説明

疲労度検出ひずみゲージ

【課題】構造材のひずみを測定できると共に、構造材に局所的に生じる疲労破壊の兆候を事前にかつ的確に予測可能な疲労度検出ひずみゲージを提供する。
【解決手段】ひずみ検出部130と、ひずみ検出部と直列に接続した疲労度検出部150と、疲労度検出部と並列に接続した導通部を接続して構成される抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出することにより、ひずみ測定と疲労度検出を行なうことが可能な疲労度検出ひずみゲージ100であって、抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出するためにひずみ検出部の一端と導通部の一端にてそれぞれ接続される端子部120を備え、端子部が配置されている位置と反対側の端部に疲労度検出部を配置して構造物の応力集中部近傍の疲労度検出を適切に行うようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材のひずみを測定できると共に、構造材に局所的に生じる疲労破壊の兆候を事前に予測できる疲労度検出ひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、構造材のひずみを測定するひずみゲージは一般に知られている(特許文献1参照)。このひずみゲージの構成は、可撓性を有するゲージベースと所定の方向のひずみを検出する2つのゲージを有し、ひずみゲージの出力から構造材内のひずみの蓄積度合いを算出し、構造材の疲労破壊の兆候を予測するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ひずみゲージは、一般に機械構造材と同等の十分な機械的特性を有する。そのため、機械強度や疲労強度が機械構造材より低い梁や柱、橋脚、鉄塔、橋げた等の一般構造材において、特に疲労破壊し易い梁の根元や溶接部分、切欠き部分に単一のひずみゲージを疲労度検出ひずみセンサとして用いようとすると、データロガー等を介してひずみの出力トレンドを長期間に亘って収集しなければならず、その検出データを集積するためのデータ量が膨大となりデータ管理と処理が大変である。
【0005】
また、単一のひずみゲージを例えば産業用機械に用いる機械構造材の比較的疲労強度が弱い溶接部や構造材の断面形状が急激に変化して応力集中が生じ易い部位に利用しようとしても、上述した一般構造材と同様の問題が生じる。
【0006】
一方、上述の特許文献1に記載のひずみゲージは2つのひずみゲージを含むホイートストンブリッジ回路を利用して溶接部(ホットスポット)のひずみを検出するようになっている。しかしながら、機械構造材と同等の機械的特性を有するひずみゲージ同士の抵抗値同士の差をホイートストンブリッジ回路で出力しようとすると、僅かな出力の差から構造材の疲労度を予測しなければならず、疲労度の正確な予測が難しい。
【0007】
そこで、このような問題を回避するために、本発明の出願時に未だ公知ではないが、図6に示すような本発明に関連する疲労度検出ひずみゲージ500が提案されている。このひずみゲージ500の構成は、ひずみ検出部530と、ひずみ検出部と直列に接続した導通部540と、導通部540と並列に接続した疲労度検出部550を有し、疲労度検出部550が疲労により破断することでひずみゲージの抵抗が高くなり、段階的に疲労を検出するようになっている。
【0008】
しかしながら、疲労度検出ひずみゲージ500は、疲労度検出部550が端子部側に形成されているため、局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部550を配置させると、端子部521,522(520)もこの近傍に配置するようになり、構造材の応力集中に伴って例えば端子部520のハンダ接合部にも応力を発生させてしまい、疲労度検出ひずみゲージ500の信頼性を長期間保つ観点で好ましくない。一方、端子部520が応力集中の影響を受けないように端子部520を局所的な応力集中部から離間させた状態で疲労度検出ひずみゲージ500を配置すると、疲労度検出部550も応力集中部から離れるため、迅速かつ的確な疲労度の検出の観点で好ましくない。
【0009】
本発明は、構造材のひずみを測定できると共に、構造材に局所的に生じる疲労破壊の兆候を事前にかつ的確に予測可能な疲労度検出ひずみゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージは、
ひずみ検出部と、
該ひずみ検出部と直列に接続した疲労度検出部と、
該疲労度検出部と並列に接続した導通部を接続して構成される抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出することにより、ひずみ測定と疲労度検出を行なうことが可能な疲労度検出ひずみゲージであって、
前記抵抗体の前記抵抗値の電気的な変化を検出するために前記ひずみ検出部の一端と前記導通部の一端にてそれぞれ接続される端子部を備え、
該端子部が配置されている位置と反対側の端部に前記疲労度検出部を配置して構造物の応力集中部近傍の疲労度検出を適切に行うことを特徴としている。
