説明

疲労判定装置

【課題】被測定者の移動に伴う疲労度を正確に判定する。
【解決手段】被測定者の上肢に装着される本体部と、本体部の加速度を検出するための加速度センサと、検出される加速度を処理する制御部と、を備える。制御部は、本体部を装着する被測定者の歩行または走行による移動期間において加速度センサから時系列の加速度を取得する加速度取得部111と、取得される時系列の加速度から本体部の位置の変位を取得する変位取得部と、取得された変位と、疲労判定基準とに従って被測定者の疲労度を判定する判定部114と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明考案は、身体活動から疲労の程度を判別するための情報を取得する疲労判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、健康維持のために歩行・ジョギングすることが推奨されている。歩行では歩く距離/時間を長くし、またジョギングでも距離/時間を長くすることでより高い効果を得ようとする傾向にあるが、過度の運動は、かえって疲労が蓄積し、逆効果となる。
【0003】
そこで、疲労度を測定する方法として、特許文献1(特開平11−137539号公報)による疲労測定装置が提案される。この装置は、身体の腰部に装着された加速度計側手段により走行時の下肢への衝撃値を測定し、それがある閾値を越えると、下肢筋が疲労していると判別する。
【0004】
また、特許文献2(特開2006−271893号公報)では、加速度センサを手首などの抹消部ではなく体幹部に装着して、動作加速度情報から筋肉の振動を検出し、検出した筋肉の振動から疲労度を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−137539号公報
【特許文献2】特開2006−271893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1(特開平11−137539号公報)の測定方法では、衝撃値は靴の衝撃吸収性能の影響を大きく受けるために測定精度の誤差が大きい。
【0007】
また、特許文献1(特開平11−137539号公報)および特許文献2(特開2006−271893号公報)では、加速度計側手段(加速度センサ)を腰部・体幹部に装着する必要があることから、歩行またはジョギングの場合には、下肢からの振動で加速度センサの装着位置がずれる可能性が高く、加速度の検出精度が低下し、または被測定者は位置ずれで運動が妨げられ、または位置修正のために運動を停止する必要があり、精度のよい疲労測定が困難となる。
【0008】
それゆえに本発明の目的は、被測定者の移動に伴う疲労度を正確に判定する疲労判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従う疲労判定装置は、被測定者の上肢に装着される本体部と、本体部の加速度を検出するための加速度センサと、検出される加速度を処理する制御部と、を備える。
【0010】
制御部は、本体部を装着する被測定者の歩行または走行による移動期間において加速度センサから時系列の加速度を取得する加速度取得部と、取得される時系列の加速度から本体部の位置の変位を取得する変位取得部と、取得された変位と、疲労判定基準とに従って被測定者の疲労度を判定する判定部と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本体部に加わる加速度を用いて移動に伴う疲労度を判定するための本体部は被測定者の上肢に装着されることから、移動に伴った振動で本体部の位置がずれるのを回避でき、正確な疲労度の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る活動量計の外観図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る活動量計の使用状態の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る疲労度の検出の概念を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る活動量計の活動量計のブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る活動量計の機能構成図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る加速度積分値の変化を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係るデータ処理装置のブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