びスペクトルを利用する簡易方法(本発明に合致しない)を使用して、オンライン測定を実施した。
【0120】
532nmレーザ励振器を用いるラマン分析装置を、溶媒としてパラ−ジエチルベンゼンを用いる疑似移動床キシレン分離装置上で使用して、オルト−キシレン(OX)、メタ−キシレン(MX)、パラ−キシレン(PX)、エチルベンゼン(EB)、及びパラ−ジエチルベンゼン(PDEB)の濃度を決定した。
【0121】
このために、装置の主要な流れの一部分を取り出すことができるようにする、測定セルを備えたバイパスループを設置した。測定セルは、レーザビームをサンプル上に送り、それによって放出されるラマンシグナルを集めることができる、サファイア窓を含んでいた。セルに入る前に、25℃でのスペクトルを記録するために流れをサーモスタットでこの温度に調節した。集められたラマンスペクトルをPC分析装置に送った。従来技術の方法を使用して濃度を得た:
【0122】
【数8】

【0123】
この式では、P及びσの値は、様々な成分の濃度に依存しない。それらは、純粋な成分と、基準成分との二成分の等モル混合物(σ=1)とのラマンスペクトルのみを使用して、25℃で決定された。
【0124】
バイパスループの近くで、サンプリングポイントは、主要流れの一定分量を装置から取り出すことができた。この一定分量をガスクロマトグラフィーによる実験室分析に使用して、様々な成分の濃度を決定した。
【0125】
ガスクロマトグラフィー(GC)は、様々な成分の濃度の基準値を提供する、C8〜C10炭化水素の分析のための実績ある方法である。
【0126】
したがって、125個のサンプルについて、ラマン方法を使用して得られた濃度を、GC基準方法を使用して得られた濃度と比較した。2つの一連の測定の間の線形回帰が実施され、回帰係数Rによって特徴付けられた。
【0127】
また、これらの2組の値の間の相関を、次式で定義される平均絶対差によって評価した:
【0128】
【数9】

【0129】
式中、yGCは、GCにおいて得られた濃度であり、yRamanは、ラマン分光法において得られた濃度であり、nは、測定された濃度の数である。また、最大絶対差も記録した。
【0130】
得られた結果を表2に記録する。GC測定とラマン測定との間の相関は、良好であった(R=0.9986)。しかし、ラマン測定には、基準測定との大きな差があった。すなわち、平均絶対差が0.71%であり、最大差が4.10%に達した。
【0131】
【表2】

【0132】
(実施例2:本発明に合致する)
この実施例では、浸漬型プローブ、前記プローブの近傍の熱電対、785nmレーザ光源、及び本発明で提示されるスペクトル利用方法を使用して、オンライン測定を行った。
【0133】
したがって、この実施例は、本発明に完全に合致していた。
【0134】
785nmレーザ励振器を用いるラマン分析装置を、溶媒としてパラ−ジエチルベンゼンを用いるキシレン分離装置上で使用して、オルト−キシレン(OX)、メタ−キシレン(MX)、パラ−キシレン(PX)、エチルベンゼン(EB)、及びパラ−ジエチルベンゼン(PDEB)の濃度を決定した。
【0135】
混合物のラマンスペクトルを、浸漬型プローブを使用して装置の主要流れ上で直接測定した。熱電対を浸漬型プローブの近くに設置した。
【0136】
ラマンスペクトル及び温度を、装置の同じポイントで測定し、したがって同時にPC分析装置に送信した。測定ポイントにおけるサンプルの温度Tsplは、175℃であり、これは、キャリブレーション温度Tcalとは異なる温度であった。
【0137】
本発明に記載の方法を使用してこれらのデータを利用し、3つの異なる温度、すなわち、100℃、140℃、及び180℃を使用してキャリブレーションを実施した。
【0138】
実施例1に記載したのと同様の方式で、GC基準方法との相互比較を一組のサンプルに実施した。
【0139】
得られた結果を表3に示す。
【0140】
平均絶対差は、著しく減少して、実施例1の0.72%から本事例の0.19%に変化した。
【0141】
平均差のこの減少は、実施例1の4.10%からこの実施例の0.95%に変化した、観察された最大差の大きな減少に起因するものであった。
【0142】
蛍光性不純物による問題を最小限に抑えることのできる785nmレーザの使用、並びにサンプルにおける温度変動に起因した問題を克服することができる温度の同時測定は、基準測定とラマン測定との優れた一致の原点にある。
【0143】
【表3】