【0011】
請求項1に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材の局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部を配置することができ、迅速かつ的確な疲労度の検出が可能となる。また、疲労度検出部が端子部側に形成されていないため、局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部を配置させても、応力集中に伴って例えば端子部のハンダ接合部に応力を生じさせないようにでき、疲労度検出ひずみゲージ自体に悪影響を及ぼすこともない。
【0012】
また、構造材の疲労破壊の兆候を予測するために、ひずみの出力トレンドを長期間に亘って収集する必要もなく、膨大なデータ量の管理と処理に煩わされることもない。また、疲労度検出部が疲労により破断することでひずみゲージの抵抗が高くなり、ひずみゲージの出力が段階的に変化することで構造材の疲労破壊が予測し易くなる。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記ひずみ検出部と前記導通部を前記端子部の配置位置側に配置し、
前記疲労度検出部を前記ひずみ検出部と前記導通部に対し突出して配置した疲労度検出ひずみゲージであることを特徴としている。
【0014】
請求項2に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、疲労度検出部を局所的に応力集中が生じる場所により配置し易くでき、構造材の疲労に伴う局所的な応力集中によって疲労度検出部が破断し易くなる。これによって、構造材の疲労破壊をより早く予測することができる。
【0015】
その一方、導通部及びひずみ検出部を応力集中が生じる場所から離れた場所に設置することができ、導通部及びひずみ検出部が構造材の引っ張りや圧縮の応力の影響により断線して疲労度検出ひずみゲージとしての機能を損なうこともない。
【0016】
また、疲労度検出部をひずみ検出部と導通部に対し突出して配置したことで、結果的に端子部を疲労度検出部からより離すことができるので、構造材の局所的な応力集中部から端子部をより離間して配置することができる。これにより、端子部のハンダ接合部が構造材の応力集中部から悪影響を受けないようにできる。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1または請求項2に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記疲労度検出部はストランドと隣接するストランドとを疲労度検出用折り返しタブで接続することにより複数構成されており、
複数の前記ストランドの線幅に対する前記疲労度検出用折り返しタブの長さの比をエンドタブ比としたとき、互いにエンドタブ比が異なる複数の前記疲労度検出用折り返しタブを有する疲労度検出ひずみゲージであることを特徴としている。
【0018】
請求項3に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材の疲労度合いに応じて疲労度検出部が段階的に破断する。そのため、構造材の疲労度を段階的に検出することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記疲労度検出用折り返しタブの折り返しの内側部分の近傍に切り込みを設けた疲労度検出ひずみゲージであること特徴としている。
【0020】
請求項4に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、このような構成を有さない疲労度検出ひずみゲージに比べて、構造材の疲労度が同じであっても疲労度検出部がより破断し易くなる。そのため、同程度の疲労度検出を行う場合に折り返しタブにこのような切り込みを有さない構成に比べて、疲労度検出用折り返しタブの長さを短くすることができる。その結果、疲労度検出部を構造材の局所的な応力集中部に最も近づけて配置することができるので、構造材の疲労破壊を事前に迅速かつ的確に予測することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、構造材のひずみを測定できると共に、構造材に局所的に生じる疲労破壊の兆候を事前にかつ的確に予測可能な疲労度検出ひずみゲージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージを示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージを構造材に取付けた状態を概略的に示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第1変形例を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第2変形例を示す平面図である。