るデータ処理装置の機能構成図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る処理フローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る1歩当たりの加速度積分値の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係る処理フローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態に係る加速度の振幅の変化を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る処理フローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態に係る処理フローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態に係る画面表示例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る疲労判定装置の一例である活動量計について、図面を参照しつつ説明する。図中、同一の部品および構成要素には同一の符号を付す。
【0014】
一般的に、人は継続して歩行または走行して移動をする場合に、移動に伴い疲労が生じ、疲労とともに腕を大きく振るようになる傾向があることが知られている。そこで、本実施の形態では、腕振りの大きさから、疲労の度合いを判定する。
【0015】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る活動量計1は、本体部191と、クリップ部192とを備える。クリップ部192は、活動量計1を被測定者の着衣などに固定するために設けられている。本体部191は背面にベルト通し部材を有し、表面側には、後述する操作部18の一部を構成するスイッチ181,182および183、ならびに表示部20に相当するディスプレイが設けられている。
【0016】
本実施の形態では、表示部20は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成されることとするが、これに限定されず、EL(Electro Luminescence)など他の種類のディスプレイであってもよい。
【0017】
図2には、活動量計1の使用状態の一例が示される。図2を参照して、活動量計1は、たとえば、被測定者の上肢の腕周にベルト通し部材を介してベルトで巻付けられるとともに、補助的に衣服の袖にクリップ部192を用いて固定装着される。なお、図2にでは上腕部に装着されているが、手首に装着されるとしてもよい。本実施の形態では、活動量計1は上肢に装着されるので、歩行/走行時の下肢からの振動で本体部191の装着位置がずれるのを回避でき、歩行/走行の妨げとなることもない。
【0018】
図3には、本実施の形態に係る腕振りによる疲労度検出の概要が示される。たとえば、ジョギングなどの運動では腕の振りを伴うが、図3に示すように、運動初期時は疲労はなく腕の振りも小さいが、運動中は徐々に疲労し、無意識に腕の振りを大きくして、疲労をカバーするようになる。したがって、上肢に加速度センサを取り付け、腕振りに伴って加速度センサが測定する加速度により、腕振りの大きさを検出することができる。
【0019】
本実施の形態では、運動初期時(疲労なし)の腕振りの大きさと、その後、運動中の腕振りの大きさとを比較し、すなわち運動初期時の加速度情報と、その後、運動中の加速度情報とを比較し、比較の結果に基づき疲労を判定する。
【0020】
この判定の結果は、疲労度として報知され、過剰な運動を防止するためのアドバイスとしても提示される。また、被測定者の疲労の程度に合せてジョギングのペースを誘導し、効率的な運動を仕向けるようにする。このための、具体的な構成および方法を以下に説明する。
【0021】
図4を参照して、活動量計1は、制御部10と、メモリ15と、加速度センサ16と、活動量計1の各部に電力を供給するための電池などからなる電源部17と、操作部18と、音声を出力するための音声出力部19と、表示部20と、データ処理装置30を含む各種の外部装置と通信するための通信部21と、計時して時間データを出力するタイマ22と、を備える。
【0022】
活動量計1では、加速度センサ16は、腕振りによって活動量計1の本体部191に加わる加速度を検出するために設けられている。加速度センサ16は、互いに直交する3方向(X、Y、Z)の加速度を検出可能な3軸加速度センサである。活動量計1が所定の装着態様で被測定者に装着されると、加速度センサ16が、第1の方向(図2に示された装着状態であれば、垂直方向(上下方向))と第2および第3の方向(図2に示された装着状態であれば、水平2方向(前後方向および左右方向))の3方向の加速度を検出可能な姿勢をとる。加速度センサ16としては、静電容量型センサ、圧電型センサなど、どのような原理のセンサであっても、利用可能である。
