説明

疣贅の治療のための医薬組成物

本発明は、疣贅の治療、特に疣贅の局所治療のための医薬組成物、および疣贅の治療のための医薬組成物の使用に関する。具体的には、本発明は、疣贅の治療のための医薬組成物であって、a)0.1〜10重量%のジメチコンと、b)5〜25重量%の1つ以上の植物油と、c)1つ以上の医薬上許容される賦形剤および/または担体と、d)2〜6重量%の尿素と、e)100重量%までの水とを含有する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、疣贅の治療、特に疣贅の局所治療のための医薬組成物、および疣贅の治療のための医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
疣贅(ゆうぜい/いぼ)とは、一般にカリフラワーのような結節の形をした、硬いまたは角状の硬く肥厚した上皮の変形部である。尋常性疣贅(Verruca vulgaris)、足底疣贅(Verucca plantaris)、扁平疣贅(Verucca plana)および糸状疣贅(Verucca filiformis)の少なくとも4つの異なるタイプの疣贅が知られている。
【0003】
疣贅は、一般に、結合組織のコアと、その中に構成されている、上皮組織の1つ以上の層でコーティングされた血管とを備えている。疣贅は、単独でまたは群になって生じ得る。
【0004】
疣贅は、一般に、ヒトパピローマウイルスによって引起される。パピローマウイルスに感染した皮膚細胞は、感染していない皮膚細胞よりも速く成長する。周囲の皮膚細胞と比較してこのように成長に差があることにより、疣贅が生じることになる。その伝染性の強い性質のために、疣贅は接触感染性である。
【0005】
ほとんどの場合、疣贅は他の有害な疾患を引起さず、ある特定の期間が過ぎると自然に消えさえするが、臓器移植を受けた人または他の免疫不全を患う人は、しばしば、手および前腕に疣贅が生じ、この疣贅は時には扁平上皮細胞癌に発展するようである。
【0006】
疣贅の治療のために、いくつかの方法が先行技術から知られている。
1) ポドフィルム脂塗料の塗布[ポドフィルム脂I.P.′66(20%w/v)、ベンゾインI.P.(10%w/v)、アロエI.P.(2%w/v)、(100%v/v)にするためのイソプロピルアルコールI.P.]。
【0007】
2) 表皮剥奪。すなわち、通常サリチル酸、発疱剤、免疫系調整剤(「免疫調節剤」)またはホルムアルデヒドを用いて、しばしば軽石、刃などで疣贅を機械的に削り取ることで、壊死した表面皮膚組織を除去すること。
【0008】
3) 凍結外科手術。これは、(一般に液体窒素で)疣贅を凍結させ、疣贅と表皮層との間に水疱を作り、その後、疣贅および周囲の壊死した皮膚が剥がれ落ちることを伴う。薄い皮膚の疣贅には平均3回から4回の治療が必要である。足底疣贅のような硬く肥厚した皮膚上の疣贅は、何十回もの治療を要するかもしれない。
【0009】
4) 疣贅の外科的掻爬。
5) しばしばパルス色素レーザまたは二酸化炭素(CO2)レーザを用いたレーザ治療。パルス色素レーザは、血球(特にヘモグロビン)による選択的吸収によって作用する。CO2レーザは、水分子による選択的吸収によって作用する。パルス色素レーザは、それほど破壊的ではなく、瘢痕がなく治癒しやすい。CO2レーザは、組織および皮膚を蒸発させて破壊することによって作用する。レーザ治療は両方とも、痛みを伴い、高価であり、瘢痕を生じさせる可能性がある。CO2レーザには局部麻酔が必要であるのに対して、パルス色素レーザには意識下鎮静が必要であり得る。この療法は、1回から4回の治療から成る。
【0010】
6) 赤外線凝集装置、すなわち、レーザのような小さなビーム状の強力な赤外線の光源。これは、基本的にはレーザ治療と同じ原理で作用する。レーザのように、赤外線凝集装置は、水疱形成、痛みおよび瘢痕を生じさせる可能性がある。
【0011】
7) イミキモド、すなわち、インターフェロンの生成を促進することによって身体の免疫系が疣贅ウイルスと戦うことを助ける局所用乳液。
【0012】
8) 身体の免疫系を刺激する、カンジダ菌、流行性耳下腺炎または白癬菌の抗原の疣贅の箇所への注射。
【0013】
9) カンタリジン、すなわち、甲虫目ツチハンミョウ科の多くの種類に自然に見い出される皮膚の発疱を引起す化学物質。これは、単独で用いられるか、またはポドフィリンと混合される。
【0014】
10) ブレオマイシン。1回または2回の注射が用いられる。ブレオマイシンは、足指の壊死およびレイノー症候群を引起す可能性がある。
【0015】
11) ジニトロクロロベンゼン(DNCB)。これは、サリチル酸のように疣贅に直接塗布される。研究によれば、この方法は、治癒率がプラセボの場合の38%と比較して80%であり、効果的であった。しかしながら、DNCBは、サリチル酸よりもはるかに慎重に使用しなければならない。この化学物質は、公知の突然変異誘発物質であり、したがって、遺伝子変異を引起す可能性がある。この薬は、アレルギー性免疫反応を誘発し、その結果、生じる炎症によって疣贅を引起すウイルスが撃退される。
【0016】
12) DNA合成を抑制するフルオロウラシルが、実験的治療として用いられている。フルオロウラシルは、疣贅(特に足底疣贅)に直接塗布され、たとえばテープで覆われる。この治療は、軽石の使用と組合せられるが、非常にゆっくりと作用する傾向がある。
【0017】
しかしながら、上述の方法はいずれも、効果的なまたは満足できる疣贅の治療をもたらすものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、疣贅の治療、特に疣贅の局所治療のための新規の医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