【図5】本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第2変形例の疲労度検出部を拡大して示す平面図(図5(a))と、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの疲労度検出部の修正例を拡大して示す平面図(図5(b))である。
【図6】本発明に関連する疲労度検出ひずみゲージを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージは、ひずみ検出部と、ひずみ検出部と直列に接続した疲労度検出部と、疲労度検出部と並列かつひずみ検出部と直列に接続した導通部を接続して構成される抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出することにより、ひずみ測定と疲労度検出を行なうようになっている。そして、抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出するためにひずみ検出部の一端と導通部の一端にてそれぞれ接続される端子部を備えている。また、端子部が配置されている位置と反対側の端部に疲労度検出部を配置して構造物の応力集中部近傍の疲労度検出を適切に行うようになっている。
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージについて図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージを示す平面図である。図2は、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージを構造材に取付けた状態を概略的に示す斜視図である。なお、以下の説明においては、図1におけるフィルム状部材の垂直方向を長手方向とし、水平方向を幅方向とする。また、図1におけるフィルム状部材の上側を先端側、下側を基端側とする。
【0025】
本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100は、例えば建造物の梁や柱、橋脚、鉄塔、橋げた等の一般構造材の疲労度を検出するのに用いられ、可撓性を有する絶縁体の樹脂材からなるフィルム状部材110と、フィルム状部材110にパターニングされた金属箔からなる電気抵抗体等から構成されている。そして、電気抵抗体は、端子部121,122(120)と、ひずみ検出部130と、導通部140と、疲労度検出部150とから構成されている。
【0026】
フィルム状部材110は、樹脂製部材からなり可撓性を有し細長矩形状をなしている。また、図2に示すように、フィルム状部材110の先端側に配置された疲労度検出部150が構造材の応力集中部に最も近づくと共に基端側に配置された端子部120が構造材の応力集中部から最も離れる位置に接着剤等によりフィルム状部材110を貼り付けるようになっている。
【0027】
端子部120は、フィルム状部材110の基端側であって幅方向において両端近傍にそれぞれ形成されている。端子部120にはここでは図示しない電線がハンダ付けされ、ひずみ検出部130、導通部140、及び疲労度検出部150からなる電気抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力し、図示しない演算制御手段で疲労度検出ひずみゲージ100が貼られた構造材のひずみや疲労度を検出するようになっている。
【0028】
ひずみ検出部130は、フィルム状部材110の幅方向一方の側(図1中左側)であって、フィルム状部材110の先端部近傍からフィルム状部材110の長手方向中央部近傍に亘る領域に形成されている。
【0029】
ひずみ検出部130は、本実施形態では線幅の細い金属箔が一定の長さでそれぞれ端部側において何度も同一方向に折り返され、前記一定の長さの各延在部がわずかな間隔だけ隔てて互いに平行に配置されたいわゆるつづら折り形状(以下、単に「つづら折り」形状とする)をなしている。なお、ひずみ検出部130の各延在部はフィルム状部材の長手方向に延在している。
【0030】
また、ひずみ検出部130の一端は、一方の端子部121と接続し、その他端は導通部140及び疲労度検出部150と接続している。
【0031】
より詳細には、ひずみ検出部130は、複数のストランド131(上述した延在部)と折り返しタブ132(上述した折り返し部)から構成され、ひずみ検出部130に引っ張りのひずみが生じることで、ひずみ検出部130の抵抗値が増し、電気抵抗体全体としての抵抗値も上がるようになっている。なお、ひずみ検出部130の折り返しタブ132とストランド(ゲージ受感部)131とが接続される部分の折り返しタブ132の内側部分の形状は、曲率が連続的に徐々に変わる曲線形状をしており、疲労による断線が生じ難い形状となっている。
【0032】
疲労度検出部150は、フィルム状部材110の幅方向他方の側(図1中右側)であって、フィルム状部材110の先端部近傍領域から長手方向の中央部分の領域にかけて形成されている。なお、疲労度検出部150のストランド151をなす各延在部はフィルム状部材110の長手方向に延在している。
【0033】