【0023】
なお、腕振りの方向は、主に進行方向に一致するので加速度センサ16は図3のX方向の加速度を検出する1軸加速度センサであってもよいが、ここでは、腕を振る方向は時間経過とともに変化する、または被測定者毎に異なることに鑑みて図3のX,YおよびZの3方向について加速度を検出する3軸加速度センサ16を用いる。
【0024】
制御部10は、マイコン(マイクロコンピュータ)などで構成されるもので、予め記憶されたプログラムに従って、歩数の計測、判定基準の設定、歩行や走行などの身体運動についての活動量に係る各種演算処理、表示部20、音声出力部19および通信部21を含む各部の制御などを実行する機能を担っている。
【0025】
具体的には、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)11と、活動量計1を制御するためのプログラム・データを格納するためのメモリ12と、外部と入出力するためのインターフェイス14と、を備える。また、メモリ12は、プログラム実行時の作業領域も有する。
【0026】
操作部18、リセット、各種設定値の入力、表示の切り替えなど各種指示を入力するために被測定者により操作されるスイッチ181〜183含む。
【0027】
通信部21は、携帯電話を含む携帯端末、家庭内または医家のコンピュータなどのデータ処理装置30、健康機器(血圧計、体脂肪計など)を含む外部装置と無線通信または有線通信でデータを送受信するための外部インターフェイスである。活動量計1による計測結果を外部機器へ送信する機能を有する。データ処理装置30の構成は、図7と図8にて後述する。
【0028】
メモリ15は、測定結果などのデータ、被測定者に関する情報(性別、年齢、体重、身長などを含む身体情報)などを記憶する記憶媒体である。
【0029】
図5を参照して、CPU11は機能として、加速度センサ16からの出力信号に基づき加速度を取得するための加速度取得部111と、腕振り検出部112と、腕振り検出部112の検出結果とタイマ22からの時間データに基づく時間taと対応付けて格納するレコードRを生成して、レコードRをメモリ12に格納するための格納部113を備える。時間taは、対応の検出結果(積分値、または振幅平均値)が算出された時間を指す。検出結果と時間taが関連付けされれば、メモリ12の格納形式はレコードRを用いるものに限定されない。また、格納部113は、運動初期時に取得された検出結果(積分値Saまたは振幅平均値)を初期時値としてメモリ12に格納する。
【0030】
腕振り検出部112は、加速度取得部111によって取得された加速度の変位から腕振りの大きさを取得する加速度変位取得部に相当する。具体的には、加速度取得部111によって取得された加速度を単位時間に亘って積分処理するための積分部1121と、振幅検出部1122とを含む。積分部1121によって単位時間(20秒間)に亘って加速度を積分して取得した値を、積分値Saと言う。また振幅検出部1122は、加速度取得部111によって取得された加速度の振幅の平均値を取得し、その値を振幅平均値と言う。
【0031】
さらに、CPU11は、メモリ12のレコードRの検出結果(積分値、または振幅平均値)と、初期時値とを比較する比較部115を有する判定部114と、判定部114による判定結果を出力するための出力部116を備える。判定部114は、比較部115の比較結果に基づき被測定者の疲労を判定する。
【0032】
図5に示す各部の機能はプログラムにより、またはプログラムと回路との組合せにより構成される。プログラムは、予めメモリ12に格納されて、CPU11がプログラムをメモリ12から読出し、プログラムの命令を実行することにより各部の機能が実現される。
【0033】
加速度取得部111は、加速度センサ16からの加速度信号(電圧信号)を処理することで各方向(X、Y、Z)の加速度を算出し、各方向(X、Y、Z)の加速度を合成することにより、合成加速度Sを算出する。腕の振りが大きくなるほど、すなわち活動量計1の本体部191に加わる加速度が大きくなるほど合成加速度Sは大きくなる。
【0034】
積分部1121は、単位時間に亘って取得される合成加速度Sを単位時間に亘って2階積分することにより積分値Saを算出する。したがって、積分値Saは、腕振りに伴う活動量計1の本体部191の変位(移動距離)を指す。
【0035】
本実施の形態では、合成加速度Sの積分値Saを算出するための積分時間として、タイマ22からの時間データにより計時される単位時間、たとえば20秒を適用するが、これに限定されるものではない。
