説明

疲労感低減剤

【課題】カモミールを有効成分とする疲労感低減剤、活気向上剤または活気浄化剤、緊張感低下剤および集中力向上剤等の提供。
【解決手段】カモミールを有効成分とする剤が安静時または運動時における疲労感低減作用、活気向上作用または活気浄化作用、緊張感低下作用および集中力向上作用等を有することを確認することで本発明の剤の提供を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカモミール(chamomile)を有効成分とする疲労感低減剤、活気向上剤あるいは活気浄化剤、緊張感低下剤、または集中力向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カモミールは代表的なハーブの一つであり、ハーブティーとして飲むとリラックスして安眠できると言われている。また、抗炎症作用、鎮静作用、抗菌作用等があるとされており、頭皮料や入浴剤等に配合されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、カモミールのヒトへの有効性、安全性等について信頼できるデータは見つかっていない。
【0003】
カモミールは温血動物におけるストレス状態を予防又は治療するためのホスファチジルセリン(PS)及び/又はリゾホスファチジルセリンを含有する製剤において、追加する活性成分の一つとして挙げられている(例えば、特許文献3参照)。しかし、実際に活性成分として追加した例は示されていない。また、抗ストレス及びリラックス用剤として、テアニンとカモミール配合錠剤が製造されており、カモミールがα波を発現することが示されているが、カモミールを有効成分とする疲労感低減剤、活気向上剤あるいは活気浄化剤、緊張感低下剤、または集中力向上剤については記載されていない(例えば、特許文献4参照)。さらに、カモミールは血中グルコース濃度を持続することで、活力および精神的機敏さを提供できる飲料剤において、香料の一つとして用いることが記載されているが、有効成分としてカモミールを用いることについての記載はない(例えば、特許文献5参照)。
〔先行文献〕
【特許文献1】特開2004−18476号公報
【特許文献2】特開平6−32730号公報
【特許文献3】特表2004−537577号公報
【特許文献4】特開2005−232045号公報
【特許文献5】特表2004−50031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カモミールを有効成分とする疲労感低減剤、活気向上剤あるいは活気浄化剤、緊張感低下剤および集中力向上剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、本発明の剤がヒトに対して緊張感低下作用、活気向上作用または活気浄化作用、疲労感低減作用、集中力向上作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は次の(1)〜(5)の剤等に関する。
(1)カモミール(chamomile)を有効成分として含有する疲労感低減剤。
(2)カモミール(chamomile)を有効成分として含有する活気向上剤または活気浄化剤。
(3)カモミール(chamomile)を有効成分として含有する緊張感低下剤。
(4)カモミール(chamomile)を有効成分として含有する集中力向上剤。
(5)カモミール(chamomile)乾燥エキスを750mg含有する上記(1)〜(4)に記載の剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、疲労感低減剤、活気向上剤または活気浄化剤、緊張感低下剤および集中力向上剤等の医薬品を提供できる。また、該剤を含有する栄養機能食品、健康食品等の飲食品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の「剤」は、カモミールを有効成分とする、疲労感低減作用、活気向上作用または活気浄化作用、緊張感低下作用、集中力向上作用を有する剤であればよい。これらの作用を有していれば、カモミールのみを有効成分とする剤であってもよく、さらにカモミールの前記作用を阻害しない他の物質を有効成分として含むものであってもよい。
【0009】
本発明の剤に用いるカモミールはヒトや動物が安全に摂取できるものであればいずれのものも用いることができる。例えば、抽出等の既知の方法によって独自に取得したものでもよく、市販されているものでも良い。市販されているものとして、例えばカミツレ乾燥エキス(アスク薬品株式会社)等が挙げられる。
【0010】
本発明における「疲労感」とは、疲れの度合いのこと、疲労度等のことをいう。本発明の「疲労感低減剤」は、摂取により、安静時または運動時における該「疲労感」を低減させる作用を有する。
ここで、「安静時」とは心拍数や呼吸数に大きな変動のない状態のことをいい、例えば、椅子に座っている状態の時のことをいう。「運動時」とは、ヒトに運動を負荷した時のことをいい、例えば最大酸素摂取量の60%にあたる運動強度で60分間エルゴメータ運動を負荷している状態の時のことをいう。
【0011】
本発明における「活気」とは、いきいきとして活動的な気分、勇み立つ意気、やる気に満ちた精神状態等のことをいう。本発明の「活気向上剤」は、摂取により、安静時における該「活気」を上昇させる作用を有する。
【0012】
本発明における「緊張感」とは、精神が引きしまること、気が張っている精神状態等のことをいう。過度の緊張感は、心身に悪影響を及ぼす。本発明の「緊張感低下剤」は、摂取により、安静時または運動時における該「緊張感」を低下させる作用を有する。
【0013】
本発明における「集中力」とは、物事を行う時などに気が一点に集まること等のことをいう。集中力の向上は、仕事や勉強の効率アップに繋がる。本発明の「集中力向上剤」は、摂取により、安静時または運動時における該「集中力」を上昇させる作用を有する。
【0014】
本発明における、「活気」、「緊張感」、「疲労感」および「集中力」は既知のいずれの方法でも検査することができる。本発明においては、健康調査やメンタルヘルスの調査等において、緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱等の測定に用いられるPOMS(Profile of Mood States、著者:D.M.McNair, M.Lorr. F. Droppleman)等により検査を行った。
【0015】
本発明の剤は、飲食品や医薬品として用いることができる。医薬品としては、疲労感低減剤、活気向上剤または活気浄化剤、緊張感低下剤および集中力向上剤が挙げられる。
本発明の剤それ自体または常法に従って既知の医薬用無毒性担体と組み合わせたものを医薬品とすることができ、種々の製剤化ができる。本発明の医薬品は経口投与剤であることが好ましく、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等の製剤が挙げられる。これらの製剤は常法により調整することができる。
【0016】
本発明の医薬品に用いる医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。