【符号の説明】
【0144】
1 レーザ光源
2 光ファイバ
3 浸漬型プローブ
4 キシレン分離装置
5 光ファイバ
6 ラマン分光計
7 PC分析装置
8 熱電対
9 作動装置
10 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似移動床モード(SMB)で機能する分離装置の少なくとも1つのポイントに存在する種の濃度を測定する方法であって、浸漬型プローブと熱電対とを使用し、該浸漬型プローブは、該装置内の1つのポイント又は前記装置に入る若しくは前記装置から出る流れのうちの1つの上のいずれか(測定ポイントと呼ぶ)に位置し、該熱電対は、該測定ポイントの近傍に位置して、温度(Tspl)を捕捉し、
a)波長が785nm±1nmであるレーザ光源から生じる単色シグナルが、浸漬型プローブに接続された第1の光ファイバを通じて送られ、
b)ラマンシグナルと呼ばれる、ラマン効果に対応するシグナルが、第2の光ファイバを通じて捕捉され、該第2の光ファイバも該浸漬型プローブに接続されており、該ラマンシグナルは、カットオフ閾値を規定するフィルタを使用して分光計に送られ、
c)検討下のシグナルのラマンスペクトルが分光計出口のところで回収され、
d)得られたラマンスペクトルが、検討下の測定ポイントの温度(Tspl)を考慮する数学的方法を使用して処理され、前記測定ポイントに存在する種の濃度Cが得られ、測定ポイントに存在する様々な種の濃度Cを得る前記方法が、式:
【数1】

に基づいており、
ここで、
・Pは、分子iに起因するラマンバンドの積分強度であり、
・σは、分子iの相対実効断面積の逆数であり、
式中、積分強度Pは、ラマンスペクトル上の測定強度Mから行列積によって得られ、ここで、行列Mの係数aijは、測定ポイントの温度(Tspl)において又は測定ポイントの前記温度を取り囲む複数の温度において実施されるキャリブレーションの結果として得られ、実効断面積の逆数σは、温度(Tspl)と様々な成分の濃度(C)との関数である、方法。
【請求項2】
第1の光ファイバ及び第2の光ファイバの全長が1000m未満、好ましくは700m未満である、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
複数の測定ポイントが存在する場合、前記測定ポイントの1つは、溶離液再循環回路上の再循環ポンプのところに位置する、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
2つの測定ポイントが用いられ、該2つの測定ポイントは、溶離液再循環回路上の再循環ポンプの近傍および供給回路上の供給ポンプの近傍に位置する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の測定方法。
【請求項5】
3つの測定ポイントが用いられ、該3つの測定ポイントは、溶離液再循環回路上の再循環ポンプの近傍の第1のポイント、供給回路上の供給ポンプの近傍の第2のポイントおよびラフィネート蒸留カラムの精留帯域内の第3の測定ポイントに位置する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の測定方法。
【請求項6】
疑似移動床キシレン分離装置の制御及び調節への、請求項1〜5のいずれか1つに記載の測定方法の適用であって、前記方法を使用して測定された濃度プロファイルと、装置内に存在する成分のうちの少なくとも1つについての基準濃度プロファイルとの差によって、内部流量、供給液流量、溶離液流量、抽出液流量、及び置換期間から構成される群から選択される少なくとも1つの制御パラメータを調節できるようになる、適用。

【図1】
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【公開番号】特開2010−210624(P2010−210624A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−51202(P2010−51202)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】