【0036】
図6には、発明者らの実験による結果がグラフで示される。図6のグラフは、縦軸に積分値Saがとられ、横軸に経過時間(単位:sec)がとられている。実験では、活動量計1を被測定者の上腕に装着させて、被測定者のジョギング時に20秒毎に取得される加速度の積分値Saをプロットすると図6の折れ線グラフが得られる。20秒毎にプロットされる積分値Saを直線近似して得られる一次関数の式(図6の直線の式)によれば、時間が経過するほど積分値Saは増加する、すなわち腕の振りは大きくなり疲労が増加することがわかる。また、図6では、被測定者を体力の限界までジョギングさせた場合を示しており、グラフによれば、限界時の積分値Saは運動初期時の積分値Sdの1.8倍(初期時積分値Sdの約80%増し)となることがわかる。
【0037】
図9のフローチャートを参照し、ジョギング時の疲労の判定処理について説明する。なお、被測定者はジョギング開始時に操作部18を操作することにより動作モードとしてジョギングモードを指定する。CPU11は当該操作を受付けると、当該フローチャートに従うプログラムをメモリ12から読出し、プログラムを実行開始する。これにより、ジョギングの開始とともに、当該判定処理が開始される。処理では、積分値がセットされる変数として積分値Saを用いる。
【0038】
まず、加速度取得部111により、加速度センサ16からの加速度に基づく加速度Sを導出する。腕振り検出部112の積分部1121は、単位時間(20秒間)に亘って入力する加速度Sを積分することにより積分値Saを算出する(ステップS1、ステップS3)。算出された積分値Saは、格納部113により初期時積分値Sdとしてメモリ12に格納される(ステップS5)。
【0039】
その後、積分部1121は、積分値Saにゼロ(0)をセットし(ステップS7)、加速度取得部111から入力する加速度Sを単位時間(20秒間)に亘って積分することで(ステップS9、ステップS11)、積分値Saが算出される。格納部113は算出された積分値Saを時間taと対応付けて格納するレコードRを生成し、レコードRをメモリ12に格納する。
【0040】
判定部114は、レコードRが格納される毎に、格納されたレコードRをメモリ12から読出し、読出したレコードRの積分値Saと、メモリ12から読出した初期時積分値Sdとを比較部115に与える。比較部115は、初期時積分値Sdと積分値Saとを比較し比較結果を出力する。比較結果は(Sa/Sd)として導出される。
【0041】
判定部114は、比較結果に基づき積分値Saが初期時積分値Sdよりも増加しており、その増加の割合は40%未満であると判定すると(ステップS13でYES)、出力部116は“疲労小”の判定結果を出力する。
【0042】
一方、増加の割合は40%を超えるが(ステップS13でNO)、60%未満であると判定すると(ステップS15でYES)、“疲労中”の判定結果が出力され(ステップS19)、60%以上であると判定すると(ステップS15でNO)、判定結果として“疲労大”が出力される。
【0043】
出力部116は、判定結果を表示部20に画像として表示する。または、音声出力部19から音声で出力する。または、今回の判定に用いられたメモリ12のレコードRに格納する。これにより、レコードRには積分値Sa、時間taおよび判定結果が対応付けて格納されることになる。
【0044】
その後、処理はステップS7に戻り、次の単位時間(20秒間)について積分値Saが算出されて、算出された積分値Saについて以降の処理が同様に行われる。
【0045】
なお、操作部18からジョギングモード解除の指示が入力されたときに、CPU11は当該入力を割込みとして受付けることにより、図9の判定処理を終了させる。
【0046】
このように、被測定者の歩行/走行の腕振りにより生じる加速度の情報を基に、疲労度を判定し報知することができる。
【0047】
(1歩当りの積分値に基づき腕振りの大きさを検出)
歩行/走行の腕振りは、歩行/走行のピッチと同期することから、上述の疲労度を1歩毎の腕振りにより生じる加速度の情報に基づき判定する。これにより、歩行/走行ピッチが変化しても、腕振りの大きさに基づき疲労度を判定することができる。
【0048】
ここでは、単位時間(20秒)毎に、1歩当りの加速度Sの積分値Saを算出し、初期時積分値Sdと積分値Saとを比較し、比較の結果に基づき疲労度を判定する。
【0049】
つまり、歩行/走行は、腕の振りと同期して行なわれることに着目し、腕振り検出部112は、加速度Sの時系列の変化(後述の図12の波形に相当する)を取得し、この波形から、単位時間(20秒間)あたりの加速度Sの周期的変化の回数を検出し、検出した回数に基づき、単位時間のトータル歩数stepsを算出する。