疲労度検出部150も本実施形態では線幅の細い金属箔からなり、複数のストランド151と折り返しタブ152(152a,152b)から構成され、そのストランド151がフィルム状部材110の長手方向に延在形成されたつづら折り形状をなしている。疲労度検出部150の両端のストランド151a,151bは、フィルム状部材110の基端側に更に延在し、一方のストランド151aがひずみ検出部130のストランド131及び導通部140の一方の端部と導通している。また、疲労度検出部150の他方のストランド151bは、端子部122と接続している。
【0034】
なお、フィルム状部材先端側に形成された折り返しタブ152aの長さは、フィルム状部材基端側に形成された折り返しタブ152bの長さよりも長くなっている。
【0035】
本実施形態では、折り返しタブ152aが構造材の局所的に生じる応力集中部かその近傍に位置するように疲労度検出ひずみゲージ100が構造材に貼られるようになっている。そして、ストランド151と折り返しタブ152aの間が破断することによって疲労度検出部150に電流が流れなくなると共に、ひずみ検出部130と導通部140にのみ電流が流れるようになっている。その結果、電気抵抗体全体の抵抗値が段階的に上がることで、構造材の局所的な疲労破壊を迅速かつ的確に予測することを可能にしている。なお、折り返しタブ152aの長手方向の長さ寸法L(図5(a)参照)とストランド151の幅方向の長さ寸法W(図5(a)参照)とすると、寸法Lが長く寸法Wが短い程、疲労度検出部150の破断は生じ易くなっている。
【0036】
導通部140は、疲労度検出部150と同様にフィルム状部材110の幅方向一方の側(図1中右側)に形成されると共に、フィルム状部材110の長手方向において疲労度検出部150よりも基端側の領域に疲労度検出部150と並列になるように形成されている。
【0037】
導通部140も折り返し間の各延在部の長さが短いつづら折り形状からなる共に、その折り返し部の一方の端部(図1中左側端部)がひずみ検出部130及び疲労度検出部150の一方の延在部151aに接続し、他方の端部(図1中幅方向右側端部)が疲労度検出部150の他方の延在部151bと接続している。
【0038】
より具体的には、導通部140は、複数のストランド141と折り返しタブ142から構成され、導通部140にひずみが生じても導通部140の抵抗値が変化することはなく、電気抵抗体全体としての抵抗値も変化しないようになっている。また、導通部140の折り返しタブ142とストランド141とが接続される部分の折り返しタブ142の内側部分の形状は、連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状をしており、疲労による断線が生じ難い形状となっている。これによって、疲労度検出部150が破断した際は、疲労度検出部150には電流が流れず、導通部140にだけ電流が流れることになり、電気抵抗体全体としての抵抗値が上がるようになっている。
【0039】
本実施形態における疲労度検出ひずみゲージ100は、疲労度検出部150を利用して疲労度を検出できる電気抵抗式の疲労度検出ひずみゲージであるが、上述した構成を有することで構造材の疲労度検出にのみ特化したものではなく、ひずみ検出部130にひずみが生じた場合にひずみ検出部130の抵抗値が変化し、その変化した値から構造材のひずみを検出することも可能としている。
【0040】
続いて、上述した疲労度検出ひずみゲージ100の具体的な使用方法について説明する。図2は、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100を構造材に取付けた状態を概略的に示す斜視図である。図2において2つの疲労度検出ひずみゲージ100A,Bが一般構造材としての柱11と梁12の連結部に貼り付けられている。なお、この構造材の局所的な応力集中部は、柱11と梁12の連結部である。
【0041】
より具体的には、一方の疲労度検出ひずみゲージ100Aは、柱11と梁12の連結部近傍であって柱11の側面に貼り付けられ、他方の疲労度検出ひずみゲージ100Bは、柱11と梁12の連結部近傍であって梁12の下面に貼り付けられている。
【0042】
柱11に貼られた疲労度検出ひずみゲージ100Aは、先端側即ち疲労度検出部150の形成側が柱11と梁12の連結部のすぐ近くに位置し、基端側即ち端子部120の形成側が柱11と梁12の連結部から最も遠ざかって位置するように柱11に貼り付けられている。また、梁12に貼られた疲労度検出ひずみゲージ100Bも、先端側即ち疲労度検出部150の形成側が柱11と梁12の連結部のすぐ近くに位置し、基端側即ち端子部形成側が柱と梁の連結部から最も遠ざかって位置するように梁に貼り付けられている。
【0043】
2つの疲労度検出ひずみゲージ100A,Bがこのように柱11と梁12に貼り付けられているので、柱11や梁12に曲げ荷重や引張り荷重が作用したとき、柱11や梁12の疲労度検出ひずみゲージ100A,Bを貼り付けた側に局所的に引張り応力の応力集中が生じると、これを各疲労度検出ひずみゲージ100A,Bの疲労度検出部150が検出し、柱11と梁12の連結部における疲労破壊の予測に役立てることができる。
【0044】