数ある目的の中でも特にこの目的は、添付の請求項1に規定される疣贅の治療のための医薬組成物によって満たされる。
【0020】
具体的には、数ある目的の中でも特にこの目的は、疣贅の治療のための医薬組成物であって、
a) 0.1〜10重量%のジメチコンと、
b) 5〜25重量%の1つ以上の植物油と、
c) 1つ以上の医薬上許容される賦形剤および/または担体と、
d) 2〜6重量%の尿素と、
e) 100重量%までの水とを
含有する、医薬組成物によって満たされる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において用いられるように、重量%という用語は、記載された成分の重量を医薬組成物全体の重量で除算して100%を乗算したものに合致する。
【0022】
ジメチコン(ポリジメチルシロキサン、PDMS)は、ハンドローションおよび化粧品に一般に用いられる軟性シリコン重合体である。本発明者は、驚くべきことに、ジメチコンのこの公知の用途に加えて、ジメチコンが疣贅の治療にも有益な効果があることを発見した。
【0023】
本発明に係る医薬組成物は、尿素を含有する。尿素は、その保水(湿潤)特性のために、皮膚の最も重要な保水化合物のうちの1つである。
【0024】
ジメチコンおよび尿素に加えて、本医薬組成物はまた、有益なことに、1つ以上の植物油と、1つ以上の医薬上許容される賦形剤および/または担体とを含有する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上の植物油は、アーモンドオイル、ティーツリーオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイル、レモンオイル、ニオイヒバ油、およびシナモンオイルからなる群から選択される。
【0026】
アーモンドオイルは、たとえば、有益なことに、皮膚の水分含量を調整し、皮膚刺激を減少させる。
【0027】
ラベンダーオイルは、たとえば、有益なことに、消毒特性、殺菌特性、鎮痛特性、治療特性、および浄化特性を与える。
【0028】
ゼラニウムオイルは、たとえば、有益なことに、感染抑制特性、真菌抑制特性、および創傷治癒特性を与える。
【0029】
ティーツリーオイルは、たとえば、有益なことに、細菌成長抑制特性、ウイルス成長抑制特性、および真菌成長抑制特性を与える。さらに、ティーツリーオイルは、痛みおよび瘢痕を減少させ、治癒を向上させる。さらに、ティーツリーオイルは、自然の皮脂と容易に混ざり、それによって感染源に対して素早く効果を示す。
【0030】
シナモンオイルは、たとえば、細菌、ウイルスおよび真菌との戦いを助け、炎症を抑制し、血流を向上させる。
【0031】
ニオイヒバ油は、たとえば、殺菌剤および防黴剤である。
レモンオイルは、たとえば、消毒作用がある。
【0032】
好ましい実施形態によれば、本医薬組成物はさらに、0.5〜2重量%の赤トウガラシ粉末を含有する。チリペッパーもしくはスパニッシュペッパーまたはホットペッパーとも呼ばれる赤トウガラシは、ビタミンCが豊富であり、痛みを減少させ、神経を刺激し、消毒作用がある。
【0033】
好ましくは、この1つ以上の賦形剤および/または担体は、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VP共重合体、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、およびクエン酸からなる群から選択される。
【0034】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、医薬組成物は以下を含有する:
a) 0.5〜3重量%のジメチコンと、
b) 1) 1〜3重量%のアーモンドオイル、
2) 1〜3重量%のティーツリーオイル、
3) 1〜2重量%のラベンダーオイル、
4) 1〜2重量%のゼラニウムオイル、
5) 0.5〜2重量%のレモンオイル、
6) 0.5〜2重量%のニオイヒバ油、
7) 0.5〜2重量%のシナモンオイル、を含む植物油と、
c) 1) 0.5〜3重量%のアンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VP共重合体、
2) 0.1〜0.5重量%の安息香酸ナトリウム、
3) 0.05〜0.25重量%のソルビン酸カリウム、
4) 0.05〜0.25重量%のクエン酸、を含む医薬上許容される賦形剤および/または担体と、
d) 2〜6重量%の尿素と、
e) 0.5〜3重量%の赤トウガラシ粉末と、
f) 100重量%までの水。
【0035】
本発明の最も好ましい実施形態によれば、医薬組成物は以下を含有する:
a) 1重量%のジメチコンと、
b) 1) 2重量%のアーモンドオイル、
2) 2重量%のティーツリーオイル、
3) 1.5重量%のラベンダーオイル、
4) 1.5重量%のゼラニウムオイル、
5) 1重量%のレモンオイル、
6) 1重量%のニオイヒバ油、
7) 1重量%のシナモンオイル、を含む植物油と、
c) 1) 1.65重量%のアンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VP共重合体、
2) 0.3重量%の安息香酸ナトリウム、
3) 0.16重量%のソルビン酸カリウム、
4) 0.15重量%のクエン酸、を含む医薬上許容される賦形剤および/または担体と、
d) 4重量%の尿素と、
e) 1重量%の赤トウガラシ粉末と、
f) 100重量%までの水。
【0036】
本発明に係る医薬組成物は、好ましい実施形態では、局所投与のための製剤に、好ましくは軟膏、乳液またはチンキ剤の形態に、製剤化される。
【0037】