【0050】
発明者らの実験により、図10の紙面左側に、積分値Saの時系列の変化と、歩数stepsの時系列の変化をグラフで示し、右側に、左側の2つのグラフの値を除することによる、単位時間における1歩当りの積分値(Sa/steps)が得られて、その時系列の変化をグラフで示す。
【0051】
グラフによれば、20秒毎にプロットされる1歩当たりの積分値(Sa/steps)を直線近似して得られる一次関数の式(図10の右側の直線の式)が示すように、時間が経過するほど積分値(Sa/steps)は増加する、すなわち1歩当たりの腕の振りは大きくなり疲労が増加する傾向にあることがわかる。
【0052】
図11のフローチャートを参照し、1歩当たりの積分値(Sa/steps)に基づく疲労の判定処理について説明する。CPU11は被測定者によりジョギングモードの指定操作を受付けると、当該フローチャートに従うプログラムをメモリ12から読出し、プログラムを実行開始する。
【0053】
まず、加速度取得部111により、ジョギング開始とともに加速度センサ16からの入力に基づく加速度Sを取得し、積分部1121により加速度Sに基づき積分値Saを算出する。また、上述のように加速度Sの周期的変化に基づき単位時間のトータル歩数stepsが算出される(ステップS31、ステップS33)。そして、腕振り検出部112は、算出された積分値Saと歩数stepsに基づく1歩当たりの積分値(Sa/steps)を算出する。算出された積分値(Sa/steps)は、格納部113により初期時積分値Sdとしてメモリ12に格納される(ステップS35)。
【0054】
その後、積分部1121は、積分値Sa、歩数の変数にゼロ(0)をセットし(ステップS37)、加速度取得部111から入力する加速度Sを単位時間(20秒間)に亘って積分するとことで積分値Saを算出する。また、単位時間のトータル歩数stepsが算出される(ステップS39、ステップS41)。そして、腕振り検出部112は、算出された積分値Saと歩数stepsに基づく1歩当たりの積分値(Sa/steps)を算出する。
【0055】
格納部113により、積分値(Sa/steps)と、タイマ33から入力する時間taと対応付けて格納するレコードRを生成し、レコードRをメモリ12に格納する。
【0056】
判定部114は、レコードRが格納される毎に、格納されたレコードRをメモリ12から読出し、読出したレコードRの積分値(Sa/steps)と、メモリ12から読出した初期時積分値Sdとを比較部115に与える。比較部115は、初期時積分値Sdと積分値(Sa/steps)とを比較し比較結果を出力する。判定部114と出力部116は、比較結果に基づき、図9に説明した手順と同様に、増加割合の閾値(40%、60%)に基づき疲労度(“疲労小”、“疲労中”、“疲労大”)を判定し、その判定結果を出力する(ステップS43〜ステップS50)。
【0057】
その後、処理はステップS37に戻り、次の単位時間(20秒間)について積分値(Sa/steps)が算出されて、以降の処理が同様に行われる。
【0058】
なお、図11の判定処理に関しても、操作部18からジョギングモード解除の指示が入力されたときに、CPU11は当該入力を割込みとして受付けることにより、一連の処理を終了させる。
【0059】
このように、被測定者の歩行/走行のピッチに応じた腕振りにより生じる加速度の情報を基に、疲労度を判定し報知することができる。
【0060】
(加速度信号の振幅に基づき腕振りの大きさを検出)
上述では、加速度の変位として積分値Saを用いたが、これに代替して、加速度の変位として単位時間(20秒間)の加速度Sの振幅の平均値を計測し、運動初期時の単位時間の振幅の平均値と比較することで、疲労度を判定する。
【0061】
加速度センサ16からの出力に基づき算出される活動量計1の本体部191の位置の変位を示す加速度Sは、図12に示すように、腕の振りに連動して正弦波状に変化することから、単位時間に検出される正弦波の振幅の大きさの平均値から、腕振りの大きさを検出することができる。
【0062】
図13のフローチャートを参照し、加速度Sの振幅平均値に基づく疲労の判定処理について説明する。CPU11は被測定者によりジョギングモードの指定操作を受付けると、当該フローチャートに従うプログラムをメモリ12から読出し、プログラムを実行開始する。
【0063】
まず、加速度取得部111は、ジョギング開始とともに加速度センサ16の出力から加速度Sを取得する。振幅検出部1122は取得され加速度Sを、取得された順番に従って、すなわち時系列にメモリ12の所定領域にプロットすることのより図12に示す正弦波状の波形データを取得する。振幅検出部1122は、波形データから単位時間あたりの振幅の大きさの平均値Ampを算出する(ステップS51、ステップS53)。そして、算出された振幅平均値Ampは、格納部113により初期時振幅平均値Adとしてメモリ12に格納される(ステップS55)。