上述した本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージは、疲労度検出部150とひずみ検出部130を併せ持っているので、以下のような本発明特有の使用方法が可能となる。具体的には、例えば本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100を車両の多く通行する橋脚の一般構造材に備えた場合、橋脚の完成直後からしばらくの間、ひずみ検出部130から構造材のひずみ度合いのトレンドを収集し、橋脚を構成する構造材の車両通行に伴うひずみ度合いの傾向を検出することができる。
【0045】
また、疲労度検出部150の断線により構造材の疲労破壊を予測した場合、その直後の構造材のひずみ度合いのトレンドからしばらくの間、ひずみ検出部130から収集することで、どのような現象により構造材の疲労破壊が近づいているかを把握することができる。一方、疲労度検出部150が断線に至らなくても、例えば橋脚を通行する車の通行量が急激に増加した場合などにおいて、その通行量の増加直後からしばらくの間、ひずみ検出部130から構造材のひずみ度合いのトレンドを収集することで、通行量の増加が構造材に与える影響を分析することができる。
【0046】
このような使用方法は、一般構造材を橋脚に用いた場合に限定されず、例えば多層階の建造物の骨組みをなす一般構造材に適用しても良い。これによって、建造物の完成直後しばらくの間、構造材のひずみ度合いのトレンドをひずみ検出部130で検出することで、建造物の完成後における構造材のひずみ度合いの変化を分析することができる。
【0047】
また、疲労度検出部150の断線により構造材の疲労破壊を予測した場合、その直後のしばらくの間、構造材のひずみ度合いのトレンドをひずみ検出部から収集することで、どのような現象により構造材の疲労破壊が近づいているかを把握することができる。一方、疲労度検出部150が断線に至らなくても、例えば建造物の上層階に産業機械などの重量物を設置した場合などにおいて、その重量物の設置直後からしばらくの間、構造材のひずみ度合いのトレンドをひずみ検出部130から収集することで、重量物の設置が構造材に与える影響を分析することができる。
【0048】
続いて、上述した実施形態の第1変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。図3は、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第1変形例を示す平面図である。
【0049】
第1変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ200は、上述した実施形態と同等の構成、即ちひずみ検出部230と、ひずみ検出部230と直列に接続した疲労度検出部250と、疲労度検出部250と並列かつひずみ検出部230と直列に接続した導通部240を接続して構成される電気抵抗体の抵抗値の変化を検出することにより、ひずみ測定及び疲労度検出を行なうことが可能となっている。そして、電気抵抗体の抵抗値の変化を検出するためにひずみ検出部230の一端と導通部240の一端においてそれぞれ接続される端子部221,222(220)を備えている。また、端子部220が配置されている位置と反対側の端部に疲労度検出部250を配置して構造物の局所的な応力集中部近傍の疲労度検出を適切に行うようになっている。
【0050】
なお、第1変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ200と上述の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100の構成上の違いは、第1変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ200が、ひずみ検出部230と導通部240を端子部220の近傍側に配置し、疲労度検出部250をひずみ検出部230と導通部240に対しフィルム状部材210の先端側に突出した位置に配置した点にある。即ち、フィルム状部材210の長手方向先端側から基端側に向かって疲労度検出部250、導通部240、ひずみ検出部230、端子部220の順にフィルム状部材上に並んで配置されている。なお、回路的には導通部240とひずみ検出部230は並列接続されている。
【0051】
第1変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ200がこのような構成を有することで、疲労度検出ひずみゲージ200が形成されたフィルム状部材210の先端側を図2に示す柱11と梁12の連結部であって局所的な応力集中部に位置し、基端側を柱11や梁12の連結部から最も離れて位置するように貼付した場合、疲労度検出部250を局所的に応力集中が生じる位置か極力その近傍に配置することができる。これによって、応力集中に対して疲労度検出部250を破断し易くし、構造材の疲労破壊をより迅速かつ的確に予想できるようにする。
【0052】