【0017】
医薬品の形態における本発明の剤に含まれるカモミールの投与量は、患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択・決定することができる。例えば、一日あたり12.5mg/kg体重程度までであることが好ましく、一日数回に分けて投与してもよい。
【0018】
動物においても同様に製剤化したものを用いることができる。動物の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択・決定することができ、一日数回に分けて投与してもよい。
【0019】
本発明の剤は、ヒトや動物が安全に摂取できるカモミールを有効成分として含有することから、飲食品として用いることができる。本発明の剤それ自体または他の飲食品に含有させたものを飲食品とすることができる。
飲食品としては、疲労感低減作用、活気向上作用または活気浄化作用、緊張感低下作用、集中力向上作用を目的とする機能性食品として摂取することもできる。機能性食品は、特定保健用食品、栄養機能性食品、又は健康食品とすることができる。
【0020】
本発明の食品としては、例えば、カモミールを含有する剤に適当な助剤を添加した後、常法により、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ペースト状等の食用に適した形態に形成したものを用いることができる。この機能性食品は、そのまま食用に供してもよく、また種々の食品や飲物に添加してもよい。
【0021】
飲食品の形態における本発明の剤に含まれるカモミールの摂取量は、対象の年齢、体重、症状、摂取スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択、決定することができる。例えば、一日あたり12.5mg/kg体重程度までであることが好ましい。
【0022】
動物においても同様に食用に適した形態に形成したものを飲食品として用いることができる。また、飼料及びペットフードや飲料水等に添加してもよい。飲食品の形態における本発明の剤に含まれるカモミールの摂取量は、動物の年齢、体重、症状、摂取スケジュール、製剤形態などにより、適宜選択、決定することができる。
【0023】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
剤の製造
カミツレ乾燥エキス(アスク薬品株式会社)750mgをハードカプセルに詰めて、カモミールを有効成分とする剤を作成した。
【0025】
[試験例]
本発明の剤が有する作用を次の試験によって調べた。
1.試薬
実施例1で作成した剤および比較例として難消化性デキストリン(製品名:パインファイバー、松谷化学)をハードカプセルに750mg詰めた偽薬を用いて試験を行った。
【0026】
2.被験者
体育学部在籍の運動習慣のある19〜23歳の男性12名を対象としてダブルブラインドクロスオーバーで試験を行った。被験者の平均身長は176.4cm、平均体重は72.2kg、平均体脂肪は11.3%であった。
【0027】
3.試験方法
1)安静時試験
被験者に剤または偽薬を摂取させた後、0,60,150,240分後の疲労感、活気、緊張感および集中力をそれぞれPOMSで検査し、本発明の剤摂取による変化を調べた。
【0028】
2)運動時試験
被験者に剤または偽薬を摂取させた後、最大酸素摂取量の60%にあたる運動強度で60分間エルゴメータ運動を負荷した。運動開始前60分、運動開始時(剤又は偽薬摂取時)、開始後60分、120分後の疲労感、活気、緊張感および集中力をそれぞれPOMSで検査し、本発明の剤摂取による変化を調べた。
【0029】
4.試験結果
1)疲労感の変化
本発明の剤を摂取した場合、安静時試験において、疲労感が著しく低減することが確認された(表1、図1)。また、運動時試験においても疲労感が低減することが確認された(表2、図2)。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
2)活気の変化
本発明の剤を摂取した場合、安静時試験において、活気が高められることが確認された(表3、図3)。また運動時試験において、活気が浄化することが確認された(表4、図4)。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
3)緊張感の変化
本発明の剤を摂取した場合、安静時試験において、緊張感が著しく低下することが確認された(表5、図5)。また、運動時試験においても緊張感が低下することが確認された(表6、図6)。
【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
4)集中力の変化
本発明の剤を摂取した場合、安静時試験において、集中力が著しく向上することが確認された(表7、図7)。また、運動時試験においても集中力が上昇することが確認された(表8、図8)。
【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
5.結果
これらの試験の結果より、本発明のカモミールを有効成分とする剤が安静時または運動時における疲労感低減作用、活気向上作用または活気浄化作用、緊張感低下作用および集中力向上作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の剤を含有する疲労感低減剤、活気向上剤または活気浄化剤、緊張感低下剤および集中力向上剤等の医薬品を提供できる。また、該剤を含有する栄養機能食品、健康食品等の飲食品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】安静時試験における疲労感の変化を示した図である。
【図2】運動時試験における疲労感の変化を示した図である。
【図3】安静時試験における活気の変化を示した図である。
【図4】運動時試験における活気の変化を示した図である。
【図5】安静時試験における緊張感の変化を示した図である。
【図6】運動時試験における緊張感の変化を示した図である。
【図7】安静時試験における集中力の変化を示した図である。
【図8】運動時試験における集中力の変化を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カモミール(chamomile)を有効成分として含有する疲労感低減剤。
【請求項2】
カモミール(chamomile)を有効成分として含有する活気向上剤または活気浄化剤。
【請求項3】
カモミール(chamomile)を有効成分として含有する緊張感低下剤。
【請求項4】
カモミール(chamomile)を有効成分として含有する集中力向上剤。
【請求項5】
カモミール(chamomile)乾燥エキスを750mg含有する請求項1〜4に記載の剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196948(P2009−196948A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41702(P2008−41702)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】