【0064】
その後、腕振り検出部112は、振幅平均値Ampにゼロ(0)をセットし(ステップS57)、振幅検出部1122は、加速度取得部111から入力する加速度Sについて単位時間(20秒間)に亘って振幅平均値Ampを算出する(ステップS59、ステップS61)。
【0065】
格納部113により、振幅平均値Ampと、タイマ33から入力する時間taと対応付けて格納するレコードRを生成し、レコードRをメモリ12に格納する。
【0066】
判定部114は、レコードRが格納される毎に、格納されたレコードRをメモリ12から読出し、読出したレコードRの振幅平均値Ampと、メモリ12から読出した初期時振幅平均値Adとを比較部115に与える。比較部115は、初期時振幅平均値Adと振幅平均値Ampとを比較し比較結果を出力する。判定部114と出力部116は、比較結果に基づき、図9に説明した手順と同様に、振幅の増加割合の閾値(40%、60%)に基づき疲労度(“疲労小”、“疲労中”、“疲労大”)を判定し、その判定結果を出力する(ステップS63〜ステップS71)。
【0067】
その後、処理はステップS57に戻り、次の単位時間(20秒間)について振幅平均値Ampが検出されて、以降の処理が同様に行われる。
【0068】
なお、図13の判定処理に関しても、操作部18からジョギングモード解除の指示が入力されたときに、CPU11は当該入力を割込みとして受付けることにより、一連の処理を終了させる。
【0069】
このように、被測定者の歩行/走行時の腕振りにより生じる加速度Sの情報(振幅平均値)を基に、疲労度を判定し報知することができる。
【0070】
(アドバイスの報知)
図14には、上述した疲労度(“疲労小”、“疲労中”、“疲労大”)の報知に代えて、歩行・走行(ジョギング)のペースに関するアドバイスを報知するためのフローチャートが示される。
【0071】
図14のフローチャートでは、図9のステップS1〜S11に示すように加速度Sの積分値Saと初期時積分値Sdとを算出し(ステップS81〜S91)、比較結果が(Sa/Sd)として導出される。
【0072】
判定部114は、比較結果に基づき積分値Saが初期時積分値Sdよりも増加しており、その増加の割合は5%未満であると判定すると(ステップS93でYES)、出力部116により“ペースを上げよう”のアドバイスが出力される。
【0073】
一方、増加の割合は5%を超えるが(ステップS93でNO)、20%未満であると判定すると(ステップS95でNO)、“このペースで続けよう”とのアドバイスが出力部116により出力され(ステップS101)、20%以上であると判定すると(ステップS95でYES)、“ペースを下げよう”とのアドバイスが出力される。
【0074】
出力部116は、アドバイスを表示部20に画像として表示する。または、音声出力部19から音声で出力する。または、今回の判定に用いられたメモリ12のレコードRに格納する。これにより、レコードRには積分値Sa、時間taおよび判定結果が対応付けて格納されることになる。
【0075】
その後、処理はステップS87に戻り、次の単位時間(20秒間)について積分値Saが算出されて、算出された積分値Saについて以降の処理が同様に行われる。
【0076】
なお、図14の判定処理も、操作部18からジョギングモード解除の指示が入力されたときに、CPU11は当該入力を割込みとして受付けることにより、一連の処理を終了させる。
【0077】
ここでは、積分値Saを用いたが、1歩当たりの積分値(Sa/steps)または振幅平均値Ampをもちいてもよい。このように、被測定者の歩行/走行の運動時の腕振りにより生じる加速度の情報を基に、運動のピッチに関するアドバイスを報知することができる。
【0078】
なお、上述の各フローチャートで、比較結果と照合される疲労度の判定基準である閾値(40%、60%、5%、20%)は一例であり、これら値に限定されるものではない。つまり、腕の振り方は個人差があるので、被測定者毎に可変に変更できるとしてもよい。たとえば、ジョギング中に被測定者は所定レベルの疲労度(例:限界、限界の70%くらいなど)を自覚した場合に、操作部18を操作する。CPU11は、当該操作の直前または直後に取得された積分値Saをメモリ12に一時的に格納し、初期時積分値Sdと比較し、比較結果に基づき初期時積分値Sdからの増加率を算出し、算出した増加率をメモリ12に一時的に格納する。そして、次回のジョギング(次回のジョギングモード指定)開始時に、この格納した増加率を用いて上述の判定のための閾値を可変に設定するとしてもよい。