その一方、導通部240及びひずみ検出部230を応力集中が生じる場所から離れた場所に設置することができ、ひずみ検出部230及び導通部240が構造材の局所的な応力集中部の影響を受けないようにし、構造材に生じるひずみのみのデータを収集することができる。また、端子部220を疲労度検出部250からより離すことができるので、構造材の応力集中部からより離間して配置することができる。これにより、例えば端子部220のハンダ接合部が構造材の応力集中部から悪影響を受けないようにできる。
【0053】
続いて、上述した実施形態の第2変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。図4は、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ300の第2変形例を示す平面図である。
【0054】
第2変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ300は、上述した実施形態と同等の構成、即ちひずみ検出部330と、ひずみ検出部330と直列に接続した疲労度検出部350と、疲労度検出部350と並列かつひずみ検出部330と直列に接続した導通部340を接続して構成される電気抵抗体の抵抗値の変化を検出することにより、ひずみ測定及び疲労度検出を行なうようになっている。そして、電気抵抗体の抵抗値の変化を検出するためにひずみ検出部330の一端と導通部340の一端においてそれぞれ接続される端子部321,322(320)を備えている。また、端子部320が配置されている位置と反対側の端部に疲労度検出部350を配置して構造物の応力集中部近傍の疲労度検出を迅速かつ的確に行うようになっている。
【0055】
なお、第2変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ300と上述の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100の構成上の違いは、第2変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ300の疲労度検出部350は、複数のストランド351の線幅W(図5(a)参照)に対する疲労度検出用の折り返しタブ352の長さL(図5(a)参照)の比をエンドタブ比としたとき、互いにエンドタブ比が異なる複数の疲労度検出用の折り返しタブ352a,b,c,dを有する点にある。
【0056】
より具体的には、図4においてフィルム状部材310の幅方向中央側における疲労度検出用の折り返しタブ352aの長さが最も長く(即ちエンドタブ比が最も大きく)、局所的な応力集中部に生じる僅かな疲労によっても断線するようになっている。以降、フィルム状部材310の幅方向端部側に向かうに従って疲労度検出用の折り返しタブ352b,c,dの長さが徐々に短くなり、折り返しタブ352とストランド351の間が断線する際の疲労度も折り返しタブ352b,c,dの順に段階的に大きくなってゆく。
【0057】
また、隣接する折り返しタブ352a,352bから延在して隣接するストランド351a,351bは、導通部340の折り返しタブ342aと導通し、隣接する折り返しタブ352b,352cから延在して隣接するストランド351b’,351cは、導通部340の折り返しタブ342bと導通し、隣接する折り返しタブ352c,352dから延在する隣接するストランド351c’,351dは、導通部340の折り返しタブ342cと導通している。
【0058】
第2変形例に係る疲労度検出ひずみゲージ300がこのような構成を有することで、構造材の疲労度により疲労度検出部350が段階的に破断し、電気抵抗体の抵抗値もこれに応じて段階的に上昇する。具体的には、構造材の疲労度がある一定レベルまで高まると、折り返しタブ352aとストランド351との間が断線し、ひずみ検出部330から分岐して折り返しタブ352aとストランド351aを介して導通部340と接続する回路に電流が流れなくなり、その分電気抵抗体の抵抗値が一定量(1段階)だけ上昇する。
【0059】
次いで、構造材の疲労度が更にある一定レベルまで高まると、折り返しタブ352bとストランド351との間が断線し、上述した回路に加えてひずみ検出部330から分岐して折り返しタブ352bとストランド351b’を介して導通部340と接続する回路の電流が流れなくなり、更にその分電気抵抗体の抵抗値が(更に一段階)一定量だけ上昇する。このようにして構造材の疲労度が高まるにつれて折り返しタブ352cとストランド351との間、折り返しタブ352dとストランド351との間が順々に断線し、その分電気抵抗体の抵抗値が段階的に上昇する。そして、この抵抗器の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労度を段階的に検出することができるようになる。
【0060】
続いて、上述した実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの疲労度検出部の修正例について説明する。図5(b)は、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100の修正例の疲労度検出部150’を拡大して示す平面図である。この修正例においては、疲労度検出用の折り返しタブ152の折り返しの内側部分近傍に切り込みを設けている。