本医薬組成物は、疣贅の治療に特に効果的である。したがって、本発明はまた、疣贅の局所治療のためのジメチコンに関し、また疣贅の局所治療のための医薬を調製するためのジメチコンの使用にも関する。
【0038】
さらに、疣贅の周囲の皮膚が本組成物によって実質的に影響を受けないまま保たれるという観察結果によって、本医薬組成物およびその使用の有益な効果が提供される。
【0039】
本医薬組成物は、好適に、たとえばおよび好ましくは、1日に1回〜5回、好ましくは1日に1回〜2回、疣贅に局所的に塗布される。塗布後、本医薬組成物はもみ込まれて、吸収される。記載された治療は、疣贅が少なくとも目に見えなくなるまで繰返される。
【実施例】
【0040】
繰返し疣贅に悩まされる多くの人が、本組成物を用いた記載された治療法を使用した。これらの人のうちかなりの人が、痛み、瘢痕またはその他の副作用を生じることなく、1週間〜数ヶ月の期間内に疣贅がなくなったことを報告した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疣贅の治療のための医薬組成物であって、
a) 0.1〜10重量%のジメチコンと、
b) 5〜25重量%の1つ以上の植物油と、
c) 1つ以上の医薬上許容される賦形剤および/または担体と、
d) 2〜6重量%の尿素と、
e) 100重量%までの水とを
含有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の植物油は、アーモンドオイル、ティーツリーオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイル、レモンオイル、ニオイヒバ油、およびシナモンオイルからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
f) 0.5〜2重量%の赤トウガラシ粉末をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の医薬上許容される賦形剤および/または担体は、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VP共重合体、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、およびクエン酸からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
a) 0.5〜3重量%のジメチコンと、
b) 1) 1〜3重量%のアーモンドオイル、
2) 1〜3重量%のティーツリーオイル、
3) 1〜2重量%のラベンダーオイル、
4) 1〜2重量%のゼラニウムオイル、
5) 0.5〜2重量%のレモンオイル、
6) 0.5〜2重量%のニオイヒバ油、
7) 0.5〜2重量%のシナモンオイル、を含む植物油と、
c) 1) 0.5〜3重量%のアンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VP共重合体、
2) 0.1〜0.5重量%の安息香酸ナトリウム、
3) 0.05〜0.25重量%のソルビン酸カリウム、
4) 0.05〜0.25重量%のクエン酸、を含む医薬上許容される賦形剤および/または担体と、
d) 2〜6重量%の尿素と、
e) 0.5〜3重量%の赤トウガラシ粉末と、
f) 100重量%までの水とを
含有する、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
a) 1重量%のジメチコンと、
b) 1) 2重量%のアーモンドオイル、
2) 2重量%のティーツリーオイル、
3) 1.5重量%のラベンダーオイル、
4) 1.5重量%のゼラニウムオイル、
5) 1重量%のレモンオイル、
6) 1重量%のニオイヒバ油、
7) 1重量%のシナモンオイル、を含む植物油と、
c) 1) 1.65重量%のアンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VP共重合体、
2) 0.3重量%の安息香酸ナトリウム、
3) 0.16重量%のソルビン酸カリウム、
4) 0.15重量%のクエン酸、を含む医薬上許容される賦形剤および/または担体と、
d) 4重量%の尿素と、
e) 1重量%の赤トウガラシ粉末と、
f) 100重量%までの水とを
含有する、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
局所投与のための投薬形態である、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
局所投薬形態は、軟膏、乳液またはチンキ剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
疣贅の局所治療のためのジメチコン。
【請求項10】
疣贅の局所治療のための医薬を調製するためのジメチコンの使用。

【公表番号】特表2011−520843(P2011−520843A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508935(P2011−508935)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055904
【国際公開番号】WO2009/138487
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510048738)エイティピー・マーケティング・アンド・プロモーション・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】ATP Marketing & Promotion AG
【Fターム(参考)】