【0079】
なお、ジョギングモードの指定操作がされた場合に、上述の図9、図11、図13および図14のいずれの判定処理を実行するかは、被測定者の操作部18の操作により選択的に指定するとしてもよい。
【0080】
(表示例)
図15には本実施の形態に係る出力部116による画面の表示例が示される。図15の(A)には、判定された疲労度が、すなわち判定部114による((Sa/Sd)×100)の算出値(単位:%)が表示される。また、図14のフローチャートでは、たとえば、運動(ジョギング)のペースに関するアドバイスが図15の(B)のように表示される。
【0081】
また、絵柄によって疲労度およびアドバイスを提示するようにしてもよい。図15の(C)では、ヒトの絵柄であるアイコンを疲労度のスケールバー上を移動させることにより、疲労度(またはジョギングのペース)を提示する。図15の(C)によればスケールバーの“KEEP”の範囲にアイコンが一致することから、被測定者は、疲労度は中程度であり、現在のジョギングのペースを維持するようアドバイスされる。
【0082】
図15の(D)に示されるように、インジケータの絵柄によって疲労度(またはジョギングのペース)を提示してもよい。図15の(D)では、インジケータのバーが“KEEP”の範囲まで伸びていることから、被測定者に対して疲労度は中程度であり、現在のジョギングのペースを維持するようアドバイスされる。
【0083】
また、図15の(E)に示されるように、矢印の向きで疲労度(またはジョギングのペース)を指示するようにしてもよい。図15の(E)によれば、真ん中の右向き矢印の表示態様(点滅表示へ)が変わることから、被測定者は現在のジョギングのペースを維持すればよいことがわかる。
【0084】
なお、ジョギング中に腕に装着した装置の表示部を確認するのが煩わしい場合もあるので、アラーム音声とともに報知するようにしてもよい。
【0085】
図15の(F)には、疲労度に応じて、その後の運動時間の目安を表示するようにしてもよい。たとえば、ジョギング中に図6に示すような直線式を取得し、当該式から、現在の積分値Saから疲労の限界である積分値Saに達するまでのまでの猶予時間を推定し報知する。図15の(F)の例では、あと20分の運動が適当である旨をアドバイスしている。これにより、過度な運動またはハイペースの運動を防止できるようなアドバイスが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態は、各レコードRに疲労の判定結果も格納することができるから、ジョギング終了時などにその判定結果を時系列に表示させることもできる。これにより、被測定者はジョギング中の疲労度の変化を容易に確認することができる。
【0087】
(変形例)
本実施の形態では、メモリ12のデータ(レコードRおよび初期時積分値Sdを含むデータ)を、または、加速度センサ16からの出力を通信部21データ処理装置30などの外部装置に送信して、活動量計1に代替して外部装置において上述の各フローチャートに従う判定処理、表示処理などのデータ処理を行わせることもできる。
【0088】
図7には、本実施の形態に係るデータ処理装置30の構成が示される。図7を参照して、データ処理装置30は、コンピュータに相当する構成を有し、具体的には、CPU(Central Processing Unit)31、プログラムおよびデータを格納するためのメモリ32、タイマ33、活動量計1と通信するための通信機能を司るインターフェイス36、表示部35、操作部34、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体38が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体38のデータをアクセスするための媒体アクセス部37を備える。
【0089】
図8には、データ処理装置30の機能構成が示される。図8を参照して、CPU11が有する機能として、インターフェイス36または媒体アクセス部37を介して与えられるデータを受理するためのデータ受理部311、受理されたデータをメモリ32に格納するためのデータ格納部312、操作部34を介した被測定者の操作を受付けるための操作受付部313、および表示部35に画像を表示するための表示処理部314を備える。
【0090】
動作において、活動量計1とデータ処理装置30が通信する場合において、データ受理部311は、たとえばインターフェイス36を介して活動量計1から送信されたレコードRと初期時積分値Sdを受信すると、データ格納部312によりメモリ32に格納される。ここでは、データ受理部311は、インターフェイス36を介して活動量計1から受信するとしているが、レコードRと初期時積分値Sdを格納した記録媒体38が装着された媒体アクセス部37が、記録媒体38から読出すことにより受理するとしてもよい。