【0061】
より具体的には、折り返しタブ152a’の外縁152mとこれと連続するストランド151の外縁151mとのつながり部であって各ストランド151の内縁151nと折り返しタブ152a’の内側縁部152nとの繋がり部152pから最も近い部分に三角形状の切り込み部153が形成されている。
【0062】
係る疲労度検出部の修正例がこのような構成を有することで、この切り込み部153において疲労度検出部150’が破断し易くなる。そのため、仮に図5(b)に示すように疲労度検出用の折り返しタブ152a’の長さを短くした場合であっても、このような切り込みを有さない場合に比べて、より構造材の疲労度合いが小さくても、折り返しタブ152a’とストランド151との間が断線し易くなる。その結果、疲労度検出部150’を構造材の局所的な応力集中部に最も近づけて配置することができるようになり、構造材の疲労破壊を事前に迅速かつ的確に予測することができる。なお、この修正例は、上述した第1及び第2変形例にも適用可能である。
【0063】
以上説明した実施形態及び各変形例に係る金属箔の配置パターンはあくまで一例であり、本発明を逸脱しない範囲で様々な変形例が適用可能であることは言うまでもない。
【0064】
また、疲労度検出ひずみゲージのフィルム状部材は、これに形成されたひずみ検出部及び疲労度検出部がその役割を果たすのであれば、必ずしも樹脂製ではなくても良く、可撓性を有していなくても良い。
【0065】
また、上述した実施形態及びその各変形例に係る疲労度検出ひずみゲージの適用例としては、柱と梁からなる一般構造材を紹介したが、その適用対象としてこのようなものに限定されるものではなく、例えば一般構造材の溶接部分や形状が急激に変化する(形状係数が急激に変化する)部分など、局所的に応力集中が生じ易い部分に適用可能である。同様にひずみゲージと同様の機械的性質を有する機械構造材であっても溶接部分や形状が急激に変化する部分など、局所的に応力集中が生じ易い部分に上述した実施形態及びその各変形例に係る疲労度検出ひずみゲージを適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
100(100A,100B) 疲労度検出ひずみゲージ
110 フィルム状部材
121,122(120) 端子部
130 ひずみ検出部
131 ストランド
132 折り返しタブ
140 導通部
150,150’ 疲労度検出部
151(151a,151b) ストランド
152(152a,152a’,152b) 折り返しタブ
153 切り込み部
200 疲労度検出ひずみゲージ
210 フィルム状部材
221,222(220) 端子部
230 ひずみ検出部
240 導通部
250 疲労度検出部
300 疲労度検出ひずみゲージ
310 フィルム状部材
321,322(320) 端子部
330 ひずみ検出部
340 導通部
350 疲労度検出部
351(351a,351b,351b’,351c’) ストランド
352(352a,352b,352c,352d) 折り返しタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみ検出部と、
該ひずみ検出部と直列に接続した疲労度検出部と、
該疲労度検出部と並列に接続した導通部を接続して構成される抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出することにより、ひずみ測定と疲労度検出を行なうことが可能な疲労度検出ひずみゲージであって、
前記抵抗体の前記抵抗値の電気的な変化を検出するために前記ひずみ検出部の一端と前記導通部の一端にてそれぞれ接続される端子部を備え、 該端子部が配置されている位置と反対側の端部に前記疲労度検出部を配置して構造物の応力集中部近傍の疲労度検出を適切に行うことを特徴とする疲労度検出ひずみゲージ。
【請求項2】
前記ひずみ検出部と前記導通部を前記端子部の配置位置側に配置し、 前記疲労度検出部を前記ひずみ検出部と前記導通部に対し突出して配置したことを特徴とする請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージ。
【請求項3】
前記疲労度検出部はストランドと隣接するストランドとを疲労度検出用折り返しタブで接続することにより複数構成されており、
複数の前記ストランドの線幅に対する前記疲労度検出用折り返しタブの長さの比をエンドタブ比としたとき、互いにエンドタブ比が異なる複数の前記疲労度検出用折り返しタブを有することを特徴とする請求項1または2に記載の疲労度検出ひずみゲージ。
【請求項4】
前記疲労度検出用折り返しタブの折り返しの内側部分の近傍に切り込みを設けることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の疲労度検出ひずみゲージ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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