【0091】
被測定者が操作部34を介して表示操作をすると、操作受付部313は、当該操作を受理し、受理した表示操作に基づいた指示を表示処理部314に出力する。表示処理部314は、指示に応じて、メモリ32または記録媒体38からレコードRと初期時積分値Sdを読出し、読出したレコードに基づき上述の各フローチャートに従うプログラムを実行することにより、疲労の判定および表示部35に対する表示の処理を行う。当該フローチャートに従うプログラムは、予めメモリ32に格納されて、CPU31により読出されて実行される。データ処理装置30では、同様にして、活動量計1から受理するデータに基づき、振幅平均値Ampを用いた図13の処理についても実行することができる。
【0092】
このように、活動量計1に代替して、データ処理装置30に判定および表示の処理を行わせることもできる。したがって、被測定者は、比較的に小さい表示領域である表示部20に代わって、比較的に大きな表示領域である表示部35で情報を確認することができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 活動量計、16 加速度センサ、18,34 操作部、30 データ処理装置、111 加速度取得部、112 腕振り検出部、113 格納部、114 判定部、115 比較部、116 出力部、191 本体部、192 クリップ部、311 データ受理部、312 データ格納部、313 操作受付部、314 表示処理部、1121 積分部、1122 振幅検出部、Ad 初期時振幅平均値、Amp 振幅平均値、R レコード、S 合成加速度、Sa 積分値、Sd 初期時積分値、steps 歩数、ta 時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の上肢に装着される本体部と、
前記本体部の加速度を検出するための加速度センサと、
検出される加速度を処理する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記本体部を装着する被測定者の歩行または走行による移動期間において前記加速度センサから時系列の加速度を取得する加速度取得部と、
取得される時系列の加速度から前記本体部の位置の変位を取得する変位取得部と、
取得された前記変位と、疲労判定基準とに従って被測定者の疲労度を判定する判定部と、を含む、疲労判定装置。
【請求項2】
前記変位取得部は、
移動開始時の単位時間で取得される初期時変位と、その後の単位時間で取得される初期後変位とを取得し、
前記判定部は、
取得される前記初期時変位と、前記初期後変位とを比較する比較部を、有し、
前記比較部による比較結果と、前記疲労判定基準とを照合し、照合結果に基づき疲労度を判定する、請求項1に記載の疲労判定装置。
【請求項3】
前記変位取得部は、
取得される時系列の加速度を前記単位時間にわたって積分し、前記変位として積分値を出力する積分部を、有する、請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項4】
前記変位取得部は、
時系列の加速度の変化に基づき、単位時間における歩数を取得し、
前記積分部が出力する積分値と前記歩数とから、1歩期間に相当する積分値を前記変位として取得する、請求項3に記載の疲労判定装置。
【請求項5】
前記変位取得部は、
時系列の加速度の変化が示す波形から、当該波形の単位時間における振幅の大きさの平均値を前記変位として取得する、請求項2から4のいずれかに記載の疲労判定装置。
【請求項6】
取得された前記変位と、ペース判定基準とに従って被測定者の移動ペースを判定する、請求項1から5のいずれかに記載の疲労判定装置。
【請求項7】
被測定者の歩行または走行による移動期間において被測定者の上肢に装着される本体部に加わる加速度を時系列に取得する手段と、
取得される時系列の加速度から前記本体部の位置の変位を取得する手段と、
取得された前記変位と、疲労判定基準とに従って被測定者の疲労度を判定する手段と、を含む、処理装置。
【請求項8】
被測定者の歩行または走行による移動期間において被測定者の上肢に装着される本体部に加わる加速度を時系列に取得するステップと、
取得される時系列の加速度から前記本体部の位置の変位を取得するステップと、
取得された前記変位と、疲労判定基準とに従って被測定者の疲労度を判定するステップと、を含む、判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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